説明

放送受信装置及びダウンロードコンテンツ変更方法

【課題】ダウンロード放送において、所在地やユーザの嗜好などに応じて異なるコンテンツを提供できない、一定の鮮度を求められるコンテンツを扱えない、コンテンツ制作側が必要と判断した場合でも一旦に配信されたコンテンツを変更できないという問題があった。
【解決手段】ダウンロード放送信号を受信する受信部と、ダウンロード放送信号から映像音声データとダウンロードコンテンツ情報を分離する分離部と、映像音声データを蓄積するコンテンツ蓄積部と、ダウンロードコンテンツ情報を蓄積するコンテンツ情報蓄積部と、ダウンロードコンテンツ情報に含まれるプレイリスト情報に基づいて再生するコンテンツを指定して再生するコンテンツ再生制御部と、プレイリスト情報に含まれるURLにアクセスする通信部と、を備え、コンテンツ再生制御部は、通信部がアクセスしたURLからコンテンツを取得してコンテンツ蓄積部に蓄積させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放送受信装置及びダウンロードコンテンツ変更方法に関し、特に、高度化ISDB−S(Integrated Services Digital Broadcasting−Satellite)、つまり、高度化衛星放送規格で運用されることが検討されている、放送型ダウンロード放送を受信可能な放送受信装置及びダウンロードコンテンツ変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送には、従来からあるテレビ放送のようにリアルタイムに番組視聴することを目的としたリアルタイム放送と、番組をHDDやフラッシュメモリなど放送受信装置の記録メディアに一端蓄積しておきユーザの所望する時間に再生して視聴することを目的としたダウンロード放送とがある。ダウンロード放送はリアルタイムに視聴することができないという欠点があるものの、スーパーハイビジョン放送や4K2K放送など必要な転送帯域が大きすぎて実時間での放送が困難な高ビットレート映像の配信を事前にダウンロードさせておくことが可能であり、また画質を抑えた低ビットレートの映像を実時間よりも短い時間で複数番組配信するといったサービスも可能である。ダウンロード放送の仕組みとしては日本のアクトビラサービスに代表されるようにIPネットワークを伝送路として用いるネット型ダウンロード放送と、高度化ISDB−S(Integrated Services Digital Broadcasting−Satellite)すなわち高度化衛星放送規格にて運用が検討されている、衛星放送波を伝送路として用いる放送型ダウンロード放送とがある。
【0003】
ダウンロード番組は、映像コンテンツの本体にあたるメディアファイル、ダウンロード番組の再生制御に必要な情報が記載された再生制御情報ファイル、コンテンツのタイトルやシリーズなどの情報、ライセンス情報などが記載されたECG(Electric Contents Guide)データファイル(後ほど図面を用いて詳述する)などの各ファイルで構成される。メディアファイルはMpeg−TSストリームであることが一般的であり、Mpeg−TSストリームの中にMpeg2やH.264形式の映像データやAACやAC3形式の音楽データ、字幕データなどが格納されている。Mpeg−TSストリームは192(または188)Byteの固定長パケットから構成され、映像データや音楽データなどは各パケット単位に分割されて格納される。
【0004】
ここで、図4から図7を用いて従来の放送受信システムの構成及び処理内容について説明する。図4は、リアルタイム放送と放送型ダウンロード放送の双方の受信に対応した放送送受信システムの構成を示す図である。図5は、ダウンロード番組を再生するための情報が記載された再生制御情報ファイルの構成を示す図である。図6は、ECGデータファイルの構成を示す図である。図7は、放送受信装置におけるダウンロード放送予約実行処理を示すフローチャートである。
【0005】
放送送受信システム400の構成を説明する前に、図5及び図6を用いて再生制御情報ファイル500及びECGデータファイル600の構成を説明する。
【0006】
まず、再生制御情報ファイル500について説明する。再生制御情報ファイル500は、コンテンツ情報やチャプター情報などが記載されたコンテンツ属性情報501(ERI:Entry Resource Information)と、メディアファイルを再生するために必要な情報が記載されたストリーム再生制御情報502(SCI:Streaming Control Information)、著作権保護されたメディアファイルを再生するために必要なライセンス関連情報503(LLI:License Link Information)から構成される。
【0007】
ネット型ダウンロード放送では、上述のダウンロード番組を構成する各ファイルはWebサーバ上に公開されており、放送受信装置が所望するタイミングで上述のダウンロード番組を構成する各ファイルをファイル単位で取得し蓄積する。一方、放送型ダウンロード放送では、ダウンロード番組を構成する全ファイルをダウンロード放送信号多重化方式にて多重化し、事前に決められたダウンロード放送時間に放送波に重畳されて放送する。放送受信装置はダウンロード放送時間になると放送波から多重化されたデータを受信し、多重化を解いた上で蓄積する。なお、ダウンロード放送信号多重化方式には、伝送効率を考慮して可変長パケットによる多重化方式が用いられる。例えば、日本の高度BSデジタル放送では、ダウンロード放送信号多重化方式としてTLV(Type Length Value)多重化方式が用いられ、ダウンロード放送信号はTLVストリームと呼ばれる(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
次にECGデータファイル600について説明する。リアルタイム放送では放送される番組の情報はEPG(Electric Program Guide)情報としてMpeg−TSストリーム中のPMTパケットにSI情報として記述されている。放送受信装置ではこのEPG情報を元に電子番組表を提供している。一方、ダウンロード放送ではリアルタイム放送におけるEPG情報に相当するものとして前述のようにダウンロード番組の詳細情報が記載されたECG(Electric Contents Guide)データファイル600が存在する。ダウンロード番組は番組毎にユニークなIDである番組ID(CRID)が付与されており、ECGデータファイル600は、番組IDを元にダウンロード番組が属するグループに関して記載されたグループ情報601(GI:Group Information)やダウンロード番組の内容の詳細が記載された番組情報602(PI:Program Information)、ダウンロード番組の利用条件などが記載されたライセンス参照情報603(LI:License Information)、ダウンロード番組の購入可能期間や価格等が記載された購入情報604(PuI:Purchase Information)、ダウンロードに必要な情報が記載されたダウンロード制御情報605(DCI:Download Control Information)から構成される。
【0009】
図4に示す従来の放送送受信システム400は、リアルタイム放送を受信し、かつ上述の再生制御情報ファイル500及びECGデータファイル600を用いて放送型ダウンロード放送を受信可能な放送送受信システムである。放送送受信システム400は、放送送信装置4100と放送受信装置4200から構成される。
【0010】
放送送信装置4100は放送局側の設備に当たり、放送スケジュールに応じてリアルタイム放送と放送型ダウンロード放送とを送信部4101を介して放送波に乗せて放送する。例えばリアルタイム放送の場合、放送する番組映像を映像音声符号化部4102でMpeg2などに符号化し、同時に放送する番組の情報や放送スケジュールに関する情報をEPGデータ生成部4103でEPGデータに変換して、各々MPEGTS多重化部4106に入力することで放送するMpeg−TSストリームを生成する。
【0011】
一方、放送型ダウンロード放送の場合はあらかじめ放送する番組映像をオーサリングしておきコンテンツ蓄積部4104に記録し、同時に放送する番組のECGデータをECGデータ生成部4105で生成して、各々TLV多重化部4107に入力することで放送するTLVストリームを生成する。
【0012】
このように生成されたリアルタイム放送用のMpeg−TSストリームと放送型ダウンロード放送用のTLVストリームは、放送スケジュールに応じて切換部4108で切り替えられて送信部4101に入力される。送信部4101は、前述のように入力されたストリームを放送波にのせて放送する。
【0013】
放送受信装置4200はリアルタイム放送と放送型ダウンロード放送の双方に対応した放送受信装置にあたり、放送送信装置4100が送出した放送波を受信部4201で受信する。受信部4201は受信した放送波からストリームを抽出し、抽出したストリームがリアルタイム放送のMpeg−TSストリームであればMpegTS多重分離部4202に入力し、放送型ダウンロード放送のTLVストリームであればTLV多重分離部4203に入力する。MpegTS多重分離部4202は入力されたMpeg−TSストリームをAVストリームとEPGデータとに分離し、EPGデータはEPG蓄積部4204に保存する。
【0014】
一方、TLV多重分離部4203は入力されたTLVストリームをAVストリームとECGデータとに分離し、AVストリームをコンテンツ蓄積部4206に保存するとともに、ECGデータをECG蓄積部4205に保存する。なお、図示していないがECGデータは放送波経由だけでなく、ネットワーク経由でインターネット上のサーバからも取得可能とすることが検討されており、この場合もネットワーク経由で取得されたECGデータはECG蓄積部4205に保存される。
【0015】
放送受信装置4200は、ユーザの操作に応じてリアルタイム放送の番組を表示するのか、ダウンロード番組を表示するのかを映像音声切換部4207にて切り替える。ユーザがダウンロード番組を選択した場合はコンテンツ蓄積部4206に保存された番組のAVストリームが映像音声処理部4208に入力され、デコードされた映像音声が映像音声出力部4209を通じてユーザに提供される。
【0016】
また、放送受信装置4200はEPG蓄積部4204とECG蓄積部4205から得られた番組情報を例えば電子番組表という形でユーザに提供し、視聴や予約を行わせることも可能である。例えば放送受信装置4200は、ECG蓄積部4205に蓄積されたECGデータのグループ情報や番組情報等を元にダウンロード放送用の電子番組表を生成しユーザに提示する。ここで、ユーザが電子番組表からダウンロード放送を予約してから予約完了するまでの処理の流れを図7を用いて説明する。ここで、ユーザがダウンロード予約したダウンロード番組は予約情報蓄積部(図示せず)に蓄積されている。
【0017】
ユーザはECG蓄積部4205が提示した電子番組表からダウンロード番組を選択し予約を投入する(ステップS0001)。予約が投入されると、ECG蓄積部4205は予約投入されたダウンロード番組の番組IDから対応するECGデータ600を抽出し、ECGデータ600中のダウンロード制御情報605のschedule606を参照する(ステップS0002)。このschedule606は放送スケジュールにあたり、servicerefの値としてダウンロード番組が放送されるチャンネルを選局するための情報が格納されており、startの値としてダウンロード放送の開始日時が格納されており、endの値としてダウンロード放送の終了日時が各々格納されている。
【0018】
ECG蓄積部4205はschedule606から得たダウンロード放送の開始日時まで放送受信装置4200を待機させ(ステップS0003)、ダウンロード放送の放送開始日時になると(ステップS0003で「yes」)、映像音声切換部4207は受信部4201に指示して、予約投入されたダウンロード番組が放送されるチャンネルを選局させる(ステップS0004)。都度受信される放送波がTLVストリームである場合、受信部4201は受信したTLVストリームをTLV多重分離部4203に入力する。TLV多重分離部4203は、入力されたTLVストリームからAVストリームを抽出し、コンテンツ蓄積部4206に記録させる(ステップS0005)。放送受信装置4200は、前述の処理をschedule606から得たダウンロード終了日時まで実行し(ステップS0006)、予約されたダウンロード番組のダウンロードを実行させる(ステップS0007)。
【0019】
なお上記処理では、電子番組表の生成・ダウンロード番組予約実行処理を全てECG蓄積部7205で行っているが、放送受信装置7200全体を制御する制御部(図示せず)が、ECG蓄積部7205に蓄積されたECGデータから得られた情報を元に電子番組表を作成し、ダウンロード制御情報905のschedule906を取得して予約蓄積部(図示せず)に別途蓄積し、予約蓄積部(図示せず)の情報に応じてダウンロード番組の予約実行処理を行うようにしてもよい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】情報通信審議会 諮問第2023号 「放送システムに関する技術的条件」のうち「衛星デジタル放送の高度化に関する技術的条件」答申書 総務省 平成20年7月29日 29頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところで、現在検討されている放送型ダウンロード放送の方式においては、番組単位でみると、基本的には全てのユーザに対して同一のコンテンツを提供することを前提に設計している。このため、実質的に扱うことが可能なコンテンツが制約されてしまう課題があった。そのため、下記の(課題1)から(課題3)の更なる課題が発生してしまうという問題があった。
【0022】
(課題1)ユーザや受信機の属性に応じて異なるコンテンツを扱うことができなかった。ここで属性としては、所在する地域や、ユーザの嗜好などが考えられる。つまり詳述すれば、例えば、各地方版のニュース番組やその地域の気象情報をコンテンツとして扱うことができない、一部の地域でしか発売していない商品に対して発売地域に限定してCMを放送することができない、更にはユーザ毎に異なるコンテンツを扱うことができないという問題があった。
【0023】
(課題2)高い鮮度を求められるコンテンツを扱えなかった。ここで高い鮮度を求められるコンテンツとは、例えば、天気予報、交通情報、株と為替など本質的に時々刻々と変化するデータでその変化自体にユーザが注目するコンテンツである。こうしたコンテンツは、ある程度以上の鮮度が無ければユーザにとって価値が無いと言える。ところが、ダウンロード放送においては、例えば数時間〜数日前に蓄積したコンテンツを扱うことがあるが、高い鮮度を保証することが本質的に不可能であるという問題があった。
【0024】
(課題3)コンテンツ蓄積後には、コンテンツを変更することが出来なかった。ダウンロード放送では、コンテンツを製作するタイミングとユーザがコンテンツを視聴するタイミングとは時間的に分離されており、また、分離した時間差はユーザ毎に異なる。このため、コンテンツの全てあるいはその一部が、ある日時以降に不適切になった場合でも、コンテンツを変更することが出来ないという問題があった。変更が出来ないことは、コンテンツ製作側が不適切となる日時になるまで予測不可能で気付かなかった場合だけではなく、予め無効となる日時が分かっている場合でも同様に出来ないという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の請求項1に係る放送受信装置は、ダウンロード放送信号を受信する受信部と、受信されたダウンロード放送信号から、映像音声データとダウンロードコンテンツ情報を分離する分離部と、分離された映像音声データを蓄積するコンテンツ蓄積部と、分離されたダウンロードコンテンツ情報を蓄積するコンテンツ情報蓄積部と、ダウンロードコンテンツ情報に含まれるプレイリスト情報に基づいて再生するコンテンツを指定するとともに、コンテンツ蓄積部に蓄積したコンテンツを再生するコンテンツ再生制御部と、プレイリスト情報に含まれるURLにアクセスする通信部と、を備え、コンテンツ再生制御部は、通信部がアクセスしたURLからコンテンツを取得してコンテンツ蓄積部に蓄積させることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項2に係る放送受信装置は、本発明の請求項1に係る放送受信装置の構成において、プレイリスト情報は、少なくともコンテンツ参照属性、有効期限属性及び代替コンテンツ参照属性を含み、コンテンツ再生制御部は、有効期限属性に応じてコンテンツ参照属性が有効か否かを判断し、有効である場合はコンテンツ参照属性で指定されるコンテンツを取得し、有効でない場合は代替コンテンツ参照属性で指定されるコンテンツを取得することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の請求項3に係る放送受信装置は、本発明の請求項2に係る放送受信装置の構成において、コンテンツ再生制御部は、コンテンツ蓄積部へのコンテンツ蓄積完了後に、プレイリスト情報の代替コンテンツ参照属性で指定されるコンテンツを通信部を介して取得することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の請求項4に係るコンテンツダウンロード変更方法は、ダウンロード放送信号を受信するステップと、受信したダウンロード放送信号から、映像音声データとダウンロード放送コンテンツ情報を分離するステップと、映像音声データを蓄積するステップと、ダウンロードコンテンツ情報に含まれるプレイリスト情報に基づいて再生するコンテンツを指定するステップと、プレイリスト情報に含まれるURLにアクセスするステップと、URLからコンテンツを取得して蓄積するステップと、を有する。
【0029】
また、本発明の請求項5に係るコンテンツダウンロード変更方法は、本発明の請求項4に係るコンテンツダウンロード変更方法において、プレイリスト情報は、少なくともコンテンツ参照属性、有効期限属性及び代替コンテンツ参照属性を含み、有効期限属性に応じてコンテンツ参照属性が有効か否かを判断し、有効である場合はコンテンツ参照属性で指定されるコンテンツを取得し、有効でない場合は代替コンテンツ参照属性で指定されるコンテンツを取得するステップを更に有することを特徴とする。
【0030】
また、本発明の請求項6に係る放送送信装置は、リアルタイム放送番組を符号化する映像音声符号化部と、リアルタイム放送番組に対応するEPGデータを生成するEPGデータ生成部と、符号化されたリアルタイム放送番組と生成されたEPGデータを多重化してトランスポートストリームとして出力する第1多重化部と、ダウンロード番組を蓄積するコンテンツ蓄積部と、ダウンロード番組に対応するECGデータを生成するECGデータ生成部と、蓄積されたダウンロード番組と生成されたECGデータを多重化してTLVストリームを出力する第2多重化部と、トランスポートストリームとTLVストリームとを切換えて出力する送信部と、を備え、ECGデータは、少なくともコンテンツ参照属性、有効期限属性及び代替コンテンツ参照属性からなるプレイリスト情報を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、上述の(課題1)から(課題3)に対して、夫々下記の効果がある。
【0032】
(効果1)ユーザの所在地や嗜好に応じて異なるコンテンツを扱うこと可能となる。
【0033】
(効果2)高い鮮度を求められるコンテンツを扱うことが可能となる。例えば、天気予報、交通情報、株と為替など、本質的に時々刻々と変化するデータを、ダウンロード放送のコンテンツとして扱うことができる。
【0034】
(効果3)コンテンツの一部または全てを、コンテンツの蓄積後に変更することが可能となる。コンテンツ制作側が、コンテンツを変更する日時がいつか、コンテンツ送出より前に認識していた場合だけでなく、自然災害や不祥事など事前に予測不可能な場合も同様に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1に係る放送送受信システムの構成を示す図
【図2】同実施の形態に係るプレイリストのデータ構造を示す図
【図3】同実施の形態に係るプレイリストを用いたコンテンツ再生処理を示すフローチャート
【図4】従来の放送送受信システムの構成を示す図
【図5】従来の再生制御情報ファイルの構成を示す図
【図6】従来のECGデータファイルの構成を示す図
【図7】従来の放送受信装置におけるダウンロード放送予約実行処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
(実施の形態1)
図1は、放送型ダウンロード放送において、ダウンロード可能なコンテンツを変更可能とした本実施の形態1における放送送受信システム100の構成を示す図である。図1において、図4を用いて説明した従来の放送送受信システム400と同じ構成要素については同じ符号を付与しており、特に補足説明がない限り従来の放送送受信システム400と同じものとして説明を省略する。また図2に、本実施の形態1を実現するためのプレイリスト200の構成を示す。プレイリストはECGデータ生成部1101において作成され、TLV多重化部4107に入力され、TLV多重化部4107はプレイリスト200を含んだTLVストリームを送信部4101を介して放送受信装置1200へ送出する。プレイリストはECGデータファイル600のGI601を拡張して格納する方法や、EGCデータファイル600に全く新しい要素を追加する方法などで実現される。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態1におけるプレイリストのデータ構造を示す図である。図中、符号200は、プレイリスト全体を示し、上述のように放送送信装置1100から送信される。
【0039】
プレイリスト200は、複数のコンテンツに関し、各コンテンツの再生を制御する情報であるプレイリスト要素を含む。図2では、プレイリスト200が、プレイリスト要素210、プレイリスト要素220、プレイリスト要素230、プレイリスト要素240の4個のプレイリスト要素を含むことを示している。
【0040】
各プレイリスト要素は、複数の属性から構成されている。即ち、コンテンツ参照属性201と、有効期限属性202と、代替コンテンツ参照属性203から構成される。
【0041】
ここで、コンテンツ参照属性201について説明する。コンテンツ参照属性201は、夫々のプレイリスト要素が対応付けられているコンテンツを指定する。コンテンツ参照属性201は、複数の形式で指定可能である。
【0042】
例えば、コンテンツ参照属性201は、蓄積されたコンテンツを指定できる。識別情報の形式としては、送出側で決定されるCRID等のID、送出側から放送または通信によりコンテンツを受信する際に用いるパラメータが含まれるURI(Uniformed Resource Identifier)やDCI605、放送受信装置1200内部で採番されることで割り当てられたシリアル番号などのいずれでも良い。
【0043】
また、コンテンツ参照属性201は、蓄積されたコンテンツの一部を指定することが出来る。識別情報221では蓄積されたAV(映像音声)の、時間的一部分が指定されている。あるいは、画面中から一部の座標系を切り出す指定や、複数の音声が同時に含まれる場合にその一部を選択しても良い。
【0044】
あるいは、コンテンツ参照属性201は、コンテンツを通信によって取得するためのパラメータを保持できる。識別情報231では、ネットワークで接続されたサーバ内のコンテンツを指定するURIを保持している。
【0045】
更には、コンテンツ参照属性201は、別のプレイリストを指定することで、再帰的な構造をしたプレイリストを構成することが出来る。コンテンツ参照属性241では、プレイリストを通信により取得するためのURIが格納される。
【0046】
なお、映像と音声とを別々に指定しても良い。即ち映像はダウンロード放送で事前に蓄積されたもので、音声は通信により取得しても良い。例えば、容量の大きい映像はダウンロード放送で効率的に送ると共に、製作に時間がかかる吹き替えや通訳を映像送信後まで時間をかけて製作し後から送信することが可能となる。
【0047】
次に、有効期限属性202について説明する。有効期限属性202は、注目しているプレイリスト要素のコンテンツ参照属性201が有効である期間が指定される。現在時刻が有効である期間に含まれない場合には、コンテンツ参照属性201が何も指定していない状態と同様に扱われる。プレイリスト要素210の有効期限属性212では、2010年12月31日の12:00まで、コンテンツ参照属性201である識別情報211が有効であることが指定されている。なお、この属性には、コンテンツ参照が無効な状態から有効な状態にアクティベイトされる日時を含んでも良いし、複数の有効期間を同時に保持しても良い。また、各ユーザが初めて視聴した日時を起点とした最大の時間経過を指定しても良いし、再生の度にカウントダウンされる再生可能回数を格納しても良い。あるいは、プレイリスト要素220の有効期限属性202及びプレイリスト要素230の有効期限属性202では、期限が指定されない場合を示している。この際には、時間経過にかかわらず常に有効である。なお、上記では有効期限属性202の評価方法として、現在時刻が条件を満たすか否かで判定していたが、他の判定方法を用いても良い。例えば、コンテンツのバージョン、特定のユーザに対して有効であるといった条件、放送受信装置1200のバッテリーの状態、ネットワークの通信品質、ユーザの嗜好情報との適合などを格納しても良い。
【0048】
次に、代替コンテンツ参照属性203について説明する。代替コンテンツ参照属性203は、有効期限属性202に応じてコンテンツ参照属性201が無効だと判断された場合に、代替のコンテンツを指定する。代替コンテンツ参照属性203の取り得る値としては、コンテンツ参照属性201と同じで良い。注目しているプレイリスト要素において、有効期限属性202が有効期限を満たさない場合には、コンテンツ参照属性201が無効になる。この際に、代替コンテンツ参照属性203に有効な値が格納されている場合には、代替コンテンツ参照属性203の指定するコンテンツが、プレイリスト要素の指定するコンテンツとして採用される。なお、図2では、1個のプレイリスト要素に対して1個の代替コンテンツ参照属性が格納されているが、複数格納することで、代替の代替といった処理を可能にしても良い。
【0049】
次に、放送受信装置1200が、プレイリスト200を用いてコンテンツの再生を行う処理について、図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態1における、放送受信装置1200でのプレイリスト再生のフローチャートである。ここで、プレイリスト200は受信部4201、TLV多重分離部4203を介して、事前にECG蓄積部1201に蓄積されているとする。
【0050】
(ステップS0301)コンテンツ再生制御部1202は、指定されたプレイリストPから、1個ずつ順に、プレイリスト要素ppを取り出す。
【0051】
(ステップS0302)コンテンツ再生制御部1202は、最後のステップS0301の実行で、既に全てのプレイリスト要素ppが選択済で、何もプレイリスト要素ppとして取り出されなかった場合には(ステップS0302で「yes」)、処理を終了する。
【0052】
(ステップS0303)コンテンツ再生制御部1202は、ステップS0301で選択されたプレイリスト要素ppの、有効期限属性を評価する。有効であると判断された場合には、再生すべきコンテンツCをコンテンツ参照属性の値とし、ステップS0305に進む。有効でないと判断された場合にはステップS0304に進む。
【0053】
(ステップS0304)コンテンツ再生制御部1202は、プレイリスト要素ppの代替コンテンツ参照属性を参照し、再生すべきコンテンツCを、代替コンテンツ参照属性の指定するものに変更する。そして、コンテンツ再生制御部1202は、通信部1203を介して配信サーバ1300から代替コンテンツであるコンテンツCを取得し、コンテンツ蓄積部1204に蓄積する。そしてステップS0305に進む。
【0054】
(ステップS0305)コンテンツ再生制御部1202は、コンテンツCの形式がプレイリストである場合にはステップS0307へ、プレイリストでない場合にはステップS0306に進む。
【0055】
(ステップS0306)コンテンツ再生制御部1202は、コンテンツ蓄積部1204に蓄積されたコンテンツCを再生する。そしてステップS0301に戻る。
【0056】
(ステップS0307)コンテンツ再生制御部1202は、ステップS0301からステップS0306の処理を、プレイリストCを引数にして再帰的に呼び出す。この処理によって、プレイリストCに対する再生が実現される。そしてステップS0301に戻る。
【0057】
なお、放送受信装置1200のユーザは、コンテンツを選択し再生する際に行うのと同じ操作で、プレイリストを再生すればよい。また、コンテンツとプレイリストが混在した一覧画面からいずれかを選択しても良い。この選択方法によって、ユーザの観点からは、プレイリストはコンテンツの1種類として、特別な操作方法を習熟することなく統一的に操作することが可能となる。
【0058】
さて、ここで所在する地域に応じて異なるコンテンツを再生する処理について説明する。プレイリスト要素230では、コンテンツ参照属性201で、通信からのコンテンツ取得が指定されている。通信で接続されるサーバでは、放送受信装置1200毎に指定するコンテンツを変更することができる。例えば、放送受信装置1200が通信でのコンテンツ取得を要求する際に、放送受信装置1200が存在する地域の情報を送れば、その情報に従ってサーバが複数のコンテンツの中からその地域に適切なコンテンツを選択して送り返せばよい。あるいは、直接的に地域情報を放送受信装置1200から送るのではなく、放送受信装置1200がアクセスしてきている経路をサーバ側で認識することで、どの放送受信装置かをサーバが特定し、次にサーバ側で放送受信装置から地域への対応表を用いることで、どの地域かを特定しても良い。
【0059】
なお、地域の情報の代わりにユーザの嗜好情報などを送ることで、サーバ側でユーザの嗜好に合ったコンテンツを選択させても良い。
【0060】
上記のように、サーバ側で放送受信装置毎にプレイリストに含まれる一部のコンテンツを差し替えることが可能となる。例えば、各地方版のニュース番組やその地域の気象情報といった地域ごとに異なるコンテンツを、放送受信装置の地域ごとに変更することが可能となる。あるいは、一部の地域でしか発売していない商品に対して、発売地域に限定してCMを放送することが可能となる。また、ユーザ毎に異なるコンテンツを扱うこともできる。
【0061】
(実施の形態2)
実施の形態2では、コンテンツの鮮度を保証する方法について説明する。まず、代替コンテンツ参照属性203にある様に、プレイリスト再生の際に必ず通信経由で最新のコンテンツを取得に行けば良い。この方法はシンプルであるが、プレイリスト再生時に通信によるコンテンツ取得が必須となるため、通信インフラ全体でのトラフィックやサーバ負荷の削減といったダウンロード放送のメリットが損なわれてしまう。
【0062】
上記の課題を解決する方法を、プレイリスト要素210を用いて説明する。プレイリスト要素210では、蓄積したコンテンツがコンテンツ参照属性211で指定されている。そして、蓄積したコンテンツの鮮度が十分である期限を、有効期限属性212に格納する。もし、プレイリスト要素210を再生した時点で、有効期限属性212によって蓄積したコンテンツでは鮮度が不十分であると判断された場合には、代替コンテンツ参照属性210によって通信によるコンテンツ取得が行われる。有効期限内は通信でのコンテンツ取得が行われないため、通信インフラ全体でのトラフィックやサーバ負荷の削減が達成と、コンテンツの鮮度の保証との両方が同時に達成される。
【0063】
上記の様に、コンテンツの鮮度が保証できる仕組みを導入することで、例えば、天気予報、交通情報、株と為替など、本質的に時々刻々と変化するデータをダウンロード放送のコンテンツとして扱うことが出来る。
【0064】
(実施の形態3)
実施の形態3では、コンテンツの蓄積後にコンテンツの一部または全ての変更する方法について説明する。
【0065】
まず、コンテンツを必ず通信で取得する様に、コンテンツ参照属性201に通信取得を指定すれば、送出側の意図通りに変更してプレイリストを再生することが出来る。
【0066】
更には、通信で取得するコンテンツとして、プレイリスト要素241の様にプレイリストP2をコンテンツとして指定すれば、再生されるコンテンツの数についても変更できる。プレイリストP2の構造は図2で説明したプレイリストと同じでよい。例えば、プレイリストP2のプレイリスト要素として蓄積したコンテンツを指定する様にすれば、通信ではデータサイズの大きなコンテンツを受信せず、相対的にサイズの小さなプレイリストP2自体のデータのみを受信すればよい。従って、この方法によれば、通信インフラ全体でのトラフィックやサーバ負荷の削減が達成できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、放送型ダウンロード放送のように、放送受信装置への配布とユーザの視聴のタイミングが非同期的に行われるコンテンツ配送システムにおいて、コンテンツを地域や嗜好に応じて内容を変更したり、コンテンツの鮮度を保証したり、蓄積後に変更できる。このため、ダウンロード放送を受信可能な全てのAV機器において有用である。
【符号の説明】
【0068】
100 放送送受信システム
1100 放送送信装置
1101 ECGデータ生成部
1200 放送受信装置
1201 ECG蓄積部
1202 コンテンツ再生制御部
1203、1301 通信部
1204、1302、4104 コンテンツ蓄積部
1300 配信サーバ
4101 送信部
4102 映像音声符号化部
4103 EPGデータ生成部
4106 MPEGTS多重化部
4107 TLV多重化部
4108 切換部
4201 受信部
4202 MPEGTS多重分離部
4203 TLV多重分離部
4204 EPG蓄積部
4207 映像音声切換部
4208 映像音声処理部
4209 映像音声出力部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンロード放送信号を受信する受信部と、
受信された前記ダウンロード放送信号から、映像音声データとダウンロードコンテンツ情報を分離する分離部と、
分離された前記映像音声データを蓄積するコンテンツ蓄積部と、
分離された前記ダウンロードコンテンツ情報を蓄積するコンテンツ情報蓄積部と、
前記ダウンロードコンテンツ情報に含まれるプレイリスト情報に基づいて再生するコンテンツを指定するとともに、前記コンテンツ蓄積部に蓄積したコンテンツを再生するコンテンツ再生制御部と、
前記プレイリスト情報に含まれるURLにアクセスする通信部と、を備え、
前記コンテンツ再生制御部は、前記通信部がアクセスした前記URLからコンテンツを取得して前記コンテンツ蓄積部に蓄積させることを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
前記プレイリスト情報は、少なくともコンテンツ参照属性、有効期限属性及び代替コンテンツ参照属性を含み、
前記コンテンツ再生制御部は、前記有効期限属性に応じて前記コンテンツ参照属性が有効か否かを判断し、有効である場合は前記コンテンツ参照属性で指定されるコンテンツを取得し、有効でない場合は前記代替コンテンツ参照属性で指定されるコンテンツを取得することを特徴とする請求項1に記載の放送受信装置。
【請求項3】
前記コンテンツ再生制御部は、前記コンテンツ蓄積部へのコンテンツ蓄積完了後に、前記プレイリスト情報の前記代替コンテンツ参照属性で指定されるコンテンツを前記通信部を介して取得することを特徴とする請求項2に記載の放送受信装置。
【請求項4】
ダウンロード放送信号を受信するステップと、
受信した前記ダウンロード放送信号から、映像音声データとダウンロード放送コンテンツ情報を分離するステップと、
前記映像音声データを蓄積するステップと、
前記ダウンロードコンテンツ情報に含まれるプレイリスト情報に基づいて再生するコンテンツを指定するステップと、
前記プレイリスト情報に含まれるURLにアクセスするステップと、
前記URLからコンテンツを取得して蓄積するステップと、
を有するダウンロードコンテンツ変更方法。
【請求項5】
前記プレイリスト情報は、少なくともコンテンツ参照属性、有効期限属性及び代替コンテンツ参照属性を含み、
前記有効期限属性に応じて前記コンテンツ参照属性が有効か否かを判断し、有効である場合は前記コンテンツ参照属性で指定されるコンテンツを取得し、有効でない場合は前記代替コンテンツ参照属性で指定されるコンテンツを取得するステップを更に有することを特徴とする請求項4に記載のダウンロードコンテンツ変更方法。
【請求項6】
リアルタイム放送番組を符号化する映像音声符号化部と、
前記リアルタイム放送番組に対応するEPGデータを生成するEPGデータ生成部と、
符号化された前記リアルタイム放送番組と生成された前記EPGデータを多重化してトランスポートストリームとして出力する第1多重化部と、
ダウンロード番組を蓄積するコンテンツ蓄積部と、
前記ダウンロード番組に対応するECGデータを生成するECGデータ生成部と、
蓄積された前記ダウンロード番組と生成された前記ECGデータを多重化してTLVストリームを出力する第2多重化部と、
前記トランスポートストリームと前記TLVストリームとを切換えて出力する送信部と、を備え、
前記ECGデータは、少なくともコンテンツ参照属性、有効期限属性及び代替コンテンツ参照属性からなるプレイリスト情報を含むことを特徴とする放送送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−23807(P2011−23807A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164751(P2009−164751)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】