放射線計測方法及び放射線計測装置
【課題】エネルギーが異なるカスケードγ線の同時計数を精度良く行うことができる放射線計測方法及び放射線計測装置を提供する。
【解決手段】カスケードγ線を検出した放射線検出器1Aから出力されたγ線検出信号が波高弁別器5A及び遅延回路6Aに入力される。波高弁別器5Aは、設定エネルギーよりエネルギーが大きいγ線検出信号を除去し、エネルギーが設定エネルギー以下のγ線検出信号(例えば、カスケードγ線の検出信号)をリニアゲート7Aに出力する。リニアゲート7Aは、波高弁別器5Aからγ線検出信号を入力したときに、遅延回路6Aからのγ線検出信号を加算増幅器8に出力する。放射線検出器1Bから出力されたγ線検出信号が、波高弁別器5B及びリニアゲート7Bで同様に処理され、加算増幅器8に入力される。多チャンネル波高分析装置10が加算増幅器8の出力でカスケードγ線の同時計数を行う。
【解決手段】カスケードγ線を検出した放射線検出器1Aから出力されたγ線検出信号が波高弁別器5A及び遅延回路6Aに入力される。波高弁別器5Aは、設定エネルギーよりエネルギーが大きいγ線検出信号を除去し、エネルギーが設定エネルギー以下のγ線検出信号(例えば、カスケードγ線の検出信号)をリニアゲート7Aに出力する。リニアゲート7Aは、波高弁別器5Aからγ線検出信号を入力したときに、遅延回路6Aからのγ線検出信号を加算増幅器8に出力する。放射線検出器1Bから出力されたγ線検出信号が、波高弁別器5B及びリニアゲート7Bで同様に処理され、加算増幅器8に入力される。多チャンネル波高分析装置10が加算増幅器8の出力でカスケードγ線の同時計数を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線計測方法及び放射線計測装置に係り、特に、測定対象の放射性核種から放射するカスケードγ線を計測するのに好適な放射線計測方法及び放射線計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの運転中では、原子炉格納容器内の放射線線量率がそのプラントの定期検査時に比べて非常に高いため、原子炉一次系配管(例えば、原子炉圧力容器に接続された再循環系配管)に対して、定期検査時に使用する可搬型サーベイメータでの測定は行われていない。また、原子力プラント運転中では、可搬型サーベイメータ以外の一般的な放射線モニタを用いた原子炉一次系配管の放射線計測も行われていない。
【0003】
原子力プラントの運転中に、可搬型サーベイメータを含む一般的な放射線モニタを用いて、原子炉一次系配管の放射線計測を行う場合には、放射線モニタによる測定対象核種は、原子炉一次系配管の内面に付着しているCo−60、Co−58、Mn−54、Fe−59等である。原子力プラント運転中では、原子炉一次系配管内を流れている冷却水に含まれる妨害放射性核種(N−13、N−16、F−18、O−19等)によるバックグラウンドγ線が存在するため、原子炉一次系配管に設けた放射線モニタによる測定対象核種の測定が困難である。バックグラウンドγ線の影響を最小限にするためには、測定対象核種から放射されたカスケードγ線の同時計数方法を適用することが考えられる。
【0004】
放射線の同時計数方法を適用した放射線モニタシステムが、特開平8−101275号公報及び特開平11−194170号公報にて提案されている。特開平8−101275号公報に記載された放射線モニタシステムは、主検出器とゲート用検出器の間に測定対象を配置して測定対象から放射されたカスケードγ線を主検出器及びゲート用検出器でそれぞれ検出している。ゲート用検出器から放射線検出信号が出力された場合には、非同時計数回路が主検出器から出力された放射線検出信号を遮断するので、主検出器から出力された放射線検出信号がカウンタに入力されない。カウンタは、ゲート用検出器から放射線検出信号が出力されないときに、非同時計数回路に入力された、主検出器からの放射線検出信号を計数する。これにより、β+崩壊によって発生するγ線(N−13等の妨害放射性核種から放射する消滅γ線)が計数されず、主検出器から出力された、測定対象の放射線検出信号のみを計数することができる。
【0005】
特開平8−101275号公報は、2つの放射線検出器から出力されたそれぞれの放射線検出信号に対して同時判定を行い、同時と判定された放射線検出信号に対して信号処理を行う放射性物質検査装置を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−101275号公報
【特許文献2】特開平11−194170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、後述するように、測定対象核種から複数のエネルギーを有するカスケードγ線が測定対象核種から同時に放射されたとき、このカスケードγ線の同時計数が困難になる場合があることを新たに見出した。複数のエネルギーを有するカスケードγ線の同時計数に対応するためは、複数のエネルギーを有するカスケードγ線を検出するそれぞれの放射線検出器に接続された各波高弁別器の出力レベルの領域を広げ、検出したカスケードγ線のエネルギーを有する放射線検出信号に対応する必要がある。しかし、波高弁別器の出力レベルの領域を広げた場合には、偶発同時計数が生じて計測精度が劣化する可能性がある。特に、妨害放射性核種の影響が強い場合、すなわち、バックグラウンドγ線の線量率が測定対象核種のカスケードγ線より高い場合には、従来の同時計数方法を用いても計測が困難である。
【0008】
特開平8−101275号公報及び特開平11−194170号公報に記載された同時計数方法を適用したそれぞれの放射線モニタシステムは、測定対象核種から同時に放射されたカスケードγ線のエネルギーが異なる場合に対する対応がなされていない。
【0009】
本発明の目的は、エネルギーが異なるカスケードγ線の同時計数の精度を向上させることができる放射線計測方法及び放射線計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、測定対象核種から放射された、エネルギーが異なるカスケードγ線を第1放射線検出器及び第2放射線検出器でそれぞれ検出し、
その測定対象核種から放射された、同時計数されるそれぞれのカスケードγ線の合計エネルギーよりも小さくて、且つその測定対象核種から放射されたそれらのカスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギーよりも大きいエネルギーの範囲に設定された第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する第1γ線検出信号と、第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成し、
その測定対象核種から放射されたエネルギーが異なるカスケードγ線の合計エネルギーを有する前記加算信号をカウントすることにある。
【0011】
第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号と、第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成するので、第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーを有するγ線の影響を受けた偶発同時計数を抑制することができる。したがって、第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーを有するγ線が放射される環境下に存在する測定対象核種から放射されたエネルギーの異なるカスケードγ線の同時計数の精度を向上させることができる。
【0012】
好ましくは、第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号を、第1ゲート信号発生装置及び第1遅延装置にそれぞれ入力し、第1ゲート信号発生装置が、入力した第1γ線検出信号のエネルギーが第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第1ゲート開信号を出力しないで、入力した第1γ線検出信号のエネルギーが第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに第1ゲート開信号を出力し、第1遅延装置が、入力した第1γ線検出信号を、第1ゲート信号発生装置がこの第1γ線検出信号を入力してから第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、第1ゲート装置が、第1ゲート信号発生装置から第1ゲート開信号を入力したときに、第1遅延装置から入力した第1γ線検出信号を加算装置に出力し、
第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を、第2ゲート信号発生装置及び第2遅延装置にそれぞれ入力し、第2ゲート信号発生装置が、入力した第2γ線検出信号のエネルギーが第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第2ゲート開信号を出力しないで、入力した第2γ線検出信号のエネルギーが第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに第2ゲート開信号を出力し、第2遅延装置が、入力した第2γ線検出信号を、第2ゲート信号発生装置がこの第2γ線検出信号を入力してから第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、第2ゲート装置が、第2ゲート信号発生装置から第2ゲート開信号を入力したときに、第2遅延装置から入力した第2γ線検出信号を加算装置に出力し、
加算信号の生成を、第1ゲート装置から出力された第1γ線検出信号及び第2ゲート装置から出力された第2γ線検出信号を入力した加算装置によって行うことが望ましい。
【0013】
第1ゲート装置が、第1ゲート信号発生装置から第1ゲート開信号を入力したときに、第1遅延装置から入力した第1γ線検出信号を加算装置に出力し、第2ゲート装置が、第2ゲート信号発生装置から第2ゲート開信号を入力したときに、第2遅延装置から入力した第2γ線検出信号を前記加算装置に出力しているので、ある測定対象核種から出力された1つのカスケードγ線を検出した第1放射線検出器の出力である第1γ線検出信号、及びその測定対象核種から実質的に同時に出力されたエネルギーが異なる他のカスケードγ線を検出した第2放射線検出器の出力である第2γ線検出信号を、実質的に同時に加算装置に入力することができる。これにより、第1及び第2γ線検出信号に時間情報を付与する構成が不要であり、簡単な構成で測定対象核種から放射されたエネルギーの異なるカスケードγ線の同時計数を行うことができる。さらに、上記したように、測定対象核種から放射されたエネルギーの異なるカスケードγ線の同時計数の精度を向上させることができる。
【0014】
また、測定対象核種から放射された、エネルギーが異なるカスケードγ線を第1放射線検出器及び第2放射線検出器でそれぞれ検出し、
第3放射線検出器が第1放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出したときに第3γ線検出信号を出力し、第4放射線検出器が第2放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出したときに第4γ線検出信号を出力し、
第3放射線検出器が第3γ線検出信号を出力しなくて第4放射線検出器が第4γ線検出信号を出力しないときに、その測定対象核種から放射された、同時計数されるカスケードγ線の合計エネルギーよりも小さく、且つ測定対象核種から放射されたカスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギーよりも大きいエネルギーの範囲に設定された第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する第1γ線検出信号と、第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成し、
測定対象核種から放射されたエネルギーが異なる前記カスケードγ線の合計エネルギーを有する加算信号をカウントすることによっても、本発明の目的を達成することができる。
【0015】
第3放射線検出器が第1放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出したときに第3γ線検出信号を出力し、第4放射線検出器が第2放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出したときに第4γ線検出信号を出力し、第3放射線検出器が第3γ線検出信号を出力しなくて第4放射線検出器が第4γ線検出信号を出力しないときに、第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する第1γ線検出信号と、第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成するので、第1放射線検出器または第2放射線検出器内でγ線のコンプトン散乱が生じた場合には、コンプトン散乱したγ線のγ線検出信号が加算装置に入力されない。このため、バックグラウンドγ線のコンプトン散乱で生じたγ線でカスケードγ線近傍のエネルギーを有するγ線が検出されることに起因した偶発同時計数を抑制することができる。したがって、測定対象核種から放射されたエネルギーの異なるカスケードγ線の同時計数の精度をさらに向上させることができる。
【0016】
好ましくは、第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号を、第1ゲート信号発生装置及び第1遅延装置にそれぞれ入力し、第1ゲート信号発生装置が、入力した第1γ線検出信号のエネルギーが第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるとき、第1ゲート開信号を出力しないで、入力した第1γ線検出信号のエネルギーが第1設定エネルギー以下のエネルギーであるとき、第1ゲート開信号を出力し、第1遅延装置が、入力した第1γ線検出信号を、第1ゲート信号発生装置がこの第1γ線検出信号を入力してから第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、第3放射線検出器から出力された第3γ線検出信号を第3遅延装置に入力し、第1遅延装置が、入力した第1γ線検出信号を出力するときに、第3遅延装置が、入力した第3γ線検出信号を出力し、第1ゲート装置が、第3遅延装置から第3γ線検出信号が出力されないときで第1ゲート信号発生装置から第1ゲート開信号を入力したときに、第1遅延装置から入力した第1γ線検出信号を加算装置に出力し、
第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を、第2ゲート信号発生装置及び第2遅延装置にそれぞれ入力し、第2ゲート信号発生装置が、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるとき、第2ゲート開信号を出力しないで、入力した第2γ線検出信号のエネルギーが前1設定エネルギー以下のエネルギーであるとき、第2ゲート開信号を出力し、第2遅延装置が、入力した第2γ線検出信号を、第2ゲート信号発生装置がこの第2γ線検出信号を入力してから第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、第4放射線検出器から出力された第4γ線検出信号を第4遅延装置に入力し、第2遅延装置が、入力した第2γ線検出信号を出力するときに、第4遅延装置が、入力した第4γ線検出信号を出力し、第2ゲート装置が、第4遅延装置から第4γ線検出信号が出力されないときで第2ゲート信号発生装置から第2ゲート開信号を入力したときに、第2遅延装置から入力した第2γ線検出信号を前記加算装置に出力し、
加算信号の生成を、第1ゲート装置から出力された第1γ線検出信号及び第2ゲート装置から出力された第2γ線検出信号を入力した加算装置によって行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、偶発同時計数を抑制することができ、エネルギーが異なるカスケードγ線の同時計数を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置の構成図である。
【図2】図1に示す放射線検出装置を測定対象の原子炉一次系配管付近に配置した状態を示す説明図である。
【図3】沸騰水型原子力プラントの運転時における原子炉一次配管から放射されたγ線のエネルギースペクトルの一例を示す説明図である。
【図4】図3に示されたエネルギースペクトルにおいて同時計数ピークの下限よりも小さいエネルギーに設定された除去設定エネルギーを示す説明図である。
【図5】除去設定エネルギーよりも大きなエネルギーを有するγ線検出信号を除去した状態でのγ線のエネルギースペクトルを示す説明図である。
【図6】図5に示されたエネルギースペクトルにおいて同時計数ピーク付近の拡大図である。
【図7】本発明の他の実施例である実施例2の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置の構成図である。
【図8】実施例2において得られたγ線のエネルギースペクトルを示す説明図である。
【図9】本発明の他の実施例である実施例3の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置の構成図である。
【図10】実施例3で用いる放射線計測装置の変形例の構成図である。
【図11】実施例3で用いる放射線計測装置の他の変形例の構成図である。
【図12】本発明の他の実施例である実施例4の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置の構成図である。
【図13】本発明の他の実施例である実施例5の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置の構成図である。
【図14】実施例5で用いる放射線計測装置の変形例の構成図である。
【図15】本発明の他の実施例である実施例6の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置の構成図である。
【図16】本発明の他の実施例である実施例7の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明者らは、測定対象核種から複数のエネルギーを有するカスケードγ線が放射された場合には、偶発同時計数がなされ、これらのカスケードγ線の同時計数が困難になる場合があることを新たに見出した。そこで、発明者らは、複数のエネルギーを有するカスケードγ線における偶発同時計数を避けて複数のエネルギーを有するカスケードγ線の同時計数の精度を向上させるために、バックグラウンドγ線の線量率が測定対象核種の複数のエネルギーを有するカスケードγ線より高い場合であっても、複数のエネルギーを有するカスケードγ線の同時計数を精度良く行うことができるカスケードγ線の同時計数の方法を検討した。この検討結果を以下に説明する。
【0020】
カスケードγ線を放射する放射性核種としては、例えば、Al−26、K−42、Ti−51、V−48、Mn−52、Mn−54、Co−56、Co−58、Co−60、Y−88、Nb−94、Ag−110、In−116、Sb−124、Te−132、Cs−134、Tl−208等がある。カスケードγ線の放射過程について説明する。例えば、Co−60は、半減期5.27年でβ−崩壊を起こす。この崩壊により、Co−60は励起状態のNi−60に壊変される。励起状態のNi−60は基底状態となるので、この基底状態のエネルギーを有するカスケードγ線が励起状態のNi−60から放射される。このカスケードγ線は、2つ以上のエネルギーを有しており、4π方向へほぼ同時刻に放射される。励起状態のNi−60から放射された、例えば、1.17MeVのエネルギーを有するγ線と1.33MeVのエネルギーを有するγ線の、Ni−60から放射される時間差はおよそ0.4psである。この時間差は、通常の放射線モニタシステムのパルス計測処理時間では同時刻になるので、無視することができる。他の放射性核種からのカスケードγ線の放射に伴うその時間差も、Ni−60から放射されたカスケードγ線における時間差と同様に無視することができる。
【0021】
例えば、原子炉一次系配管内を流れる冷却水に含まれる妨害放射性核種としては、N−13、N−16、F−18及びO−19等がある。
【0022】
測定対象核種から実質的に同時刻に放射されるカスケードγ線を検出する複数の放射線検出器としては、一般的な放射線検出器を用いる。例えば、シンチレーション放射線検出器としては、NaI(Tl)、CsI(Ce)、LaCl3(Ce)、LaBr3(Ce)、BGO、GSO(Ce)、及びLuAG(Pr)等のいずれかを用いたシンチレーション放射線検出器であり、半導体放射線検出器としては、Si、Ge、CdTe及びCZT等を用いた半導体放射線検出器である。いずれの放射線検出器も本発明の放射線計測方法で用いることができる。
【0023】
例えば、原子炉一次系配管の内面に付着した放射性核種が、測定対象核種になる。原子炉一次系配管は、内部に炉心を配置した原子炉圧力容器に接続されている。原子炉一次系配管内を流れる冷却水は、炉心に装荷された複数の燃料集合体を冷却するために用いられる。原子炉一次系配管の内面に付着した放射性核種、及び原子炉一次系配管内を流れる冷却水に含まれた放射性核種から放射されるγ線が、原子炉一次系配管から放射される。発明者らは、その測定対象核種から放射されたカスケードγ線を対象にして検討を行った。
【0024】
原子炉一次系配管から放射されるγ線によるエネルギースペクトルの一例を図3に示す。図3に例示されたエネルギースペクトルは、Co−60を測定対象核種、N−16を妨害放射性核種としたときのエネルギースペクトルである。Co−60としては原子炉一次系配管の内面に付着したCo−60、及び原子炉一次系配管内を流れる冷却水に含まれたCo−60が存在する。N−16は原子炉一次系配管内を流れる冷却水に含まれている。
【0025】
N−16(妨害対象核種)は6.1MeVのγ線を放射し、図3に示されたエネルギースペクトルはN−16全吸収ピーク22、コンプトン散乱によるコンプトン分布23、電子対生成に起因するシングルエスケープピーク24、及びダブルエスケープピーク25等を含んでいる。原子炉一次系配管の内面に付着したCo−60の放射線強度が原子炉一次系配管内を流れる冷却水に含まれたN−16の放射線強度よりも小さいとき、Co−60全吸収ピーク領域26に存在するCo−60の異なるエネルギーを有するカスケードγ線、すなわち、1.17MeVのカスケードγ線及び1.33MeVのカスケードγ線の全吸収ピークがN−16のコンプトン分布23に隠れる可能性がある。このため、バックグラウンド成分に対してCo−60の全吸収ピークを弁別することが困難になる。
【0026】
発明者らは、異なるエネルギーを有するカスケードγ線の同時計数を行うことを考慮し、測定対象核種から放射されたエネルギーの異なる一対のカスケードγ線であって同時計数される一対のカスケードγ線の合計エネルギー(測定対象核種が複数存在する場合には、それらの測定対象核種から放射されたそれぞれのカスケードγ線のうち同時計数される一対のカスケードγ線の合計エネルギーのうち最も小さい合計エネルギー)よりも小さく、且つ測定対象核種から放射されるカスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギー(測定対象核種が複数存在する場合には、それらの測定対象核種から放射されたそれぞれのカスケードγ線のうち最も大きいエネルギー)よりも大きいエネルギーの範囲内に、γ線の高エネルギーを除去するための除去設定エネルギー(第1設定エネルギー)27を設定した(図4参照)。除去設定エネルギー27よりも大きなエネルギーを有するγ線を除去することによって、同時計数された一対のカスケードγ線の合計エネルギーを得ることができるようになった。
【0027】
例えば、Co−60では、一対のカスケードγ線の合計エネルギーが2.5MeVであるので、除去設定エネルギー27を2.0MeVにした。この結果、検出したγ線から、2.0MeVより大きなエネルギーを有するγ線を除去することにより、妨害対象核種であるN−16の高エネルギーの影響を排除することができ、偶発同時計数を抑制することができる。
【0028】
検出された、除去設定エネルギー27以下のエネルギーを有するγ線のうち、1つの放射線検出器で検出されたγ線と他の放射線検出器で検出された他のγ線の合計エネルギーが、測定対象核種から放射された一対のカスケードγ線の合計エネルギー(設定エネルギー)になったとき、それらのγ線がその測定対象核種から放射された一対のカスケードγ線であるとして、同時計数を行う。除去設定エネルギー27を超えるエネルギーを有するγ線が除去されるので、N−16高エネルギー領域28のエネルギーを有するγ線が計数されることはない。
【0029】
構造部材(例えば、原子炉一次系配管)に付着した測定対象核種(例えば、Co−60)から放射された一対のカスケードγ線(例えば、1.17MeVのカスケードγ線及び1.33MeVのカスケードγ線)を、その構造部材付近に配置した2つの放射線検出器で別々に検出する。これらの放射線検出器から出力された多数のγ線検出信号のうち、除去設定エネルギー27(一例としてCo−60の場合は、2.0MeV)を超えるエネルギーを有するγ線検出信号が除去される。それぞれの放射線検出器から出力された多数のγ線検出信号のうち、除去設定エネルギー27以下のエネルギーを有するγ線検出信号であって2つの放射線検出器から実質的に同時に別々に出力された2つのγ線検出信号を加えることによって、これらのγ線検出信号の加算信号を得ることができる。この加算信号のエネルギー(2つのγ線検出信号のそれぞれのエネルギーの合計値)が、測定対象核種から放射された一対のカスケードγ線の合計エネルギー(設定エネルギー:Co−60では2.5MeV)になったとき、それらのγ線検出信号がその測定対象核種(例えば、Co−60)から放射された一対のカスケードγ線に基づくものである。測定対象核種から放射された一対のカスケードγ線の合計エネルギーを有する加算信号のカウントにより、同時計数ピーク29(図5参照)を得ることができる。測定対象核種から放射されたエネルギーが異なるカスケードγ線の同時計数とは、測定対象核種から放射された1つのカスケードγ線を検出した1つの放射線検出器から出力されたγ線検出信号と、その測定対象核種から実質的に同時に放射されてエネルギーが異なる他のカスケードγ線を検出した他の放射線検出器から出力された他のγ線検出信号を加えることである。
【0030】
図6は、図5に示す同時計数ピーク29付近を拡大して示したものである。同時計数ピーク29付近でも、図6に示すように、偶発同時計数の成分(偶発同時計数分布31)が存在する。偶発同時計数分布31においても、偶発同時計数の計数値が極大値を示す偶発同時計数ピーク30が形成される。偶発同時計数ピーク30の計数値は同時計数ピーク29の計数値に比べて非常に小さな値である。このため、測定対象核種から放射されたカスケードγ線の同時計数の精度が著しく向上する。
【0031】
同時計数ピーク29の近傍に存在する偶発同時計数としては、例えば、測定対象核種がCo−60、及び妨害放射性核種がN−16であるとき、同時計数の対象となる一対のγ線の一方がCo−60のカスケードγ線で、もう一方がN−16のコンプトン散乱で生じる成分がCo−60のカスケードγ線近傍のエネルギーを有して放射線検出器に入力されるとき、もしくは2つの放射線検出器にN−16のコンプトン散乱で生じる成分がCo−60のカスケードγ線近傍のエネルギーを有して入力されるとき、もしくは異なる由来のCo−60カスケードγ線が2つの放射線検出器に入力されるときである。
【0032】
図6に示された偶発同時計数ピーク30及び偶発同時計数分布31は、バックグラウンド成分の一例である。偶発同時計数ピーク30は、Co−60のカスケードγ線及びN−16のコンプトン散乱で生じる各成分がCo−60のカスケードγ線13近傍のエネルギーを有して放射線検出器に入力されるとき、もしくは異なる由来のCo−60のカスケードγ線が2つの放射線検出器に入力されるときに生じる。偶発同時計数分布31は、2つの放射線検出器にN−16のコンプトン散乱で生じる成分がCo−60のカスケードγ線13近傍のエネルギーを有して入力されるとき、もしくはCo−60のカスケードγ線及びN−16のコンプトン散乱で生じる各成分がCo−60のカスケードγ線13近傍のエネルギーを有して放射線検出器に入力されるときに観測される分布である。
【0033】
以下の検討結果を考慮した、本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0034】
本発明の好適な一実施例である実施例1の放射線計測方法を、図1及び図2に基づいて説明する。
【0035】
本実施例の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置を、図1及び2を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置45は、放射線検出装置16A,16B、信号処理装置17及び表示装置11を備える。放射線検出装置16Aは放射線検出器(第1放射線検出器)1A及び放射線検出器1Aに接続された前置増幅器3Aを有し、放射線検出装置16Bは放射線検出器(第2放射線検出器)1B及び放射線検出器1Bに接続された前置増幅器3Bを有する。高圧電源2Aが放射線検出器1Aに接続され、高圧電源2Bが放射線検出器1Bに接続される。前置増幅器3A,3Bとして、帰還抵抗型前置増幅器及びトランジスタリセット型前置増幅器等が用いられる。
【0036】
放射線検出器1A,1Bとしては、一般的な放射線検出器であるシンチレーション放射線検出器(または半導体放射線検出器)を用いる。シンチレーション放射線検出器としては、NaI(Tl)、CsI(Ce)、LaCl3(Ce)、LaBr3(Ce)、BGO、GSO(Ce)、及びLuAG(Pr)等のいずれかを用いたシンチレーション放射線検出器である。半導体放射線検出器としては、Si、Ge、CdTe及びCZT等を用いた半導体放射線検出器である。
【0037】
信号処理装置17は、出力分岐器4A、高レベル波高弁別器5A、遅延回路6A、リニアゲート7A、出力分岐器4B、高レベル波高弁別器5B、遅延回路6B、リニアゲート7B、加算増幅器(加算装置)8、線形増幅器9及び多チャンネル波高分析装置(計数装置)10を備える。信号選択装置は、高レベル波高弁別器(第1ゲート信号発生装置)5A、遅延回路(第1遅延装置)6A、リニアゲート(第1ゲート装置)7A、高レベル波高弁別器(第2ゲート信号発生装置)5B、遅延回路(第2遅延装置)6B及びリニアゲート(第2ゲート装置)7Bを含んでいる。出力分岐器4A、高レベル波高弁別器5A、遅延回路6A及びリニアゲート7Aは、放射線検出器1Aから出力されたγ線検出信号を処理する。出力分岐器4Aが、前置増幅器3A及び遅延回路6Aに接続される。リニアゲート7Aが遅延回路6Aに接続される。高レベル波高弁別器5Aが、出力分岐器4A及びリニアゲート7Aに接続される。
【0038】
出力分岐器4B、高レベル波高弁別器5B、遅延回路6B及びリニアゲート7Bは、放射線検出器1Bから出力されたγ線検出信号を処理する。出力分岐器4Bが、前置増幅器3B及び遅延回路6Bに接続される。リニアゲート7Bが遅延回路6Bに接続される。高レベル波高弁別器5Bが、出力分岐器4B及びリニアゲート7Bに接続される。
【0039】
加算増幅器8が、リニアゲート7A,7Bに接続され、さらに線形増幅器9に接続される。多チャンネル波高分析装置10が線形増幅器9及び表示装置11に接続される。
【0040】
本実施例の放射線計測方法は、沸騰水型原子力プラントの原子炉一次系配管(以下、一次系配管という)を対象に放射線を計測する。沸騰水型原子力プラントは、図示されていないが、原子炉圧力容器内に炉心を配置した原子炉を有する。炉心内には、核燃料物質を含む複数の燃料集合体(図示せず)が装荷されている。一次系配管18(図2参照)は、例えば、再循環系配管であり、原子炉圧力容器に接続されている。
【0041】
沸騰水型原子力プラントの運転時において、原子炉圧力容器内の冷却水(冷却材)が、一次系配管18に設けられた再循環ポンプ(図示せず)を駆動することによって昇圧され、原子炉圧力容器内に設けられたジェットポンプ(図示せず)のノズルから噴射される。原子炉圧力容器内でノズル(図示せず)の周囲に存在する冷却水が、この噴射された冷却水の作用により、ジェットポンプのベルマウス(図示せず)内に吸引され、炉心に供給される。炉心に供給された冷却水は、燃料集合体内の核燃料物質の核分裂で発生する熱により加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、原子炉圧力容器に接続された主蒸気配管(図示せず)によりタービンに導かれる。
【0042】
保温材20が、図2に示されるように、一次系配管18の外面を取り囲んで一次系配管18に取り付けられる。原子炉圧力容器内の、放射性核種(例えば、Co−58、Co−60、Mn−54、Fe−59、N−13、N−16、F−18及びO−19等)を含む冷却水19が、一次系配管18に供給されるので、一次系配管18の内面に、測定対象核種12であるCo−58、Co−60、Mn−54及びFe−59が付着する。冷却水19に含まれたN−13、N−16、F−18及びO−19は妨害放射性核種14である。これらの妨害放射性核種14の多くは沸騰水型原子力プラントの運転時にのみ存在する短半減期核種である。バックグラウンドγ線15が妨害放射性核種14から放射される。
【0043】
放射線検出器1A,1Bは高圧電源2A,2Bから電圧を印加されることによって作動する。放射線検出器1A,1Bにそれぞれ印加される電圧は設定電圧に設定される。この設定電圧は、固定された値または任意に設定される値である。本実施例では、設定電圧を任意に調節できる高圧電源2A,2Bを用いている。高圧電源2A,2Bは、放射線検出器1A,1Bのエネルギー分解能が最適になるように、放射線検出器1A,1Bへの印加電圧を調節する。印加電圧の調節によって放射線検出器1A,1Bのエネルギー分解能がカスケードγ線13の検出において支障が生じない場合には、高圧電源2A,2Bで印加電圧を変更することによって、放射線検出器1A,1Bから出力されるそれぞれのγ線検出信号のゲイン調整が可能になる。
【0044】
放射線検出装置16A,16Bが、一次系配管18の測定領域21を向くように配置される。一次系配管18からカスケードγ線13を含む多数のγ線が放射される。放射線検出器1A,1Bに入射されたそれぞれのγ線が、放射線検出器1A,1Bで検出される。異なるエネルギーを有する一対のカスケードγ線13も、測定領域21である、一次系配管18の内面に付着した測定対象核種12から放射され、放射線検出器1A,1Bで検出される。放射線検出器1Aがγ線を検出したときに出力したγ線検出信号を便宜的にγ線検出信号Aという。放射線検出器1Bがγ線を検出したときに出力したγ線検出信号を便宜的にγ線検出信号Bという。
【0045】
本実施例では、測定領域21で一次系配管18の内面に付着した測定対象核種12をCo−60として説明する。Co−60から実質的に同一に放射された1つのカスケードγ線13は1.17MeVのカスケードγ線であり、他のカスケードγ線13は1.33MeVのカスケードγ線である。放射線検出器1Aが、1.17MeVのカスケードγ線13を検出したとき、1.17MeVのγ線検出信号Aを出力する。放射線検出器1Bが、1.33MeVのカスケードγ線13を検出したとき、1.33MeVのγ線検出信号Bを出力する。
【0046】
γ線を検出した放射線検出器1Aから出力されたγ線検出信号Aは、前置増幅器3Aに入力されて増幅される。出力分岐器4Aは、前置増幅器3Aから入力されたγ線検出信号Aを、高レベル波高弁別器5A及び遅延回路6Aのそれぞれに出力する。出力分岐器4A,4Bは、通常使用するT型コネクタ等での出力分岐器でもよい。
【0047】
高レベル波高弁別器5Aは、入力したγ線検出信号Aのエネルギーが除去設定エネルギー27より大きなエネルギーであるとき、第1ゲート開信号出力せず、入力したγ線検出信号Aのエネルギーが除去設定エネルギー27以下であるとき、第1ゲート開信号を出力する。換言すれば、高レベル波高弁別器5Aは、入力したγ線検出信号Aのエネルギーが除去設定エネルギー27以下であるときにのみ、第1ゲート開信号を出力する。高レベル波高弁別器5Aから出力された第1ゲート開信号はリニアゲート7Aに入力される。
【0048】
測定対象核種がCo−60である場合には、除去設定エネルギー27が、例えば、2.0MeVに設定される。高レベル波高弁別器5Bにも、除去設定エネルギー27として、2.0MeVが設定されている。高レベル波高弁別器5Aは、2.0MeV以下のエネルギーを有するγ線検出信号Aを入力したとき、例えば、放射線検出器1Aから1.17MeVのγ線検出信号Aを入力したとき、第1ゲート開信号をリニアゲート7Aに出力する。放射線検出器1Aが、例えば、宇宙線、及び一次系配管18内を流れる冷却水19に含まれる6.1MeVのN−16から放射されたγ線を検出したとき、放射線検出器1Aは宇宙線のエネルギーを有するγ線検出信号A1、及び6.1MeVのγ線検出信号A2を出力する。γ線検出信号A1,A2を入力した高レベル波高弁別器5Aは第1ゲート開信号を出力しない。
【0049】
高レベル波高弁別器5A,5Bに除去設定エネルギー27として設定された2.0MeVは、測定対象核種であるCo−60から放射された、同時計数される1.17MeVのカスケードγ線13及び1.33MeVのカスケードγ線13の合計エネルギー(2.5MeV)未満で、Co−60から放射されるカスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギー(1.33MeV)よりも大きいエネルギーである。例えば、Co−58、Co−60、Mn−54及びFe−59がそれぞれ測定対象核種である場合には、高レベル波高弁別器5A,5Bに設定された除去設定エネルギー27を、Co−58、Co−60、Mn−54及びFe−59のそれぞれから放射されるカスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギーよりも大きく、それらの測定対象から放射されたカスケードγ線で同時計数される一対のカスケードγ線の合計エネルギー下限値のうち最も小さい下限値よりも小さい値に設定する。
【0050】
出力分岐器4Aから出力されたγ線検出信号Aを入力した遅延回路6Aは、γ線検出信号Aを入力した時点から設定時間T1だけ遅延させてこのγ線検出信号Aを出力する。γ線検出信号Aの出力を遅延させるその設定時間T1は、高レベル波高弁別器5Aが、γ線検出信号Aを入力した時点から、入力したγ線検出信号Aのエネルギーが除去設定エネルギー27以下であるかの判定処理を行ってこの判定が「Yes」であるときに第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間である。遅延回路6Aから出力されたγ線検出信号Aがリニアゲート7Aに入力される。
【0051】
リニアゲート7Aは、高レベル波高弁別器5Aから出力された第1ゲート開信号の入力時刻と同時刻に、遅延回路6Aから入力したγ線検出信号Aを加算増幅器8に出力する。
【0052】
放射線検出器1Bから出力されたγ線検出信号Bは、前置増幅器3Bで増幅されて出力分岐器4Bに入力される。出力分岐器4Bはこのγ線検出信号Bを高レベル波高弁別器5B及び遅延回路6Bのそれぞれに出力する。高レベル波高弁別器5Bは、入力したγ線検出信号Bに対して高レベル波高弁別器5Aと同様な判定処理を行う。高レベル波高弁別器5Bに入力したγ線検出信号Bのエネルギーが、除去設定エネルギー27である2.0MeV以下のエネルギーであるとき、例えば、そのγ線検出信号Bのエネルギーが1.33MeVであるときに、高レベル波高弁別器5Bが第2ゲート開信号をリニアゲート7Bに出力する。遅延回路6Bは、遅延回路6Aと同様に、入力したγ線検出信号Bを設定時間T2だけ遅延させてリニアゲート7Bに出力する。遅延回路6Bでの遅延時間である設定時間T2は、高レベル波高弁別器5Bが、γ線検出信号Bを入力した時点から、入力したγ線検出信号Bのエネルギーが除去設定エネルギー27以下であるかの判定処理を行ってこの判定が「Yes」であるときに第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間であり、遅延回路6Aでの設定時間T1と同じである。リニアゲート7Bは、高レベル波高弁別器5Bから出力されたγ線検出信号Bの入力時刻と同時刻に、遅延回路6Bから入力したγ線検出信号Bを加算増幅器8に出力する。
【0053】
加算増幅器8は、リニアゲート7Aから出力されたγ線検出信号Aとリニアゲート7Bから出力されたγ線検出信号Bを加算する。この加算が、エネルギーが異なるカスケードγ線の同時計数である。リニアゲート7A及びリニアゲート7Bから実質的に同時刻に出力されたγ線検出信号A及びγ線検出信号Bは、測定対象核種であるCo−60から放射された1.17MeVのカスケードγ線13の放射線検出器1Aへの入射、及び1.33MeVのカスケードγ線13の放射線検出器1Bへの入射が実質的に同時に行われることによって、それぞれの放射線検出器から実質的に同時に出力されたものである。加算増幅器8は、放射線検出器1A,1Bが実質的に同時にエネルギーの異なるカスケードγ線13をそれぞれ検出したときに発生した2つのγ線検出信号(γ線検出信号A,B)を実質的に同時に入力し、これらのγ線検出信号を加算する。すなわち、これらの信号の同時計数を行う。
【0054】
線形増幅器9は、加算増幅器8でγ線検出信号Aとγ線検出信号Bを加算して(同時計数して)生成された信号(便宜的に、加算信号という)を入力し、加算信号を線形に増幅する。線形増幅器9で線形に増幅された加算信号が、多チャンネル波高分析装置10に入力される。多チャンネル波高分析装置10は、エネルギー(波高値)ごとに加算信号を計数する。測定対象核種であるCo−60から放射されるエネルギーの異なる各カスケードγ線(1.17MeVのカスケードγ線及び1.33MeVのカスケードγ線)13の合計エネルギーは、2.5MeVである。多チャンネル波高分析装置10は、入力した加算信号のうち、この2.5MeVの加算信号もカウントする。多チャンネル波高分析装置10で得られた、加算信号のエネルギー毎の計数値(ある測定対象核種から放射されたエネルギーが異なる各カスケードγ線13の合計エネルギーの計数値も含む)が、表示装置11に表示される。
【0055】
本実施例は、高レベル波高弁別器5A、遅延回路6A及びリニアゲート7Aの前述した作用により、偶発同時計数の原因となる除去設定エネルギー27(2.0MeV)よりも高いエネルギーを有するγ線検出信号Aがリニアゲート6Aから加算増幅器8に入力されることを防止することができる。また、高レベル波高弁別器5B、遅延回路6B及びリニアゲート7Bの前述した作用により、偶発同時計数の原因となる除去設定エネルギー27(2.0MeV)よりも高いエネルギーを有するγ線検出信号Bがリニアゲート6Bから加算増幅器8に入力されることを防止することができる。このため、加算増幅器8でγ線検出信号Aとγ線検出信号Bを加算(同時計数)するとき、除去設定エネルギー27よりも高いエネルギーを有するγ線検出信号Aまたはγ線検出信号Bと他のγ線検出信号の加算(偶発同時計数)を避けることができる。偶発同時計数が著しく低減されるので、除去設定エネルギー27よりも高いエネルギーを有するγ線検出信号の影響が著しく低下し、測定対象核種から放射されたエネルギーの異なる各カスケードγ線の同時計数を精度良く行うことができる。これにより、測定対象核種から放射されたエネルギーの異なる各カスケードγ線の同時計数ピーク29を精度良く観測することができる。
【0056】
本実施例は、信号選択装置(高レベル波高弁別器5A、遅延回路6A、リニアゲート7A、高レベル波高弁別器5B、遅延回路6B及びリニアゲート7B)の作用により、測定対象核種から放射されたエネルギーの異なる各カスケードγ線の合計エネルギーに相当するエネルギーを有するバックグラウンドγ線15のγ線検出信号が加算増幅器8に入力されないので、エネルギースペクトル上では高エネルギーのバックグラウンドγ線15のγ線検出信号がほとんど存在しない状態で一対のカスケードγ線の同時計数ピークの測定が可能となる。また、偶発同時計数によるバックグラウンド成分がエネルギースペクトルに出現する場合でも、測定対象核種から放射された各カスケードγ線の合計エネルギーで同時計数ピークを判別できるので、高精度のカスケードγ線同時計数が可能となる。
【0057】
リニアゲート7Aが、高レベル波高弁別器5Aから第1ゲート開信号を入力したときに、遅延回路6Aから入力したγ線検出信号Aを加算増幅器8に出力し、リニアゲート7Bが、高レベル波高弁別器5Bから第2ゲート開信号を入力したときに、遅延回路6Bから入力したγ線検出信号Bを加算増幅器8に出力しているので、ある測定対象核種から出力された1つのカスケードγ線を検出した放射線検出器1Aの出力であるγ線検出信号A、及びその測定対象核種から実質的に同時に出力されたエネルギーが異なる他のカスケードγ線を検出した放射線検出器1Bの出力であるγ線検出信号Bを、実質的に同時に加算増幅器8に入力することができる。これにより、γ線検出信号A,Bに時間情報を付与する構成を設ける必要がなく、単純な構成で測定対象核種から放射されたエネルギーの異なるカスケードγ線の同時計数を行うことができる。
【0058】
多チャンネル波高分析装置10では、Co−60から放射される一対のカスケードγ線13に対する2.5MeVだけでなく、Co−58から放射される一対のカスケードγ線の合計エネルギー、Mn−54から放射される一対のカスケードγ線の合計エネルギー、及びFe−59から放射される一対のカスケードγ線の合計エネルギーを有するそれぞれの加算信号をカウントすることができる。これらの計数値も表示装置11に表示される。
【0059】
偶発同時計数を著しく抑制することができる本実施例の放射線計測方法は、沸騰水型原子力発電プラントの、例えば、一次系配管18の近傍に、放射線計測装置45の放射線検出器1A,1Bを配置することにより、妨害放射性核種14から放射されるバックグラウンドγ線の線量率が高い沸騰水型原子力発電プラントの運転時において、一次系配管18の測定領域における線量率を精度良く継続して計測することができる。
【実施例2】
【0060】
本発明の他の実施例である実施例2の放射線計測方法を、図7に基づいて説明する。
【0061】
まず、本実施例の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置を、図7を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置45Aは、実施例1の放射線計測装置45において信号処理装置17を信号処理装置17Aに替えた構成を有する。放射線計測装置45Aの他の構成は放射線計測装置45と同じである。信号処理装置17Aは信号処理装置17において高レベル波高弁別器5A,5Bを高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bに替えた構成を有し、信号処理装置17Aの他の構成は信号処理装置17と同じである。
【0062】
実施例1で用いられる信号処理装置17と異なっている高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bでの処理を中心にして、本実施例の放射線計測方法を説明する。
【0063】
放射線検出器1A,1Bは、実施例1と同様に、一次系配管18の測定領域21で一次系配管18の内面に付着した測定対象核種12から放射されたエネルギーの異なるカスケードγ線13を別々に検出する。放射線検出器1Aから出力されたγ線検出信号Aが、前置増幅器3A及び出力分岐器4Aを経て高レベル・低レベル波高弁別器32A及び遅延回路6Aに入力される。放射線検出器1Bから出力されたγ線検出信号Bが、前置増幅器3B及び出力分岐器4Bを経て高レベル・低レベル波高弁別器32B及び遅延回路6Bに入力される。
【0064】
高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bは、除去設定エネルギー27(第1設定エネルギー)だけでなく除去設定エネルギー49(第2設定エネルギー)も設定している。除去設定エネルギー49は、除去設定エネルギー27よりも低いエネルギーであり、測定対象核種の全吸収ピーク領域(測定対象核種がCo−60である場合には、Co−60の全吸収ピーク領域26)の下限エネルギーよりも小さく、エネルギーが0よりも大きいエネルギーに設定される。除去設定エネルギー27と除去設定エネルギー49の間のエネルギー領域は、図8に示すように、ゲート通過領域34である。高レベル・低レベル波高弁別器32Aは、このゲート通過領域34に含まれるエネルギーを有するγ線検出信号A(除去設定エネルギー27と除去設定エネルギー49の間のエネルギーを有するγ線検出信号A)を入力したとき、第1ゲート開信号をリニアゲート7Aに出力する。高レベル・低レベル波高弁別器32Bは、このゲート通過領域34に含まれるエネルギーを有するγ線検出信号B(除去設定エネルギー27と除去設定エネルギー49の間のエネルギーを有するγ線検出信号B)を入力したとき、第21ゲート開信号をリニアゲート7Bに出力する。本実施例では、測定対象核種をCo−60にしたので、高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bで設定された除去設定エネルギー27が2.0MeVであり、除去設定エネルギー49が1.0MeVである。ただし、除去設定エネルギー27及び除去設定エネルギー49はこの数値に限定するものではない。
【0065】
本実施例における遅延回路6Aで入力したγ線検出信号Aを遅延させる設定時間T3は、高レベル・低レベル波高弁別器32Aが、γ線検出信号Aを入力した時点から、入力したγ線検出信号Aのエネルギーがゲート通過領域34内のエネルギーであるときに第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間である。遅延回路6Bで入力したγ線検出信号Bを遅延させる設定時間T4は、高レベル・低レベル波高弁別器32Bが、γ線検出信号Bを入力した時点から、入力したγ線検出信号Bのエネルギーがゲート通過領域34内のエネルギーであるときに第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間である。遅延回路6Bでの設定時間T4は、遅延回路6Aでの設定時間T3と同じである。
【0066】
放射線検出器1A,1Bのそれぞれが検出する妨害放射性核種14による、測定対象核種12(一例としてCo−60とする)のCo−60全吸収ピーク領域26よりも低いエネルギーのγ線またはX線は、測定対象核種から放射されたカスケードγ線13の同時計数によって得られる同時計数ピーク29とは関係がない成分である。実施例1のように、リニアゲート7A、7Bにおいて除去設定エネルギー27を超えるエネルギーを有するγ線検出信号A,Bの加算増幅器8への出力を阻止しただけでは、加算増幅器8で得られた低エネルギーのγ線(またはX線)と他のγ線の加算信号が、多チャンネル波高分析装置10に入力される可能性がある。
【0067】
低エネルギーのγ線(またはX線)を反映した加算信号が多チャンネル波高分析装置10に入力されて多チャンネル波高分析装置10がこの加算信号をカウントした場合には、多チャンネル波高分析装置10に備えるアナログ−デジタル変換時間による不感時間が増大する可能性がある。除去設定エネルギー27を超えたエネルギーを有するγ線検出信号及び除去設定エネルギー49未満のエネルギーを有するγ線検出信号を入力したときにゲート開信号(第1及び第2ゲート開信号)を出力しない高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bを備えた放射線計測装置45Aは、放射線検出器1A,1Bにより同じ測定時間で測定領域21から放射されるγ線を検出したとき、除去設定エネルギー27を超えたエネルギーを有するγ線検出信号を入力したときにだけ、ゲート開信号を出力しない高レベル波高弁別器5A,5Bを備えた放射線計測装置45よりも、不感時間の短縮により、多チャンネル波高分析装置10で得られた同時計数の計数値が多くなる。したがって、高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bを備えた放射線計測装置45Aにおける測定誤差を小さくすることができる。
【0068】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bを備えているので、測定対象核種12のカスケードγ線13よりも低いエネルギーのγ線(もしくはX線)が高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bからほとんど出力されない。このため、多チャンネル波高分析装置10での不感時間を抑制することができ、より速くて精度の高い同時計数を行うことができる。
【実施例3】
【0069】
本発明の他の実施例である実施例3の放射線計測方法を、図9に基づいて説明する。
【0070】
まず、本実施例の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置を、図9を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置45Bは、実施例1の放射線計測装置45において信号処理装置17を信号処理装置17Bに替え、温度計35及びゲイン調整装置(制御装置)36を追加した構成を有する。放射線計測装置45Bの他の構成は放射線計測装置45と同じである。信号処理装置17Bはゲイン調整装置36の出力に基づいて加算増幅器8のゲインを調節できるようにした点が信号処理装置17と異なっており、信号処理装置17Bの他の構成は信号処理装置17と同じである。
【0071】
温度計35が放射線検出器1A,1Bが配置された領域に設置される。温度計35がゲイン調整装置36に接続され、ゲイン調整装置36が高圧電源2A,2B及び加算増幅器8に接続される。温度計35としては、熱電対及び測温抵抗体などの一般的な温度計を用いる。
【0072】
本実施例の放射線計測方法において、実施例1の放射線計測方法と異なる部分を中心に説明する。温度計35は、放射線検出器1A,1Bが設置された領域で放射線検出器1A,1B付近の温度を計測する。計測された温度が、温度計35からゲイン調整装置36に入力される。ゲイン調整装置36は、入力した温度に基づいて、高圧電源2A,2B及び加算増幅器8を制御する。具体的には、ゲイン調整装置36は、高圧電源2Aを制御して高圧電源2Aから放射線検出器1Aに印加する電圧を調節し、高圧電源2Bを制御して高圧電源2Bから放射線検出器1Bに印加する電圧を調節し、加算増幅器8を制御して加算増幅器8のゲイン値を調整する。
【0073】
信号処理装置17Bは、信号処理装置17と同様に、前置増幅器3A,3Bから出力されたγ線検出信号A,Bを処理する。多チャンネル波高分析装置10は、加算増幅器8から出力された加算信号をカウントする。
【0074】
放射線検出器1A,1Bでは出力するγ線検出信号の出力レベルが温度依存性を有する。温度計35で計測された温度に基づいて高圧電源2A,2Bを制御して放射線検出器1A,1Bのそれぞれに印加する電圧を調節することで放射線検出器1A,1Bのそれぞれの出力ゲインを調整できるので、放射線検出器1A,1Bの温度依存性を解消することができ、これらの放射線検出器から出力されるγ線検出信号に対する温度補償を行うことができる。したがって、放射線検出器1A,1Bから出力されるγ線検出信号の温度による変化を抑制することができ、より精度の良いγ線検出信号を各放射線検出器から出力することができる。
【0075】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、温度計35で計測された放射線検出器1A,1B付近の温度を入力するゲイン調整装置36によって、放射線検出器1A,1Bに印加される各電圧が調節され、加算増幅器8のゲインが調節されるので、多チャンネル波高分析装置10によって得られるエネルギースペクトルのエネルギー分解能の劣化を抑制することができる。
【0076】
放射線計測装置45Bは、図10に示された放射線計測装置45Cのように、また、図11に示された放射線計測装置45Dのように、変更してもよい。放射線計測装置45Cは、温度計35の出力を入力するゲイン調整装置36により、高圧電源2A,2Bから放射線検出器1A,1Bに印加する電圧を調節する構成を有する。放射線計測装置45Cでは、ゲイン調整装置36により加算増幅器8のゲインを調節することは行われない。放射線計測装置45Dは、温度計35の出力を入力するゲイン調整装置36により、加算増幅器8のゲインを調節する構成を有する。放射線計測装置45Dでは、ゲイン調整装置36により高圧電源2A,2Bを制御することは行われない。放射線計測装置45C及び40Dにおけるゲイン調整装置36以外の構成は、放射線計測装置45Bと同じである。放射線計測装置45C及び40Dは、放射線計測装置45Bにおけるゲイン調整装置36の機能の一部を有している。
【実施例4】
【0077】
本発明の他の実施例である実施例4の放射線計測方法を、図12に基づいて説明する。
【0078】
まず、本実施例の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置を、図12を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置45Eは、実施例1の放射線計測装置45において信号処理装置17を信号処理装置17Eに替えた構成を有する。放射線計測装置45Eの他の構成は放射線計測装置45と同じである。信号処理装置17Eは信号処理装置17において同時計数カウンタ37を追加した構成を有している。信号処理装置17Eの他の構成は信号処理装置17と同じである。同時計数カウンタ37が、多チャンネル波高分析装置10及び表示装置11に接続される。
【0079】
本実施例の放射線計測方法においては、一次冷却系配管18の内面で測定領域21に付着した測定対象核種12から放射された、異なるエネルギーを有する一対のカスケードγ線13が別々に放射線検出器1A,1Bで検出される。これらの検出器からそれぞれ出力されたγ線検出信号A,Bが、実施例1で用いられた信号処理装置17と同様に、高レベル波高弁別器、遅延回路及びリニアゲートで処理され、加算増幅器8に入力される。加算増幅器で生成された加算信号が線形増幅器9を経て多チャンネル波高分析装置10に入力される。多チャンネル波高分析装置10は加算信号のエネルギーに対応した加算信号の計数値を出力する。これらの計数値は同時計数カウンタ37及び表示装置11に入力される。同時計数カウンタ37は、入力した、各加算信号のエネルギーに対応する計数値を用いて、測定対象核種12ごとに放射された一対のカスケードγ線のエネルギーの合計エネルギーに対する計数値を求める。このように、同時計数カウンタ37によって、測定対象各種12から放射された一対のカスケードγ線を同時計数することができる。
【0080】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、同時計数カウンタ37を備えているので、測定対象各種12から放射された一対のカスケードγ線の同時計数値を容易に知ることができる。
【0081】
同時計数カウンタ37を、多チャンネル波高分析装置10ではなく線形増幅器9に接続しても良い。同時計数カウンタ37は、線形増幅器9から出力された加算信号のうち、測定対象核種から放射された、異なるエネルギーを有する一対のカスケードγ線の合計エネルギーを有する加算信号をカウントする。これによって、その一対のカスケードγ線の同時計数を行うことができる。
【実施例5】
【0082】
本発明の他の実施例である実施例5の放射線計測方法を、図13に基づいて説明する。
【0083】
まず、本実施例の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置を、図13を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置45Gは、放射線検出装置16C,16D、信号処理装置17G及び表示装置11を備える。さらに、放射線計測装置45Gは、高圧電源2A,2B,40A,40Bを有する。
【0084】
放射線検出装置16Cは、放射線検出装置16Aにコンプトンサプレッション用検出器39A及び前置増幅器41Aを追加した構成を有する。放射線検出装置16Cの他の構成は放射線検出装置16Aと同じである。コンプトンサプレッション用検出器39Aが前置増幅器41A及び高圧電源40Aに接続される。コンプトンサプレッション用検出器39Aは放射線検出器1Aの周りを取り囲んでいる。放射線検出装置16Dは、放射線検出装置16Bにコンプトンサプレッション用検出器39B及び前置増幅器41Bを追加した構成を有する。放射線検出装置16Dの他の構成は放射線検出装置16Dと同じである。コンプトンサプレッション用検出器39Bが前置増幅器41B及び高圧電源40Bに接続される。コンプトンサプレッション用検出器39Bは放射線検出器1Bの周りを取り囲んでいる。
【0085】
コンプトンサプレッション用検出器39A,39Bは、放射線検出器1A,1Bと同様に、一般的な放射線検出器であるシンチレーション放射線検出器(または半導体放射線検出器)を用いる。シンチレーション放射線検出器としては、NaI(Tl)、CsI(Ce)、LaCl3(Ce)、LaBr3(Ce)、BGO、GSO(Ce)、及びLuAG(Pr)等のいずれかを用いたシンチレーション放射線検出器である。半導体放射線検出器としては、Si、Ge、CdTe及びCZT等を用いた半導体放射線検出器である。
【0086】
信号処理装置17Gは、信号処理装置17においてリニアゲート7A,7Bをリニアゲート43A,43Bに替え、遅延回路42A,42Bを追加した構成を有する。信号処理装置17Gの他の構成は信号処理装置17と同じである。遅延回路42Aが前置増幅器41A及びリニアゲート43Aに接続される。リニアゲート43Aが、高レベル波高弁別器5A,遅延回路6A及び加算増幅器8に接続される。遅延回路42Bが前置増幅器41B及びリニアゲート43Bに接続される。リニアゲート43Bが、高レベル波高弁別器5B,遅延回路6B及び加算増幅器8に接続される。本実施例における信号選択装置は、高レベル波高弁別器5A、遅延回路6A、遅延回路(第3遅延装置)42A、リニアゲート(第3ゲート装置)43A、高レベル波高弁別器5B、遅延回路6B、遅延回路(第4遅延装置)42B及びリニアゲート(第4ゲート装置)43Bを含んでいる。
【0087】
本実施例の放射線計測方法を説明する。放射線検出器1A,1B及びコンプトンサプレッション用検出器39A,39Bが、例えば、沸騰水型原子力プラントの一次系配管18付近に配置される。放射線検出器1A,1Bは、一次系配管18の測定領域21を向いている。沸騰水型原子力プラントの運転時において、一次系配管18から放射されるそれぞれのγ線が放射線検出器1A,1Bで検出される。測定領域21で一次系配管18の内面に付着している測定対象核種(例えば、Co−60)から放射された、異なるエネルギーの一対のカスケードγ線13のうちの1つを放射線検出器1Aで検出し、他方のカスケードγ線13を放射線検出器1Bで検出したとする。
【0088】
放射線検出器1Aから出力されたγ線検出信号Aが高レベル波高弁別器5A及び遅延回路6Aに入力される。高レベル波高弁別器5Aは、実施例1で用いられる信号処理装置17と同様に、入力したγ線検出信号Aのエネルギーが除去設定エネルギー27以下のエネルギーであるとき、第1ゲート開信号をリニアゲート43Aに出力する。高レベル波高弁別器5Aは、入力したγ線検出信号Aのエネルギーが除去設定エネルギー27より大きなエネルギーであるとき、第1ゲート開信号をリニアゲート43Aに出力しない。遅延回路6Aは、入力したγ線検出信号を、実施例1と同様に、高レベル波高弁別器5Aでの第1ゲート開信号の出力に要する時間である設定時間T1だけ遅延させてリニアゲート43Aに出力する。
【0089】
コンプトンサプレッション用検出器39Aは、放射線検出器1Aに入射されて放射線検出器1Aでコンプトン散乱したγ線を検出する。コンプトン散乱したγ線を検出したコンプトンサプレッション用検出器39Aが、γ線検出信号A3を出力する。γ線検出信号A3を入力した遅延回路42Aは、γ線検出信号A3を設定時間T5だけ遅延させてリニアゲート43Aに出力する。設定時間T5は、放射線検出器1Aがγ線を検出して出力したγ線検出信号Aがリニアゲート43Aに入力されるまでに要する時間と、このγ線が放射線検出器1Aでコンプトン散乱してコンプトンサプレッション用検出器39Aで検出されたときにコンプトンサプレッション用検出器39Aから出力されたγ線検出信号A3がリニアゲート43Aに入力されるまでに要する時間が同じになるように設定される。
【0090】
リニアゲート43Aは、高レベル波高弁別器5Aから出力された第1ゲート開信号の入力時刻と実質的に同じ時刻に遅延回路6Aからγ線検出信号Aを入力し、その時刻に遅延回路42からのγ線検出信号A3の入力がないときに、遅延回路6Aから入力したγ線検出信号Aを加算増幅器8に出力する。リニアゲート43Aは、遅延回路42Aからγ線検出信号A3を入力したときには遅延回路6Aからのγ線検出信号Aを出力しない。
【0091】
放射線検出器1Bから出力されたγ線検出信号Bが高レベル波高弁別器5B及び遅延回路6Bに入力される。高レベル波高弁別器5Bは、実施例1で用いられる信号処理装置17と同様に、γ線検出信号Bのエネルギーが除去設定エネルギー27以下のエネルギーであるとき、第2ゲート開信号をリニアゲート43Bに出力する。
【0092】
コンプトンサプレッション用検出器39Bは、放射線検出器1Bに入射されて放射線検出器1Bでコンプトン散乱したγ線を検出する。コンプトン散乱したγ線を検出したコンプトンサプレッション用検出器39Bが、γ線検出信号B3を出力する。γ線検出信号B3を入力した遅延回路42Bは、γ線検出信号B3を設定時間T6だけ遅延させてリニアゲート43Bに出力する。設定時間T6は、放射線検出器1Bがγ線を検出して出力したγ線検出信号Bがリニアゲート43Bに入力されるまでに要する時間と、このγ線が放射線検出器1Bでコンプトン散乱してコンプトンサプレッション用検出器39Bで検出されたときにコンプトンサプレッション用検出器39Bから出力されたγ線検出信号ABがリニアゲート43Bに入力されるまでに要する時間が同じになるように設定される。設定時間T5と設定時間T6は同じである。
【0093】
リニアゲート43Bは、高レベル波高弁別器5Bから出力された第2ゲート開信号の入力時刻と実質的に同じ時刻に遅延回路6Bからγ線検出信号Bを入力し、その時刻に遅延回路42Bからのγ線検出信号B3の入力がないときに、遅延回路6Bから入力したγ線検出信号Bを加算増幅器8に出力する。リニアゲート43Bは、遅延回路42Bからγ線検出信号B3を入力したときには遅延回路6Bからのγ線検出信号Bを出力しない。
【0094】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、コンプトンサプレッション用検出器39A,39Bを有しているので、放射線検出器1A,1Bでコンプトン散乱したγ線をコンプトンサプレッション用検出器39A,39Bで検出することができる。コンプトンサプレッション用検出器39A,39Bによってコンプトン散乱したγ線を検出した場合には、リニアゲート43A,43Bの機能により、遅延回路6A,6Bから出力されたγ線検出信号A,Bが加算増幅器8に入力されない。このため、妨害放射性核種14のバックグラウンドγ線15に起因したコンプトン分布23の計数を抑制することができる。したがって、バックグラウンドγ線15のコンプトン散乱で生じる、カスケードγ線13近傍のエネルギーを有するγ線が検出されることに起因した、偶発同時計数を抑制することができる。本実施例におけるカスケードγ線の同時係数の精度をさらに向上させることができる。
【0095】
放射線計測装置45Gは、図14に示された放射線計測装置45Hのように、変更してもよい。放射線計測装置45Hは、放射線計測装置45Gにおいて信号処理装置17Gを信号処理装置17Hに替えた構成を有する。放射線計測装置45Hの他の構成は放射線計測装置45Gと同じである。
【0096】
信号処理装置17Hは、信号処理装置17Gにおいて波高弁別器46A,46Bを追加した構成を有する。信号処理装置17Hの他の構成は信号処理装置17Gと同じである。波高弁別器46Aが前置増幅器41A及び遅延回路42Aに接続される。波高弁別器46Bが前置増幅器41B及び遅延回路42Bに接続される。
【0097】
波高弁別器46Aは、前置増幅器41Aから入力するγ線検出信号A3のうち高設定エネルギーよりも大きなエネルギー(または高設定エネルギーよりも大きなエネルギー及び高設定エネルギーよりもエネルギーが低い低設定エネルギー未満のエネルギーのいずれかのエネルギー)を有するγ線検出信号A3を除去し、高設定エネルギー以下のエネルギー(または高設定エネルギーと低設定エネルギーの間のエネルギー)を有するγ線検出信号A3を遅延回路42Aに出力する。波高弁別器46Bは、前置増幅器41Bから入力するγ線検出信号B3のうち高設定エネルギー以下のエネルギー(または高設定エネルギーと低設定エネルギーの間のエネルギー)を有するγ線検出信号B3のみを遅延回路42Bに出力する。信号処理装置17Hにおける、波高弁別器46A,46B以外の各構成要素は、信号処理装置17Gにおけるそれらと同様に機能する。ただし、遅延回路42A,42Bの設定時間T5,T6は、波高弁別器46A,46Bでの処理に要する時間だけ、放射線計測装置45Gでの設定時間T5,T6よりも短くなる。
【0098】
放射線計測装置45Hは、放射線計測装置45Gで生じる各効果を得ることができる。さらに、放射線計測装置45Hは波高弁別器46A,46Bの設置によって、放射線検出器1A,1Bの周囲に設置する可能性がある金属により生じる制動X線による出力を除去すること、宇宙線などの高エネルギーγ線を除去することが可能になる。
【実施例6】
【0099】
本発明の他の実施例である実施例6の放射線計測方法を、図15に基づいて説明する。
【0100】
本実施例の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置を、図15を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置45Iは、実施例1の放射線計測装置45において信号処理装置17を信号処理装置17Iに替えた構成を有する。放射線計測装置45Iの他の構成は放射線計測装置45と同じである。
【0101】
信号処理装置17Iは、信号処理装置17をデジタルシグナルプロセッサ(DSP)で構成したDSP装置48である。DSP装置48は、前置増幅器3A,3Bから出力されたγ線検出信号A,Bのデジタル処理を実行する。このようなDSP装置48は、アナログ処理を行う信号処理装置17に設けられた出力分岐器4A,4B、高レベル波高弁別器5A,5B、遅延回路6A,6B、リニアゲート7A,7B、加算増幅器8、線形増幅器9及び多チャンネル波高分析装置10のそれぞれの処理機能を有する。
【0102】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、信号処理装置17Iでデジタル処理を実行するので、実施例1よりも高速及び高精度のカスケードγ線同時計数が可能となる。
【実施例7】
【0103】
本発明の他の実施例である実施例7の放射線計測方法を、図16に基づいて説明する。
【0104】
本実施例の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置を、図16を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置45Jは、実施例1の放射線計測装置45において放射線検出装置16Eを追加し、信号処理装置17を信号処理装置17Jに替えた構成を有する。放射線計測装置45Jの他の構成は放射線計測装置45と同じである。
【0105】
放射線検出装置16Eは、放射線検出器1C及び放射線検出器1Cに接続された前置増幅器3Cを有する。高圧電源2Cが放射線検出器1Cに接続される。信号処理装置17Jは、信号処理装置17において出力分岐器4C、高レベル波高弁別器5C、遅延回路6C及びリニアゲート7Cを追加した構成を有する。信号処理装置17Jの他の構成は信号処理装置17と同じである。
【0106】
前置増幅器3Cに接続された出力分岐器4Cが、高レベル波高弁別器5C及び遅延回路6Cに接続される。リニアゲート7Cが、高レベル波高弁別器5C、遅延回路6C及び加算増幅器8に接続される。
【0107】
放射線検出器1A,1B,1Cが一次系配管18の測定領域21に向って配置される。一次系配管18の測定領域21から放射されたそれぞれのγ線が、放射線検出器1A,1B,1Cによって検出される。出力分岐器4C、高レベル波高弁別器5C、遅延回路6C及びリニアゲート7Cは、出力分岐器4A、高レベル波高弁別器5A、遅延回路6A及びリニアゲート7Aと同様に機能する。
【0108】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、実施例1よりも、放射線検出装置及び信号処理装置の処理系(出力分岐器、高レベル波高弁別器、遅延回路及びリニアゲート)の数を増加しているので、放射線計測装置45Jにおけるカスケードγ線13の検出効率が向上し、同時計数ピーク29を短時間で測定することが可能となる。
【0109】
以上に述べた各実施例は、沸騰水型原子力プラントの一次系配管に適用した放射線計測方法であるが、加圧水型原子力プラント及び高速増殖炉プラント等の他の原子力プラント、及び核燃料再処理施設等の核燃料物質取り扱い施設における放射線計測に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、原子力プラント及び核燃料再処理施設等の核燃料物質取り扱い施設における放射線計装に適用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1A,1B,1C…放射線検出器、2A,2B,2C,40A,40B…高圧電源、4A,4B,4C…出力分岐器、5A,5B,5C…高レベル波高弁別器、6A,6B,6C,42A,42B…遅延回路、7A,7B,7C,43A,43B…リニアゲート、8…加算増幅器、10…多チャンネル波高分析器、17,17A〜17E,17G〜17J…信号処理装置、35…温度計、36…ゲイン調整装置、37…同時計数カウンタ、39A,39B…コンプトンサプレッション用検出器、45,45A〜45E,45G〜45J…放射線計測装置、48…DSP装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線計測方法及び放射線計測装置に係り、特に、測定対象の放射性核種から放射するカスケードγ線を計測するのに好適な放射線計測方法及び放射線計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの運転中では、原子炉格納容器内の放射線線量率がそのプラントの定期検査時に比べて非常に高いため、原子炉一次系配管(例えば、原子炉圧力容器に接続された再循環系配管)に対して、定期検査時に使用する可搬型サーベイメータでの測定は行われていない。また、原子力プラント運転中では、可搬型サーベイメータ以外の一般的な放射線モニタを用いた原子炉一次系配管の放射線計測も行われていない。
【0003】
原子力プラントの運転中に、可搬型サーベイメータを含む一般的な放射線モニタを用いて、原子炉一次系配管の放射線計測を行う場合には、放射線モニタによる測定対象核種は、原子炉一次系配管の内面に付着しているCo−60、Co−58、Mn−54、Fe−59等である。原子力プラント運転中では、原子炉一次系配管内を流れている冷却水に含まれる妨害放射性核種(N−13、N−16、F−18、O−19等)によるバックグラウンドγ線が存在するため、原子炉一次系配管に設けた放射線モニタによる測定対象核種の測定が困難である。バックグラウンドγ線の影響を最小限にするためには、測定対象核種から放射されたカスケードγ線の同時計数方法を適用することが考えられる。
【0004】
放射線の同時計数方法を適用した放射線モニタシステムが、特開平8−101275号公報及び特開平11−194170号公報にて提案されている。特開平8−101275号公報に記載された放射線モニタシステムは、主検出器とゲート用検出器の間に測定対象を配置して測定対象から放射されたカスケードγ線を主検出器及びゲート用検出器でそれぞれ検出している。ゲート用検出器から放射線検出信号が出力された場合には、非同時計数回路が主検出器から出力された放射線検出信号を遮断するので、主検出器から出力された放射線検出信号がカウンタに入力されない。カウンタは、ゲート用検出器から放射線検出信号が出力されないときに、非同時計数回路に入力された、主検出器からの放射線検出信号を計数する。これにより、β+崩壊によって発生するγ線(N−13等の妨害放射性核種から放射する消滅γ線)が計数されず、主検出器から出力された、測定対象の放射線検出信号のみを計数することができる。
【0005】
特開平8−101275号公報は、2つの放射線検出器から出力されたそれぞれの放射線検出信号に対して同時判定を行い、同時と判定された放射線検出信号に対して信号処理を行う放射性物質検査装置を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−101275号公報
【特許文献2】特開平11−194170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、後述するように、測定対象核種から複数のエネルギーを有するカスケードγ線が測定対象核種から同時に放射されたとき、このカスケードγ線の同時計数が困難になる場合があることを新たに見出した。複数のエネルギーを有するカスケードγ線の同時計数に対応するためは、複数のエネルギーを有するカスケードγ線を検出するそれぞれの放射線検出器に接続された各波高弁別器の出力レベルの領域を広げ、検出したカスケードγ線のエネルギーを有する放射線検出信号に対応する必要がある。しかし、波高弁別器の出力レベルの領域を広げた場合には、偶発同時計数が生じて計測精度が劣化する可能性がある。特に、妨害放射性核種の影響が強い場合、すなわち、バックグラウンドγ線の線量率が測定対象核種のカスケードγ線より高い場合には、従来の同時計数方法を用いても計測が困難である。
【0008】
特開平8−101275号公報及び特開平11−194170号公報に記載された同時計数方法を適用したそれぞれの放射線モニタシステムは、測定対象核種から同時に放射されたカスケードγ線のエネルギーが異なる場合に対する対応がなされていない。
【0009】
本発明の目的は、エネルギーが異なるカスケードγ線の同時計数の精度を向上させることができる放射線計測方法及び放射線計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、測定対象核種から放射された、エネルギーが異なるカスケードγ線を第1放射線検出器及び第2放射線検出器でそれぞれ検出し、
その測定対象核種から放射された、同時計数されるそれぞれのカスケードγ線の合計エネルギーよりも小さくて、且つその測定対象核種から放射されたそれらのカスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギーよりも大きいエネルギーの範囲に設定された第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する第1γ線検出信号と、第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成し、
その測定対象核種から放射されたエネルギーが異なるカスケードγ線の合計エネルギーを有する前記加算信号をカウントすることにある。
【0011】
第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号と、第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成するので、第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーを有するγ線の影響を受けた偶発同時計数を抑制することができる。したがって、第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーを有するγ線が放射される環境下に存在する測定対象核種から放射されたエネルギーの異なるカスケードγ線の同時計数の精度を向上させることができる。
【0012】
好ましくは、第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号を、第1ゲート信号発生装置及び第1遅延装置にそれぞれ入力し、第1ゲート信号発生装置が、入力した第1γ線検出信号のエネルギーが第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第1ゲート開信号を出力しないで、入力した第1γ線検出信号のエネルギーが第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに第1ゲート開信号を出力し、第1遅延装置が、入力した第1γ線検出信号を、第1ゲート信号発生装置がこの第1γ線検出信号を入力してから第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、第1ゲート装置が、第1ゲート信号発生装置から第1ゲート開信号を入力したときに、第1遅延装置から入力した第1γ線検出信号を加算装置に出力し、
第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を、第2ゲート信号発生装置及び第2遅延装置にそれぞれ入力し、第2ゲート信号発生装置が、入力した第2γ線検出信号のエネルギーが第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第2ゲート開信号を出力しないで、入力した第2γ線検出信号のエネルギーが第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに第2ゲート開信号を出力し、第2遅延装置が、入力した第2γ線検出信号を、第2ゲート信号発生装置がこの第2γ線検出信号を入力してから第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、第2ゲート装置が、第2ゲート信号発生装置から第2ゲート開信号を入力したときに、第2遅延装置から入力した第2γ線検出信号を加算装置に出力し、
加算信号の生成を、第1ゲート装置から出力された第1γ線検出信号及び第2ゲート装置から出力された第2γ線検出信号を入力した加算装置によって行うことが望ましい。
【0013】
第1ゲート装置が、第1ゲート信号発生装置から第1ゲート開信号を入力したときに、第1遅延装置から入力した第1γ線検出信号を加算装置に出力し、第2ゲート装置が、第2ゲート信号発生装置から第2ゲート開信号を入力したときに、第2遅延装置から入力した第2γ線検出信号を前記加算装置に出力しているので、ある測定対象核種から出力された1つのカスケードγ線を検出した第1放射線検出器の出力である第1γ線検出信号、及びその測定対象核種から実質的に同時に出力されたエネルギーが異なる他のカスケードγ線を検出した第2放射線検出器の出力である第2γ線検出信号を、実質的に同時に加算装置に入力することができる。これにより、第1及び第2γ線検出信号に時間情報を付与する構成が不要であり、簡単な構成で測定対象核種から放射されたエネルギーの異なるカスケードγ線の同時計数を行うことができる。さらに、上記したように、測定対象核種から放射されたエネルギーの異なるカスケードγ線の同時計数の精度を向上させることができる。
【0014】
また、測定対象核種から放射された、エネルギーが異なるカスケードγ線を第1放射線検出器及び第2放射線検出器でそれぞれ検出し、
第3放射線検出器が第1放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出したときに第3γ線検出信号を出力し、第4放射線検出器が第2放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出したときに第4γ線検出信号を出力し、
第3放射線検出器が第3γ線検出信号を出力しなくて第4放射線検出器が第4γ線検出信号を出力しないときに、その測定対象核種から放射された、同時計数されるカスケードγ線の合計エネルギーよりも小さく、且つ測定対象核種から放射されたカスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギーよりも大きいエネルギーの範囲に設定された第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する第1γ線検出信号と、第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成し、
測定対象核種から放射されたエネルギーが異なる前記カスケードγ線の合計エネルギーを有する加算信号をカウントすることによっても、本発明の目的を達成することができる。
【0015】
第3放射線検出器が第1放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出したときに第3γ線検出信号を出力し、第4放射線検出器が第2放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出したときに第4γ線検出信号を出力し、第3放射線検出器が第3γ線検出信号を出力しなくて第4放射線検出器が第4γ線検出信号を出力しないときに、第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する第1γ線検出信号と、第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成するので、第1放射線検出器または第2放射線検出器内でγ線のコンプトン散乱が生じた場合には、コンプトン散乱したγ線のγ線検出信号が加算装置に入力されない。このため、バックグラウンドγ線のコンプトン散乱で生じたγ線でカスケードγ線近傍のエネルギーを有するγ線が検出されることに起因した偶発同時計数を抑制することができる。したがって、測定対象核種から放射されたエネルギーの異なるカスケードγ線の同時計数の精度をさらに向上させることができる。
【0016】
好ましくは、第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号を、第1ゲート信号発生装置及び第1遅延装置にそれぞれ入力し、第1ゲート信号発生装置が、入力した第1γ線検出信号のエネルギーが第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるとき、第1ゲート開信号を出力しないで、入力した第1γ線検出信号のエネルギーが第1設定エネルギー以下のエネルギーであるとき、第1ゲート開信号を出力し、第1遅延装置が、入力した第1γ線検出信号を、第1ゲート信号発生装置がこの第1γ線検出信号を入力してから第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、第3放射線検出器から出力された第3γ線検出信号を第3遅延装置に入力し、第1遅延装置が、入力した第1γ線検出信号を出力するときに、第3遅延装置が、入力した第3γ線検出信号を出力し、第1ゲート装置が、第3遅延装置から第3γ線検出信号が出力されないときで第1ゲート信号発生装置から第1ゲート開信号を入力したときに、第1遅延装置から入力した第1γ線検出信号を加算装置に出力し、
第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を、第2ゲート信号発生装置及び第2遅延装置にそれぞれ入力し、第2ゲート信号発生装置が、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるとき、第2ゲート開信号を出力しないで、入力した第2γ線検出信号のエネルギーが前1設定エネルギー以下のエネルギーであるとき、第2ゲート開信号を出力し、第2遅延装置が、入力した第2γ線検出信号を、第2ゲート信号発生装置がこの第2γ線検出信号を入力してから第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、第4放射線検出器から出力された第4γ線検出信号を第4遅延装置に入力し、第2遅延装置が、入力した第2γ線検出信号を出力するときに、第4遅延装置が、入力した第4γ線検出信号を出力し、第2ゲート装置が、第4遅延装置から第4γ線検出信号が出力されないときで第2ゲート信号発生装置から第2ゲート開信号を入力したときに、第2遅延装置から入力した第2γ線検出信号を前記加算装置に出力し、
加算信号の生成を、第1ゲート装置から出力された第1γ線検出信号及び第2ゲート装置から出力された第2γ線検出信号を入力した加算装置によって行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、偶発同時計数を抑制することができ、エネルギーが異なるカスケードγ線の同時計数を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適な一実施例である実施例1の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置の構成図である。
【図2】図1に示す放射線検出装置を測定対象の原子炉一次系配管付近に配置した状態を示す説明図である。
【図3】沸騰水型原子力プラントの運転時における原子炉一次配管から放射されたγ線のエネルギースペクトルの一例を示す説明図である。
【図4】図3に示されたエネルギースペクトルにおいて同時計数ピークの下限よりも小さいエネルギーに設定された除去設定エネルギーを示す説明図である。
【図5】除去設定エネルギーよりも大きなエネルギーを有するγ線検出信号を除去した状態でのγ線のエネルギースペクトルを示す説明図である。
【図6】図5に示されたエネルギースペクトルにおいて同時計数ピーク付近の拡大図である。
【図7】本発明の他の実施例である実施例2の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置の構成図である。
【図8】実施例2において得られたγ線のエネルギースペクトルを示す説明図である。
【図9】本発明の他の実施例である実施例3の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置の構成図である。
【図10】実施例3で用いる放射線計測装置の変形例の構成図である。
【図11】実施例3で用いる放射線計測装置の他の変形例の構成図である。
【図12】本発明の他の実施例である実施例4の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置の構成図である。
【図13】本発明の他の実施例である実施例5の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置の構成図である。
【図14】実施例5で用いる放射線計測装置の変形例の構成図である。
【図15】本発明の他の実施例である実施例6の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置の構成図である。
【図16】本発明の他の実施例である実施例7の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明者らは、測定対象核種から複数のエネルギーを有するカスケードγ線が放射された場合には、偶発同時計数がなされ、これらのカスケードγ線の同時計数が困難になる場合があることを新たに見出した。そこで、発明者らは、複数のエネルギーを有するカスケードγ線における偶発同時計数を避けて複数のエネルギーを有するカスケードγ線の同時計数の精度を向上させるために、バックグラウンドγ線の線量率が測定対象核種の複数のエネルギーを有するカスケードγ線より高い場合であっても、複数のエネルギーを有するカスケードγ線の同時計数を精度良く行うことができるカスケードγ線の同時計数の方法を検討した。この検討結果を以下に説明する。
【0020】
カスケードγ線を放射する放射性核種としては、例えば、Al−26、K−42、Ti−51、V−48、Mn−52、Mn−54、Co−56、Co−58、Co−60、Y−88、Nb−94、Ag−110、In−116、Sb−124、Te−132、Cs−134、Tl−208等がある。カスケードγ線の放射過程について説明する。例えば、Co−60は、半減期5.27年でβ−崩壊を起こす。この崩壊により、Co−60は励起状態のNi−60に壊変される。励起状態のNi−60は基底状態となるので、この基底状態のエネルギーを有するカスケードγ線が励起状態のNi−60から放射される。このカスケードγ線は、2つ以上のエネルギーを有しており、4π方向へほぼ同時刻に放射される。励起状態のNi−60から放射された、例えば、1.17MeVのエネルギーを有するγ線と1.33MeVのエネルギーを有するγ線の、Ni−60から放射される時間差はおよそ0.4psである。この時間差は、通常の放射線モニタシステムのパルス計測処理時間では同時刻になるので、無視することができる。他の放射性核種からのカスケードγ線の放射に伴うその時間差も、Ni−60から放射されたカスケードγ線における時間差と同様に無視することができる。
【0021】
例えば、原子炉一次系配管内を流れる冷却水に含まれる妨害放射性核種としては、N−13、N−16、F−18及びO−19等がある。
【0022】
測定対象核種から実質的に同時刻に放射されるカスケードγ線を検出する複数の放射線検出器としては、一般的な放射線検出器を用いる。例えば、シンチレーション放射線検出器としては、NaI(Tl)、CsI(Ce)、LaCl3(Ce)、LaBr3(Ce)、BGO、GSO(Ce)、及びLuAG(Pr)等のいずれかを用いたシンチレーション放射線検出器であり、半導体放射線検出器としては、Si、Ge、CdTe及びCZT等を用いた半導体放射線検出器である。いずれの放射線検出器も本発明の放射線計測方法で用いることができる。
【0023】
例えば、原子炉一次系配管の内面に付着した放射性核種が、測定対象核種になる。原子炉一次系配管は、内部に炉心を配置した原子炉圧力容器に接続されている。原子炉一次系配管内を流れる冷却水は、炉心に装荷された複数の燃料集合体を冷却するために用いられる。原子炉一次系配管の内面に付着した放射性核種、及び原子炉一次系配管内を流れる冷却水に含まれた放射性核種から放射されるγ線が、原子炉一次系配管から放射される。発明者らは、その測定対象核種から放射されたカスケードγ線を対象にして検討を行った。
【0024】
原子炉一次系配管から放射されるγ線によるエネルギースペクトルの一例を図3に示す。図3に例示されたエネルギースペクトルは、Co−60を測定対象核種、N−16を妨害放射性核種としたときのエネルギースペクトルである。Co−60としては原子炉一次系配管の内面に付着したCo−60、及び原子炉一次系配管内を流れる冷却水に含まれたCo−60が存在する。N−16は原子炉一次系配管内を流れる冷却水に含まれている。
【0025】
N−16(妨害対象核種)は6.1MeVのγ線を放射し、図3に示されたエネルギースペクトルはN−16全吸収ピーク22、コンプトン散乱によるコンプトン分布23、電子対生成に起因するシングルエスケープピーク24、及びダブルエスケープピーク25等を含んでいる。原子炉一次系配管の内面に付着したCo−60の放射線強度が原子炉一次系配管内を流れる冷却水に含まれたN−16の放射線強度よりも小さいとき、Co−60全吸収ピーク領域26に存在するCo−60の異なるエネルギーを有するカスケードγ線、すなわち、1.17MeVのカスケードγ線及び1.33MeVのカスケードγ線の全吸収ピークがN−16のコンプトン分布23に隠れる可能性がある。このため、バックグラウンド成分に対してCo−60の全吸収ピークを弁別することが困難になる。
【0026】
発明者らは、異なるエネルギーを有するカスケードγ線の同時計数を行うことを考慮し、測定対象核種から放射されたエネルギーの異なる一対のカスケードγ線であって同時計数される一対のカスケードγ線の合計エネルギー(測定対象核種が複数存在する場合には、それらの測定対象核種から放射されたそれぞれのカスケードγ線のうち同時計数される一対のカスケードγ線の合計エネルギーのうち最も小さい合計エネルギー)よりも小さく、且つ測定対象核種から放射されるカスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギー(測定対象核種が複数存在する場合には、それらの測定対象核種から放射されたそれぞれのカスケードγ線のうち最も大きいエネルギー)よりも大きいエネルギーの範囲内に、γ線の高エネルギーを除去するための除去設定エネルギー(第1設定エネルギー)27を設定した(図4参照)。除去設定エネルギー27よりも大きなエネルギーを有するγ線を除去することによって、同時計数された一対のカスケードγ線の合計エネルギーを得ることができるようになった。
【0027】
例えば、Co−60では、一対のカスケードγ線の合計エネルギーが2.5MeVであるので、除去設定エネルギー27を2.0MeVにした。この結果、検出したγ線から、2.0MeVより大きなエネルギーを有するγ線を除去することにより、妨害対象核種であるN−16の高エネルギーの影響を排除することができ、偶発同時計数を抑制することができる。
【0028】
検出された、除去設定エネルギー27以下のエネルギーを有するγ線のうち、1つの放射線検出器で検出されたγ線と他の放射線検出器で検出された他のγ線の合計エネルギーが、測定対象核種から放射された一対のカスケードγ線の合計エネルギー(設定エネルギー)になったとき、それらのγ線がその測定対象核種から放射された一対のカスケードγ線であるとして、同時計数を行う。除去設定エネルギー27を超えるエネルギーを有するγ線が除去されるので、N−16高エネルギー領域28のエネルギーを有するγ線が計数されることはない。
【0029】
構造部材(例えば、原子炉一次系配管)に付着した測定対象核種(例えば、Co−60)から放射された一対のカスケードγ線(例えば、1.17MeVのカスケードγ線及び1.33MeVのカスケードγ線)を、その構造部材付近に配置した2つの放射線検出器で別々に検出する。これらの放射線検出器から出力された多数のγ線検出信号のうち、除去設定エネルギー27(一例としてCo−60の場合は、2.0MeV)を超えるエネルギーを有するγ線検出信号が除去される。それぞれの放射線検出器から出力された多数のγ線検出信号のうち、除去設定エネルギー27以下のエネルギーを有するγ線検出信号であって2つの放射線検出器から実質的に同時に別々に出力された2つのγ線検出信号を加えることによって、これらのγ線検出信号の加算信号を得ることができる。この加算信号のエネルギー(2つのγ線検出信号のそれぞれのエネルギーの合計値)が、測定対象核種から放射された一対のカスケードγ線の合計エネルギー(設定エネルギー:Co−60では2.5MeV)になったとき、それらのγ線検出信号がその測定対象核種(例えば、Co−60)から放射された一対のカスケードγ線に基づくものである。測定対象核種から放射された一対のカスケードγ線の合計エネルギーを有する加算信号のカウントにより、同時計数ピーク29(図5参照)を得ることができる。測定対象核種から放射されたエネルギーが異なるカスケードγ線の同時計数とは、測定対象核種から放射された1つのカスケードγ線を検出した1つの放射線検出器から出力されたγ線検出信号と、その測定対象核種から実質的に同時に放射されてエネルギーが異なる他のカスケードγ線を検出した他の放射線検出器から出力された他のγ線検出信号を加えることである。
【0030】
図6は、図5に示す同時計数ピーク29付近を拡大して示したものである。同時計数ピーク29付近でも、図6に示すように、偶発同時計数の成分(偶発同時計数分布31)が存在する。偶発同時計数分布31においても、偶発同時計数の計数値が極大値を示す偶発同時計数ピーク30が形成される。偶発同時計数ピーク30の計数値は同時計数ピーク29の計数値に比べて非常に小さな値である。このため、測定対象核種から放射されたカスケードγ線の同時計数の精度が著しく向上する。
【0031】
同時計数ピーク29の近傍に存在する偶発同時計数としては、例えば、測定対象核種がCo−60、及び妨害放射性核種がN−16であるとき、同時計数の対象となる一対のγ線の一方がCo−60のカスケードγ線で、もう一方がN−16のコンプトン散乱で生じる成分がCo−60のカスケードγ線近傍のエネルギーを有して放射線検出器に入力されるとき、もしくは2つの放射線検出器にN−16のコンプトン散乱で生じる成分がCo−60のカスケードγ線近傍のエネルギーを有して入力されるとき、もしくは異なる由来のCo−60カスケードγ線が2つの放射線検出器に入力されるときである。
【0032】
図6に示された偶発同時計数ピーク30及び偶発同時計数分布31は、バックグラウンド成分の一例である。偶発同時計数ピーク30は、Co−60のカスケードγ線及びN−16のコンプトン散乱で生じる各成分がCo−60のカスケードγ線13近傍のエネルギーを有して放射線検出器に入力されるとき、もしくは異なる由来のCo−60のカスケードγ線が2つの放射線検出器に入力されるときに生じる。偶発同時計数分布31は、2つの放射線検出器にN−16のコンプトン散乱で生じる成分がCo−60のカスケードγ線13近傍のエネルギーを有して入力されるとき、もしくはCo−60のカスケードγ線及びN−16のコンプトン散乱で生じる各成分がCo−60のカスケードγ線13近傍のエネルギーを有して放射線検出器に入力されるときに観測される分布である。
【0033】
以下の検討結果を考慮した、本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0034】
本発明の好適な一実施例である実施例1の放射線計測方法を、図1及び図2に基づいて説明する。
【0035】
本実施例の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置を、図1及び2を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置45は、放射線検出装置16A,16B、信号処理装置17及び表示装置11を備える。放射線検出装置16Aは放射線検出器(第1放射線検出器)1A及び放射線検出器1Aに接続された前置増幅器3Aを有し、放射線検出装置16Bは放射線検出器(第2放射線検出器)1B及び放射線検出器1Bに接続された前置増幅器3Bを有する。高圧電源2Aが放射線検出器1Aに接続され、高圧電源2Bが放射線検出器1Bに接続される。前置増幅器3A,3Bとして、帰還抵抗型前置増幅器及びトランジスタリセット型前置増幅器等が用いられる。
【0036】
放射線検出器1A,1Bとしては、一般的な放射線検出器であるシンチレーション放射線検出器(または半導体放射線検出器)を用いる。シンチレーション放射線検出器としては、NaI(Tl)、CsI(Ce)、LaCl3(Ce)、LaBr3(Ce)、BGO、GSO(Ce)、及びLuAG(Pr)等のいずれかを用いたシンチレーション放射線検出器である。半導体放射線検出器としては、Si、Ge、CdTe及びCZT等を用いた半導体放射線検出器である。
【0037】
信号処理装置17は、出力分岐器4A、高レベル波高弁別器5A、遅延回路6A、リニアゲート7A、出力分岐器4B、高レベル波高弁別器5B、遅延回路6B、リニアゲート7B、加算増幅器(加算装置)8、線形増幅器9及び多チャンネル波高分析装置(計数装置)10を備える。信号選択装置は、高レベル波高弁別器(第1ゲート信号発生装置)5A、遅延回路(第1遅延装置)6A、リニアゲート(第1ゲート装置)7A、高レベル波高弁別器(第2ゲート信号発生装置)5B、遅延回路(第2遅延装置)6B及びリニアゲート(第2ゲート装置)7Bを含んでいる。出力分岐器4A、高レベル波高弁別器5A、遅延回路6A及びリニアゲート7Aは、放射線検出器1Aから出力されたγ線検出信号を処理する。出力分岐器4Aが、前置増幅器3A及び遅延回路6Aに接続される。リニアゲート7Aが遅延回路6Aに接続される。高レベル波高弁別器5Aが、出力分岐器4A及びリニアゲート7Aに接続される。
【0038】
出力分岐器4B、高レベル波高弁別器5B、遅延回路6B及びリニアゲート7Bは、放射線検出器1Bから出力されたγ線検出信号を処理する。出力分岐器4Bが、前置増幅器3B及び遅延回路6Bに接続される。リニアゲート7Bが遅延回路6Bに接続される。高レベル波高弁別器5Bが、出力分岐器4B及びリニアゲート7Bに接続される。
【0039】
加算増幅器8が、リニアゲート7A,7Bに接続され、さらに線形増幅器9に接続される。多チャンネル波高分析装置10が線形増幅器9及び表示装置11に接続される。
【0040】
本実施例の放射線計測方法は、沸騰水型原子力プラントの原子炉一次系配管(以下、一次系配管という)を対象に放射線を計測する。沸騰水型原子力プラントは、図示されていないが、原子炉圧力容器内に炉心を配置した原子炉を有する。炉心内には、核燃料物質を含む複数の燃料集合体(図示せず)が装荷されている。一次系配管18(図2参照)は、例えば、再循環系配管であり、原子炉圧力容器に接続されている。
【0041】
沸騰水型原子力プラントの運転時において、原子炉圧力容器内の冷却水(冷却材)が、一次系配管18に設けられた再循環ポンプ(図示せず)を駆動することによって昇圧され、原子炉圧力容器内に設けられたジェットポンプ(図示せず)のノズルから噴射される。原子炉圧力容器内でノズル(図示せず)の周囲に存在する冷却水が、この噴射された冷却水の作用により、ジェットポンプのベルマウス(図示せず)内に吸引され、炉心に供給される。炉心に供給された冷却水は、燃料集合体内の核燃料物質の核分裂で発生する熱により加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、原子炉圧力容器に接続された主蒸気配管(図示せず)によりタービンに導かれる。
【0042】
保温材20が、図2に示されるように、一次系配管18の外面を取り囲んで一次系配管18に取り付けられる。原子炉圧力容器内の、放射性核種(例えば、Co−58、Co−60、Mn−54、Fe−59、N−13、N−16、F−18及びO−19等)を含む冷却水19が、一次系配管18に供給されるので、一次系配管18の内面に、測定対象核種12であるCo−58、Co−60、Mn−54及びFe−59が付着する。冷却水19に含まれたN−13、N−16、F−18及びO−19は妨害放射性核種14である。これらの妨害放射性核種14の多くは沸騰水型原子力プラントの運転時にのみ存在する短半減期核種である。バックグラウンドγ線15が妨害放射性核種14から放射される。
【0043】
放射線検出器1A,1Bは高圧電源2A,2Bから電圧を印加されることによって作動する。放射線検出器1A,1Bにそれぞれ印加される電圧は設定電圧に設定される。この設定電圧は、固定された値または任意に設定される値である。本実施例では、設定電圧を任意に調節できる高圧電源2A,2Bを用いている。高圧電源2A,2Bは、放射線検出器1A,1Bのエネルギー分解能が最適になるように、放射線検出器1A,1Bへの印加電圧を調節する。印加電圧の調節によって放射線検出器1A,1Bのエネルギー分解能がカスケードγ線13の検出において支障が生じない場合には、高圧電源2A,2Bで印加電圧を変更することによって、放射線検出器1A,1Bから出力されるそれぞれのγ線検出信号のゲイン調整が可能になる。
【0044】
放射線検出装置16A,16Bが、一次系配管18の測定領域21を向くように配置される。一次系配管18からカスケードγ線13を含む多数のγ線が放射される。放射線検出器1A,1Bに入射されたそれぞれのγ線が、放射線検出器1A,1Bで検出される。異なるエネルギーを有する一対のカスケードγ線13も、測定領域21である、一次系配管18の内面に付着した測定対象核種12から放射され、放射線検出器1A,1Bで検出される。放射線検出器1Aがγ線を検出したときに出力したγ線検出信号を便宜的にγ線検出信号Aという。放射線検出器1Bがγ線を検出したときに出力したγ線検出信号を便宜的にγ線検出信号Bという。
【0045】
本実施例では、測定領域21で一次系配管18の内面に付着した測定対象核種12をCo−60として説明する。Co−60から実質的に同一に放射された1つのカスケードγ線13は1.17MeVのカスケードγ線であり、他のカスケードγ線13は1.33MeVのカスケードγ線である。放射線検出器1Aが、1.17MeVのカスケードγ線13を検出したとき、1.17MeVのγ線検出信号Aを出力する。放射線検出器1Bが、1.33MeVのカスケードγ線13を検出したとき、1.33MeVのγ線検出信号Bを出力する。
【0046】
γ線を検出した放射線検出器1Aから出力されたγ線検出信号Aは、前置増幅器3Aに入力されて増幅される。出力分岐器4Aは、前置増幅器3Aから入力されたγ線検出信号Aを、高レベル波高弁別器5A及び遅延回路6Aのそれぞれに出力する。出力分岐器4A,4Bは、通常使用するT型コネクタ等での出力分岐器でもよい。
【0047】
高レベル波高弁別器5Aは、入力したγ線検出信号Aのエネルギーが除去設定エネルギー27より大きなエネルギーであるとき、第1ゲート開信号出力せず、入力したγ線検出信号Aのエネルギーが除去設定エネルギー27以下であるとき、第1ゲート開信号を出力する。換言すれば、高レベル波高弁別器5Aは、入力したγ線検出信号Aのエネルギーが除去設定エネルギー27以下であるときにのみ、第1ゲート開信号を出力する。高レベル波高弁別器5Aから出力された第1ゲート開信号はリニアゲート7Aに入力される。
【0048】
測定対象核種がCo−60である場合には、除去設定エネルギー27が、例えば、2.0MeVに設定される。高レベル波高弁別器5Bにも、除去設定エネルギー27として、2.0MeVが設定されている。高レベル波高弁別器5Aは、2.0MeV以下のエネルギーを有するγ線検出信号Aを入力したとき、例えば、放射線検出器1Aから1.17MeVのγ線検出信号Aを入力したとき、第1ゲート開信号をリニアゲート7Aに出力する。放射線検出器1Aが、例えば、宇宙線、及び一次系配管18内を流れる冷却水19に含まれる6.1MeVのN−16から放射されたγ線を検出したとき、放射線検出器1Aは宇宙線のエネルギーを有するγ線検出信号A1、及び6.1MeVのγ線検出信号A2を出力する。γ線検出信号A1,A2を入力した高レベル波高弁別器5Aは第1ゲート開信号を出力しない。
【0049】
高レベル波高弁別器5A,5Bに除去設定エネルギー27として設定された2.0MeVは、測定対象核種であるCo−60から放射された、同時計数される1.17MeVのカスケードγ線13及び1.33MeVのカスケードγ線13の合計エネルギー(2.5MeV)未満で、Co−60から放射されるカスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギー(1.33MeV)よりも大きいエネルギーである。例えば、Co−58、Co−60、Mn−54及びFe−59がそれぞれ測定対象核種である場合には、高レベル波高弁別器5A,5Bに設定された除去設定エネルギー27を、Co−58、Co−60、Mn−54及びFe−59のそれぞれから放射されるカスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギーよりも大きく、それらの測定対象から放射されたカスケードγ線で同時計数される一対のカスケードγ線の合計エネルギー下限値のうち最も小さい下限値よりも小さい値に設定する。
【0050】
出力分岐器4Aから出力されたγ線検出信号Aを入力した遅延回路6Aは、γ線検出信号Aを入力した時点から設定時間T1だけ遅延させてこのγ線検出信号Aを出力する。γ線検出信号Aの出力を遅延させるその設定時間T1は、高レベル波高弁別器5Aが、γ線検出信号Aを入力した時点から、入力したγ線検出信号Aのエネルギーが除去設定エネルギー27以下であるかの判定処理を行ってこの判定が「Yes」であるときに第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間である。遅延回路6Aから出力されたγ線検出信号Aがリニアゲート7Aに入力される。
【0051】
リニアゲート7Aは、高レベル波高弁別器5Aから出力された第1ゲート開信号の入力時刻と同時刻に、遅延回路6Aから入力したγ線検出信号Aを加算増幅器8に出力する。
【0052】
放射線検出器1Bから出力されたγ線検出信号Bは、前置増幅器3Bで増幅されて出力分岐器4Bに入力される。出力分岐器4Bはこのγ線検出信号Bを高レベル波高弁別器5B及び遅延回路6Bのそれぞれに出力する。高レベル波高弁別器5Bは、入力したγ線検出信号Bに対して高レベル波高弁別器5Aと同様な判定処理を行う。高レベル波高弁別器5Bに入力したγ線検出信号Bのエネルギーが、除去設定エネルギー27である2.0MeV以下のエネルギーであるとき、例えば、そのγ線検出信号Bのエネルギーが1.33MeVであるときに、高レベル波高弁別器5Bが第2ゲート開信号をリニアゲート7Bに出力する。遅延回路6Bは、遅延回路6Aと同様に、入力したγ線検出信号Bを設定時間T2だけ遅延させてリニアゲート7Bに出力する。遅延回路6Bでの遅延時間である設定時間T2は、高レベル波高弁別器5Bが、γ線検出信号Bを入力した時点から、入力したγ線検出信号Bのエネルギーが除去設定エネルギー27以下であるかの判定処理を行ってこの判定が「Yes」であるときに第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間であり、遅延回路6Aでの設定時間T1と同じである。リニアゲート7Bは、高レベル波高弁別器5Bから出力されたγ線検出信号Bの入力時刻と同時刻に、遅延回路6Bから入力したγ線検出信号Bを加算増幅器8に出力する。
【0053】
加算増幅器8は、リニアゲート7Aから出力されたγ線検出信号Aとリニアゲート7Bから出力されたγ線検出信号Bを加算する。この加算が、エネルギーが異なるカスケードγ線の同時計数である。リニアゲート7A及びリニアゲート7Bから実質的に同時刻に出力されたγ線検出信号A及びγ線検出信号Bは、測定対象核種であるCo−60から放射された1.17MeVのカスケードγ線13の放射線検出器1Aへの入射、及び1.33MeVのカスケードγ線13の放射線検出器1Bへの入射が実質的に同時に行われることによって、それぞれの放射線検出器から実質的に同時に出力されたものである。加算増幅器8は、放射線検出器1A,1Bが実質的に同時にエネルギーの異なるカスケードγ線13をそれぞれ検出したときに発生した2つのγ線検出信号(γ線検出信号A,B)を実質的に同時に入力し、これらのγ線検出信号を加算する。すなわち、これらの信号の同時計数を行う。
【0054】
線形増幅器9は、加算増幅器8でγ線検出信号Aとγ線検出信号Bを加算して(同時計数して)生成された信号(便宜的に、加算信号という)を入力し、加算信号を線形に増幅する。線形増幅器9で線形に増幅された加算信号が、多チャンネル波高分析装置10に入力される。多チャンネル波高分析装置10は、エネルギー(波高値)ごとに加算信号を計数する。測定対象核種であるCo−60から放射されるエネルギーの異なる各カスケードγ線(1.17MeVのカスケードγ線及び1.33MeVのカスケードγ線)13の合計エネルギーは、2.5MeVである。多チャンネル波高分析装置10は、入力した加算信号のうち、この2.5MeVの加算信号もカウントする。多チャンネル波高分析装置10で得られた、加算信号のエネルギー毎の計数値(ある測定対象核種から放射されたエネルギーが異なる各カスケードγ線13の合計エネルギーの計数値も含む)が、表示装置11に表示される。
【0055】
本実施例は、高レベル波高弁別器5A、遅延回路6A及びリニアゲート7Aの前述した作用により、偶発同時計数の原因となる除去設定エネルギー27(2.0MeV)よりも高いエネルギーを有するγ線検出信号Aがリニアゲート6Aから加算増幅器8に入力されることを防止することができる。また、高レベル波高弁別器5B、遅延回路6B及びリニアゲート7Bの前述した作用により、偶発同時計数の原因となる除去設定エネルギー27(2.0MeV)よりも高いエネルギーを有するγ線検出信号Bがリニアゲート6Bから加算増幅器8に入力されることを防止することができる。このため、加算増幅器8でγ線検出信号Aとγ線検出信号Bを加算(同時計数)するとき、除去設定エネルギー27よりも高いエネルギーを有するγ線検出信号Aまたはγ線検出信号Bと他のγ線検出信号の加算(偶発同時計数)を避けることができる。偶発同時計数が著しく低減されるので、除去設定エネルギー27よりも高いエネルギーを有するγ線検出信号の影響が著しく低下し、測定対象核種から放射されたエネルギーの異なる各カスケードγ線の同時計数を精度良く行うことができる。これにより、測定対象核種から放射されたエネルギーの異なる各カスケードγ線の同時計数ピーク29を精度良く観測することができる。
【0056】
本実施例は、信号選択装置(高レベル波高弁別器5A、遅延回路6A、リニアゲート7A、高レベル波高弁別器5B、遅延回路6B及びリニアゲート7B)の作用により、測定対象核種から放射されたエネルギーの異なる各カスケードγ線の合計エネルギーに相当するエネルギーを有するバックグラウンドγ線15のγ線検出信号が加算増幅器8に入力されないので、エネルギースペクトル上では高エネルギーのバックグラウンドγ線15のγ線検出信号がほとんど存在しない状態で一対のカスケードγ線の同時計数ピークの測定が可能となる。また、偶発同時計数によるバックグラウンド成分がエネルギースペクトルに出現する場合でも、測定対象核種から放射された各カスケードγ線の合計エネルギーで同時計数ピークを判別できるので、高精度のカスケードγ線同時計数が可能となる。
【0057】
リニアゲート7Aが、高レベル波高弁別器5Aから第1ゲート開信号を入力したときに、遅延回路6Aから入力したγ線検出信号Aを加算増幅器8に出力し、リニアゲート7Bが、高レベル波高弁別器5Bから第2ゲート開信号を入力したときに、遅延回路6Bから入力したγ線検出信号Bを加算増幅器8に出力しているので、ある測定対象核種から出力された1つのカスケードγ線を検出した放射線検出器1Aの出力であるγ線検出信号A、及びその測定対象核種から実質的に同時に出力されたエネルギーが異なる他のカスケードγ線を検出した放射線検出器1Bの出力であるγ線検出信号Bを、実質的に同時に加算増幅器8に入力することができる。これにより、γ線検出信号A,Bに時間情報を付与する構成を設ける必要がなく、単純な構成で測定対象核種から放射されたエネルギーの異なるカスケードγ線の同時計数を行うことができる。
【0058】
多チャンネル波高分析装置10では、Co−60から放射される一対のカスケードγ線13に対する2.5MeVだけでなく、Co−58から放射される一対のカスケードγ線の合計エネルギー、Mn−54から放射される一対のカスケードγ線の合計エネルギー、及びFe−59から放射される一対のカスケードγ線の合計エネルギーを有するそれぞれの加算信号をカウントすることができる。これらの計数値も表示装置11に表示される。
【0059】
偶発同時計数を著しく抑制することができる本実施例の放射線計測方法は、沸騰水型原子力発電プラントの、例えば、一次系配管18の近傍に、放射線計測装置45の放射線検出器1A,1Bを配置することにより、妨害放射性核種14から放射されるバックグラウンドγ線の線量率が高い沸騰水型原子力発電プラントの運転時において、一次系配管18の測定領域における線量率を精度良く継続して計測することができる。
【実施例2】
【0060】
本発明の他の実施例である実施例2の放射線計測方法を、図7に基づいて説明する。
【0061】
まず、本実施例の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置を、図7を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置45Aは、実施例1の放射線計測装置45において信号処理装置17を信号処理装置17Aに替えた構成を有する。放射線計測装置45Aの他の構成は放射線計測装置45と同じである。信号処理装置17Aは信号処理装置17において高レベル波高弁別器5A,5Bを高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bに替えた構成を有し、信号処理装置17Aの他の構成は信号処理装置17と同じである。
【0062】
実施例1で用いられる信号処理装置17と異なっている高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bでの処理を中心にして、本実施例の放射線計測方法を説明する。
【0063】
放射線検出器1A,1Bは、実施例1と同様に、一次系配管18の測定領域21で一次系配管18の内面に付着した測定対象核種12から放射されたエネルギーの異なるカスケードγ線13を別々に検出する。放射線検出器1Aから出力されたγ線検出信号Aが、前置増幅器3A及び出力分岐器4Aを経て高レベル・低レベル波高弁別器32A及び遅延回路6Aに入力される。放射線検出器1Bから出力されたγ線検出信号Bが、前置増幅器3B及び出力分岐器4Bを経て高レベル・低レベル波高弁別器32B及び遅延回路6Bに入力される。
【0064】
高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bは、除去設定エネルギー27(第1設定エネルギー)だけでなく除去設定エネルギー49(第2設定エネルギー)も設定している。除去設定エネルギー49は、除去設定エネルギー27よりも低いエネルギーであり、測定対象核種の全吸収ピーク領域(測定対象核種がCo−60である場合には、Co−60の全吸収ピーク領域26)の下限エネルギーよりも小さく、エネルギーが0よりも大きいエネルギーに設定される。除去設定エネルギー27と除去設定エネルギー49の間のエネルギー領域は、図8に示すように、ゲート通過領域34である。高レベル・低レベル波高弁別器32Aは、このゲート通過領域34に含まれるエネルギーを有するγ線検出信号A(除去設定エネルギー27と除去設定エネルギー49の間のエネルギーを有するγ線検出信号A)を入力したとき、第1ゲート開信号をリニアゲート7Aに出力する。高レベル・低レベル波高弁別器32Bは、このゲート通過領域34に含まれるエネルギーを有するγ線検出信号B(除去設定エネルギー27と除去設定エネルギー49の間のエネルギーを有するγ線検出信号B)を入力したとき、第21ゲート開信号をリニアゲート7Bに出力する。本実施例では、測定対象核種をCo−60にしたので、高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bで設定された除去設定エネルギー27が2.0MeVであり、除去設定エネルギー49が1.0MeVである。ただし、除去設定エネルギー27及び除去設定エネルギー49はこの数値に限定するものではない。
【0065】
本実施例における遅延回路6Aで入力したγ線検出信号Aを遅延させる設定時間T3は、高レベル・低レベル波高弁別器32Aが、γ線検出信号Aを入力した時点から、入力したγ線検出信号Aのエネルギーがゲート通過領域34内のエネルギーであるときに第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間である。遅延回路6Bで入力したγ線検出信号Bを遅延させる設定時間T4は、高レベル・低レベル波高弁別器32Bが、γ線検出信号Bを入力した時点から、入力したγ線検出信号Bのエネルギーがゲート通過領域34内のエネルギーであるときに第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間である。遅延回路6Bでの設定時間T4は、遅延回路6Aでの設定時間T3と同じである。
【0066】
放射線検出器1A,1Bのそれぞれが検出する妨害放射性核種14による、測定対象核種12(一例としてCo−60とする)のCo−60全吸収ピーク領域26よりも低いエネルギーのγ線またはX線は、測定対象核種から放射されたカスケードγ線13の同時計数によって得られる同時計数ピーク29とは関係がない成分である。実施例1のように、リニアゲート7A、7Bにおいて除去設定エネルギー27を超えるエネルギーを有するγ線検出信号A,Bの加算増幅器8への出力を阻止しただけでは、加算増幅器8で得られた低エネルギーのγ線(またはX線)と他のγ線の加算信号が、多チャンネル波高分析装置10に入力される可能性がある。
【0067】
低エネルギーのγ線(またはX線)を反映した加算信号が多チャンネル波高分析装置10に入力されて多チャンネル波高分析装置10がこの加算信号をカウントした場合には、多チャンネル波高分析装置10に備えるアナログ−デジタル変換時間による不感時間が増大する可能性がある。除去設定エネルギー27を超えたエネルギーを有するγ線検出信号及び除去設定エネルギー49未満のエネルギーを有するγ線検出信号を入力したときにゲート開信号(第1及び第2ゲート開信号)を出力しない高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bを備えた放射線計測装置45Aは、放射線検出器1A,1Bにより同じ測定時間で測定領域21から放射されるγ線を検出したとき、除去設定エネルギー27を超えたエネルギーを有するγ線検出信号を入力したときにだけ、ゲート開信号を出力しない高レベル波高弁別器5A,5Bを備えた放射線計測装置45よりも、不感時間の短縮により、多チャンネル波高分析装置10で得られた同時計数の計数値が多くなる。したがって、高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bを備えた放射線計測装置45Aにおける測定誤差を小さくすることができる。
【0068】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bを備えているので、測定対象核種12のカスケードγ線13よりも低いエネルギーのγ線(もしくはX線)が高レベル・低レベル波高弁別器32A,32Bからほとんど出力されない。このため、多チャンネル波高分析装置10での不感時間を抑制することができ、より速くて精度の高い同時計数を行うことができる。
【実施例3】
【0069】
本発明の他の実施例である実施例3の放射線計測方法を、図9に基づいて説明する。
【0070】
まず、本実施例の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置を、図9を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置45Bは、実施例1の放射線計測装置45において信号処理装置17を信号処理装置17Bに替え、温度計35及びゲイン調整装置(制御装置)36を追加した構成を有する。放射線計測装置45Bの他の構成は放射線計測装置45と同じである。信号処理装置17Bはゲイン調整装置36の出力に基づいて加算増幅器8のゲインを調節できるようにした点が信号処理装置17と異なっており、信号処理装置17Bの他の構成は信号処理装置17と同じである。
【0071】
温度計35が放射線検出器1A,1Bが配置された領域に設置される。温度計35がゲイン調整装置36に接続され、ゲイン調整装置36が高圧電源2A,2B及び加算増幅器8に接続される。温度計35としては、熱電対及び測温抵抗体などの一般的な温度計を用いる。
【0072】
本実施例の放射線計測方法において、実施例1の放射線計測方法と異なる部分を中心に説明する。温度計35は、放射線検出器1A,1Bが設置された領域で放射線検出器1A,1B付近の温度を計測する。計測された温度が、温度計35からゲイン調整装置36に入力される。ゲイン調整装置36は、入力した温度に基づいて、高圧電源2A,2B及び加算増幅器8を制御する。具体的には、ゲイン調整装置36は、高圧電源2Aを制御して高圧電源2Aから放射線検出器1Aに印加する電圧を調節し、高圧電源2Bを制御して高圧電源2Bから放射線検出器1Bに印加する電圧を調節し、加算増幅器8を制御して加算増幅器8のゲイン値を調整する。
【0073】
信号処理装置17Bは、信号処理装置17と同様に、前置増幅器3A,3Bから出力されたγ線検出信号A,Bを処理する。多チャンネル波高分析装置10は、加算増幅器8から出力された加算信号をカウントする。
【0074】
放射線検出器1A,1Bでは出力するγ線検出信号の出力レベルが温度依存性を有する。温度計35で計測された温度に基づいて高圧電源2A,2Bを制御して放射線検出器1A,1Bのそれぞれに印加する電圧を調節することで放射線検出器1A,1Bのそれぞれの出力ゲインを調整できるので、放射線検出器1A,1Bの温度依存性を解消することができ、これらの放射線検出器から出力されるγ線検出信号に対する温度補償を行うことができる。したがって、放射線検出器1A,1Bから出力されるγ線検出信号の温度による変化を抑制することができ、より精度の良いγ線検出信号を各放射線検出器から出力することができる。
【0075】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例は、温度計35で計測された放射線検出器1A,1B付近の温度を入力するゲイン調整装置36によって、放射線検出器1A,1Bに印加される各電圧が調節され、加算増幅器8のゲインが調節されるので、多チャンネル波高分析装置10によって得られるエネルギースペクトルのエネルギー分解能の劣化を抑制することができる。
【0076】
放射線計測装置45Bは、図10に示された放射線計測装置45Cのように、また、図11に示された放射線計測装置45Dのように、変更してもよい。放射線計測装置45Cは、温度計35の出力を入力するゲイン調整装置36により、高圧電源2A,2Bから放射線検出器1A,1Bに印加する電圧を調節する構成を有する。放射線計測装置45Cでは、ゲイン調整装置36により加算増幅器8のゲインを調節することは行われない。放射線計測装置45Dは、温度計35の出力を入力するゲイン調整装置36により、加算増幅器8のゲインを調節する構成を有する。放射線計測装置45Dでは、ゲイン調整装置36により高圧電源2A,2Bを制御することは行われない。放射線計測装置45C及び40Dにおけるゲイン調整装置36以外の構成は、放射線計測装置45Bと同じである。放射線計測装置45C及び40Dは、放射線計測装置45Bにおけるゲイン調整装置36の機能の一部を有している。
【実施例4】
【0077】
本発明の他の実施例である実施例4の放射線計測方法を、図12に基づいて説明する。
【0078】
まず、本実施例の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置を、図12を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置45Eは、実施例1の放射線計測装置45において信号処理装置17を信号処理装置17Eに替えた構成を有する。放射線計測装置45Eの他の構成は放射線計測装置45と同じである。信号処理装置17Eは信号処理装置17において同時計数カウンタ37を追加した構成を有している。信号処理装置17Eの他の構成は信号処理装置17と同じである。同時計数カウンタ37が、多チャンネル波高分析装置10及び表示装置11に接続される。
【0079】
本実施例の放射線計測方法においては、一次冷却系配管18の内面で測定領域21に付着した測定対象核種12から放射された、異なるエネルギーを有する一対のカスケードγ線13が別々に放射線検出器1A,1Bで検出される。これらの検出器からそれぞれ出力されたγ線検出信号A,Bが、実施例1で用いられた信号処理装置17と同様に、高レベル波高弁別器、遅延回路及びリニアゲートで処理され、加算増幅器8に入力される。加算増幅器で生成された加算信号が線形増幅器9を経て多チャンネル波高分析装置10に入力される。多チャンネル波高分析装置10は加算信号のエネルギーに対応した加算信号の計数値を出力する。これらの計数値は同時計数カウンタ37及び表示装置11に入力される。同時計数カウンタ37は、入力した、各加算信号のエネルギーに対応する計数値を用いて、測定対象核種12ごとに放射された一対のカスケードγ線のエネルギーの合計エネルギーに対する計数値を求める。このように、同時計数カウンタ37によって、測定対象各種12から放射された一対のカスケードγ線を同時計数することができる。
【0080】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、同時計数カウンタ37を備えているので、測定対象各種12から放射された一対のカスケードγ線の同時計数値を容易に知ることができる。
【0081】
同時計数カウンタ37を、多チャンネル波高分析装置10ではなく線形増幅器9に接続しても良い。同時計数カウンタ37は、線形増幅器9から出力された加算信号のうち、測定対象核種から放射された、異なるエネルギーを有する一対のカスケードγ線の合計エネルギーを有する加算信号をカウントする。これによって、その一対のカスケードγ線の同時計数を行うことができる。
【実施例5】
【0082】
本発明の他の実施例である実施例5の放射線計測方法を、図13に基づいて説明する。
【0083】
まず、本実施例の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置を、図13を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置45Gは、放射線検出装置16C,16D、信号処理装置17G及び表示装置11を備える。さらに、放射線計測装置45Gは、高圧電源2A,2B,40A,40Bを有する。
【0084】
放射線検出装置16Cは、放射線検出装置16Aにコンプトンサプレッション用検出器39A及び前置増幅器41Aを追加した構成を有する。放射線検出装置16Cの他の構成は放射線検出装置16Aと同じである。コンプトンサプレッション用検出器39Aが前置増幅器41A及び高圧電源40Aに接続される。コンプトンサプレッション用検出器39Aは放射線検出器1Aの周りを取り囲んでいる。放射線検出装置16Dは、放射線検出装置16Bにコンプトンサプレッション用検出器39B及び前置増幅器41Bを追加した構成を有する。放射線検出装置16Dの他の構成は放射線検出装置16Dと同じである。コンプトンサプレッション用検出器39Bが前置増幅器41B及び高圧電源40Bに接続される。コンプトンサプレッション用検出器39Bは放射線検出器1Bの周りを取り囲んでいる。
【0085】
コンプトンサプレッション用検出器39A,39Bは、放射線検出器1A,1Bと同様に、一般的な放射線検出器であるシンチレーション放射線検出器(または半導体放射線検出器)を用いる。シンチレーション放射線検出器としては、NaI(Tl)、CsI(Ce)、LaCl3(Ce)、LaBr3(Ce)、BGO、GSO(Ce)、及びLuAG(Pr)等のいずれかを用いたシンチレーション放射線検出器である。半導体放射線検出器としては、Si、Ge、CdTe及びCZT等を用いた半導体放射線検出器である。
【0086】
信号処理装置17Gは、信号処理装置17においてリニアゲート7A,7Bをリニアゲート43A,43Bに替え、遅延回路42A,42Bを追加した構成を有する。信号処理装置17Gの他の構成は信号処理装置17と同じである。遅延回路42Aが前置増幅器41A及びリニアゲート43Aに接続される。リニアゲート43Aが、高レベル波高弁別器5A,遅延回路6A及び加算増幅器8に接続される。遅延回路42Bが前置増幅器41B及びリニアゲート43Bに接続される。リニアゲート43Bが、高レベル波高弁別器5B,遅延回路6B及び加算増幅器8に接続される。本実施例における信号選択装置は、高レベル波高弁別器5A、遅延回路6A、遅延回路(第3遅延装置)42A、リニアゲート(第3ゲート装置)43A、高レベル波高弁別器5B、遅延回路6B、遅延回路(第4遅延装置)42B及びリニアゲート(第4ゲート装置)43Bを含んでいる。
【0087】
本実施例の放射線計測方法を説明する。放射線検出器1A,1B及びコンプトンサプレッション用検出器39A,39Bが、例えば、沸騰水型原子力プラントの一次系配管18付近に配置される。放射線検出器1A,1Bは、一次系配管18の測定領域21を向いている。沸騰水型原子力プラントの運転時において、一次系配管18から放射されるそれぞれのγ線が放射線検出器1A,1Bで検出される。測定領域21で一次系配管18の内面に付着している測定対象核種(例えば、Co−60)から放射された、異なるエネルギーの一対のカスケードγ線13のうちの1つを放射線検出器1Aで検出し、他方のカスケードγ線13を放射線検出器1Bで検出したとする。
【0088】
放射線検出器1Aから出力されたγ線検出信号Aが高レベル波高弁別器5A及び遅延回路6Aに入力される。高レベル波高弁別器5Aは、実施例1で用いられる信号処理装置17と同様に、入力したγ線検出信号Aのエネルギーが除去設定エネルギー27以下のエネルギーであるとき、第1ゲート開信号をリニアゲート43Aに出力する。高レベル波高弁別器5Aは、入力したγ線検出信号Aのエネルギーが除去設定エネルギー27より大きなエネルギーであるとき、第1ゲート開信号をリニアゲート43Aに出力しない。遅延回路6Aは、入力したγ線検出信号を、実施例1と同様に、高レベル波高弁別器5Aでの第1ゲート開信号の出力に要する時間である設定時間T1だけ遅延させてリニアゲート43Aに出力する。
【0089】
コンプトンサプレッション用検出器39Aは、放射線検出器1Aに入射されて放射線検出器1Aでコンプトン散乱したγ線を検出する。コンプトン散乱したγ線を検出したコンプトンサプレッション用検出器39Aが、γ線検出信号A3を出力する。γ線検出信号A3を入力した遅延回路42Aは、γ線検出信号A3を設定時間T5だけ遅延させてリニアゲート43Aに出力する。設定時間T5は、放射線検出器1Aがγ線を検出して出力したγ線検出信号Aがリニアゲート43Aに入力されるまでに要する時間と、このγ線が放射線検出器1Aでコンプトン散乱してコンプトンサプレッション用検出器39Aで検出されたときにコンプトンサプレッション用検出器39Aから出力されたγ線検出信号A3がリニアゲート43Aに入力されるまでに要する時間が同じになるように設定される。
【0090】
リニアゲート43Aは、高レベル波高弁別器5Aから出力された第1ゲート開信号の入力時刻と実質的に同じ時刻に遅延回路6Aからγ線検出信号Aを入力し、その時刻に遅延回路42からのγ線検出信号A3の入力がないときに、遅延回路6Aから入力したγ線検出信号Aを加算増幅器8に出力する。リニアゲート43Aは、遅延回路42Aからγ線検出信号A3を入力したときには遅延回路6Aからのγ線検出信号Aを出力しない。
【0091】
放射線検出器1Bから出力されたγ線検出信号Bが高レベル波高弁別器5B及び遅延回路6Bに入力される。高レベル波高弁別器5Bは、実施例1で用いられる信号処理装置17と同様に、γ線検出信号Bのエネルギーが除去設定エネルギー27以下のエネルギーであるとき、第2ゲート開信号をリニアゲート43Bに出力する。
【0092】
コンプトンサプレッション用検出器39Bは、放射線検出器1Bに入射されて放射線検出器1Bでコンプトン散乱したγ線を検出する。コンプトン散乱したγ線を検出したコンプトンサプレッション用検出器39Bが、γ線検出信号B3を出力する。γ線検出信号B3を入力した遅延回路42Bは、γ線検出信号B3を設定時間T6だけ遅延させてリニアゲート43Bに出力する。設定時間T6は、放射線検出器1Bがγ線を検出して出力したγ線検出信号Bがリニアゲート43Bに入力されるまでに要する時間と、このγ線が放射線検出器1Bでコンプトン散乱してコンプトンサプレッション用検出器39Bで検出されたときにコンプトンサプレッション用検出器39Bから出力されたγ線検出信号ABがリニアゲート43Bに入力されるまでに要する時間が同じになるように設定される。設定時間T5と設定時間T6は同じである。
【0093】
リニアゲート43Bは、高レベル波高弁別器5Bから出力された第2ゲート開信号の入力時刻と実質的に同じ時刻に遅延回路6Bからγ線検出信号Bを入力し、その時刻に遅延回路42Bからのγ線検出信号B3の入力がないときに、遅延回路6Bから入力したγ線検出信号Bを加算増幅器8に出力する。リニアゲート43Bは、遅延回路42Bからγ線検出信号B3を入力したときには遅延回路6Bからのγ線検出信号Bを出力しない。
【0094】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、コンプトンサプレッション用検出器39A,39Bを有しているので、放射線検出器1A,1Bでコンプトン散乱したγ線をコンプトンサプレッション用検出器39A,39Bで検出することができる。コンプトンサプレッション用検出器39A,39Bによってコンプトン散乱したγ線を検出した場合には、リニアゲート43A,43Bの機能により、遅延回路6A,6Bから出力されたγ線検出信号A,Bが加算増幅器8に入力されない。このため、妨害放射性核種14のバックグラウンドγ線15に起因したコンプトン分布23の計数を抑制することができる。したがって、バックグラウンドγ線15のコンプトン散乱で生じる、カスケードγ線13近傍のエネルギーを有するγ線が検出されることに起因した、偶発同時計数を抑制することができる。本実施例におけるカスケードγ線の同時係数の精度をさらに向上させることができる。
【0095】
放射線計測装置45Gは、図14に示された放射線計測装置45Hのように、変更してもよい。放射線計測装置45Hは、放射線計測装置45Gにおいて信号処理装置17Gを信号処理装置17Hに替えた構成を有する。放射線計測装置45Hの他の構成は放射線計測装置45Gと同じである。
【0096】
信号処理装置17Hは、信号処理装置17Gにおいて波高弁別器46A,46Bを追加した構成を有する。信号処理装置17Hの他の構成は信号処理装置17Gと同じである。波高弁別器46Aが前置増幅器41A及び遅延回路42Aに接続される。波高弁別器46Bが前置増幅器41B及び遅延回路42Bに接続される。
【0097】
波高弁別器46Aは、前置増幅器41Aから入力するγ線検出信号A3のうち高設定エネルギーよりも大きなエネルギー(または高設定エネルギーよりも大きなエネルギー及び高設定エネルギーよりもエネルギーが低い低設定エネルギー未満のエネルギーのいずれかのエネルギー)を有するγ線検出信号A3を除去し、高設定エネルギー以下のエネルギー(または高設定エネルギーと低設定エネルギーの間のエネルギー)を有するγ線検出信号A3を遅延回路42Aに出力する。波高弁別器46Bは、前置増幅器41Bから入力するγ線検出信号B3のうち高設定エネルギー以下のエネルギー(または高設定エネルギーと低設定エネルギーの間のエネルギー)を有するγ線検出信号B3のみを遅延回路42Bに出力する。信号処理装置17Hにおける、波高弁別器46A,46B以外の各構成要素は、信号処理装置17Gにおけるそれらと同様に機能する。ただし、遅延回路42A,42Bの設定時間T5,T6は、波高弁別器46A,46Bでの処理に要する時間だけ、放射線計測装置45Gでの設定時間T5,T6よりも短くなる。
【0098】
放射線計測装置45Hは、放射線計測装置45Gで生じる各効果を得ることができる。さらに、放射線計測装置45Hは波高弁別器46A,46Bの設置によって、放射線検出器1A,1Bの周囲に設置する可能性がある金属により生じる制動X線による出力を除去すること、宇宙線などの高エネルギーγ線を除去することが可能になる。
【実施例6】
【0099】
本発明の他の実施例である実施例6の放射線計測方法を、図15に基づいて説明する。
【0100】
本実施例の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置を、図15を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置45Iは、実施例1の放射線計測装置45において信号処理装置17を信号処理装置17Iに替えた構成を有する。放射線計測装置45Iの他の構成は放射線計測装置45と同じである。
【0101】
信号処理装置17Iは、信号処理装置17をデジタルシグナルプロセッサ(DSP)で構成したDSP装置48である。DSP装置48は、前置増幅器3A,3Bから出力されたγ線検出信号A,Bのデジタル処理を実行する。このようなDSP装置48は、アナログ処理を行う信号処理装置17に設けられた出力分岐器4A,4B、高レベル波高弁別器5A,5B、遅延回路6A,6B、リニアゲート7A,7B、加算増幅器8、線形増幅器9及び多チャンネル波高分析装置10のそれぞれの処理機能を有する。
【0102】
本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、信号処理装置17Iでデジタル処理を実行するので、実施例1よりも高速及び高精度のカスケードγ線同時計数が可能となる。
【実施例7】
【0103】
本発明の他の実施例である実施例7の放射線計測方法を、図16に基づいて説明する。
【0104】
本実施例の放射線計測方法に用いられる放射線計測装置を、図16を用いて説明する。本実施例の放射線計測装置45Jは、実施例1の放射線計測装置45において放射線検出装置16Eを追加し、信号処理装置17を信号処理装置17Jに替えた構成を有する。放射線計測装置45Jの他の構成は放射線計測装置45と同じである。
【0105】
放射線検出装置16Eは、放射線検出器1C及び放射線検出器1Cに接続された前置増幅器3Cを有する。高圧電源2Cが放射線検出器1Cに接続される。信号処理装置17Jは、信号処理装置17において出力分岐器4C、高レベル波高弁別器5C、遅延回路6C及びリニアゲート7Cを追加した構成を有する。信号処理装置17Jの他の構成は信号処理装置17と同じである。
【0106】
前置増幅器3Cに接続された出力分岐器4Cが、高レベル波高弁別器5C及び遅延回路6Cに接続される。リニアゲート7Cが、高レベル波高弁別器5C、遅延回路6C及び加算増幅器8に接続される。
【0107】
放射線検出器1A,1B,1Cが一次系配管18の測定領域21に向って配置される。一次系配管18の測定領域21から放射されたそれぞれのγ線が、放射線検出器1A,1B,1Cによって検出される。出力分岐器4C、高レベル波高弁別器5C、遅延回路6C及びリニアゲート7Cは、出力分岐器4A、高レベル波高弁別器5A、遅延回路6A及びリニアゲート7Aと同様に機能する。
【0108】
本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例は、実施例1よりも、放射線検出装置及び信号処理装置の処理系(出力分岐器、高レベル波高弁別器、遅延回路及びリニアゲート)の数を増加しているので、放射線計測装置45Jにおけるカスケードγ線13の検出効率が向上し、同時計数ピーク29を短時間で測定することが可能となる。
【0109】
以上に述べた各実施例は、沸騰水型原子力プラントの一次系配管に適用した放射線計測方法であるが、加圧水型原子力プラント及び高速増殖炉プラント等の他の原子力プラント、及び核燃料再処理施設等の核燃料物質取り扱い施設における放射線計測に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、原子力プラント及び核燃料再処理施設等の核燃料物質取り扱い施設における放射線計装に適用することができる。
【符号の説明】
【0111】
1A,1B,1C…放射線検出器、2A,2B,2C,40A,40B…高圧電源、4A,4B,4C…出力分岐器、5A,5B,5C…高レベル波高弁別器、6A,6B,6C,42A,42B…遅延回路、7A,7B,7C,43A,43B…リニアゲート、8…加算増幅器、10…多チャンネル波高分析器、17,17A〜17E,17G〜17J…信号処理装置、35…温度計、36…ゲイン調整装置、37…同時計数カウンタ、39A,39B…コンプトンサプレッション用検出器、45,45A〜45E,45G〜45J…放射線計測装置、48…DSP装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象核種から放射された、エネルギーが異なるカスケードγ線を第1放射線検出器及び第2放射線検出器でそれぞれ検出し、
前記測定対象核種から放射された、同時計数されるそれぞれの前記カスケードγ線の合計エネルギーよりも小さく、且つ前記測定対象核種から放射された前記カスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギーよりも大きいエネルギーの範囲に設定された第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号と、前記第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成し、
前記測定対象核種から放射されたエネルギーが異なる前記カスケードγ線の前記合計エネルギーを有する前記加算信号をカウントすることを特徴とする放射線計測方法。
【請求項2】
前記第1放射線検出器から出力された前記第1γ線検出信号を、第1ゲート信号発生装置及び第1遅延装置にそれぞれ入力し、
前記第1ゲート信号発生装置が、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第1ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに前記第1ゲート開信号を出力し、
前記第1遅延装置が、入力した前記第1γ線検出信号を、前記第1ゲート信号発生装置がこの第1γ線検出信号を入力してから前記第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、
第1ゲート装置が、前記第1ゲート信号発生装置から前記第1ゲート開信号を入力したときに、前記第1遅延装置から入力した前記第1γ線検出信号を加算装置に出力し、
前記第2放射線検出器から出力された前記第2γ線検出信号を、第2ゲート信号発生装置及び第2遅延装置にそれぞれ入力し、
前記第2ゲート信号発生装置が、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第2ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに前記第2ゲート開信号を出力し、
前記第2遅延装置が、入力した前記第2γ線検出信号を、前記第2ゲート信号発生装置がこの第2γ線検出信号を入力してから前記第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、
第2ゲート装置が、前記第2ゲート信号発生装置から前記第2ゲート開信号を入力したときに、前記第2遅延装置から入力した前記第2γ線検出信号を前記加算装置に出力し、
前記加算信号の生成を、前記第1ゲート装置から出力された前記第1γ線検出信号及び前記第2ゲート装置から出力された前記第2γ線検出信号を入力した前記加算装置によって行う請求項1に記載の放射線計測方法。
【請求項3】
前記加算信号の生成を、前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーを有する前記第1γ線検出信号と、前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーを有する前記第2γ線検出信号とを加えることによって行う請求項1に記載の放射線計測方法。
【請求項4】
前記第1ゲート信号発生装置に入力された前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第1ゲート開信号が前記第1ゲート信号発生装置から出力され、
前記第2ゲート信号発生装置に入力された前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第2ゲート開信号が前記第2ゲート信号発生装置から出力される請求項2に記載の放射線計測方法。
【請求項5】
前記第1及び第2放射線検出器を配置した領域の温度を温度計で計測し、この温度計で計測した温度に基づいて、第1電源から前記第1放射線検出器に印加される電圧及び第2電源から前記第2放射線検出器に印加される電圧、及び前記加算装置のゲインのうち少なくとも一方を、前記温度計で計測した温度に基づいて、制御する請求項2または4に記載の放射線計測方法。
【請求項6】
測定対象核種から放射された、エネルギーが異なるカスケードγ線を第1放射線検出器及び第2放射線検出器でそれぞれ検出し、
第3放射線検出器が前記第1放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出したときに第3γ線検出信号を出力し、第4放射線検出器が前記第2放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出したときに第4γ線検出信号を出力し、
前記第3放射線検出器が前記第3γ線検出信号を出力しなくて前記第4放射線検出器が前記第4γ線検出信号を出力しないときに、前記測定対象核種から放射された、同時計数される前記カスケードγ線の合計エネルギーよりも小さく、且つ前記測定対象核種から放射された前記カスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギーよりも大きいエネルギーの範囲に設定された第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号と、前記第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成し、
前記測定対象核種から放射されたエネルギーが異なる前記カスケードγ線の前記合計エネルギーを有する前記加算信号をカウントすることを特徴とする放射線計測方法。
【請求項7】
前記第1放射線検出器から出力された前記第1γ線検出信号を、第1ゲート信号発生装置及び第1遅延装置にそれぞれ入力し、
前記第1ゲート信号発生装置が、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるとき、第1ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるとき、前記第1ゲート開信号を出力し、
前記第1遅延装置が、入力した前記第1γ線検出信号を、前記第1ゲート信号発生装置がこの第1γ線検出信号を入力してから前記第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、
前記第3放射線検出器から出力された前記第3γ線検出信号を第3遅延装置に入力し、
前記第1遅延装置が、入力した前記第1γ線検出信号を出力するときに、前記第3遅延装置が、入力した前記第3γ線検出信号を出力し、
第1ゲート装置が、前記第3遅延装置から前記第3γ線検出信号が出力されないときで前記第1ゲート信号発生装置から前記第1ゲート開信号を入力したときに、前記第1遅延装置から入力した前記第1γ線検出信号を加算装置に出力し、
前記第2放射線検出器から出力された前記第2γ線検出信号を、第2ゲート信号発生装置及び第2遅延装置にそれぞれ入力し、
前記第2ゲート信号発生装置が、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるとき、第2ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるとき、前記第2ゲート開信号を出力し、
前記第2遅延装置が、入力した前記第2γ線検出信号を、前記第2ゲート信号発生装置がこの第2γ線検出信号を入力してから前記第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、
前記第4放射線検出器から出力された前記第4γ線検出信号を第4遅延装置に入力し、
前記第2遅延装置が、入力した前記第2γ線検出信号を出力するときに、前記第4遅延装置が、入力した前記第4γ線検出信号を出力し、
第2ゲート装置が、前記第4遅延装置から前記第4γ線検出信号が出力されないときで前記第2ゲート信号発生装置から前記第2ゲート開信号を入力したときに、前記第2遅延装置から入力した前記第2γ線検出信号を前記加算装置に出力し、
前記加算信号の生成を、前記第1ゲート装置から出力された前記第1γ線検出信号及び前記第2ゲート装置から出力された前記第2γ線検出信号を入力した前記加算装置によって行う請求項6に記載の放射線計測方法。
【請求項8】
前記加算信号の生成を、前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーをそれぞれ有する前記第1γ線検出信号と、前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーを有する前記第2γ線検出信号とを加えることによって行う請求項6に記載の放射線計測方法。
【請求項9】
前記第1ゲート信号発生装置に入力された前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第1ゲート開信号が前記第1ゲート信号発生装置から出力され、
前記第2ゲート信号発生装置に入力された前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第2ゲート開信号が前記第2ゲート信号発生装置から出力される請求項7に記載の放射線計測方法。
【請求項10】
測定対象核種から放射された、エネルギーが異なるカスケードγ線を検出する第1放射線検出器及び第2放射線検出器と、
前記測定対象核種から放射された同時計数される前記カスケードγ線の合計エネルギーよりも小さく、且つ前記測定対象核種から放射された前記カスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギーよりも大きいエネルギーの範囲に設定された第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号、及び前記第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を出力し、前記第1設定エネルギーよりも大きいエネルギーを有する前記第1γ線検出信号及び前記第2γ線検出信号を出力しない信号選択装置と、
前記信号選択装置から出力された前記第1γ線検出信号及び前記第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成する加算装置と、
前記加算装置から出力され、前記測定対象核種から放射されたエネルギーが異なる前記カスケードγ線の前記合計エネルギーを有する前記加算信号をカウントする計数装置とを特徴とする放射線計測装置。
【請求項11】
前記信号選択装置が、
前記第1放射線検出器から出力された前記第1γ線検出信号を入力し、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第1ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに前記第1ゲート開信号を出力する第1ゲート信号発生装置と、
前記第1ゲート信号発生装置が入力する前記第1γ線検出信号を入力し、この第1γ線検出信号を、前記第1ゲート信号発生装置がこの第1γ線検出信号を入力してから前記第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力する第1遅延装置と、
前記第1ゲート信号発生装置から出力された前記第1γ線検出信号を入力したときに、前記第1遅延装置から入力した前記第1γ線検出信号を前記加算装置に出力する第1ゲート装置と、
前記第2放射線検出器から出力された前記第2γ線検出信号を入力し、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第2ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに前記第2ゲート開信号を出力する第2ゲート信号発生装置と、
前記第2ゲート信号発生装置が入力する前記第2γ線検出信号を入力し、この第2γ線検出信号を、前記第2ゲート信号発生装置がこの第2γ線検出信号を入力してから前記第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力する第2遅延装置と、
前記第2ゲート信号発生装置から前記第2ゲート開信号を入力したときに、前記第2遅延装置から入力した前記第2γ線検出信号を前記加算装置に出力する第2ゲート装置とを、
備えている請求項10に記載の放射線計測装置。
【請求項12】
前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーを有する前記第1γ線検出信号と、前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーを有する前記第2γ線検出信号を前記加算装置に出力する前記信号選択装置を有する請求項10に記載の放射線計測装置。
【請求項13】
入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第1ゲート開信号を前記第1ゲート装置に出力する前記第1ゲート信号発生装置と、入力した前記第21γ線検出信号のエネルギーが前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第2ゲート開信号を前記第2ゲート装置に出力する前記第2ゲート信号発生装置とを有する請求項11に記載の放射線計測装置。
【請求項14】
前記第1及び第2放射線検出器を配置した領域の温度を検出する温度計と、この温度計で計測した温度に基づいて、第1電源から前記第1放射線検出器に印加される電圧及び第2電源から前記第2放射線検出器に印加される電圧、及び前記加算装置のゲインのうち少なくとも一方を、前記温度計で計測した温度に基づいて、制御する制御装置を備えた請求項10ないし13のいずれか1項に記載の放射線計測装置。
【請求項15】
測定対象核種から放射された、エネルギーが異なるカスケードγ線を検出する第1放射線検出器及び第2放射線検出器と、
前記第1放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出して第3γ線検出信号を出力する第3放射線検出器と、
前記第2放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出して第4γ線検出信号を出力する第4放射線検出器と、
前記第3放射線検出器が前記第3γ線検出信号を出力しなくて前記第4放射線検出器が前記第4γ線検出信号を出力しないときに、前記測定対象核種から放射された同時計数される前記カスケードγ線の合計エネルギーよりも小さく、且つ前記測定対象核種から放射された前記カスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギーよりも大きいエネルギーの範囲に設定された第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号、及び前記第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を出力する信号選択装置と、
前記信号選択装置から出力された前記第1γ線検出信号及び前記第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成する加算装置と、
前記加算装置から出力され、前記測定対象核種から放射された、エネルギーが異なる前記カスケードγ線の前記合計エネルギーを有する前記加算信号をカウントする計数装置とを特徴とする放射線計測装置。
【請求項16】
前記信号選択装置が、
前記第1放射線検出器から出力された前記第1γ線検出信号を入力し、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第1ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに前記第1ゲート開信号を出力する第1ゲート信号発生装置と、
前記第1ゲート信号発生装置が入力する前記第1γ線検出信号を入力し、この第1γ線検出信号を、前記第1ゲート信号発生装置がこの第1γ線検出信号を入力してから前記第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力する第1遅延装置と、
前記第3放射線検出器から出力された前記第3γ線検出信号を入力し、この第3γ線検出信号を、前記第1遅延装置が入力した前記第1γ線検出信号を出力するときに、出力する第3遅延装置と、
前記第3遅延装置から前記第3γ線検出信号が出力されないときで前記第1ゲート信号発生装置から前記第1ゲート開信号を入力したときに、前記第1遅延装置から入力した前記第1γ線検出信号を前記加算装置に出力する第1ゲート装置と、
前記第2放射線検出器から出力された前記第2γ線検出信号を入力し、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第2ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに前記第2ゲート開信号を出力する第2ゲート信号発生装置と、
前記第2ゲート信号発生装置が入力する前記第2γ線検出信号を入力し、この第2γ線検出信号を、前記第2ゲート信号発生装置がこの第2γ線検出信号を入力してから前記第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力する第2遅延装置と、
前記第4放射線検出器から出力された前記第4γ線検出信号を入力し、この第4γ線検出信号を、前記第2遅延装置が入力した前記第2γ線検出信号を出力するときに、出力する第4遅延装置と、
前記第4遅延装置から前記第4γ線検出信号が出力されないときで前記第2ゲート信号発生装置から前記第2ゲート開信号を入力したときに、前記第2遅延装置から入力した前記第2γ線検出信号を前記加算装置に出力する第2ゲート装置とを、
備えている請求項15に記載の放射線計測装置。
【請求項17】
前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーを有する前記第1γ線検出信号と、前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーを有する前記第2γ線検出信号を前記加算装置に出力する前記信号選択装置を有する請求項15に記載の放射線計測装置。
【請求項18】
入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第1ゲート開信号を前記第1ゲート装置に出力する前記第1ゲート信号発生装置と、入力した前記第21γ線検出信号のエネルギーが前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第2ゲート開信号を前記第2ゲート装置に出力する前記第2ゲート信号発生装置とを有する請求項16に記載の放射線計測装置。
【請求項19】
前記信号選択装置が、第3設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第3放射線検出器から出力された前記第3γ線検出信号を、前記第3遅延装置に出力する第3波高弁別装置、及び第3設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第4放射線検出器から出力された前記第4γ線検出信号を、前記第4遅延装置に出力する第4波高弁別装置を有する請求項16または18に記載の放射線計測装置。
【請求項1】
測定対象核種から放射された、エネルギーが異なるカスケードγ線を第1放射線検出器及び第2放射線検出器でそれぞれ検出し、
前記測定対象核種から放射された、同時計数されるそれぞれの前記カスケードγ線の合計エネルギーよりも小さく、且つ前記測定対象核種から放射された前記カスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギーよりも大きいエネルギーの範囲に設定された第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号と、前記第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成し、
前記測定対象核種から放射されたエネルギーが異なる前記カスケードγ線の前記合計エネルギーを有する前記加算信号をカウントすることを特徴とする放射線計測方法。
【請求項2】
前記第1放射線検出器から出力された前記第1γ線検出信号を、第1ゲート信号発生装置及び第1遅延装置にそれぞれ入力し、
前記第1ゲート信号発生装置が、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第1ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに前記第1ゲート開信号を出力し、
前記第1遅延装置が、入力した前記第1γ線検出信号を、前記第1ゲート信号発生装置がこの第1γ線検出信号を入力してから前記第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、
第1ゲート装置が、前記第1ゲート信号発生装置から前記第1ゲート開信号を入力したときに、前記第1遅延装置から入力した前記第1γ線検出信号を加算装置に出力し、
前記第2放射線検出器から出力された前記第2γ線検出信号を、第2ゲート信号発生装置及び第2遅延装置にそれぞれ入力し、
前記第2ゲート信号発生装置が、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第2ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに前記第2ゲート開信号を出力し、
前記第2遅延装置が、入力した前記第2γ線検出信号を、前記第2ゲート信号発生装置がこの第2γ線検出信号を入力してから前記第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、
第2ゲート装置が、前記第2ゲート信号発生装置から前記第2ゲート開信号を入力したときに、前記第2遅延装置から入力した前記第2γ線検出信号を前記加算装置に出力し、
前記加算信号の生成を、前記第1ゲート装置から出力された前記第1γ線検出信号及び前記第2ゲート装置から出力された前記第2γ線検出信号を入力した前記加算装置によって行う請求項1に記載の放射線計測方法。
【請求項3】
前記加算信号の生成を、前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーを有する前記第1γ線検出信号と、前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーを有する前記第2γ線検出信号とを加えることによって行う請求項1に記載の放射線計測方法。
【請求項4】
前記第1ゲート信号発生装置に入力された前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第1ゲート開信号が前記第1ゲート信号発生装置から出力され、
前記第2ゲート信号発生装置に入力された前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第2ゲート開信号が前記第2ゲート信号発生装置から出力される請求項2に記載の放射線計測方法。
【請求項5】
前記第1及び第2放射線検出器を配置した領域の温度を温度計で計測し、この温度計で計測した温度に基づいて、第1電源から前記第1放射線検出器に印加される電圧及び第2電源から前記第2放射線検出器に印加される電圧、及び前記加算装置のゲインのうち少なくとも一方を、前記温度計で計測した温度に基づいて、制御する請求項2または4に記載の放射線計測方法。
【請求項6】
測定対象核種から放射された、エネルギーが異なるカスケードγ線を第1放射線検出器及び第2放射線検出器でそれぞれ検出し、
第3放射線検出器が前記第1放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出したときに第3γ線検出信号を出力し、第4放射線検出器が前記第2放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出したときに第4γ線検出信号を出力し、
前記第3放射線検出器が前記第3γ線検出信号を出力しなくて前記第4放射線検出器が前記第4γ線検出信号を出力しないときに、前記測定対象核種から放射された、同時計数される前記カスケードγ線の合計エネルギーよりも小さく、且つ前記測定対象核種から放射された前記カスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギーよりも大きいエネルギーの範囲に設定された第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号と、前記第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成し、
前記測定対象核種から放射されたエネルギーが異なる前記カスケードγ線の前記合計エネルギーを有する前記加算信号をカウントすることを特徴とする放射線計測方法。
【請求項7】
前記第1放射線検出器から出力された前記第1γ線検出信号を、第1ゲート信号発生装置及び第1遅延装置にそれぞれ入力し、
前記第1ゲート信号発生装置が、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるとき、第1ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるとき、前記第1ゲート開信号を出力し、
前記第1遅延装置が、入力した前記第1γ線検出信号を、前記第1ゲート信号発生装置がこの第1γ線検出信号を入力してから前記第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、
前記第3放射線検出器から出力された前記第3γ線検出信号を第3遅延装置に入力し、
前記第1遅延装置が、入力した前記第1γ線検出信号を出力するときに、前記第3遅延装置が、入力した前記第3γ線検出信号を出力し、
第1ゲート装置が、前記第3遅延装置から前記第3γ線検出信号が出力されないときで前記第1ゲート信号発生装置から前記第1ゲート開信号を入力したときに、前記第1遅延装置から入力した前記第1γ線検出信号を加算装置に出力し、
前記第2放射線検出器から出力された前記第2γ線検出信号を、第2ゲート信号発生装置及び第2遅延装置にそれぞれ入力し、
前記第2ゲート信号発生装置が、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるとき、第2ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるとき、前記第2ゲート開信号を出力し、
前記第2遅延装置が、入力した前記第2γ線検出信号を、前記第2ゲート信号発生装置がこの第2γ線検出信号を入力してから前記第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力し、
前記第4放射線検出器から出力された前記第4γ線検出信号を第4遅延装置に入力し、
前記第2遅延装置が、入力した前記第2γ線検出信号を出力するときに、前記第4遅延装置が、入力した前記第4γ線検出信号を出力し、
第2ゲート装置が、前記第4遅延装置から前記第4γ線検出信号が出力されないときで前記第2ゲート信号発生装置から前記第2ゲート開信号を入力したときに、前記第2遅延装置から入力した前記第2γ線検出信号を前記加算装置に出力し、
前記加算信号の生成を、前記第1ゲート装置から出力された前記第1γ線検出信号及び前記第2ゲート装置から出力された前記第2γ線検出信号を入力した前記加算装置によって行う請求項6に記載の放射線計測方法。
【請求項8】
前記加算信号の生成を、前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーをそれぞれ有する前記第1γ線検出信号と、前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーを有する前記第2γ線検出信号とを加えることによって行う請求項6に記載の放射線計測方法。
【請求項9】
前記第1ゲート信号発生装置に入力された前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第1ゲート開信号が前記第1ゲート信号発生装置から出力され、
前記第2ゲート信号発生装置に入力された前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第2ゲート開信号が前記第2ゲート信号発生装置から出力される請求項7に記載の放射線計測方法。
【請求項10】
測定対象核種から放射された、エネルギーが異なるカスケードγ線を検出する第1放射線検出器及び第2放射線検出器と、
前記測定対象核種から放射された同時計数される前記カスケードγ線の合計エネルギーよりも小さく、且つ前記測定対象核種から放射された前記カスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギーよりも大きいエネルギーの範囲に設定された第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号、及び前記第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を出力し、前記第1設定エネルギーよりも大きいエネルギーを有する前記第1γ線検出信号及び前記第2γ線検出信号を出力しない信号選択装置と、
前記信号選択装置から出力された前記第1γ線検出信号及び前記第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成する加算装置と、
前記加算装置から出力され、前記測定対象核種から放射されたエネルギーが異なる前記カスケードγ線の前記合計エネルギーを有する前記加算信号をカウントする計数装置とを特徴とする放射線計測装置。
【請求項11】
前記信号選択装置が、
前記第1放射線検出器から出力された前記第1γ線検出信号を入力し、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第1ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに前記第1ゲート開信号を出力する第1ゲート信号発生装置と、
前記第1ゲート信号発生装置が入力する前記第1γ線検出信号を入力し、この第1γ線検出信号を、前記第1ゲート信号発生装置がこの第1γ線検出信号を入力してから前記第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力する第1遅延装置と、
前記第1ゲート信号発生装置から出力された前記第1γ線検出信号を入力したときに、前記第1遅延装置から入力した前記第1γ線検出信号を前記加算装置に出力する第1ゲート装置と、
前記第2放射線検出器から出力された前記第2γ線検出信号を入力し、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第2ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに前記第2ゲート開信号を出力する第2ゲート信号発生装置と、
前記第2ゲート信号発生装置が入力する前記第2γ線検出信号を入力し、この第2γ線検出信号を、前記第2ゲート信号発生装置がこの第2γ線検出信号を入力してから前記第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力する第2遅延装置と、
前記第2ゲート信号発生装置から前記第2ゲート開信号を入力したときに、前記第2遅延装置から入力した前記第2γ線検出信号を前記加算装置に出力する第2ゲート装置とを、
備えている請求項10に記載の放射線計測装置。
【請求項12】
前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーを有する前記第1γ線検出信号と、前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーを有する前記第2γ線検出信号を前記加算装置に出力する前記信号選択装置を有する請求項10に記載の放射線計測装置。
【請求項13】
入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第1ゲート開信号を前記第1ゲート装置に出力する前記第1ゲート信号発生装置と、入力した前記第21γ線検出信号のエネルギーが前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第2ゲート開信号を前記第2ゲート装置に出力する前記第2ゲート信号発生装置とを有する請求項11に記載の放射線計測装置。
【請求項14】
前記第1及び第2放射線検出器を配置した領域の温度を検出する温度計と、この温度計で計測した温度に基づいて、第1電源から前記第1放射線検出器に印加される電圧及び第2電源から前記第2放射線検出器に印加される電圧、及び前記加算装置のゲインのうち少なくとも一方を、前記温度計で計測した温度に基づいて、制御する制御装置を備えた請求項10ないし13のいずれか1項に記載の放射線計測装置。
【請求項15】
測定対象核種から放射された、エネルギーが異なるカスケードγ線を検出する第1放射線検出器及び第2放射線検出器と、
前記第1放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出して第3γ線検出信号を出力する第3放射線検出器と、
前記第2放射線検出器内でコンプトン散乱したγ線を検出して第4γ線検出信号を出力する第4放射線検出器と、
前記第3放射線検出器が前記第3γ線検出信号を出力しなくて前記第4放射線検出器が前記第4γ線検出信号を出力しないときに、前記測定対象核種から放射された同時計数される前記カスケードγ線の合計エネルギーよりも小さく、且つ前記測定対象核種から放射された前記カスケードγ線のエネルギーのうち最も大きいエネルギーよりも大きいエネルギーの範囲に設定された第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第1放射線検出器から出力された第1γ線検出信号、及び前記第1設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第2放射線検出器から出力された第2γ線検出信号を出力する信号選択装置と、
前記信号選択装置から出力された前記第1γ線検出信号及び前記第2γ線検出信号を加えて加算信号を生成する加算装置と、
前記加算装置から出力され、前記測定対象核種から放射された、エネルギーが異なる前記カスケードγ線の前記合計エネルギーを有する前記加算信号をカウントする計数装置とを特徴とする放射線計測装置。
【請求項16】
前記信号選択装置が、
前記第1放射線検出器から出力された前記第1γ線検出信号を入力し、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第1ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに前記第1ゲート開信号を出力する第1ゲート信号発生装置と、
前記第1ゲート信号発生装置が入力する前記第1γ線検出信号を入力し、この第1γ線検出信号を、前記第1ゲート信号発生装置がこの第1γ線検出信号を入力してから前記第1ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力する第1遅延装置と、
前記第3放射線検出器から出力された前記第3γ線検出信号を入力し、この第3γ線検出信号を、前記第1遅延装置が入力した前記第1γ線検出信号を出力するときに、出力する第3遅延装置と、
前記第3遅延装置から前記第3γ線検出信号が出力されないときで前記第1ゲート信号発生装置から前記第1ゲート開信号を入力したときに、前記第1遅延装置から入力した前記第1γ線検出信号を前記加算装置に出力する第1ゲート装置と、
前記第2放射線検出器から出力された前記第2γ線検出信号を入力し、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギーよりも大きなエネルギーであるときに第2ゲート開信号を出力しないで、入力した前記第2γ線検出信号のエネルギーが前記第1設定エネルギー以下のエネルギーであるときに前記第2ゲート開信号を出力する第2ゲート信号発生装置と、
前記第2ゲート信号発生装置が入力する前記第2γ線検出信号を入力し、この第2γ線検出信号を、前記第2ゲート信号発生装置がこの第2γ線検出信号を入力してから前記第2ゲート開信号を出力するまでに要する時間だけ遅らせて出力する第2遅延装置と、
前記第4放射線検出器から出力された前記第4γ線検出信号を入力し、この第4γ線検出信号を、前記第2遅延装置が入力した前記第2γ線検出信号を出力するときに、出力する第4遅延装置と、
前記第4遅延装置から前記第4γ線検出信号が出力されないときで前記第2ゲート信号発生装置から前記第2ゲート開信号を入力したときに、前記第2遅延装置から入力した前記第2γ線検出信号を前記加算装置に出力する第2ゲート装置とを、
備えている請求項15に記載の放射線計測装置。
【請求項17】
前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーを有する前記第1γ線検出信号と、前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーを有する前記第2γ線検出信号を前記加算装置に出力する前記信号選択装置を有する請求項15に記載の放射線計測装置。
【請求項18】
入力した前記第1γ線検出信号のエネルギーが前記測定対象核種の全吸収ピーク領域の下限のエネルギーよりも小さいエネルギーである第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第1ゲート開信号を前記第1ゲート装置に出力する前記第1ゲート信号発生装置と、入力した前記第21γ線検出信号のエネルギーが前記第2設定エネルギーと前記第1設定エネルギーの間のエネルギーであるとき、前記第2ゲート開信号を前記第2ゲート装置に出力する前記第2ゲート信号発生装置とを有する請求項16に記載の放射線計測装置。
【請求項19】
前記信号選択装置が、第3設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第3放射線検出器から出力された前記第3γ線検出信号を、前記第3遅延装置に出力する第3波高弁別装置、及び第3設定エネルギー以下のエネルギーを有する、前記第4放射線検出器から出力された前記第4γ線検出信号を、前記第4遅延装置に出力する第4波高弁別装置を有する請求項16または18に記載の放射線計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−196961(P2011−196961A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67158(P2010−67158)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
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