放射線治療システム
【課題】治療用放射線ビームの照射中における腫瘍の位置を精度良く確認することができ、このことにより放射線治療の安全性、確実性を高めるとともに患者を安心させることができる放射線治療システムを提供する。
【解決手段】制御装置11は、回転機構によって人体1を中心として治療用放射線ビーム照射装置7および人体内撮像装置13,17を一体的に回転させているときに、人体1に治療用放射線ビーム9を照射させるとともに、この治療用放射線ビーム9の照射中に撮像用放射線ビーム15を様々な方向から人体1に照射させて当該人体1の内部の透視画像を複数生成し、そして、生成される複数の透視画像に基づいて人体1の内部のCT画像を構成する。
【解決手段】制御装置11は、回転機構によって人体1を中心として治療用放射線ビーム照射装置7および人体内撮像装置13,17を一体的に回転させているときに、人体1に治療用放射線ビーム9を照射させるとともに、この治療用放射線ビーム9の照射中に撮像用放射線ビーム15を様々な方向から人体1に照射させて当該人体1の内部の透視画像を複数生成し、そして、生成される複数の透視画像に基づいて人体1の内部のCT画像を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体内の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムに関し、とりわけ、治療用放射線ビームの照射中における腫瘍の位置を精度良く確認することができ、このことにより放射線治療の安全性、確実性を高めるとともに患者を安心させることができる放射線治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人体内の治療対象部分、具体的には例えば腫瘍に対して放射線ビームを照射することにより当該腫瘍の治療を行う放射線治療システムについて、様々な種類のものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
従来の放射線治療システムにおいては、人体を載置するための寝台と、この寝台の周りに設けられたいわゆるドーナツ型の回転ガントリ機構とが配置されている。ここで、人体が寝台に載置されたときに、この人体は回転ガントリ機構の中心軸に沿って位置するようになっている。そして、回転ガントリ機構は、このような位置に配置された人体を中心として回転するようになっている。
【0004】
回転ガントリ機構には、寝台に載置された人体に放射線ビーム(例えばX線ビーム)を照射するための放射線ビーム照射器が取り付けられている。そして、人体に対して治療を行う際に、回転ガントリ機構が常時人体の周りを回転することにより、当該回転ガントリ機構に取り付けられた放射線ビーム照射器から人体に対して様々な方向(360°の方向)から放射線ビームが照射されることとなる。このように様々な方向から放射線ビームを人体に照射することにより、人体の正常組織を保護することができるようになる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−51064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような放射線治療システムにおいて放射線治療を行う際には、人体内にある腫瘍に高線量の放射線ビームを吸収させる必要がある。しかしながら、例えば前立腺にある腫瘍はその位置が日々変化し、また肺腫瘍は人体の呼吸に伴ってその位置が周期的に変動する。このような腫瘍の位置の変動幅は2〜3cmを超える場合もある。このため、放射線治療を行う際には、治療の前に腫瘍の位置を確認した上で、放射線ビームの照射範囲の位置決めを行い、その後放射線ビームを腫瘍に照射するようにしている。
【0007】
従来の腫瘍位置の確認方法について以下に説明する。治療用の放射線ビームを腫瘍に照射する前に、あるいは腫瘍に照射した後に、人体に放射線ビーム(X線ビーム)を様々な方向から照射し、人体を透過したこの放射線ビームを検出することにより人体の内部の透視画像(2次元画像)を複数生成し、この生成される複数の透視画像に基づいてコーンビームCT画像を構成する。ここで、コーンビームCT画像は高分解能の3次元画像であり、腫瘍が明瞭に描写され、その位置を精度良く確認することができるようになっている。しかしながら、このような方法では、治療用の放射線ビームを腫瘍に照射する前に、あるいは腫瘍に照射した後に、腫瘍の位置を確認するようにしているので、放射線治療の最中(すなわち、治療用の放射線ビームを腫瘍に照射する最中)の腫瘍の位置を確認することはできておらず、従来の腫瘍位置の確認方法では、あくまで放射線治療の前後において確認された腫瘍の位置から、放射線治療の最中の腫瘍の位置を推定することにとどまっていた。
【0008】
近年では、放射線治療における情報開示の一環として、患者に対して、治療用の放射線ビームが腫瘍に正確に照射されていることを画像で示すことが求められる場合がある。また、一般的には、1回の放射線治療では腫瘍に対する十分な放射線ビームの吸収線量が得られないので通常は20〜30回の放射線治療を行う必要があるが、放射線治療の最中における腫瘍の位置を示すようなCT画像がもし得られれば、このCT画像により次回の放射線治療で人体に放射線ビームを照射する際の治療計画をより良いものにすることができる。
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、人体に対して治療用放射線ビームが照射されている間に、放射線治療の最中における腫瘍の位置を示すようなCT画像を得ることができ、このため治療用放射線ビームの照射中における腫瘍の位置を精度良く確認することができ、このことにより放射線治療の安全性、確実性を高めるとともに患者を安心させることができる放射線治療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、人体内の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置と、前記治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームに直交するよう人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、前記治療用放射線ビーム照射装置および前記人体内撮像装置を、人体を中心として一体的に回転させる回転機構と、前記治療用放射線ビーム照射装置、前記人体内撮像装置および前記回転機構を制御する制御装置であって、前記回転機構によって人体を中心として前記治療用放射線ビーム照射装置および人体内撮像装置を一体的に回転させ、回転している前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に治療用放射線ビームを照射させ、当該治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射されている間に前記人体内撮像装置によって人体に撮像用放射線ビームを様々な方向から照射させて当該人体の内部の透視画像を複数生成し、生成される複数の透視画像に基づいて人体の内部のCT画像を得るような制御を行う制御装置と、を備えたことを特徴とする放射線治療システムである。
【0011】
このような放射線治療システムによれば、回転機構によって人体を中心として治療用放射線ビーム照射装置および人体内撮像装置を一体的に回転させているときに、人体に治療用放射線ビームを照射させるとともに、この治療用放射線ビームの照射中に人体に撮像用放射線ビームを様々な方向から照射させて当該人体の内部の透視画像を複数生成し、そして、生成される複数の透視画像に基づいて人体の内部のCT画像(例えば、コーンビームCT画像)を得ることができる。このように、人体に対して治療用放射線ビームが照射されている間に、放射線治療の最中における腫瘍等の治療対象部分(以下、一例として腫瘍とする)の位置を示すようなCT画像を得ることができるので、治療用放射線ビームの照射中における腫瘍の位置を精度良く確認することができる。そして、このことにより放射線治療の安全性、確実性を高めるとともに患者を安心させることができる。なお、上述の放射線治療システムにおいては人体に対して治療用放射線ビームと撮像用放射線ビームを同時に照射しているが、これらの放射線ビーム同士が互いに干渉して相手の放射線ビームに影響を与えることはほとんどない。なぜならば、治療用放射線ビームと撮像用放射線ビームの線量は大きく異なり、また、治療用放射線ビームの照射方向と撮像用放射線ビームの照射方向は直交しているので、相手の放射線ビームに対する干渉の度合いが最小となるからである。
【0012】
本発明の放射線治療システムにおいては、人体の内部のCT画像を表示する表示機構を更に備え、前記制御装置は、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られる人体の内部のCT画像を前記表示機構に表示させるよう当該表示機構の制御を行うことが好ましい。このことにより、表示機構に人体の内部のCT画像を表示させることができるようになるので、治療用放射線ビームの照射中における腫瘍の位置もこの表示機構に表示させることができるようになり、操作者は当該腫瘍の位置をより確実に確認することができるようになる。
【0013】
本発明の放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、人体の内部のCT画像に、前記治療用放射線ビーム照射装置により照射される治療用放射線ビームの照射範囲を重ね合わせて前記表示機構に表示させるよう制御を行うことが好ましい。このことにより、操作者はCT画像を視認するだけで腫瘍に治療用放射線ビームが正確に照射されているか否かを容易かつ迅速に確認することができるようになる。
【0014】
本発明の放射線治療システムにおいては、前記治療用放射線ビーム照射装置はコリメータを有し、当該コリメータが治療用放射線ビームの照射範囲を変動させるようになっていることが好ましい。とりわけ、前記コリメータはマルチリーフコリメータであることが好ましい。
【0015】
本発明の放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、一回の放射線治療工程において、前記回転機構によって人体を中心として前記治療用放射線ビーム照射装置および前記人体内撮像装置を一回転以上回転させ、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射されている間に前記人体内撮像装置によって人体に撮像用放射線ビームを360°の様々な方向から照射させて当該人体の内部の透視画像を複数生成し、生成される複数の透視画像に基づいて人体の内部のCT画像を得るような制御を行うことが好ましい。この場合、人体に撮像用放射線ビームを360°の様々な方向から照射させて当該人体の内部の透視画像を複数生成しているので、最終的に得られるCT画像において腫瘍の位置を確実かつ精度良く示すことができるようになる。
【0016】
本発明の放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射される前に予め生成される治療計画時CT画像と、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られるCT画像との間の位置ずれ量を算出するようになっていることが好ましい。このことにより、操作者は治療用放射線ビームの照射中に腫瘍の位置ずれが発生したか否かを定量的に判断することができるようになる。
【0017】
本発明の放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、治療計画に基づいて人体に治療用放射線ビームを照射するような制御を行い、前記位置ずれ量が予め設定された設定値よりも大きい場合には、次回の放射線治療で人体に治療用放射線ビームを照射する際の治療計画をこの位置ずれ量に基づいて変更するようになっていることが好ましい。このことにより、治療用放射線ビームを腫瘍に照射した際にこの腫瘍の位置がずれており所望の線量の治療用放射線ビームを腫瘍に照射することができなかった場合であっても、次回の放射線治療時にこのことを補正しながら腫瘍に対して治療用放射線ビームを照射することができるようになる。
【0018】
本発明の放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、人体の内部のCT画像に、前記治療用放射線ビーム照射装置により照射される治療用放射線ビームの線量分布を重ね合わせて前記表示機構に表示させるよう制御を行うことが好ましい。このことにより、腫瘍にどれくらいの線量の治療用放射線ビームが照射されたかを操作者は直接画像で確認することができる。
【0019】
この際に、前記治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームを検出するための治療用放射線ビーム検出器が設置されており、前記治療法放射線ビームの線量分布は、前記治療用放射線ビーム検出器により検出された治療用放射線ビームの境界座標から再計算されたものとなっている。あるいは、前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射される前に予め生成される治療計画時CT画像と、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られるCT画像との間の位置ずれ量を算出し、前記治療法放射線ビームの線量分布は、当該位置ずれ量を用いて治療用放射線ビームの人体に対する入射条件を変更することにより再計算されたものとなっている。あるいは、前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射される前に予め生成される治療計画時CT画像と、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られるCT画像との間の位置ずれ量を算出し、前記治療法放射線ビームの線量分布は、当該位置ずれ量にあわせて治療計画時CT画像の位置を変更することにより再計算されたものとなっている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の放射線治療システムによれば、治療用放射線ビームの照射中における腫瘍の位置を精度良く確認することができ、このことにより放射線治療の安全性、確実性を高めるとともに患者を安心させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。図1乃至図6は、本発明による放射線治療システムの一の実施の形態を示す図である。
このうち、図1は、本発明の一の実施の形態における放射線治療システムの構成を示す概略斜視図であり、図2は、図1に示す放射線治療システムの概略構成図である。また、図3は、図2に示す放射線治療システムにおけるマルチリーフコリメータの概略構成図である。また、図4は、図1乃至図3に示す放射線治療システムの制御装置における一の制御内容を示すフローチャートであり、図5は、図1乃至図3に示す放射線治療システムの制御装置における他の制御内容を示すフローチャートである。図6(a)〜(d)は、図1乃至図3に示す放射線治療システムにおいて得られるコーンビームCT画像である。
【0022】
本実施の形態による放射線治療システムは、人体1の内部の治療対象部分、具体的には例えば肺腫瘍等の腫瘍3に対して放射線ビームを照射することにより、この腫瘍3の治療を行うものである。図1および図2、とりわけ図2に示すように、放射線治療システムは、人体1に撮像用放射線ビーム15を照射する撮像用放射線ビーム照射器13と、撮像用放射線ビーム照射器13から照射され人体1を透過した撮像用放射線ビーム15を受容し、この受容した撮像用放射線ビーム15から透視画像を生成するような撮像用放射線ビーム検出器17と、人体1に治療用放射線ビーム9を照射する治療用放射線ビーム照射器7と、治療用放射線ビーム照射器7から照射され人体1を透過した治療用放射線ビーム9を受容する治療用放射線ビーム検出器34とを備えている。また、撮像用放射線ビーム照射器13や治療用放射線ビーム照射器7等の制御を行うための制御装置11が放射線治療システムに設置されている。ここで、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17により、人体1内の撮像を行うための人体内撮像装置が構成されている。
【0023】
このような放射線治療システムの各構成要素について、図1乃至図3を用いて以下に詳述する。
【0024】
治療用放射線ビーム照射器7は、前述のように人体1内の腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を照射するものである。ここで、治療用放射線ビーム9としては、例えばエネルギーが4MV〜10MV(1MVは百万ボルトである。)の範囲内にあるX線ビームが使用される。とりわけ、治療用放射線ビーム照射器7は、内部に設けられた電子加速部により電子を加速し、この加速された高エネルギーの電子を金属ターゲットに衝突させることにより高エネルギーX線ビームを発生させ、この高エネルギーX線ビームを治療用放射線ビーム9として人体1に照射することが好ましい。治療用放射線ビーム照射器7から照射され人体1を透過した治療用放射線ビーム9は、例えばフラットパネル型の半導体2次元アレイ検出器からなる治療用放射線ビーム検出器34に受容されて検出されるようになっている。
【0025】
また、図2に示すように、治療用放射線ビーム照射器7の近傍には、この治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9の照射範囲を絞るためのマルチリーフコリメータ33が設置されている。マルチリーフコリメータ33は、ケーブル43を介して制御装置11に通信接続されている。当該マルチリーフコリメータ33は、制御装置11からの制御信号に基づいて、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9の照射範囲を経時的に変動させることができるようになっている。
【0026】
マルチリーフコリメータ33について図3を用いて具体的に説明する。図3に示すように、マルチリーフコリメータ33は多数のタングステン製の遮蔽板33sを有している。各遮蔽板(リーフともいう。)33sは、図3の上下方向における幅が5mm〜1cmの範囲内の大きさとなっており、図3の奥行き方向における厚さが約8cmとなっている。各遮蔽板33sは、各々アクチュエータ(図示せず)によって他の遮蔽板33sから独立して一次元方向、すなわち図3の左右方向に移動することができるようになっている。図3において、マルチリーフコリメータ33が上段のマルチリーフコリメータ33aのような態様となっている場合には、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9を完全に遮断し、人体1に治療用放射線ビーム9が照射されることはない。ここで、遮蔽板33sが左右に開いた場合には、中段のマルチリーフコリメータ33bに示すように開口部分(図3の黒塗り部分)が形成され、この開口部分を治療用放射線ビーム9が通過するようになる。さらに、人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射範囲を変動させる場合は、左右一対の遮蔽板33sが図3の中段のマルチリーフコリメータ33bにおける矢印方向に移動する。このようにして、図3の下段のマルチリーフコリメータ33cに示すように開口部分が変化する。このように、腫瘍3の動きに合わせてマルチリーフコリメータ33の態様が変化させることにより、具体的には各遮蔽板33sが適宜移動することにより、人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射範囲を変動させることができる。ここで、このようなマルチリーフコリメータ33の制御は制御装置11からの制御信号に基づいて行われる。
【0027】
人体1内の腫瘍3が小さい場合には、その形状は球形に近いため、治療用放射線ビーム9の照射方向によらず、この治療用放射線ビーム9の照射範囲を固定することができる。しかしながら、腫瘍3が大きい場合には、この腫瘍3は複雑な形状になり、その結果回転ガントリ機構35を回転させた場合に、治療用放射線ビーム9の照射方向から見た腫瘍3の形状が変化する。このため、回転ガントリ機構35の回転中に、例えば図3の中段のマルチリーフコリメータ33bの状態から図3の下段のマルチリーフコリメータ33cの状態となるよう各遮蔽板33sを移動させることにより、常に腫瘍3全体を治療用放射線ビーム9で照射すると共に、腫瘍3の周囲の正常組織には治療用放射線ビーム9が照射されないようにすることができる。なお、このような回転ガントリ機構35の回転中にマルチリーフコリメータ33の各遮蔽板33sを移動させるような治療用放射線ビーム9の照射方法をダイナミック照射方式というが、このようなダイナミック照射方式に限定されることはなく、回転ガントリ機構35の回転中に治療用放射線ビーム9の照射野を一定に保持するような回転照射方式を用いることもできる。
【0028】
撮像用放射線ビーム照射器13は、人体1に対して撮像用放射線ビーム15を照射するものである。具体的には、撮像用放射線ビーム照射器13は、照射範囲に人体1内の腫瘍3を含むよう撮像用放射線ビーム15の照射を行う。ここで、撮像用放射線ビーム照射器13は、内部に設けられたX線管により、100kV程度の電圧で電子を加速し、この加速された電子を金属ターゲットに衝突させることによりX線ビームを発生させ、このX線ビームを撮像用放射線ビーム15として人体1に照射することが好ましい。
【0029】
撮像用放射線ビーム検出器17は、撮像用放射線ビーム照射器13から照射され人体を透過した撮像用放射線ビーム15を受容するものであり、例えばアモルファスシリコンを有するフラットパネル型の半導体2次元アレイ検出器からなる。また、撮像用放射線ビーム検出器17は、受容した撮像用放射線ビーム15から透視画像を生成するようになっている。
【0030】
図1に示すように、治療用放射線ビーム照射器7、撮像用放射線ビーム照射器13、撮像用放射線ビーム検出器17および治療用放射線ビーム検出器34は、いわゆるドーナツ型の回転ガントリ機構35に取り付けられている。また、人体1は、治療を行う際に回転ガントリ機構35の中心軸に沿って位置されるようになっており、回転ガントリ機構35は、このような位置に配置された人体1を中心として図1の矢印方向に回転するようになっている。ここで、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9と、撮像用放射線ビーム照射器13から照射される撮像用放射線ビーム15とがほぼ直交するよう、回転ガントリ機構35に対する治療用放射線ビーム照射器7および撮像用放射線ビーム照射器13の取り付け位置が設定されている(すなわち、回転ガントリ機構35の中心軸に対する治療用放射線ビーム照射器7および撮像用放射線ビーム照射器13の位相差は約90°となっている)。また、治療用放射線ビーム検出器34は、回転ガントリ機構35の中心軸に対して治療用放射線ビーム照射器7の反対側となるよう回転ガントリ機構35に対する取り付け位置が設定されている。同様に、撮像用放射線ビーム検出器17は、回転ガントリ機構35の中心軸に対して撮像用放射線ビーム照射器13の反対側となるよう回転ガントリ機構35に対する取り付け位置が設定されている。
【0031】
ここで、図1および図2に示すように、回転ガントリ機構35の近傍には人体1を載置するための移動可能な寝台39が設けられている。人体1の治療を行う際には、人体1を載置した寝台39を前もって移動させることによりこの人体1を回転ガントリ機構35の中心軸に沿って位置させるようになっている。この寝台39の位置は制御装置11(後述)によって制御されるようになっている。また、回転ガントリ機構35の近傍には、各種治療パラメータを表示するための表示装置37が設けられている。この表示装置37は、制御装置11(後述)から送信された様々な治療パラメータを表示するようになっている。
【0032】
さらに、放射線治療システムには制御装置11が設けられている。この制御装置11は、ケーブル19、23、21、44、43、45を介して、それぞれ治療用放射線ビーム照射器7、撮像用放射線ビーム照射器13、撮像用放射線ビーム検出器17、治療用放射線ビーム検出器34、マルチリーフコリメータ33および移動可能な寝台39に通信接続されている。この制御装置11における制御内容の詳細については後述する。
【0033】
次に、このような構成からなる放射線治療システムの動作について図4のフローチャートを用いて以下に説明する。図4のフローチャートに示すような放射線治療システムの動作は、制御装置11により撮像用放射線ビーム照射器13や治療用放射線ビーム照射器7等が制御されることにより行われるようになっている。
【0034】
まず、人体1の放射線治療を行う前に、治療計画を作成する。具体的には、図1、2に示すような放射線治療システムとは別のCTシステムにより、人体1の内部のCT画像(以下、治療計画時CT画像という。)を生成する。そして、この治療計画時CT画像に基づいて、放射線治療における、治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向や照射範囲、照射線量等の計画を予め作成しておく。
【0035】
次に、人体1を寝台39に乗せ、放射線治療の前に、位置合わせ用のコーンビームCT画像を生成する。具体的には、図4のStep1に示すように、回転ガントリ機構35を一回転させ、その間に撮像用放射線ビーム照射器13により撮像用放射線ビーム15を人体1に照射し続け、人体1を透過した撮像用放射線ビーム15は撮像用放射線ビーム検出器17により受容され、このことにより様々な方向からの人体1の内部の透視画像(2次元画像)を生成する。そして、この生成された複数の透視画像に基づいてコーンビームCT画像を構成する。このようにして得られる位置合わせ用のコーンビームCT画像は図6(a)に示す通りである。ここで、コーンビームCT画像は高分解能の3次元画像であり、腫瘍3が明瞭に描写され、その位置を精度良く確認することができるようになっている。なお、図6(a)において白抜きの十字の線の交差点は、治療用放射線ビーム照射器7から照射されるべき治療用放射線ビーム9の照射範囲の中心を示している。
【0036】
次に、図4のStep2に示すように、制御装置11によって寝台39を移動させることにより、コーンビームCT画像の腫瘍3の位置に治療用放射線ビーム9の照射範囲を合わせるようにする。具体的には、図6(a)に示すコーンビームCT画像において、腫瘍3は白抜きの十字の線の交差点の上方に位置しているが、寝台39を移動させることにより、腫瘍3をこの白抜きの十字の線の交差点に合わせるようにする。図6(b)は、腫瘍3の位置が治療用放射線ビーム9の照射範囲に合わせられたときの、治療用放射線ビーム9の照射前のコーンビームCT画像を示す。
【0037】
そして、図4のStep3に示すように、人体1を中心として回転ガントリ機構35を一回転させ、回転している治療用放射線ビーム照射器7により人体1に治療用放射線ビーム9を様々な方向から照射させる。このときに、上述の回転照射方式またはダイナミック照射方式のうちいずれかの方法が用いられる。また、人体1に対して治療用放射線ビーム9が照射されている間に、撮像用放射線ビーム照射器13により撮像用放射線ビーム15を人体1に照射し続け、人体1を透過した撮像用放射線ビーム15は撮像用放射線ビーム検出器17により受容され、このことにより様々な方向からの人体1の内部の透視画像(2次元画像)を生成する。そして、この生成される複数の透視画像に基づいてコーンビームCT画像を構成する。このようにして得られる治療中のコーンビームCT画像は図6(c)に示す通りである。
【0038】
なお、図4のStep3においては人体1に対して治療用放射線ビーム9と撮像用放射線ビーム15を同時に照射しているが、これらの放射線ビーム9、15同士が互いに干渉して相手の放射線ビームに影響を与えることはほとんどない。なぜならば、上述のように治療用放射線ビーム9と撮像用放射線ビーム15の線量は大きく異なり、また、図2に示すように治療用放射線ビーム9の照射方向と撮像用放射線ビーム15の照射方向は直交しているので、相手の放射線ビームに対する干渉の度合いが最小となるからである。
【0039】
回転ガントリ機構35が回転し終わると、人体1に対する治療用放射線ビーム9および撮像用放射線ビーム15の照射を終了させる。放射線治療終了後における人体1の内部のコーンビームCT画像は図6(d)に示す通りである。そして、制御装置11の制御によって、表示装置37に、治療前や治療中、治療後の人体1の内部のコーンビームCT画像が表示される。すなわち、図6(a)〜(d)に示すコーンビームCT画像が表示装置37に一度に表示される。このことにより、操作者は視認により人体1の内部における腫瘍3の位置をより確実に確認することができるようになる。
【0040】
また、治療用放射線ビーム9の照射中における人体1の内部のコーンビームCT画像を表示装置37に表示させる際に、このコーンビームCT画像に治療用放射線ビーム9の照射範囲を重ね合わせて表示させてもよい。図7は、治療用放射線ビーム9の照射中における人体1の内部のコーンビームCT画像に治療用放射線ビーム9の照射範囲を重ね合わせたときの画像である。このことにより、操作者は、腫瘍3に治療用放射線ビーム9が正確に照射されたことを視認により確認することができるようになる。ここで、図7における治療用放射線ビーム9の照射範囲の境界線は、治療用放射線ビーム9を受容する治療用放射線ビーム検出器34により検出された治療用放射線ビーム9の周辺部50%強度の輪郭を抽出することにより、一意的に決定することができる。なお、図6に示すコーンビームCT画像は治療用放射線ビーム9の中心を通るような平面画像であるので、この平面画像上への投影を考えることにより、図7に示すように、円錐状の治療用放射線ビーム9の境界面が2本の境界線へ変換される。図7においては、この境界線を、対向する2方向に限って表示している。
【0041】
図8は、治療用放射線ビーム9の照射中における人体1の内部の横断面に沿ったコーンビームCT画像である。このような画像では、回転ガントリ機構35による360°の回転時における表示が可能であるので、回転ガントリ機構35による360°の回転中の全ての治療用放射線ビーム9の境界面を表示させることができる。なお、図8においては、画像を見やすくするために、治療用放射線ビーム9の境界面を2方向に限って表示している。
【0042】
その後、図4のStep4に示すように、上述の治療計画時のCT画像の腫瘍3の位置と、複数の透視画像に基づいて得られる図6(c)に示すようなコーンビームCT画像の腫瘍3の位置とを比較し、これらの間の位置ずれ量を算出する。ここで、位置ずれ量としては、X軸、Y軸、Z軸にそれぞれ沿ったX方向、Y方向、Z方向の3つの座標におけるずれの値、およびX軸、Y軸、Z軸をそれぞれ中心とした3つの回転方向におけるずれの値の、合計6つの値が算出される。
このことにより、操作者は治療用放射線ビーム9の照射中に腫瘍3の位置ずれが発生したか否かを定量的に判断することができるようになる。なお、この算出された位置ずれ量は、制御装置11や、放射線治療システムに取り付けられた外付けの記憶媒体等に記憶させることができる。
このようにして、放射線治療システムによる1回の放射線治療工程が終了する。実際は、図4のStep1〜Step4に示すような放射線治療工程が、日を改めて20〜30回程度行われる。
【0043】
次に、放射線治療システムの他の動作について図5のフローチャートを用いて以下に説明する。図5のフローチャートに示すような放射線治療システムの動作は、制御装置11により撮像用放射線ビーム照射器13や治療用放射線ビーム照射器7等が制御されることにより行われるようになっている。
【0044】
図5のフローチャートに示すような放射線治療システムの他の動作において、Step1からStep4までの動作は、上述のような図4のフローチャートにおけるStep1からStep4までの動作と略同一である。この図5のフローチャートに示す動作においては、Step4の後にStep5の動作が追加された点が図4のフローチャートに示す動作と異なっている。
【0045】
すなわち、図5のStep4において、治療計画時のCT画像の腫瘍3の位置と、コーンビームCT画像の腫瘍3の位置との間の位置ずれ量が計算されるが、図5のStep5において、この計算された位置ずれ量が予め設定された設定値よりも大きい場合には、次回以降の放射線治療で人体1に治療用放射線ビーム9を照射する際の治療計画を、この位置ずれ量に基づいて変更する。
【0046】
具体的に説明すると、図5のStep4において計算される位置ずれ量が設定値を超えていた場合には、腫瘍3に対して当初計画された線量の治療用放射線ビーム9が照射されていないため、次回の治療用放射線ビーム9の照射時にこれを補正する必要がある。一般的に、腫瘍3の位置がずれた状態で治療用放射線ビーム9が照射された時には、腫瘍3の一部分(または全部)に十分な線量の治療用放射線ビーム9が付与されず、腫瘍3の内部で極めて不均一な治療用放射線ビーム9の線量分布が生成されてしまう。ここで、腫瘍3の位置ずれ量を定量化することにより、治療用放射線ビーム9の線量分布を制御装置11で計算することができるようになるので、次回の治療用放射線ビーム9の照射において、前回の不均一な腫瘍3内の線量分布を補正するような線量分布の治療用放射線ビーム9を腫瘍3に与えることができる。すなわち、前回の線量分布と今回の線量分布とを合計した線量分布が均一になるように、治療用放射線ビーム9の照射範囲の補正を行うことができる。
【0047】
以上のように図1乃至図3に示すような本実施の形態の放射線治療システムによれば、回転ガントリ機構35によって人体1を中心として治療用放射線ビーム照射器7、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17を一体的に回転させているときに、人体1に治療用放射線ビーム9を照射させるとともに、この治療用放射線ビーム9の照射中に人体1に撮像用放射線ビーム15を様々な方向から照射させて当該人体1の内部の透視画像を複数生成し、そして、生成される複数の透視画像に基づいて人体1の内部のコーンビームCT画像を得ることができる。このように、人体1に対して治療用放射線ビーム9が照射されている間に、放射線治療の最中における腫瘍3の位置を示すようなコーンビームCT画像を得ることができるので、治療用放射線ビーム9の照射中における腫瘍3の位置を精度良く確認することができる。そして、このことにより放射線治療の安全性、確実性を高めるとともに患者を安心させることができる。
【0048】
なお、本実施の形態による放射線治療システムは、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
【0049】
例えば、上述の態様では人体1の腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を照射する際に回転ガントリ機構35を人体1に対して一回転させているが、1回の放射線治療における回転ガントリ機構35の回転数は一回転以上であれば特に限定されることはない。さらに、撮像用放射線ビーム15により生成される複数の透視画像からコーンビームCT画像を構成することができるのであれば、回転ガントリ機構35の回転数を一回転より少ない例えば半回転とすることもできる。
【0050】
また、撮像用放射線ビーム15により生成される複数の透視画像から構成されるCT画像としてはコーンビームCT画像が望ましいが、他の種類のCT画像が人体内撮像装置によって得られるようになっていてもよい。
【0051】
また、他の変形例としては、表示装置37にコーンビームCT画像を表示させる際に、図9に示すように、図8に示すような人体1の内部の横断面に沿ったコーンビームCT画像に治療用放射線ビーム9の線量分布を重ね合わせて表示するようにしてもよい。図9に示す画像の線量分布は三重の枠線から構成されているが、中心に近い枠線から順に、処方線量の100%、90%、80%の等線量線となっている。図10のフローチャートに示すように、このような治療用放射線ビーム9の線量分布は、治療用放射線ビーム検出器34により検出された治療用放射線ビーム9の境界座標から再計算されたものとなっている(Step1)。このように、コーンビームCT画像に治療用放射線ビーム9の線量分布を重ね合わせて表示することにより(Step2)、腫瘍3にどれくらいの線量の治療用放射線ビーム9が照射されたかを操作者は直接画像で確認することができる。
【0052】
ここで、治療用放射線ビーム検出器34により検出された治療用放射線ビーム9の境界座標から線量分布を再計算する方法について以下に説明する。
図7や図8のCT画像に示すように、治療用放射線ビーム9の照射中における人体1の内部のコーンビームCT画像に治療用放射線ビーム9の境界線が重ね合わせられたときに、この図7や図8に示すようなCT画像における治療用放射線ビーム9の入射位置に対して体内線量を再計算し、このようにして図9に示すような線量分布を再計算する。なお、この場合は、治療計画時のCT画像を用いて線量分布を再計算することとなるが、コーンビームCT画像を用いて線量分布を計算してもよい。
【0053】
また、治療用放射線ビーム9の線量分布の他の再計算方法として、図11のフローチャートに示すように、図4や図5のStep4において計算された位置ずれ量を用いて治療用放射線ビーム9の人体1に対する入射条件を変更して線量分布を再計算する方法もある。この場合は、治療計画時のCT画像を固定した画像座標系で、線量計算を行うことになる。
【0054】
また、治療用放射線ビーム9の線量分布の更に他の再計算方法として、図12のフローチャートに示すように、治療用放射線ビーム9の入射ビーム座標を変更せずに、前述の位置ずれ量にあわせて治療計画時のCT画像の位置を変更することにより線量分布を再計算する方法もある。
【0055】
いずれの再計算方法であっても、治療用放射線ビーム9の線量分布をコーンビームCT画像に重ね合わせることにより、正確な位置に治療用放射線ビーム9の線量を集中させることができたかどうかを検証することになる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一の実施の形態における放射線治療システムの構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す放射線治療システムの概略構成図である。
【図3】図2に示す放射線治療システムにおけるマルチリーフコリメータの概略構成図である。
【図4】図1乃至図3に示す放射線治療システムの制御装置における一の制御内容を示すフローチャートである。
【図5】図1乃至図3に示す放射線治療システムの制御装置における他の制御内容を示すフローチャートである。
【図6】(a)〜(d)は、図1乃至図3に示す放射線治療システムにおいて得られるX線写真である。
【図7】治療用放射線ビームの照射中における人体の内部のコーンビームCT画像に治療用放射線ビームの照射範囲を重ね合わせたときのX線写真である。
【図8】治療用放射線ビームの照射中における人体の内部の横断面に沿ったコーンビームCT画像に治療用放射線ビームの照射範囲を重ね合わせたときのX線写真である。
【図9】図8に示すような人体の内部の横断面に沿ったコーンビームCT画像に、治療用放射線ビームの線量分布を重ね合わせて表示したX線写真である。
【図10】コーンビームCT画像に、治療用放射線ビームの線量分布を重ね合わせて表示するときのフローチャートである。
【図11】コーンビームCT画像に、治療用放射線ビームの線量分布を重ね合わせて表示するときの他のフローチャートである。
【図12】コーンビームCT画像に、治療用放射線ビームの線量分布を重ね合わせて表示するときの更に他のフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1 人体
3 腫瘍
7 治療用放射線ビーム照射器
9 治療用放射線ビーム
11 制御装置
13 撮像用放射線ビーム照射器
15 撮像用放射線ビーム
17 撮像用放射線ビーム検出器
19、21、23 ケーブル
33 マルチリーフコリメータ
33s 遮蔽板(リーフ)
34 治療用放射線ビーム検出器
35 回転ガントリ機構
37 表示装置
39 寝台
43、44、45 ケーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体内の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムに関し、とりわけ、治療用放射線ビームの照射中における腫瘍の位置を精度良く確認することができ、このことにより放射線治療の安全性、確実性を高めるとともに患者を安心させることができる放射線治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人体内の治療対象部分、具体的には例えば腫瘍に対して放射線ビームを照射することにより当該腫瘍の治療を行う放射線治療システムについて、様々な種類のものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
従来の放射線治療システムにおいては、人体を載置するための寝台と、この寝台の周りに設けられたいわゆるドーナツ型の回転ガントリ機構とが配置されている。ここで、人体が寝台に載置されたときに、この人体は回転ガントリ機構の中心軸に沿って位置するようになっている。そして、回転ガントリ機構は、このような位置に配置された人体を中心として回転するようになっている。
【0004】
回転ガントリ機構には、寝台に載置された人体に放射線ビーム(例えばX線ビーム)を照射するための放射線ビーム照射器が取り付けられている。そして、人体に対して治療を行う際に、回転ガントリ機構が常時人体の周りを回転することにより、当該回転ガントリ機構に取り付けられた放射線ビーム照射器から人体に対して様々な方向(360°の方向)から放射線ビームが照射されることとなる。このように様々な方向から放射線ビームを人体に照射することにより、人体の正常組織を保護することができるようになる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−51064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような放射線治療システムにおいて放射線治療を行う際には、人体内にある腫瘍に高線量の放射線ビームを吸収させる必要がある。しかしながら、例えば前立腺にある腫瘍はその位置が日々変化し、また肺腫瘍は人体の呼吸に伴ってその位置が周期的に変動する。このような腫瘍の位置の変動幅は2〜3cmを超える場合もある。このため、放射線治療を行う際には、治療の前に腫瘍の位置を確認した上で、放射線ビームの照射範囲の位置決めを行い、その後放射線ビームを腫瘍に照射するようにしている。
【0007】
従来の腫瘍位置の確認方法について以下に説明する。治療用の放射線ビームを腫瘍に照射する前に、あるいは腫瘍に照射した後に、人体に放射線ビーム(X線ビーム)を様々な方向から照射し、人体を透過したこの放射線ビームを検出することにより人体の内部の透視画像(2次元画像)を複数生成し、この生成される複数の透視画像に基づいてコーンビームCT画像を構成する。ここで、コーンビームCT画像は高分解能の3次元画像であり、腫瘍が明瞭に描写され、その位置を精度良く確認することができるようになっている。しかしながら、このような方法では、治療用の放射線ビームを腫瘍に照射する前に、あるいは腫瘍に照射した後に、腫瘍の位置を確認するようにしているので、放射線治療の最中(すなわち、治療用の放射線ビームを腫瘍に照射する最中)の腫瘍の位置を確認することはできておらず、従来の腫瘍位置の確認方法では、あくまで放射線治療の前後において確認された腫瘍の位置から、放射線治療の最中の腫瘍の位置を推定することにとどまっていた。
【0008】
近年では、放射線治療における情報開示の一環として、患者に対して、治療用の放射線ビームが腫瘍に正確に照射されていることを画像で示すことが求められる場合がある。また、一般的には、1回の放射線治療では腫瘍に対する十分な放射線ビームの吸収線量が得られないので通常は20〜30回の放射線治療を行う必要があるが、放射線治療の最中における腫瘍の位置を示すようなCT画像がもし得られれば、このCT画像により次回の放射線治療で人体に放射線ビームを照射する際の治療計画をより良いものにすることができる。
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、人体に対して治療用放射線ビームが照射されている間に、放射線治療の最中における腫瘍の位置を示すようなCT画像を得ることができ、このため治療用放射線ビームの照射中における腫瘍の位置を精度良く確認することができ、このことにより放射線治療の安全性、確実性を高めるとともに患者を安心させることができる放射線治療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、人体内の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置と、前記治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームに直交するよう人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、前記治療用放射線ビーム照射装置および前記人体内撮像装置を、人体を中心として一体的に回転させる回転機構と、前記治療用放射線ビーム照射装置、前記人体内撮像装置および前記回転機構を制御する制御装置であって、前記回転機構によって人体を中心として前記治療用放射線ビーム照射装置および人体内撮像装置を一体的に回転させ、回転している前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に治療用放射線ビームを照射させ、当該治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射されている間に前記人体内撮像装置によって人体に撮像用放射線ビームを様々な方向から照射させて当該人体の内部の透視画像を複数生成し、生成される複数の透視画像に基づいて人体の内部のCT画像を得るような制御を行う制御装置と、を備えたことを特徴とする放射線治療システムである。
【0011】
このような放射線治療システムによれば、回転機構によって人体を中心として治療用放射線ビーム照射装置および人体内撮像装置を一体的に回転させているときに、人体に治療用放射線ビームを照射させるとともに、この治療用放射線ビームの照射中に人体に撮像用放射線ビームを様々な方向から照射させて当該人体の内部の透視画像を複数生成し、そして、生成される複数の透視画像に基づいて人体の内部のCT画像(例えば、コーンビームCT画像)を得ることができる。このように、人体に対して治療用放射線ビームが照射されている間に、放射線治療の最中における腫瘍等の治療対象部分(以下、一例として腫瘍とする)の位置を示すようなCT画像を得ることができるので、治療用放射線ビームの照射中における腫瘍の位置を精度良く確認することができる。そして、このことにより放射線治療の安全性、確実性を高めるとともに患者を安心させることができる。なお、上述の放射線治療システムにおいては人体に対して治療用放射線ビームと撮像用放射線ビームを同時に照射しているが、これらの放射線ビーム同士が互いに干渉して相手の放射線ビームに影響を与えることはほとんどない。なぜならば、治療用放射線ビームと撮像用放射線ビームの線量は大きく異なり、また、治療用放射線ビームの照射方向と撮像用放射線ビームの照射方向は直交しているので、相手の放射線ビームに対する干渉の度合いが最小となるからである。
【0012】
本発明の放射線治療システムにおいては、人体の内部のCT画像を表示する表示機構を更に備え、前記制御装置は、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られる人体の内部のCT画像を前記表示機構に表示させるよう当該表示機構の制御を行うことが好ましい。このことにより、表示機構に人体の内部のCT画像を表示させることができるようになるので、治療用放射線ビームの照射中における腫瘍の位置もこの表示機構に表示させることができるようになり、操作者は当該腫瘍の位置をより確実に確認することができるようになる。
【0013】
本発明の放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、人体の内部のCT画像に、前記治療用放射線ビーム照射装置により照射される治療用放射線ビームの照射範囲を重ね合わせて前記表示機構に表示させるよう制御を行うことが好ましい。このことにより、操作者はCT画像を視認するだけで腫瘍に治療用放射線ビームが正確に照射されているか否かを容易かつ迅速に確認することができるようになる。
【0014】
本発明の放射線治療システムにおいては、前記治療用放射線ビーム照射装置はコリメータを有し、当該コリメータが治療用放射線ビームの照射範囲を変動させるようになっていることが好ましい。とりわけ、前記コリメータはマルチリーフコリメータであることが好ましい。
【0015】
本発明の放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、一回の放射線治療工程において、前記回転機構によって人体を中心として前記治療用放射線ビーム照射装置および前記人体内撮像装置を一回転以上回転させ、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射されている間に前記人体内撮像装置によって人体に撮像用放射線ビームを360°の様々な方向から照射させて当該人体の内部の透視画像を複数生成し、生成される複数の透視画像に基づいて人体の内部のCT画像を得るような制御を行うことが好ましい。この場合、人体に撮像用放射線ビームを360°の様々な方向から照射させて当該人体の内部の透視画像を複数生成しているので、最終的に得られるCT画像において腫瘍の位置を確実かつ精度良く示すことができるようになる。
【0016】
本発明の放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射される前に予め生成される治療計画時CT画像と、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られるCT画像との間の位置ずれ量を算出するようになっていることが好ましい。このことにより、操作者は治療用放射線ビームの照射中に腫瘍の位置ずれが発生したか否かを定量的に判断することができるようになる。
【0017】
本発明の放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、治療計画に基づいて人体に治療用放射線ビームを照射するような制御を行い、前記位置ずれ量が予め設定された設定値よりも大きい場合には、次回の放射線治療で人体に治療用放射線ビームを照射する際の治療計画をこの位置ずれ量に基づいて変更するようになっていることが好ましい。このことにより、治療用放射線ビームを腫瘍に照射した際にこの腫瘍の位置がずれており所望の線量の治療用放射線ビームを腫瘍に照射することができなかった場合であっても、次回の放射線治療時にこのことを補正しながら腫瘍に対して治療用放射線ビームを照射することができるようになる。
【0018】
本発明の放射線治療システムにおいては、前記制御装置は、人体の内部のCT画像に、前記治療用放射線ビーム照射装置により照射される治療用放射線ビームの線量分布を重ね合わせて前記表示機構に表示させるよう制御を行うことが好ましい。このことにより、腫瘍にどれくらいの線量の治療用放射線ビームが照射されたかを操作者は直接画像で確認することができる。
【0019】
この際に、前記治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームを検出するための治療用放射線ビーム検出器が設置されており、前記治療法放射線ビームの線量分布は、前記治療用放射線ビーム検出器により検出された治療用放射線ビームの境界座標から再計算されたものとなっている。あるいは、前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射される前に予め生成される治療計画時CT画像と、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られるCT画像との間の位置ずれ量を算出し、前記治療法放射線ビームの線量分布は、当該位置ずれ量を用いて治療用放射線ビームの人体に対する入射条件を変更することにより再計算されたものとなっている。あるいは、前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射される前に予め生成される治療計画時CT画像と、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られるCT画像との間の位置ずれ量を算出し、前記治療法放射線ビームの線量分布は、当該位置ずれ量にあわせて治療計画時CT画像の位置を変更することにより再計算されたものとなっている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の放射線治療システムによれば、治療用放射線ビームの照射中における腫瘍の位置を精度良く確認することができ、このことにより放射線治療の安全性、確実性を高めるとともに患者を安心させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。図1乃至図6は、本発明による放射線治療システムの一の実施の形態を示す図である。
このうち、図1は、本発明の一の実施の形態における放射線治療システムの構成を示す概略斜視図であり、図2は、図1に示す放射線治療システムの概略構成図である。また、図3は、図2に示す放射線治療システムにおけるマルチリーフコリメータの概略構成図である。また、図4は、図1乃至図3に示す放射線治療システムの制御装置における一の制御内容を示すフローチャートであり、図5は、図1乃至図3に示す放射線治療システムの制御装置における他の制御内容を示すフローチャートである。図6(a)〜(d)は、図1乃至図3に示す放射線治療システムにおいて得られるコーンビームCT画像である。
【0022】
本実施の形態による放射線治療システムは、人体1の内部の治療対象部分、具体的には例えば肺腫瘍等の腫瘍3に対して放射線ビームを照射することにより、この腫瘍3の治療を行うものである。図1および図2、とりわけ図2に示すように、放射線治療システムは、人体1に撮像用放射線ビーム15を照射する撮像用放射線ビーム照射器13と、撮像用放射線ビーム照射器13から照射され人体1を透過した撮像用放射線ビーム15を受容し、この受容した撮像用放射線ビーム15から透視画像を生成するような撮像用放射線ビーム検出器17と、人体1に治療用放射線ビーム9を照射する治療用放射線ビーム照射器7と、治療用放射線ビーム照射器7から照射され人体1を透過した治療用放射線ビーム9を受容する治療用放射線ビーム検出器34とを備えている。また、撮像用放射線ビーム照射器13や治療用放射線ビーム照射器7等の制御を行うための制御装置11が放射線治療システムに設置されている。ここで、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17により、人体1内の撮像を行うための人体内撮像装置が構成されている。
【0023】
このような放射線治療システムの各構成要素について、図1乃至図3を用いて以下に詳述する。
【0024】
治療用放射線ビーム照射器7は、前述のように人体1内の腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を照射するものである。ここで、治療用放射線ビーム9としては、例えばエネルギーが4MV〜10MV(1MVは百万ボルトである。)の範囲内にあるX線ビームが使用される。とりわけ、治療用放射線ビーム照射器7は、内部に設けられた電子加速部により電子を加速し、この加速された高エネルギーの電子を金属ターゲットに衝突させることにより高エネルギーX線ビームを発生させ、この高エネルギーX線ビームを治療用放射線ビーム9として人体1に照射することが好ましい。治療用放射線ビーム照射器7から照射され人体1を透過した治療用放射線ビーム9は、例えばフラットパネル型の半導体2次元アレイ検出器からなる治療用放射線ビーム検出器34に受容されて検出されるようになっている。
【0025】
また、図2に示すように、治療用放射線ビーム照射器7の近傍には、この治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9の照射範囲を絞るためのマルチリーフコリメータ33が設置されている。マルチリーフコリメータ33は、ケーブル43を介して制御装置11に通信接続されている。当該マルチリーフコリメータ33は、制御装置11からの制御信号に基づいて、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9の照射範囲を経時的に変動させることができるようになっている。
【0026】
マルチリーフコリメータ33について図3を用いて具体的に説明する。図3に示すように、マルチリーフコリメータ33は多数のタングステン製の遮蔽板33sを有している。各遮蔽板(リーフともいう。)33sは、図3の上下方向における幅が5mm〜1cmの範囲内の大きさとなっており、図3の奥行き方向における厚さが約8cmとなっている。各遮蔽板33sは、各々アクチュエータ(図示せず)によって他の遮蔽板33sから独立して一次元方向、すなわち図3の左右方向に移動することができるようになっている。図3において、マルチリーフコリメータ33が上段のマルチリーフコリメータ33aのような態様となっている場合には、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9を完全に遮断し、人体1に治療用放射線ビーム9が照射されることはない。ここで、遮蔽板33sが左右に開いた場合には、中段のマルチリーフコリメータ33bに示すように開口部分(図3の黒塗り部分)が形成され、この開口部分を治療用放射線ビーム9が通過するようになる。さらに、人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射範囲を変動させる場合は、左右一対の遮蔽板33sが図3の中段のマルチリーフコリメータ33bにおける矢印方向に移動する。このようにして、図3の下段のマルチリーフコリメータ33cに示すように開口部分が変化する。このように、腫瘍3の動きに合わせてマルチリーフコリメータ33の態様が変化させることにより、具体的には各遮蔽板33sが適宜移動することにより、人体1に対する治療用放射線ビーム9の照射範囲を変動させることができる。ここで、このようなマルチリーフコリメータ33の制御は制御装置11からの制御信号に基づいて行われる。
【0027】
人体1内の腫瘍3が小さい場合には、その形状は球形に近いため、治療用放射線ビーム9の照射方向によらず、この治療用放射線ビーム9の照射範囲を固定することができる。しかしながら、腫瘍3が大きい場合には、この腫瘍3は複雑な形状になり、その結果回転ガントリ機構35を回転させた場合に、治療用放射線ビーム9の照射方向から見た腫瘍3の形状が変化する。このため、回転ガントリ機構35の回転中に、例えば図3の中段のマルチリーフコリメータ33bの状態から図3の下段のマルチリーフコリメータ33cの状態となるよう各遮蔽板33sを移動させることにより、常に腫瘍3全体を治療用放射線ビーム9で照射すると共に、腫瘍3の周囲の正常組織には治療用放射線ビーム9が照射されないようにすることができる。なお、このような回転ガントリ機構35の回転中にマルチリーフコリメータ33の各遮蔽板33sを移動させるような治療用放射線ビーム9の照射方法をダイナミック照射方式というが、このようなダイナミック照射方式に限定されることはなく、回転ガントリ機構35の回転中に治療用放射線ビーム9の照射野を一定に保持するような回転照射方式を用いることもできる。
【0028】
撮像用放射線ビーム照射器13は、人体1に対して撮像用放射線ビーム15を照射するものである。具体的には、撮像用放射線ビーム照射器13は、照射範囲に人体1内の腫瘍3を含むよう撮像用放射線ビーム15の照射を行う。ここで、撮像用放射線ビーム照射器13は、内部に設けられたX線管により、100kV程度の電圧で電子を加速し、この加速された電子を金属ターゲットに衝突させることによりX線ビームを発生させ、このX線ビームを撮像用放射線ビーム15として人体1に照射することが好ましい。
【0029】
撮像用放射線ビーム検出器17は、撮像用放射線ビーム照射器13から照射され人体を透過した撮像用放射線ビーム15を受容するものであり、例えばアモルファスシリコンを有するフラットパネル型の半導体2次元アレイ検出器からなる。また、撮像用放射線ビーム検出器17は、受容した撮像用放射線ビーム15から透視画像を生成するようになっている。
【0030】
図1に示すように、治療用放射線ビーム照射器7、撮像用放射線ビーム照射器13、撮像用放射線ビーム検出器17および治療用放射線ビーム検出器34は、いわゆるドーナツ型の回転ガントリ機構35に取り付けられている。また、人体1は、治療を行う際に回転ガントリ機構35の中心軸に沿って位置されるようになっており、回転ガントリ機構35は、このような位置に配置された人体1を中心として図1の矢印方向に回転するようになっている。ここで、治療用放射線ビーム照射器7から照射される治療用放射線ビーム9と、撮像用放射線ビーム照射器13から照射される撮像用放射線ビーム15とがほぼ直交するよう、回転ガントリ機構35に対する治療用放射線ビーム照射器7および撮像用放射線ビーム照射器13の取り付け位置が設定されている(すなわち、回転ガントリ機構35の中心軸に対する治療用放射線ビーム照射器7および撮像用放射線ビーム照射器13の位相差は約90°となっている)。また、治療用放射線ビーム検出器34は、回転ガントリ機構35の中心軸に対して治療用放射線ビーム照射器7の反対側となるよう回転ガントリ機構35に対する取り付け位置が設定されている。同様に、撮像用放射線ビーム検出器17は、回転ガントリ機構35の中心軸に対して撮像用放射線ビーム照射器13の反対側となるよう回転ガントリ機構35に対する取り付け位置が設定されている。
【0031】
ここで、図1および図2に示すように、回転ガントリ機構35の近傍には人体1を載置するための移動可能な寝台39が設けられている。人体1の治療を行う際には、人体1を載置した寝台39を前もって移動させることによりこの人体1を回転ガントリ機構35の中心軸に沿って位置させるようになっている。この寝台39の位置は制御装置11(後述)によって制御されるようになっている。また、回転ガントリ機構35の近傍には、各種治療パラメータを表示するための表示装置37が設けられている。この表示装置37は、制御装置11(後述)から送信された様々な治療パラメータを表示するようになっている。
【0032】
さらに、放射線治療システムには制御装置11が設けられている。この制御装置11は、ケーブル19、23、21、44、43、45を介して、それぞれ治療用放射線ビーム照射器7、撮像用放射線ビーム照射器13、撮像用放射線ビーム検出器17、治療用放射線ビーム検出器34、マルチリーフコリメータ33および移動可能な寝台39に通信接続されている。この制御装置11における制御内容の詳細については後述する。
【0033】
次に、このような構成からなる放射線治療システムの動作について図4のフローチャートを用いて以下に説明する。図4のフローチャートに示すような放射線治療システムの動作は、制御装置11により撮像用放射線ビーム照射器13や治療用放射線ビーム照射器7等が制御されることにより行われるようになっている。
【0034】
まず、人体1の放射線治療を行う前に、治療計画を作成する。具体的には、図1、2に示すような放射線治療システムとは別のCTシステムにより、人体1の内部のCT画像(以下、治療計画時CT画像という。)を生成する。そして、この治療計画時CT画像に基づいて、放射線治療における、治療用放射線ビーム9の、人体1の腫瘍3に対する照射方向や照射範囲、照射線量等の計画を予め作成しておく。
【0035】
次に、人体1を寝台39に乗せ、放射線治療の前に、位置合わせ用のコーンビームCT画像を生成する。具体的には、図4のStep1に示すように、回転ガントリ機構35を一回転させ、その間に撮像用放射線ビーム照射器13により撮像用放射線ビーム15を人体1に照射し続け、人体1を透過した撮像用放射線ビーム15は撮像用放射線ビーム検出器17により受容され、このことにより様々な方向からの人体1の内部の透視画像(2次元画像)を生成する。そして、この生成された複数の透視画像に基づいてコーンビームCT画像を構成する。このようにして得られる位置合わせ用のコーンビームCT画像は図6(a)に示す通りである。ここで、コーンビームCT画像は高分解能の3次元画像であり、腫瘍3が明瞭に描写され、その位置を精度良く確認することができるようになっている。なお、図6(a)において白抜きの十字の線の交差点は、治療用放射線ビーム照射器7から照射されるべき治療用放射線ビーム9の照射範囲の中心を示している。
【0036】
次に、図4のStep2に示すように、制御装置11によって寝台39を移動させることにより、コーンビームCT画像の腫瘍3の位置に治療用放射線ビーム9の照射範囲を合わせるようにする。具体的には、図6(a)に示すコーンビームCT画像において、腫瘍3は白抜きの十字の線の交差点の上方に位置しているが、寝台39を移動させることにより、腫瘍3をこの白抜きの十字の線の交差点に合わせるようにする。図6(b)は、腫瘍3の位置が治療用放射線ビーム9の照射範囲に合わせられたときの、治療用放射線ビーム9の照射前のコーンビームCT画像を示す。
【0037】
そして、図4のStep3に示すように、人体1を中心として回転ガントリ機構35を一回転させ、回転している治療用放射線ビーム照射器7により人体1に治療用放射線ビーム9を様々な方向から照射させる。このときに、上述の回転照射方式またはダイナミック照射方式のうちいずれかの方法が用いられる。また、人体1に対して治療用放射線ビーム9が照射されている間に、撮像用放射線ビーム照射器13により撮像用放射線ビーム15を人体1に照射し続け、人体1を透過した撮像用放射線ビーム15は撮像用放射線ビーム検出器17により受容され、このことにより様々な方向からの人体1の内部の透視画像(2次元画像)を生成する。そして、この生成される複数の透視画像に基づいてコーンビームCT画像を構成する。このようにして得られる治療中のコーンビームCT画像は図6(c)に示す通りである。
【0038】
なお、図4のStep3においては人体1に対して治療用放射線ビーム9と撮像用放射線ビーム15を同時に照射しているが、これらの放射線ビーム9、15同士が互いに干渉して相手の放射線ビームに影響を与えることはほとんどない。なぜならば、上述のように治療用放射線ビーム9と撮像用放射線ビーム15の線量は大きく異なり、また、図2に示すように治療用放射線ビーム9の照射方向と撮像用放射線ビーム15の照射方向は直交しているので、相手の放射線ビームに対する干渉の度合いが最小となるからである。
【0039】
回転ガントリ機構35が回転し終わると、人体1に対する治療用放射線ビーム9および撮像用放射線ビーム15の照射を終了させる。放射線治療終了後における人体1の内部のコーンビームCT画像は図6(d)に示す通りである。そして、制御装置11の制御によって、表示装置37に、治療前や治療中、治療後の人体1の内部のコーンビームCT画像が表示される。すなわち、図6(a)〜(d)に示すコーンビームCT画像が表示装置37に一度に表示される。このことにより、操作者は視認により人体1の内部における腫瘍3の位置をより確実に確認することができるようになる。
【0040】
また、治療用放射線ビーム9の照射中における人体1の内部のコーンビームCT画像を表示装置37に表示させる際に、このコーンビームCT画像に治療用放射線ビーム9の照射範囲を重ね合わせて表示させてもよい。図7は、治療用放射線ビーム9の照射中における人体1の内部のコーンビームCT画像に治療用放射線ビーム9の照射範囲を重ね合わせたときの画像である。このことにより、操作者は、腫瘍3に治療用放射線ビーム9が正確に照射されたことを視認により確認することができるようになる。ここで、図7における治療用放射線ビーム9の照射範囲の境界線は、治療用放射線ビーム9を受容する治療用放射線ビーム検出器34により検出された治療用放射線ビーム9の周辺部50%強度の輪郭を抽出することにより、一意的に決定することができる。なお、図6に示すコーンビームCT画像は治療用放射線ビーム9の中心を通るような平面画像であるので、この平面画像上への投影を考えることにより、図7に示すように、円錐状の治療用放射線ビーム9の境界面が2本の境界線へ変換される。図7においては、この境界線を、対向する2方向に限って表示している。
【0041】
図8は、治療用放射線ビーム9の照射中における人体1の内部の横断面に沿ったコーンビームCT画像である。このような画像では、回転ガントリ機構35による360°の回転時における表示が可能であるので、回転ガントリ機構35による360°の回転中の全ての治療用放射線ビーム9の境界面を表示させることができる。なお、図8においては、画像を見やすくするために、治療用放射線ビーム9の境界面を2方向に限って表示している。
【0042】
その後、図4のStep4に示すように、上述の治療計画時のCT画像の腫瘍3の位置と、複数の透視画像に基づいて得られる図6(c)に示すようなコーンビームCT画像の腫瘍3の位置とを比較し、これらの間の位置ずれ量を算出する。ここで、位置ずれ量としては、X軸、Y軸、Z軸にそれぞれ沿ったX方向、Y方向、Z方向の3つの座標におけるずれの値、およびX軸、Y軸、Z軸をそれぞれ中心とした3つの回転方向におけるずれの値の、合計6つの値が算出される。
このことにより、操作者は治療用放射線ビーム9の照射中に腫瘍3の位置ずれが発生したか否かを定量的に判断することができるようになる。なお、この算出された位置ずれ量は、制御装置11や、放射線治療システムに取り付けられた外付けの記憶媒体等に記憶させることができる。
このようにして、放射線治療システムによる1回の放射線治療工程が終了する。実際は、図4のStep1〜Step4に示すような放射線治療工程が、日を改めて20〜30回程度行われる。
【0043】
次に、放射線治療システムの他の動作について図5のフローチャートを用いて以下に説明する。図5のフローチャートに示すような放射線治療システムの動作は、制御装置11により撮像用放射線ビーム照射器13や治療用放射線ビーム照射器7等が制御されることにより行われるようになっている。
【0044】
図5のフローチャートに示すような放射線治療システムの他の動作において、Step1からStep4までの動作は、上述のような図4のフローチャートにおけるStep1からStep4までの動作と略同一である。この図5のフローチャートに示す動作においては、Step4の後にStep5の動作が追加された点が図4のフローチャートに示す動作と異なっている。
【0045】
すなわち、図5のStep4において、治療計画時のCT画像の腫瘍3の位置と、コーンビームCT画像の腫瘍3の位置との間の位置ずれ量が計算されるが、図5のStep5において、この計算された位置ずれ量が予め設定された設定値よりも大きい場合には、次回以降の放射線治療で人体1に治療用放射線ビーム9を照射する際の治療計画を、この位置ずれ量に基づいて変更する。
【0046】
具体的に説明すると、図5のStep4において計算される位置ずれ量が設定値を超えていた場合には、腫瘍3に対して当初計画された線量の治療用放射線ビーム9が照射されていないため、次回の治療用放射線ビーム9の照射時にこれを補正する必要がある。一般的に、腫瘍3の位置がずれた状態で治療用放射線ビーム9が照射された時には、腫瘍3の一部分(または全部)に十分な線量の治療用放射線ビーム9が付与されず、腫瘍3の内部で極めて不均一な治療用放射線ビーム9の線量分布が生成されてしまう。ここで、腫瘍3の位置ずれ量を定量化することにより、治療用放射線ビーム9の線量分布を制御装置11で計算することができるようになるので、次回の治療用放射線ビーム9の照射において、前回の不均一な腫瘍3内の線量分布を補正するような線量分布の治療用放射線ビーム9を腫瘍3に与えることができる。すなわち、前回の線量分布と今回の線量分布とを合計した線量分布が均一になるように、治療用放射線ビーム9の照射範囲の補正を行うことができる。
【0047】
以上のように図1乃至図3に示すような本実施の形態の放射線治療システムによれば、回転ガントリ機構35によって人体1を中心として治療用放射線ビーム照射器7、撮像用放射線ビーム照射器13および撮像用放射線ビーム検出器17を一体的に回転させているときに、人体1に治療用放射線ビーム9を照射させるとともに、この治療用放射線ビーム9の照射中に人体1に撮像用放射線ビーム15を様々な方向から照射させて当該人体1の内部の透視画像を複数生成し、そして、生成される複数の透視画像に基づいて人体1の内部のコーンビームCT画像を得ることができる。このように、人体1に対して治療用放射線ビーム9が照射されている間に、放射線治療の最中における腫瘍3の位置を示すようなコーンビームCT画像を得ることができるので、治療用放射線ビーム9の照射中における腫瘍3の位置を精度良く確認することができる。そして、このことにより放射線治療の安全性、確実性を高めるとともに患者を安心させることができる。
【0048】
なお、本実施の形態による放射線治療システムは、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
【0049】
例えば、上述の態様では人体1の腫瘍3に対して治療用放射線ビーム9を照射する際に回転ガントリ機構35を人体1に対して一回転させているが、1回の放射線治療における回転ガントリ機構35の回転数は一回転以上であれば特に限定されることはない。さらに、撮像用放射線ビーム15により生成される複数の透視画像からコーンビームCT画像を構成することができるのであれば、回転ガントリ機構35の回転数を一回転より少ない例えば半回転とすることもできる。
【0050】
また、撮像用放射線ビーム15により生成される複数の透視画像から構成されるCT画像としてはコーンビームCT画像が望ましいが、他の種類のCT画像が人体内撮像装置によって得られるようになっていてもよい。
【0051】
また、他の変形例としては、表示装置37にコーンビームCT画像を表示させる際に、図9に示すように、図8に示すような人体1の内部の横断面に沿ったコーンビームCT画像に治療用放射線ビーム9の線量分布を重ね合わせて表示するようにしてもよい。図9に示す画像の線量分布は三重の枠線から構成されているが、中心に近い枠線から順に、処方線量の100%、90%、80%の等線量線となっている。図10のフローチャートに示すように、このような治療用放射線ビーム9の線量分布は、治療用放射線ビーム検出器34により検出された治療用放射線ビーム9の境界座標から再計算されたものとなっている(Step1)。このように、コーンビームCT画像に治療用放射線ビーム9の線量分布を重ね合わせて表示することにより(Step2)、腫瘍3にどれくらいの線量の治療用放射線ビーム9が照射されたかを操作者は直接画像で確認することができる。
【0052】
ここで、治療用放射線ビーム検出器34により検出された治療用放射線ビーム9の境界座標から線量分布を再計算する方法について以下に説明する。
図7や図8のCT画像に示すように、治療用放射線ビーム9の照射中における人体1の内部のコーンビームCT画像に治療用放射線ビーム9の境界線が重ね合わせられたときに、この図7や図8に示すようなCT画像における治療用放射線ビーム9の入射位置に対して体内線量を再計算し、このようにして図9に示すような線量分布を再計算する。なお、この場合は、治療計画時のCT画像を用いて線量分布を再計算することとなるが、コーンビームCT画像を用いて線量分布を計算してもよい。
【0053】
また、治療用放射線ビーム9の線量分布の他の再計算方法として、図11のフローチャートに示すように、図4や図5のStep4において計算された位置ずれ量を用いて治療用放射線ビーム9の人体1に対する入射条件を変更して線量分布を再計算する方法もある。この場合は、治療計画時のCT画像を固定した画像座標系で、線量計算を行うことになる。
【0054】
また、治療用放射線ビーム9の線量分布の更に他の再計算方法として、図12のフローチャートに示すように、治療用放射線ビーム9の入射ビーム座標を変更せずに、前述の位置ずれ量にあわせて治療計画時のCT画像の位置を変更することにより線量分布を再計算する方法もある。
【0055】
いずれの再計算方法であっても、治療用放射線ビーム9の線量分布をコーンビームCT画像に重ね合わせることにより、正確な位置に治療用放射線ビーム9の線量を集中させることができたかどうかを検証することになる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一の実施の形態における放射線治療システムの構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す放射線治療システムの概略構成図である。
【図3】図2に示す放射線治療システムにおけるマルチリーフコリメータの概略構成図である。
【図4】図1乃至図3に示す放射線治療システムの制御装置における一の制御内容を示すフローチャートである。
【図5】図1乃至図3に示す放射線治療システムの制御装置における他の制御内容を示すフローチャートである。
【図6】(a)〜(d)は、図1乃至図3に示す放射線治療システムにおいて得られるX線写真である。
【図7】治療用放射線ビームの照射中における人体の内部のコーンビームCT画像に治療用放射線ビームの照射範囲を重ね合わせたときのX線写真である。
【図8】治療用放射線ビームの照射中における人体の内部の横断面に沿ったコーンビームCT画像に治療用放射線ビームの照射範囲を重ね合わせたときのX線写真である。
【図9】図8に示すような人体の内部の横断面に沿ったコーンビームCT画像に、治療用放射線ビームの線量分布を重ね合わせて表示したX線写真である。
【図10】コーンビームCT画像に、治療用放射線ビームの線量分布を重ね合わせて表示するときのフローチャートである。
【図11】コーンビームCT画像に、治療用放射線ビームの線量分布を重ね合わせて表示するときの他のフローチャートである。
【図12】コーンビームCT画像に、治療用放射線ビームの線量分布を重ね合わせて表示するときの更に他のフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1 人体
3 腫瘍
7 治療用放射線ビーム照射器
9 治療用放射線ビーム
11 制御装置
13 撮像用放射線ビーム照射器
15 撮像用放射線ビーム
17 撮像用放射線ビーム検出器
19、21、23 ケーブル
33 マルチリーフコリメータ
33s 遮蔽板(リーフ)
34 治療用放射線ビーム検出器
35 回転ガントリ機構
37 表示装置
39 寝台
43、44、45 ケーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体内の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、
人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置と、
前記治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームに直交するよう人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、
前記治療用放射線ビーム照射装置および前記人体内撮像装置を、人体を中心として一体的に回転させる回転機構と、
前記治療用放射線ビーム照射装置、前記人体内撮像装置および前記回転機構を制御する制御装置であって、前記回転機構によって人体を中心として前記治療用放射線ビーム照射装置および人体内撮像装置を一体的に回転させ、回転している前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に治療用放射線ビームを照射させ、当該治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射されている間に前記人体内撮像装置によって人体に撮像用放射線ビームを様々な方向から照射させて当該人体の内部の透視画像を複数生成し、生成される複数の透視画像に基づいて人体の内部のCT画像を得るような制御を行う制御装置と、
を備えたことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項2】
人体の内部のCT画像を表示する表示機構を更に備え、
前記制御装置は、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られる人体の内部のCT画像を前記表示機構に表示させるよう当該表示機構の制御を行うことを特徴とする請求項1記載の放射線治療システム。
【請求項3】
前記制御装置は、人体の内部のCT画像に、前記治療用放射線ビーム照射装置により照射される治療用放射線ビームの照射範囲を重ね合わせて前記表示機構に表示させるよう制御を行うことを特徴とする請求項2記載の放射線治療システム。
【請求項4】
前記治療用放射線ビーム照射装置はコリメータを有し、当該コリメータが治療用放射線ビームの照射範囲を変動させるようになっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の放射線治療システム。
【請求項5】
前記コリメータはマルチリーフコリメータであることを特徴とする請求項4記載の放射線治療システム。
【請求項6】
前記制御装置は、一回の放射線治療工程において、前記回転機構によって人体を中心として前記治療用放射線ビーム照射装置および前記人体内撮像装置を一回転以上回転させ、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射されている間に前記人体内撮像装置によって人体に撮像用放射線ビームを360°の様々な方向から照射させて当該人体の内部の透視画像を複数生成し、生成される複数の透視画像に基づいて人体の内部のCT画像を得るような制御を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の放射線治療システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射される前に予め生成される治療計画時CT画像と、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られるCT画像との間の位置ずれ量を算出するようになっていることを特徴とする請求項6記載の放射線治療システム。
【請求項8】
前記制御装置は、治療計画に基づいて人体に治療用放射線ビームを照射するような制御を行い、前記位置ずれ量が予め設定された設定値よりも大きい場合には、次回以降の放射線治療で人体に治療用放射線ビームを照射する際の治療計画をこの位置ずれ量に基づいて変更するようになっていることを特徴とする請求項7記載の放射線治療システム。
【請求項9】
前記制御装置は、人体の内部のCT画像に、前記治療用放射線ビーム照射装置により照射される治療用放射線ビームの線量分布を重ね合わせて前記表示機構に表示させるよう制御を行うことを特徴とする請求項2記載の放射線治療システム。
【請求項10】
前記治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームを検出するための治療用放射線ビーム検出器が設置されており、
前記治療法放射線ビームの線量分布は、前記治療用放射線ビーム検出器により検出された治療用放射線ビームの境界座標から再計算されたものであることを特徴とする請求項9記載の放射線治療システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射される前に予め生成される治療計画時CT画像と、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られるCT画像との間の位置ずれ量を算出し、
前記治療法放射線ビームの線量分布は、当該位置ずれ量を用いて治療用放射線ビームの人体に対する入射条件を変更することにより再計算されたものであることを特徴とする請求項9記載の放射線治療システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射される前に予め生成される治療計画時CT画像と、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られるCT画像との間の位置ずれ量を算出し、
前記治療法放射線ビームの線量分布は、当該位置ずれ量にあわせて治療計画時CT画像の位置を変更することにより再計算されたものであることを特徴とする請求項9記載の放射線治療システム。
【請求項1】
人体内の治療対象部分に対して放射線ビームを照射することにより当該治療対象部分の治療を行う放射線治療システムであって、
人体に治療用放射線ビームを照射する治療用放射線ビーム照射装置と、
前記治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームに直交するよう人体に撮像用放射線ビームを照射することにより当該人体の内部の透視画像を生成する人体内撮像装置と、
前記治療用放射線ビーム照射装置および前記人体内撮像装置を、人体を中心として一体的に回転させる回転機構と、
前記治療用放射線ビーム照射装置、前記人体内撮像装置および前記回転機構を制御する制御装置であって、前記回転機構によって人体を中心として前記治療用放射線ビーム照射装置および人体内撮像装置を一体的に回転させ、回転している前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に治療用放射線ビームを照射させ、当該治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射されている間に前記人体内撮像装置によって人体に撮像用放射線ビームを様々な方向から照射させて当該人体の内部の透視画像を複数生成し、生成される複数の透視画像に基づいて人体の内部のCT画像を得るような制御を行う制御装置と、
を備えたことを特徴とする放射線治療システム。
【請求項2】
人体の内部のCT画像を表示する表示機構を更に備え、
前記制御装置は、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られる人体の内部のCT画像を前記表示機構に表示させるよう当該表示機構の制御を行うことを特徴とする請求項1記載の放射線治療システム。
【請求項3】
前記制御装置は、人体の内部のCT画像に、前記治療用放射線ビーム照射装置により照射される治療用放射線ビームの照射範囲を重ね合わせて前記表示機構に表示させるよう制御を行うことを特徴とする請求項2記載の放射線治療システム。
【請求項4】
前記治療用放射線ビーム照射装置はコリメータを有し、当該コリメータが治療用放射線ビームの照射範囲を変動させるようになっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の放射線治療システム。
【請求項5】
前記コリメータはマルチリーフコリメータであることを特徴とする請求項4記載の放射線治療システム。
【請求項6】
前記制御装置は、一回の放射線治療工程において、前記回転機構によって人体を中心として前記治療用放射線ビーム照射装置および前記人体内撮像装置を一回転以上回転させ、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射されている間に前記人体内撮像装置によって人体に撮像用放射線ビームを360°の様々な方向から照射させて当該人体の内部の透視画像を複数生成し、生成される複数の透視画像に基づいて人体の内部のCT画像を得るような制御を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の放射線治療システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射される前に予め生成される治療計画時CT画像と、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られるCT画像との間の位置ずれ量を算出するようになっていることを特徴とする請求項6記載の放射線治療システム。
【請求項8】
前記制御装置は、治療計画に基づいて人体に治療用放射線ビームを照射するような制御を行い、前記位置ずれ量が予め設定された設定値よりも大きい場合には、次回以降の放射線治療で人体に治療用放射線ビームを照射する際の治療計画をこの位置ずれ量に基づいて変更するようになっていることを特徴とする請求項7記載の放射線治療システム。
【請求項9】
前記制御装置は、人体の内部のCT画像に、前記治療用放射線ビーム照射装置により照射される治療用放射線ビームの線量分布を重ね合わせて前記表示機構に表示させるよう制御を行うことを特徴とする請求項2記載の放射線治療システム。
【請求項10】
前記治療用放射線ビーム照射装置から照射される治療用放射線ビームを検出するための治療用放射線ビーム検出器が設置されており、
前記治療法放射線ビームの線量分布は、前記治療用放射線ビーム検出器により検出された治療用放射線ビームの境界座標から再計算されたものであることを特徴とする請求項9記載の放射線治療システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射される前に予め生成される治療計画時CT画像と、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られるCT画像との間の位置ずれ量を算出し、
前記治療法放射線ビームの線量分布は、当該位置ずれ量を用いて治療用放射線ビームの人体に対する入射条件を変更することにより再計算されたものであることを特徴とする請求項9記載の放射線治療システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記治療用放射線ビーム照射装置により人体に対して治療用放射線ビームが照射される前に予め生成される治療計画時CT画像と、前記人体内撮像装置により生成される複数の透視画像に基づいて得られるCT画像との間の位置ずれ量を算出し、
前記治療法放射線ビームの線量分布は、当該位置ずれ量にあわせて治療計画時CT画像の位置を変更することにより再計算されたものであることを特徴とする請求項9記載の放射線治療システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2008−302129(P2008−302129A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154112(P2007−154112)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(500321704)エレクタ、アクチボラグ (18)
【氏名又は名称原語表記】ELEKTA AB
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(500321704)エレクタ、アクチボラグ (18)
【氏名又は名称原語表記】ELEKTA AB
【Fターム(参考)】
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