説明

放熱塗料及び放熱塗料を用いた放熱層構造並びにそれらの製造方法

【課題】人工鉱石粉末及び酸化アルミニウムを塗料の形態を有して硬化させることにより、例えばモータや発電機等の外壁面等に担持させることができる放熱塗料及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】
本発明に係る放熱塗料は、酸化アルミニウムと液状エポキシ樹脂との混合溶液からなる主剤と、珪素化合物、トルマリン、セラミックのいずれかを溶融させた後に、鉄、アルミニウム、カルシウムを添加し、その後に冷却し、さらに高温で再度溶融した後に冷却して得た鉱石塊を粉砕して得られる人工鉱石粉末と、上記主剤と上記人工鉱石粉末とに混合させてこれらを硬化させる硬化剤と、を有する。そして、モータ等の発熱しやすいケース外壁面に担持させる放熱塗料とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工鉱石粉末を含有する放熱塗料及び放熱塗料を用いた放熱層構造並びにそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、耐熱性に優れ、硬度の高い素材としてセラミックが広く用いられてきている。かかるセラミックは、酸化アルミニウム(アルミナ:AlO)等の原材料を混合し成形した後に焼結することによって製造されおり、成形時に多様な形態に形成することができることから幅広く利用されていた。
【0003】
代表的なセラミックであるアルミナの熱的物性は、耐熱性が約1600℃、熱伝導率が36.0(W/m/K)、熱拡散率が0.0119x10(m/s)(いずれも300Kでの値)である。
【0004】
ところが、上記従来のセラミックでは、耐熱性、耐磨耗性、加工容易性等の理由から幅広く利用されているものの、さらに耐熱性等の熱的物性を向上させた人工的な素材の開発が望まれていた。
【0005】
また、上記従来のセラミックでは、原材料を混合し成形した後に焼結しなければならず、製造に時間や労力を要していたため、製造容易な人工的な素材の開発が望まれていた。
【0006】
そこで、例えば特許文献1に記載のように、上記素材として人工鉱石を使用することが本願出願人より開示されている。この特許文献1には、珪素化合物、トルマリン、セラミックのいずれかを溶融させた後に、鉄、アルミニウム、カルシウムを添加し、その後に冷却し、その後、さらに高温で再度溶融した後に冷却することによって得られる人工鉱石が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3766385号公報
【発明の概要】
【0008】
かかる人工鉱石は、特性として熱伝導率が極めて高く、しかも、製造工程を一部変更することにより導電性を低下して極めて高い抵抗値を有する電気特性が発見された。ところが、これら上記した高い熱伝導率や電気特性を発揮する使い方としてはそのままの形態で使用できない。
【0009】
また、人工鉱石は、上記耐熱性、耐磨耗性などを備え、電気絶縁部材として機能も有するが、そのままでは粉末の形態であるため、これを粉末形態として混入しても、そのままの形態で対象物に塗布することが困難であった。
【0010】
そこで、本願発明は、人工鉱石及び酸化アルミニウムを塗料の形態として対象物に硬化させて担持させることができる放熱塗料及び放熱塗料を用いた放熱層構造並びにそれらの製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、人工鉱石粉末と、酸化アルミニウム及び液状エポキシ樹脂の混合溶液からなる主剤と、上記主剤と上記人工鉱石粉末とに混合させてこれらを硬化させる硬化剤とよりなり、しかも、人工鉱石粉末は、珪素化合物、トルマリン、セラミックのいずれかを熱溶融させた後に、鉄、アルミニウム、カルシウムを添加し、その後に冷却し、さらに高温で再度溶融した後に冷却して得た鉱石塊を粉砕したものであることを特徴とする放熱塗料である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、上記主剤は、60〜80重量%の酸化アルミニウムと、15〜25%重量%のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と、5〜15重量%のアルキルフェノールグリシジルエーテルと、を有することを特徴とする請求項1に記載の放熱塗料である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、上記硬化剤は、75〜85重量%の変性ポリアミドと15〜25重量%のトリエチレンテトラミンとからなることを特徴とする請求項1に記載の放熱塗料である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、上記人工鉱石粉末は、粒径が5〜30μmの粉体と150〜200メッシュの粉体との混合物であることを特徴とする請求項1に記載の放熱塗料である。
【0015】
請求項5に記載の発明は、上記主剤、硬化剤及び人工鉱石粉末を混合した粘調塗料を、耐熱ケースの表面に一定厚みの放熱層を形成すべく塗布すると共に、放熱層に所定幅及び所定深さを有する縦溝を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の放熱塗料による放熱層構造である。
【0016】
請求項6に記載の発明は、酸化アルミニウムと液状エポキシ樹脂とアルキルフェノールグリシジルエーテルとを混合して主剤を生成する工程と、次いで、上記主剤に硬化剤を混合する工程と、その後、珪素化合物、トルマリン、セラミックのいずれかを溶融させた後に、鉄、アルミニウム、カルシウムを添加し、その後に冷却し、さらに高温で再度溶融した後に冷却して得た鉱石塊を粉砕した人工鉱石粉末を混合する工程と、を有することを特徴とする放熱塗料の製造方法である。
【0017】
請求項7に記載の発明は、上記主剤は、60〜80重量%の酸化アルミニウムと、15〜25%重量%のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と、5〜15重量%のアルキルフェノールグリシジルエーテルと、を有することを特徴とする請求項6に記載の放熱塗料の製造方法である。
【0018】
請求項8に記載の発明は、上記硬化剤は、75〜85重量%の変性ポリアミドと15〜25重量%のトリエチレンテトラミンとからなることを特徴とする請求項6に記載の放熱塗料の製造方法である。
【0019】
請求項9に記載の発明は、上記人工鉱石粉末は、粒径が5〜30μmの粉体と150〜200メッシュの粉体との混合物であることを特徴とする請求項6に記載の放熱塗料の製造方法である。
【0020】
請求項10に記載の発明は、上記主剤、硬化剤及び人工鉱石粉末を混合した粘調塗料を、耐熱ケースの表面に一定厚みの放熱層を形成した後、放熱層に所定幅及び所定深さを有する縦溝を形成することを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の放熱層構造の形成方法である。
【発明の効果】
【0021】
この発明に係る放熱塗料は、硬化剤により人工鉱石粉末を充分な粘着性を有する放熱塗料として形成することができ、金属製やガラス製の耐熱ケースに塗布しやく、充分に耐熱ケースに粘着して密着状態となり、耐熱ケースからの放熱の熱伝導性を良好にする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る実施形態の放熱塗料をモータや発電機等のケース外壁面に塗布した状態を示す正面図である。
【図2】本発明に係る実施形態の放熱塗料による放熱層構造を発電機のケース外壁面に塗布した状態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る実施形態の放熱塗料を太陽電池モジュールの底面に塗布した状態を示す断面図である。
【図4】本発明に係る実施形態の放熱塗料をLEDランプユニットに塗布した状態を示す説明図である。
【図5】本発明に係る実施形態の放熱塗料をLED電球に塗布した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る放熱塗料は、酸化アルミニウム(AlO)と液状エポキシ樹脂との混合溶液からなる主剤と、珪素化合物、トルマリン、セラミックのいずれかを溶融させた後に、鉄、アルミニウム、カルシウムを添加し、その後に冷却し、さらに高温で再度溶融した後に冷却して得た鉱石塊を粉砕した人工鉱石粉末と、上記主剤と上記人工鉱石粉末とに混合させてこれらを硬化させる硬化剤と、を有するものである。
【0024】
主剤は、60〜80重量%の酸化アルミニウムと、15〜25%重量%のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と、5〜15重量%のアルキルフェノールグリシジルエーテルと、を有する。
【0025】
酸化アルミニウムは、耐熱性に優れ、硬度が高いことから、研磨剤や耐火材料として使用されている。また、半導体部品などの絶縁材料としても使用されている。本実施形態では、酸化アルミニウムの抵抗率が高い性質を生かして、太陽電池モジュールの裏面側に配設する絶縁材料として適用したりする。
【0026】
酸化アルミニウムが60重量%未満であると、絶縁材料として使用する場合に抵抗率を高くすることができない。また、酸化アルミニウムが80重量%を越えると、混合するエポキシ樹脂の量が減るので、対象物への酸化アルミニウムの接着性が低下してしまう。好ましくは65重量%〜75重量%である。
【0027】
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂は、塗料・土木・接着・電気絶縁材料及び反応中間体等幅広い用途に使用される熱硬化性樹脂である。
【0028】
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂が15重量%未満であると、接着性を有するエポキシ樹脂の量が少なく、酸化アルミニウムを対象物に接着させにくくなる。また、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂が25重量%を越えると、エポキシ樹脂の粘性が高くなってしまう。
【0029】
アルキルフェノールグリシジルエーテルは、エポキシ樹脂用反応性希釈剤として使用され、上記ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と混合する量によりビスフェノールA型液状エポキシ樹脂の粘性を調整することができる。
【0030】
アルキルフェノールグリシジルエーテルが15重量%未満であると、エポキシ樹脂の粘性を低下させることができず、反応性希釈剤としての機能を果たすことができない。また、アルキルフェノールグリシジルエーテルが25重量%を越えると、エポキシ樹脂の所定の粘性を得ることができない。
【0031】
そして、本実施形態では、酸化アルミニウムの粉末に液状エポキシ樹脂を混合することにより、エポキシ樹脂の接着性を利用して酸化アルミニウムを対象物に接着させるようにしている。
【0032】
硬化剤は、上記酸化アルミニウムと共にエポキシ樹脂を硬化させるものである。硬化剤としては、例えば、東特塗料株式会社製の硬化剤M550Bを使用することができる。この硬化剤は、75〜85重量%の変性ポリアミドアミンと15〜25重量%のトリエチレンテトラミンとを含有する。
【0033】
粉末にする人工鉱石は、本願出願人による特許第3766385号に記載のものを使用してもよい。すなわち、人工鉱石は、珪素化合物、トルマリン、セラミックのいずれかを溶融させた後に、鉄、アルミニウム、カルシウムを添加し、その後に冷却し、その後、さらに高温で再度溶融した後に冷却することによって人工鉱石の鉱石塊が得られる。
【0034】
このようにして、得られた人工鉱石は、例えば、内燃機関のエンジンケーシングを製造した場合やエンジンケーシングの内外表面に人工鉱石を塗布した場合には、人工鉱石の吸熱作用によって、エンジン内部の温度上昇を防止することができる。
【0035】
また、本発明に係る人工鉱石粉末を用いてエンジン内部で発生した排気ガスを外部に排出するための排気筒を製造した場合や排気筒の内外表面に人工鉱石を塗布した場合には、人工鉱石の分子分解作用によって、有害物質の排出を防止することができる効果を有する。
【0036】
本実施形態における人工鉱石粉末は、粒径が5〜30μm又は150〜200メッシュである。粒径が5μm未満又は200メッシュを越えると、粒径が微細になり軽量になって人工鉱石粉末が凝集した状態で混合液中において浮遊しやすく、混合液中で不均一となり人工鉱石粉末が有する熱吸収性を発揮させることができない。また、粒径が30μmを越えて150未満メッシュであると、人工鉱石の粒径が大きくエポキシ樹脂になじみにくくなってしまう。
【0037】
また、人工鉱石粉末は、粒径が5〜30μmの細かい粉体と、粒径が150〜200メッシュの粗い粉体とを混合している。粒径が5〜30μmの細かい粉体により、より非導電性にすることができる。また、粒径が150〜200メッシュの粗い粉体により、より熱伝導性を良好にすることができる。なお、粒径が5〜30μmの細かい粉体のみ、又は粒径が150〜200メッシュの粗い粉体のみを上記主剤と硬化剤とに混合することもできる。
【0038】
以上のように、本実施形態では、上記方法で生成した人工鉱石を粉砕して人工鉱石粉末すると共に、粉末の酸化アルミニウムと硬化剤との混合液に添加する。そして、この混合液を対象物に塗布する。さらに、この後、略24時間の自然乾燥により、放熱塗料を対象物に塗布する。これにより、本実施形態における酸化アルミニウム及び人工鉱石粉末を含有する放熱塗料を容易に対象物に塗布することができるようになる。
【0039】
耐熱ケースに放熱塗料を塗布する厚みは、少なくとも200μm以上であり、好ましくは500μm以上である。電気自動車の発電機に塗布する場合には、厚みが略5cmの放熱塗料を塗布している。
【0040】
また、放熱塗料により放熱層構造を形成した後、放熱塗料が硬化する前に、ダイヤモンドカッターにより縦溝を形成してもよい。この縦溝を形成することにより、空気中に触れる面積が増え、対象物から熱拡散をより良好にすることができる。縦溝の幅及び深さは限定されない。
【0041】
以下に、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0042】
(実施例1)
略真空状態下で1650℃〜1680℃に加熱した真空溶融炉に80重量%の粉末状の珪素を投入し、その後、5重量%の粉末状の鉄と5重量%の粉末状のアルミニウムと5重量%のカルシウムと、5質量%のその他混合物(例えば、酸化アルミニウム)と、を3〜5分間隔で順に投入するとともに撹拌混合し、その後、真空溶融炉から溶融物を取出し、常温中で自然冷却することによって塊状の人工鉱石を生成した。
【0043】
次に、上記塊状の人工鉱石を、略真空状態下で1750℃〜1800℃に加熱した真空溶融炉で再度溶融し、その後、溶融物を取出し、常温中で自然冷却することによって塊状の人工鉱石を生成した。
【0044】
次に、上記塊状の人工鉱石を、略真空状態下で2000℃〜2050℃に加熱した真空溶融炉で再度溶融し、その後、溶融物を取出し、常温中で自然冷却することによって塊状の人工鉱石を生成した。
【0045】
このように、溶融後に冷却し、さらに高温で溶融するといったように、徐々に高温下で溶融を繰り返し行って人工鉱石の鉱石塊を得た。
【0046】
そして、人工鉱石の鉱石塊を、粉砕機により粉砕して篩器にかけて、粒径が5〜30μmの粉体、又は粒径が150〜200メッシュの粉体とした。人工鉱石の鉱石塊では所定の水分を有するため通電性を有するが、人工鉱石の粉体では、人工鉱石の鉱石塊を粉砕機により粉砕し、粉砕した粉体同士に摩擦をかけながら打撃することにより、熱が発生して水分が蒸発し、含水率3%以下になるため通電性が無くなる。
【0047】
この後、酸化アルミニウムと液状エポキシ樹脂とアルキルフェノールグリシジルエーテルとを混合して略100gの主剤を生成した。主剤は、60〜80重量%の酸化アルミニウムと、15〜25%重量%のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と、5〜15重量%のアルキルフェノールグリシジルエーテルとにより生成した。
【0048】
次いで、上記主剤に、東特塗料株式会社製の硬化剤M550Bを略5.6g混合した。この硬化剤には、75〜85重量%の変性ポリアミドアミンと15〜25重量%のトリエチレンテトラミンとを有する。
【0049】
この後、粒径が5〜30μmの人工鉱石粉末を略30g、粒径が150〜200メッシュの人工鉱石粉末を略130g混合した。
【0050】
以上のような工程を経て、本実施例における放熱塗料11を得ることができた。そして、放熱塗料11を電気自動車A内の発電機13やモータ14等の発熱しやすい箇所に塗布して、この後、24時間自然乾燥させた。
【0051】
例えば、図1に示すように、電気自動車Aは、バッテリ12、発電機13、モータ14(直流モータ又は交流モータ)及びギヤボックス15を備えている。そのモータ14、発電機13、ギヤボックス15などの発熱しやすいケース外壁面に本実施例における放熱塗料11を塗布した。なお、図1中、16は差動装置(ディファレンシャル)、17は車輪、23はシャフト、24はAC・V電源コード(例えばAC200V電源コード)、25はDC・V(DC・A)電源コードである。
【0052】
このように、放熱塗料11を、バッテリ12、発電機13、モータ14及びギヤボックス15等の発熱しやすいケース外壁面に塗布することによって容易に担持させることができた。そして、人工鉱石の熱的物性により、モータ14等で発生する熱を人工鉱石が吸収して外方に拡散することで、モータ14等の温度の上下をコントロールすることができた。
【0053】
モータ14等では、ケース外壁面はその構造上凹凸面を多く有するため、そのような凹凸面であっても、冷却用のシート剤を貼り付けることに比べて、放熱塗料11を塗布するだけで容易に配設することができた。また、放熱塗料11をモータ14のケース外壁面に塗布することで絶縁性を有するため、静電気などの発生を防止することができる。
【0054】
従来、発電機13の耐熱ケース31は鉄を鋳造して形成していたが、本実施例では、図2に示すように、鉄より軽量のアルミニウムを鋳造して形成した。また、回転シャフト32の軸受36の外壁部37は銅で形成した。アルミニウムで形成した耐熱ケース31及び銅で形成した外壁部37は熱伝導性を優れている。なお、図中、33は回転ロータ、34はステータ、35はプーリである。
【0055】
さらに、アルミニウムで形成した耐熱ケース31の表面に厚みが5cm程度の放熱塗料11を塗布して放熱層を形成すると共に、その放熱塗料11による放熱層構造Mに所定幅及び深さを有する縦溝40を形成した。この縦溝40は、放熱層構造Mが空気に接触する面積を大きくするためである。
【0056】
このように構成することにより、上記耐熱ケース31及び外壁部37の良好な熱伝導性と、耐熱ケース31の外壁に塗布した放熱塗料11からなる放熱層構造Mにより上記発電機13で発生する熱を外方に拡散することができた。また、縦溝40により、空気との接触面積が増えるので、より放熱性が良くなった。
【0057】
さらに、モータ14等に隣接して配設される冷却ファン22に羽根の表面に担持させることで、羽根の表面を通過する気体の温度を下げることができ(空気の場合には約3℃低減させることが確認された。)、冷却ファン22による冷却効率を増大することができた。冷却ファン22もファン本体が凹凸面を有するが、その凹凸面に対しても放熱塗料11を容易に塗布することができた。
【0058】
ギヤボックス15については、放熱塗料11を耐熱ケース31の外壁に塗布することにより、走行時に流れる風を受けて冷却することが可能となった。また、その他のバッテリ12、発電機13、モータ14についても同様である。
【0059】
また、放熱塗料11は防水性を有すると共に電気を通さないので、自動車などに塗布すれば、水の中でも移動することができる。
【0060】
(実施例2)
本実施例では、上記実施例1と同様の製造方法により得られた放熱塗料11を太陽電池モジュール18の裏面電極21の裏面側に塗布して自然乾燥させた。
【0061】
図3に示すように、一般家庭の屋根に設置される屋根一体型の太陽電池モジュール18は、半導体層20を表面電極19と裏面電極21とで挟み込むように構成されている。表面電極19は太陽光を入射させるため透明な別の絶縁材料を配設しているが、裏面電極21は屋根下にあり水滴や静電気等から保護する必要がある。
【0062】
そこで、本実施例では、太陽電池モジュール18を屋根一面に設置すると共に、太陽電池モジュール18の裏面電極21の裏面側に放熱塗料11を塗布して放熱層構造Mを屋根一面に形成した。このように放熱層構造Mによって、太陽電池モジュール18をその周りに発生する水滴や静電気から保護することができ、また、太陽電池モジュール18の電気的特性を安定にすることができた。すなわち、静電気などによって電気的特性が不安定になることが解消できた。
【0063】
また、酸化アルミニウムを含有するので、太陽電池モジュール18の絶縁機能を高めると共に、酸化アルミニウムは、防水性、耐熱性及び硬質性の性質を有して、屋根瓦の代わりの保護部材としても使用することができた。すなわち、酸化アルミニウムを含有する放熱層構造Mが屋根一面を覆うような層構造とすることにより、屋根瓦の代わりとなる。
【0064】
しかも、太陽電池モジュール18の裏面側に塗布した放熱塗料11は、人工鉱石を含有しているので、絶縁材料として機能することができると共に、太陽電池モジュール18の裏面側に回り込む風を受けて、太陽電池モジュール18を冷却させることもできた。
【0065】
また、冬場においては、室内の空気は暖房で温められるので、その温められた空気が屋根裏に導きかれる。そして、屋根裏の熱が、太陽電池モジュール18に塗布された放熱層構造Mを通して、太陽電池モジュール18上方の室外に拡散する。これにより、太陽電池モジュール18上に降り積もった雪が拡散した熱を受けて融ける。このようにして、太陽電池モジュール18自体にヒータ等を設置することなく、太陽電池モジュール18上に降り積もった雪を融かすことができる。
【0066】
さらに、夏場においては、室内の空気は冷房で冷やされるので、その冷やされた空気が、太陽電池モジュール18に塗布された放熱塗料11による放熱層構造Mを通して、屋根上方の室外に拡散する。これにより、太陽電池モジュール18上の空気を冷やす効果がある。これにより、家周辺の空気が冷やされて、室内の冷房の使用温度や使用頻度を下げることができ、電気代やエネルギーの節約が可能となる。
【0067】
さらに、屋内の壁面に放熱塗料11を塗布して放熱層構造Mを形成すると、室内の冷房使用時に放熱層構造Mが冷たい空気を蓄熱することにより冷房を使用せずに済む。また、室内の暖房使用時に放熱層構造Mが温かい空気を蓄熱することにより暖房を使用せずに済む。
【0068】
さらに、上記太陽電池モジュール18に限られず、放熱塗料11を携帯電話、テレビ、ラジオ、コンピュータ、電子レンジ等の電気製品の筐体(外装部材)の表面に担持させることで、その絶縁性を生かして静電気の帯電を防止することができるとともに、電磁波の侵入や漏出を防止することができ、さらには、雑音(ノイズ)を除去することができた。
【0069】
(実施例3)
さらに、本実施例における放熱塗料11は、LED電球B(発光ダイオード)やハロゲンランプなどの点灯時の発熱を放熱する放熱部材26として使用することができた。
【0070】
すなわち、図4に示すように、上記製法により製造した放熱塗料11を硬化させることにより、直径が略15cmで厚みが略10cmの略円筒形状を有する放熱部材26を形成し、この放熱部材26の内部に24WのLED電球ユニット30を3セット(計72W相当)収納した。また、放熱塗料11で形成した放熱部材26の表面に所定幅及び深さを有する縦溝40を形成した。図中、28はリード線、29はLED光源部である。
【0071】
そして、LED電球ユニット30を点灯するとその回路部27から発熱するが、放熱塗料11で形成した略円筒形状を有する放熱部材26により、その熱を外方に拡散させることができた。また、縦溝46を形成することにより、熱の拡散をより良くすることができた。さらに、外部から冷風を放熱部材26に当てることにより、LED電球ユニット30が冷却できる冷却効果も確認できた。これらの効果は、略円筒形状を有する放熱部材26が熱伝導性に優れていることを証明するものである。
【0072】
また、本実施例における放熱塗料11は、図5に示すように、通常のLED電球Cの放熱部材26にも適用することができる。通常のLED電球Cの放熱部材26は、円筒形状を有する放熱体26aの外周面に放射状に突設した放熱フィン26bを有する。本実施例では、図5(b)に示すように、通常の放熱部材26の形状と同様な放熱部材26を、放熱塗料11を硬化させて形成することにより、従来のアルミニウムによる放熱部材26の代用品として利用することができる。さらに、上記家庭用のLED電球Cに限られず、放熱塗料11は防水性を有するので、潜水艇の防水用のLEDランプにも適用することができる。
【0073】
さらに、本実施例における放熱塗料11を、熱に弱い半導体ICを搭載するIC基板の放熱板として使用することもできる。具体的には、IC基板において、半導体ICを搭載する搭載面とは反対側の面の一部又は全体に、放熱塗料11を塗布して放熱塗料11による放熱層を形成する。これにより、半導体ICが駆動時に発生する熱を、IC基板の放熱層を通して外方に拡散させることができる。また、放熱塗料11で形成した放熱層を、大電流を流すトランジスタの放熱用部品であるヒートシンクの代用品としても使用することができる。
【0074】
なお、上記ではモータ14を備えた電気自動車A、太陽電池モジュール18及びLED電球について述べたが、本実施例における放熱塗料11は、これに限られず、家庭の発電、工場、事務所、船、飛行機などの発熱しやすい箇所又は絶縁材料を必要とする箇所に塗布することができる。
【符号の説明】
【0075】
A 電気自動車
B LED電球
11 放熱塗料
12 バッテリ
13 発電機
14 モータ
15 ギヤボックス
16 ディファレンシャル
17 車輪
18 太陽電池モジュール
19 表面電極
20 半導体層
21 裏面電極
22 冷却ファン
23 シャフト
24 AC・V電源コード
25 DC・V(DC・A)電源コード
26 放熱部材
26a 放熱体
26b 放熱フィン
27 回路部
28 口金
29 LED光源部
30 LED電球ユニット
31 ケース
32 回転シャフト
33 回転ロータ
34 ステータ
35 プーリ
36 軸受
37 外壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工鉱石粉末と、
酸化アルミニウム及び液状エポキシ樹脂の混合溶液からなる主剤と、
上記主剤と上記人工鉱石粉末とに混合させてこれらを硬化させる硬化剤とよりなり、
しかも、人工鉱石粉末は、珪素化合物、トルマリン、セラミックのいずれかを熱溶融させた後に、鉄、アルミニウム、カルシウムを添加し、その後に冷却し、さらに高温で再度溶融した後に冷却して得た鉱石塊を粉砕したものであることを特徴とする放熱塗料。
【請求項2】
上記主剤は、60〜80重量%の酸化アルミニウムと、15〜25%重量%のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と、5〜15重量%のアルキルフェノールグリシジルエーテルと、を有することを特徴とする請求項1に記載の放熱塗料。
【請求項3】
上記硬化剤は、75〜85重量%の変性ポリアミドと15〜25重量%のトリエチレンテトラミンとからなることを特徴とする請求項1に記載の放熱塗料。
【請求項4】
上記人工鉱石粉末は、粒径が5〜30μmの粉体と150〜200メッシュの粉体との混合物であることを特徴とする請求項1に記載の放熱塗料。
【請求項5】
上記主剤、硬化剤及び人工鉱石粉末を混合した粘調塗料を、耐熱ケースの表面に一定厚みの放熱層を形成すべく塗布すると共に、放熱層に所定幅及び所定深さを有する縦溝を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の放熱塗料による放熱層構造。
【請求項6】
酸化アルミニウムと液状エポキシ樹脂とアルキルフェノールグリシジルエーテルとを混合して主剤を生成する工程と、
次いで、上記主剤に硬化剤を混合する工程と、
その後、珪素化合物、トルマリン、セラミックのいずれかを溶融させた後に、鉄、アルミニウム、カルシウムを添加し、その後に冷却し、さらに高温で再度溶融した後に冷却して得た鉱石塊を粉砕した人工鉱石粉末を混合する工程と、を有することを特徴とする放熱塗料の製造方法。
【請求項7】
上記主剤は、60〜80重量%の酸化アルミニウムと、15〜25%重量%のビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と、5〜15重量%のアルキルフェノールグリシジルエーテルと、を有することを特徴とする請求項6に記載の放熱塗料の製造方法。
【請求項8】
上記硬化剤は、75〜85重量%の変性ポリアミドと15〜25重量%のトリエチレンテトラミンとからなることを特徴とする請求項6に記載の放熱塗料の製造方法。
【請求項9】
上記人工鉱石粉末は、粒径が5〜30μmの粉体と150〜200メッシュの粉体との混合物であることを特徴とする請求項6に記載の放熱塗料の製造方法。
【請求項10】
上記主剤、硬化剤及び人工鉱石粉末を混合した粘調塗料を、耐熱ケースの表面に一定厚みの放熱層を形成した後、放熱層に所定幅及び所定深さを有する縦溝を形成することを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の放熱層構造の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−236344(P2011−236344A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109566(P2010−109566)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(501131117)
【Fターム(参考)】