説明

放射線透過測定装置及び放射線透過測定方法

【課題】放射線透過測定法において、試料に照射される放射線の強度の時間変動を考慮して、得られた放射線透過画像の補正(画像処理)を行うことにて、より高い測定精度を備えるための技術を提案する。
【解決手段】内部に収容部8が形成された密閉可能な容器であって、前記収容部8が空の第一基準片6と前記収容部8が所定量の測定対象物と同一物質で満たされた第二基準片7との一対の基準片と、試料Tとに、照射手段にて同時に放射線を照射する。前記一組の基準片6・7又は試料Tを透過した放射線を検出して撮像することにより、一組の透過放射線画像を得て、第一基準片6、第二基準片7及び試料Tの各々につき、画像抽出並びに定量化を行い、測定対象物の計量基準を得て、測定値算出手段にて試料の定量化された一組の透過放射線画像と計量基準とから、前記試料内部の測定対象物の量の変化を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線透過測定法において、測定精度の向上を図るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非破壊検査法の一つとして放射線透過測定法が知られている。放射線透過測定法は、試料に放射線を照射し、この試料を透過してきた放射線の透過像を得て、試料を透過した放射線強度の空間分布から放射線の減衰量を測ることにより、試料内の或物質の分布や或物質層の厚さ(量)の測定を行うものである。
【0003】
例えば、特許文献1では、放射線透過測定法の一つである中性子ラジオグラフィーに関する技術が記載されている。中性子ラジオグラフィーは、燃料電池セル、コンクリート材などの水分量の測定に利用される。
【0004】
特許文献1に記載の放射線透過測定法では、予め、検量線作成用の基準片を用いて検量線が作成され、続いて、該検量線を用いて試料中の水分量が測定される。
詳細には、先ず、基準片へ中性子ビームが照射され、該基準片の透過中性子画像を得て、該透過中性子画像から算出される中性子の減衰量(透過率)と、中性子ビームの通り道にある前記基準片内の水分量とから、中性子の減衰量と水分量とを関係づける検量線が作成される。続いて、試料へ中性子ビームが照射され、該試料の透過中性子画像を得て、該透過中性子画像から算出される中性子の減衰量(透過率)から、作成した検量線を用いて試料中の水分量が算出される。
【0005】
上述のような放射線透過測定において、中性子ビームを発する中性子源として、原子炉内の核反応により生じる中性子や、加速器で加速した電子をターゲットに衝突させて生じる中性子を用いたもの等がある。この中でも、原子炉では、比較的視野の大きい良質の平行中性子ビームが得られることから、中性子ラジオグラフィーに適している。
【0006】
ところが、原子炉内から放射線透過測定で使用されるポートに飛散してくる中性子数とその強度は時間変動する。このため、中性子源より試料に照射される中性子ビームに含まれる中性子量も時間変動し、検出される中性子の減衰量に測定時による測定誤差が生じてしまう。
特に、中性子ラジオグラフィーにて燃料電池セル内の水分量等を測定する際には、数ミクロン程度の測定精度が必要となるが、上記の様な測定誤差が生じると、正確な測定結果を得ることが困難となる。
【特許文献1】特開2005−265787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑み、本発明では、放射線透過測定法において、試料に照射される放射線の強度の変動を考慮して、得られた放射線透過画像の補正(画像処理)を行うことにて、より高い測定精度を備えるための技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、試料への放射線の照射と該試料を透過する放射線の検出とを行って、前記試料内部の測定対象物の量を測定する放射線透過測定装置において、内部に収容部が形成された密閉可能な容器であって、前記収容部が空の第一基準片と、前記収容部が所定量の測定対象物と同一物質で満たされた第二基準片との、一対の基準片と、前記一対の基準片と試料とに、同時に放射線を照射する照射手段と、前記一対の基準片又は試料を透過した放射線を検出する検出手段と、該検出手段にて検出された放射線を撮像して透過放射線画像を得る撮像手段と、前記透過放射線画像から第一基準片、第二基準片及び試料の各々の透過放射線画像を得る画像抽出手段と、前記第一基準片及び前記第二基準片の各透過放射線画像から、測定対象物の計量基準を得る計量基準作成手段と、前記試料の透過放射線画像と前記計量基準とから、前記試料内部の測定対象物の量を得る測定値算出手段とを、備えるものである。
【0010】
請求項2においては、試料への放射線の照射と該試料を透過する放射線の検出とを少なくとも複数回行って、前記試料内部の測定対象物の量の変化を測定する放射線透過測定装置において、内部に収容部が形成された密閉可能な容器であって、前記収容部が空の第一基準片と、前記収容部が所定量の測定対象物と同一物質で満たされた第二基準片との、一対の基準片と、前記一対の基準片と試料とに、同時に放射線を照射する照射手段と、前記一対の基準片又は試料を透過した放射線を検出する検出手段と、該検出手段にて検出された放射線の撮像を行って透過放射線画像を得る撮像手段と、前記検出手段による検出及び前記撮像手段による撮像を少なくとも複数回行って得た一組の透過放射線画像から、第一基準片、第二基準片及び試料の各々につき一組の透過放射線画像を得る画像抽出手段と、前記第一基準片の一組の透過放射線画像に基づいて算出した補正式を用いて、前記第一基準片、第二基準片及び試料の各々につき定量化された一組の透過放射線画像を得る定量化処理手段と、前記第一基準片及び第二基準片の各定量化された一組の透過放射線画像から、測定対象物の計量基準を得る計量基準作成手段と、前記試料の定量化された一組の透過放射線画像と、前記計量基準とから、前記試料内部の測定対象物の量の変化を得る測定値算出手段とを、備えるものである。
【0011】
請求項3においては、前記放射線透過測定装置に、前記定量化手段にて定量化された第一基準片、第二基準片及び試料の一組の透過放射線画像の各々について正規化する正規化手段をさらに備えるものである。
【0012】
請求項4においては、前記基準片は、該基準片からの放射線の放出面が階段状であり、前記収容部の放射線の進行方向の厚みが不連続的に変化する、形状を有するものである。
【0013】
請求項5においては、内部に収容部が形成された密閉可能な容器であって、前記収容部が空の第一基準片と、前記収容部が所定量の測定対象物と同一物質で満たされた第二基準片との、一対の基準片と、放射線照射手段と、放射線検出手段と、撮像手段と、画像抽出手段と、計量基準作成手段と、測定値算出手段とを備えた放射線透過測定装置を用いて、前記放射線照射手段にて、前記一対の基準片と試料とに同時に放射線を照射するステップと、前記放射線検出手段にて、前記一対の基準片又は試料を透過した放射線を検出するステップと、前記撮像手段にて、前記該検出手段で検出された放射線を撮像して透過放射線画像を得るステップと、前記画像抽出手段にて、前記透過放射線画像から第一基準片、第二基準片及び試料の各々の透過放射線画像を得るステップと、前記計量基準作成手段にて、前記第一基準片及び前記第二基準片の各透過放射線画像から、測定対象物の計量基準を得るステップと、前記測定値算出手段にて、前記試料の透過放射線画像と前記計量基準とから、前記試料内部の測定対象物の量を得るステップとを、含むものである。
【0014】
請求項6においては、内部に収容部が形成された密閉可能な容器であって、前記収容部が空の第一基準片と、前記収容部が所定量の測定対象物と同一物質で満たされた第二基準片との、一対の基準片と、放射線照射手段と、放射線検出手段と、撮像手段と、画像抽出手段と、定量化処理手段と、計量基準作成手段と、測定値算出手段とを備えた放射線透過測定装置を用いて、前記放射線照射手段にて、前記一対の基準片と試料とに、同時に放射線を照射するステップと、前記放射線検出手段にて、前記一対の基準片又は試料を透過した放射線を検出し、前記撮像手段にて、前記検出手段にて検出された放射線を撮像することを、少なくとも複数回行って一組の透過放射線画像を得るステップと、前記画像抽出手段にて、前記一組の透過放射線画像から、第一基準片、第二基準片及び試料の各々につき一組の透過放射線画像を得るステップと、前記定量化処理手段にて、前記第一基準片の一組の透過放射線画像に基づいて算出した補正式を用いて、前記第一基準片、第二基準片及び試料の各々につき定量化された一組の透過放射線画像を得るステップと、前記計量基準作成手段にて、前記第一基準片及び第二基準片の各定量化された一組の透過放射線画像から、測定対象物の計量基準を得るステップと、前記測定値算出手段にて、前記試料の定量化された一組の透過放射線画像と、前記計量基準とから、前記試料内部の測定対象物の量の変化を得るステップとを、含むものである。
【0015】
請求項7においては、前記放射線透過測定装置に、正規化手段を備え、前記定量化手段にて定量化された第一基準片、第二基準片及び試料の一組の透過放射線画像の各々について正規化するステップを、さらに含むものである。
【0016】
請求項8においては、前記基準片は、該基準片からの放射線の放出面が階段状であり、前記収容部の放射線の進行方向の厚みが不連続的に変化する、形状を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
本発明によれば、放射線透過測定において、試料に照射される放射線の強度の変動を考慮して、得られた放射線透過画像の補正(画像処理)が行われるので、より高い測定精度を備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例1に係る放射線透過測定装置の全体的な構成を示す図、図2は基準片の斜視図、図3は第一基準片の断面図、図4は第二基準片の断面図、図5は別形態の基準片の断面図である。
図6は実施例1に係る放射線透過測定処理の流れ図、図7は定量化処理の流れ図、図8は計量基準作成処理の流れ図、図9は画像処理の流れを説明する図、図10は基準片位置と透過中性子強度の関係の一例を示す図、図11は変換式の一例を示す図である。
図12は実施例2に係る放射線透過測定処理の流れ図である。
【0020】
以下に示す実施例では、試料中の測定対象物の分布や量を測定する放射線透過測定法において、放射線を中性子ビーム、試料を燃料電池セル、試料中の測定対象物を、前記燃料電池セルの内部に存在する発電等によって生じた水、とする。基準片はこの系における水と中性子の減衰量との計量基準(検量線)を作成するためのものである。
【実施例1】
【0021】
先ず、本発明の実施例1について説明する。
【0022】
本発明の実施例1に係る放射線透過測定装置又は放射線透過測定方法では、先ず、燃料電池セルの反応前と反応後(発電後)とのそれぞれについて、中空の第一基準片6、測定対象物を充填した第二基準片7、及び試料Tに、同時に放射線を照射して放射線透過画像を得て、前記基準片6・7を透過する放射線の減衰量から、測定対象物の物質層の厚み(量)と放射線減衰量との関係を求め、試料Tを透過する放射線の減衰量に基づいて、測定対象物の物質層の厚み(量)や分布を得るものである。
この発明によれば、放射線透過測定法において、試料に照射される放射線の強度の変動に基づく測定結果のバラツキが解消されるので、測定精度の向上を図ることができるのである。
【0023】
[放射線透過測定装置10]
本実施例に係る放射線透過測定装置10の構成について説明する。
図3に示すように、放射線透過測定装置10には、中性子源13と、被写体となる試料T並びに基準片6・7が載置されるステージ12と、中性子検出器14と、撮像手段15と、演算処理手段16とが、備えられる。
前記中性子源13と被写体との間には、コリメータ18が備えられ、中性子源13から供給される中性子束が平行ビームに整えられる。
【0024】
前記中性子源13は、被写体である試料T並びに基準片6・7に対して放射線として中性子ビームを照射するものである。中性子源13には、原子炉(図示せず)が接続されており、原子炉より中性子が送られる。この中性子源13とコリメータ18とは、被写体の表面に略垂直に中性子ビームを照射できるように配設される。
【0025】
前記中性子検出器14は、被写体に対して中性子源13とは反対側に設けられる。中性子検出器14は、中性子ビームが被写体を通過し、透過した中性子(すなわち、主に基準片7又は試料T中の水によって減衰した減衰中性子ビーム)を検出するものである。
【0026】
本実施例において、中性子検出器14はシンチレータであり、放射線が特定の物質に入射するとき、その放射線エネルギーが吸収されて蛍光を発する現象(シンチレーション)を利用して、放射線の計数・分析が行われる。
【0027】
前記中性子検出器14には、暗箱14a内に、被写体を透過してきた中性子を受けて蛍光を発する蛍光板14bが設けられる。この蛍光は、被写体を透過してきた中性子が減衰していないほど蛍光輝度が高く、また、中性子の減衰量の大きさは、中性子ビームの通り道の水の厚さに起因する。すなわち、蛍光板14bにおいて、基準片7又は試料T中の、水の厚さが小さいほど蛍光輝度が高くなり、水の厚さが大きいほど蛍光輝度が低くなる。蛍光は、前記暗箱14a内において鏡14cによって反射させられ、間接的にこの蛍光輝度を読む撮像手段15に取り込まれる。前記撮像手段15としては、蛍光輝度カメラが採用される。
【0028】
前記撮像手段15にて得られた透過中性子画像(透過放射線画像)では、被写体を透過してきた中性子の量(強さ)が蛍光輝度の濃淡(コントラスト)として表れる。この透過中性子画像は、撮像手段15より演算処理手段16に送られる。
なお、実施例1においては、中性子検出器14にて検出された中性子を、撮像手段15にて少なくとも複数回撮像して、一組の透過中性子画像を得る。
【0029】
演算処理手段16では、前記一組の透過中性子画像に基づいて、画像処理を含む演算処理が行われ、試料T内部の水分量やその分布が、測定結果として出力される。
詳細には、前記演算処理手段16は、演算部、制御部、記憶部、入力部及び出力部等を備えた電子計算機であって、画像抽出手段、定量化処理手段、計量基準作成手段、測定値算出手段、及び、出力手段として機能する。
前記画像抽出手段とは、撮像手段15にて得られた一組の透過中性子画像から第一基準片6、第二基準片7及び試料Tの各々につき一組の透過放射線画像を得るためのものである。
前記定量化処理手段とは、第一基準片6の一組の透過中性子画像に基づいて算出した補正式を用いて、第一基準片6、第二基準片7及び試料Tの各々につき定量化された一組の透過中性子画像を得るためのものである。
前記計量基準作成手段とは、第一基準片6及び第二基準片7の各定量化された一組の透過中性子画像から、測定対象物の計量基準を得るためのものである。
前記測定値算出手段とは、試料Tの定量化された一組の透過放射線画像と、前記計量基準とから、前記試料T内部の測定対象物の量の変化を得るためのものである。
前記出力手段とは、算出された試料内部の測定対象物の量を、濃淡画像マップやカラー画像マップ等のピクセルデータ又はボクセルデータ、或いは、二次元又は三次元座標と測定対象物の量を示すテーブル等として、表示出力したり印字出力したりするためのものである。
なお、上記各手段の詳細な機能は後述する。
【0030】
[基準片6・7]
続いて、前記基準片6・7について説明する。
図2〜図4に示すように、使用される二つの基準片6・7は、厳密に同形状のものであり、内部に収容部8が形成された密閉可能な中空容器である。これらの基準片6・7は、水以外の中性子の減衰に与える影響を除外するために、例えばアルミニウム等の中性子透過性の高い材料を用いて構成すると好適である。
一方の基準片である第一基準片6は、内部に形成された収容部8は、空洞とされる。他方の基準片である第二基準片7は、内部に形成された収容部8には、測定対象物と同一物質である水9(蒸留水)が充填される。
【0031】
前記基準片6・7は、直方体のうち中性子ビームの入射面と反対側の面、つまり、中性子ビームが基準片6・7から外部へ出る放出面が、階段状に切り欠かれた外形状を有する。なお、中性子ビームは、基準片6・7の入射面に略垂直に入射して、該基準片6・7の内部を略直線状に進み、放出面より外部へ放出されるものとする。
本実施例においては、基準片6・7の放出面には、略上下方向に階段が形成されるが、略左右方向に階段を形成してもかまわない。
【0032】
前記基準片6・7は、略一定幅の壁でその外形状が形成されることによって、その内部に形成された空間である収容部8は、入射面側が略平面であって、放出面側が階段状となる。
中性子ビームの進行方向と略平行な方向を厚み方向とし、その厚さを厚さDとすると、前記収容部8には厚さDの物質層が形成される。つまり、第一基準片6の中性子ビームの通り道には、厚さDの気層が存在し、第二基準片7の中性子ビームの通り道には厚さDの測定対象物と同一物質で成る層が存在することとなる。そして、収容部8の放射面側は階段状に形成されるので、前記物質層の厚さDは、不連続的に規則的に変化する。
【0033】
本実施例においては、基準片6・7の、下端と第1段との間を第0ステップ、第1段と第2段の間を第1ステップ、…、第n−1段と上端との間を第nステップとし、第0ステップの収容部8は厚さD、第1ステップの収容部8は厚さD、…、第nステップの収容部8は厚さDとする。このように基準片6・7では、ステップごとに収容部8の厚さDが異なり、第0ステップから第nステップに向けて不連続的且つ規則的に厚さD・D・…・Dが小さくなる。つまり、下段のステップほど、収容部8の厚さDは大きく、中性子ビームが通過する物質層は厚くなり、上段のステップほど、収容部8の厚さDは小さく、中性子ビームが通過する物質層(気層又は液層)は薄くなる。
【0034】
前記基準片6・7では、収容部8毎に物質層(気層又は液層)の厚さDが不連続的にし、同一ステップのステップ幅(例えば10μm)の範囲内では厚さDは一定である。従って、検量線を作成する際に、測定誤差が少なく、また、基準片6・7に入射した中性子ビームの通り道と、水が充填された液相の厚さDとの関係を整合させることが容易である。
【0035】
但し、収容部8は、不連続的且つ規則的に厚さDが変化する形状に限定されず、不連続的且つ不規則的に厚さDが変化する形状であったり、連続的に厚さDが変化する形状であったりしてもかまわない。例えば、図5に示すように、基準片6・7の外形状を略楔状とし、収容部8の厚さDが下端から上端に向かって連続的に小さくなるものとすることもできる。
【0036】
前記基準片6・7において、収容部8の各ステップにおける厚さD〜Dは、予め計測されて、演算処理手段16に記録される。つまり、基準片6・7の中性子ビームの入射位置と、該入射位置に入射した中性子ビームが通過する収容部8の厚さD〜Dとが対応づけられて、演算処理手段16に記録される。なお、収容部8の厚さD〜Dは、各ステップにおける液層の厚さであり、厚さD〜Dの代わりに、或いは、厚さD〜Dとともに、水分量を、中性子ビームの入射位置と対応づけて記録することもできる。
【0037】
上述のように、第二基準片7の収容部8の液層の厚さによって、中性子ビームの減衰量は変化するので、収容部8の各ステップの位置とその液層の厚さ(水分量)と、当該厚さの液層を通過した中性子ビームの中性子減衰量との関係を求め、その関係をプロットすることにて、水分量と中性子減衰量との関係を表す検量線を作成できるのである。
【0038】
[放射線透過測定の手順]
続いて、図6〜図9を用いて、上記放射線透過測定装置10を用いた放射線透過測定の手順を説明する。
以下、発電が行われる前で測定対象物である水分が存在しない燃料電池セルを、「反応前の試料T」と記載し、発電が行われた後で測定対象物である水が存在する燃料電池セルを「反応後の試料T」と記載する。
【0039】
先ず、反応前の試料Tと、第一基準片6と第二基準片7とを、ステージ12に載置する。なお、試料Tと第一基準片6と第二基準片7とは、ステージ12の上に並列したり、ステージ12に載置された試料Tの上に第一基準片6と第二基準片7とを並べて載置したりすることができる。
そして、これらの被写体に、中性子源13から中性子ビームが照射される。被写体を透過した中性子が、中性子検出器14にて検出され、中性子量の多少が蛍光輝度の濃淡として表わされた透過中性子画像が、撮像手段15にて撮像される。前記透過中性子画像を「第一次透過画像N」とする。
この第一次透過画像Nは、撮像手段15より演算処理手段16へ伝達され、該演算処理手段16にて保存される(S1)。
【0040】
続いて、今度は、反応後の試料Tと、第一基準片6と第二基準片7とを、ステージ12に載置する。なお、反応後の試料Tと第一基準片6と第二基準片7とは、それぞれ、先ほど反応前の試料Tを測定したときと同一の配置とする。
そして、これらの被写体に、中性子源13から中性子ビームが照射される。被写体を透過した中性子が、中性子検出器14にて検出され、中性子量の多少が蛍光輝度の濃淡として表わされた透過中性子画像が、撮像手段15にて撮像される。前記透過中性子画像を「第二次透過画像N」とする。
この第二次透過画像Nは、撮像手段15より演算処理手段16へ伝達され、該演算処理手段16にて保存される(S2)。
【0041】
前記第一次透過画像Nと、前記第二次透過画像Nとを取得した演算処理手段16では、これらの透過中性子画像が読み出されて(S3)、反応後の試料Tに存在する水分量(水の分布)を算出するための解析が開始される。
【0042】
解析処理が開始されると、まず、演算処理手段16は、第一次透過画像Nと、第二次透過画像Nとから、第一基準片6に係る部分の画像と、第二基準片7に係る部分の画像と、試料Tに係る部分の画像とを、それぞれ抽出する(S4)。
解析画像の抽出に際しては、予め演算処理手段16に設定された基準片6の形状データ及び位置データから、第一次透過画像Nに濃淡で映る基準片6の輪郭を特定し、該輪郭に包囲される部分を第一基準片6に係る部分の第一次透過画像Nとして抽出することができる。第二次透過画像Nにおいても同様に、第一基準片6に係る部分の第二次透過画像Nを抽出することができる。
上記と同様に、第二基準片7及び試料Tについても、それぞれの部分に係る第一次透過画像N及び第二次透過画像Nを抽出することができる。
【0043】
次に、演算処理手段16は、第二次透過画像Nを第一次透過画像Nに基づいて定量化し、これらが撮像されたときの中性子ビームの強度差を解消するための処理を行う(S5)。
【0044】
図7に示すように、定量化処理において演算処理手段16は、第一基準片6の第一次透過画像Nに基づいて、基準片位置と、透過中性子強度との関係を、例えば図10に示すように、一次式(式1:y=αx+β)に近似する(S51)。
【0045】
前記「基準片位置」とは、基準片6の中性子ビームの入射面において、収容部8の厚さDが変化する或方向の一側の端部をゼロ、他側の端部を1とした場合の、該基準片6上の相対位置である。例えば、図3に示すように、基準片6において、収容部8の厚さDが最も大きい側の端部が基準片位置0、収容部8の厚さDが最も小さい側の端部が基準片位置1とされる。
また、前記透過中性子強度は、第一基準片6の前記第一次透過画像Nに濃淡として表れた蛍光輝度を、予め演算処理手段16に設定された式又はテーブル等に基づいて換算することにより、求めることができる。
【0046】
続いて、演算処理手段16は、上記の処理と同様に、第一基準片6の第二次透過画像Nに基づいて、基準片位置と、透過中性子強度との関係を、例えば図10に示すように、一次式(式2:y=αx+β)に近似する(S52)。
【0047】
そして、演算処理手段16は、前記式1と式2の傾きαとαとを比較し(S53)、これらの差異が所定の閾値αの範囲内であるか否かを判断する(S54)。
αとαとの差異が、所定の閾値αの範囲内であるとき(S54のNO・図10の反応後1の場合)、つまり、式1と式2の傾きがほぼ同じであるとき、演算処理手段16は、前記式1と式2の切片βとβとを比較し、式2の切片を式1の切片と合わせるように、切片βの補正式(平行移動定数)を算出する(S55)。
【0048】
一方、αとαとの差異が、所定の閾値αを超えるとき(S54のYES・図10の反応後2の場合)、つまり、式1と式2の傾きが異なるとき、演算処理手段16は、式2を式1に合わせるように補正を行う補正式を算出する(S59)。
【0049】
そして、演算処理手段16では、算出された補正式を用いて、第一基準片6と第二基準片7と試料Tとの各第二次透過画像Nを補正して(S56)、補正後の第二次透過画像N2aとし、これを保存する(S57)。
これまでの処理により、第一基準片6と第二基準片7と試料Tとの、それぞれの補正後の第二次透過画像N2aは、第一次透過画像Nに定量化されていることとなる。
【0050】
図6に戻って、さらに、演算処理手段16は、第一基準片6と第二基準片7と試料Tとの各補正後の第二次透過画像N2aに対して、第一基準片6と第二基準片7と試料Tとの各第一次透過画像Nを元画像として、シェーディング補正を行い、正規化する(S6)。以下、この正規化された画像を、定量化後画像N2bとする。
この正規化に際し、補正後の第二次透過画像N2aから第一次透過画像Nを除算して中性子ビームの密度ムラ及び撮像素子内の感度ムラを低減するとともに、画像を判別し易くするための定数を加えて、補正後の第二次透過画像N2aの全体の明るさの補正を行う。
【0051】
以上までの処理で、演算処理手段16は、第一基準片6と、第二基準片7と、試料Tとのそれぞれについて、定量化後画像N2bを得ることができる。この定量化後画像N2bでは、中性子ビームに含まれる中性子量のばらつきが解消されている。
続いて、演算処理手段16は、計量基準を作成するための処理を行う(S7)。
【0052】
図8に示すように、計量基準作成処理において演算処理手段16は、第二基準片7に係る定量化後画像N2bから第一基準片6に係る定量化後画像N2bを除算し、一般的なシェーディング補正で正規化する(S71)。これにより、第二基準片7内部の水により減衰した中性子強度(中性子減衰量)の多少が、濃淡により表された計量基準画像Nを得ることができる。
【0053】
さらに、演算処理手段16は、前記計量基準画像Nにて示される中性子減衰量と、予め設定された第二基準片7の収容部8の各ステップの位置とその水分量(または、液層の厚さD〜D)とから、中性子減衰量と水分量との関係を定める変換式(例えば、図11)を作成する(S72)。
このようにして、演算処理手段16にて、照射される中性子ビームの時間変動や、基準片6・7の外枠等や、中性子ビームが透過する大気中の水分量といった、基準片内部の水以外の中性子減衰要因が除去された変換式を作成することができる。
【0054】
続いて、演算処理手段16は、上記変換式(計量基準)を用いて、試料T内部の水分量を算出する処理を行う(S8)。
まず、演算処理手段16は、試料Tに係る部分の定量化後画像N2bに濃淡で表された中性子減衰量を、上述の作成した変換式に当てはめることによって、試料Tの水分量(水分量の分布)を算出する。
そして、演算処理手段16は、算出された試料Tの水分量を、濃淡画像マップやカラー画像マップ等のピクセルデータ又はボクセルデータ、或いは、二次元又は三次元座標と水分量を示すテーブル等として、出力する(S9)。
【0055】
上述の放射線透過測定の手順によれば、試料Tの構成材料や、中性子ビームが透過する大気中の水分量といった、試料T内部に反応により生じた水以外の中性子減衰要因に加え、試料Tに照射される中性子ビームの強度や密度の変動による測定誤差が排除された測定結果を得ることができるので、測定精度の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0056】
本発明の実施例2に係る放射線透過測定装置10について説明する。
上記実施例1では、燃料電池セルの内部に存在する発電等によって生じた水を測定するため、中性子検出器14にて検出された中性子を、撮像手段15にて少なくとも複数回撮像して、一組の透過中性子画像を得て、この一組の透過中性子画像に基づいて、試料内部の測定対象物の量を算出している。しかし、必ずしも、複数回撮像して複数の透過中性子画像を得ることに限定されず、試料によっては、一の透過中性子画像に基づいて、測定対象物の量を算出することも可能である。そこで、実施例2においては、一の透過中性子画像に基づいて、測定対象物の量を算出する構成の放射線透過測定装置10及び放射線透過測定方法について説明する。
【0057】
放射線透過測定装置10の演算処理手段16以外の構成は、上記実施例1に記載の放射線透過測定装置10と同一であるので、詳細な説明を省略する。
【0058】
放射線透過測定装置10に具備される演算処理手段16は、演算部、制御部、記憶部、入力部及び出力部等を備えた電子計算機であって、画像抽出手段と、計量基準作成手段と、測定値算出手段と、出力手段として機能する。
前記画像抽出手段とは、透過放射線画像から第一基準片、第二基準片及び試料の各々の透過放射線画像を抽出して得るためのものである。
前記計量基準作成手段とは、前記第一基準片及び前記第二基準片の各透過放射線画像から、測定対象物の計量基準を得るためのものである。
前記測定値算出手段とは、前記試料の透過放射線画像と前記計量基準とから、前記試料内部の測定対象物の量を得るためのものである。
前記出力手段とは、算出された試料内部の測定対象物の量を、濃淡画像マップやカラー画像マップ等のピクセルデータ又はボクセルデータ、或いは、二次元又は三次元座標と測定対象物の量を示すテーブル等として、表示出力したり印字出力したりするためのものである。
【0059】
次に、上記構成の放射線透過測定装置10における、放射線透過測定の処理の流れを説明する。
なお、本実施例に係る放射線透過測定方法は、試料Tに水分以外の放射線減衰要因が無い場合や、試料Tの水分分布の概要を得るような場合に適用させると、好適である。
【0060】
先ず、反応前の試料Tと、第一基準片6と第二基準片7とを、ステージ12に載置する。なお、試料Tと第一基準片6と第二基準片7とは、ステージ12の上に並列したり、ステージ12に載置された試料Tの上に第一基準片6と第二基準片7とを並べて載置したりすることができる。
そして、これらの被写体に、中性子源13から中性子ビームが照射される。被写体を透過した中性子が、中性子検出器14にて検出され、中性子量の多少が蛍光輝度の濃淡として表わされた透過中性子画像が、撮像手段15にて撮像される。前記透過中性子画像を「透過画像N」とする。
この透過画像Nは、撮像手段15より演算処理手段16へ伝達され、該演算処理手段16にて保存される(S81)。
【0061】
前記透過画像Nを取得した演算処理手段16では、この透過中性子画像が読み出されて(S82)、反応後の試料Tに存在する水分量(水の分布)を算出するための解析が開始される。
【0062】
解析処理が開始されると、まず、演算処理手段16は、透過画像Nから、第一基準片6に係る部分の画像と、第二基準片7に係る部分の画像と、試料Tに係る部分の画像とを、それぞれ抽出する(S83)。
解析画像の抽出に際しては、予め演算処理手段16に設定された基準片6の形状データ及び位置データから、透過画像Nに濃淡で映る基準片6の輪郭を特定し、該輪郭に包囲される部分を第一基準片6に係る部分の解析画像として抽出することができる。第二基準片7及び試料Tについても同様に抽出することができる。
【0063】
次に、演算処理手段16は、計量基準を作成する(S84)。
演算処理手段16は、先ず、第二基準片7に係る透過画像Nから第一基準片6に係る透過画像Nを除算し、一般的なシェーディング補正で正規化する。これにより、第二基準片7内部の水により減衰した中性子強度(中性子減衰量)の多少が、濃淡により表された計量基準画像Nを得ることができる。
【0064】
さらに、演算処理手段16は、前記計量基準画像Nにて示される中性子減衰量と、予め設定された第二基準片7の収容部8の各ステップの位置とその水分量(または、液層の厚さD〜D)とから、中性子減衰量と水分量との関係を定める変換式(例えば、図11)を作成する。
このようにして、演算処理手段16にて、照射される中性子ビームの時間変動や、基準片6・7の外枠等や、中性子ビームが透過する大気中の水分量といった、基準片内部の水以外の中性子減衰要因が除去された変換式を作成することができる。
【0065】
続いて、演算処理手段16は、上記変換式(計量基準)を用いて、試料T内部の水分量を算出する処理を行う(S85)。
演算処理手段16は、試料Tに係る部分の透過画像Nに濃淡で表された中性子減衰量を、上述の作成した変換式に当てはめることによって、試料Tの水分量(水分量の分布)を算出する。
そして、演算処理手段16は、算出された試料Tの水分量を、濃淡画像マップやカラー画像マップ等のピクセルデータ又はボクセルデータ、或いは、二次元又は三次元座標と水分量を示すテーブル等として、出力する(S86)。
【0066】
上記のように、測定対象となる水分量を算出するための基準片6・7と試料Tとに同時に放射線を照射し、同一画像に表れる情報を用いて、計量基準の作成と、該計量基準を用いた測定値の算出とが行われる、つまり、試料に照射される放射線の強度の変動を考慮して、得られた放射線透過画像の補正(画像処理)が行われるので、より高い測定精度を備えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の基準片は、試料の放射線透過測定一般に利用できる。試料は例えばFC自動車等の燃料電池セル等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例1に係る放射線透過測定装置の全体的な構成を示す図。
【図2】基準片の斜視図。
【図3】第一基準片の断面図。
【図4】第二基準片の断面図。
【図5】別形態の基準片の断面図。
【図6】実施例1に係る放射線透過測定処理の流れ図。
【図7】定量化処理の流れ図。
【図8】計量基準作成処理の流れ図。
【図9】画像処理の流れを説明する図。
【図10】基準片位置と透過中性子強度の関係の一例を示す図。
【図11】変換式の一例を示す図。
【図12】実施例2に係る放射線透過測定処理の流れ図。
【符号の説明】
【0069】
T 試料
6 第一基準片
7 第二基準片
8 収容部
9 水
10 放射線透過測定装置
12 ステージ
13 中性子源
14 中性子検出器
15 撮像手段
16 演算処理手段
18 コリメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料への放射線の照射と該試料を透過する放射線の検出とを行って、前記試料内部の測定対象物の量を測定する放射線透過測定装置において、
内部に収容部が形成された密閉可能な容器であって、前記収容部が空の第一基準片と、前記収容部が所定量の測定対象物と同一物質で満たされた第二基準片との、一対の基準片と、
前記一対の基準片と試料とに、同時に放射線を照射する照射手段と、
前記一対の基準片又は試料を透過した放射線を検出する検出手段と、
該検出手段にて検出された放射線を撮像して透過放射線画像を得る撮像手段と、
前記透過放射線画像から第一基準片、第二基準片及び試料の各々の透過放射線画像を得る画像抽出手段と、
前記第一基準片及び前記第二基準片の各透過放射線画像から、測定対象物の計量基準を得る計量基準作成手段と、
前記試料の透過放射線画像と前記計量基準とから、前記試料内部の測定対象物の量を得る測定値算出手段とを、
備えることを特徴とする放射線透過測定装置。
【請求項2】
試料への放射線の照射と該試料を透過する放射線の検出とを少なくとも複数回行って、前記試料内部の測定対象物の量の変化を測定する放射線透過測定装置において、
内部に収容部が形成された密閉可能な容器であって、前記収容部が空の第一基準片と、前記収容部が所定量の測定対象物と同一物質で満たされた第二基準片との、一対の基準片と、
前記一対の基準片と試料とに、同時に放射線を照射する照射手段と、
前記一対の基準片又は試料を透過した放射線を検出する検出手段と、
該検出手段にて検出された放射線の撮像を行って透過放射線画像を得る撮像手段と、
前記検出手段による検出及び前記撮像手段による撮像を少なくとも複数回行って得た一組の透過放射線画像から、第一基準片、第二基準片及び試料の各々につき一組の透過放射線画像を得る画像抽出手段と、
前記第一基準片の一組の透過放射線画像に基づいて算出した補正式を用いて、前記第一基準片、第二基準片及び試料の各々につき定量化された一組の透過放射線画像を得る定量化処理手段と、
前記第一基準片及び第二基準片の各定量化された一組の透過放射線画像から、測定対象物の計量基準を得る計量基準作成手段と、
前記試料の定量化された一組の透過放射線画像と、前記計量基準とから、前記試料内部の測定対象物の量の変化を得る測定値算出手段とを、
備えることを特徴とする放射線透過測定装置。
【請求項3】
前記放射線透過測定装置に、
前記定量化手段にて定量化された第一基準片、第二基準片及び試料の一組の透過放射線画像の各々について正規化する正規化手段を
さらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の放射線透過測定装置。
【請求項4】
前記基準片は、該基準片からの放射線の放出面が階段状であり、前記収容部の放射線の進行方向の厚みが不連続的に変化する、形状を有することを特徴とする、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の放射線透過測定装置。
【請求項5】
内部に収容部が形成された密閉可能な容器であって、前記収容部が空の第一基準片と、前記収容部が所定量の測定対象物と同一物質で満たされた第二基準片との、一対の基準片と、放射線照射手段と、放射線検出手段と、撮像手段と、画像抽出手段と、計量基準作成手段と、測定値算出手段とを備えた放射線透過測定装置を用いて、
前記放射線照射手段にて、前記一対の基準片と試料とに同時に放射線を照射するステップと、
前記放射線検出手段にて、前記一対の基準片又は試料を透過した放射線を検出するステップと、
前記撮像手段にて、前記該検出手段で検出された放射線を撮像して透過放射線画像を得るステップと、
前記画像抽出手段にて、前記透過放射線画像から第一基準片、第二基準片及び試料の各々の透過放射線画像を得るステップと、
前記計量基準作成手段にて、前記第一基準片及び前記第二基準片の各透過放射線画像から、測定対象物の計量基準を得るステップと、
前記測定値算出手段にて、前記試料の透過放射線画像と前記計量基準とから、前記試料内部の測定対象物の量を得るステップとを、
含むことを特徴とする放射線透過測定方法。
【請求項6】
内部に収容部が形成された密閉可能な容器であって、前記収容部が空の第一基準片と、前記収容部が所定量の測定対象物と同一物質で満たされた第二基準片との、一対の基準片と、放射線照射手段と、放射線検出手段と、撮像手段と、画像抽出手段と、定量化処理手段と、計量基準作成手段と、測定値算出手段とを備えた放射線透過測定装置を用いて、
前記放射線照射手段にて、前記一対の基準片と試料とに、同時に放射線を照射するステップと、
前記放射線検出手段にて、前記一対の基準片又は試料を透過した放射線を検出し、前記撮像手段にて、前記検出手段にて検出された放射線を撮像することを、少なくとも複数回行って一組の透過放射線画像を得るステップと、
前記画像抽出手段にて、前記一組の透過放射線画像から、第一基準片、第二基準片及び試料の各々につき一組の透過放射線画像を得るステップと、
前記定量化処理手段にて、前記第一基準片の一組の透過放射線画像に基づいて算出した補正式を用いて、前記第一基準片、第二基準片及び試料の各々につき定量化された一組の透過放射線画像を得るステップと、
前記計量基準作成手段にて、前記第一基準片及び第二基準片の各定量化された一組の透過放射線画像から、測定対象物の計量基準を得るステップと、
前記測定値算出手段にて、前記試料の定量化された一組の透過放射線画像と、前記計量基準とから、前記試料内部の測定対象物の量の変化を得るステップとを、
含むことを特徴とする放射線透過測定方法。
【請求項7】
前記放射線透過測定装置に、正規化手段を備え、
前記定量化手段にて定量化された第一基準片、第二基準片及び試料の一組の透過放射線画像の各々について正規化するステップを、
さらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の放射線透過測定方法。
【請求項8】
前記基準片は、該基準片からの放射線の放出面が階段状であり、前記収容部の放射線の進行方向の厚みが不連続的に変化する、形状を有することを特徴とする、
請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載の放射線透過測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−145196(P2008−145196A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331041(P2006−331041)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】