説明

放射線画像変換プレートの断裁方法及び断裁装置

【課題】断裁後における端部の欠落を防止し、放射線画像変換プレートの品質劣化を抑制する。
【解決手段】放射線画像変換プレートの断裁方法は、高分子材料により形成され、その表面に金属薄膜層を有する支持体に対して、気相堆積法により前記金属薄膜層上に蛍光体層を形成することで作成された放射線画像変換プレートを、製品部と非製品部とに断裁する断裁工程と、製品部と非製品部とを接触しないように分離する分離工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像変換プレートの断裁方法及び断裁装置に関し、特に気相堆積法により形成される放射線画像変換プレートをレーザー光により断裁する放射線画像変換プレートの断裁方法及び断裁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病気診断等を目的として、X線画像に代表される放射線画像が用いられている。
このような放射線画像を得るための方式として、近年では、輝尽性蛍光体を採用した放射線画像読取方式が提案され、実用化されている。この方式においては、例えば、被写体を透過させた放射線を放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層に照射して、被写体各部の放射線透過度に対応する放射線エネルギーを蓄積させる。そして、この輝尽性蛍光体層を輝尽励起光で走査することによって蓄積させた放射線エネルギーを輝尽発光光として放出させ、光電変換手段を用いてこの輝尽発光光を画像信号に変換して、デジタル画像データとして放射線画像を得ている。
【0003】
このような放射線画像読取方式に用いられる放射線画像変換パネルは、まず、支持体の表面上に金属薄膜層を形成し、その後金属薄膜層上に輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を塗布して放射線画像変換プレート(基材プレート)を形成し、この放射線画像変換プレートを、打ち抜き刃を用いて断裁して、所望のサイズに成形する手法によって製造されるのが一般的である(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。近年においては、より欠陥の少ない放射線画像変換プレートを作成するため、レーザー光の照射により対象物を断裁するものが開発されている。
【0004】
ところで、放射線画像変換パネルは、その使用目的に鑑みて、できる限り放射線に対する感度が高く、画質(鮮鋭度、粒状性など)の良い画像を与えるものであることが望まれている。しかしながら、塗布型の放射線画像変換パネルにおいては、その塗布材料にバインダ樹脂等の発光に寄与しない成分を含有するため、一定水準以上の感度や画質を得ることが困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題を解決するため、気相堆積法による放射線画像変換プレートの製造方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
気相堆積法により放射線画像変換プレートを製造する方法では、例えば、蛍光体材料を蒸発・気化させ、金属薄膜層上に付着した結晶を成長させることにより、支持体表面に柱状結晶など、結晶が整然と並んだ構成の輝尽性蛍光体層を金属薄膜層上に形成することができる。このようにして製造された放射線画像変換プレートは、輝尽性蛍光体層を形成する材料に発光に寄与しない成分を含有しないため放射線に対して高い感度を得ることができる。
【特許文献1】特開平11−223891号公報
【特許文献2】特開2004−154913号公報
【特許文献3】特開2006−98705公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、気相堆積法により製造された放射線画像変換プレートを断裁する場合、プレートの断裁面が欠落しやすいために、品質が低下してしまうおそれがあった。
本発明の課題は、断裁後における端部の欠落を防止し、放射線画像変換プレートの品質劣化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明に係る放射線画像変換プレートの断裁方法は、
高分子材料により形成され、その表面に金属薄膜層を有する支持体に対して、気相堆積法により前記金属薄膜層上に蛍光体層を形成することで作成された放射線画像変換プレートを、製品部と非製品部とに断裁する断裁工程と、
前記製品部と前記非製品部とを接触しないように分離する分離工程とを有することを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の放射線画像変換プレートの断裁方法において、
前記断裁工程では、前記製品部と前記非製品部との間に所定長さ以上の隙間が形成されるように、前記放射線画像変換プレートを断裁することを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の放射線画像変換プレートの断裁方法において、
前記分離工程では、前記断裁工程による前記放射線画像変換プレートの断裁面と略平行な方向に、前記製品部若しくは非製品部の何れか一方を移動させることで、前記製品部と前記非製品部とを分離することを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の放射線画像変換プレートの断裁方法において、
前記断裁工程では、前記放射線画像変換プレートを水平に支持した状態で当該放射線画像変換プレートの断裁面が垂直方向に沿うように断裁し、
前記分離工程では、前記製品部若しくは前記非製品部の何れか一方を昇降させることで、前記製品部と前記非製品部とを分離することを特徴としている。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の放射線画像変換プレートの断裁方法において、
前記断裁工程では、前記放射線画像変換プレートをレーザー光により断裁することを特徴としている。
【0012】
請求項6記載の発明に係る放射線画像変換プレートの断裁装置は、
高分子材料により形成され、その表面に金属薄膜層を有する支持体に対して、気相堆積法により前記金属薄膜層上に蛍光体層を形成することで作成された放射線画像変換プレートを、製品部と非製品部とに断裁する断裁手段と、
前記製品部と前記非製品部とを接触しないように分離する分離手段とを有することを特徴としている。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の放射線画像変換プレートの断裁装置において、
前記断裁手段は、前記製品部と前記非製品部との間に所定長さ以上の隙間が形成されるように、前記放射線画像変換プレートを断裁することを特徴としている。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項6又は7記載の放射線画像変換プレートの断裁装置において、
前記分離手段は、前記断裁手段による前記放射線画像変換プレートの断裁面と略平行な方向に、前記製品部若しくは非製品部の何れか一方を移動させることで、前記製品部と前記非製品部とを分離することを特徴としている。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項5〜8の何れか一項に記載の放射線画像変換プレートの断裁装置において、
前記断裁手段は、前記放射線画像変換プレートを水平に支持した状態で当該放射線画像変換プレートの断裁面が垂直方向に沿うように断裁し、
前記分離手段は、前記製品部若しくは前記非製品部の何れか一方を昇降させることで、前記製品部と前記非製品部とを分離することを特徴としている。
【0016】
請求項10記載の発明は、請求項5〜9の何れか一項に記載の放射線画像変換プレートの断裁装置において、
前記断裁手段は、前記放射線画像変換プレートをレーザー光により断裁することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、分離工程によって、製品部と非製品部とが接触しないように分離されるので、断裁後における製品部端部が欠落しにくくなって、放射線画像変換プレートの品質劣化を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図を参照しつつ、本発明に係る放射線画像変換プレートの断裁装置の一実施形態について説明する。ただし、発明の範囲を図示例に限定するものではない。
【0019】
図1は、本実施形態における断裁装置の要部構成を示す斜視図である。
本実施形態における断裁装置1は、支持体23上に輝尽性蛍光体層24を設けた基材プレート2にレーザー光を走査することにより、基材プレート2から所望のサイズの放射線画像変換パネル21を切り出す基材プレート2(放射線画像変換プレート)の断裁装置1である。基材プレート2は、断裁装置1によって断裁することにより、製品部となる放射線画像変換パネル21と非製品部である非パネル部22とに切り分けられる。
【0020】
図1に示すように、本実施形態において断裁装置1は、箱型に形成されたパージ室3を備えている。パージ室3は、基材プレート2を出し入れするために開閉可能となっている。パージ室3は、外部の空間中に浮遊する塵等が内部に侵入しないように、内部がほぼ密閉された空間となっている。なお、パージ室3内は、低湿環境であることが好ましい。また、パージ室3の上面には、レーザー光を透過させる透光窓31が設けられている。
【0021】
パージ室3内部の底面には、基材プレート2を水平に支持する支持台4が設けられている。
支持台4は、平板状の部材であり、本実施形態における断裁装置1で断裁される基材プレート2の最大サイズよりも大きく形成されている。支持台4は、支持台移動手段13(図5参照)により図1のX-Y方向に水平に移動可能に構成されている。
【0022】
また、支持台4の表面(基材プレート2が載置される面)には、例えば、図示しない複数の吸引孔が設けられており、支持台4の内部であって吸引孔の設けられている位置に対応する部分には、吸引孔と連通する通気路(図示せず)が配設されている。
【0023】
また、支持台4には、吸引手段12(図5参照)が備えられており、前記通気路を介して吸引孔から空気を吸引することにより、支持台4に載置された基材プレート2を支持台4の表面に吸着させるようになっている。なお、基材プレート2を支持台4の表面に吸着させる手段はここに例示したものに限定されず、例えば、静電的に基材プレート2を支持台4の表面に吸着させる静電吸着手段であってもよい。
【0024】
そして、支持台4の上面には、断裁された基材プレート2を、放射線画像変換パネル21と、非パネル部22とに分離する分離手段8が設けられている。分離手段8には、非パネル部22の四隅をそれぞれ押し上げるため、支持台4の表面から昇降する突起81と、突起81の駆動源となる突起用駆動源82(図5参照)とが設けられている。この分離手段8の突起81が支持台4の表面から上昇すると、非パネル部22が押し上げられて、放射線画像変換パネル21と分離するようになっている。
【0025】
この支持台4の上方には、パージ室3内に発生した塵やすす等の浮遊物を集塵する集塵手段5が設けられている。
集塵手段5は、ほぼ環状に形成されており、集塵手段5の中空部分が前記透光窓31に対応する位置にくるように配置されている。
集塵手段5には、集塵手段5によって集められた塵等の浮遊物をパージ室3の外に導く排出管6の一端が連通している。排出管6の他端は、パージ室3の上面を貫通してパージ室3の外部に露出しており、集塵手段5によって集められた塵等の浮遊物は排出管6を介してパージ室3の外に排出されるようになっている。
【0026】
また、パージ室3の上方には、パージ室3内の支持台4上に載置された基材プレート2にレーザー光を照射する断裁手段としてのレーザー発生装置7が設けられている。
【0027】
図3を参照しつつ、レーザー発生装置7の構成について説明する。
【0028】
図3は、本実施形態におけるレーザー発生装置7を示す概略図である。
レーザー発生装置7は、レーザー光を発生させるレーザー発振部71、レーザー発振部71より発振されたレーザー光のビーム径を調整するビームエキスパンダー72、及びレーザー光の光路を調整し、基材プレート2上にレーザー光を照射する加工ヘッド73等から構成されている。
【0029】
レーザー発振部71には、YAG(Yttrium Aluminum Garnet イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶)等のレーザー光学媒体と、これを挟んで対向した一対の反射ミラーと、からなる光共振器(図示せず)が備えられており、所定の周波数のUV波長のレーザー光が発振されるように構成されている。なお、レーザー発振部71から発振されるレーザー光は、パルスレーザーであり、レーザー発振部71は、レーザー光を所定のパルス幅で発振させるようになっている。なお、本実施形態においては、レーザー発振部71にYAG等を備える固体レーザーを例として説明するが、レーザー発振部はこれに限定されず、例えばガスレーザー等、固体以外の媒体を用いるものであってもよい。
【0030】
レーザー発振部71より発振されたレーザー光は、ビームエキスパンダー72を介して所定のビーム径に調整され、加工ヘッド73に出射される。
【0031】
加工ヘッド73は、折り返しミラー74、ガルバノミラー75、集光レンズ76等を備えて構成されている。
折り返しミラー74は、全反射ミラーであり、レーザー発振部71から発振されビームエキスパンダー72を介して照射されたレーザー光は、折り返しミラー74に入射し、折り返しミラー74により基材プレート2に向かってほぼ直角に方向変換がなされる。
【0032】
さらに、折り返しミラー74により方向変換されたレーザー光は、ガルバノミラー75に入射する。ガルバノミラー75は、例えばレーザー光を全反射させる反射ミラーと、この反射ミラーの角度を変更させる角度調整手段と(いずれも図示せず)を備えて構成されており、ガルバノミラー75に入射したレーザー光は、角度を調整された上で集光レンズ(fθレンズ)76に入射する。そして、レーザー光は、集光レンズ76によって加工対象物である基材プレート2上の一点に集光されるとともに、ガルバノミラー75の動きに応じて照射角度を調整され、基材プレート2上の所定の走査線S上を走査可能となっている。このとき、レーザー光は、垂直方向に沿うことになるので、断裁後における放射線画像変換パネル21の断裁面は垂直方向に平行となるように形成される。これにより、放射線画像変換パネル21の断裁面と、分離手段8による非パネル部22の移動方向とが略平行となる。
【0033】
ここで、断裁時における走査回数や、レーザーの出力レベル等は、断裁後における放射線画像変換パネル21と非パネル部22との間の隙間が所定長さ以上となるように、設定されている。ここで、「所定長さ」とは、分離手段8による非パネル部22の上昇時に、当該非パネル部22と放射線画像変換パネル21との接触が回避される値であり、種々の実験、シミュレーション等で決定されている。例えば、本実施形態では、所定長さを20μmとしている。
なお、本実施形態においては、前記支持台移動手段13とガルバノミラー75とにより、レーザー光を基材プレート2上で走査させる走査手段が構成される。
【0034】
図1において、加工ヘッド73から照射されるレーザー光の光軸を二点鎖線で示している。図1に示すように、レーザー発生装置7の加工ヘッド73は、透光窓31及び集塵手段5の中空部分に対応する位置に向けられており、レーザー光は、加工ヘッド73から矢印方向に照射され、透光窓31及び集塵手段5の中空部分を透過して支持台4上の基材プレート2に照射されるようになっている。
【0035】
ここで、図4を参照しつつ、本実施形態における断裁装置1によって断裁される基材プレート2(放射線画像変換プレート)について説明する。
【0036】
本実施形態において基材プレート2(放射線画像変換プレート)は、支持体23と、支持体23の上に形成された輝尽性蛍光体層24とを備える多層構造となっており、この基材プレート2を断裁することにより切り出される放射線画像変換パネル21は、被写体を透過した放射線を輝尽性蛍光体層24に吸収させ、被写体各部の放射線透過密度に対応する放射線エネルギーを蓄積することができる。そして、その後、可視光線、赤外線などの電磁波(励起光)によって輝尽性蛍光体を時系列的に励起することにより、輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを輝尽発光として放出させる。この光の強弱による信号を、例えば、光電変換することにより電気信号を得て、ハロゲン化銀写真感光材料などの記録材料、CRTなどの表示装置上に可視像として再生することができる。
【0037】
支持体23としては、各種高分子材料(ポリマー)、例えば、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルムなどのプラスチックフィルム等を適用することができる。なお、支持体23を形成する材料はここに例示したものに限定されない。
【0038】
支持体23の厚さ寸法は用いる材料の材質等によって異なるが、一般的には80μm〜5000μmであり、取り扱い上の観点から、更に好ましいのは250μm〜4000μmである。
【0039】
支持体23と輝尽性蛍光体層24との間には、金属薄膜25が配置されている。金属薄膜25は、輝尽性蛍光体層24を支持体23の上に均一に蒸着させて放射線画像変換パネル21全体として輝尽発光を取り出す際に下層含め効率良く取り出すためのものであり反射効率の良いものを選定している。例えば金属薄膜25は、アルミニウム、鉄、銅、クロム等により形成されている。
なお、アルミニウム等からなる金属薄膜25に輝尽性蛍光体層24が直接接触すると金属薄膜25の腐食の要因となることから、金属薄膜25の表面(輝尽性蛍光体層が形成される側の面)は被覆層26によって覆われている。
【0040】
輝尽性蛍光体層24は、輝尽性蛍光体の柱状結晶からなり、気相堆積法により、支持体23の一面側に50μm以上、好ましくは100〜700μmの厚さ寸法に形成されるようになっている。
気相堆積法としては、蒸着法、スパッタ法、化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)法等が好ましく用いられる。いずれの手法においても、輝尽性蛍光体層24を支持体23上に独立した細長い柱状結晶に気相成長させることができる。
【0041】
次に、図5を参照しつつ、本実施形態における断裁装置1の制御構成について説明する。
【0042】
図5に示すように、断裁装置1には、制御装置10が設けられている。
制御装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、各種の制御プログラム等を格納するROM(Read Only Memory)、データ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)(いずれも図示せず)等を備えて構成されるコンピュータであり、ROMに記録された制御プログラムをRAMの作業領域に展開してCPUにより実行するようになっている。
【0043】
また、断裁装置1は、基材プレート2から、いかなるサイズの放射線画像変換パネル21を切り出すか、一枚の基材プレート2から何枚の放射線画像変換パネル21を切り出すか等の断裁条件や断裁開始指示等を入力する入力部11を有しており、入力部11から入力された情報は、制御装置10に送られるようになっている。入力部11は、例えばキーボードや操作パネルであり、ユーザは入力部11を操作することにより放射線画像変換パネル21のサイズや枚数等を所望の数値に設定することができる。なお、入力部11は、断裁装置1の必須の構成要素ではなく、例えば外部のPC(Personal Computer)等から断裁条件や断裁開始指示等を入力するように構成してもよい。
【0044】
また、制御装置10は、吸引手段12を動作させて、通気路を介して吸引孔から空気を吸引し、基材プレート2を支持台4の表面に吸着させるようになっている。
【0045】
また、制御装置10は、突起用駆動源82を動作させて、突起81を昇降させるようになっている。
【0046】
また、制御装置10は、基材プレート2の断裁によってパージ室3内に発生した塵やすす等の浮遊物を集塵してパージ室3の外に排出させるように、集塵手段5を動作させるようになっている。
【0047】
また、制御装置10は、入力部11から入力された断裁条件等に基づいて支持台移動手段13を動作させ、支持台4を図1のX-Y方向に水平に移動させるとともに、支持台4に載置された基材プレート2の所望の位置に、所望のビーム径でレーザー光が照射されるように、レーザー発生装置7の各部を制御するようになっている。
【0048】
本実施形態においては、断裁装置1は、1枚の基材プレート2から6枚の放射線画像変換パネル21を1枚ずつ切り出すようになっている。
【0049】
ここで、図6を参照しつつ本実施形態における放射線画像変換パネル21の切り出しの手順について説明する。
基材プレート2から放射線画像変換パネル21を切り出す際、制御装置10は、まず、支持台移動手段13を動作させて、基材プレート2から切り出す1枚目の放射線画像変換パネル21の走査線S上(外周)の一つの辺30(例えば、図6における30a)の上にレーザー発生装置7の加工ヘッド73が来るように支持台4を移動させ、当該辺30aを切断するようにレーザー発生装置7の各部を動作させる。当該辺30aが完全に切断されると、基材プレート2にかかっていたテンションが解放され、基材プレート2の収縮力が一部減殺される。次に、制御装置10は、支持台移動手段13を動作させて、当該辺30aに対向する辺30cの走査線S上にレーザー発生装置7の加工ヘッド73が来るように支持台4を移動させ、レーザー発生装置7の各部を動作させて辺30cを切断する。当該辺30cが完全に切断されると、制御装置10は、同様に支持台移動手段13及びレーザー発生装置7を動作させて辺30b及び辺30dを切断する。
【0050】
そして、1枚目の放射線画像変換パネル21の外周の各辺30a,30b,30c,30dがすべて切断されると、最後に当該放射線画像変換パネル21の角部31a,31b,31c,31dを順に切断する。これにより、当該放射線画像変換パネル21は完全に基材プレート2から切り離される。
【0051】
1枚目の放射線画像変換パネル21について切断が完了すると、制御装置10は、2枚目に切り出す放射線画像変換パネル21の走査線S上(外周)の一つの辺の上にレーザー発生装置7の加工ヘッド73が来るように支持台4を移動させ、1枚目と同様に、当該放射線画像変換パネル21の各辺を切断し、最後に各角部を切断する。同様にして、制御装置10は、1枚の基材プレート2から6枚の放射線画像変換パネル21を順次切り出すようになっている。
【0052】
次に、図7を参照しつつ、本実施形態における断裁装置1による基材プレート2(放射線画像変換プレート)の断裁方法について説明する。
【0053】
まず、入力部11から断裁条件等が入力・設定され、断裁開始指示が入力されると、制御装置10は、突起用駆動源82を制御して、突起81を支持台4内に収納してから、支持台4の吸引手段12を動作させて基材プレート2を支持台4の上に吸着させる(ステップS1)。
【0054】
その後、制御装置10は、支持台移動手段13及びレーザー発生装置7を制御して、水平に支持された状態の基材プレート2の所定位置を断裁する(ステップS2:断裁工程)。具体的には、制御装置10は、支持台移動手段13を動作させて、n枚目に切り出す放射線画像変換パネル21の走査線S上の一辺(例えば図6における30a)の上にレーザー発生装置7の加工ヘッド73が位置するように支持台4の位置を調整する。さらに、制御装置10はレーザー発生装置7を制御してレーザー発振部71から所定の周波数のレーザー光を発生させ、発生したレーザー光のビーム径をビームエキスパンダー72によって調整した上で加工ヘッド73から照射させる。この際、制御装置10はガルバノミラー75を制御して加工ヘッド73から照射するレーザー光の照射角度を調整し、当該放射線画像変換パネル21の走査線S(放射線画像変換パネル21の外周)に沿ってレーザー光が複数回周回走査されるように加工ヘッド73からレーザー光を照射させる。これを6枚の放射線画像変換パネル21の各辺30a,30b,30c,30d及び角部31a,31b,31c,31dに対して繰り返し、全ての放射線画像変換パネル21を断裁する。この断裁によって、放射線画像変換パネル21の断裁面が垂直方向に沿うことになるとともに、放射線画像変換パネル21と非パネル部22との間に所定長さ以上の隙間が形成される。
【0055】
断裁後、制御装置10は、突起用駆動源82を制御して、突起81を上昇させ、放射線画像変換パネル21と非パネル部22とを接触しないように分離させる(ステップS3:分離工程)。具体的には、図8(a)に示すように、断裁直後においては支持台4上に、放射線画像変換パネル21と非パネル部22との両者が支持された状態となっている。その後、制御装置10は、吸引手段12を停止させて吸引を解除し、放射線画像変換パネル21と非パネル部22とを移動可能な状態とする。そして、制御装置10は、図8(b)に示すように、突起用駆動源82を制御して、突起81を上昇させ、非パネル部22のみを上昇させる。このとき、放射線画像変換パネル21の断裁面と略平行な方向に、非パネル部22が移動されて、両者の接触が防止されることになる。また、非パネル部22の移動時には、放射線画像変換パネル21の吸着が完全に解除されておらず、弱吸着状態となっていることが好ましい。このことで万が一放射線画像変換パネル21と非パネル部22とが接触してもダメージを緩和し、かつ完全にパネル21がずれ、支持台4から落ちることも防止する。そして、図8(c)に示すように、上昇した非パネル部22のみを除去すると、放射線画像変換パネル21だけが支持台4上に残存する。
【0056】
以上のように、放射線画像変換パネル21と非パネル部22とが接触しないように分離されるので、断裁後における放射線画像変換パネル21端部が欠落しにくくなって、放射線画像変換パネル21の品質劣化を抑制することが可能となる。
【0057】
また、基材プレート2をレーザー光により断裁するので、断裁時に輝尽性蛍光体層24が割れや傷みを生じる恐れ等が少ない。これにより、製品である放射線画像変換パネル21の品質及び生産性の向上を図ることができる。
【0058】
なお、本実施形態においては、分離手段8が非パネル部22を移動させることで、放射線画像変換パネル21と分離させる場合を例示して説明したが、非パネル部22と放射線画像変換パネル21とが相対的に分離するのであれば、放射線画像変換パネル21を移動させたり、両者を移動させてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、分離手段8が非パネル部22を上昇させることで放射線画像変換パネル21と分離させる場合を例示して説明したが、非パネル部22を水平方向に移動させることで両者を分離させてもよい。具体的には、図9(a)に示すように、断裁工程時に放射線画像変換パネル21aを切り出すだけでなく、非パネル部22aを分断しておき、その後、図9(b)に示すように分断された非パネル部22aを水平方向に移動させて、両者を分離する方式が挙げられる。
【0060】
また、本実施形態においては、レーザー発振部71から発振されるレーザー光がパルスレーザーである場合を例として説明したが、レーザー発振部71から発振されるレーザー光はこれに限定されず、CWレーザー(Continuous wave laser)であってもよい。
また、レーザー光は、UV波長以外ものであってもよい。
【0061】
また、本実施形態においては、レーザー発生装置7のガルバノミラー75と支持台移動手段13とにより、レーザー光を基材プレート2上で走査させる走査手段が構成され、基材プレート2からある放射線画像変換パネル21を切り出す際には、ガルバノミラー75を動作させることにより、レーザー光を当該放射線画像変換パネル21の外周(走査線S)に沿って走査させ、当該放射線画像変換パネル21の外周を完全に切断したら、支持台移動手段13を動作させて次に切断する放射線画像変換パネル21の走査線Sにレーザー光が照射される位置まで支持台4を移動させる場合を例としたが、走査手段の構成はここに例示したものに限定されない。
例えば、ガルバノミラー75を用いずに、支持台移動手段13のみにより走査手段を構成し、支持台4を移動させながらレーザー光を基材プレート2上で走査させる構成としてもよい。また、ガルバノミラー75のみにより走査手段を構成し、支持台4を固定した状態で、ガルバノミラー75によってレーザー光の照射角度を調整することによりレーザー光を基材プレート2上で走査させる構成としてもよい。
【0062】
また、本実施形態においては、断裁手段としてレーザー発生装置7を適用し、レーザー発生装置7から照射されるレーザー光によって基材プレート2の断裁を行うものとしたが、断裁手段はレーザー発生装置7に限定されない。例えば、打ち抜き刃等を備える切断手段を断裁手段として用いて基材プレート2の断裁を行うようにしてもよい。
また、例えば、放射線画像変換パネル21の外周の各辺30a,30b,30c,30dについてはレーザー発生装置7から照射されるレーザー光によって切断し、各辺30a,30b,30c,30dの切断後、各角部31a,31b,31c,31dを切断する際には打ち抜き刃等の他の切断手段を断裁手段として用いてもよい。
【0063】
その他、本発明が上記実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施形態に係る断裁装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す断裁装置に備えられる支持台の上に基材プレートが載置された状態を示した上面図である。
【図3】本実施形態に係る断裁装置に搭載されたレーザー発生装置を示す概略図である。
【図4】本実施形態に係る基材プレートの断面図である。
【図5】図1に示す断裁装置の制御機構を示すブロック図である。
【図6】本実施形態における基材プレートの切断手順を説明するための説明図である。
【図7】本発明に係る断裁方法を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明に係る分離工程の各部の動作を示す説明図である。
【図9】本実施形態にかかる分離手段の変形例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1 断裁装置
2 基材プレート
3 パージ室
4 支持台
5 集塵手段
6 排出管
7 レーザー発生装置
8 分離手段
10 制御装置
11 入力手段
12 吸引手段
13 支持台移動手段
21 放射線画像変換パネル
22 非パネル部
23 支持体
24 輝尽性蛍光体層
25 金属薄膜
31 透光窓
71 レーザー発振部
72 ビームエキスパンダー
73 加工ヘッド
74 折り返しミラー
75 ガルバノミラー
76 集光レンズ
81 突起
82 突起用駆動源
S 走査線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料により形成され、その表面に金属薄膜層を有する支持体に対して、気相堆積法により前記金属薄膜層上に蛍光体層を形成することで作成された放射線画像変換プレートを、製品部と非製品部とに断裁する断裁工程と、
前記製品部と前記非製品部とを接触しないように分離する分離工程とを有することを特徴とする放射線画像変換プレートの断裁方法。
【請求項2】
請求項1記載の放射線画像変換プレートの断裁方法において、
前記断裁工程では、前記製品部と前記非製品部との間に所定長さ以上の隙間が形成されるように、前記放射線画像変換プレートを断裁することを特徴とする放射線画像変換プレートの断裁方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の放射線画像変換プレートの断裁方法において、
前記分離工程では、前記断裁工程による前記放射線画像変換プレートの断裁面と略平行な方向に、前記製品部若しくは非製品部の何れか一方を移動させることで、前記製品部と前記非製品部とを分離することを特徴とする放射線画像変換プレートの断裁方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の放射線画像変換プレートの断裁方法において、
前記断裁工程では、前記放射線画像変換プレートを水平に支持した状態で当該放射線画像変換プレートの断裁面が垂直方向に沿うように断裁し、
前記分離工程では、前記製品部若しくは前記非製品部の何れか一方を昇降させることで、前記製品部と前記非製品部とを分離することを特徴とする放射線画像変換プレートの断裁方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の放射線画像変換プレートの断裁方法において、
前記断裁工程では、前記放射線画像変換プレートをレーザー光により断裁することを特徴とする放射線画像変換プレートの断裁方法。
【請求項6】
高分子材料により形成され、その表面に金属薄膜層を有する支持体に対して、気相堆積法により前記金属薄膜層上に蛍光体層を形成することで作成された放射線画像変換プレートを、製品部と非製品部とに断裁する断裁手段と、
前記製品部と前記非製品部とを接触しないように分離する分離手段とを有することを特徴とする放射線画像変換プレートの断裁装置。
【請求項7】
請求項6記載の放射線画像変換プレートの断裁装置において、
前記断裁手段は、前記製品部と前記非製品部との間に所定長さ以上の隙間が形成されるように、前記放射線画像変換プレートを断裁することを特徴とする放射線画像変換プレートの断裁装置。
【請求項8】
請求項6又は7記載の放射線画像変換プレートの断裁装置において、
前記分離手段は、前記断裁手段による前記放射線画像変換プレートの断裁面と略平行な方向に、前記製品部若しくは非製品部の何れか一方を移動させることで、前記製品部と前記非製品部とを分離することを特徴とする放射線画像変換プレートの断裁装置。
【請求項9】
請求項5〜8の何れか一項に記載の放射線画像変換プレートの断裁装置において、
前記断裁手段は、前記放射線画像変換プレートを水平に支持した状態で当該放射線画像変換プレートの断裁面が垂直方向に沿うように断裁し、
前記分離手段は、前記製品部若しくは前記非製品部の何れか一方を昇降させることで、前記製品部と前記非製品部とを分離することを特徴とする放射線画像変換プレートの断裁装置。
【請求項10】
請求項5〜9の何れか一項に記載の放射線画像変換プレートの断裁装置において、
前記断裁手段は、前記放射線画像変換プレートをレーザー光により断裁することを特徴とする放射線画像変換プレートの断裁装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−200796(P2008−200796A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38946(P2007−38946)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】