説明

放射線画像撮影方法および装置

【課題】立体視画像を構成する複数の放射線画像を取得する放射線画像取得方法および装置において、医用画像診断上において有効な情報を残しつつ、かつ立体視の際のチラツキを低減させることができる放射線画像を取得する。
【解決手段】被写体に対して互いに異なる2つの撮影方向から放射線をそれぞれ照射することによって検出された撮影方向毎の放射線画像を取得し、その取得した一方の放射線画像にのみ存在する領域であって、他方の放射線画像には存在しない領域に対してぼかし処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体に対して互いに異なる2つの撮影方向から放射線をそれぞれ照射することによって検出された撮影方向毎の放射線画像を取得する放射線画像取得方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の画像を組み合わせて表示することにより、視差を利用して立体視できることが知られている。このような立体視できる画像(以下、立体視画像またはステレオ画像という)は、同一の被写体を異なる方向から撮影して取得された互いに視差のある複数の画像に基づいて生成される。
【0003】
そして、このような立体視画像の生成は、デジタルカメラやテレビなどの分野だけでなく、放射線画像撮影の分野においても利用されている。すなわち、被検者に対して互いに異なる方向から放射線を照射し、その被検者を透過した放射線を放射線画像検出器によりそれぞれ検出して互いに視差のある複数の放射線画像を取得し、これらの放射線画像に基づいて立体視画像を生成することが行われている。そして、このように立体視画像を生成することによって奥行感のある放射線画像を観察することができ、より診断に適した放射線画像を観察することができる。
【0004】
ここで、上述したように立体視画像を構成する複数の放射線画像は、被写体を互い異なる撮影方向から撮影することによって取得されるものであるため、一方の放射線画像にのみ存在する領域であって、他方の放射線画像には存在しない領域が、各放射線画像の端部において存在することになる。
【0005】
そして、このような領域が各放射線画像の端部に存在すると、この領域部分については1枚の2次元画像のみが表示されるため立体視することができず、放射線画像全体として立体視した場合にはチラツキとなって観察されて観察者にとって非常に不快なものとなり、立体視の負担にもなる。
【0006】
そこで、たとえば特許文献1においては、一方の放射線画像にのみ存在する領域であるが、他方の放射線画像には存在しない領域に対してマスク処理などを施すことによって、この領域の情報を欠落させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−103866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、放射線画像は、特許文献1において開示されているデジタルカメラの画像とは異なり、たとえ一方の画像のみにしか存在しない領域であっても、この領域に医用画像診断上において有効な情報が含まれている可能性があり、これを完全に削除してしまっては適切な医用画像診断を行うことができない場合がある。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑み、被写体に対して互いに異なる2つの撮影方向から放射線をそれぞれ照射することによって検出された撮影方向毎の放射線画像を取得する放射線画像取得方法および装置において、医用画像診断上において有効な情報を残しつつ、かつ上述したような立体視の際のチラツキを低減させることができる放射線画像取得方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の放射線画像取得装置は、被写体に対して互いに異なる2つの撮影方向から放射線をそれぞれ照射することによって検出された撮影方向毎の放射線画像を取得する放射線画像取得部と、放射線画像取得部によって取得された一方の放射線画像にのみ存在する領域であって、他方の放射線画像には存在しない領域に対してぼかし処理を施す画像処理部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の放射線画像取得装置においては、画像処理部を、ぼかし処理の施された放射線画像をぼかし処理前の放射線画像に戻す復元処理を施すものとすることができる。
【0012】
また、ぼかし処理の施された放射線画像と復元処理の施された放射線画像とを切替えて表示する表示部を設けることができる。
【0013】
また、放射線画像を立体視するか2次元視するかの選択指示を受け付ける画像切替受付部を設け、表示部を、画像切替受付部において立体視の選択指示が受け付けられた場合には、ぼかし処理の施された放射線画像を表示し、画像切替受付部において2次元視の選択指示が受け付けられた場合には、復元処理の施された放射線画像を表示するものとできる。
【0014】
また、ぼかし処理前の放射線画像を記憶する放射線画像記憶部と、ぼかし処理の施された放射線画像とぼかし処理前の放射線画像とを切替えて表示する表示部とを設けることができる。
【0015】
また、放射線画像を立体視するか2次元視するかの選択指示を受け付ける画像切替受付部を設け、表示部を、画像切替受付部において立体視の選択指示が受け付けられた場合には、ぼかし処理の施された放射線画像を表示し、画像切替受付部において2次元視の選択指示が受け付けられた場合には、ぼかし処理前の放射線画像を表示するものとできる。
【0016】
本発明の放射線画像取得方法は、被写体に対して互いに異なる2つの撮影方向から放射線をそれぞれ照射することによって検出された撮影方向毎の放射線画像を取得し、その取得した一方の放射線画像にのみ存在する領域であって、他方の放射線画像には存在しない領域に対してぼかし処理を施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の放射線画像取得方法および装置によれば、被写体に対して互いに異なる2つの撮影方向から放射線をそれぞれ照射することによって検出された撮影方向毎の放射線画像を取得し、その取得した一方の放射線画像にのみ存在する領域であって、他方の放射線画像には存在しない領域に対してぼかし処理を施すようにしたので、そのぼかし領域については、被写体の画像情報をある程度残したままとすることができるので、医用画像診断に有効に利用することができるとともに、立体視した際に、ぼかし領域が明確に認識されることはないので上述したチラツキを低減させることができる。
【0018】
また、上記本発明の放射線画像取得装置において、ぼかし処理の施された放射線画像をぼかし処理前の放射線画像に戻す復元処理も行うようにし、立体視画像を観察する際には、ぼかし処理後の放射線画像を表示し、2次元視画像を観察する際には、復元処理の施された放射線画像を表示するようにすれば、立体視画像と2次元視画像との両方を観察することによって医用画像診断の精度を向上することができるとともに、2次元視画像を用いた医用画像診断の際にはぼかし処理を施さないのでより診断精度を向上させることができる。また、このとき復元処理の施された放射線画像ではなく、ぼかし処理前の放射線画像を表示させるようにしても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムの概略構成図
【図2】図1に示す乳房画像撮影表示システムにおいてCC撮影のステレオ撮影を行う際の放射線源ユニットの移動を示す図
【図3】図1に示す乳房画像撮影表示システムにおいてMLO撮影のステレオ撮影を行う際の放射線源ユニットの移動を示す図
【図4】図1に示す乳房画像撮影表示システムのコンピュータ内部の概略構成を示すブロック図
【図5】本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムの作用を説明するためのフローチャート
【図6】MLO撮影によって取得された右目用放射線画像と左目用放射線画像とに対してぼかし処理を施す領域を示す図
【図7】CC撮影によって取得された右目用放射線画像と左目用放射線画像とに対してぼかし処理を施す領域を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の放射線画像撮影装置の一実施形態を用いた乳房画像撮影表示システムについて説明する。図1は、本実施形態の乳房画像撮影表示システム全体の概略構成を示す図である。
【0021】
本実施形態の乳房画像撮影表示システム1は、図1に示すように、乳房画像撮影装置10と、乳房画像撮影装置10に接続されたコンピュータ2と、コンピュータ2に接続されるモニタ3および入力部4とを備えている。
【0022】
乳房画像撮影装置10は、図1に示すように、基台11と、基台11に対し上下方向(Z方向)に移動可能であり、かつ回転可能な回転軸12と、回転軸12により基台11と連結されたアーム部13を備えている。
【0023】
アーム部13はアルファベットのCの形をしており、その一端には乳房が設置される撮影台14が、その他端には撮影台14と対向するように放射線源ユニット16が取り付けられている。アーム部13の回転軸12による回転と上下方向の移動は、基台11に組み込まれたアームコントローラ31により制御される。
【0024】
また、アーム部13の中央部には、撮影台14の上方に配置され、乳房を押さえつけて圧迫する圧迫板18と、その圧迫板18を支持する支持部20と、支持部20を上下方向に移動させる移動機構19が設けられている。圧迫板18の位置、圧迫圧は、圧迫板コントローラ34により制御される。
【0025】
そして、本実施形態の乳房画像撮影装置10は、乳房のCC撮影(頭尾方向の撮影)のステレオ撮影とMLO撮影(内外斜位方向の撮影)のステレオ撮影とを行うことができるように構成されている。図1および図2は、CC撮影の際のアーム部13の姿勢を示し、図3は、MLO撮影の際におけるアーム部13の姿勢を示している。
【0026】
本実施形態の乳房画像撮影装置10においては、CC撮影のステレオ撮影の際には、図2に示すように、アーム部13を垂直方向に設置した状態とその垂直方向から所定の角度+θ1だけ傾けた状態とによって2枚の放射線画像の撮影を行う。なお、このとき撮影台14および圧迫板18はアーム部13に対して回転可能の支持されており、撮影台14の乳房設置面および圧迫板18の圧迫面は水平状態に維持されるものとする。
【0027】
また、MLO撮影の際には、図3に示すように、アーム部13を45°以上90°未満の所定の撮影角度+θ2に設置した状態とその撮影角度+θ2から所定の角度+θ1だけ傾けた状態とによって2枚の放射線画像の撮影を行う。なお、撮影台14および圧迫板18は上述したとおりアーム部13に対して回転可能の支持されており、MLO撮影の際には、撮影台14の乳房設置面および圧迫板18の圧迫面は、撮影角度+θ2に直交する方向に対して平行な状態に維持されるものとする。
【0028】
撮影台14の内部には、フラットパネルディテクタ等の放射線画像検出器15と、放射線画像検出器15からの電荷信号の読み出しなどを制御する検出器コントローラ33が備えられている。
【0029】
また、撮影台14の内部には、放射線画像検出器15から読み出された電荷信号を電圧信号に変換するチャージアンプや、チャージアンプから出力された電圧信号をサンプリングする相関2重サンプリング回路や、電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換部などが設けられた回路基板なども設置されている。
【0030】
放射線画像検出器15は、放射線画像の記録と読出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線画像検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線画像検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフされることによって放射線画像信号が読みだされる、いわゆるTFT読出方式のものや、読取光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることができるが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
【0031】
放射線源ユニット16の中には放射線源17と放射線源コントローラ32とが収納されている。放射線源コントローラ32は、放射線源17から放射線を照射するタイミングと、放射線源17における放射線発生条件(管電流、時間、管電圧等)を制御するものである。
【0032】
コンピュータ2は、中央処理装置(CPU)および半導体メモリやハードディスクやSSD等のストレージデバイスなどを備えており、これらのハードウェアによって、図4に示すような制御部40、放射線画像記憶部41、画像処理部42および表示制御部43が構成されている。
【0033】
制御部40は、各種のコントローラ31〜34に対して所定の制御信号を出力し、システム全体の制御を行うものである。具体的な制御方法については後で詳述する。
【0034】
放射線画像記憶部41は、互いに異なる2つの撮影方向からの撮影によって放射線画像検出器15によって検出された2枚の放射線画像信号を記憶するものである。
【0035】
画像処理部42は、放射線画像記憶部41に記憶された撮影方向毎の放射線画像が入力され、上述したように一方の放射線画像にのみ存在する領域であって、他方の放射線画像には存在しない領域に対してぼかし処理を施すものである。
【0036】
すなわち、撮影方向毎の放射線画像をそれぞれ右目用放射線画像および左目用放射線画像とすると、右目用放射線画像については、右目用放射線画像にのみ存在する領域であって、左目用放射線画像には存在しない領域に対してぼかし処理を施し、左目用放射線画像については、左目用放射線画像にのみ存在する領域であって、右目用放射線画像には存在しない領域に対してぼかし処理を施すものである。ぼかし処理としては、たとえば平滑化処理を用いるようにすればよく、移動平均法やメジアンフィルタ処理などを用いることができる。
【0037】
表示制御部43は、画像処理部42においてぼかし処理の施された放射線画像に対して所定の信号処理を施した後、モニタ3に乳房のステレオ画像を表示させるものである。
【0038】
入力部4は、たとえば、キーボードやマウスなどのポインティングデバイスから構成されるものであり、CC撮影やMLO撮影などの所定の撮影条件や、ステレオ画像表示モードと2次元視画像表示モードの選択指示などの撮影者による入力を受け付けるものである。ステレオ画像表示モードと2次元視画像表示モードとについては、後で詳述する。
【0039】
モニタ3は、コンピュータ2から出力された2つの放射線画像信号を用いてステレオ画像を表示可能なように構成されたものである。ステレオ画像を表示する構成としては、たとえば、2つの画面を用いて2つの放射線画像信号に基づく放射線画像をそれぞれ表示させて、これらをハーフミラーや偏光グラスなどを用いることで一方の放射線画像は観察者の右目に入射させ、他方の放射線画像は観察者の左目に入射させることによってステレオ画像を表示する構成を採用することができる。または、たとえば、2つの放射線画像を所定の視差量だけずらして重ね合わせて表示し、これを偏光グラスで観察することでステレオ画像を生成する構成としてもよいし、もしくはパララックスバリア方式およびレンチキュラー方式のように、2つの放射線画像を立体視可能な3D液晶に表示することによってステレオ画像を生成する構成としてもよい。
【0040】
次に、本実施形態の乳房画像撮影表示システムの作用について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、ここではMLO撮影のステレオ撮影を行う場合について説明する。
【0041】
まず、MLO撮影のステレオ撮影の選択指示を含む所定の撮影条件が入力部4を用いて撮影者によって入力される(S10)。
【0042】
入力部4においてMLO撮影のステレオ撮影の選択指示が受け付けられると、制御部40は、予め設定されたMLO撮影のステレオ撮影のための撮影角度+θ2,+θ1を読み出し、その読み出した撮影角度の情報をアームコントローラ31に出力する。なお、本実施形態においては、撮影角度+θ2の情報として+θ2=30°と+θ1=4°が予め記憶されているものとするが、これに限らず、撮影者によって入力部4において任意の撮影角度を設定可能である。
【0043】
そして、アームコントローラ31において、制御部40から出力された撮影角度+θ2=30°と+θ1=4°の情報が受け付けられ、制御部40から出力された制御信号に応じてアームコントローラ31は、まず、+θ2=30°の情報に基づいて、図3に示すようにアーム部13が撮影台14に対して垂直な方向から30°だけ傾いた状態となるように制御信号を出力する。
【0044】
そして、このアームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13が、撮影台14に対して垂直な方向から30°だけ傾いた状態となり、この状態において、撮影台14の上に被検者Mの乳房が設置され、圧迫板18により乳房が所定の圧力によって圧迫される(S12)。
【0045】
次いで、乳房が設置された後、撮影者によって撮影開始指示が入力されると、ステレオ画像を構成する2枚の放射線画像のうちの1枚目の放射線画像の撮影が行われる(S14)。
【0046】
具体的には、制御部40が、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像信号の読出しを行うよう制御信号を出力する。この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房設置面に対して垂直方向から乳房を撮影した放射線画像が放射線画像検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、その放射線画像信号に対して所定の信号処理が施された後、コンピュータ2の放射線画像記憶部41に記憶される(S16)。
【0047】
続いて、アームコントローラ31は、図3に示すように、アーム部13が撮影台14に垂直な方向に対して30°傾いた状態から+θ1だけ回転するように制御信号を出力する。すなわち、本実施形態においては、アーム部13が撮影台14に垂直な方向に対して30°傾いた状態からさらに+θ1=4°回転するよう制御信号を出力する。
【0048】
そして、アームコントローラ31から出力された制御信号に応じてアーム部13がさらに4°回転した状態において、制御部40は、放射線源コントローラ32および検出器コントローラ33に対して放射線の照射と放射線画像信号の読出しを行うよう制御信号を出力する。そして、この制御信号に応じて、放射線源17から放射線が射出され、乳房設置面の垂直方向に対して4°だけ傾いた方向から乳房を撮影した放射線画像が放射線画像検出器15によって検出され、検出器コントローラ33によって放射線画像信号が読み出され、所定の信号処理が施された後、コンピュータ2の放射線画像記憶部41に記憶される(S18)。
【0049】
上述したようにして乳房設置面に対して垂直方向から撮影した放射線画像とその垂直方向から4°傾けた方向から撮影した放射線画像とは、放射線画像記憶部41から読み出されて画像処理部42に入力される。
【0050】
そして、画像処理部42において、これらの2枚の放射線画像に対して、上述したようにぼかし処理が施される(S20)。図6は、乳房設置面に対して垂直方向から撮影した放射線画像を右目用放射線画像、垂直方向から4°傾けた方向から撮影した放射線画像を左目用放射線画像とした場合に、それぞれの放射線画像に対してぼかし処理が施される領域をグレーで示したものである。なお、このぼかし処理が施される領域については、放射線源17と乳房との距離、放射線源17と放射線画像検出器15との距離(乳房の圧迫厚)および2つの撮影角度に基づいて設定されるものである。
【0051】
そして、画像処理部42においてぼかし処理の施された右目用放射線画像と左目用放射線画像とは、表示制御部43に入力され、表示制御部43においてこれらの放射線画像信号に対して所定の処理が施された後、モニタ3に出力される。そして、モニタ3において、右目用放射線画像と左目用放射線画像とがそれぞれ表示されて乳房のステレオ画像が表示される(S22)。
【0052】
上記実施形態の乳房画像撮影表示システムによれば、乳房に対して互いに異なる2つの撮影方向から放射線をそれぞれ照射することによって検出された撮影方向毎の放射線画像を取得し、その取得した一方の放射線画像にのみ存在する領域であって、他方の放射線画像には存在しない領域に対してぼかし処理を施すようにしたので、そのぼかし領域については、乳房の画像情報をある程度残したままとすることができるので、医用画像診断に有効に利用することができるとともに、立体視した際に、ぼかし領域が明確に認識されることはないので上述したチラツキを低減させることができる。
【0053】
また、上記実施形態においては、MLO撮影のステレオ撮影の場合について説明したが、CC撮影のステレオ撮影の場合も同様に、乳房設置面に対して垂直方向から撮影した放射線画像とその垂直方向から4°傾けた方向から撮影した放射線画像とにそれぞれぼかし処理を施してモニタ3に表示させるようにすればよい。図7は、CC撮影において、乳房設置面に対して垂直方向から撮影した右目用放射線画像と、垂直方向から4°傾けた方向から撮影した左目用放射線画像とに対してぼかし処理が施される領域をグレーで示したものである。
【0054】
また、上記実施形態においては、モニタ3においてステレオ画像を表示する作用について説明したが、モニタ3においてステレオ画像だけでなく、2次元視するための2次元視画像を表示させるようにしてもよい。
【0055】
具合的には、たとえば、入力部4においてステレオ画像表示モードまたは2次元視画像表示モードの選択指示を受け付け、ステレオ画像表示モードの選択指示を受け付けた場合には、上述したようにぼかし処理の施された右目用放射線画像と左目用放射線画像との両方をモニタ3に表示するようにし、2次元視画像表示モードの選択指示を受け付けた場合には、乳房設置面に対して垂直方向から撮影された右目用放射線画像のみを2次元視画像としてモニタ3に表示するようにしてもよい。
【0056】
そして、2次元視画像表示モードにおいてモニタ3に表示される2次元視画像は、立体視されるものではないので、上述したようなぼかし処理を施す必要がなく、むしろ2次元視する場合には細かい箇所まで観察が必要なのでぼかし処理前の放射線画像であることが望ましい。
【0057】
そこで、画像処理部42においてぼかし処理の施された右目用放射線画像に対して、ぼかし処理前の右目用放射線画像に戻すような復元処理を画像処理部42によって施し、その復元処理の施された右目用放射線画像を2次元視画像としてモニタ3に表示することが望ましい。なお、この復元処理としては、逆フィルタ処理や、ウィーナフィルタ処理や、最小2乗フィルタ処理などを用いることができる。また、ぼかし処理前の放射線画像に戻すとは、必ずしも完全に戻す必要はなく、上記復元処理は、ぼかし処理前の放射線画像に近づけるような処理であればよい。
【0058】
また、ぼかし処理前の右目用画像を表示する方法としては、上述したように復元処理を施す方法に限らず、たとえば、画像処理部42においてぼかし処理を施すために放射線画像記憶部41から放射線画像を読み出した後も、ぼかし処理前の右目用放射線画像を放射線画像記憶部41に記憶しておき、その記憶されたぼかし処理前の右目用放射線画像を用いて2次元視画像を表示させるようにしてもよい。
【0059】
なお、上記説明では、2次元視画像表示モードにおいては、乳房設置面に対して垂直方向から撮影された右目用放射線画像のみを2次元視画像として表示するようにしたが、たとえば、モニタ3が右目用と左目用との2つの別々の画面から構成される場合には、ぼかし処理前または復元処理後の右目用放射線画像および左目用放射線画像のうちのいずれか一方を2つの画面に2次元視画像として表示するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態の乳房画像撮影装置は、被検者Mの前方を左右方向に放射線源ユニット16を移動させて右目用放射線画像と左目用放射線画像との撮影を行うものであるが、これに限らず、たとえば、被検者Mの前後方向、すなわち被検者Mの胸壁から離接する方向に放射線源ユニット16を移動させて右目用放射線画像と左目用放射線画像とを撮影するようにしてもよい。そして、この場合においても、右目用放射線画像については、右目用放射線画像にのみ存在する領域であって、左目用放射線画像には存在しない領域に対してぼかし処理を施し、左目用放射線画像については、左目用放射線画像にのみ存在する領域であって、右目用放射線画像には存在しない領域に対してぼかし処理を施すようにすればよい。
【0061】
また、上記実施形態においては、本発明の放射線画像取得装置を乳房画像撮影表示システムに適用した場合については説明したが、本発明の放射線画像取得装置は、乳房を撮影する装置に限らず、その他の胸部や頭部などといったその他の部位を撮影する撮影装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 乳房画像撮影表示システム
2 コンピュータ
3 モニタ
4 入力部
10 乳房画像撮影装置
13 アーム部
14 撮影台
15 放射線画像検出器
16 放射線源ユニット
17 放射線源
18 圧迫板
40 制御部
41 放射線画像記憶部
42 画像処理部
43 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に対して互いに異なる2つの撮影方向から放射線をそれぞれ照射することによって検出された前記撮影方向毎の放射線画像を取得する放射線画像取得部と、
該放射線画像取得部によって取得された一方の前記放射線画像にのみ存在する領域であって、他方の前記放射線画像には存在しない領域に対してぼかし処理を施す画像処理部とを備えたことを特徴とする放射線画像取得装置。
【請求項2】
前記画像処理部が、前記ぼかし処理の施された放射線画像を前記ぼかし処理前の放射線画像に戻す復元処理を施すものであることを特徴とする請求項1記載の放射線画像取得装置。
【請求項3】
前記ぼかし処理の施された放射線画像と前記復元処理の施された放射線画像とを切替えて表示する表示部を備えたものであることを特徴とする請求項2記載の放射線画像取得装置。
【請求項4】
前記放射線画像を立体視するか2次元視するかの選択指示を受け付ける画像切替受付部を備え、
前記表示部が、前記画像切替受付部において前記立体視の選択指示が受け付けられた場合には、前記ぼかし処理の施された放射線画像を表示し、前記画像切替受付部において前記2次元視の選択指示が受け付けられた場合には、前記復元処理の施された放射線画像を表示するものであることを特徴とする請求項3記載の放射線画像取得装置。
【請求項5】
前記ぼかし処理前の放射線画像を記憶する放射線画像記憶部と、
前記ぼかし処理の施された放射線画像と前記ぼかし処理前の放射線画像とを切替えて表示する表示部とを備えたものであることを特徴とする請求項1記載の放射線画像取得装置。
【請求項6】
前記放射線画像を立体視するか2次元視するかの選択指示を受け付ける画像切替受付部を備え、
前記表示部が、前記画像切替受付部において前記立体視の選択指示が受け付けられた場合には、前記ぼかし処理の施された放射線画像を表示し、前記画像切替受付部において前記2次元視の選択指示が受け付けられた場合には、前記ぼかし処理前の放射線画像を表示するものであることを特徴とする請求項5記載の放射線画像取得装置。
【請求項7】
被写体に対して互いに異なる2つの撮影方向から放射線をそれぞれ照射することによって検出された前記撮影方向毎の放射線画像を取得し、
該取得した一方の前記放射線画像にのみ存在する領域であって、他方の前記放射線画像には存在しない領域に対してぼかし処理を施すことを特徴とする放射線画像取得方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate