説明

放射線検出装置

【課題】放射線が入射された位置を特定できる放射線検出装置を提供する。
【解決手段】中性子と相互作用して荷電粒子を発生する変換部と、半導体基板に形成される前記荷電粒子を検出する複数の検出回路をそれぞれ有する複数の回路層とを備え、前記複数の回路層は、積層される放射線検出装置とする。また、中性子と反応して第1荷電粒子を発生する第1変換部と、中性子と相互作用して、前記第1荷電粒子よりもエネルギーが大きい第2荷電粒子を発生する第2変換部と、半導体基板に形成される前記荷電粒子を検出する複数の検出回路をそれぞれ有する複数の回路層と、それぞれの前記検出回路に入射する前記第1荷電粒子の到来方向を制限する遮蔽部と、を備え、前記複数の回路層は、積層される放射線検出装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を検出する放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を検出する放射線検出装置には、放射線を他の物質(コンバータともいう)と作用させて、間接的に放射線の検出を行うものがある。放射線には、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、X線、中性子線、荷電粒子線等が含まれる。
【0003】
熱中性子を検出する放射線検出装置として、コンバータにボロン10(10B)が使用されるものがある。ボロン10は、中性子と核反応し、ヘリウム4(He、α線)とリチウム7(Li)を生成する。当該放射線検出装置は、α線やリチウム7を検出することにより、中性子を検出する。
【0004】
また、高速中性子を検出する放射線検出装置として、シンチレータ等を使用するものがある。シンチレータは、シンチレーション現象により、高速中性子と核反応し、放射線を光に変換する。当該放射線検出装置は、変換された光を検出することで、高速中性子を検出する。高速中性子のエネルギーは、一般的に、100keV以上である。高速中性子のエネルギーは、熱中性子のエネルギーよりも大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−270887号公報
【特許文献2】特開昭63−40892号公報
【特許文献3】特開2009−212162号公報
【特許文献4】特開昭63−114177号公報
【特許文献5】特開平7−176777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱中性子を検出する放射線検出装置は、コンバータで変換された粒子があらゆる方向に飛ぶ。そのため、検出器で検出した粒子の到来方向を特定することが難しい。従って、当該放射線検出装置は、中性子が入射された位置を特定することが難しい。
【0007】
また、高速中性子を検出する放射線検出装置は、シンチレータで変換された光は、様々な方向に広がるため、光の到来方向を特定することが難しい。従って、当該放射線検出装置は、中性子が入射された位置を特定することが難しい。
【0008】
本発明は、放射線が入射された位置を特定できる放射線検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の放射線検出装置は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
【0010】
即ち、第1の態様は、
中性子と相互作用して荷電粒子を発生する変換部と、
半導体基板に形成される前記荷電粒子を検出する複数の検出回路をそれぞれ有する複数の回路層と、
を備え、
前記複数の回路層は、積層される
放射線検出装置である。
【0011】
第2の態様は、
中性子と反応して第1荷電粒子を発生する第1変換部と、
中性子と相互作用して、前記第1荷電粒子よりもエネルギーが大きい第2荷電粒子を発生する第2変換部と、
半導体基板に形成される前記荷電粒子を検出する複数の検出回路をそれぞれ有する複数の回路層と、
それぞれの前記検出回路に入射する前記第1荷電粒子の到来方向を制限する遮蔽部と、を備え、
前記複数の回路層は、積層される
放射線検出装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放射線が入射された位置を特定できる放射線検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施形態1の放射線検出装置の断面の例を示す図である。
【図2】図2は、実施形態1の放射線検出装置の上面方向から見た検出部の例を示す図である。
【図3】図3は、検出部の構成例を示す図である。
【図4】図4は、検出部の出力回路の構成例(1)を示す図である。
【図5】図5は、遮蔽金属の形状の斜視図の例を示す図である。
【図6】図6は、変形例の放射線検出装置の断面の例を示す図である。
【図7】図7は、変形例の放射線検出装置の上面方向から見た検出部の例を示す図である。
【図8】図8は、実施形態2の放射線検出装置の断面の例を示す図である。
【図9】図9は、実施形態3の放射線検出装置の断面の例を示す図である。
【図10】図10は、実施形態4の放射線検出装置の断面の例を示す図である。
【図11】図11は、第1コンバータ層および第2コンバータ層の感度の例を示す図である。
【図12】図12は、1つの検出部の出力回路の例(2)を示す図である。
【図13】図13は、1つの検出部の出力回路の例(3)を示す図である。
【図14】図14は、図12または図13の検出部の出力回路の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。実施形態の構成は例示であり、開示の実施形態の構成に限定されない。
【0015】
〔実施形態1〕
(構成例)
図1は、本実施形態の放射線検出装置の断面の例を示す図である。放射線検出装置100は、P(N)型基板102、シリコン酸化膜(SiO膜)108、金属(遮蔽金属)110、コンバータ層112、検出部120を含む。検出部120は、N(P)型半導体121、N(P)型半導体122、シリコン酸化膜123、ポリシリコン124を含む。また、放射線検出装置100は、配線131、配線132、配線133を含む。N(P)
型半導体121、及び、N(P)型半導体122は、P(N)型基板102よりも不純物を含む割合が大きい半導体である。コンバータ層112側を上側、P(N)型基板102側を下側とする。P(N)型基板102、N(P)型半導体121、及び、N(P)型半導体122は、P型基板102、N型半導体121、及び、N型半導体122、もしくは、N型基板102、P型半導体121、及び、P型半導体122であることを意味する。図1におけるN(P)型半導体121は、配線131によって、それぞれ、接続される。N(P)型半導体122は、配線132によって、奥行き方向のN(P)型半導体122(図示せず)と接続される。各ポリシリコン124は、配線133によって接続される。配線は、金属配線が使用される。金属配線が使用されることで、高速読み出しが可能となる。配線は、ポリシリコンによる配線、基板内のN(P)型半導体による配線が使用されてもよい。P(N)型基板102、検出部120、及び、各配線を含む層を、回路層ともいう。
【0016】
P(N)型基板102の上に複数の検出部120が形成される。各検出部120は、素子分離膜により、他の検出部120と分離されてもよい。素子分離膜は、検出部120で検出された信号が他の検出部120に影響を及ぼさないようにする。検出部120で検出された信号が他の検出部120に影響を及ぼさないのであれば、素子分離膜は、存在しなくてもよい。P(N)型基板102は、例えば、シリコン基板である。P(N)型基板102として、低抵抗シリコン基板が使用されうる。検出部120は、所定の周期で、2次元に、配置される。
【0017】
検出部120は、N(P)型半導体121、N(P)型半導体122、シリコン酸化膜123、ポリシリコン124を含む。N(P)型半導体121、及び、N(P)型半導体122は、P(N)型基板102にイオン注入することによって形成される。シリコン酸化膜123、ポリシリコン124は、P(N)型基板102の上に成膜されることによって、形成される。
【0018】
検出部120は、α線やLi粒子線である荷電粒子を検出する。検出部120は、PN結合を有する。PN結合は、低容量PN接合であってもよい。低容量PN接合が使用されることで、例えば、空乏層における抵抗と浮遊容量における時定数が小さくなり、高速読み出しが可能となる。α線やLi粒子線である荷電粒子を、検出部120に形成されたPN接合の逆バイアス時の空乏層によって検出する。α線またはLi粒子線は、PN接合の近傍の空乏層で、電子正孔対を発生させる。また、空乏層は、例えば、MOS(Metal Oxide Semiconductor)キャパシタ構造によっても形成されうる。即ち、空乏層は、MOS
キャパシタ構造において、ゲート酸化膜直下に形成されうる。検出部120は、この電子正孔対による電流を検出することで、α線またはLi粒子線の検出を行う。PN接合は、例えば、トランジスタのドレイン領域、PNジャンクション、及び、エピキタシ層を含むPNジャンクションであってもよい。検出部120の設置間隔が、放射線検出装置100の位置分解能である。ただし、コンバータ層112が厚い場合は、放射線検出装置100の位置分解能は、コンバータ層112の厚さにも依存する。放射線検出装置100は、検出部120で検出される微小信号を増幅する増幅回路を含みうる。
【0019】
図2は、放射線検出装置の上面方向から見た検出部の例を示す図である。図2の例では、検出部120の個数が12個としているが、検出部120の個数が12個に限定されるものではない。図2の例では、N型半導体121、N型半導体122、ポリシリコン124、及び、各配線が示される。図2の例では、放射線検出装置100は、トランジスタ141、トランジスタ142、縦方向スイッチ151、横方向スイッチ152、アンプ160を含む。N型半導体121、N型半導体122、及び、ポリシリコン124は、図2の縦方向及び横方向に、周期的に配置される。配線131は、列ごとに各N型半導体121を接続する。配線132は、配線131の方向と異なる方向の列ごとに各N型半導体12
2を接続する。配線133は、各ポリシリコン124を接続する。
【0020】
配線131の各列は、1つのトランジスタ141に接続される。各トランジスタ141は、電源及び縦方向スイッチ151に接続される。縦方向スイッチ151は、スイッチとしてのトランジスタ141のうち1つを、オンにする。これにより、オンにされたトランジスタ141に接続される配線131を介して、N型半導体121に電圧が印加される。
【0021】
配線132の各列は、1つのトランジスタ142に接続される。各トランジスタ142は、電源及び横方向スイッチ152に接続される。横方向スイッチ152は、スイッチとしてのトランジスタ142のうち1つを、オンにする。これにより、オンにされたトランジスタ142に接続される配線132を介して、N型半導体122はアンプ160に接続される。
【0022】
配線133は、各ポリシリコン124に所定の電源電圧を供給する。ポリシリコン124に供給される電源電圧により、ポリシリコン124の近傍のP型基板102に空乏層が形成される。即ち、シリコン酸化膜123直下に空乏層が形成される。当該電源電圧を制御することによって、空乏層の大きさが、制御されうる。
【0023】
トランジスタ141は、縦方向スイッチ151により制御され、縦方向スイッチ151によりオンにされた場合、導通する。トランジスタ142は、横方向スイッチ152により制御され、縦方向スイッチ151によりオンにされた場合、導通する。
【0024】
縦方向スイッチ151は、接続されるトランジスタ141を制御して、電源とN型半導体121との間の導通を制御する。横方向スイッチ152は、接続されるトランジスタ142を制御して、N型半導体121とアンプ160との間の導通を制御する。
【0025】
N型半導体121、N型半導体122、及び、ポリシリコン124は、それぞれ、MOSトランジスタの、ソース、ドレイン、及び、ゲートに相当する。
【0026】
N型半導体121及びポリシリコン124に印加される電圧は、同一でもよい。
【0027】
検出部120の構成は、図2の例に限定されるものではなく、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のように、各検出部120がコンデンサを有し、電子正孔対による電荷をためてもよい。また、検出部120の構成は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサのように、各検出部120が増幅器を有してもよい。
また、検出部120からの電流の読み出しの構成は、DRAMの構成、もしくは、CMOSセンサの構成と同様であってもよい。検出部120からの電流の読み出しの構成は、これらに限定されるものではない。
【0028】
P型半導体121等が使用される場合は、図2において電源の正負の向きが逆になる。
【0029】
図3は、検出部の構成例を示す図である。電極のポリシリコン124に正の電圧を印加すると、P型基板102の正孔は、ポリシリコン124から離れる。P型基板102のポリシリコン124近傍には、空乏層が形成される。このとき、空乏層に荷電粒子(α線またはLi粒子線)が入射すると、荷電粒子は空乏層に電子正孔対を発生させる。
【0030】
空乏層に電子正孔対(キャリア)が発生すると、N型半導体121とN型半導体122との間の電位差により、N型半導体121とN型半導体122との間に電流が流れる。この電流を検出することにより、荷電粒子の入射を検出することができる。空乏層に電子正孔対(キャリア)が発生すると、電子正孔対は、空乏層の抵抗と浮遊容量による時定数で
減衰する。電子正孔対が消滅する前に、N型半導体121とN型半導体122との間に電位差を発生させることにより、検出部120は荷電粒子の入射を検出することができる。空乏層の大きさは、ポリシリコン124に印加する電圧により制御されうる。空乏層の大きさを制御することにより、荷電粒子の検出感度を調整できる。即ち、空乏層を大きくすることにより、荷電粒子によってより多くの電子正孔対が発生するため、検出部120は、荷電粒子を検出しやすくなる。
【0031】
図4は、1つの検出部の出力回路の例(1)を示す図である。図4のダイオードは、例えば、検出部120のPN接合およびゲート酸化膜直下の空乏層による検出部分(以下、空乏層を持つ検出部分をダイオードということにする)に相当する。ダイオードには、逆バイアスがかけられている。この逆バイアスは、すべての検出部120のPN接合に共通に印加されてもよい。抵抗は、例えば、MOSトランジスタの三極管領域を利用した抵抗(高抵抗)や、拡散、ポリシリコン等で製作した抵抗(高抵抗)である。検出部120に、荷電粒子が入射すると、ダイオードに電流が流れる。この電流による電荷が、コンデンサを介して、出力される。このコンデンサは、存在しなくてもよい。
【0032】
図12は、1つの検出部の出力回路の例(2)を示す図である。図12のダイオード及び抵抗は、図4のダイオード及び抵抗と同様である。図12の増幅器は、例えば、MOSトランジスタである。ダイオードには、逆バイアスがかけられている。この逆バイアスは、すべての検出部120のPN接合に共通に印加されてもよい。検出部120に、荷電粒子が入射するとダイオードに電流が流れ、この電流による電荷が検出器のもつ容量で電圧に変換され増幅器により増幅され、出力される。
【0033】
図13は、1つの検出部の出力回路の例(3)を示す図である。図13のダイオードは、図4のダイオードと同様である。図13のスイッチは、例えば、MOSトランジスタによって形成される。図13の増幅器は、図12の増幅器と同様である。ダイオードには、逆バイアスがかけられている。この逆バイアスは、すべての検出部120のPN接合に共通に印加されてもよい。検出部120に、スイッチがオフの際に、荷電粒子が入射するとダイオードに電流が流れ、この電流による電荷が検出器のもつ容量で電圧に変換され増幅器により増幅され、出力される。
【0034】
図4、図12、図13のような出力回路の出力は、例えば、増幅回路や計数回路に接続されることにより、計数され得る。また、PN接合の近傍の空乏層は、当該コンデンサになりうる。即ち、空乏層内に蓄えられた電荷が、信号として出力されうる。当該信号は、例えば、DRAMの読み出しの構成と同様の構成により、検出部120毎に読み出される。この場合、読み出し用のトランジスタを、例えば、遮蔽金属110の下側に設けることにより、荷電粒子の影響による誤信号の影響を低減できる。
【0035】
図14は、図12または図13の検出部の出力回路の具体例を示す図である。図14の回路には、4つのMOSトランジスタ(A、B、C及びD)が含まれる。図12のような出力回路では、MOSトランジスタAが抵抗として機能し、MOSトランジスタBがダイオードとして機能し、MOSトランジスタCおよびMOSトランジスタDが増幅器として機能する。端子(a)は、MOSトランジスタAに接続される。ここで、端子(a)の電圧を調整することにより、MOSトランジスタAを抵抗(高抵抗)として機能させることができる。また、図13のような出力回路では、MOSトランジスタAがスイッチとして機能し、MOSトランジスタBがダイオードとして機能し、MOSトランジスタCおよびMOSトランジスタDが増幅器として機能する。ここで、端子(a)の電圧を調整することにより、MOSトランジスタAをスイッチとして機能させることができる。
【0036】
検出部の出力回路は、図4、図12、図13、図14等の例に限定されるものではない

【0037】
各検出部120の上には、シリコン酸化膜108が形成される。シリコン酸化膜108の厚さ(高さ)は、例えば、4乃至7μmである。
【0038】
シリコン酸化膜108の上には、コンバータ層112が形成される。コンバータ層112は、ボロン10(10B)を含む。コンバータ層112は、ボロン10(10B)のみであってもよい。コンバータ層112に入射した中性子(熱中性子)は、ボロン10(10B)と核反応し、α線およびLi粒子線を生成する。このとき、α線およびLi粒子線は、それぞれ、1MeV程度のエネルギーを有する。生成したα線及びLi粒子線は、互いにほぼ逆方向に放出される。従って、シリコン酸化膜108側には、α線およびLi粒子線のうちの一方が入射する。1.5MeVのα線のボロン10中の飛程は、4μmである。また、900keVのLi粒子線のボロン10中の飛程は、2μmである。コンバータ層112とシリコン酸化膜108の厚さは、α線またはLi粒子線が検出部120に到達する程度の厚さとされる。また、コンバータ層112の厚さが小さいと、中性子がα線及びLi粒子線に変換される割合が減少する。コンバータ層の厚さ(高さ)は、例えば、1乃至5μmである。ここでは、コンバータ層112は、ボロン10を含むが、中性子を他の物質等に変換する物質として、例えば、熱中性子を光に変換するLiFやZnS等のボロン10以外の物質が使用されてもよい。
【0039】
また、ポリシリコン124の上方を除く部分には、遮蔽金属110が形成される。即ち、放射線検出装置100の上面側からみると、ポリシリコン124(検出部120)を囲うように遮蔽金属110が形成される。
【0040】
図5は、遮蔽金属の形状の斜視図の例を示す図である。図5の遮蔽金属110は、全体が直方体で、検出部120の部分に溝が形成された形状をしている。この形状により、溝部分の真上方向から入射する荷電粒子は検出部120に入射し、斜め方向から入射する荷電粒子は遮蔽金属110にあたり検出部120に達しない。図5の例では、遮蔽金属の溝の(断面の)形状は正方形であるが、正方形に限定されるものではなく、長方形、円形などの他の形状であってもよい。ただし、遮蔽金属の溝の(断面の)形状は、検出部120の形状と同様の形状が望ましい。遮蔽金属110の形状は、図5の例に限定されるものではない。
【0041】
遮蔽金属110として、例えば、アルミニウム、銅、銀、タングステンなどが使用されうる。遮蔽金属110は、α線やLi粒子線を、一方のシリコン酸化膜108から隣接するシリコン酸化膜108に透過しない幅を有する。遮蔽金属110の幅は、例えば、アルミニウムは5μm、銅は3μm、銀は3μm、タングステンは2μmである。遮蔽金属110の幅は、中性子の検出効率を考慮すると、小さいほうが望ましい。遮蔽金属110にあたったα線などは、検出部120で検出されないからである。
【0042】
P(N)型基板102、シリコン酸化膜108、遮蔽金属110、コンバータ層112、検出部120、配線131、配線132、配線133を含む半導体装置は、通常の半導体プロセスにより製造可能である。当該半導体装置は、次のように製造することができる。
【0043】
P(N)型不純物を添加したシリコンウェハ(単結晶基板)の表面に、例えば、熱酸化法により、シリコン酸化膜層を成膜する。次に、シリコン酸化膜層にフォトレジスト膜を形成する。そして、フォトリソグラフィ等により、N(P)型半導体121及びN(P)型半導体122のレジストパターンを転写し、N(P)型不純物イオンを注入して、N(P)型半導体を形成する。レジストパターンを除去した後、表面全体にシリコン酸化膜層
を成膜する。
【0044】
さらに、表面全体に電極膜層を形成する。電極膜の形成は、例えば、CVD(Chemical
Vapor Deposition、化学気相蒸着)法、ALD(Atomic Layer Deposition、原子層蒸着)法またはPVD(Physical Vapor Deposition、物理気相蒸着)法を用いてもよい。電
極膜層は、例えば、ポリシリコンである。
【0045】
次に、フォトリソグラフィ等により、N(P)型半導体121及びN(P)型半導体122に電極を形成するためのレジストパターンを転写し、シリコン酸化膜層、電極膜層を除去する。これにより、ポリシリコン124が形成されうる。電極としてのポリシリコン124は、ポリシリコン膜の代わりに、TiAlN膜、TaN膜、TaC膜、TaCN膜等が使用されてもよい。また、スパッタリング等により、金属材料を積層して、電極、配線層等を形成する。また、P(N)型基板102の下側に電極となる金属層を形成する。
【0046】
次に、フォトリソグラフィ等により、レジストパターンを転写し、不要な金属を除去し、N(P)型半導体121等の電極、配線等を形成する。配線は、半導体装置の周囲から取り出されうる。レジストパターンを除去した後、さらに、表面全体にシリコン酸化膜を成膜する。
【0047】
次に、フォトリソグラフィ等により、遮蔽金属110を形成するためのレジストパターンを転写し、遮蔽金属110となる部分をエッチングすることにより、シリコン酸化膜を除去する。シリコン酸化膜を除去した部分に所定の金属材料を積層する。これにより、遮蔽金属110が形成される。遮蔽金属110は、複数のビアを隙間なく接続することで形成されてもよい。
【0048】
次に、フォトリソグラフィ等により、コンバータ層112を形成するためのレジストパターンを転写する。即ち、遮蔽金属部分をマスクし、シリコン酸化膜部分をエッチングする。シリコン酸化膜を除去し部分にコンバータ層112を形成する。コンバータ層112には、CVD法などによる成膜と同時にボロン10(10B)を導入する方法、成膜後にボロン10(10B)をイオン注入する方法などにより、コンバータ層112にボロン10(10B)を含ませることができる。
【0049】
このようにして、P(N)型基板102、シリコン酸化膜108、遮蔽金属110、コンバータ層112、検出部120、配線131、配線132、配線133を含む半導体装置が製造されうる。
【0050】
(動作例)
放射線検出装置100における中性子検出の動作について説明する。放射線検出装置100のコンバータ層112側から中性子が入射されると、中性子は、コンバータ層112のボロン10と核反応(10B(n,α)Li反応)し、α線及びLi粒子線に変換される。α線及びLi粒子線のうちの一方は、シリコン酸化膜108側に放出される。この放出される方向は、中性子の運動方向とほぼ同方向である。
【0051】
シリコン酸化膜108側に放出された荷電粒子線は、シリコン酸化膜108、ポリシリコン124、シリコン酸化膜123を突き抜け、検出部120の空乏層に入射する。検出部120の空乏層は、ポリシリコン124に接続される電極(ゲート電極に相当)から印加される逆バイアス電位によって、形成される。検出部120の空乏層に荷電粒子が入射されると、荷電粒子は、電子正孔対を発生させる。検出部120の空乏層に発生した電子正孔対(電荷)は、空乏層の静電容量により保持される。空乏層に保持される電荷は、N(P)型半導体122に接続される電極(ドレイン電極に相当)により、検出される。検
出部120は、空乏層に保持される電荷を検出することで、荷電粒子(α線またはLi粒子線)の検出を行う。
【0052】
荷電粒子が、遮蔽金属110にあたった場合、検出部120では検出されない。当該荷電粒子は、遮蔽金属110で減衰し、検出部120に達しないからである。遮蔽金属110により、検出部120で検出される中性子(荷電粒子)の到来方向が制限される。
【0053】
また、中性子の運動方向と、シリコン酸化膜108側に放出される荷電粒子の運動方向の角度の差は、最大で10度程度である。従って、ある検出部120で、荷電粒子が検出された場合、当該検出部120のほぼ真上に、中性子が入射されたと考えられる。よって、放射線検出装置100は、どの検出部120で、荷電粒子を検出したかにより、どの位置に中性子が入射したかを認識することができる。即ち、放射線検出装置100は、荷電粒子を検出した検出部120のほぼ真上に中性子が入射されたと判断できる。また、放射線検出装置100は、検出部120の設置間隔の位置分解能で、中性子が入射された位置を判断できる。
【0054】
ここで、図2を用いて、放射線検出装置100による荷電粒子の検出について説明する。放射線検出装置100に中性子(熱中性子)が入射すると、コンバータ層112で荷電粒子に変換される。各検出部120は、トランジスタのソースとしてのN型半導体121、トランジスタのドレインとしてのN型半導体122、トランジスタのゲートとしての各ポリシリコン124を含む。
【0055】
トランジスタのゲートとしての各ポリシリコン124には、電源により所定の電圧が印加されている。当該電圧により各ポリシリコン124の近傍のP型基板102には、空乏層が形成される。
【0056】
放射線検出装置100は、縦方向スイッチ151及び横方向スイッチ152により、任意の検出部120に電圧を印加し、信号を取り出すことができる。ここで、例えば、ポリシリコン124Aが含まれる検出部120(図2の左上)の空乏層に、荷電粒子が入射したとする。空乏層に荷電粒子が入射すると、電子正孔対が発生する。検出部122の信号を取り出す場合、縦方向スイッチ151は、トランジスタ141Aをオンにし、横方向スイッチ152は、トランジスタ142Aをオンにする。このとき、トランジスタのソースとしてのN型半導体121Aと、トランジスタのドレインとしてのN型半導体122Aとの間の電位差により、N型半導体121AとN型半導体122Aとの間に、電子正孔対がキャリアとなり、電流が流れる。この電流がアンプ160を通して検出されることにより、検出部122における荷電粒子の入射を検出できる。当然に、他の検出部120についても同様である。即ち、縦方向スイッチ151及び横方向スイッチ152を適切に切り替えることにより、放射線検出装置100は、すべての検出器120において発生した電子正孔対(キャリア)による電流を検出できる。また、放射線検出装置100は、縦方向スイッチ151及び横方向スイッチ152の状態により、どの検出部120において発生した電子正孔対(キャリア)による電流かを認識できる。即ち、放射線検出装置100は、どの検出部120で荷電粒子が入射したかを認識できる。即ち、放射線検出装置100は、荷電粒子が入射した検出部120の位置の上方を、中性子が入射した位置と判断できる。また、放射線検出装置100は、縦方向スイッチ151及び横方向スイッチ152により、任意の検出部120から、電流を検出するようにすることができる。放射線検出装置100は、縦方向スイッチ151及び横方向スイッチ152の状態と、検出部120の位置(座標)との対応付けを格納する対応テーブルを有してもよい。放射線検出装置100は、当該対応テーブルにより、中性子が入射した位置を判断できる。放射線検出装置100は、例えば、ポリシリコン124の中心の位置を、検出部120の位置とすることができる。
【0057】
(変形例)
次に変形例について説明する。当該変形例は、上記の構成との共通点を有する。従って、ここでは、主として相違点について説明し、共通点については、説明を省略する。ここでは、N(P)型半導体121を省略する例を示す。
【0058】
図6は、変形例の放射線検出装置の断面の例を示す図である。変形例の放射線検出装置1100では、検出部120は、N(P)型半導体122、シリコン酸化膜123、ポリシリコン124を含む。図6におけるN(P)型半導体122は、配線132によって、N(P)型半導体122(図示せず)と、それぞれ、接続される。各ポリシリコン124は、配線133によって、奥行き方向のポリシリコン124(図示せず)と接続される。
【0059】
図7は、変形例の放射線検出装置の上面方向から見た検出部の例を示す図である。図7の例では、検出部120の個数が12個としているが、検出部120の個数が12個に限定されるものではない。図7の例では、N型半導体122、ポリシリコン124、及び、各配線が示される。図7の例では、放射線検出装置1100は、トランジスタ171、トランジスタ172、縦方向スイッチ181、横方向スイッチ182、アンプ160を含む。N型半導体122、及び、ポリシリコン124は、図7の縦方向及び横方向に、周期的に配置される。配線132は、列ごとに各N型半導体122を接続する。配線133は、配線132の方向と異なる方向の各ポリシリコン124を接続する。P型半導体122等が使用される場合は、図7において電源の正負の向きが逆になる。
【0060】
配線132の各列は、1つのトランジスタ171に接続される。各トランジスタ171は、電源及び縦方向スイッチ181に接続される。縦方向スイッチ181は、スイッチとしてのトランジスタ142のうち1つを、オンにする。これにより、オンにされたトランジスタ171に接続される配線132を介して、N型半導体122はアンプ160に接続される。
【0061】
配線133の各列は、1つのトランジスタ172に接続される。各トランジスタ172は、電源及び横方向スイッチ182に接続される。横方向スイッチ182は、スイッチとしてのトランジスタ172のうち1つを、オンにする。スイッチをオンにされた列の各ポリシリコン124に所定の電源電圧が供給される。ポリシリコン124に供給される電源電圧により、ポリシリコン124の近傍のP型基板102に空乏層が形成される。電源電圧を制御することによって、空乏層の大きさが、制御されうる。空乏層の大きさを制御することにより、荷電粒子の検出感度を調整できる。即ち、空乏層を大きくすることにより、荷電粒子によってより多くの電子正孔対が発生するため、検出部120は、荷電粒子を検出しやすくなる。
【0062】
放射線検出装置1100による荷電粒子の検出について説明する。放射線検出装置1100に中性子(熱中性子)が入射すると、コンバータ層112で荷電粒子に変換される。
【0063】
各ポリシリコン124には、横方向スイッチ182の動作により、所定時間毎に、列ごとに電源により所定の電圧が印加される。当該電圧により各ポリシリコン124の近傍のP型基板102には、空乏層が形成される。
【0064】
ここで、例えば、横方向スイッチ182によりトランジスタ172Aがオンにされているとする。このとき、ポリシリコン124Aが含まれる検出部122(図7の左上)の空乏層に、荷電粒子が入射したとする。空乏層に荷電粒子が入射すると、電子正孔対が発生する。縦方向スイッチ181は、トランジスタ171Aのスイッチをオンにしたとき、ポリシリコン124Aと、トランジスタのドレインとしてのN型半導体122Aとの間の電
位差により、電子正孔対をキャリアとして、電流が流れる。この電流がアンプ160を通して検出されることにより、検出部120における荷電粒子の入射を検出できる。他の検出部120についても同様である。横方向スイッチ182によって、ポリシリコン124に電圧が印加されると、大きな空乏層が発生する。当該空乏層に荷電粒子が入射すると、電子正孔対(キャリア)が発生する。縦方向スイッチにより、キャリアが発生した検出部120とアンプ160とが導通すると、当該キャリアによる電流が検出される。横方向スイッチ152により、電圧が印加される検出部120(ポリシリコン124)が切り替えられる。放射線検出装置1100は、例えば、縦方向スイッチ181を横方向スイッチ182による切替周期よりも速い周期で適切に切り替えることにより、各検出部120からの電流(信号)を検出することができる。放射線検出装置1100は、縦方向スイッチ181及び横方向スイッチ182の状態により、どの検出部120において発生した電子正孔対(キャリア)による信号かを認識できる。
【0065】
放射線検出装置1100は、放射線検出装置100と比べて、簡易な構成となる。
【0066】
(実施形態1の作用効果)
放射線検出装置100のコンバータ層112は、入射する中性子がボロン10と核反応することにより、α線およびLi粒子線の荷電粒子に変換する。荷電粒子は、シリコン酸化膜108を介して、検出部120に入射される。荷電粒子は、検出部120のPN接合近傍の空乏層で、電子正孔対を発生させる。検出部120は、この電子正孔対による電流を検出することで、荷電粒子の検出を行う。検出部120に入射される荷電粒子は、当該検出部120のほぼ真上方向から入射した中性子による荷電粒子である。検出部120のほぼ真上方向以外の方向からの荷電粒子は、遮蔽金属110により遮蔽される。よって、検出部120のほぼ真上方向以外の方向から、当該検出部120に荷電粒子は入射しない。荷電粒子を検出した検出部120のほぼ真上が、中性子が入射された位置となる。即ち、遮蔽金属110により検出部120に入射する荷電粒子の方向が特定されるため、荷電粒子を検出した検出部120の位置が、中性子の入射位置に対応する。よって、放射線検出装置100における中性子が入射された位置の分解能は、検出部120の設置間隔となる。
【0067】
放射線検出装置100は、ゲート電圧(ポリシリコン124に印加する電圧)を制御することにより、空乏層の大きさを調整できる。検出部120の検出感度は、空乏層の大きさに依存する。よって、放射線検出装置100は、ゲート電圧(ポリシリコン124に印加する電圧)を制御することにより、検出部120の検出感度を調整できる。
【0068】
また、シリコン中の電子正孔対の移動度は速く、かつ、検出部120の空乏層は狭いため、信号の消滅の時定数は、1ns以下である。従って、放射線検出装置100は、高速に荷電粒子の検出を読み出すことができ、検出部120のデッドタイムを短くすることができる。
【0069】
さらに、放射線検出装置100を2次元平面に多数敷き詰めることにより、位置分解能の高い放射線検出を大面積において行うことができる。
【0070】
変形例の放射線検出装置1100についても同様である。
【0071】
〔実施形態2〕
次に実施形態2について説明する。実施形態2は、実施形態1との共通点を有する。従って、ここでは、主として相違点について説明し、共通点については、説明を省略する。実施形態2では、実施形態1のシリコン酸化膜208の部分も、コンバータ層とする。
【0072】
(構成例)
図8は、本実施形態の放射線検出装置の断面の例を示す図である。放射線検出装置200は、P(N)型基板202、金属(遮蔽金属)210、コンバータ層212、検出部220を含む。検出部220は、N(P)型半導体221、N(P)型半導体222、シリコン酸化膜223、ポリシリコン224を含む。また、放射線検出装置200は、配線231、配線232、配線233を含む。
【0073】
シリコン基板202、金属(遮蔽金属)210、コンバータ層212、検出部220は、それぞれ、実施形態1のシリコン基板102、金属(遮蔽金属)210、コンバータ層212、検出部220と同様である。N(P)型半導体221、N(P)型半導体222、シリコン酸化膜223、ポリシリコン224は、実施形態1のN(P)型半導体121、N(P)型半導体122、シリコン酸化膜123、ポリシリコン124と同様である。配線231、配線232、配線233は、実施形態1の配線131、配線132、配線133と同様である。
【0074】
実施形態2では、実施形態1におけるシリコン酸化膜108の部分をコンバータ層212としている。シリコン酸化膜108の部分をコンバータ層212とすることにより、この部分においても、中性子を荷電粒子(α線またはLi粒子線)に変換することができる。コンバータ層212は、例えば、実施形態1のようなシリコン酸化膜をポストプロセスにより削り、ボロン10を埋め込むことにより形成されうる。また、シリコン酸化膜が存在しないことにより、荷電粒子の減衰を抑制することができる。遮蔽金属210は、実施形態1の遮蔽金属110と同様に形成される。
【0075】
遮蔽金属210の高さ(厚さ)は、例えば、2μm以上とする。遮蔽金属の高さが小さいと、検出部220に入射する斜め方向の荷電粒子の量が多くなり位置分解能が低下するからである。また、コンバータ層212の高さ(厚さ)は、例えば、2乃至4μmとする。中性子(熱中性子)とボロン10とが核反応することにより生成されるα線およびLi粒子線は、それぞれ、1MeV程度のエネルギーを有する。1.5MeVのα線のボロン10中の飛程は、4μmである。また、900keVのLi粒子線のボロン10中の飛程は、2μmである。このため、コンバータ層212の高さ(厚さ)は、2乃至4μm程度が好ましい。コンバータ層212の上面と遮蔽金属210の上面とは、同一平面に存在してもよい。遮蔽金属110とP(N)型基板102との間の距離は、1μm程度が好ましい。
【0076】
放射線検出装置200は、実施形態1の図2で示される放射線検出装置100の構成と同様の構成を有する。
【0077】
(動作例)
放射線検出装置200における中性子検出の動作について説明する。放射線検出装置200のコンバータ層212側から中性子が入射されると、中性子は、コンバータ層212のボロン10と核反応(13(n,α)Li反応)し、α線及びLi粒子線に変換される。α線及びLi粒子線のうちの一方は、検出部2220側に放出される。検出部220側に放出された荷電粒子線は、検出部220で検出される。検出部220側に放出された荷電粒子線の一部は、遮蔽金属210に当たる。検出部220に荷電粒子が入射されると、荷電粒子は、検出器220のPN接合近傍の空乏層で、電子正孔対を発生させる。検出部220は、この電子正孔対による電流を検出することで、荷電粒子(α線またはLi粒子線)の検出を行う。また、荷電粒子が、遮蔽金属210にあたった場合、検出部220では検出されない。当該荷電粒子は、遮蔽金属210で減衰し、検出部220に達しないからである。放射線検出装置200には、実施形態1のようなシリコン酸化膜108が存在しないため、放射線検出装置200では荷電粒子がシリコン酸化膜で減衰することはな
い。
【0078】
また、放射線検出装置200は、実施形態1の放射線検出装置100と同様に、検出部220の設置間隔の位置分解能で、中性子が入射された位置を判断できる。
【0079】
(実施形態2の作用効果)
放射線検出装置200のコンバータ層212は、入射する中性子がボロン10と核反応することにより、α線およびLi粒子線の荷電粒子に変換する。荷電粒子は、実施形態1の放射線検出装置100のように、シリコン酸化膜で減衰されることはない。よって、放射線検出装置200は、放射線検出装置100よりも、効率よく、中性子の入射を検出することができる。
【0080】
〔実施形態3〕
次に実施形態3について説明する。実施形態3は、実施形態1及び実施形態2との共通点を有する。従って、ここでは、主として相違点について説明し、共通点については、説明を省略する。実施形態3では、放射線検出装置100または放射線検出装置200と同様の構成を積層する。実施形態1及び実施形態2の放射線検出装置は、主に、熱中性子を検出する装置であったが、本実施形態の放射線検出装置300は、高速中性子を検出する。
【0081】
(構成例)
図9は、本実施形態の放射線検出装置の断面の例を示す図である。放射線検出装置300は、P(N)型基板302、検出部320、金属(遮蔽金属)310、コンバータ層312を含む。P(N)型基板302、検出部320、金属(遮蔽金属)310は、それぞれ、実施形態2のP(N)型基板202、検出部220、遮蔽金属210と同様である。放射線検出装置300では、P(N)型基板302、検出部320、金属(遮蔽金属)310、及び、コンバータ層312を含む層が、複数層、積層される。図9の例では、各層を、上の層から、第1層、第2層、第3層とする。図9の例では、3層であるが、2層以上であればよく、3層に限定されるものではない。また、放射線検出装置300で積層される層は、実施形態1の放射線検出装置100と同様の層であってもよい。最上層以外の層は、金属(遮蔽金属)310、コンバータ層312を含まなくてもよい。層と層との間は、密着される。
【0082】
コンバータ層312は、パラフィン、ポリエチレン等の水素を多く含む物質を含む。コンバータ層312は、水素を多く含む物質のみであってもよい。コンバータ層312に入射した中性子(高速中性子)は、所定の確率で、水素原子核(H)と衝突し、水素原子核を弾き飛ばす。弾き飛ばされた水素原子核は、エネルギーが高いため、遮蔽金属310を透過しうる。従って、遮蔽金属310は存在しなくてもよい。即ち、遮蔽金属310の代わりに、シリコン酸化膜であってもよい。また、放射線検出装置300が、実施形態2の放射線検出装置200と同様の層を含む場合、遮蔽金属のないコンバータ層が、検出部320に接してもよい。コンバータ層312の材料と高さ(厚さ)は、例えば、ポリエチレンで50μmとすることができる。コンバータ層312は、厚すぎると位置分解能が低下し、薄すぎると水素原子核を弾き飛ばす中性子の割合が減少する。
【0083】
検出部320は、水素原子核(荷電粒子)を、検出部320に形成された低容量PN接合の逆バイアス時の空乏層によって検出する。水素原子核は、PN接合の近傍の空乏層で、電子正孔対を発生させる。検出部320は、この電子正孔対による電流を検出することで、水素原子核の検出を行う。複数の層の検出部320で検出された場合、検出された検出器320の位置を一直線で結ぶことで、水素原子核の入射方向が分かる。検出部320の設置間隔が、放射線検出装置300の位置分解能である。ただし、コンバータ層312
が厚い場合は、放射線検出装置300の位置分解能は、コンバータ層312の厚さ(Dとする)にも依存する。ここで、角度θは、放射線検出装置300の放射線入射面(コンバータ層312の上面)の法線方向と、水素原子核の入射方向のなす角の角度であるとする(図9参照)。コンバータ層312の厚さが検出部320の設置間隔よりも十分大きい場合、放射線検出装置300の位置分解能は、角度θ以下の陽子線のみを使用するとすると、Dtanθとなる。
【0084】
(動作例)
放射線検出装置300における中性子検出の動作について説明する。放射線検出装置300のコンバータ層312側から中性子が入射されると、中性子(高速中性子)は、所定の確率で、水素原子核を弾き飛ばす。水素原子核(陽子線)は、荷電粒子である。水素原子核は、検出部320で検出される。検出部320には、逆バイアスが印加され、PN接合近傍に空乏層が形成される。検出部320に水素原子核が入射されると、荷電粒子は、検出器320のPN接合近傍の空乏層で、電子正孔対を発生させる。検出部320は、この電子正孔対による電流を検出することで、水素原子核(陽子線)の検出を行う。また、高速中性子に弾き飛ばされた水素原子核は、エネルギーが大きく、他の層(下層)の検出部320でも検出されうる。多くの場合、高速中性子に弾き飛ばされた水素原子核(陽子線)は、複数の層の検出部320で検出される。陽子線の軌跡は、ほぼ一直線になる。
【0085】
複数の層の検出部320で陽子線が検出された場合、陽子線が検出された検出部320を一直線で結び、陽子線が検出された検出部320が存在する層のうち最上層の層のコンバータ層と、当該一直線とが交差する位置が、中性子が入射した位置となる。中性子が入射した位置とは、中性子が水素原子核を弾き飛ばした位置である。陽子線を検出した検出部320の位置が一直線にない場合には、放射線検出装置300は、陽子線を検出した検出部320の位置の座標(3次元座標)を用いて、最小二乗法等により一直線を求め得る。よって、層が多くなるほど、陽子線を検出する検出部320が多くなり、陽子線の軌跡をより正確に求められる。陽子線の軌跡を正確に求めるために、各層の検出部320の位置、及び、各層の位置を正確に配置することが求められる。検出部320の位置の誤差が大きいと、陽子線の軌跡の誤差が大きくなるからである。
【0086】
また、第1層の表面の法線の方向から、第1層の表面に対して陽子線を入射し、複数の層の検出部320で、キャリアを検出することにより、検出部320の位置を校正することができる。即ち、キャリアを検出した検出部320が第1層の表面の法線方向に存在していると判断される。各層の検出部320が、各層内において正確に位置し、各層間の距離が既知であると仮定すると、第1層の表面上で、少なくとも2箇所以上から陽子線を入射し、複数の層の検出部320で、キャリアを検出することで、すべての検出部320の位置を校正することができる。各層における検出部320の間隔よりも高い精度で陽子線の入射位置を制御できる場合、検出部320の位置の校正を各層における検出部320の間隔よりも高い精度で行うことができる。つまり、検出部320の位置が検出部320の間隔よりも高い精度で決定される。検出部320の位置を正確に求めることで、陽子線の軌跡をより正確に求められる。
【0087】
(実施形態3の作用効果)
放射線検出装置300は、複数の層を備える。各層は、シリコン基板302、検出部320、金属(遮蔽金属)310、コンバータ層312を含む。各層は、遮蔽金属、シリコン酸化膜308を、含まなくてもよい。最上層以外の層は、コンバータ層312を含まなくてもよい。コンバータ層312は、水素を多く含む物質を含む。
【0088】
放射線検出装置300のコンバータ層312では、入射する中性子(高速中性子)が水素原子核を弾き飛ばす。弾き飛ばされた水素原子核(陽子線)は、検出部320に入射さ
れる。陽子線は、検出部320のPN接合近傍の空乏層で、電子正孔対を発生させる。検出部320は、この電子正孔対による電流を検出することで、陽子線の検出を行う。陽子線は、エネルギーが高いため、下層の検出部320においても、検出される。陽子線を検出した複数の検出部120を結ぶ一直線と、当該検出部320のうち最も上層の検出部320の層のコンバータ層312とが、交差する位置が、中性子が水素原子核をはじき飛ばした位置である。即ち、放射線検出装置300は、この位置に、中性子が入射したと判断できる。
【0089】
コンバータ層の厚さに対して検出部320の設置間隔が十分小さい場合、放射線検出装置300の位置分解能は、検出部320の設置間隔となる。コンバータ層312の厚さが検出部320の設置間隔よりも十分大きい場合、放射線検出装置300の位置分解能は、角度θ以下の陽子線のみを使用するとすると、Dtanθとなる。
【0090】
放射線検出装置300にガンマ線が入射された場合、1つの検出部320のみが、信号を生成する。一方、陽子線は、複数の検出部320で検出される。従って、放射線検出装置300は、ガンマ線と陽子線との分別をできる。
【0091】
〔実施形態4〕
次に実施形態4について説明する。実施形態4は、実施形態1、実施形態2、及び、実施形態3との共通点を有する。従って、ここでは、主として相違点について説明し、共通点については、説明を省略する。実施形態4では、実施形態3と同様に、放射線検出装置100または放射線検出装置200と同様の構成を積層する。実施形態4の放射線検出装置400は、熱中性子、及び、高速中性子を検出する。
【0092】
(構成例)
図10は、本実施形態の放射線検出装置の断面の例を示す図である。放射線検出装置400は、P(N)型基板402、検出部420、金属(遮蔽金属)410、第1コンバータ層412を含む。これらは、それぞれ、実施形態2のP(N)型基板202、検出部220、遮蔽金属210、コンバータ層212と同様である。放射線検出装置400は、さらに、第2コンバータ層414を含む。第2コンバータ層414は、実施形態3のコンバータ層312と同様である。放射線検出装置400では、P(N)型基板402、検出部420、金属(遮蔽金属)410、第1コンバータ層412、及び、第2コンバータ層414を含む層が、複数層、積層される。図10の例では、各層を、上の層から、第1層、第2層、第3層とする。図10の例では、3層であるが、2層以上であればよく、3層に限定されるものではない。また、放射線検出装置400で積層される層は、実施形態2の放射線検出装置100と同様のシリコン酸化膜を含む層であってもよい。最上層以外の層は、金属(遮蔽金属)410、第1コンバータ層412及び第2コンバータ414を含まなくてもよい。層と層との間は、密着される。第1コンバータ層412の位置と第2コンバータ層414の位置とは、入れ替わってもよい。
【0093】
第1コンバータ層412は、実施形態1のコンバータ層112または実施形態2のコンバータ層212と同様の層である。また、第2コンバータ層414は、実施形態3のコンバータ層312と同様の層である。即ち、第1コンバータ層では、熱中性子はボロン10と核反応をし、第2コンバータ層では、高速中性子は水素原子核を弾き飛ばす。
【0094】
図11は、第1コンバータ層および第2コンバータ層の感度の例を示す図である。図11の例では、第1コンバータ層412がボロン10で厚さ5μm、第2コンバータ層414がポリエチレンで厚さ50μmである。図11のグラフは、中性子のエネルギーに対する各コンバータ層の感度を示すグラフである。図11の例では、低いエネルギーの中性子に対しては、第1コンバータ層412のほうが感度がよく、高いエネルギーの中性子に対
しては、第2コンバータ層414のほうが感動がよい。中性子のエネルギーに対する放射線検出装置400の感度は、これらのグラフを足しあわせたものになる。
【0095】
(動作例)
放射線検出装置400における中性子検出の動作について説明する。放射線検出装置400の第1層の第2コンバータ層414側から熱中性子が入射されると、熱中性子は、第1コンバータ層412のボロン10と核反応(13(n,α)Li反応)し、α線及びLi粒子線に変換される。この動作は、実施形態1の放射線検出装置100の動作と同様である。また、放射線検出装置400の第1層の第2コンバータ層414側から高速中性子が入射されると、高速中性子は、所定の確率で、第2コンバータ層414の水素原子核を弾き飛ばす。この動作は、実施形態3の放射線検出装置300の動作と同様である。
【0096】
放射線検出装置400は、1つの検出部420で信号を検出した場合、熱中性子が入射されたとして、実施形態1と同様に、熱中性子が入射された位置を求める。即ち、放射線検出装置400は、信号を検出した検出部420のほぼ真上の第1コンバータ層412に熱中性子が入射されたと判断する。
【0097】
また、放射線検出装置400は、複数の検出部420で信号を検出した場合、高速中性子が入射されたとして、実施形態3と同様に、高速中性子が入射された位置を求める。即ち、放射線検出装置400は、信号を検出した検出部420を一直線で結び、信号を検出した検出部420が存在する層のうち最上層の層の第2コンバータ層414と、当該一直線とが交差する位置が、中性子が入射した位置と判断する。
【0098】
よって、放射線検出装置400は、エネルギーの低い中性子からエネルギーの高い中性子まで、中性子が入射された位置を検出することができる。
【0099】
(実施形態4の作用効果)
放射線検出装置400は、2種類のコンバータ層を有する。放射線検出装置400は、2種類のコンバータ層を有することで、中性子の広いエネルギー幅に対し感度を有する。また、放射線検出装置400は、3次元に検出部420を配置することで、中性子が入射された位置を精度よく検出することができる。
【符号の説明】
【0100】
100 放射線検出装置
102 P(N)型基板
108 シリコン酸化膜(SiO
110 金属(遮蔽金属)
112 コンバータ層
120 検出部
121 N(P)型半導体
122 N(P)型半導体
123 シリコン酸化膜(SiO
124 ポリシリコン
131 配線
132 配線
133 配線
141 トランジスタ
142 トランジスタ
151 縦方向スイッチ
152 横方向スイッチ
160 アンプ(増幅器)
171 トランジスタ
172 トランジスタ
181 縦方向スイッチ
182 横方向スイッチ
200 放射線検出装置
202 P(N)型基板
206 素子分離膜
210 金属(遮蔽金属)
212 コンバータ層
220 検出部
300 放射線検出装置
302 P(N)型基板
306 素子分離膜
310 金属(遮蔽金属)
312 コンバータ層
320 検出部
400 放射線検出装置
402 P(N)型基板
410 金属(遮蔽金属)
412 第1コンバータ層
414 第2コンバータ層
420 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子と相互作用して荷電粒子を発生する変換部と、
半導体基板に形成される前記荷電粒子を検出する複数の検出回路をそれぞれ有する複数の回路層と、
を備え、
前記複数の回路層は、積層される
放射線検出装置。
【請求項2】
前記検出回路は、PN接合を含む
請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
中性子と反応して第1荷電粒子を発生する第1変換部と、
中性子と相互作用して、前記第1荷電粒子よりもエネルギーが大きい第2荷電粒子を発生する第2変換部と、
半導体基板に形成される前記荷電粒子を検出する複数の検出回路をそれぞれ有する複数の回路層と、
それぞれの前記検出回路に入射する前記第1荷電粒子の到来方向を制限する遮蔽部と、を備え、
前記複数の回路層は、積層される
放射線検出装置。
【請求項4】
前記検出回路は、PN接合を含む
請求項3に記載の放射線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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