説明

放流警報中継システム

【課題】通信設備の設置を抑制しつつ、ダムの下流域に対して放流警報を伝達する。
【解決手段】放流警報中継システム1において、親局2は、ダム6又はその近辺に設置され、ダム湖5の水の放流が行われる前にオペレータの指示操作に応じて、放流による河川7の増水等に対する注意を促すための警報音を発信する。そして、最下流に設置された子局3dから警報音を発信したことを示す吹鳴情報を受信したか、受信していないかに応じて、警報音の伝達が正常か、異常かを表示する。子局3は、河川7に沿って、自局の上流にある親局2又は他の子局3の音達範囲内に順次設置される。そして、上流の他局から警報音を受信し、その警報音に含まれる所定周波数帯域のパイロット信号が所定レベル以上である状態が所定時間以上継続したときに、下流に向けて警報音を発信する。最下流に設置された子局3dは、警報音を発信した後、上記の吹鳴情報を親局2に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダムの放流に際して注意を促すための警報音が最下流まで到達していることが確認可能な、複数の放流警報装置からなるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
河川に設けられたダムから放流を行う前に、そのダムの下流にいる人たちに対して、河川水位の上昇等の危険を音声によって周知する放流警報装置がある。かかる装置により広範囲に情報を伝達するためには、ダムの下流域に何台も警報装置の子局を設置し、河川流域全体に音声が届くようにしなければならない。一般的には、ダムにある親局から下流にある各子局へ、ケーブル等を用いた有線方式や、電波を使用した無線方式により通信を行い、各子局がそれぞれの警報装置を制御して警報音を発信させている。このとき、警報装置が正常に作動しているか否かは、実際に警報音が鳴っているか否かによって確認されている。
【0003】
これに関連して、特許文献1には、子局から親局へ動作開始時と終了時に動作確認信号を親局へ送信する「子局動作確認方式」が開示されている。また、特許文献2には、警報装置の音達範囲内に設置された複数のセンサにより、周囲の環境情報を受信し、警報音が不達と予想される部分へ指向性吹鳴ホーンを向ける「放流警報送出プログラム、放流警報装置、及び放流警報送出方法」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−224532号公報
【特許文献2】特開2006−72767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献による従来の方法には、以下に示すような問題がある。
(1)警報音が鳴っていることを確認することは可能であるが、河川全域に音声が到達しているか否かは確認できない。すなわち、最下流まで届いているかを確認するものではない。
(2)新設当時の音達試験では全域に届いていたとしても、河川の流量や周囲の環境が変化して、雑音の音量が大きくなったために音声が届かなくなったときに、それを検知することができない。
(3)親局及び子局すべての間にケーブルや無線局を設置しなければならず、費用がかかる。
(4)ケーブルや無線局を新設するには、河川の占用申請や無線局の開設申請が必要となるので、時間や手間がかかり、場合によっては設置できないこともある。
(5)崖等、河川やその付近の状況によっては、ケーブルや無線局の設置が困難な場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、通信設備の設置を抑制しつつ、ダムの下流域に対して放流警報を伝達することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、放流警報中継システムであって、ダム又はその近傍に設置され、前記ダムの放流に際して注意を促すための警報音を発信する第1警報装置と、前記第1警報装置から前記ダムの下流に向かって、上流の警報装置が発信する前記警報音の到達距離以内に順次設置され、上流から前記警報音を受信したときに、下流に前記警報音を発信する複数の第2警報装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ダムの放流に際して河川の増水等への注意を促す警報をダムの下流域に伝達するにあたって、ダム又はその付近の第1警報装置、及び、警報が伝わる必要のあるダムの下流域に亘って設置される複数の第2警報装置の間で、警報音の中継を順次行う。各警報装置は、1つ上流にある警報装置からの警報音が到達する距離又はそれより短い距離の間隔を空けて順次設置される。これによれば、警報装置間で警報音を順次中継するので、警報装置ごとに通信設備を設けることなく、最下流まで警報音を伝達することができる。以上によれば、途中の第2警報装置はデータ通信する必要がないので、ケーブルや無線局等の通信設備を設置する手間やコストを削減することができる。逆に言えば、通信設備の設置が困難な場所であっても、警報音が到達可能な範囲であれば、第2警報装置を設置することができる。
【0009】
また、本発明の上記放流警報中継システムにおいて、前記第2警報装置のうち、最下流に設置される第2警報装置である最下流警報装置は、前記警報音を受信したときに、下流に前記警報音を発信するとともに、自装置が前記警報音を発信した旨を示す吹鳴情報を前記第1警報装置に送信し、前記第1警報装置は、前記最下流警報装置から前記吹鳴情報を受信したときに、最下流で前記警報音を発信した旨を出力することとしてもよい。
【0010】
この構成によれば、最下流にある第2警報装置は、警報音を発信した旨を示す吹鳴情報を第1警報装置に送信し、第1警報装置は、吹鳴情報を受信して、最下流で警報音を発信した旨を出力する。これによれば、最下流における警報音の発信を、ダム又はその付近の第1警報装置で確認することができる。逆に、第1警報装置で吹鳴情報を受信できなければ、最下流まで警報音が到達していないことがすぐに分かるので、迅速な障害対応が可能になる。以上によれば、第1警報装置と、最下流の第2警報装置との間だけでデータ通信を行えばよいので、通信設備を設置する手間やコストを削減することができる。そして、ダムの放流の都度、最下流の警報装置まで警報音が届いたことを確認できるので、確実に放流警報を伝達することができる。
【0011】
また、本発明の上記放流警報中継システムにおいて、前記第2警報装置のうち、前記第1警報装置と、前記最下流警報装置との中間に設置される第2警報装置である中間警報装置は、前記警報音を受信したときに、下流に前記警報音を発信するとともに、前記吹鳴情報を前記第1警報装置に送信し、前記第1警報装置は、前記中間警報装置から前記吹鳴情報を受信したときに、中間で前記警報音を発信した旨を出力することとしてもよい。
【0012】
この構成によれば、警報音の伝達が必要なダムの下流域の中間にある第2警報装置から、第1警報装置が吹鳴情報を受信し、出力するので、中間まで警報音が到達したか否かを確認することができる。そして、例えば、第1警報装置から警報音を発信しても、最下流から吹鳴情報を受信できなかったときに、中間から吹鳴情報を受信したか否かに応じて、最下流まで警報音が届かない障害要因が、中間から最下流までの間にあるのか、又は、ダムから中間までの間にあるのかを特定することができる。
【0013】
これによれば、第1警報装置に吹鳴情報を送信する中間警報装置を増やすことにより、障害地点を特定しやすくなる。ただし、第1警報装置と、中間警報装置との間をデータ通信可能とする通信設備が必要になるので、障害地点を特定しやすくするか、通信設備の設置コストを抑えるかは、トレードオフの関係になる。
【0014】
また、本発明の上記放流警報中継システムにおいて、前記第2警報装置は、前記警報音を受信したか否かを、外部から受信した音のうち、所定の周波数帯域の音が所定レベル以上である状態が所定時間以上継続したか否かにより判断することとしてもよい。
【0015】
この構成によれば、第2警報装置が、例えば、自然界に存在しない特定の、周波数帯域、レベル又は継続時間の音を警報音として認識し、周囲の雑音と、警報音とを判別することにより、雑音に反応することなく、警報音を確実に中継することができる。
【0016】
また、本発明の上記放流警報中継システムにおいて、前記第1警報装置は、前記警報音を発信してから、少なくとも前記所定時間に前記第2警報装置の台数を乗算した時間だけ、前記吹鳴情報の受信を待つこととしてもよい。
【0017】
この構成によれば、第1警報装置が、各第2警報装置で警報音の継続を監視する時間の合計を、吹鳴情報の応答待ち時間の目安にすることにより、その合計の時間が経過しても吹鳴情報を受信できない場合には、警報音が最下流まで到達していないと判断することができる。
【0018】
その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、通信設備の設置を抑制しつつ、ダムの下流域に対して放流警報を伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】放流警報中継システム1の構成を示す図である。
【図2】親局2のハードウェア構成を示す図である。
【図3】子局3のハードウェア構成を示す図である。
【図4】(a)は親局2の記憶部26に記憶される親局データ26Aの構成を示し、(b)は子局3の記憶部36に記憶される子局データ36Aの構成を示す。
【図5】放流警報中継システム1の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施の形態に係る放流警報中継システムは、ダム又はその近傍にある親局、及び、ダムの下流域にある複数の子局との間において、制御信号として警報音そのものを使用するものであって、上流で親局又は子局が鳴動した場合に、その一つ下流側の子局がその警報音を検知したときに鳴動するものである。この子局による警報音の検知及び鳴動をダムの下流へ向かって順次繰り返した後、最も下流にある子局が鳴動し、その旨を示す吹鳴情報を親局に送信する。親局は、その吹鳴情報を受信し、出力する。
【0022】
これによれば、子局ごとにケーブルや無線局を設置する必要なく、最下流まで警報音が届いているか否かを確認できる。
【0023】
≪システムの構成と概要≫
図1は、放流警報中継システム1の構成を示す図である。放流警報中継システム1は、ダム6及びその下流の河川7の流域に亘って、放流警報装置として親局2及び複数の子局3が設置されたものである。親局2は、ダム6又はその近辺に設置され、ダム湖5の水の放流が行われる前に、オペレータの指示操作に応じて、放流による河川7の増水等に対する注意を促すための警報音を発信する。そして、最下流に設置された子局3dから自局が警報音を発信した旨を示す吹鳴情報の受信を待って、受信又は未受信に応じた表示を行う。なお、親局2と、子局3dとは、有線又は無線の通信回線4を介して通信可能である。
【0024】
子局3は、河川7に沿って、自局の上流にある、直近の他局(最上流の子局3に関しては親局2、それ以外は他の子局3)の音達範囲(例えば、約200〜300m)内に順次設置される。河川7の流域の長さによっては、例えば、20台以上設置されることもある。そして、自局の上流にある他局から警報音を受信し、その警報音に含まれるパイロット信号が所定レベル以上である状態が所定時間以上継続したときに、自局から下流に向けて警報音を発信する。特に、最下流に設置された子局3dは、警報音を発信した後、通信回線4を介して上記の吹鳴情報を親局2に送信する。なお、パイロット信号としては、実際に発信される警報音に含まれる周波数のうち、自然雑音とは周波数帯域が異なる特定の周波数帯域の音声信号を抽出する。また、子局3は、必ずしも河川7に沿っていなくてもよく、警報音が必要な地域範囲に漏れなく伝わるように分散して設置されていればよい。
【0025】
図2は、親局2のハードウェア構成を示す図である。親局2は、通信部21、表示部22、入力部23、音声出力部24、処理部25及び記憶部26を備え、各部がバス27を介してデータを送受信可能なように構成される。通信部21は、通信回線4を介して子局3dとIP(Internet Protocol)通信等を行う部分であり、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。表示部22は、処理部25からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等によって実現される。入力部23は、オペレータが放流警報を指示するための操作ボタンで実現されるが、操作ボタンの代わりに、キーボードやマウス、タッチパネル等であってもよい。音声出力部24は、処理部25からの指示により、自局から下流に向けて警報音を発信する部分であり、例えば、スピーカ等によって実現される。処理部25は、所定のメモリを介して各部間のデータの受け渡しを行うととともに、親局2全体の制御を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)が所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部26は、処理部25からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0026】
図3は、子局3のハードウェア構成を示す図である。子局3は、通信部31、音声入力部32、フィルタ33、音声出力部34、処理部35及び記憶部36を備え、各部がバス37を介してデータを送受信可能なように構成される。通信部31は、最下流にある子局3dだけに設けられ、通信回線4を介して親局2とIP通信等を行う部分であり、例えば、NIC等によって実現される。音声入力部32は、他局からの警報音を取得する部分であり、例えば、上流の方に向いた集音マイク等によって実現される。フィルタ33は、音声入力部32で取得した警報音から特定帯域の周波数をパイロット信号として取り出す周波数フィルタであり、例えば、フィルタ回路によって実現される。音声出力部34は、処理部35からの指示により、自局から下流に向けて警報音を発信する部分であり、例えば、スピーカ等によって実現される。処理部35は、所定のメモリを介して各部間のデータの受け渡しを行うととともに、子局3全体の制御を行うものであり、CPUが所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部36は、処理部35からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、HDDやSSD等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0027】
≪データの構成≫
図4(a)は、親局2の記憶部26に記憶される親局データ26Aの構成を示す。親局データ26Aは、応答待ち最大時間26A1を含む。応答待ち最大時間26A1は、親局2が警報音を発信してから、子局3dからの吹鳴情報の受信を待つ最大時間である。
【0028】
図4(b)は、子局3の記憶部36に記憶される子局データ36Aの構成を示す。子局データ36Aは、特定信号レベル閾値36A1及び特定信号時間閾値36A2を含む。特定信号レベル閾値36A1は、警報音として判定されるパイロット信号の振幅レベルの下限値である。特定信号時間閾値36A2は、警報音として判定されるパイロット信号の継続時間の下限値である。そして、子局3において、特定信号レベル閾値36A1以上のレベルの音が特定信号時間閾値36A2以上継続したときに、警報音を発する。なお、特定信号時間閾値36A2には、自然にはありえない長さの時間として、例えば30秒が設定されるが、この時間は、子局3間で警報音を中継する際の待ち時間となるので、できる限り短い方が望ましい。
【0029】
≪システムの処理≫
図5は、放流警報中継システム1の処理を示すフローチャートである。本処理は、親局2及び子局3a〜3dが警報音をリレーのように順次中継し、最下流まで到達したことを確認することにより、河川7の流域に対する放流警報の伝達を確実に行うものである。
【0030】
まず、親局2は、入力部23により、オペレータから放流警報の指示を受けたか否かを判定する(S501)。警報の指示がなければ(S501のN)、S501の判定を繰り返す。警報の指示があれば(S501のY)、音声出力部24により、1分間程度続けてダム6の下流に向けて警報音を発信する(S502)。警報音は、親局2からの音達範囲に届くので、音達範囲内にいる人が聞くとともに、親局2の下流に設置された子局3aが受信することになる。
【0031】
そして、親局2は、警報音の発信を開始した時点から、応答待ち最大時間26A1だけ待つ(S503)。図1によれば、親局2から最下流の子局3dまでの間において、警報音の送受信が4回行われるので、子局3が監視するパイロット信号の継続時間が30秒とすれば、4×30=120[秒]又はそれにマージンを加えた時間が応答待ち最大時間26A1として設定される。
【0032】
親局2の直近の下流に設置された子局3aは、まず、音声入力部32により、警報音を受信したか否かを判定する(S504)。受信していなければ(S504のN)、S504の判定を繰り返す。受信していれば(S504のY)、受信した警報音からフィルタ33により取り出されたパイロット信号について、その振幅レベルが特定信号レベル閾値36A1以上である状態が、特定信号時間閾値36A2(例えば、30秒)以上の時間だけ継続したか否かを判定する(S505)。
【0033】
パイロット信号が上記の条件に合えば(S505のY)、子局3aは、上流側で吹鳴していることを認識し、音声出力部34により、1分間程度続けて自局の下流に向けて警報音を発信し(S506)、S504の判定に戻る。警報音は、子局3aからの音達範囲に届くので、音達範囲内にいる人が聞くとともに、子局3aの下流に設置された子局3bが受信することになる。パイロット信号が上記の条件に合わなければ(S505のN)、S506の処理をスキップし、S504の判定に戻る。S505の判定を行うことにより、音声入力部32により受信した音が、警報音かそれ以外の雑音かを判別することができ、誤動作による誤警報を防止することができる。
【0034】
子局3b及び3cにおいても、S504〜S506と同様の処理を行う。最下流に設置された子局3dにおいては、S504〜S506と同様の、S507〜S509の処理を行うが、警報音を自局の下流に向けて発信した(S509)後に、最下流で警報音を受信し、発信したことを示す吹鳴情報を、通信部31により親局2に送信する(S510)。警報音は、子局3dからの音達範囲に届くので、その音達範囲内にいる人が聞くことになるが、子局3dの下流には子局が設置されていないので、放流警報のリレーは行われない。
【0035】
一方、親局2は、応答時間待ちをした(S503)後、通信部21により、子局3dから吹鳴情報を受信したか否かを判定する(S511)。受信していれば(S511のY)、「最下流の子局3dが警報音を発信したこと(正常)」を表示部22に表示する(S512)。受信していなければ(S511のN)、「最下流の子局3dが警報音を発信していないこと(異常)」を表示部22に表示する(S513)。これにより、オペレータは、正常が表示されていれば、放流警報の伝達が正常に行われたことを確認でき、異常が表示されていれば、どこかで放流警報の伝達が途切れたことが分かり、修復のための対応をとることができる。
【0036】
なお、親局2は、応答時間待ちの後、吹鳴情報の受信を判定するように説明したが、応答時間待ちの間に吹鳴情報を受信する可能性もあるので、応答時間経過のチェックと、吹鳴情報受信の判定とを交互に行うようにしてもよい。また、正常又は異常を表示部22に表示するように説明したが、オペレータが分かるものであれば、他の出力手段でもよく、通信回線によりオペレータの所持する携帯端末にメール送信してもよいし、音声により出力するようにしてもよい。
【0037】
なお、上記実施の形態では、図1に示す放流警報中継システム1内の親局2及び各子局3を機能させるために、処理部(CPU)で実行されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、その記録したプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させることにより、本発明の実施の形態に係る放流警報中継システム1が実現されるものとする。この場合、プログラムをインターネット等のネットワーク経由でコンピュータに提供してもよいし、プログラムが書き込まれた半導体チップ等をコンピュータに組み込んでもよい。
【0038】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、通信設備の設置を抑制しつつ、ダム6の下流域に対して確実に放流警報を伝達することができる。
【0039】
詳細には、図5のS504及びS505(S507及びS508)に示すように、子局3において、警報音を受信したときに、その警報音のうち、特定帯域の周波数の信号が所定のレベル以上である状態が所定時間以上継続するか否かを監視するので、河川7の流域の雑音と、警報音とを判別でき、上流からの警報音を確実に認識し、下流に発信することができる。
【0040】
次に、S510及びS511〜S513に示すように、最下流で警報音を発信した旨を示す吹鳴情報を子局3dから送信し、一方、親局2が吹鳴情報を受信したか否かに応じて、警報音の伝達が正常か、異常かを表示するので、オペレータは、警報音が最下流まで届いたか否かを確認することができる。そして、S502及びS503に示すように、親局2は、警報音を発信してから所定応答時間(応答待ち最大時間26A1)だけ待つので、その後すぐに吹鳴情報を受信できるか否かにより、子局3dが吹鳴情報を送信したか否かを判断することができる。なお、警報音が最下流まで届いていることは、河川7の増水等により影響を受ける可能性のある、ダム6の下流域全体に対して、放流の警報音が伝わっていることを意味する。
【0041】
以上によれば、河川7の流域のうち、放流警報の必要な範囲全域に警報音が到達しているか否かを、親局2の鳴動の都度、確認することができる。次に、不感地帯ができないように子局3が設置されるが、河川7の流域やその周囲の状況が変化した結果、不感地帯が生じたとしても、最下流の子局3dまで警報音が届かず、親局2が吹鳴情報を受信しないことにより、不感地帯の発生がすぐに分かるので、直ちに対応することができる。
【0042】
また、ケーブルや無線局の設置が親局2と、最下流の子局3との間だけになるため、コストダウンが可能であり、最低限の占用申請、無線局の開設申請で済む。
【0043】
さらに、子局3ごとにケーブルや無線局等の通信設備を設置する必要がないので、崖等、通信設備の設置が困難な場所においても、子局3を設置することが可能である。
【0044】
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0045】
例えば、子局3のうち、途中(中間)にある子局3bと、親局2とを通信可能にしてもよい。そのとき、子局3bは、自局に固有の子局IDを記憶しておき、子局IDを含む吹鳴情報を親局2に送信する。親局2は、子局3bから吹鳴情報を受信したときに、吹鳴情報に含まれる子局IDにより、子局3bまで警報音が達したことを確認することができる。なお、各子局3と、親局2とを通信可能にすれば、親局2が最下流の子局3dから吹鳴情報を受信できないときに、どこで途切れたかは分かるが、通信設備の設置コストがかかる。従って、子局3の数台おきに、通信設備を設置しやすい子局3と、親局2とを通信可能にすることが考えられる。
【符号の説明】
【0046】
1 放流警報中継システム
2 親局(第1警報装置)
3 子局(第2警報装置)
3b 子局(第2警報装置、中間警報装置)
3d 子局(第2警報装置、最下流警報装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダム又はその近傍に設置され、前記ダムの放流に際して注意を促すための警報音を発信する第1警報装置と、
前記第1警報装置から前記ダムの下流に向かって、上流の警報装置が発信する前記警報音の到達距離以内に順次設置され、上流から前記警報音を受信したときに、下流に前記警報音を発信する複数の第2警報装置と、
を備えることを特徴とする放流警報中継システム。
【請求項2】
請求項1に記載の放流警報中継システムであって、
前記第2警報装置のうち、最下流に設置される第2警報装置である最下流警報装置は、前記警報音を受信したときに、下流に前記警報音を発信するとともに、自装置が前記警報音を発信した旨を示す吹鳴情報を前記第1警報装置に送信し、
前記第1警報装置は、前記最下流警報装置から前記吹鳴情報を受信したときに、最下流で前記警報音を発信した旨を出力する
ことを特徴とする放流警報中継システム。
【請求項3】
請求項2に記載の放流警報中継システムであって、
前記第2警報装置のうち、前記第1警報装置と、前記最下流警報装置との中間に設置される第2警報装置である中間警報装置は、前記警報音を受信したときに、下流に前記警報音を発信するとともに、前記吹鳴情報を前記第1警報装置に送信し、
前記第1警報装置は、前記中間警報装置から前記吹鳴情報を受信したときに、中間で前記警報音を発信した旨を出力する
ことを特徴とする放流警報中継システム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の放流警報中継システムであって、
前記第2警報装置は、前記警報音を受信したか否かを、外部から受信した音のうち、所定の周波数帯域の音が所定レベル以上である状態が所定時間以上継続したか否かにより判断する
ことを特徴とする放流警報中継システム。
【請求項5】
請求項4に記載の放流警報中継システムであって、
前記第1警報装置は、前記警報音を発信してから、少なくとも前記所定時間に前記第2警報装置の台数を乗算した時間だけ、前記吹鳴情報の受信を待つ
ことを特徴とする放流警報中継システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−198618(P2012−198618A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60800(P2011−60800)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】