説明

放射線治療装置

本発明は、例えばトモセラピー、IMAT、IMRT等の技術に見られる様々な問題を軽減するような放射線治療装置を提供することを求めている。本発明は、マルチリーフコリメータにより出力が平行にされるような放射線源と、患者支持体と、を備え、放射線源は、患者支持体の周囲を回転自在となっており、患者支持体は、回転軸に沿って移動自在となっており、このことにより患者支持体上の患者に対して放射線源を螺旋状に移動させるようになっているような放射線治療装置を提供する。マルチリーフコリメータのリーフは、線量分布の計算をシンプルなものとするために、回転軸に直交するような向きとなっていることが好ましい。装置は、患者支持体システム上の患者を回転軸に沿って長手方向に移動させる。このことにより、装置は、長手方向において効率の良い非制限的な治療量を与えることができ、IMATおよびIMRTの技術に係る制限を回避するようになる。このことにもかかわらず、薄いマルチリーフコリメータのリーフの使用により、長手方向の高解像度が与えられる。装置は、IMATおよびIMRT装置に用いられる計算サービスと類似する計算サービルを提供するような最適化システムと組み合わせられることが望ましい。基本的には、入力条件および特有の方程式を適切に変化させるような、同じ計算技術を使用することができる。(トモセラピーと比較した)長い開口の全長により、放射線送出を効率のあるものとすることができ、このことにより高い線量の送出が実用的になる。そして、少分割照射法および放射線外科は、多くの治療量を与えることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間または動物の細胞組織に照射を行い、細胞を被曝にて電離放射線により殺すことが知られている。このことは、病原細胞の治療に適用されることが知られている。しかしながら、患者の体内奥深くにある腫瘍を治療するためには、病原細胞に放射線治療を行って破壊するために、放射線は健康な細胞組織を通過しなければならない。従来の放射線治療においては、多くの健康な細胞組織が有害な放射線量に曝され、その結果患者にとってより長い回復期間が必要となる。このため、病原細胞組織を曝し、これらの細胞の死を導くようにするが、健康な細胞組織の被曝を最小限にするような治療手順を有する、電離放射線により患者を治療するための装置を設計することが望ましい。
【0003】
従来より、望ましい病原細胞を破壊するような被曝を行うが健康な細胞の被曝を最小限にするような様々な方法が用いられてきた。多くの方法は、複数の源から同時に、あるいは一つの源から複数回の被曝を行うことにより、複数の方向から腫瘍に放射線を向けるようにしていた。各源から放射される放射線の強度は、細胞の破壊に必要とされる強度よりも小さくなっているが、複数の源から放射線ビームが集中するような場所において、放射線の合計の強度は、治療線量として十分な量となる。
【0004】
治療は、数日あるいは数週間の間行われ、健康な細胞組織の回復が可能となる。上述の方法は、健康な細胞組織が受ける線量が少なくなるので、回復をより早くする。このことにより、長期間繰り返される線量は、最終的には病原細胞に大きなダメージを与える。
【0005】
このように、放射線をできるだけ正確に病原細胞に送出し、健康な細胞組織への線量を最小限にすることは重要である。この点において、技術発展により、各治療工程において送出すべき個々の線量が大きくなり、このため必要な治療の合計回数が減少し、そして、事実上患者へ送られる線量の合計も減少する。例えば、2Gyの線量における35回の処方は、「少分割照射法(hypofractionation)」として知られるような技術による、3Gyの線量における15回の処方に置き換えられる。健康な細胞組織へ送出される放射量を十分に減少できるのであれば、論理的には、極端な場合、45Gyの線量による1回の処方に置き換えることができる。この方法は、放射線外科としてより一般的に参照されるが、治療に必要な回数が少なくなり、治療の間に一貫性のない位置となってしまう危険性がないという、利益を患者に対して明確に提供する。
【0006】
病原細胞組織に対する線量を最大としながら、健康な細胞組織に対する線量を減少させるような、様々な方法が提案されている。最も単純には、複数の方向から放射線ビームを向けることである。このことにより、ビームが一致する箇所における放射量は、他の領域に送出される放射線のおよそn倍となる。ここで、nは、様々な方向から放射線が向けられる回数である。
【0007】
ビームのサイズを制限して、病原細胞組織を照射するのに必要な量を最小限にするために、コリメータを用いることもできる。例えばEP−A−0,314,214に記載されるように、マルチリーフコリメータ(MLCs)が知られており、このマルチリーフコリメータは、ビームを望ましい外形に形作ることができる。
【0008】
WO−A−02/069,349において、放射線ビームが関係領域を横切るよう収集されるがその幅が調節させられるようなシステムの提案を我々は行った。この提案は、治療領域の全長が非制限的となるという非常に大きな利益が得られる。
【0009】
「回転等角(rotational conformal)」のコリメーション(視準)において、放射線源は患者の周囲を回転し、マルチリーフコリメータにより平行にさせられる。マルチリーフコリメータのコリメーションの形状は、アプローチ角度により異なるようになっており、ビームの幅は、ビームの方向から見た腫瘍の突出した外形に適合するようになる。このことは、特定の形状には便利であるが、凹面または凹形状には適用しにくい。
【0010】
IMAT技術がUS−A−5,818,902に記載されている。この技術は、患者の周囲における繰り返しの回転を許容することにより、回転等角技術をより発展させる。この方法により、腫瘍領域において線量が少しずつ蓄積される。マルチリーフコリメータの形状および方向を決めるにあたり、計算手段が用いられる。関係領域の各ボクセルがコスト関数(cost function)に割り当てられる。このコスト関数は、特定の線量に関連するコストを反映する。例えば、腫瘍領域のボクセルは低い線量に関連する高コストとなり、健康領域のボクセルはその反対となる。脊柱や消化管のようないくつかの敏感な領域は、一定の臨界レベルを超える線量の、特定の高コストを有するようなコスト関数が与えられる。計算プロセスは、送出の選択肢をコントロールしてコスト関数を最小限にするようにする。IMATは、優れた線量分布を提供することができる。
【0011】
IMRTは、IMATと計算原理は類似しているが、同じ方向からマルチリーフコリメータにより形付けられた一連のビームを提供する。このため、計算負荷が幾分か減少する。
【0012】
トモセラピーは、(例えば)「Planning Evaluation for complex lung cancer cases using Helical Tomotherapy」(T.Kron et al. Phys. Med. Biol. 49(2004) 3675−3690頁)に記載された治療技術である。この技術によれば、患者の周囲を螺旋状に回転する源から調節可能なファンビーム(扇形ビーム)が生成される。ビームの強度は、ファンビームの全幅を横切って当該ファンビームの経路の内外をスライドする部材により調節される。線量は非常に等角となり、得られる線量分布が優れたものとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述の技術の全てには、目立った問題点または限界がある。
【0014】
例えば、WO−A−02/069,349のシステムは、一方向から照射するのみである。IMATおよびIMRTは、前述のように、優れた線量分布を提供するが、より優れた解像度に向かう圧力は、より小さな開口を有しがちな、より高い解像度のマルチリーフコリメータを必要とする。このため、治療可能な量が制限される。
【0015】
螺旋のトモセラピーは、送出の効率性が例外的に低くなる。比較用のプランを行うために、少なくとも3つの変調率(MF、Modulation factor)とともに、25mmのファンビームの厚さ(FBT、Fan Beam Thickness)が用いられ、より低い値(より高い効率性)が、受入難いプランの質を導くこととなる。このことにより、2Gyの線量分布で約20分のビーム照射が行われる結果となる。ビーム源の線量率は約10Gy/分である。すなわち、20分の間に機械は200Gyを送出することができる。このことは、線量送出の効率性は約1%であることを示している。一般的に、従来のマルチリーフコリメータ、IMRT技術を用いたときには、約50%の効率性となる。このことは、患者に対する同等の漏れ線量を得るために、トモセラピー機械の遮蔽は、約50倍必要となることを意味する。また、このことは、機械は、各部に送出を行うのに約50倍の電力を消費し、50倍の熱を発生させることを意味する。また、このことは、他の構成要素の寿命を短くさせる。
【0016】
また、このことは、少分割照射技術が、螺旋のトモセラピーにとって実用的ではないことを意味する。20Gyの分割量は送出に200分かかる、すなわち3時間半のビーム放射を行う。一般的に、20分は、患者が横たわることができる最大の長さの時間とみなされる。放射線外科はより実用的ではない。50Gyの線量は500分かかる、すなわち8時間半のビーム放射を行うこととなる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上述の技術において見られる様々な問題を軽減するような放射線治療装置を提供することを求めている。このため、本発明は、マルチリーフコリメータにより出力が平行にされるような放射線源と、患者支持体と、を備え、放射線源は、患者支持体の周囲を回転自在となっており、患者支持体は、回転軸に沿って移動自在となっており、このことにより患者支持体上の患者に対して放射線源を螺旋状に移動させるようになっているような放射線治療装置を提供する。
【0018】
マルチリーフコリメータのリーフは、回転軸に直交するような向きとなっていることが好ましい。このことにより、線量分布の計算ができるだけシンプルなものとなる。この場合、従来の治療機械とは異なり、マルチリーフコリメータが回転することができないような構成が予想される。
【0019】
装置は、患者支持体システム上の患者を回転軸に沿って長手方向に移動させる。このことにより、装置は、長手方向において効率の良い非制限的な治療量を与えることができ、IMATおよびIMRTの技術に係る制限を回避するようになる。このことにもかかわらず、薄いマルチリーフコリメータのリーフは、長手方向の高解像度を与えるために使用される。
【0020】
長手方向の移動が治療可能な長さまで延びるようにするために、使用されるマルチリーフコリメータのリーフの枚数には制限がある。このことは、リーフの枚数が、治療領域をカバーするのに十分な枚数が必要とされるという点で、従来のマルチリーフコリメータと比較して工学技術を単純化する。このようにして、高解像度のための、より薄いマルチリーフコリメータのリーフの使用は、より小さな治療照射野を含むということはもはやない。
【0021】
装置は、IMATおよびIMRT装置に用いられる計算サービスと類似する計算サービルを提供するような最適化システムと組み合わせられることが望ましい。基本的には、条件および特定の方程式を入力するために適切に変化するような、同じ計算技術を使用することができる。
【0022】
このような装置は、最適化可能な多数の治療のバリエーションを提供する。このことにより、IMRTおよびIMATと比較して同等またはより良い線量分布の質を得ることができる。しかしながら(トモセラピーと比較した)長い開口の全長により、放射線送出を効率のあるものとすることができ、このことにより高い線量の送出が実用的になる。そして、少分割照射法および放射線外科は、従来ではトモセラピーでしか得られなかったような多くの治療量を与えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態は、添付図面を参照して、例示の目的で以下に記載される。
【0024】
図1は、本発明において使用される装置を概略的に示す。患者支持体10は、長手軸12に沿って移動自在となるよう設けられている。放射線源14も、この放射線源14が長手軸12を中心として回転できるよう、取り付け具(図示せず)上に設けられている。このことにより、患者支持体の長手軸および放射線源の回転軸は一直線上に合わせられる。放射線源は、そのビーム16が軸12と交差するよう、軸12に向けられている。
【0025】
マルチリーフコリメータ(多葉コリメータ、MLC)18が、放射線源14に設けられている。マルチリーフコリメータのリーフ(葉部)20は、ビーム16および軸12に直交するような向きとなっている。このため、リーフは、放射線源14の回転通路に沿った放射線源14の接線方向に向いている。このことにより、放射線ビームは、円錐状のものから平行にさせられ、含まれる角度が継続的に変化するような複数のファンビームとして考えられるようなものになる。
【0026】
放射線源14(および関連するコリメータ18)が軸12の周囲を回転し、患者支持体10は軸を中心として移動する。このことにより、患者支持体10上の患者に対して放射線源はらせん22を描く。
【0027】
この考えは、おそらく、治療機械の毎回の回転において患者がマルチリーフコリメータの一のリーフの幅分だけ移動させられるような特別なケースを考えることにより、理解するのに容易であろう。しかしながら、本発明は、他のケースにも適用可能であることを理解すべきである。この特別な場合において、断層平面における治療照射野の半径の大きさは、機械の連続的な回転のために、マルチリーフコリメータの連続的なリーフにより画定される。このことにより、与えられた断層の薄片における線量は、連続的な一対のリーフにより画定される装置のサイズにより決められる。このことは、米国特許5,818,902号に開示されるIMAT技術の複数の回転に類似している。
【0028】
照射時間を減少させ効率を上げるためのトモセラピー装置のFBTの増加は、単に上限/下限の方向における線量分布を、受容できない程度にまで悪化させるだけである。上限/下限の方向における線量分布を増加させるためのFBTの減少により、同じ時間におけるビームを増加させる。すなわち、10mmのFBTにより、50分の時間におけるビームを、約0.4%すなわち250分の1の線量送出の効率とする。本発明によれば、リーフの幅は、治療中心において理想的には約3mmとなり、各対向列において少なくとも40枚のリーフがある。リーフの数を増やしたり減らしたりすることもでき、例えば30枚、20枚、10枚あるいは少なくとも3枚とさえすることができる。総計40枚のリーフにより、コリメータの長さは120mmとなる。
【0029】
効率性は、コリメータの長さにより決められやすい。トモセラピーに類似する技術は、5倍有効である(120mmvs25mm)。また、IMATの技術の知見により、効率性は一般的に非常に高く、30%のオーダーとなっていることがわかる。
【0030】
機械は連続的に回転させることができるが、放射線照射が必要ではない円弧の部分の間で放射線照射は停止させられる。この30%は、当然のことながら、腫瘍の長さのコリメータの長さに対する比率により減少させられる。240mmの腫瘍の長さは、15%の効率に減少させられる。このように、これらの議論は、このような技術の効率性は、5〜15%の間になりやすいと結論づけられる。このことは、従来からのMLC技術よりは悪いが、トモセラピー技術よりは高い。
【0031】
3mmの幅のリーフを使用することにより、上述のトモセラピー技術の25mmのFBTよりも、実質的に良質の放射線量が得られる。このことは、長手方向における配置の幾何学的半影が、これらの2つの技術においてそれぞれ3mmおよび25mmであることに起因している。
【0032】
腫瘍の長さがコリメータの長さよりも短いときには、患者支持体システムを固定させることにより、同じ機械を、従来のIMAT技術を使用する腫瘍の治療に用いることができる。このことにより、機械は、改良を行うことなくこれらの技術の両方に適用させることができる。
【0033】
当然のことながら、本発明の範囲を外れることなく、上述の実施形態に対して多くの変形を行うことができることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明において採用される幾何学的配置を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチリーフコリメータにより出力が平行にされるような放射線源と、
患者支持体と、
を備え、
放射線源は、患者支持体の周囲を回転自在となっており、患者支持体は、回転軸に沿って移動自在となっており、このことにより患者支持体上の患者に対して放射線源を螺旋状に移動させるようになっていることを特徴とする放射線治療装置。
【請求項2】
放射線源の回転角の関数としてマルチリーフコリメータにおけるリーフの位置を計算し、特定の線量分布を得るような計算手段を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の放射線治療装置。
【請求項3】
マルチリーフコリメータは少なくとも3枚のリーフを有していることを特徴とする請求項1または2記載の放射線治療装置。
【請求項4】
マルチリーフコリメータは少なくとも10枚のリーフを有していることを特徴とする請求項3記載の放射線治療装置。
【請求項5】
マルチリーフコリメータは、そのリーフが回転軸に直交するような向きとなっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の放射線治療装置。
【請求項6】
実質的に、図面を参照して記載されるような、および/または図面に示されるような放射線治療装置。

【図1】
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【公表番号】特表2008−532604(P2008−532604A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500253(P2008−500253)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000725
【国際公開番号】WO2006/095137
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(500321704)エレクタ、アクチボラグ (18)
【氏名又は名称原語表記】ELEKTA AB
【Fターム(参考)】