説明

放射線防護剤としてのベータグルカンの使用方法

本発明は、予防または治療有効量の粒状の生物学的利用能を有するβ(1,3;1,6)グルカンを投与することにより、免疫抑制およびマクロファージ活性の減少などの放射線および/または化学療法関連損傷および/または障害を処置および予防する方法に関する。本発明はまた、β(1,3;1,6)グルカンが完全グルカン粒子、微粒子状βグルカン粒子またはその組み合わせの形態で提供される方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
本出願は、2002年8月13日に出願された米国特許仮出願第60/403,424号の利益を主張する。上述の出願の全教示は参照により本明細書に取り込まれる。
【0002】
米国政府資金提供
本発明は、全体または一部において、米国立衛生研究所からの助成金CA84612および米国陸軍からの助成金DAMD17-02-1-0445により補助された。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
発明の背景
ベータ(β)-グルカンは、一般的に、酵母、細菌、真菌および穀類を含むいくつかの供給源に由来する複合炭水化物である。各タイプのβ-グルカンは、グルコースが異なる様式で互いに連結した特有の構造を有し、異なる物理的および化学的性質をもたらす。例えば、細菌および藻類由来のβ(1-3)グルカンは直鎖状であり、食物の増粘剤として有用となっている。置換度または分枝頻度として知られる側鎖の頻度は、二次構造および可溶性を調節する。酵母由来のベータグルカンは、β(1-3)およびβ(1-6)結合を伴う分枝状であり、自身のマクロファージへの結合および刺激能力を高める。パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)から精製したβ(1-3;1-6)グルカンは、強力な抗感染ベータ-グルカン免疫調節因子である。
【0004】
S. cerevisiaeの細胞壁は、主に、その形状および機械強度を担うβ-グルカンから構成される。酵母は、食品等級微生物としての使用が最もよく知られているが、非特異的免疫応答を刺激するために使用される粗製の不溶性抽出物であるチモサンの供給源としても使用される。酵母由来ベータ(1-3)グルカンは、一部、種々の標的と戦うための内在抗真菌免疫機構を活性化することにより、免疫系を刺激する。パン酵母β(1-3;1-6)グルカンは、β(1-6)結合により結合した一定間隔のβ(1-3)分枝を有する多糖骨格を形成するβ(1-3)結合糖(グルコース)分子だけで構成される多糖である。これは、より正式には、ポリ-(1-6)-β-D-グルコピラノシル-(1-3)-β-D-グルコピラノースとして知られている。グルカンは、供給源および単離方法により構造的および機能的に異なる。
【0005】
ベータグルカンは、多様な範囲の活性を有する。β-グルカンが非特異的免疫性および感染に対する抵抗性を増大させる能力は、内毒素のものと類似する。β(1-3)グルカンの免疫系に対する効果に関する以前の研究では、マウスに着目した。後の研究により、β(1-3)グルカンは、ミミズ、エビ、魚類、トリ、ラット、ウサギ、モルモット、ヒツジ、ブタ、家畜類およびヒトを含む多種多様な他の種において強い免疫刺激活性を有することが示された。これらの研究に基づくと、β(1-3)グルカンは、進化論スペクトル(evolutionary spectrum)全体にわたって活性な免疫刺激剤のタイプであり、おそらく、真菌病原体に対して指向される進化論的内在免疫応答を示す。しかしながら、広範囲にわたる調査にもかかわらず、免疫刺激剤としての使用に理想的なβ(1-3)グルカンの供給源、サイズおよび形態に関して意見の一致が得られていない。
【0006】
放射線および化学療法剤は、骨髄における血球および血小板の産生を抑制し得、骨髄抑制(myelosuppression)として知られる有害副作用である。放射線への曝露は、生命を危険にさらす感染および出血症状の発現を制御するのに必要な、骨髄(BM)由来の免疫(造血)細胞および血小板の急速な枯渇を引き起こし得る。
【0007】
放射線防御剤は、放射線療法および化学療法の副作用を最小減に抑えることにより、より有効な抗腫瘍処置を可能にする。また、放射線防御の進歩により、核または放射線と闘う環境において、電離放射線への曝露の結果の長期および短期両方における危険を最小限にしつつ、必要時に軍事行動を行なうことが可能になる。また、放射線防御剤は、宇宙放射線に曝露される宇宙飛行士を保護または処置するのに有用であり得る。最後に、容易に入手可能かつ容易に投与される放射性防御剤は、テロ行為または産業上の核事故による被害を最小限に抑えるのに非常に重要であり得る。
【0008】
β(1-3;1-6)グルカンの増血剤としての使用は、いくつかの文献において試験的に検討された。例えば、Jamasらによる米国特許第5,532,223号には、望ましくないサイトカインの産生を刺激せずに造血効果および免疫学的効果を刺激するための、非経口な中性可溶性グルカンの使用が示されている。Patchenおよび同僚は、非経口的に投与した可溶性で微粒状のベータ-グルカンが、放射線に曝露したマウスに放射線への曝露前または曝露後のいずれかで投与すると、造血性の回復および感染に抵抗する能力を高め得ることを示した。M. L. Patchenら、「Glucan: mechanisms involved in its radioprotective effect」, J. Leukoc. Biol., 42, 95 (1987)を参照のこと。ベータグルカンはまた、紫外線照射により引き起こされる障害から皮膚を保護するための局所用抗酸化剤として使用されている。J. A. Greene, 「Composition for protecting skin from damaging effects of ultraviolet light」、米国特許第6,235,272号を参照のこと。しかしながら、これらの実験室での研究では、β-グルカンの簡便な製剤は得られていない。これらの適用のほとんどでは、不十分な患者コンプライアンスをもたらし得る高価で痛みを伴う経路である注射による投与を必要とする可溶性物質を利用している。しかしながら、多くの薬物は、経口による生物学的利用可能性を限定する性質により、経口用製剤に適さない。したがって、より大きな患者コンプライアンスをもたらし、かつ生物学的利用可能性を維持し得る製剤の必要性が存在する。さらに、容易に保存でき、かつ骨髄抑制を予防または処置するため、および有効な放射線防御剤としての役割を果たすためにヒトに投与できるβ-グルカン、特に経口用製剤の必要性がなお存在する。
【0009】
発明の要旨
【0010】
本発明は、粒状の生物学的利用能を有するβ(1-3;1-6)グルカンの放射線防御剤としての使用に関する。β(1-3;1-6)グルカンは、容易に経口投与することができ、作用部位(例えば、骨髄)に対して生物学的利用可能である。本明細書では、予防または治療有効量の粒状の生物学的利用能を有するβ(1-3;1-6)グルカンを投与することにより電離放射線および/または化学療法による傷害を処置および予防する方法を開示する。ある特定の態様では、β(1-3;1-6)グルカンは、完全グルカン粒子、微粒子状β-グルカン粒子または完全グルカン粒子および微粒子状β-グルカン粒子の組み合わせを含む。完全グルカン粒子は、典型的には、1ミクロン以上の直径を有し、微粒子状β-グルカン粒子は、1ミクロン以下の直径を有する。完全グルカン粒子、微粒子状β-グルカン粒子または完全グルカン粒子および微粒子状β-グルカン粒子の組み合わせは、経口および/または非経口投与され得るが、完全グルカン粒子の経口投与が好ましい。約0〜100mg/体重kgの範囲で毎日投与されるβ-グルカンが治療有効用量を構成する。
【0011】
本発明はまた、予防または治療有効量のβ(1-3;1-6)グルカンを投与することにより、骨髄抑制およびマクロファージ活性の低下などの放射線および/または化学療法関連の障害(affliction)を処置および予防する方法を開示する。放射線および/または化学療法関連の障害は、電離放射線、化学療法または他の有害条件のいずれかにより引き起こされ得る。約0〜100mg/体重kgの治療有効用量の完全グルカン粒子の毎日の経口投与が特に好ましい。グルカンは、幹細胞活性化を増強するための他の薬剤と同時投与することができる。
【0012】
本発明はまた、予防または治療有効量の粒状の生物学的利用能を有するβ(1,3;1,6)グルカンを投与することにより放射線または化学療法により生じたマクロファージ活性の低下を処置または予防する方法に関する。別の態様では、本発明は、照射後の骨髄抑制の処置における経口使用用医薬を製造するための粒状の生物学的利用能を有するβ(1,3;1,6)グルカンの使用であって、ここで、経口投与されるグルカンが、CR3活性化のための第2シグナルを提供することにより補体系とともに機能することにより造血幹先祖細胞を高める、使用に関する。
【0013】
また、本明細書では、治療的に有効な経口的に生物学的利用可能な量の完全グルカン粒子を個体に投与することを含む、放射線への曝露後のグルカン媒介造血先祖幹細胞回復を補体系を介して高める方法であって、ここで、グルカンが造血先祖幹細胞の再生を高める、方法を記載する。β(1,3;1,6)グルカンは、傷害後に補体活性化を伴って機能し、CR3活性化のための「第2シグナル」を提供することによりiC3bを介して結合されたiC3b幹細胞への幹細胞CR3の結合により傷害部位への幹細胞結合を促進する。このグルカンのCR3のレクチンドメインへの結合は、障害組織硫酸ヘパリンにより媒介される天然レクチン部位シグナルよりも効率的である。本発明の方法のある特定の態様では、経口投与されたグルカンは、骨髄に輸送され、分解される。骨髄では、分解された経口グルカンが、損傷幹細胞に沈積したiC3bに結合し、CR3を活性化することにより補体系を介して幹細胞を活性化する。すなわち、本発明の方法は、治療的に有効な経口的に生物学的利用可能な量の完全グルカン粒子を個体に投与することを含む、放射線への曝露後のグルカン媒介造血先祖幹細胞回復を補体系を介して高める方法であって、ここで、グルカンが補体系を介して造血先祖幹細胞の再生を高める、方法に関する。経口投与されたグルカンは、マクロファージにより取り込まれ、骨髄に移動され、分解され、放出された断片が幹細胞のCR3をプライムし、それにより幹細胞が分化および増殖するのを活性化する。β(1,3;1,6)グルカンが補体系を介して、損傷幹細胞に沈積したiC3bに結合し、CR3を活性化することにより幹細胞増殖および分化を促進する。
【0014】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、経口で生物学的利用能を有するβ(1-3;1-6)グルカンを、骨髄抑制およびマクロファージ活性の低下などの放射線および/または化学療法関連傷害を処置および予防するための医薬剤として使用する方法に関する。さらに、本発明は、完全グルカン粒子形態および/または微粒子状β-グルカン粒子形態のβ(1-3;1-6)グルカンを、放射線および/または化学療法関連の障害の処置および予防のための医薬品または治療食などの薬剤として使用する方法に関する。さらにまた、本発明は、完全グルカン粒子形態、微粒子状β-グルカン粒子形態またはその任意の組み合わせのβ(1-3;1-6)グルカンの放射線防御剤としての使用に関する。
【0015】
完全グルカン粒子(WGP)は、精製した酵母細胞壁調製物である。完全グルカン粒子は、マンナンタンパク質の外層を除去し、β-グルカンを、グルカンのインビボ形態学を保持したまま露出させることにより作製される。ある特定の態様では、完全グルカン粒子は、1ミクロン以上の粒子サイズを有する。微粒子状グルカン粒子は、本明細書において、酵母細胞壁β(1-3;1-6)グルカンを、約1ミクロン以下の粒子サイズまで微粉砕して生じた完全グルカン粒子の部分であると定義する。骨髄抑制の予防および処置のためのこれらの化合物の調製および使用を以下に記載する。
【0016】
種々の形態の微粒子状で可溶性のβ-グルカンが調製されている。一例は、微粒子状β-グルカン粒子であり、これは、酵母細胞壁β(1-3;1-6)グルカンを、約1ミクロン以下の粒子サイズまで微粉砕することにより形成され得る。この形態のベータグルカンは、Donzisによる米国特許第5,702,719号に記載されているものなどの栄養サプリメントおよび皮膚回復剤としての使用に適用されている。本明細書に記載の方法に使用され得る他の有用な粒状のグルカンは、Biopolymer Engineering, Inc., Eaton, MNから入手されるWGPTM Beta GlucanおよびBetaRightTMである。
【0017】
また、微粒子状β-グルカン粒子は、宿主の免疫系を増強させることが示されている。米国特許第5,223,491号および同第5,576,015号(その教示は、参照によりその全体が本明細書に援用される)を参照のこと。別の形態は、中性の可溶性β-グルカンであり、これは、コンホメーションとして純粋な、中性の可溶性グルカン調製物を得るための一連の酸、アルカリおよび中性処理工程により調製される。中性の可溶性グルカン調製物は、宿主の免疫系を増強するが、IL-1およびTNFの産生を誘導せず、したがって炎症を引き起こさない。米国特許第5,783,569号(その教示は、参照によりその全体が本明細書に援用される)を参照のこと。
【0018】
別の形態のβ-グルカンは、完全グルカン粒子(WGP)として知られる不溶性粒子である。完全グルカン粒子は、成長中の酵母をその成長培地から分離し、酵母のインタクトな細胞壁をアルカリに供し、こうして望ましくないタンパク質および核酸物質を除去することにより調製された酵母細胞壁の残留物である。ある特定の態様では、残留するものは、外側のマンナンタンパク質が除去された球状ベータ-グルカン粒子である。完全グルカン粒子は、任意のグルカン含有真菌細胞壁供給源から得られ得るが、好ましい供給源は、S. cerevisiae株である。これらの不溶性粒子は、広範囲の感染に対する宿主の抵抗性を増強し、抗体産生(アジュバント活性)を増大させ、白血球の動員を増大させ、創傷治癒を高めることが示されている。WGPの作製方法は、当該技術分野において公知であり、米国特許第4,810,646号、同第4,492,540号、同第5,037,972号、同第5,082,936号、同第5,250,436号および同第5,506,124号(その内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される)に開示されている。WGPは、種々の成分(各々、先天性免疫細胞上に見られるレセプターのサブセットに対する結合性の親和性が異なる)にさらに分解することができる。これらの種々のコンホメーション形態は、複雑性が増加する順に、ランダムコイル、一重らせん、三重らせんおよび三重らせんマルチマーである。WGPは、ワクチンアジュバント(米国特許第5,741,495号)、抗感染剤(Pedroso M, 「Application of Beta-1-3-glucan to prevent shipping fever in imported heifers,」Arch. Med. Res. 25(2), 181 (1994))および抗腫瘍剤(Borchers, A. T. ら, Proc . Soc. Exp. Biol. Med., 221(4), 281 (1999))としての使用を含む、種々の生物学的活性が示されている。各コンホメーション形態は異なる活性を有し、これは、グルカンレセプターについて観察される異なる特異性で示される。
【0019】
本明細書に記載の方法における使用のためのβ-グルカンは、経口で生物学的利用可能な製剤である。本明細書で使用される生物学的利用能を有するとは、完全グルカン粒子が、作用の標的に達することができることを意味する。完全グルカン粒子は、グルカンのパイアー斑取り込みに曝露される充分なβ(1-3;1-6)-グルカンを有する。グルカンはパイアー斑に取り込まれ、マクロファージにより取り込まれ、分解され、骨髄に輸送され、ここで、分解された断片が放出される。分解された断片は、傷害幹細胞上に沈着したiC3bに結合することにより、補体系を活性化し、CR3を活性化する。例えば、WGPは、骨髄または他の幹細胞に到達し、作用を及ぼすことができる。作用部位では、グルカンがCR3レセプターに結合または会合し、こんどはCR3が作用するのをプライムまたは促進する結果、グルカンが、幹細胞を刺激する作用をする。経口WGPの生物学的利用可能性は、この粒子を分解する胃腸管マクロファージによる骨髄へのWGPの輸送により媒介される。次いで、分解された粒子は、骨髄で、幹細胞CR3活性化の刺激因子として機能する。
【0020】
骨髄抑制(mylosupression)
ガンマ放射線曝露の有害効果の1つは、感染および疾患に対して防御する白血球を身体から枯渇させるという骨髄への障害である。β-グルカンは、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)と同様にして造血を刺激する能力を有する。血球は、常に増殖して古い血球と置き換わっており、増殖中の細胞は、より障害を受けやすいため、放射線および化学療法は血球の産生を抑制する。血球数が少なくなりすぎると、化学療法を縮小または延期しなければならない場合があり、患者は、骨髄が充分機能し始めるまで、赤血球(RBC)白血球(WBC)または血小板の輸血が必要となり得る。赤血球は、身体の細胞に酸素を運ぶために必要であり、ヘモグロビンおよびヘマトクリットにより測定したときに3800〜5400個の正常範囲で存在する。ヘモグロビンおよびヘマトクリットのいずれかまたは両方における減少は、貧血をもたらし得る。血小板は、血液凝固に重要な役割を果たす。通常、血小板の数は、150000〜400000個の範囲である。通常の数より少ない場合、歯茎出血、鼻血および重症の打撲に例示されるような過剰出血が引き起こされる。白血球は、感染と闘うために重要である。その正常範囲は、4500〜11000個であり、数が減少すると、感染に対する感受性が増大する。WBC数が1500〜2000未満に低下すると、充分な免疫抵抗力が失われる。
【0021】
骨髄抑制の原因の1つは、放射線療法の一部として計画的なもの、またはテロ行為、軍事的使用または放射能漏れによる偶発的なもののいずれかによる放射性物質への曝露である。放射性物質は、自発的に崩壊して電離放射線を発生するが、これは、生組織に障害を与えるのに充分なエネルギーを有する。電離放射線の種々の形態は、アルファおよびベータ粒子、ならびにガンマ放射線またはX線である。これらの種々の粒子および放射線のエネルギーにより組織内に浸透する程度、および障害の程度が決定される。放射線により生じる傷害の型および重篤度は、線量、線量率、放射線の質および曝露の型(全身対局所)に依存する。マウスでは、700〜1000 radの線量範囲での全身照射後の死亡は、通常、曝露後、10日以降に起こり、不可逆的な骨髄障害に起因する。低い線量または照射により、骨髄抑制の症状として知られる非致死的な赤血球減少症、リンパ球減少症および顆粒球減少症がもたらされ得る。放射線処置を受けている内科の患者は、処置中、比較的高い「バースト」の放射線を受けているため、しばしば、骨髄抑制を示す。
【0022】
周知の生物学的応答修飾因子(BRM)であるβ-グルカンは、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)と同様にして造血(血球形成)を刺激する。研究は、最初に粒状のβ-グルカンについて、後に可溶性β-グルカンについて行なわれ、これらはすべて、マウスに静脈内投与された(Patchen, M. L.ら, J. Biol. Response Mod. 3:627-633 (1984), Patchen, M. L.ら, Experientia 40:1240-1244 (1984), Petruczenko, A. Acta. Physiol. Pol. 35:231-236 (1984)ならびにPatchen, M. L.およびT. J. MacVittie., Int. J. Immunopharmacol. 7:923-932 (1985))。500〜900 cGyのガンマ放射線に曝露されたマウスは、i.v.でβ-グルカンを投与すると、血中白血球、血小板および赤血球数の回復の有意な増加を示した(Patchen, M. L.およびT. J. MacVittie. J. Biol. Response Mod. 5:45-60 (1986)ならびにPatchen, M. L.ら, Methods Find. Exp. Clin. Pharmacol. 8:151-155 (1986))。他の報告では、β-グルカンが、フルオロラウシルなどの化学療法剤により生じる骨髄抑制を逆転させ得ることが示された(Matsuo, T.ら, Jpn. J. Cancer Chemother. 14:1310-1314 (1987)またはシクロホスファミド(Wagnerova, J.ら, Immunopharmacol. Immunotoxicol. 15:227-242 (1993)およびPatchen, M. L.ら, Exp. Hematol. 26:1247-1254 (1998))。さらにまた、β-グルカンの抗感染活性とその造血刺激活性との組み合わせは、900〜1200 cGyの致死線量の放射線を受けたマウスの生存の増加をもたらした。インビトロ試験により、β-グルカンは、GM-CSFおよびインターロイキン-3(IL-3)のそれぞれと組み合わせて使用した場合、造血幹先祖細胞による顆粒球および巨大細胞のコロニー形成を増大し得ることが示された(Turnbull, J. L.ら, Acta Haematol. 102:66-71 (1999))。β-グルカンがその造血活性を発現することは、その当時、治療剤としてGM-CSFが現れたため、価値のあることとはみなされなかった。β-グルカンの放射線防御効果を示す初期の研究の多くを行なった軍放射線生物学研究所(The Armed Forces Radiobiological Researches Institute) (AFRRI)もまた、原子力発電所事故または核戦争の結果として放射線に曝露された個体を保護するためのβ-グルカンの使用を検討した。しかしながら、β-グルカンを静脈内投与することの表面的な必要性により、かかる緊急事態において大勢の人々を速やかに処置することを実現不可能なものとされた。
【0023】
続いて、本明細書に記載のように、β-グルカンの経口免疫調節活性が認められた。腸のパイアー斑内のM(microfold)細胞によるある種のβ-グルカンの経口取り込みは、下層の消化管関連リンパ系組織(GALT)におけるマクロファージへのβ-グルカン提示をもたらすと考えられる。経口送達されたキノコβ-グルカンは、腹腔内および歯槽マクロファージを活性化することが示されている。さらに、シイタケ由来β-グルカンであるレンチナンの経口投与は、ラットの血中Tヘルパー細胞の数を増加させることがわかった。また、経口β-グルカンは、前臨床試験および臨床試験の両方において、抗感染活性(Hotta, H. K.ら, Int. J. Immunopharmacol. 15:55-60 (1993)およびVetvicka, V., K. J. Amer. Nutrit. Assoc. 5:1-5 (2002))および抗腫瘍活性を誘導することが示されている(Nanba, H. K.ら, Chem. Pharm. Bull. (Tokyo) 35: 2453-2458 (1987); Suzuki,I. T.ら, Chem. Pharm. Bull. (Tokyo) 39: 1606-1608 (1991)およびToi, M., T.ら, Cancer 70:2475-2483 (1992))。入手し得るデータをまとめると、β-グルカンは、宿主の免疫防御機構、主に、マクロファージ、好中球、NK細胞および樹状細胞を刺激することにより機能し、それにより微生物または腫瘍細胞クリアランスが増強され、続いて死亡率が低下する(Onderdonk A.ら, Infect. Immun. 60:1642-1647 (1992)ならびにKaiser, A. B. およびD. S. Kernodle., Antimicrob. Agents Chemother. 42:2449-2451 (1998))。
【0024】
酵母由来β(1-3;1-6)グルカンは、一部、細菌、真菌、寄生虫、ウイルスおよび癌による、ある範囲の病原体チャレンジと闘うための先天性抗真菌免疫機構を刺激することにより作用する。β-グルカンの作用機構を規定するための研究により、β-グルカンが、マクロファージ、好中球、単球およびNK細胞をプライムすることにより機能し、これらの細胞に微生物病原体または腫瘍細胞を死滅させる活性の増大をもたらすことが示された。種々の供給源由来の構造の異なるベータグルカンは種々のレセプターに結合することが示されている。マンナン、ガラクタン、α(1,4)-結合グルコースポリマーおよびβ(1,4)-結合グルコースポリマーは、細胞上に位置するレセプターに対する親和力を持たない。白血球上の2種類のβ-グルカン結合レセプターは、β-グルカンへの結合により酵母細胞壁の食作用を促進するために機能すると特徴づけられた。まず、iC3b-レセプターCR3(Mac-1、CD11b/CD18またはαMβ2-インテグリンとしても知られている)は、好中球、単球およびマクロファージによる酵母細胞壁の食作用において機能したβ-グルカン結合レクチン部位を有することが示された(Ross, G. D.ら, Complement Inflamm. 4:61-74 (1987)およびXia, Y. V.ら, J. Immunol. 162:2281-2290 (1999))。Mac-1/CR3は、内皮を介した白血球の血管外遊出を媒介する接着分子および微生物に対する食細胞応答/脱顆粒応答を担う補体のiC3b断片のレセプターの両方として機能する。Mac-1/CR3は、原形質ドメインまたは細胞外領域のいずれかにおいて生じるコンホメーション変化による二方向シグナル伝達を含む、他のインテグリンと共有する多くの機能的特徴を有する。その機能の別の鍵は、これが、FcガンマRIIIB (CD16b)またはuPAR (CD87)などのグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーレセプターとの膜複合体を形成できる能力であり、これが、これらの外側膜結合レセプターに膜貫通シグナル伝達機構を提供し、この機構が細胞骨格依存性接着または食作用および脱顆粒を媒介するのを許容する。多くの機能は、微生物表面多糖またはGPI-結合シグナル伝達パートナーのいずれかの認識を担う膜近位レクチン部位に依存すると思われる。好中球炎症応答の促進におけるMac-1/CR3の重要性のため、その機能を拮抗するための治療ストラテジーは、自己免疫疾患および虚血/再灌流傷害の両方を治療するのに有望であることが示されている。逆に、そのレクチン部位に結合する可溶性ベータ-グルカン多糖は、循環している食細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞のMac-1/CR3をプライムし、iC3bオプソニン作用を受けた腫瘍細胞に応答した細胞障害性脱顆粒を可能にし、そうでない場合は細胞媒介性細胞障害のこの機構から外れる。CR3は、可溶性真菌β-グルカンに高親和性(5×10-8M)で結合し、これが、iC3bコート腫瘍細胞に応答した細胞障害性脱顆粒のために食細胞またはNK細胞のレセプターをプライムする。マウスにおいて可溶性β-グルカンにより促進された殺腫瘍応答は、血清C3(補体3)または白血球CR3のいずれかを欠くマウスには存在しないことが示され、β-グルカンの殺腫瘍機能には、腫瘍上のiC3b、白血球上のCR3の必要性が強く示されたVetvicka, V.ら, J. Clin. Invest. 98:50-61 (1996)およびYan, J., V.ら, J. Immunol. 163:3045-3052 (1999))。
【0025】
デクチン-1は、グルカン粒子食作用に関与するβ-グルカンの第2の膜レセプターを示す。デクチン-1は、高レベルでチオグリコレート誘発性腹腔内マクロファージ上に発現され、その活性は、これらの活性化細胞によるβ-グルカン結合により酵母の食作用において、CR3の活性よりも優位である。しかしながら、好中球および常在腹腔内マクロファージによる酵母食作用は、抗CR3によりブロックされ、CR3欠損(CD11b-/)好中球または常在マクロファージでは起こらない。さらにまた、デクチン-1は、β-グルカンでのプライミング後にiC3bオプソニン作用を受けた哺乳動物癌腫細胞に対する殺腫瘍活性を媒介するためにCR3を用いるNK細胞では発現されない。したがって、β-グルカン活性の媒介におけるデクチン-1の役割は、活性化された腹腔内マクロファージ、また、おそらく腸管CR3-/-マクロファージ(この研究においてWGP-DTAFを含むことが観察された)に限定されていると思われる。
【0026】
β-グルカンの静脈内投与の表面的な必要性により、緊急事態状況において大勢の人々を処置するのに使用することは実現不可能となっている。驚いたことに、本明細書に記載するように、経口投与されたWGPベータグルカンは、i.v.投与されたβ-グルカンと同様にして、照射後の造血を加速する機能を果たし、これらのタイプの核緊急事態のための放射線防御剤としてのβ-グルカンの機構および潜在的有用性の調査における関心が新たに生じている。
【0027】
広範囲のキノコおよび酵母由来β-グルカンの経口抗感染活性および放射化学的防護活性は、広く報告されている。上記のように、これらの高分子量β-グルカンの経口取込みは、腸パイアー班のM細胞を介すると提案されている。本明細書で示した結果は、完全グルカン粒子の経口取込みが、下層のGALTにおいてβ-グルカンのマクロファージへの提示をもたらすことを示すこれらの観察を拡張する。次いで、β-グルカン含有細胞は、グルカンを、網内系(リンパ節、脾臓およびBM)の器官に輸送する。WGPの経口取込みおよび全身分布は、酵母粒子食作用のCR3媒介性機構に非依存性のようであり、野生型およびCR3-/-動物の両方において同じWGP-DTAFの取込みおよび分布が存在した。デクチン-1レセプターまたは他のレセプターは、GALT内へのWGPのこの経口取込みを担い得る。
【0028】
WGP-DTAFの毎日の供給が、(実施例の実施例5に示すような)骨髄中にWGPベータグルカン含有マクロファージの出現もたらすという驚くべき発見は、経口WGPベータグルカン処置の造血特性を説明するのに重要である。経口WGPベータグルカンの造血活性の2つの説明:1)沈着したiC3bと結合しCR3を介して幹細胞を刺激する刺激性可溶性β-グルカンのWGPベータグルカンの分解および分泌、ならびに2)GM-CSFなどの造血刺激性サイトカインを産生する、マクロファージのWGPベータグルカンの活性化を検討した。
【0029】
酵母細胞壁または大きな可溶性β-グルカン分子を取込んだマクロファージは、これらの物質を分解し、β-グルカンの可溶性小断片を放出することが示されている。WGP-DTAFを7〜12日間与えた動物由来のBMマクロファージの蛍光分光分析による検査では、WGP分解の証拠が明白に示された(実施例5)。マクロファージ培養物の上清みおよび細胞溶解物について、現在、ピコグラムの濃度の可溶性β(1-3)グルカンに応答して凝集するカブトガニG因子を取込むアッセイを用い、生物学的に活性なβ-グルカン断片について試験中である。また、傷害を受けているがなお生存可能なBM細胞上へのiC3bの沈着を伴って補体の活性化を刺激したガンマ放射線または細胞障害性薬剤(シクロホスファミド)により傷害されたBM細胞も示した(図2)。かかる細胞結合iC3bは可溶性β-グルカンとの組み合わで、成熟骨髄様細胞のCR3を活性化することが示されており、BMでは、未成熟骨髄様幹細胞のCR3を活性化し得、造血の加速を引き起こす。造血幹先祖細胞は、インビトロで可溶性β-グルカンを発現し、応答することが示されている。また、マクロファージから放出される可溶性β-グルカンの推測される役割の裏付けは、i.v.投与されたβ-グルカンは、本明細書に示した経口投与WGPベータグルカンと同様に造血を促進し得ることを示した以前の研究報告である(Petruczenko, A., Acta. Physiol. Pol. 35:231-236 (1984)ならびにPatchen, M. L.およびT. J. MacVittie., J. Biol. Response Mod. 5:45-60 (1986))。
【0030】
経口投与されたβ-グルカンの造血効果の増強の媒介におけるCR3の必要性は、経口WGPベータグルカン処置により、照射後のCR3-/-動物においてWBC数の回復が刺激されなかったことにより明白に証明される(図1)。造血の促進におけるCR3の直接的な役割は、経口WGP-DTAFが、CR3-/-マウスにおいて効率的に取込まれ、BMに輸送されるが、これらのマウスは、野生型のマウスの場合と同様には造血回復の加速と伴って応答しないという観察により裏づけられる。先に概要を示したように、CR3の役割は、WGPベータグルカンにより刺激されて野生型のみにおいて造血性サイトカインを分泌し、CR3-/-マウスでは分泌しないマクロファージを介して、またはBM間質細胞に沈着したiC3bとWGPベータグルカンを取込んだマクロファージにより放出された可溶性β-グルカンとの両方による同時刺激によるCR3+造血細胞の直接刺激のいずれかにより媒介され得る。
【0031】
実施例では、経口投与された完全グルカン粒子を、ガンマ放射線への曝露により生じるBM傷害から個体を保護するための治療剤として使用することの実現可能性を示す。経口投与された完全グルカン粒子は、正常な造血プロセスを加速し、疾患と闘う白血球を、自然発生的に起こりうる場合より数日早く身体で利用可能にすることにより機能する。経口投与された完全グルカン粒子は、これを骨髄および脾臓に輸送する腸マクロファージに取込まれることにより生物学的利用可能となる。これらの所見に基づき、2つのCR3依存性機構を、マクロファージに取込まれた完全グルカン粒子が造血を促進することに関して記載する。本明細書に記載する本発明は、有害な放射線曝露から個体を保護および処置するための経口治療剤を使用する方法に関する。
【0032】
WGPグルカンの調製
簡単には、グルカン粒子の作製方法は、酵母または真菌の細胞壁由来のアルカリ不溶性完全グルカン粒子の抽出および精製を伴う。このプロセスにより、インビボで見られるグルカンの形態学的および構造的特性を維持した生成物(これを完全グルカンと呼ぶ)または完全グルカン粒子が得られる。
【0033】
完全グルカン調製物の構造-機能特性は、該グルカンを得た供給源および最終生成物の純度に直接依存する。完全グルカンの供給源は、酵母もしくは他の真菌、または本明細書に記載の性質を有するグルカンを含有する任意の他の供給源であり得る。ある特定の態様では、酵母細胞がグルカンの好ましい供給源である。本発明の方法で使用される酵母株は、例えば、S. cerevisiae, S. delbrueckii, S. rosei, S. microellipsodes, S. carlsbergensis, S. bisporus, S. fermentati, S. rouxii, Schizosaccharomyces pombe, Kluyveromyces polysporus, Candida albicans, C. cloacae, C. tropicalis, C. utilis, Hansenula wingei, H. arni, H. henricii, H. americana, H. canadiensis, H. capsulata H. polymorpha, Pichia kluyveri, P. pastoris, P. polymorpha, P. rhodanensis, P ohmeri, Torulopsis bovinおよびT. glabrataを含む任意の酵母株であり得る。
【0034】
一般的には、他の親株を出発物質として用いて他の変異酵母株を調製および単離するのに上記の手順を使用することができる。さらにまた、変異を誘発するために、変異原、例えば、化学的変異原、放射線照射、または他のDNAおよび組換え操作を用いることができる。他の選択技術またはスクリーニング技術を同様に使用し得る。
【0035】
酵母細胞は、当該技術分野で公知の方法により作製し得る。典型的な成長培地は、例えば、グルコース、ペプトンおよび酵母抽出物を含有する。酵母細胞は、液体培地からのバイオマスの分離に典型的に適用される方法により、成長培地から回収および分離される。かかる方法は、典型的には、ろ過または遠心分離などの固液分離法を用いる。本発明の方法では、細胞は、好ましくは対数成長期の中期から後期に回収し、酵母細胞中のグリコーゲンおよびキチンの量を最小限にする。グリコーゲン、キチンおよびタンパク質は、完全グルカン粒子の生物学的特性および流体力学的特性に影響する望ましくない夾雑物である。
【0036】
完全グルカン粒子の調製は、適当な濃度のアルカリ水溶液で酵母を処理し、酵母の一部を可溶化し、主にβ(1-6)結合およびβ(1-3)結合を含有する水酸化アルカリ不溶性完全グルカン粒子を形成することを伴う。一般的に用いられるアルカリは、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物または同等物である。出発物質は、成長培地から分離された酵母を含有し得る。濃縮程度が低い酵母組成物から出発すると、水酸化物水溶液反応体の消費および該反応体の濃度を好ましい範囲に制御することは、より困難である。酵母は、本発明の完全グルカン粒子の好ましい性質がインタクトな細胞壁に依存するため、インタクトで破壊されていない細胞壁を有するべきである。
【0037】
処理工程は、水酸化物水溶液中での酵母の抽出により行なわれる。細胞の細胞内成分およびマンノ蛋白部分が水酸化物水溶液中で可溶化され、実質的にタンパク質のない、実質的に改変されていない三次元のβ(1-6)結合およびβ(1-3)結合グルカンのマトリックスを有する不溶性細胞壁物質が残る。この工程を行なう好ましい条件により、水酸化物水溶液中に溶解した状態の細胞壁のマンナン成分がもたらされる。細胞内構成成分は、加水分解され、可溶性相内に放出される。消化の条件は、少なくとも細胞の大部分において、細胞壁の三次元マトリックス構造が破壊されないようなものである。特定の状況では、実質的にすべての細胞壁グルカンが、改変されずにインタクトなままである。
【0038】
ある特定の態様では、水酸化物水溶液消化工程は、約0.1〜約10.0の初期規定度を有する水酸化物溶液中で行なわれる。典型的な水酸化物溶液としては、周期表のアルカリ金属族およびアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。好ましい水酸化物水溶液は、入手し易いことから、ナトリウムおよびカリウムのものである。消化は、約20℃〜約121℃の温度で行なわれ得、より低い温度の場合はより長い消化時間を要する。水酸化ナトリウムを水酸化物水溶液として使用する場合、温度は、約80℃〜約100℃であり得、溶液は、約0.75〜約1.5の初期規定度を有する。水酸化物は、必要量より過剰に添加され、したがってさらに添加する必要はない。
【0039】
一般的に、水酸化物溶液1リットルあたり約10〜約500グラムの乾燥酵母を使用する。ある特定の態様では、水酸化物水溶液消化工程は、タンパク質などの残留夾雑物の量が一回しか接触工程を用いない場合よりも少なくなるように、一連の複数の接触工程により行なう。ある特定の態様では、実質的にすべてのタンパク質物質を細胞から除去することが望ましい。かかる除去は、不溶性細胞壁グルカン粒子を有するタンパク質が1パーセント未満にとどまる程度まで行なう。さらなる抽出工程は、好ましくは、約2.0〜約6.0のpHを有する弱酸性溶液中で行なわれる。典型的な弱酸性溶液は、塩酸、塩酸で必要とされるpHに調整された塩化ナトリウムおよび酢酸緩衝液を含む。他の典型的な弱酸性溶液は、硫酸中および酢酸を含む適当な緩衝液である。この抽出工程は、好ましくは、約20℃〜約100℃の温度で行なわれる。消化されたグルカン粒子は、必要または所望される場合は、さらなる洗浄および抽出に供し、タンパク質および夾雑物のレベルを低下させる。生成物を処理した後、pHを約6.0〜約7.8の範囲に調整し得る。
【0040】
この工程を、細胞壁を破壊する工程なしで行なうことにより、細胞壁を破壊する工程を含む先行技術手順であり得たものよりも過酷なpHおよび温度条件で、抽出を行なうことができる。すなわち、本発明の方法は、時間を浪費する複数回の抽出工程の排除を可能にするこのような過酷な抽出条件を用いても、生成物の分解を回避する。
【0041】
上記の水酸化物水溶液処理工程後、最終完全グルカン生成物は酵母細胞の初期重量の約5〜約30パーセントからなり、好ましくは、この生成物は約7〜約15重量パーセントである。
【0042】
作製される水酸化物水溶液不溶性完全グルカン粒子は、本発明の概要に記載したようなものである。完全グルカン粒子は、所望により、さらに処理および/またはさらに精製され得る。例えば、グルカンを微粉末に乾燥してもよく(例えば、炉内での乾燥により)、または有機溶媒(例えば、アルコール、エーテル、アセトン、メチルエチルケトン、クロロホルム)で処理し、いずれの微量不純物もしくは有機溶媒可溶性物質を除去してもよく、または、水酸化物溶液で再処理し、さらにタンパク質または存在し得る他の不純物を除去してもよい。
【0043】
ある特定の態様では、本発明の方法で得られる完全グルカン粒子は、本質的にβ(1-6)およびβ(1-3)結合グルカンからなる純粋なグルカンから構成される。完全グルカン粒子は、タンパク質およびグリコーゲン由来の夾雑物をほとんど含有しない。ある特定の態様では、完全グルカン粒子は、形状が球形で、直径が約2〜約10ミクロンであり、単糖解析または他の適切な解析で測定すると、約85重量%より多くのヘキソース糖(または他の態様では約60%より多くのヘキソース糖)、およそ1重量%のタンパク質を含み、検出可能な量のマンナンは含まない。先行技術の方法により得られるグルカンは、本発明のグルカンよりも有意に多くの量のキチンおよびグリコーゲンを含む。
【0044】
先に記載した第2工程は、グルカンの性質を変更する化学的処理により、上記のようにして作製された完全グルカン粒子の修飾を伴う。本明細書に記載した具体的な菌株に加え、任意の酵母株に由来する完全グルカン粒子が使用され得るものとする。上記のように、非常に広域の酵母株または変異酵母株が使用され得る。上記の処理条件はまた、真菌一般からのグルカン抽出物に適用され得る。これらのグルカンの性質もまた、これらが由来する供給源に依存する。
【0045】
第1の化学的処理により、完全グルカン粒子を酸で処理し、β(1-6)結合の量を減少させ、したがって該グルカンの流体力学的特性を変化させることができ、これは、これらの修飾されたグルカンの水溶液の粘度が上昇することにより証明される。
【0046】
β(1-6)結合を改変するのに適当な時間、グルカン粒子を酸で処理することにより、改変された完全グルカン粒子を調製する方法もまた使用され得る。酢酸は、その弱酸性度、取り扱いの容易さ、低毒性、低コストおよび入手し易さから好ましいが、他の酸も使用され得る。一般的にこれらの酸は、β(1-3)結合の加水分解を制限するのに充分弱くなければならない。この処理は、実質的にβ(1-6)結合グルカンにのみ影響するような条件下で行なわれる。ある特定の態様では、酸処理は、本質的に酢酸からなる液体または任意のその希釈液を用いて行なわれる(典型的な希釈剤は、有機溶媒または無機酸溶液であり得る)。この処理は、約20℃〜約100℃の温度で行なわれる。ある特定の態様では、処理前の完全グルカン粒子の総重量に対して約3〜約20重量パーセントの酸可溶性物質が除去される程度まで行なわれる。他の態様では、除去の程度は、約3〜約4重量パーセントである。形成されたある特定の組成物は、処理後、改変された流体力学的特性および粘度の増加を示す。
【0047】
第二の化学処理によると、完全グルカン粒子は酵素または酸で処理されて、β(1-3)結合の量を変化する。幾つかの酵母株由来の完全グルカン粒子について、酵素処理は粘度の減少を生じ、他については、粘度の増加を生じるが、一般的に、得られたグルカンの化学特性および流体力学特性を変更する。β(1-3)結合を変更して、水性懸濁液中の完全グルカン粒子の流体力学特性を変更するために、処理はβ(1-3)グルカナーゼ酵素(例えば、ラミナリナーゼ)を用いる。
【0048】
酵素処理は、1リットルあたり約0.1〜約10.0グラムのグルカン濃度を有する水溶液中で実施され得る。任意の加水分解グルカナーゼ酵素(例えば、ラミナリナーゼ)が使用され得、これは有効でありかつ容易に入手可能である。インキュベーションの時間は、完全グルカン粒子およびグルカナーゼ酵素の濃度に依存して変わり得る。β(1-3)結合は、酢酸などの緩和な酸(mild acid)による加水分解に耐性である。塩酸(HCl)、硫酸(H2SO4)または蟻酸などの強酸または濃酸による処理は、β(1-3)結合を加水分解し、それによりβ(1-3)結合の量を減少する。酸処理は、1リットルあたり約0.1〜約10.0グラムのグルカン濃度を有する水溶液中で実施され得る。酸処理の時間は、完全グルカン粒子および酸の濃度に依存して変わり得る。酸加水分解は、約20℃〜約100℃の温度で実施され得る。形成された好ましい組成物は、変化した流体力学特性を示す。
【0049】
インキュベーション時間を制御することにより、得られる生成物の化学特性および流体力学特性を制御することが可能である。例えば、生成物粘度は、粒子用途、例えば、種々の食品のために正確に制御され得る。
【0050】
変化した結合を有する最終処理生成物の流体力学パラメーター(K1)は、最終式:
K1=-0.0021(時間)+0.26
(式中、時間は分であり;かつ時間は1時間未満である)
による処理時間に依存する。
【0051】
パラメーターK1は、相対粘度に直接関連(正比例)する。水性懸濁液の場合、相対粘度は、実際の粘度がセンチポイズで測定される場合、実際の粘度に等しい。
【0052】
予め決められた所望の粘度を有するグルカンの水性スラリーを調製する方法が、提供される。スラリーは、以下の近似式:
1/濃度=K1×(1/log(相対粘度))+K2
(式中、
K1=(形状係数)×(流体力学体積);かつ
K2=(流体力学体積)/(最大比質量偏差)
による予め決められた所望の粘度の関数である濃度でグルカンを含有する。
【0053】
形状係数は、水性環境中のグルカンマトリクスの形状を描く経験的に決定される値である。形状係数は、粒子の長さ:幅比の関数であり、顕微鏡観察により決定され得る。流体力学体積は、懸濁液中の場合、粒子が占める体積の基準である。これは、グルカンマトリクスの高い水保持能力を示す点で、グルカン懸濁液にとって重要なパラメーターである。最大比質量偏差は、懸濁液の単位体積にパッケージされ得るグルカンの最高の達成可能な容積分率として記載され得る。
【0054】
微粒子β-グルカン粒子の調製
β(1,3)グルカン出発物質は、当業者に公知の従来法により酵母細胞壁から単離され得る。酵母からのグルカンの生成のための一般法は、アルカリを用いる抽出、ついで酸を用いる抽出を含む(Hassidら, Journal of the American Chemical Society, 63:295-298, 1941)。精製水不溶性β(1,3)グルカン抽出物を単離する改良法は、米国特許第5,223,491号(その全体が参考により本明細書に援用される)に開示される。微粒子状β-グルカン粒子を調製するための方法は、米国特許第5,702,719号(その開示はその全体が参考により本明細書に援用される)に開示される。改良微粒子状グルカン生成物は、平均粒子サイズが好ましくは約1.0ミクロン以下であり、より好ましくは約0.20ミクロン以下である場合に、得られる。
【0055】
所望のより小さな粒子サイズを得るために、β(1,3)グルカン生成物を含有する混合物は、例えば、ブレンダー、マイクロフルイダイザー、またはボールミルを使用してすりつぶされる。1つの粉砕または粒子サイズ減少方法は、丸羽根を有するブレンダーを利用し、ここで、グルカン混合物は、十分な時間、好ましくは数分ブレンドされ、混合物を過熱することなく完全に粒子を所望のサイズにすりつぶす。別の粉砕方法は、10mmステンレス鋼粉砕ボールを有するボールミル中でグルカン混合物をすりつぶす工程を含む。この後者の粉砕方法は、約0.20ミクロン以下の粒子サイズが所望される場合、特に好ましい。
【0056】
粉砕前、グルカン混合物は、好ましくは、それぞれの連続篩が形成物よりも小さなメッシュサイズを有し、最終メッシュサイズが約80である一連の篩に通される。混合物を篩う目的は、かなり大きくかつ粗大なグルカン粒子をより小さな粒子から分離することである(80メッシュ篩の孔サイズは約0.007インチすなわち0.178mmである)。次いで、分離されたより大きな粒子は上記のようにすりつぶされ、80の最終メッシュサイズに再篩いされる。篩いおよび粉砕の処理は、80の最終メッシュサイズが得られるまで繰り返される。篩われた粒子はあわせられ、所望の粒子サイズ、好ましくは約1.0ミクロン以下、より好ましくは約0.20ミクロン以下が得られるまで、好ましくは少なくとも1時間さらにすりつぶされる。微細な粉砕グルカンの断続的なサンプルが、粉砕処理中に採取され、顕微鏡のマイクロメーターを使用して測定される。
【0057】
製剤化
本発明の実施における使用に適切な経口製剤としては、カプセル剤、ゲル剤、カシェ剤、錠剤、発泡または非発泡散剤または錠剤、散剤もしくは顆粒剤;水性または非水性液体中の溶液または懸濁液;あるいは水中油型液体エマルジョンまたは油中水型エマルジョンが挙げられる。本発明の化合物はまた、ボーラス、舐剤、またはパスタとして提供され得る。
【0058】
一般的に、製剤は、活性成分を液体担体または微細に分割された固体担体または両方と均等に混合することにより調製され、次いで、必要な場合、生成物を形作る。薬学的担体は、投与の選択経路および標準的な薬学的慣習に基づいて選択される。各担体は、製剤の他の成分と適合し、かつ被験体にとって有害でないという意味で、「許容され」なければならない。この担体は、固体または液体であり得、タイプは使用される投与タイプに基づいて一般的に選択される。適切な固体担体の例としては、ラクトース、スクロース、ゼラチン、寒天および原料粉末が挙げられる。適切な液体担体の例としては、水、薬学的に許容され得る脂質および油、アルコールまたは他の有機溶媒(エステルが挙げられる)、エマルジョン、シロップまたはエリキシル、懸濁液、溶液および/または懸濁液、ならびに非発泡顆粒から再構成された溶液および/または懸濁液ならびに発泡顆粒から再構成された発泡調製物が挙げられる。このような液体担体は、例えば、適切な溶媒、防腐剤、乳化剤、懸濁化剤、希釈剤、甘味料、濃縮剤、および溶融剤を含み得る。好ましい担体は、食用油、例えば、コーン油またはカノーラ油である。ポリエチレングリコール、例えば、PEGもまた好ましい担体である。
【0059】
経口投与用の製剤は、ラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール、シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体などの非毒性、薬学的に許容され得る、不活性担体を含み得る。
【0060】
カプセル剤または錠剤は容易に製剤化され得、嚥下または咀嚼し易いように作製され得る。錠剤は、適切な担体、バインダー、滑沢剤、希釈剤、崩壊剤、着色剤、香味剤、流動誘導(flow-inducing)剤、または溶融剤を含み得る。錠剤は、任意に1つ以上のさらなる成分と共に圧縮または成形により作製され得る。圧縮錠剤は、任意にバインダー(例えば、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース)、表面活性剤または分散剤と混合した自由に流動する形態(例えば、粉末、顆粒)の活性成分を圧縮することにより調製され得る。適切なバインダーとしては、デンプン、ゼラチン、天然糖(グルコースまたはβラクトースなど)、コーン甘味料、天然および合成ゴム(アカシア、トラガカント、またはアルギン酸ナトリウムなど)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウなどが挙げられる。これらの投薬形態に使用される滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、例えば、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンゴムなどが挙げられる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化活性成分の混合物を適切な機械で成形することにより作製され得る。
【0061】
錠剤は、任意にコーティングまたは切れ目を入れられ得、活性成分の緩徐放出または徐放を提供するように製剤化され得る。錠剤はまた、胃以外の消化管の部分での放出を提供するように腸溶性コーティングと共に任意に提供され得る。
【0062】
本発明の経口投薬形態を製剤化するために使用され得る具体的な薬学的に許容され得る担体および賦形剤は、Sep. 2、1975年発行のRobertの米国特許第3,903,297号(その全体が参考により本明細書に援用される)に記載される。本発明に有用な投薬形態を作製するための技術および組成は、以下の参考文献に記載される:7 Modern Pharmaceutics, 第9および10章(Banker & Rhodes, 編集者, 1979);Liebermanら, Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets (1981);ならびにAnsel, Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms 第二版(1976)。
【0063】
非経口投与に適切な製剤としては、意図された受容者の血液と等張の水性および非水性製剤;ならびに化合物を血液成分または1以上の器官に標的化するように設計された懸濁化系を含み得る水性および非水性滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量または多用量密閉容器(例えば、アンプルまたはバイアル)中に提供され得る。即注射溶液および懸濁液は、上記種類の滅菌散剤、顆粒剤および錠剤から調製され得る。非経口および静脈内形態はまた、選択された注射または送達系のタイプに適合させるようにミネラルおよび他の材料を含み得る。
【実施例】
【0064】
実施例1〜4についての材料および方法
WGPグルカンの生物学的利用能
経口酵母β-グルカン粒子(GP)のインビボ運命をGP-フルオレセイン(GP-F)を使用して調査した。胃腸マクロファージはGP-Fをリンパ性組織に往復させ、GP-Fは経口投与後3日に脾臓マクロファージ内、5日後に骨髄(BM)マクロファージ内に現れた。野生型およびCD11b-/-マウスの両者由来のBMマクロファージがGP-Fを含有していたので、CR3はGP-Fのマクロファージ摂取に必要とされなかった。BMマクロファージはGP-Fを消化し、CR3を介してBM好中球により結合/被覆される可溶性β-グルカン-Fを分泌した。経口GPを与えられたマウスから引き出された好中球のみが、iC3b-オプソニン作用腫瘍細胞を殺傷することが可能であった。
【0065】
WGPグルカンを使用する経口予防
0.1〜100mg/ml懸濁液0.1mlを使用するWGPグルカンでの経口予防を経口胃管栄養法によりマウスごとに施した。WGPグルカン懸濁液を滅菌水中で少なくとも1時間勢いよく攪拌して調製した。懸濁液を等分し、1年間凍結保存、または1週間4℃にて保存し得る。使用前、懸濁液を勢いよく混合して均等な懸濁液を確保した。WGPグルカン懸濁液はシリンジ中で沈下するので、シリンジの内容物を逆さまにして混合して均等な懸濁液を確保することに注意のこと。次いで、対照を0.1ml胃管栄養法の水で処置する。
【0066】
あるいは、WGPグルカンを、動物の飲み水に20μg/mlの濃度で調薬し得る。一様な懸濁液を維持するために、WGPグルカン懸濁液を0.3%カルボキシメチルセルロース中で調製する。対照動物を0.3%カルボキシメチルセルロース対照水で処置する。
【0067】
推奨する予防経口スケジュールは、-7〜0日まで毎日の胃管栄養法である。60Co放射線への曝露による照射を、最終予防用量後1〜3時間に施した。
【0068】
WGPグルカンを使用する非経口予防
0.1〜100mg/ml懸濁液0.1mlを使用するWGPグルカンでの非経口予防を、皮下、筋肉内、皮内または腹腔内注射によりマウスごとに施した。WGPグルカン懸濁液を滅菌生理食塩水中で少なくとも1時間勢いよく攪拌して普通に調製する。懸濁液を等分し、1年間凍結保存、または1週間4℃にて保存し得る。使用前、懸濁液を勢いよく混合して均等な懸濁液を確保する。WGPグルカン懸濁液はシリンジ中で沈下するので、シリンジの内容物を逆さまにして混合して均等な懸濁液を確保することに注意のこと。次いで、対照を0.1ml滅菌生理食塩水で注射する。1〜3時間照射を、最終予防用量後に施す。
【0069】
WGPグルカンの経口治療使用
0.1〜100mg/ml懸濁液0.1mlを使用するWGPグルカンでの経口治療処置を経口胃管栄養法によりマウスごとに施した。WGPグルカン懸濁液を滅菌水中で少なくとも1時間勢いよく攪拌して調製する。懸濁液を等分し、1年間凍結保存、または1週間4℃にて保存し得る。使用前、懸濁液を勢いよく混合して均等な懸濁液を確保した。WGPグルカン懸濁液はシリンジ中で沈下するので、シリンジの内容物を逆さまにして混合して均等な懸濁液を確保することに注意のこと。
【0070】
あるいは、WGPグルカンを、動物の飲み水に200μg/mlの濃度で調薬し得る。一様な懸濁液を維持するために、WGPグルカン懸濁液を0.3%カルボキシメチルセルロース中で調製する。対照動物を0.3%カルボキシメチルセルロース対照水で処置する。
【0071】
経口治療投薬スケジュールは、0〜10日まで毎日の胃管栄養法である、ただし、最初の用量は感染後1時間である。あるいは、グルカン用量を照射後開始1時間は飲み水中に提供する。
【0072】
WGPグルカンの非経口治療使用
0.1〜100mg/ml懸濁液0.1mlを使用するWGPグルカンでの非経口治療処置を、皮下、筋肉内、皮内、静脈内または腹腔内注射によりマウスごとに施す。WGPグルカン懸濁液を滅菌生理食塩水中で少なくとも1時間勢いよく攪拌して普通に調製する。懸濁液を等分し、1年間凍結保存、または1週間4℃にて保存し得る。使用前、懸濁液を勢いよく混合して均等な懸濁液を確保する。WGPグルカン懸濁液はシリンジ中で沈下するので、シリンジの内容物を逆さまにして混合して均等な懸濁液を確保することに注意のこと。対照を0.1ml生理食塩水注射で処置する。非経口治療投薬スケジュールは、0、1、3、5、7、および9日の注射である。最初の用量は、照射後1時間で提供される。
【0073】
組み合わせ予防治療経口処置
0.1〜100mg/ml懸濁液0.1mlを使用するWGPグルカンでの経口予防治療処置を経口胃管栄養法によりマウスごとに施す。WGPグルカン懸濁液を滅菌水中で少なくとも1時間勢いよく攪拌して調製する。懸濁液を等分し、1年間凍結保存、または1週間4℃にて保存し得る。使用前、懸濁液を勢いよく混合して均等な懸濁液を確保する。WGPグルカン懸濁液はシリンジ中で沈下するので、シリンジの内容物を逆さまにして混合して均等な懸濁液を確保することに注意のこと。対照を0.1ml胃管栄養法の水で処置する。
【0074】
あるいは、WGPグルカンを、動物の飲み水に20μg/mlの濃度で調薬する。一様な懸濁液を維持するために、WGPグルカン懸濁液を0.3%カルボキシメチルセルロース中で調製する。対照動物を0.3%カルボキシメチルセルロース対照水で処置する。
【0075】
経口予防治療投薬スケジュールは、-7〜+10日まで毎日の胃管栄養法であり、最初の用量を照射後1時間で提供する。
【0076】
実施例1
本実施例は、放射線防護活性を観察するための、S. cerevisiae由来の上記手順を使用して得られたWGPのマウスへの静脈内投与に関係する。良好な懸濁液を作製するため室温で30分間超音波水浴に配置することによりWGPを滅菌食塩水に懸濁した。あるいは、尾静脈注射に使用される針を材料が通過できるまで直径を減少したシリンジ針にWGPを通し得る。6.5 Gy 60Co放射線での照射1日前に、この様式で調製した4.0mg/ml溶液を、尾静脈に0.1ml懸濁液を注射することにより20匹の野生型C57B1/6マウスの群に投与した。処置マウスの生存率は、照射後10〜15日に亘り劇的に変化した。照射後30日に、グルカン処置マウスの51%が生存しており、一方、対照実験においては、照射後21日を越えて生存したマウスはいなかった。
【0077】
実施例2
本実施例は、放射線防護活性を観察するための、S. cerevisiae由来の上記手順を使用して得られたWGPのマウスへの経口投与に関係する。材料の塊の排除を確実にするため、胃管栄養法針に通過させることによりWGPを滅菌食塩水に懸濁した。6.5 Gy 60Co放射線での照射1日前に、この様式で調製した0.8mg/ml懸濁液を、胃管栄養法により20匹の野生型C57B1/6マウスの群に投与した。投薬を照射後10日まで毎日続けた。処置マウスの生存率は、静脈内投与で観察されたのと同じであった。照射後30日に、グルカン処置マウスの51%が生存しており、一方、対照実験においては、照射後21日を越えて生存したマウスはいなかった。
【0078】
実施例3
本実施例は、放射線後骨髄抑制回復の刺激を観察するための、S. cerevisiae由来の上記手順を使用して得られたWGPのマウスへの静脈内投与に関係する。良好な懸濁液を作製するため室温で30分間超音波水浴に配置することによりWGPを滅菌食塩水に懸濁した。あるいは、尾静脈注射に使用される針を材料が通過できるまで直径を減少したシリンジ針にWGPを通し得る。非致死的650-rad用量の全身γ放射線での照射1日前に、この様式で調製した4.0mg/ml溶液を、尾静脈に0.1ml懸濁液を注射することにより5匹の野生型C57B1/6マウスの群に投与した。白血球(WBC)数によって示される骨髄抑制回復は、下の図に示すように、照射後7日で分かれており、WGPで処置したマウスは食塩水で処置したマウスよりも有意に高い白血球数を示した。
【0079】
実施例4
本実施例は、骨髄抑制回復を明らかにするための、S. cerevisiae由来の上記手順を使用して得られたWGPの炭化白金(carboplatinum)処置後マウスへの静脈内投与に関係する。良好な懸濁液を作製するため室温で30分間超音波水浴に配置することによりWGPを滅菌食塩水に懸濁した。あるいは、尾静脈注射に使用される針を材料が通過できるまで直径を減少したシリンジ針にWGPを通し得る。115mg/Kg炭化白金での処置後1日に、この様式で調製した4.0mg/ml溶液を、尾静脈に0.1ml懸濁液を注射することにより5匹の野生型C57B1/6マウスの群に投与した。白血球(WBC)数によって示される骨髄抑制は、炭化白金処置後8日と10日との間で生じた。処置マウスのWBC数は炭化白金投与後13日で回復し始め、13日までに5×106WBC/mlおよび17日までに12×106WBC/mlを示した。未処置マウスは、処置マウスよりも一日遅れて回復し始め、処置マウスよりも約5×106WBC/mlだけ一貫して低いWBCレベルを示した。
【0080】
実施例5:経口βグルカンのインビボ摂取
材料および方法
動物
C57BL/6背景のCR3欠損(CD11b~/~)マウスおよびその野生型同腹子のコロニーを、創始マウス(Coxon, A.ら, Immunity, 5:653-666(1996))を作製したTanya Mayadas博士(Harvard Medical School, Boston, MA)により提供された繁殖動物からUniversity of Louisvilleで確立した。C57BL/6背景の血清補体タンパク質C3を欠損しているマウス(C3~/~)およびその野生型同腹子の別のコロニーを、Michael Carroll博士(Center for Blood Research, Harvard Medical School, Boston, MA)により作製された創始マウス(Wessels, M. R.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:11490-11494(1995))から独創的に出てきたJackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から得た異型接合繁殖動物から確立した。これらの実験に使用されるマウスは全て10週齢であり、同数の雄および雌を試験した。
【0081】
免疫モジュレーター
WGPβグルカン(WGP、WGPTMβグルカン(ImucellTM)、Biopolymer Engineering Inc., Eagan, MN, USA)は、米国特許第5,504,079号に記載されるような形態学的な非破壊的独占処理による細胞性タンパク質、核酸、脂質、およびほとんどの非グルコース系オリゴ糖類(例えば、キチンおよびマンナン)の抽出により精製されたBakerの酵母の細胞壁由来の成分である。それは、高度に精製された3〜5ミクロンの球状βグルカン粒子である。DTAF(Molecular Probes, Inc., Oregon)を使用してWGPβグルカンをフルオレセインで標識し、蛍光顕微鏡またはフローサイトメトリー用の緑色WGP-DTAF粒子を作製した。
【0082】
WGP吸着および分布
WGP-DTAFを使用して、フローサイトメトリーにより食作用を測定し、細胞を蛍光標示式細胞分取(FACS)により摂取されたWGP-DTAFで単離した。経口投与WGP-DTAFの摂取をモニターするために、マウスに400μgのWGP-DTAFを胃内投与により毎日給餌し、次いで、WGP-DTAFを含む脾臓、リンパ節、およびBMマクロファージの存在について3、7、および12日にFACSおよび蛍光顕微鏡により試験した。緑色WGP-DTAFを含むマクロファージを、赤色蛍光色素、シトクロム(cychrome)5(すなわち、Cy5、BD Biosciences Pharmingen, San Diego, CA)に結合されたマクロファージ特異的抗体F4/80を用いる赤色表面染色により同定した。
【0083】
放射線防護
経口WGPβグルカン処理の放射線防護効果を試験するため、5匹のマウス(野生型またはCR3~/~マウスのいずれか)の群に、致死以下の放射線曝露(500cGy)の1日前に、80μgのWGP含有食塩水または食塩水のみのいずれかの胃内用量を与えた。マウスは、胃内用量のWGPβグルカンまたは生理食塩水対照をさらに毎日、全3週間の観察中受けた。野生型またはCR3~/~マウスの他の群は、400μgのWGPβグルカン懸濁液含有食塩水または食塩水対照の単回i.v.注射を放射1日前に受けた。対照野生型群は、照射を受けなかった。白血球(WBC)数を、各マウスについて3週の観察期間に亘り定期的に測定し、FACSを実施して顆粒球(Gr-1high)、単球(Gr-1low)、T細胞(CD3+)およびB細胞(CD19+)の割合を測定した。絶対値数データをPrism 3.0(Graph Pad Software, San Diego, CA)を使用して評価し、各時点でのマウスの個々の群より得た値の平均、標準偏差、および統計的有意差(StudentのT検定)を計算した。
【0084】
サイトカイン合成
白血球サイトカイン合成を、試験キット(BD Biosciences Phamingen)(特定の白血球型が表面染色により標識され、次いで、白血球が特定のサイトカインに対する蛍光色素標識抗体を使用する細胞質染色に対して浸透性にされる)を使用して、特異的サイトカイン(IL-4、IL-6、IL-12、腫瘍壊死因子(TNFα)、IFNγ、およびGM-CSF)の細胞質内染色により評価した。染色された白血球をフローサイトメトリーにより試験し、過剰な相同性非標識抗体を用いた蛍光色素標識抗体染色の阻害を示すことにより、細胞質染色の特異性を評価した。この試験を、胃内または腹腔内投薬によるWGPβグルカンの投与後種々の時間に、野生型またはCR3-/-マウス由来のマウス血液白血球または腹腔白血球に適用した。WGPβグルカンと共にインビトロでインキュベートした単離ヒト血液単球中のサイトカイン分泌を、Immunopharmacology, 42:61074(1999)に記載されるようなELISAアッセイを使用して評価した。
【0085】
骨髄間質上のC3沈着
放射線またはシクロホスファミドにより生じる骨髄(BM)細胞への損傷により補体が活性化されるかどうかを決定するため、これらの因子で処置されたマウスのBMを除去し、単離、洗浄したBM細胞を、ウサギ抗マウスC3c-FITCで染色した。生存細胞上へ結合したC3(iC3b断片)の存在を、ヨウ化プロピジウムで染色されなかった生存細胞をゲートする(gating)ことによるフローサイトメトリーにより評価した。
【0086】
結果
β-グルカンが殺腫瘍性および抗感染活性を促進する能力についての平行研究は、経口投与された酵母由来のWGPβグルカンが、静脈内(i.v.)で与えられたβ-グルカンと等しく有効であることを示した。i.v.投与されたβ-グルカンは、造血を促進し、致死的γ放射線損傷からマウスを防護することを示しているので、経口投与されたWGPβグルカンがi.v.で与えられたβ-グルカンと等しく有効であるかどうかを決定するように実験を設計した。
【0087】
経口投与されたWGPは生物学的利用可能である
内在腹腔マクロファージおよびJ774マウスマクロファージ細胞系統を用いるインビトロ試験は、WGP-DTAF上のフルオレセイン標識が生物学的活性またはマクロファージ食作用のCR3特異性を変化しないことを示した。マウスへのWGP-DTAF給餌の3〜12日後、WGP-DTAFを含む細胞を脾臓、腹腔リンパ節、およびBMで検出した。フルオレセイン陽性細胞のFACS分取により、蛍光顕微鏡による細胞の試験を可能にした。顕微鏡視覚化は、緑色蛍光が細胞内に摂取されたWGP-DTAF粒子に対応すること、緑色WGP-DTAFを含む全細胞はまた、マクロファージ特異的抗体F4/80-Cy5で赤色に染色されることを確認した。3日ではCR3-/-マウス由来のマクロファージにおいてWGP-DTAFは検出されなかったが、ほぼ同数のWGP-DTAF含有マクロファージを、7日および12日にCR3-/-対野生型マウスから試験した全リンパ器官で検出した。
【0088】
摂取された酵母細胞壁または巨大な可溶性β-グルカン分子を有するマクロファージは、これらの物質を分解し、β-グルカンの小さな可溶性断片を放出する。BMまたは脾臓から単離されたマクロファージにおけるWGP-DTAFの顕微鏡評価は、給餌後早くに無傷な球状WGP-DTAF粒子の存在を示し、一方、DTAF-WGPを給餌後7〜12日に単離されたBMマクロファージにおいて、粒子はより断片化され、拡散して現れた。これらの結果は、WGPβグルカンが経口的に生物学的利用可能であり、WGPβグルカンを含有する腸マクロファージはBM,脾臓、およびリンパ節に移動し、ここではWGPはβ-グルカンのより小さな断片(経口WGPの造血活性を担い得る)にインサイチュで分解されることを示す。
【0089】
経口WGPβグルカンは放射線損傷を防護する
照射マウスにおいて、WBC数は、5日で1,000/mm3未満の最下点に達し、i.v.または経口食塩水で処置された照射野生型マウスにおいてWBC数は、21日で正常に戻った(図1)。静脈内投与WGPを受けた野生型マウスにおいて、WBC数は、7日だけ食塩水対照の静脈内投与よりも高かった。比較すると、照射後7、11、および16日で、WGPβグルカンを経口で与えた野生型マウスは、経口食塩水を与えたマウスよりも有意に高いWBC数を示し、経口またはi.v.食塩水を受けたマウスよりも5日早く(すなわち、16日vs. 21日)、単一用量のi.v. WGPβグルカンを受けたマウスよりも3日早く正常に戻った。食塩水処置CR3-/-マウスは、食塩水処置野生型マウスよりも有意に緩徐な造血再構成を示したこと、経口(図1)またはi.v. WGPβグルカンにより誘導される回復の向上がなかったことが特に顕著である。フローサイトメトリー分析は、食塩水処置マウスと比較して、WGPβグルカン処置マウスで試験した各主要な白血球型と同等の回復を示した。
【0090】
放射線、シクロホスファミド、またはG-CSFにより生じる骨髄への損傷は補体を活性化し、生存骨髄間質細胞上にiC3bを沈着する
BM損傷後、造血幹前駆細胞(HSPC)は、骨髄損傷の部位にホーミングする、修復プロセスを開始する前に損傷細胞に付着する。HSPCの骨髄損傷部位への付着は、HSPCの膜上に発現され、間質細胞へのHSPC付着を可能にする接着分子として機能し得るCR3に関し得る。CR3を欠くHSPCは、BMに付着し造血を開始することができない。かかる付着を媒介し得るCR3に対する主要なリガンドは、C3のiC3b断片であり、これは、補体系の活性化を介して損傷組織へ付着するようにし得る。本明細書で記載するように、γ放射線またはシクロホスファミドに曝露したC3-/-マウスではなく正常マウス由来のBM細胞は、免疫蛍光染色およびフローサイトメトリーにより検出可能な、損傷をうけた(しかしまだ生存している細胞)上にiC3bの表面沈着を有していた(図2)。BM細胞上に沈着したこのiC3bへのCR3を介するHSPCの付着は、CR3に対するブロッキング抗体によって処置した正常マウスまたはCR3またはC3を一般的に欠損しているマウスのいずれかの血液へのBMからのHSPCの放出が向上したという知見により示唆されている。可溶性β-グルカン(WGPを摂取しているマクロファージから放出される)の存在下での損傷BM細胞上のこのiC3bへのHSPCの付着は、向上した造血に対するHSPCを活性化するシグナルを提供し得る。例えば、可溶性β-グルカンによる成熟骨髄細胞の活性化は、膜結合(沈着)iC3bによるCR3の同時刺激を必要とする。
【0091】
サイトカイン合成の刺激
細胞内染色およびフローサイトメトリーによるマウス腹腔マクロファージの分析は、インビボでのWGPβグルカン食作用により刺激されたマクロファージはTNFα、IL-6、IL-12、およびGM-CSFを合成することを示した(データは示さず)。特に、これらのサイトカインを、WGPβグルカンの腹腔内注射後24時間に単離したCR3-/-マウス由来ではなく野生型マウス由来のマクロファージにのみ検出した。胃内用量のWGPβグルカンを6日間毎日与えたマウス由来の血液白血球の中で観察したサイトカインにおける唯一の変化は、Th1サイトカインIFNγを含むCD4ヘルパーT細胞の割合に有意な増加(0.5%から3.5%への増加)があることであった。この知見は、IL-12(Th1細胞の形成を刺激するサイトカイン)を分泌するリンパ節におけるWGPβグルカン刺激マクロファージの存在により得る。ヒト血液単球のELISAアッセイは、WGPβグルカンの摂取がTNFα、IL-6、およびIL-12の分泌を刺激することを同様に示した。従って、BMに移動するWGPβグルカン含有腸マクロファージはこれらのサイトカインを分泌し、これらのサイトカインは造血の刺激における経口WGPβグルカンの作用に貢献し得るようである。
【0092】
実施例6
全ての材料および方法は、特に記載のない限り実施例1と同様である。
【0093】
動物
C3aR^-/-マウス(Rich Wetsel博士, University of Texas, Houston)を、当該分野で標準的な方法(例えば、A. Wetsel. 1998. Cloning, expression, sequence determination, and chromosome localization of the mouse complement C3a anaphylatoxin receptor gene. Mol. Immunol. 35:137)を使用して作製し得る。
【0094】
骨髄間質上のC3沈着
放射線またはシクロホスファミドにより生じる骨髄(BM)細胞への損傷により補体が活性化されるかどうかを決定するため、これらの因子で処置したマウスのBMを除去し、単離し、洗浄したBM細胞を、ウサギ抗マウスC3c-FITCで染色した。生存細胞上に結合したC3(iC3b断片)の存在を、ヨウ化プロピジウムで染色されなかった生存細胞をゲートすることによるフローサイトメトリーにより評価した。
【0095】
C3はaおよびBになり、AはC3Arにホーミングするために使用され、走化性もまたグルカンで向上される。
【0096】
結果
免疫におけるその機能に加え、C系もまた炎症を刺激し、死亡またはアポトーシス細胞の浄化を促進する。さらに、虚血/再灌流損傷において、IgM天然抗体と反応する腫瘍抗原は、低酸素症損傷組織上に曝露されるようになり、それによりCの古典経路を活性化し、C3aR^+マスト細胞を増すC3aおよび損傷組織上に沈着したiC3bを介してつなぎ留められるようになるCR3(iC3bレセプター;CD11b/CD18)^+好中球を増すC5aを放出する。この研究は、iC3bが5.0 Gyのγ放射線を与えられたマウス由来のBM細胞上に24時間以内に沈着されることを示した。生存細胞(ヨウ化プロピジウム陰性)上のiC3bを、抗C3c-FITCを用いるフローサイトメトリーにより検出したが、照射されたC3^-/-マウス由来のBM細胞上にはなかった。野生型マウスと比較したC3^-/-マウスの放射線後のWBC数の回復の遅延により、BM結合iC3bに対する機能を示唆した。同様のWBC回復の遅延はまた、CD11b^-/-マウスとC3aR^-/-マウスの両方で起こり、造血幹前駆細胞(HSPC)上で両方とも発現されるCR3とC3aRの両方に対する役割を示唆した。さらに、C3aR^-/-マウスは、RBC数の回復の遅延および赤血球幹前駆細胞(BFU-E)の欠損を示した。経口投与された全酵母β-グルカン粒子(WGP)が、照射CD11b^-/-マウスではなく照射野生型マウスにおいてWBC(RBCではなく)回復の有意な増加(16日vs. 21日)を誘導するという知見により、CR3はさらに骨髄HSPC機能に関係していた。経口投与されたWGP-フルオレセインは、マクロファージが可溶性βグルカン断片を放出(インビトロでCR3^+HSPCをプライムすることで示される)し、炎症性サイトカイン(IL-12が挙げられる)を分泌するBMおよび脾臓に運ぶ胃腸マクロファージにより吸収された。β-グルカンプライム化CR3^+骨髄細胞のiC3b被覆細胞への連結が活性化シグナルであるので、マクロファージによりBMに放出される可溶性β-グルカンが、BM細胞上に沈着したiC3bにつなぎ留められているHSPCのCR3をプライムするように機能し、それにより、HSPC拡張および分化の正常な速度を向上することが提案される。本明細書に記載されるような経口WGP調製物は、原子力設備事故または核テロ行為の結果有害な放射線に曝露される危険のある個体に与えられる治療剤(therapeutic)であり得る。これらのデータは、C3a-C3aR軸とiC3b-CR3レセプター軸の両方の造血に重要な役割を示し、他の成分またはレセプターの参与を排除しない。
【0097】
当業者は、わずかな慣用的な実験を使用して、本発明の特定の態様に対する多くの均等物を理解するか、または主張し得る。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲の範囲内に包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、致死量以下の放射線曝露後の野生型およびCR3欠損マウスに関する白血球数の時間的推移をグラフで示した図である。
【図2】図2は、バックグラウンド非特異的染色を差し引いた後の正味のC3染色を示すヒストグラフオーバーレイをグラフで示し、処置マウスおよび非処置マウスの骨髄を比較している。シクロホスファミドまたは致死量以下での放射線の骨髄に対する傷害は、骨髄生細胞上のC3沈着を伴う補体活性化をもたらす。正常またはC3欠損(C3-/-)マウスを、シクロホスファミド(200mg/kg、左パネル)または3.0 Gyの全身ガンマ放射線(右パネル)のいずれかで処置し、次いで、処置マウスおよび非処置マウス由来の単離骨髄細胞を、ヤギ抗マウスC3-FITCでの染色およびフローサイトメトリーにより、結合したC3の存在について解析した。抗-C3-FITC試薬によるC3-/-マウス由来髄細胞の染色があれば非特異的であるものとし、比較し得る処置または非処置の野生型(C3+/+)マウス由来の骨髄細胞で得られた総染色から差し引いた。シクロホスファミド(cyclophophamide)では、C3に対する染色は、処置後、3および4日目に観察された(4日目を図示)。照射したマウスでは、C3染色は、24のみで観察され(図示)、照射後3日後では観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予防または治療有効量の粒状の生物学的利用能を有するβ(1,3;1,6)グルカン製剤を投与することにより電離放射線、化学療法または放射線および化学療法の組み合わせによる傷害を処置および予防する方法。
【請求項2】
β(1,3;1,6)グルカンが完全グルカン粒子、微粒子状β-グルカン粒子または完全グルカン粒子および微粒子状β-グルカン粒子の組み合わせを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
完全グルカン粒子が1ミクロン以上の直径を有する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
微粒子状β-グルカン粒子が1ミクロン以下の直径を有する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
完全グルカン粒子、微粒子状β-グルカン粒子または完全グルカン粒子および微粒子状β-グルカン粒子の組み合わせが経口投与される、請求項2記載の方法。
【請求項6】
約0〜100mg/体重kgの治療有効用量が毎日投与される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
予防または治療有効量の粒状の生物学的利用能を有するβ(1,3;1,6)グルカンを投与することにより骨髄抑制を処置および予防する方法。
【請求項8】
骨髄抑制が電離放射線により生ずる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
骨髄抑制が化学療法により生ずる、請求項7記載の方法。
【請求項10】
β(1,3;1,6)グルカンが完全グルカン粒子、微粒子状β-グルカン粒子または完全グルカン粒子および微粒子状β-グルカン粒子の組み合わせを含む、請求項7記載の方法。
【請求項11】
完全グルカン粒子が1ミクロン以上の直径を有する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
微粒子状β-グルカン粒子が1ミクロン以下の直径を有する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
完全グルカン粒子、微粒子状β-グルカン粒子または完全グルカン粒子および微粒子状β-グルカン粒子の組み合わせが経口投与される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
約0〜100mg/体重kgの治療有効用量が毎日投与される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
予防または治療有効量の粒状の生物学的利用能を有するβ(1,3;1,6)グルカンを投与することにより放射線または化学療法により引き起こされたマクロファージ活性の減少を処置または予防する方法。
【請求項16】
照射後の骨髄抑制の処置における経口使用のための医薬を製造するための粒状の生物学的利用能を有するβ(1,3;1,6)グルカンの使用であって、ここで、経口投与されるグルカンが補体系を活性化することにより造血幹前駆細胞を高める、使用。
【請求項17】
治療的に有効な経口的に生物学的利用可能な量の完全グルカン粒子を個体に投与することを含む、放射線への曝露後のグルカン媒介造血前駆幹細胞回復を補体系を介して高める方法であって、ここで、グルカンが補体系を活性化し、造血前駆幹細胞の再生を高める、方法。
【請求項18】
経口投与されるグルカンがマクロファージにより吸収され、骨髄に移動され、分解され、放出された断片が分化および増殖するために幹細胞を活性化する幹細胞のCR3の準備をする、請求項17記載の方法。
【請求項19】
補体系を介するβ(1,3;1,6)グルカンが、損傷幹細胞に沈積したiC3bに結合し、CR3を活性化することにより幹細胞増殖および分化を促進する、請求項18記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−507239(P2006−507239A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−528076(P2004−528076)
【出願日】平成15年8月13日(2003.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2003/025237
【国際公開番号】WO2004/014320
【国際公開日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(502436565)バイオポリマー エンジニアリング,インコーポレイテッド (2)
【出願人】(505049951)ユニバーシティ オブ ルーイビル リサーチ ファウンデーション インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】