説明

放送受信装置および放送受信方法

【課題】同一の放送内容を含むデジタル放送とアナログ放送とを同時に受信してデジタル放送を出力し、当該デジタル放送の受信状態が悪化している期間に前記アナログ放送を出力する放送受信装置で、デジタル放送またはアナログ放送のいずれか一方の放送から他方の放送へ出力を切り替えたことによる聴感上の違和感をさらに低減すること。
【解決手段】アナログ放送で使用されているアナログ放送信号の受信強度を検知し、デジタル放送またはアナログ放送のいずれか一方の放送から他方の放送へ出力を切り替える場合、アナログ放送信号の受信強度に基づいて切替え前の放送の音響特性を切替え後の放送用の音響特性へ近付ける制御を行うように放送受信装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送とアナログ放送とを同時に受信する放送受信装置および放送受信方法に関するものであり、特に、デジタル放送またはアナログ放送のいずれか一方の放送から他方の放送へ出力を切り替えたことによる聴感上の違和感をさらに低減可能な放送受信装置および放送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オーディオ放送の一方式として、FM放送やAM放送で使用されている周波数帯域を用い、同一の放送内容をデジタル放送とアナログ放送とで同時に放送するIBOC(In Band On Channel)が知られている。
【0003】
ところで、デジタル放送で使用されるデジタル放送信号は、アナログ放送で使用されるアナログ放送信号よりも広音域で放送内容を再現できるが、受信電界強度が所定の電界強度を下回った場合、放送内容を正常に再現できなくなる。
【0004】
一方、アナログ放送信号は、デジタル放送信号ほど広音域で放送内容を再現することはできないが、デジタル放送信号では放送内容を再現できない程度の受信電界強度であっても放送プログラムを再現することができる。
【0005】
このように、IBOCでは、デジタル放送信号により放送内容を再現できなくなった場合であっても、アナログ放送信号により放送内容を再現することができる。このため、IBOCによるオーディオ放送を受信する放送受信装置は、デジタル放送を出力中に、デジタル放送の受信状態が悪化した場合に、アナログ放送へ出力を切り替え、デジタル放送の受信状態が回復した場合に、デジタル放送へ出力を切り替えていた。
【0006】
ただし、IBOCによるオーディオ放送を受信する放送受信装置は、デジタル放送またはアナログ放送のいずれか一方の放送から他方の放送へ出力を切り替えた場合、切り替えの前後で出力する音域に差が生じるためユーザへ聴感上の違和感を与えることがある。
【0007】
このため、かかる聴感上の違和感を低減する放送受信装置が考案されている。たとえば、特許文献1には、出力中のデジタル放送の受信状態が劣化し始め、近い将来アナログ放送へ出力が切り替えられると判断した場合、出力中のデジタル放送の音響特性をアナログ放送用の音響特性へ徐々に近付ける放送受信装置が記載されている。
【0008】
具体的には、特許文献1に記載の放送受信装置は、デジタル放送の受信状態が劣化する程度までデジタル放送信号の受信電界強度が低下した場合に、近い将来デジタル放送からアナログ放送へ出力が切り替えられると判断する。
【0009】
このように、特許文献1に記載の放送受信装置は、デジタル放送からアナログ放送へ出力を切り替える前に、音響特性をアナログ放送用の音響特性へ近付けておくことでデジタル放送からアナログ放送への出力の切り替えによる聴感上の違和感を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4101719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の放送受信装置は、音響特性の変更に十分な時間をかけることができないため、デジタル放送またはアナログ放送のいずれか一方の放送から他方の放送へ出力を切り替えたことによる聴感上の違和感を十分に低減することができないという問題があった。
【0012】
具体的には、デジタル放送の受信状態は、デジタル放送信号の受信電界強度に追従して線形的に劣化するものではなく、受信されたデジタル放送信号のC/N比(Carrier to Noise ratio)が所要C/N比以下となった場合に、急激に劣化することが知られている。
【0013】
このため、特許文献1に記載の放送受信装置では、デジタル放送の受信状態が劣化し始めてからアナログ放送へ出力が切り替えられるまでの非常に短い時間内で音響特性をアナログ放送用の音響特性へ急激に近付けなければならない。
【0014】
したがって、特許文献1に記載の放送受信装置は、デジタル放送からアナログ放送へ出力を切り替えたことによる聴感上の違和感を十分に低減することができなかった。
【0015】
かかる問題は、アナログ放送からデジタル放送へ出力を切り替える場合にも同様に生じる問題である。このため、特許文献1に記載の放送受信装置では、アナログ放送からデジタル放送へ出力を切り替える場合にも聴感上の違和感を十分に低減することができない恐れがある。
【0016】
これらのことから、デジタル放送またはアナログ放送のいずれか一方の放送から他方の放送へ出力を切り替えたことによる聴感上の違和感をさらに低減可能な放送受信装置および放送受信方法をいかにして実現するかが大きな課題となっている。
【0017】
本発明は、上述した従来技術における問題点を解決するためになされたものであり、デジタル放送またはアナログ放送のいずれか一方の放送から他方の放送へ出力を切り替えたことによる聴感上の違和感をさらに低減可能な放送受信装置および放送受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る放送受信装置は、同一の放送内容を含むデジタル放送とアナログ放送とを同時に受信して前記デジタル放送を出力し、当該デジタル放送の受信状態が悪化している期間に前記アナログ放送を出力する放送受信装置であって、前記アナログ放送で使用されているアナログ放送信号の受信強度を検知する検知手段と、前記デジタル放送または前記アナログ放送のいずれか一方の放送から他方の放送へ出力を切り替える場合、前記検知手段によって検知された前記受信強度に基づいて切替え前の放送の音響特性を切替え後の放送用の音響特性へ近付ける制御を行う音響制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、デジタル放送またはアナログ放送のいずれか一方の放送から他方の放送へ出力を切り替える場合、デジタル放送信号の受信状態の変化に先立って変化するアナログ放送信号の受信強度に基づいて切替え前の放送の音響特性を切替え後の放送用の音響特性へ近付ける制御を行うため、デジタル放送またはアナログ放送のいずれか一方の放送から他方の放送へ出力を切り替えたことによる聴感上の違和感をさらに低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係る放送受信手法および従来における放送受信手法の概要を示す図である。
【図2】図2は、本実施例に係る放送受信装置を示すブロック図である。
【図3】図3は、本実施例に係る放送受信装置が備える音響制御テーブルの一例を示す図である。
【図4】図4は、本実施例に係る放送受信装置による出力切替動作を示す図である。
【図5】図5は、本実施例に係る放送受信装置による出力切替動作を示す図である。
【図6】図6は、本実施例に係る放送受信装置で実行される処理を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本実施例に係る放送受信装置がSレベルの変化に追従させてデジタルF特を変更する場合の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る放送受信装置および放送受信方法の実施例を詳細に説明する。まず、実施例の詳細な説明に先立って本発明に係る放送受信手法の概要について従来における放送受信手法と対比して説明する。
【0022】
以下では、IBOC(In Band On Channel)方式で放送される同一の放送内容を含むデジタル放送とアナログ放送とを同時に受信してデジタル放送を出力し、デジタル放送の受信状態が悪化している期間にアナログ放送を出力する受信手法について説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る放送受信手法および従来における放送受信手法の概要を示す図である。ここでは、図1(A)に示すように、デジタル放送の出力中に時刻t4でデジタル放送の受信状態(デジタル放送信号のC/N比:Carrier to Noise ratio)が低下し始め、時刻t5でアナログ放送へ出力を切り替える場合について説明する。
【0024】
かかる場合、従来における放送受信手法では、図1(B)に示すように、時刻t4で出力しているデジタル放送の音響特性を示すデジタル放送信号の周波数特性(以下、「デジタルF特」という)を低下させる処理を開始する。
【0025】
そして、従来における放送受信手法では、時刻t4から時刻t5までの間に、デジタルF特をアナログ放送の音響特性を示すアナログ放送信号の周波数特性(以下、「アナログF特」という)まで低下させた後、アナログ放送へ出力を切り替える。
【0026】
このように、従来の放送受信手法では、デジタル放送の受信状態が劣化し始めてからアナログ放送へ出力を切り替えるまでに、デジタルF特をアナログF特まで低下させておくことでアナログ放送へ出力を切り替えた際の聴感上の違和感を低減している。
【0027】
しかしながら、デジタル放送は、デジタル放送信号のC/N比が所要C/N比以下になると受信状態が劣化し始め、その後、非常に短い時間で受信状態が急激に悪化する。このため、従来における放送受信手法では、時刻t4〜t5の非常に短い時間内でデジタルF特をアナログF特まで低下させる必要がある。
【0028】
したがって、従来における放送受信手法では、デジタルF特をアナログF特まで十分な時間をかけて低下させることができないため、アナログ放送へ出力を切り替えた際の聴感上の違和感を十分に低減することができない。
【0029】
そこで、本発明に係る放送受信手法では、従来の放送受信手法よりも早くデジタルF特をアナログF特へ近付ける処理を開始することで、アナログ放送へ切り替えた際の聴感上の違和感をさらに低減する。
【0030】
具体的には、本発明に係る放送受信手法では、デジタル放送の出力中に、アナログ放送の受信状態を示すアナログ放送信号の受信電界強度(以下、「Sレベル」という)を監視する。かかるSレベルは、図1(C)に示すように、デジタル放送の受信状態が劣化し始める時刻t4よりも前に低下を開始する値である。
【0031】
このため、本発明に係る放送受信手法では、時刻t1でSレベルが所定の開始閾値THa以下となった場合に、近い将来デジタル放送の受信状態が劣化し始めると判断し、図1(D)に示すように、時刻t1からデジタルF特を低下させる処理を開始する。
【0032】
続いて、本発明に係る放送受信手法では、時刻t1〜t5の間にデジタルF特をアナログF特へ漸次的に近付ける処理を行い、図1(E)に示すように、時刻t5でデジタル放送からアナログ放送へ出力を切り替える。
【0033】
このように、本発明に係る放送受信手法では、時刻t1〜t5という従来における放送受信手法よりも長い時間をかけてデジタルF特をアナログF特へ近付けることができる。したがって、本発明に係る放送受信手法によれば、アナログ放送へ出力を切り替えた際の聴感上の違和感を従来における放送受信手法よりもさらに低減することができる。
【0034】
また、本発明に係る放送受信手法では、図1(C)に一点鎖線で示すように、時刻t1でデジタルF特をアナログF特へ近付ける処理を開始した後、時刻t2からSレベルが上昇した場合、Sレベルの上昇に追従してデジタルF特を上昇させる処理を行う。
【0035】
すなわち、本発明に係る放送受信手法では、Sレベルが開始閾値THa以下となっても、デジタル放送の受信状態が劣化し始める値THbまで低下する前に開始閾値THaよりも高くなった場合、図1(D)に一点鎖線で示すように、デジタルF特をデジタル放送用の周波数特性(F特)まで上昇させる。
【0036】
このため、本発明に係る放送受信手法によれば、デジタルF特をアナログF特へ近付ける処理を開始した後であっても、近い将来アナログ放送へ出力が切り替えられる可能性が低くなった場合には、不必要にデジタルF特を低下させることがない。
【0037】
ところで、本発明に係る放送受信手法では、デジタル放送の出力中に、Sレベルが開始閾値THaよりもさらに低い所定の切替閾値THc以下となった場合、漸次的にアナログ放送へ出力を切り替えるブレンド処理を行う。
【0038】
そして、本発明に係る放送受信手法では、かかるブレンド処理を行う期間内に、出力中のアナログ放送のアナログF特とデジタル放送のデジタルF特との合成音響特性を示す周波数特性(合成F特)がアナログF特と等しくなるようにデジタルF特を制御する。
【0039】
一方、本発明に係る放送受信手法では、アナログ放送の出力中に、Sレベルが所定の切替閾値THcよりも高くなった場合、漸次的にデジタル放送へ出力を切り替えるブレンド処理を行う。
【0040】
そして、本発明に係る放送受信手法では、かかるブレンド処理を行う期間、デジタルF特を維持し、ブレンド期間の終了後にSレベルの上昇に追従してデジタルF特を上昇させることができる。なお、ブレンド処理については、図4および図5を用いて後述する。
【0041】
また、本発明に係る放送受信手法では、Sレベルの変化に対するデジタルF特の追従性をSレベルが上昇中の場合よりも下降中の場合を高くしている。このため、本発明に係る放送受信手法によれば、Sレベルが開始閾値THa以下となった直後にデジタルF特の低下を開始することができる。なお、デジタルF特の追従性については、図7を用いて後述する。
【0042】
また、本発明に係る放送受信手法では、アナログ放送からデジタル放送へ出力を切り替える場合も同様に、アナログ放送信号のSレベルに基づいてアナログF特をデジタルF特へ近付ける処理を行う。
【0043】
すなわち、本発明に係る放送受信手法では、アナログ放送の出力中に、アナログ放送信号のSレベルが上昇した場合、アナログF特をデジタルF特へ近付ける処理を行う。このため、本発明に係る放送受信手法によれば、デジタル放送の受信状態が回復を開始する前にアナログF特をデジタルF特へ近付ける処理を開始することができる。
【0044】
したがって、本発明に係る放送受信手法によれば、デジタル放送へ出力を切り替えるまでに十分な時間をかけてアナログF特をデジタルF特へ近付けることで出力を切り替えたことによる聴感上の違和感をさらに低減できる。
【0045】
上述したように、本発明に係る放送受信手法では、デジタル放送またはアナログ放送のいずれか一方の放送から他方の放送へ出力を切り替える場合、アナログ放送信号のSレベルに基づいて切替え前の放送の音響特性を切替え後の放送用の音響特性へ近付ける。
【0046】
そして、アナログのSレベルは、デジタル放送の受信状態の変化に先立って変化するものである。このため、本発明に係る放送受信手法では、従来における放送受信手法よりも前に、切替え前の放送の音響特性を切替え後の放送用の音響特性へ近付ける制御を開始することができる。
【0047】
したがって、本発明に係る放送受信手法によれば、従来における放送受信手法よりも長い時間をかけて切替え前の放送の音響特性を切替え後の放送用の音響特性へ近付けることができるため出力の切り替えによる聴感上の違和感をさらに低減することができる。
【0048】
以下では、図2〜図7を用いて本発明に係る放送受信手法を適用した放送受信装置および放送受信方法についての実施例を説明する。なお、本実施例では、IBOC(In Band On Channel)方式を採用して放送されている放送内容が同一のデジタル放送とアナログ放送とを同時に受信してデジタル放送を出力し、デジタル放送の受信状態が悪化している期間にアナログ放送を出力する放送受信装置について示すこととする。
【実施例】
【0049】
図2は、本実施例に係る放送受信装置1を示すブロック図である。なお、同図には、本実施例に係る放送受信装置1の特徴を説明するために必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0050】
図2に示すように、本実施例に係る放送受信装置1は、チューナ2と、アナログ/デジタル変換器(以下、「ADC」という)3と、バンドパスフィルタ(以下、「BPF」という)4と、アナログ復調部5と、ローパスフィルタ(以下、「LPF」という)6とを備えている。
【0051】
さらに、放送受信装置1は、ブレンド部7と、周波数特性変更部(以下、「F特変更部」という)8と、デジタル/アナログ変換器(以下、「DAC」という)9と、受信電界強度検知部(以下、「Sレベル検知部」という)10と、デジタル復調部11とを備えている。
【0052】
チューナ2は、IBOC方式により所定の周波数帯域内で放送されている放送内容が同一のデジタル放送およびアナログ放送をアンテナ20によって受信する処理部である。具体的には、チューナ2は、図示しない操作部によって選択された放送チャンネルの周波数帯域で放送されている放送信号をアンテナ20によって受信する。
【0053】
そして、チューナ20は、受信した放送信号からデジタル放送で使用されているデジタル放送信号と、アナログ放送で使用されているアナログ放送信号とを取得し、デジタル放送信号およびアナログ放送信号の周波数を中間周波数へ変換してADC3へ出力する。
【0054】
ADC3は、チューナ2から入力されるアナログのデジタル放送信号およびアナログ放送信号をデジタルのデジタル放送信号およびアナログ放送信号へ変換する処理部である。そして、ADC3は、変換後のデジタル放送信号をデジタル復調部11へ出力し、変換後のアナログ放送信号をBPF4へ出力する。
【0055】
デジタル復調部11は、ADC3から入力されるデジタル放送信号を復調する処理部である。かかるデジタル復調部11は、OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)変調されているデジタル放送信号をOFDM復調し、復調後のデジタル放送信号をブレンド部7へ出力する。
【0056】
また、デジタル復調部11は、OFDM復調したデジタル放送信号の受信状態を示すC/N比(Carrier to Noise ratio)を算出し、算出結果をブレンド部7およびF特変更部8へ出力する。
【0057】
BPF4は、ADC3から入力されるアナログ放送信号からアナログ放送で使用されていない高周波成分および低周波成分を除去してSレベル検知部10およびアナログ復調部5へ出力する処理部である。
【0058】
Sレベル検知部10は、BPF4から入力されるアナログ放送信号の受信電界強度(以下、「Sレベル」という)を検知し、検知結果をブレンド部7およびF特変更部8へ出力する処理部である。また、アナログ復調部5は、周波数変調または振幅変調されているアナログ放送信号を復調してLPF6へ出力する処理部である。
【0059】
LPF7は、アナログ復調部5から入力されるアナログ放送信号から雑音となる高周波成分を除去し、ブレンド部7へ出力する処理部である。ブレンド部7は、デジタル復調部11から入力されるデジタル放送信号とLPF6から入力されるアナログ放送信号とを任意の混合比で混合(ブレンド)処理してF特変更部8へ出力する処理部である。
【0060】
たとえば、ブレンド部7は、デジタル放送信号の出力レベルを所定の変数α倍に増幅し、アナログ放送信号の出力レベルを1−α倍に増幅し、増幅後のデジタル放送信号およびアナログ放送信号をブレンド処理してF特変更部8へ出力する。ここで、変数αは、0≦α≦1とする。
【0061】
そして、ブレンド部7は、デジタル放送信号のC/N比が後述の設定C/N比より高い場合、すなわち、デジタル放送の受信状態が良好な場合、α=1と設定することで、デジタル放送信号のみを出力する。
【0062】
その後、ブレンド部7は、デジタル放送信号のみを出力中に、デジタル放送信号のC/N比が設定C/N比以下となってから所定時間が経過した場合、αを1から0まで所定時間をかけて低減させ、アナログ放送へ漸次的に出力を切り替える。
【0063】
また、ブレンド部7は、アナログ放送信号のみを出力中にSレベル検知部10から入力されるSレベルが上昇し、後述の切替閾値THcより高くなった場合、αを0から1まで所定時間をかけて増大させ、デジタル放送へ漸次的に出力を切り替える。
【0064】
このように、本実施例では、ブレンド部7は、デジタル放送からアナログ放送へ、または、アナログ放送からデジタル放送へ放送受信装置1の出力を切り替える出力切替手段として機能する。
【0065】
F特変更部8は、ブレンド部7から入力されるデジタル放送信号およびアナログ放送信号の音響特性を変更してDAC9へ出力する処理部である。
【0066】
かかるF特変更部8は、たとえば、DSP(Digital Signal Processor)により構成しており、デジタル放送信号およびアナログ放送信号の周波数帯域を変更する帯域フィルタと、デジタル放送信号およびアナログ放送信号の音響特性を変更する際に参照する音響制御テーブルとを含んでいる。なお、音響制御テーブルについては、図3を用いて後述する。
【0067】
ここで、音響特性とは、デジタル放送信号やアナログ放送信号の周波数と出力レベルとの関係を示す周波数特性のことである。以下、デジタル放送信号の音響特性をデジタルF特といい、アナログ放送信号の音響特性をアナログF特という。そして、F特変更部8は、帯域フィルタのカットオフ周波数を変更制御することにより、デジタルF特やアナログF特を変更する。
【0068】
かかるF特変更部8は、デジタル放送信号のみを出力中にSレベル検知部10から入力されるSレベルが後述の開始閾値THa以下となった時点で、デジタルF特をアナログF特へ近付ける処理を開始することで、アナログ放送へ出力を切り替えた際の聴感上の違和感を効果的に低減する。
【0069】
また、F特変更部8は、アナログ放送信号のみを出力中にSレベル検知部10から入力されるSレベルが上昇した場合、アナログF特をデジタルF特へ近付ける処理を行うことでデジタル放送へ出力を切り替えた際の聴感上の違和感を効果的に低減する。
【0070】
本実施例では、かかるF特変更部8が音響制御手段として機能する。なお、F特変更部8によるデジタルF特の変更手順については、図4および図5を用いて放送受信装置1の動作を説明する際に詳述する。
【0071】
DAC9は、F特変更部8から入力されるデジタルのデジタル放送信号およびアナログ放送信号をアナログのデジタル放送信号およびアナログ放送信号(アナログの音声信号)へ変換して、スピーカ(図示略)へ出力する。
【0072】
すなわち、放送受信装置1は、DAC9がデジタル放送信号を出力している場合に、デジタル放送の音声信号を出力し、アナログ放送信号を出力している場合に、アナログ放送の音声信号を出力する。
【0073】
次に、図3を用いてF特変更部8がデジタルF特またはアナログF特を変更する場合に参照する音響制御テーブルについて説明する。図3は、本実施例に係る放送受信装置1が備える音響制御テーブルの一例を示す図である。
【0074】
図3に示すように、音響制御テーブルには、Sレベル検知部10によって検知されるアナログ放送信号のSレベル毎にF特変更部8の帯域フィルタへ設定すべきカットオフ周波数が対応付けられた音響特性情報が記憶されている。
【0075】
なお、F特変更部8がデジタルF特またはアナログF特を変更する場合に参照する情報は、音響テーブルに限定するものではなく、たとえば、アナログ信号のSレベルと帯域フィルタへ設定すべきカットオフ周波数との対応関係を示す関数であってもよい。
【0076】
本実施例では、一例として同図に示すように、予めカットオフ周波数の上限値を15kHz、下限値を4kHzと定めている。なお、ここでは、デジタル放送の音域の上限が15kHz、アナログ放送の音域の上限が4kHzであるものとする。
【0077】
そして、同図に示す例では、F特変更部8がデジタルF特の低下を開始すべきSレベルである開始閾値THaよりも高いSレベルに対して15kHzのカットオフ周波数を対応付けている。
【0078】
本実施例では、デジタル放送の受信状態が劣化し始めるときのアナログ放送信号のSレベル(以下、「劣化開始SレベルTHb」という)を予めシミュレーションまたは統計により算出しておく。そして、かかる劣化開始SレベルTHbよりも所定レベル高いSレベルを開始閾値THaとしている。
【0079】
また、ブレンド部7がデジタル放送信号からアナログ放送信号へ出力を切り替えるべきSレベルである切替閾値THc以下のSレベルに対して4kHzのカットオフ周波数を対応付けている。なお、本実施例では、前述の劣化開始Sレベルよりも所定レベル低いSレベルを切替閾値THcとしている。
【0080】
さらに、開始閾値THaと切替閾値THcとの間における各Sレベルに対しては、開始閾値THaに近いSレベルほど15kHzに近いカットオフ周波数を対応付け、切替閾値THcに近いSレベルほど4kHzに近いカットオフ周波数を対応付けている。
【0081】
かかる音響制御テーブルを設けた場合、F特変更部8は、Sレベル検知部10から入力されたSレベルが開始閾値THaよりも高い場合、デジタルF特を15kHzに設定し、Sレベルが切替閾値THc以下の場合、デジタルF特を4kHzに設定する。また、F特変更部8は、Sレベルが開始閾値THaと切替閾値THcとの間を推移している場合、検知されたSレベルの変化に応じたデジタルF特を設定する。
【0082】
また、F特変更部8は、デジタルF特を低下させる処理中に、デジタル復調部11から入力されるデジタル放送信号のC/N比が予め設定した設定C/N比以下となった場合、所定の低下率で所定時間デジタルF特値を低下させる。
【0083】
なお、本実施例では、アナログ放送信号のSレベルが前述の劣化開始SレベルTHb以下となったときのデジタル放送信号のC/N比を予め算出しておき、かかるC/N比を設定C/N比としている。
【0084】
その後、ブレンド部7は、デジタル放送信号からアナログ放送信号へ出力を切り替えるブレンド処理を開始する。このとき、F特変更部8は、帯域フィルタのカットオフ周波数が4kHzまで低下していない場合、ブレンド処理の開始から終了までの所定時間(たとえば、400msec)で帯域フィルタのカットオフ周波数を4kHzまで低下させる。
【0085】
次に、図4および図5を用いて放送受信装置1がアナログ放送およびデジタル放送の出力切替を行う場合の動作について説明する。図4および図5は、本実施例に係る放送受信装置1による出力切替動作を示す図である。
【0086】
以下では、図4を用いて放送受信装置1がデジタル放送からアナログ放送へ出力を切り替える場合の動作について説明した後、図5を用いて放送受信装置1がデジタル放送からアナログ放送へ出力を切り替える場合の動作について説明する。
【0087】
なお、図4(A)は、Sレベル検知部10によって検知されたアナログ放送信号のSレベルの推移を示しており、図4(B)は、F特変更部8によるデジタルF特の変更開始タイミングを示している。
【0088】
また、図4(C)は、デジタル復調部11により算出されたデジタル放送信号のC/N比の変化を示しており、図4(D)は、F特変更部8により変更されたデジタルF特の推移を示している。
【0089】
本実施例では、F特変更部8は、同図(D)に示すように、デジタル放送信号の出力を18dBに保つように出力レベルを調整しつつ、帯域フィルタのカットオフ周波数を変更することでデジタルF特を変更する。
【0090】
また、図4(E)は、F特変更部8が出力するアナログ放送信号のアナログF特を示している。同図(E)に示すように、本実施例では、F特変更部8は、アナログF特(アナログ放送信号のカットオフ周波数)を常時4kHz、出力を18dBに維持している。
【0091】
また、図4(F)は、F特変更部8により変更されたデジタルF特とアナログF特とを合成した音響特性(以下、「合成F特」という)の推移を示している。また、図4(G)には、ブレンド部7が出力するデジタル放送信号およびアナログ放送信号の各出力レベルの推移を示している。
【0092】
放送受信装置1では、図4(A)に示すように、デジタル放送の出力中にSレベル検知部10により検知されたSレベルが開始閾値THaよりも高い場合、F特変更部8は、図4(D)に示すように、デジタルF特をデジタル放送用のF特である15kHzに設定する。
【0093】
そして、放送受信装置1では、デジタル放送の出力中に、図4(A)に示すように、時刻T1でSレベルが開始閾値THa以下となった場合、F特変更部8は、図4(B)に示すように、時刻T1の時点でデジタルF特の変更開始タイミングであると判定する。
【0094】
そして、F特変更部8は、時刻T1の時点でデジタルF特の変更開始タイミングであると判定した場合、図4(D)に示すように、時刻T1からデジタルF特を低下させることでデジタルF特をアナログF特へ近付ける処理を開始する。
【0095】
このとき、F特変更部8は、音響制御テーブルに基づき、Sレベル検知部10によって検知されたSレベルに対応付けられているカットオフ周波数をF特変更部8の帯域フィルタに対して順次設定する。
【0096】
その後、図4(A)に示すように、Sレベル検知部10により検知されたSレベルが時刻T2で劣化開始SレベルTHb以下となり、図4(C)に示すように、デジタル放送信号のC/N比が予め設定された設定C/N比以下となったとする。
【0097】
このように、デジタル放送信号のC/N比が設定C/N比以下となった場合、F特変更部8は、図4(D)に示すように、時刻T2〜T3までの所定時間、デジタルF特を予め定めた一定の低下率で低下させる。
【0098】
なお、このとき、F特変更部8がデジタルF特を一定の低下率で低下させる時間は、デジタル放送信号のC/N比が設定C/N比以下となってからSレベルが切替閾値THc以下となるまでの時間を予めシミュレーションして算出した時間である。
【0099】
また、C/N比が設定C/N比以下となった場合、ブレンド部7は、C/N比が設定C/N比以下となった時刻T2から所定時間後の時刻T3にブレンド開始フラグを反転させるためのタイマをスタートさせる。
【0100】
その後、ブレンド部7は、時刻T3でブレンド開始フラグが反転すると、図4(G)に示すように、デジタル放送信号の出力レベル(デジタルゲイン)を低下させつつアナログ放送信号の出力レベル(アナログゲイン)を上昇させて出力のブレンド処理を開始する。
【0101】
このとき、ブレンド部7は、ブレンドの開始した時刻T3から所定時間(たとえば、400msec)後の時刻T5にブレンド終了フラグを反転させるためのタイマをスタートさせる。そして、ブレンド部7は、ブレンド終了フラグが反転するまでの間、出力のブレンド処理を継続することでデジタル放送信号からアナログ放送信号へ漸次的に出力を切り替える。
【0102】
このように、放送受信装置1は、デジタル放送の出力中に、デジタル放送信号のC/N比が設定C/N比以下となる前にアナログ放送信号のSレベルが所定の開始閾値THa以下となった時点で、デジタルF特をアナログF特へ近付ける処理を開始する。
【0103】
すなわち、放送受信装置1は、出力中のデジタル放送の受信状態が劣化し始める前に、デジタルF特をアナログF特へ近付ける処理を開始することができる。したがって、放送受信装置1は、デジタルF特をアナログF特へ従来の放送受信手法よりも長い時間をかけて近付けることができるため、アナログ放送へ出力を切り替えた際の聴感上の違和感をさらに低減することができる。
【0104】
また、F特変更部8は、ブレンド部7がデジタル放送信号からアナログ放送信号へ出力を漸次的に切り替えるブレンド処理中に、合成F特をアナログF特へ近付けるようにデジタルF特を制御する。たとえば、F特変更部8は、図4(D)に示すように、時刻T3〜T4の期間にデジタルF特を一旦アナログF特の4kHzまで低下させる。
【0105】
その後、F特変更部8は、時刻T4〜T5の期間にデジタルF特を6kHzまで上昇させることで、図4(F)に示すように、合成F特をアナログF特の4kHzへ近付ける制御を行う。
【0106】
次に、図5を用いて放送受信装置1がデジタル放送からアナログ放送へ出力を切り替える場合の動作について説明する。なお、図5に示す時刻T3〜T5に対応するSレベル(A)、デジタルF特(B)、出力(E)の推移は、図4に示す時刻T3〜T5に対応するSレベル(A)、デジタルF特(D)、出力(G)の推移と同様である。
【0107】
このため、ここでは、時刻T5以降における放送受信装置1の動作について説明する。図5(B)に示すように、放送受信装置1では、時刻T5でデジタル放送からアナログ放送への出力の切り替えが完了すると、F特変更部8がデジタルF特を6kHzからデジタル放送用のF特である15kHzまで上昇(回復)させる。
【0108】
このとき、図5(E)に示すように、デジタルゲインは、0パーセントであるため、デジタルF特を6kHzから15kHzまで急激に上昇させてもユーザへ聴感上の違和感を与えることはない。
【0109】
その後、図5(A)に示すように、Sレベル検知部10により検知されたアナログ放送信号のSレベルが上昇し、時刻T6でSレベルが切替閾値THcより高くなると、ブレンド部7では、図5(C)に示すように、ブレンド開始フラグが反転される。
【0110】
このとき、F特変更部8は、Sレベル検知部10により検知されたアナログ放送信号のSレベルが上昇を開始した場合、Sレベルの上昇に応じてアナログF特をデジタルF特へ近付ける処理を行う(図示略)。
【0111】
そして、ブレンド開始フラグが反転されると、ブレンド部7は、図5(E)に示すように、時刻T6〜T7の期間にアナログゲインを低減しつつデジタルゲインを増大させることで、デジタル放送信号へ出力を漸次的に切り替える。
【0112】
なお、ここでは、F特変更部8は、Sレベルが上昇を開始して切替閾値THcに達する前に、アナログF特をデジタルF特へ近付ける処理を開始しているが、Sレベルが切替閾値THcに達した時点でアナログF特をデジタルF特へ近付ける処理を開始してもよい。
【0113】
このように、アナログ放送からデジタル放送へ出力を切り替える場合に、F特変更部8がアナログF特をデジタルF特へ近付ける処理を行うため、アナログ放送からデジタル放送へ出力を切り替えたことによる聴感上の違和感を低減することができる。
【0114】
また、放送受信装置1では、アナログ放送からデジタル放送への出力の切り替えを開始する前に、F特変更部8がデジタルF特をデジタル放送用のF特まで上昇させているため、ブレンド部7によるブレンド処理とデジタルF特の上昇処理とを並行して行うことがない。このため、放送受信装置1によれば、アナログ放送をデジタル放送へ切り替える際の処理量を低減することができる。
【0115】
なお、デジタルF特は、必ずしもデジタル放送をアナログ放送へ切り替えた直後に上昇させる必要はなく、たとえば、アナログ放送をデジタル放送へ切り替えた後に上昇させてもよい。
【0116】
すなわち、F特変更部8は、図5(B)に一点鎖線で示すように、時刻T5でアナログ放送信号へ出力が切り替えられてから時刻T7でデジタル放送信号へ出力が切り替えられるまで6kHzのデジタルF特を維持し、時刻T7からデジタルF特を上昇させてもよい。
【0117】
このようにデジタルF特を上昇させても、放送受信装置1は、ブレンド部7によるブレンド処理とデジタルF特の低下処理とを並行して行うことがないので、アナログ放送をデジタル放送へ切り替える際の処理量を低減することができる。
【0118】
また、F特変更部8は、図5(B)に二点鎖線で示すように、時刻T5〜T6の期間、6kHzのデジタルF特を維持し、アナログ放送がデジタル放送へ切り替えられるブレンド処理が開始された時点からSレベルの上昇に応じてデジタルF特を上昇させてもよい。
【0119】
このようにデジタルF特を上昇させた場合、F特変更部8は、デジタルゲインおよびSレベルの上昇に追従してデジタルF特を上昇させることができるため、アナログ放送をデジタル放送へ切り替えることによる聴感上の違和感を効果的に低減することができる。
【0120】
次に、図6を用いて、放送受信装置1で実行される処理について説明する。図6は、本実施例に係る放送受信装置1で実行される処理を示すフローチャートである。
【0121】
図6に示すように、放送受信装置1は、電源が投入されると、デジタル放送を出力中であるか否かの判定を行う(ステップS101)。そして、放送受信装置1は、デジタル放送を出力中であると判定した場合(ステップS101,Yes)、アナログ放送信号のSレベルが開始閾値THaより高いか否かを判定する(ステップS102)。
【0122】
ここで、放送受信装置1は、Sレベルが開始閾値THaよりも高いと判定した場合(ステップS102,Yes)、デジタルF特をデジタル放送用のF特に設定し(ステップS103)、処理を終了する。
【0123】
一方、放送受信装置1は、Sレベルが開始閾値THa以下であると判定した場合(ステップS102,No)、デジタル放送信号のC/N比が設定C/N比より高いか否かを判定する(ステップS104)。
【0124】
ここで、放送受信装置1は、C/N比が設定C/N比より高いと判定した場合(ステップS104,Yes)、音響制御テーブルに基づき、アナログ放送信号のSレベルに対応付けられているデジタルF特を設定し(ステップS105)、処理を終了する。
【0125】
一方、放送受信装置1は、C/N比が設定C/N比以下であると判定した場合(ステップS104,No)、デジタルF特を一定の低下率で所定期間低下させるデジタルF特低下処理を行う(ステップS106)。
【0126】
続いて、放送受信装置1は、ブレンド開始フラグが反転したか否かを判定し(ステップS107)、反転したと判定した場合(ステップS107,Yes)、デジタル放送からアナログ放送へ出力を切り替えるブレンド処理を行う(ステップS108)。
【0127】
かかるブレンド処理中に、放送受信装置1は、デジタルF特とアナログF特との合成F特がアナログF特へ近付くようにデジタルF特を制御する。そして、放送受信装置1は、ブレンド処理(ステップS108)が完了した後、デジタルF特をデジタル放送用のF特まで上昇させて設定し(ステップS109)、処理を終了する。
【0128】
一方、放送受信装置1は、ブレンド開始フラグが反転していないと判定した場合(ステップS107,No)、ブレンド開始フラグが反転するまでデジタルF特低下処理を繰り返し実行する。
【0129】
また、放送受信装置1は、ステップS101において、デジタル放送を出力中でないと判定した場合(ステップS101,No)、アナログ放送を出力中であるか否かの判定を行う(ステップS110)。そして、放送受信装置1は、アナログ放送を出力中でないと判定した場合(ステップS110,No)、処理を終了する。
【0130】
一方、放送受信装置1は、アナログ放送を出力中であると判定した場合(ステップS110,Yes)、ブレンド開始フラグが反転したか否かを判定する(ステップS111)。ここで、放送受信装置1は、ブレンド開始フラグが反転していないと判定した場合(ステップS111,No)、処理を終了する。
【0131】
一方、放送受信装置1は、ブレンド開始フラグが反転したと判定した場合(ステップS111,Yes)、アナログ放送からデジタル放送へ出力を切り替えるブレンド処理を行い(ステップS112)、処理を終了する。そして、放送受信装置1は、電源が投入されている間、図6に示す処理を繰り返し実行する。
【0132】
なお、図6では、デジタル放送からアナログ放送へ出力を切り替えた直後に、デジタルF特をデジタル放送用のF特まで上昇させているが、アナログ放送からデジタル放送へ出力を切り替えるブレンド処理が完了するまでデジタルF特を維持(ホールド)してもよい。
【0133】
そして、アナログ放送からデジタル放送へ出力を切り替えるブレンド処理が完了した後に、デジタルF特をデジタル放送用のF特まで上昇させてもよい。
【0134】
また、アナログ放送からデジタル放送へ出力を切り替えるブレンド処理が開始されるまでデジタルF特を維持し、ブレンド処理が開始された時点からアナログ放送の信号のSレベルの上昇に追従させてデジタルF特をデジタル放送用のF特まで上昇させてもよい。
【0135】
また、放送受信装置1では、F特変更部8は、デジタルF特を変更する場合、Sレベルの上昇期間におけるSレベルの変化に対するデジタルF特の追従性を、Sレベルの低下期間におけるSレベルの変化に対するデジタルF特の追従性よりも高くすることができる。
【0136】
ここで、図7を用いてF特変更部8がアナログ放送信号のSレベルの変化に追従させてデジタルF特を変更する場合の動作例について説明する。
【0137】
図7は、本実施例に係る放送受信装置1がSレベルの変化に追従させてデジタルF特を変更する場合の動作例を示す図である。図7では、Sレベルの増減幅を±1に換算し、Sレベルの変化を一点鎖線で示しており、デジタルF特の変化を実線で示している。
【0138】
図7に示すように、放送受信装置1のF特変更部8は、デジタルF特を変更する場合に、アナログ放送信号のSレベルの変化に対するデジタルF特の追従性を、Sレベルが上昇中の場合よりもSレベルが低下中の場合を高くすることができる。すなわち、F特変更部8は、Sレベルが低下中の期間では、Sレベルの低下とほぼ同時にデジタルF特を低下させる。
【0139】
このため、F特変更部8は、Sレベルが開始閾値THaまで低下した時刻とほぼ同時刻からデジタルF特をアナログF特へ近付ける処理を開始することで、デジタルF特をアナログF特へ近付ける処理に十分な時間をかけることができる。これにより、放送受信装置1は、デジタル放送からアナログ放送へ出力を切り替えたことによる聴感上の違和感を効果的に低減することができる。
【0140】
一方、F特変更部8は、Sレベルが上昇中の期間では、Sレベルが上昇を開始してから上限値に達するまでの時間よりも長い時間をかけてデジタルF特をデジタル放送用のF特まで、なめらかに上昇させることができる。
【0141】
このため、放送受信装置1は、アナログ放送からデジタル放送へ出力を切り替える際の聴感上の違和感を効果的に低減することができる。
【0142】
また、本実施例では、F特変更部8は、デジタル放送信号のC/N比が設定C/N比以下となった場合、その後、所定時間一定の低下率でデジタルF特を低下させているが、デジタルF特の低下方法は、これに限定するものではない。
【0143】
たとえば、F特変更部8は、Sレベル検知部10により検知されたSレベルが開始閾値THa以下となってから切替閾値THc以下となるまで、図3に示した音響制御テーブルに基づき、デジタルF特を低下させてもよい。
【0144】
かかる構成とする場合、ブレンド部7は、Sレベル検知部10によって検知されたSレベルが切替閾値THc以下となった場合に、デジタル放送信号からアナログ放送信号へ出力を漸次的に切り替えるブレンド処理を開始する。そして、F特変更部8は、かかるブレンド処理が終了するまでに、デジタルF特をアナログF特まで低下させる。
【0145】
かかる構成とすれば、F特変更部8は、デジタルF特低下処理を行うためにデジタル放送信号のC/N比を監視する必要がなくなる。これにより、F特変更部8の処理負荷を低減することができる。
【0146】
上述したように、本実施例に係る放送受信装置は、デジタル放送またはアナログ放送のいずれか一方の放送から他方の放送へ出力を切り替える場合、アナログ放送信号のSレベルに基づいて切替え前の放送の音響特性を切替え後の放送用の音響特性へ近付ける。
【0147】
そして、アナログのSレベルは、デジタル放送の受信状態の変化に先立って変化するものである。このため、本実施例に係る放送受信装置では、従来における放送受信手法よりも前に、切替え前の放送の音響特性を切替え後の放送用の音響特性へ近付ける制御を開始することができる。
【0148】
したがって、本実施例に係る放送受信装置によれば、従来における放送受信手法よりも長い時間をかけて切替え前の放送の音響特性を切替え後の放送用の音響特性へ近付けることができるため出力の切り替えによる聴感上の違和感をさらに低減することができる。
【符号の説明】
【0149】
1 放送受信装置
2 チューナ
3 ADC
4 BPF
5 アナログ復調部
6 LPF
7 ブレンド部
8 F特変更部
9 DAC
10 Sレベル検知部
11 デジタル復調部
20 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の放送内容を含むデジタル放送とアナログ放送とを同時に受信して前記デジタル放送を出力し、当該デジタル放送の受信状態が悪化している期間に前記アナログ放送を出力する放送受信装置であって、
前記アナログ放送で使用されているアナログ放送信号の受信強度を検知する検知手段と、
前記デジタル放送または前記アナログ放送のいずれか一方の放送から他方の放送へ出力を切り替える場合、前記検知手段によって検知された前記受信強度に基づいて切替え前の放送の音響特性を切替え後の放送用の音響特性へ近付ける制御を行う音響制御手段と
を備えたことを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
前記音響制御手段は、
前記デジタル放送の出力中に前記検知手段によって検知された前記受信強度が所定の開始閾値以下となった場合、出力している前記デジタル放送の音響特性をアナログ放送用の音響特性へ近付ける制御を開始する
ことを特徴とする請求項1に記載の放送受信装置。
【請求項3】
前記検知手段によって検知された前記受信強度が前記開始閾値よりも低い所定の切替閾値以下となった場合に、前記デジタル放送の出力レベルを低減させつつ前記アナログ放送の出力レベルを増大させることで前記アナログ放送へ漸次的に出力を切り替える出力切替手段
を備え、
前記音響制御手段は、
前記出力切替手段によって前記アナログ放送へ漸次的に出力が切り替えられる期間に、出力しているアナログ放送の音響特性とデジタル放送の音響特性との合成音響特性を前記アナログ放送用の音響特性へ近付けるように、出力しているデジタル放送の音響特性を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の放送受信装置。
【請求項4】
前記出力切替手段は、
前記アナログ放送の出力中に前記検知手段によって検知された前記受信強度が前記切替閾値よりも高くなった場合、前記アナログ放送の出力レベルを低減させつつ前記デジタル放送の出力レベルを増大させることで前記デジタル放送へ漸次的に出力を切り替え、
前記音響制御手段は、
前記出力切替手段によって前記デジタル放送へ漸次的に出力が切り替えられる期間に、出力している前記デジタル放送の音響特性を維持し、前記デジタル放送への出力の切り替えが完了した後に、当該音響特性を前記検知手段によって検知された前記受信強度に応じて変更する
ことを特徴とする請求項3に記載の放送受信装置。
【請求項5】
前記音響制御手段は、
前記検知手段によって検知される前記受信強度の低下期間における当該受信強度の変化に対する前記音響特性の追従性が、当該受信強度の上昇期間における当該受信強度の変化に対する前記音響特性の追従性よりも高くなるように前記デジタル放送の前記音響特性を制御する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の放送受信装置。
【請求項6】
前記検知手段によって検知される前記受信強度と当該受信強度が検出された場合に前記音響制御手段が設定すべき前記デジタル放送の音響特性とが対応付けられた音響特性情報を記憶した音響特性情報記憶手段
をさらに備え、
前記音響制御手段は、
前記デジタル放送の出力中に前記検知手段によって検知された前記受信強度が前記開始閾値以下であり、且つ、当該デジタル放送の放送信号に関する搬送波対雑音比が予め設定した値よりも高い場合、前記音響特性情報記憶手段に記憶されている前記音響特性情報に基づいて当該デジタル放送の音響特性を設定する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の放送受信装置。
【請求項7】
前記音響制御手段は、
前記音響特性を前記アナログ放送用の音響特性へ近付ける制御を開始した後、前記検知手段によって検知された前記受信強度が上昇した場合、出力しているデジタル放送の音響特性を前記デジタル放送用の音響特性へ近付ける制御を行う
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の放送受信装置。
【請求項8】
前記音響制御手段は、
前記アナログ放送の出力中に前記検知手段によって検知された前記受信強度が上昇した場合に、出力している前記アナログ放送の音響特性をデジタル放送用の音響特性へ近付ける制御を行う
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の放送受信装置。
【請求項9】
同一の放送内容を含むデジタル放送とアナログ放送とを同時に受信して前記デジタル放送を出力し、当該デジタル放送の受信状態が悪化している期間に前記アナログ放送を出力する放送受信装置による放送受信方法であって、
前記アナログ放送で使用されているアナログ放送信号の受信強度を検知する検知工程と、
前記デジタル放送または前記アナログ放送のいずれか一方の放送から他方の放送へ出力を切り替える場合、前記検知工程によって検知された前記受信強度に基づいて切替え前の放送の音響特性を切替え後の放送用の音響特性へ近付ける制御を行う音響制御工程と
を含むことを特徴とする放送受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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