説明

放水銃装置の調整方法及び放水銃装置

【課題】エンコーダ出力からノズル方向を示す正しいステップ数を得るための現場での調整作業が簡単且つ容易にできるようにする。
【解決手段】 ノズル30を旋回自在に設け、ノズル30の旋回位置を水平ステップ数として検出して出力するエンコーダ38を備えた放水銃装置を調整する。調整時に、ノズル30を監視区域の所定の調整ステップ数が得られる水平方向、例えば正面方向に位置決めした状態でエンコーダ38から出力されたステップ数と調整ステップ数との誤差を演算して保持し、監視時に、エンコーダ38から出力されるステップ数を調整時に保持した誤差により補正して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルを旋回自在に設け、ノズルの旋回位置を水平ステップ数として検出して出力するエンコーダを備えた放水銃装置の調整方法及び放水銃装置に関する。

【背景技術】
【0002】
従来、競技場、展示会場などの広い監視区域を有する施設の消火設備として放水銃システムが設置されている。放水銃システムは、走査型火災検出器による光学的な水平及び垂直走査により監視区域を監視しており、火災の炎によるエネルギーによる受光信号から火災を検出して制御対象となる火源位置を演算し、放水銃を水平旋回により火源位置に指向させ、火源までの距離に応じた放水圧力の制御で消火用水を散水して消火するようにしている。
【0003】
放水銃の旋回位置はロータリ型のエンコーダにより検出されており、例えば放水銃の背後を0°位置として左回りに360°の範囲で0〜2048ステップとなるエンコーダ出力が得られる。このため放水銃の旋回制御は、火源を示す目標ステップ数を設定することで、エンコーダから出力されている現在位置を示すステップ数との差をなくす方向にモータ駆動により旋回させ、エンコーダから出力されるステップ数が目標ステップ数に一致する位置に停止させている。
【特許文献1】特開平5−305152号公報
【特許文献2】特開平9−81873号公報
【特許文献3】特開2004−248934号公報
【特許文献4】特開2004−261478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の放水銃装置にあっては、監視区域に対し放水銃を設置した際に、ノズル方向を示すステップ数とエンコーダの出力するステップ数とが必ずしも一致していないことから、エンコーダの入力軸の連結を解除した状態で、例えばノズルが監視区域の正面方向を向くように調整し、このときエンコーダの出力がノズルの向いている正面方向を示すステップ数、例えば1024ステップとなるように入力軸を回し、エンコーダ出力を1024ステップに保ったまま入力軸をネジの締め付けにより連結固定しているが、この連結固定の際に入力軸が僅かに動き、エンコーダ出力が正しい1024ステップからずれてしまうことが多い。
【0005】
このためエンコーダ出力が1024ステップを出力したまま入力軸を連結できるまで、何回も連結固定の作業をやり直しており、エンコーダを正しい位置に位置決めするための作業に手間と時間がかかる問題がある。
【0006】
本発明は、エンコーダ出力からノズル方向を示す正しいステップ数を得るための現場での調整作業が簡単且つ容易にできるようにする放水銃装置の調整方法を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため本発明は次のように構成する。
【0008】
本発明は、ノズルを旋回自在に設け、ノズルの旋回角を検出して出力するエンコーダを備えた放水銃装置の調整方法に於いて、
調整時に、ノズルを監視区域の所定の調整旋回角に位置決めした状態で、エンコーダから出力された旋回角と調整旋回角との誤差を演算して保持し、
監視時に、エンコーダから出力される旋回角を調整時に保持した誤差により補正して出力することを特徴とする。
【0009】
また本発明は、ノズルを旋回自在に設け、ノズルの旋回位置を水平ステップ数として検出して出力するエンコーダを備えた放水銃装置の調整方法であって、
調整時に、ノズルを監視区域の所定の調整ステップ数に対応する旋回角に位置決めした状態で、エンコーダから出力されたステップ数と調整ステップ数との誤差を演算して保持し、
監視時に、エンコーダから出力されるステップ数を調整時に保持した誤差により補正して出力することを特徴とする。
【0010】
ここで、本発明による放水銃装置の調整方法は、調整時にノズルを正面方向に位置決めすると共に、ノズル方向が正面方向を示すエンコーダのステップ数を調整ステップ数とする。
【0011】
また本発明は、ノズルを旋回自在に設け、ノズルの旋回角を検出して出力するエンコーダを備えた放水銃装置に於いて、調整時に、ノズルを監視区域の所定の調整旋回角に位置決めした状態で、エンコーダから出力された旋回角と調整旋回角との誤差を演算して保持する誤差検出保持部と、監視時に、エンコーダから出力される旋回角を調整時に保持した誤差により補正して出力する補正演算部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
更に本発明は、ノズルを旋回自在に設け、ノズルの旋回角を水平ステップ数として検出して出力するエンコーダを備えた放水銃装置の於いて、調整時に、ノズルを監視区域の所定の調整ステップ数に対応する旋回角に位置決めした状態で、エンコーダから出力されたステップ数と調整ステップ数との誤差を演算して保持する誤差検出保持部と、監視時に、エンコーダから出力されるステップ数を前記調整時に保持した誤差により補正して出力する補正演算部とを備えたことを特徴とする。

【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放水銃を監視区域に対し設置した際に、放水銃のノズルを監視区域に対する規定方向、例えば正面方向に指向させた状態で調整モードを設定すると、エンコーダから出力されるステップ数(旋回角)とノズル正面方向を示す調整ステップ数(調整旋回角)との誤差を検出して保持され、通常監視時には、エンコーダから出力されるステップ数(旋回角)が調整時に保持した誤差により補正して出力されるため、エンコーダを現場で簡単且つ容易に調整できる。
【0014】
特に、エンコーダの調整状態で出力が変化しないように入力軸を連結固定する煩雑な調整作業から開放され、エンコーダを調整するための作業負担を大幅に低減できる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明が適用される放水銃システムの説明図である。図1において、放水銃システムは、球技場や展示場などの大きな監視区域を持つ施設に設置され、予め定めた監視区域ごとに、例えばこの例では4台の放水銃10を設置している。また監視区域に対応して走査型火災検出器12が設けられ、警戒区域を上方から見下ろす位置に設置され、光学的な水平及び垂直走査により警戒区域の火災を監視している。
【0016】
放水銃10に対しては、ポンプ室に設けたポンプ22より配水管26が接続されると共に、エアーコンプレッサ28からの空気配管29が接続されている。ポンプ22はポンプ制御盤24により制御される。放水銃10に対し分岐された配水管26のそれぞれには、放水圧力制御弁として動作する電動弁11が設けられている。
【0017】
放水銃10に対してはそれぞれ放水銃制御盤14が設けられ、放水銃制御盤14には現場操作盤16が設けられている。監視センタには中央制御盤18と中央操作卓20が設置されている。中央制御盤18に対しては、走査型火災検出器12、放水銃制御盤14及びポンプ制御盤24が接続されている。
【0018】
このような放水銃システムにあっては、走査型火災検出器12のいずれかで警戒区域の火災を検出すると、火災断定信号及び火源の水平及び垂直の走査位置を示す位置信号を中央制御盤18に出力する。
【0019】
中央制御盤18にあっては、火災断定信号に基づいて火災発生のメッセージ出力を中央操作卓20のディスプレイなどに行うと共に、位置信号から火源の3次元座標位置を検出し、火災が発生した警戒区域に設置している放水銃10の放水銃制御盤14に対し火源位置への旋回制御を指示する。この中央制御盤18からの旋回指示を受けて放水銃制御盤14は自己の放水銃10に対し火源位置への旋回制御を行う。
【0020】
放水銃10が火源に向けて旋回制御された後の放水は、現場操作盤16による手動起動あるいは中央制御盤18からの指示による遠隔起動、更には自動設定による自動起動のいずれかが行われ、ポンプ22から配水管26を通って加圧消火用水が供給されると同時に、エアーコンプレッサ28より空気配管29を通って圧縮空気が供給され、放水銃10のノズル内で消火用水の周囲に圧縮空気を噴き込んで空気と水を混合することにより、低い放水圧力で且つ少ない放水量で十分な放水距離を確保した消火用水の散布を行う。
【0021】
放水銃10における放水距離は、電動弁11の開度制御による放水圧力の制御で行われる。即ち中央制御盤18は、放水銃10の旋回指示と同時に放水銃制御盤14に対し放水銃10から火源までの目標距離に対応した目標放水圧力を設定しており、電動弁11による開度制御で放水圧力を目標放水圧力に保つフィードバック制御を行う。
【0022】
図2は本発明による放水銃装置の機能構成のブロック図である。図2において、放水銃10は、架台32上にモータ36を内蔵した水平旋回部34を搭載し、水平旋回部34の上にノズル30を搭載し、モータ36の回転駆動により架台32に対しノズル30を搭載した水平旋回部34を0°〜360°の範囲で旋回可能とする。
【0023】
ノズル30に対しては配水管26が接続され、配水管26には放水圧力を制御するための電動弁11と点検時に使用されるゲート弁13が設けられている。また空気配管29により圧縮空気が供給されている。水平旋回部34に搭載されたノズル30の仰角は、消火用水の放水時に最大飛距離が得られるように一定の角度で固定されている。
【0024】
放水銃10の上部にはエンコーダ38が取り付けられている。エンコーダ38はモータ36によるノズル30の回転に伴う回転量(旋回角)を示す検出信号を出力する。エンコーダ38としては一般的なロータリエンコーダを用いることができ、ロータリエンコーダとしては磁気式や光学式のいずれも用いることができる。エンコーダ38の入力軸は、ノズル30の旋回軸に設けた連結部材39と連結されており、ノズル30の旋回による連結部材39の旋回をエンコーダ38で検出する。
【0025】
放水銃10の製造段階におけるエンコーダ38の組付け時にあっては、放水銃10におけるノズル30の向きに対する位置関係の調整は特に行わず、エンコーダ38の入力軸をノズル30の回転が伝達される状態に連結部材39で連結している。
【0026】
ここでエンコーダ38は、0°〜360°の範囲で回転角に応じたステップ数を示す信号を出力するもので、回転角0°〜360°はエンコーダ38の出力で0〜2048ステップとなる。
【0027】
本発明の放水銃10を監視区域に設置した際に、放水銃制御盤14の論理的な監視領域(論理的制御空間)におけるエンコーダ38から出力されるステップ数と旋回角の関係は、警戒区域の真後ろにノズル30を向けた旋回角0°のときステップ数は0ステップ、ノズル30を360°回転したときステップ数は2048ステップであり、このため調整のために放水銃10のノズル30を監視区域の正面方向に向けた場合のステップ数は1024ステップを示す。
【0028】
放水銃制御盤14には、制御部40、パルス発生部42、旋回検出部44、エンコーダ調整処理部46、電源部48及び短絡検出部50が設けられている。制御部40は、図1の中央制御盤18もしくは現場操作盤16から旋回目標位置の指示を受けて放水銃10のノズル30を目標方向に旋回制御し、放水開始で放水圧力を制御する。
【0029】
このときの目標旋回方向は、目標角度を示す旋回目標ステップ数で指示される。制御部40は旋回目標ステップ数の指示を受けると、そのときエンコーダ38の出力から旋回検出部44で検出している現在のノズル方向を示すステップ数をエンコーダ調整処理部46を介して受け、旋回目標ステップ数との差を求め、ステップ数の差をなくす旋回方向への旋回制御をモータ36の駆動により開始し、エンコーダ38の検出出力に基づくステップ数が目標ステップ数に一致する位置に停止して目標位置にノズル30を指向させる。
【0030】
制御部40によるモータ36の旋回駆動は、目標旋回位置に対する加速、定速、減速と変化する速度パターンに従って行われる。この時、モータ36はパルス発生部42からのデューティパルス制御で速度制御される。
【0031】
制御部40は、旋回開始時には、パルス発生部42から一定周期のパルス信号のオンデューティを例えば100パーセントとして出力し、これを電源部48で電圧パルス信号に変換して直流モータを使用したモータ36を駆動して水平旋回部34を加速旋回させる。旋回速度が一定速度に達すると、パルス発生部42はパルス信号のオンデューティを定速に応じた値に下げ、この状態で目標ステップ位置に対する残りステップ数が所定ステップ数になるまで定速制御を行う。
【0032】
目標ステップ数に対する残りステップ数が所定値に達すると、パルス発生部42からのパルス信号のオンデューティを小さくすることで減速制御を開始し、エンコーダ38の出力に基づくステップ数が目標ステップ数に一致したときに、短絡検出部50によりモータ36の制御線を短絡してブレーキを掛けて旋回駆動を停止させる。
【0033】
なお、旋回停止したときに目標ステップ位置に対しオーバーランした場合には、オーバーランした後のエンコーダ38の出力によるステップ数との差を求め、この差をなくすように逆方向に旋回して目標位置に停止させる。
【0034】
図3は図2のエンコーダ調整処理部46の機能構成のブロック図である。図3において、エンコーダ調整処理部46には、調整値設定部52、誤差検出保持部54及び補正演算部56が設けられている。
【0035】
本発明のエンコーダ調整処理にあっては、図2に示す放水銃10のノズル30を警戒区域に対する正面方向に向けた状態で調整処理を指示することで、エンコーダ調整処理部46の処理を行わせる。調整処理の指示は、現場操作盤16の操作で行う。この調整のために放水銃10のノズル30を監視区域の正面方向に向ける操作は、図1に示した現場操作盤16における手動操作でモータ36を旋回させて、水平方向に正確に位置決めする。
【0036】
このように放水銃10のノズル30を正面方向に向けた状態で放水銃制御盤14に対し調整処理を指示すると、図3のエンコーダ調整処理部46が動作する。エンコーダ調整処理部46の調整値設定部52には、放水銃10のノズル30を正面方向に向けた際にエンコーダ38の検出出力から得られる調整ステップ数HSoとして、調整時のノズル方向であるを正面方向を示すHSo=1024ステップが予め設定されている。
【0037】
この状態で調整処理が開始されると、このときエンコーダ38からの検出出力に基づくステップ数が旋回検出部44からステップ数HSとして誤差検出保持部54に与えられる。誤差検出保持部54にあっては、調整値設定部52により設定された調整ステップ数HSoからエンコーダ38の出力に基づいて得られたステップ数HSを差し引き、誤差ΔHSを
(誤差ΔHS)=(調整ステップ数HSo)−(ステップ数HS)
として算出して保持する。
【0038】
このようにして誤差検出保持部54で算出保持された誤差ΔHSは、補正演算部56に対し補正演算のためにセットされる。また誤差検出保持部54で検出された誤差ΔHSは、図2の制御部40を介して、図1に示した中央制御盤18に設けているデータベースに送られて登録される。
【0039】
放水銃制御盤14側で検出保持されたエンコーダ調整処理のための誤差ΔHSを中央制御盤18側のデータベースに登録しておくことで、放水銃制御盤14側の障害によりエンコーダ調整処理部46に保持されている誤差ΔHSが失われたような場合にも、改めて放水銃10のノズル30を正面方向に向けて調整処理を実行しなくとも、中央制御盤18のデータベースから必要とする誤差ΔHSを取得できる。
【0040】
図4は本発明によるエンコーダ調整の説明図であり、放水銃10を警戒区域に設置した状態で平面的に示している。図4において、放水銃制御盤14の旋回制御における論理的な旋回ステップ数は、放水銃10の背面を0°とした左回りに360°の範囲をステップ数0〜2048で表わしており、放水銃10のノズル30を警戒区域の正面方向即ち180°方向に向けた場合の放水銃制御盤14の処理で扱う論理的なステップ数は1024ステップとなっている。
【0041】
一方、放水銃10に設置されたエンコーダ38は、放水銃制御盤14の制御上の論理ステップに対し特に位置決め調整などが行われていないため、この例では論理ステップとなる背面の0°方向に対し、エンコーダ38の0ステップは任意のずれ量を持つことになる。
【0042】
このようなエンコーダ38の非調整状態で、本発明にあっては、放水銃10のノズル30を論理ステップで1024ステップとなる正面180°方向に向け、この状態で図3に示したエンコーダ調整処理部46による調整処理を行うと、そのときのノズル30の正面180°方向の向きに対応してエンコーダ38から例えば検出ステップ数HS=940ステップが得られたとする。この場合には、図3の誤差検出保持部54において誤差ΔHSが
ΔHS=1024−940=84ステップ
として算出され、誤差検出保持部54で保存されると同時に、補正演算部56に対し補正演算のために出力状態にセットされる。この調整時に算出された誤差ΔHSは、図4における論理ステップとなる背面方向の0ステップに対するエンコーダ38の0ステップとの差となる論理ステップオフセットを表わしている。
【0043】
このようにしてエンコーダ調整処理部46により補正演算のための誤差ΔHSが算出できたならば、調整処理を解除して通常の監視動作とすると、補正演算部56による演算機能が有効となり、そのときエンコーダ38の出力に基づき旋回検出部44より出力されている検出ステップ数HSに調整処理で検出保持された誤差ΔHSを加える補正演算、即ち
HS=HS+ΔHS
を行って補正した後に、制御部40に出力する。
【0044】
例えば図4の場合には、ΔHS=84ステップであり、調整後のエンコーダ38の出力に基づく検出ステップ数HSがHS=940ステップであったとすると、補正演算部56は
HS=940+84=1024ステップ
として正しいノズル30が向いている正面方向を示すステップ数に補正して出力することができる。
【0045】
よって、中央操作卓20において、モニタ上から放水銃10が現在どの方向を向いているか正しく表示することができる。また、火災検出時に中央制御盤18からエンコーダ38のステップ数を指定した旋回指令を受けた場合は、放水銃制御盤14は先に設定した誤差ΔHSを考慮して検出ステップ値HSを演算し、放水銃10を旋回制御することで、中央制御盤18の指令どおりの向きに合せることができる。
【0046】
図5は図2のエンコーダ調整処理部46による調整処理のフローチャートである。図5において、調整処理が開始されると、まずステップS1で手動モードで放水銃10を警戒区域に対する正面方向、即ち放水銃10の背後を0°としていることから180°方向に旋回制御して停止する。
【0047】
この状態で、ステップS2で調整処理の指示があると、ステップS3に進み、このときのエンコーダ38の検出ステップ数HSを読み込み、続いてステップS4でノズルの正面方向を示す予め設定した調整ステップ数HSo=1024ステップとの誤差を算出し、ステップS5で誤差を保存して補正演算のパラメータとしてセットする。更にステップS6で、算出した誤差を中央制御盤18のデータベースに登録してバックアップする。
【0048】
このように本発明の放水銃装置におけるエンコーダ38の調整については、従来行っていた機械的な連結、即ちネジ止めによる固定作業を必要とせずに、単に調整の際に放水銃10のノズル30を調整方向として予め決めた例えば正面方向に旋回位置決めした状態で、放水銃制御盤14に対し調整処理をコマンドあるいはスイッチ操作などにより指示するだけで、自動的に、図4に示したように放水銃制御盤14の旋回制御に使用する論理ステップと実際のエンコーダの出力に基づくステップとの誤差が検出されて保持される。
【0049】
この調整処理を解除した後の通常の監視操作にあっては、エンコーダ38の出力から得られたステップ数を調整処理の際に検出して保存した誤差を用いて補正演算することで正しいステップ数が得られ、現場におけるエンコーダ38の調整を簡単且つ容易とし、従来のエンコーダ38の調整作業における作業負担を大幅に軽減することができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、調整処理時の放水銃の向きを正面(180°)にして、そのときのエンコーダの値により誤差ΔHSを演算しているが、これに限らず、例えば背面(0°)や横(90°)を向かせたときのエンコーダの値を測定して誤差ΔHSを演算するようにしても良い。
【0051】
また、本実施形態の放水銃にあっては、水平方向のみに旋回するものであったが、垂直方向に旋回して放水距離を調整する放水銃においても垂直方向の向きを制御する際のエンコーダの誤差補償にも適用することができる。
【0052】
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明が適用される放水銃システムの説明図
【図2】本発明による放水銃装置の機能構成のブロック図
【図3】図2のエンコーダ調整処理部の機能構成のブロック図
【図4】本発明によるエンコーダ調整の説明図
【図5】図2のエンコーダ調整処理のフローチャート
【符号の説明】
【0054】
10:放水銃
11:電動弁
12:火災検出器
13:遠隔開閉弁
14:放水銃制御盤
16:現場操作盤
18:中央制御盤
20:中央操作卓
22:ポンプ
24:ポンプ制御盤
26:配水管
28:エアーコンプレッサ
29:空気配管
30:ノズル
32:架台
34:水平旋回部
36:モータ
38:エンコーダ
39:連結部材
40:制御部
42:パルス発生部
44:旋回検出部
46:エンコーダ調整処理部
48:電源部
50:短絡検出部
52:調整値設定部
54:誤差検出保持部
56:補正演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを旋回自在に設け、前記ノズルの旋回角を検出して出力するエンコーダを備えた放水銃装置の調整方法に於いて、
調整時に、前記ノズルを監視区域の所定の調整旋回角に位置決めした状態で、前記エンコーダから出力された旋回角と前記調整旋回角との誤差を演算して保持し、
監視時に、前記エンコーダから出力される旋回角を前記調整時に保持した誤差により補正して出力することを特徴とする放水銃装置の調整方法。

【請求項2】
ノズルを旋回自在に設け、前記ノズルの旋回角を水平ステップ数として検出して出力するエンコーダを備えた放水銃装置の調整方法に於いて、
調整時に、前記ノズルを監視区域の所定の調整ステップ数に対応する旋回角に位置決めした状態で、前記エンコーダから出力されたステップ数と前記調整ステップ数との誤差を演算して保持し、
監視時に、前記エンコーダから出力されるステップ数を前記調整時に保持した誤差により補正して出力することを特徴とする放水銃装置の調整方法。

【請求項3】
請求項2記載の放水銃装置の調整方法に於いて、調整時に前記ノズルを警戒区域の正面方向に位置決めすると共に、前記正面方向を示す前記エンコーダのステップ数を前記調整ステップ数としたことを特徴とする放水銃装置の調整方法。

【請求項4】
ノズルを旋回自在に設け、前記ノズルの旋回角を検出して出力するエンコーダを備えた放水銃装置に於いて、
調整時に、前記ノズルを監視区域の所定の調整旋回角に位置決めした状態で、前記エンコーダから出力された旋回角と前記調整旋回角との誤差を演算して保持する誤差検出保持部と、
監視時に、前記エンコーダから出力される旋回角を前記調整時に保持した誤差により補正して出力する補正演算部と、
を備えたことを特徴とする放水銃装置。

【請求項5】
ノズルを旋回自在に設け、前記ノズルの旋回角を水平ステップ数として検出して出力するエンコーダを備えた放水銃装置に於いて、
調整時に、前記ノズルを監視区域の所定の調整ステップ数に対応した旋回角に位置決めした状態で、前記エンコーダから出力されたステップ数と前記調整ステップ数との誤差を演算して保持する誤差検出保持部と、
監視時に、前記エンコーダから出力されるステップ数を前記調整時に保持した誤差により補正して出力する補正演算部と、
を備えたことを特徴とする放水銃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−223436(P2006−223436A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38907(P2005−38907)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】