放送波の中継機
【課題】 中継機における回り込みによる影響を防止することにより、放送波を正常に中継伝送することができる中継機を提供する。
【解決手段】 中継機2が受信する放送波は、同じ放送データが規定セグメントf0と当該規定セグメント以外の第1セグメントf1とにそれぞれ載せられており、中継機は、受信する放送波から規定セグメントf0の放送データを除去し、第1セグメントf1の放送データを、規定セグメントf0と当該規定セグメント及び第1セグメント以外の第2セグメントf2とにそれぞれの載せ換えた放送波を送信する。これにより、受信放送波に回り込みの影響を与える規定セグメントf0は除去されるので、放送波を正常に中継伝送することができる。
【解決手段】 中継機2が受信する放送波は、同じ放送データが規定セグメントf0と当該規定セグメント以外の第1セグメントf1とにそれぞれ載せられており、中継機は、受信する放送波から規定セグメントf0の放送データを除去し、第1セグメントf1の放送データを、規定セグメントf0と当該規定セグメント及び第1セグメント以外の第2セグメントf2とにそれぞれの載せ換えた放送波を送信する。これにより、受信放送波に回り込みの影響を与える規定セグメントf0は除去されるので、放送波を正常に中継伝送することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定されたセグメント(周波数)に放送データを載せた放送波を中継する中継機に関し、ワンセグ放送方式を利用して比較的狭い特定のエリア(例えば、イベント会場)をカバーするエリア放送システムに用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ワンセグ放送は、地上デジタル放送ISDB-T(Integrated Services Digital
Broadcasting-Terrestrial)の1種で、伝送チャンネル内の特定の周波数(セグメント)に放送データを載せた放送波を伝送する部分セグメント放送の1種の方式であり、携帯端末向け放送等に利用されている。ワンセグ放送や、3セグ(3セグメント)の所謂デジタルラジオ放送(地上デジタル音声放送)や4セグメントのSDTV(Standard Definition TeleVision)教育テレビ放送など、放送の伝送チャンネル内の全セグメント数の部分セグメントで放送する方式を、以下部分セグメント放送と称する。
また、ワンセグ放送等の部分セグメント放送は、SFN(Single Frequency Network)方式による実施や、微小な送信電力で比較的小さなエリアをカバーする放送システム(エリア放送)による実施に適しており、今後の更なる利用拡大が期待されている。
【0003】
例えば、地上デジタル放送のカバーエリアを構築する際に、SFN環境下で広いエリアを構築しようとすると、放送波の多段中継を行なってSFN環境を構築する必要がある。
図11に示すように、地上デジタル放送は、送信所(親局)から発射された放送波を幾つかの中継送信所で中継して伝送しており、送信所間の安定した電波による多段中継が行い易い。
【0004】
しかしながら、地上デジタル放送において、送信所(親局、上位局)や中継送信所(中継局)が都市部や山間部にある場合には、図12に示すように、都市部の車の往来やビルや山などによる電波反射が多く、放送波の多段中継によるSFN環境の構築は難しい。例えば、地上デジタル放送の送信所で用いる回り込みキャンセラも、電波反射の影響による放送波の受信信号レベル変動や、マルチパス波の数やD/U比の変動が激しく、回り込み波を安定的に継続してキャンセルして、後段に放送波信号(再送信波)を伝送することは難しい。
【0005】
ここで、地上デジタル放送のセグメントの概念について説明する。
図13に示すように、地上デジタル放送のチャンネル(図示の例では、各6MHzを14分割した内の13セグメント)内において、ワンセグ放送波は放送データを1つのセグメント(セグメント番号0)に載せて方法波を発射し、放送サービスを行っている。ワンセグ放送の受信者は、セグメント番号0の放送波を受信し、映像、音声、データを受信している。
このような地上デジタル放送のワンセグ放送サービスを行う場合であっても、上記と同様に、都市部や山間部などにおいて安定的にSFN環境下で多段中継を行うことが難しい。
【0006】
特許文献1には、ワンセグの放送方式を利用して微小な送信電力で特定のエリアをカバーする放送システム(エリア放送)では、サービスエリア内に不感地が生じ易いという問題を解決するために、使用可能な送信周波数帯域の他の可能な送信周波数帯域部分においても同じ内容の信号を同時に送信することで、所謂周波数ダイバーシチにより、エリア放送における不感地を解消あるいは低減することができる放送システムが提案されている。
【0007】
特許文献2には、複数の送信機が同一のチャンネルの異なるセグメントを使用してOFDM変調方式により信号を無線送信する場合、受信機での受信特性を良好にするために、複数の送信機のうちの1台以上の送信機では、受信手段が外部からの所定の信号を受信し、送信タイミング制御手段が受信手段により受信された信号に基づくタイミングでOFDM変調信号の送信タイミングを制御する送信システムが提案されている。
【0008】
特許文献3には、例えば地上デジタル放送システムのエリア放送において、入力信号に基づいて出力するセグメント(周波数)を決定することができる送信機を提供するために、チャンネル検出手段が、入力された放送のための信号に含まれるチャンネルを特定する情報に基づいて、当該チャンネルを検出し、セグメント検出手段が、入力された放送のための信号に含まれるセグメントを特定する情報に基づいて、当該セグメントを検出し、変調信号生成手段が、チャンネル検出手段により検出されたチャンネルに設けられる複数のセグメントの中でセグメント検出手段により検出されたセグメントの位置に入力された放送のための信号に含まれる放送のためのデータを載せた変調信号を生成し、そして、変調信号生成手段により生成された変調信号を出力する送信機が提案されている。
【0009】
特許文献4には、例えば地上デジタル放送システムのエリア放送において、空中の周波数別の電波使用状況に基づいて出力するセグメント(周波数)を決定することができる送信機を提供するために、セグメント検出手段が、無線により受信された電波の周波数領域対信号レベルの関係に基づいて、送信に使用するための空き周波数領域に対応するセグメントを検出し、送信信号生成手段が、セグメント検出手段により検出されたセグメントの位置に入力された放送のための信号に含まれる放送のためのデータを載せた送信信号を生成し、そして、送信信号生成手段により生成された送信信号を出力する送信機が提案されている。
【0010】
特許文献5には、エリア放送を広い範囲で受信可能とするために、所定地域に共通の中央セグメントの地上デジタル放送電波を送信する第1の送信機と、所定地域の部分に周辺セグメントの地上デジタル放送電波を送信する電波を送信する他の送信機とを備え、中央セグメント及び中央セグメントに隣接する周辺セグメントの送信点配置、送信電界、再送信電界、周波数チャンネル間隔、送信アンテナ高さ、送信アンテナ指向性、送信位相同期、周波数セグメント間隔、送信電界伝搬性の少なくとも一つを制御する、地上デジタル放送電波の前記所定地域の地上付近での中央セグメントの受信電界から上記周辺セグメントの送信電界を離す手段を有する放送システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−118903号公報
【特許文献2】特開2010−154416号公報
【特許文献3】特開2010−62811号公報
【特許文献4】特開2010−62809号公報
【特許文献5】特開2009−212577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のように、ワンセグ放送方式等の部分セグメント放送における中継伝送では、電波反射の影響などによる回り込み波を安定的に継続してキャンセルすることが困難であり、これによって、後段への放送波信号の伝送に支障が生じてしまう場合があるという課題があった。
具体的には、例えばワンセグ放送方式では、中継送信所(中継機)では、セグメント番号0のセグメントに放送データを載せた放送波を受信し、この放送波を再度中継送信するが、当該中継送信した放送波が回り込みによって同じ中継送信所で受信されてしまうと、時間差をもった放送データが干渉することとなって放送波を正常に伝送することが困難となってしまうと言う課題があった。
【0013】
本発明は、上記従来の事情に鑑みなされたもので、回り込みによる影響を防止することにより、放送波を正常に中継伝送することができる中継機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、複数のセグメント中の規定セグメントに放送データを載せた放送波を中継する中継機であり、中継機が受信する放送波は、同じ放送データが規定セグメントと当該規定セグメント以外の第1セグメントとにそれぞれ載せられており、当該中継機は、受信する放送波から規定セグメントの放送データを除去し、当該受信する放送波の第1セグメントの放送データを、規定セグメントと当該規定セグメント及び第1セグメント以外の第2セグメントとにそれぞれの載せ換えた放送波を送信する。
【0015】
本発明は、回り込みを防止するために、放送波の余剰の或いは利用可能な周波数(セグメント)を有効活用する(より具体的には、放送データを他のセグメントに載せ換える)という新規な技術的思想に基づいてなされたものであり、図13に示した例を用いて説明すれば、同じ放送データが規定セグメント(例えば、セグメント番号0)と当該規定セグメント以外の第1セグメント(例えば、14分割されたセグメント番号0以外のいずれかのセグメント)とにそれぞれ載せられた放送波を中継伝送する。
したがって、本発明において、送信所(送信機)では、同じ放送データが規定セグメントと当該第1セグメントとにそれぞれ載せられた放送波を送信する。
【0016】
そして、本発明に係る中継機では、受信する放送波から規定セグメントの放送データを除去し、当該受信する放送波の第1セグメントの放送データを、規定セグメントと当該規定セグメント及び第1セグメント以外の第2セグメントとにそれぞれの載せ換えた放送波を送信する。これにより、送信放送波と受信放送波で同じ放送データが規定セグメント以外の異なるセグメントに載せられた形式で中継伝送され、回り込みによる影響を防止することができる。
なお、同じ中継機において受信波の第1セグメントと送信波の第2セグメントは異なるセグメントであるが、多段中継を行なう場合に、後段の中継機では、前段の中継機における受信波の第1セグメントを送信波の第2セグメントとしてもよく、或いは、これらセグメントとことなる第3のセグメントを送信波の第2セグメントとしてもよい。
【0017】
また、本発明は、複数のセグメント中の規定されたセグメントに放送データを載せた放送波を中継機を介して伝送する伝送システムとして実現することができ、当該伝送システムでは、送信側装置は、複数のセグメント中の規定セグメントと当該規定セグメント以外の第1のセグメントとに同じ放送データを載せた放送波を中継機へ送信し、中継機は、受信した放送波の規定セグメントの放送データを除去し、第1のセグメントの放送データを、規定セグメントと当該規定セグメント及び第1のセグメント以外の第2のセグメントとにそれぞれ載せ換えた放送波を送信する。
【0018】
また、本発明は、放送の伝送チャンネル内の13セグメント中の3または4セグメントに放送データを載せた放送波を中継する中継機において、中継機が受信する放送波は、同じ放送データが規定の3または4セグメントと当該3または4セグメント以外の第1の3または4セグメントとにそれぞれ載せられており、当該中継機は、受信する放送波から当該規定の3または4セグメントの放送データを除去し、当該受信する放送波の第1の3または4セグメントの放送データを、当該規定の3または4セグメントと当該第1の3または4セグメント以外の第2の3または4セグメントとにそれぞれの載せ換えた放送波を送信する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、周波数(セグメント)を有効活用して、回り込みによる影響を防止した放送波の中継伝送を実現することができる。
また、本発明によれば、多段中継によるエリア放送を高品質に実現することができ、電波を有効的に使用することができる。
より具体的には、1つの伝送チャンネル内で周波数(セグメント)をずらしながら後段に放送波を伝送することにより、回り込みの影響を受けず、多段中継が可能かつSFNを構築可能な中継伝送システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る中継機を説明する図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る中継伝送を説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る中継機を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る放送データの載せ換え処理を説明する図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る放送データの載せ換え処理を説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る中継機を説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る放送データの載せ換え処理を説明する図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る放送データの載せ換え処理を行なう構成を説明する図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る放送データの載せ換え処理を説明する図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る放送データの載せ換え処理を行なう構成を説明する図である。
【図11】地上デジタル放送の多段中継を説明する図である。
【図12】地上デジタル放送の信号劣化を説明する図である。
【図13】地上デジタル放送のセグメント分割を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を、図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る放送波の中継伝送システムを示している。
図1には、多段中継を行なう中継伝送システムの基本的な構成を示してあり、当該中継伝送システムでは、送信機1から送信された放送波を中継機(A)2、中継機(B)3、・・・を順次中継して伝送する。
【0022】
この中継電送システムは、伝送チャンネル内の特定のセグメント(規定セグメント:f0)に放送データを載せた放送波を伝送するワンセグ方式の地上デジタル放送波を伝送するものであるが、この放送データの伝送に他のセグメント(f1、f2、・・・fx)も利用する。
このために、送信機1は、複数のセグメント中の規定セグメントf0に載せられた放送データを規定セグメントf0以外の第1セグメントf1にコピーして載せる機能と、規定セグメントf0と第1セグメントf1とに同じ放送データを載せた放送波(f0、f1)を中継機(A)2へ送信する機能を有している。
【0023】
また、送信機1からの放送波(f0、f1)を中継する中継機(A)2は、放送波(f0、f1)を受信する受信機能6、受信した放送波(f0、f1)から規定セグメントf0の放送データを除去するフィルタ機能7、受信した放送波(f0、f1)の第1セグメントf1の放送データを、規定セグメントf0と、当該規定セグメント及び第1セグメント以外の第2セグメントf2にそれぞれ載せ換える載せ換え機能8と、規定セグメントf0と第2セグメントf2とに同じ放送データを載せた放送波(f0、f2)を中継機(B)3へ送信する送信機能9と、を有している。
【0024】
したがって、中継機(A)2は、受信放送波(f0、f1)から規定セグメントf0の放送データを除去し、第1セグメントf1の放送データを規定セグメントf0と第2セグメントf2にそれぞれ載せ換えた送信放送波(f0、f2)を中継機(B)3へ送信する。
これにより、送信放送波(f0、f2)の回り込みが生じたとしても、受信放送波(f0、f1)の規定セグメントf0ではなく第1セグメントf1の放送データが中継伝送されるので、中継機(A)2は放送データを正常に中継伝送することができる。
【0025】
そして、後段の中継機(B)3も中継機(A)2と同様な機能を有しており、受信した放送波(f0、f2)から規定セグメントf0の放送データを除去し、受信した放送波(f0、f2)の第2セグメントf2の放送データを、規定セグメントf0と、当該規定セグメント及び第2セグメント以外の第3セグメントfxにそれぞれ載せ換えた放送波(f0、fx)を後段へ送信する。
【0026】
なお、この場合、第3セグメントfxは、規定セグメントf0及び第2セグメントf2と異なるセグメントであればよく、第1セグメントf1を第3セグメントfxとして用いても中継機(B)3における回り込みを防止することができる。すなわち、“x”は、放送データ伝送に使用可能なセグメントの番号の内の“0”“2”以外の任意の整数である。
例えば、放送波がガードインターバル付きのOFDM信号である場合には、強い信号を選択受信することができるので、このセグメント(周波数)の任意性は高くなる。
【0027】
上記のような中継伝送システムにより、例えば、図2に示すような多段中継によるエリア放送を実現することができる。
すなわち、送信機(送信所)1から送信された放送波(f0、f1)を受信した中継機2−1,2−2が放送波(f0、f2)を中継送信し、更に、放送波(f0、f2)を受信した中継機3−1,3−2が放送波(f0、fx)を中継送信し、更に後段の中継機が放送データを載せるセグメントをずらしながら放送波を中継伝送し、また、テレビ受像機などの受信機5が伝送される放送波を受信して放送データによる映像を出力する。
【0028】
次に、放送データ(コンテンツ)の多段中継について、図3〜図5を参照して更に詳しく説明する。
例えばワンセグサービスを行いたい場合、任意チャンネルのセグメント番号の規定セグメントf0でコンテンツを送出する。その際に多段中継用にセグメントf0以外の例えばセグメント番号11のセグメントf11にも、セグメント番号f0と同じ信号(コンテンツ)をコピーして発射する。
ここの説明では、この最初の電波発射点から、ワンセグサービスをカバーする領域を親セルといい、親セルの電波を受信し多段中継を行う領域をそれぞれ子セルという。セルの数は、多段中継を行うだけ存在することとなる。
【0029】
図3には、親セルを成す送信機10と子セルを成す送信機20の構成を示してある。
なお、親セル送信機10は図1に示す送信機1に相当し、子セル送信機20は図1に示す中継機2に相当する。
また、必要に応じて、多段中継を行なう子セルをそれぞれ区別する場合には子セル1、子セル2、・・・等の番号を付して記載し、これら子セルを総称する場合には子セルNを記載する。
【0030】
親セル送信機10は、地上デジタル放送変調部11と地上デジタル放送変調部12、出力合成部13を有している。
親セル送信機10にはサービスを行いたいコンテンツが入力され、このコンテンツは地上デジタル放送変調部11と地上デジタル放送変調部12に入力される。
【0031】
地上デジタル放送変調部11はセグメント番号0の信号として、この出力信号を出力信号合成部13に送出し、地上デジタル放送変調部12はセグメント番号0以外の信号として、セグメント番号X出力信号を出力信号合成部13に送出する。
出力信号合成部13は、セグメント番号0出力信号とセグメント番号X出力信号を含んだ放送波を親セル送信信号として出力する。
なお、上記処理は図4の親セル処理である。
【0032】
子セルN送信機20は、受信フィルタ部21、セグメントコピー部22を有している。
子セルN送信機20は、上位の送信機から伝搬路により受信特性が変化した子セルN受信信号として受信する。例えば子セル1送信機は、自分より上位の送信機である親セル送信機10が発射した親セル送信信号を子セル1受信信号として受信する。このNの数字は、何段目の子セル送信機かを表しており、何番目であってもよい。
なお、子セルN受信信号の処理は、図4及び図5にそれぞれ示してある。
【0033】
子セルN受信機20は、子セルN受信信号を受信フィルタ部21に入力し、受信フィルタ部21から受信信号をセグメントコピー部22に出力する。この受信フィルタ部21の処理が図4の子セル1処理2である。
セグメントコピー部22は受信信号のコンテンツをコピーし、子セルN送信信号として出力する。このセグメントコピー部22の処理が図4の子セル1処理3である。
【0034】
子セル1が発射する子セル1送信信号は、回り込みにより、子セル1自身の受信信号である子セル受信信号として入力される。この時の受信波と送信波の混信の様子が図4の子セル1処理4である。
しかし、後段の受信フィルタ部21にて、図4の子セル1処理5の処理により、綺麗にワンセグの信号を取り出すことが可能で、回り込みによる発振は発生しない。
【0035】
このようにして、子セル1送信機が発射した子セル1送信信号を、子セル2送信機が子セル2受信信号として受信し、子セル2出力信号として出力する。
なお、Nの数字はいくら増えてもよく、このようにして1,2,3・・・Nと子セルを増やし、ワンセグの電波を後段に伝送していく。
【0036】
上記の処理を図4及び図5を参照して更に詳しく説明する。
例えば子セル1は、親セルから発射した電波を受信する。その様子を図4の子セル1処理1に示す。
続いてセグメント番号11以外で受信した信号を除去する。その様子を図4の子セル1処理2に示す。
【0037】
続いてセグメント番号0以外のセグメント番号11で受信した信号を、セグメント番号0にずらし、また、子セル1より後段のセルにて多段中継を可能にするために、セグメント番号0以外の例えばセグメント番号12にもコピーして伝送する。その様子を図4内の子セル1処理3に示す。
子セル1が発射した電波は、セグメント番号0と12であり、親セルから受信する電波はセグメント番号0と11であるから、子セル1が発射したセグメント番号0の電波は、回り込みにより、子セル1の受信部に混入する。その様子を図4の子セル1処理4に示す。
しかし、子セル1はセグメント番号0の信号を除去するので、回り込みによる影響は発生しない。その様子を図4の子セル1処理5に示す。
【0038】
親セルで発射したセグメント番号0の信号と子セル1で発射したセグメント番号0の信号は、同じ信号なので親セルと子セル1間はSFN環境が構築可能で、親セルと子セル1の領域が重なり合っても受信に影響はない。
つまり、ワンセグサービスの受信者は、親セルから子セル1へとセグメント番号0を継続して受信可能である。その様子を図4は示している。
【0039】
続いて子セル2では、子セル1からのセグメント番号0と12の信号を受信する。その様子を図5の子セル2処理1に示す。
続いてセグメント番号12以外の信号を除去する。その様子を図5の子セル2処理2に示す。
そして、セグメント番号12の信号をセグメント番号0にずらし、また、セグメント番号7にもずらし、セグメント番号0と7にコンテンツを載せた放送波(電波)を発射する。その様子を図5の子セル2処理3に示す。
【0040】
子セル1と同様に、子セル2でもセグメント番号0では、回り込みにより、子セル1から受信した電波と子セル2で発射した電波が子セル2の受信部に混入する。その様子を図5の子セル2処理4に示す。
しかし、子セル2はセグメント番号12以外の信号を除去するので、回り込みによる影響は発生しない。その様子を図5の子セル2処理5に示す。
【0041】
子セル1で発射したセグメント番号0の信号と子セル2で発射したセグメント番号0の信号は、同じ信号なので子セル1と子セル2間はSFN環境が構築可能で、子セル1と子セル2の領域が重なり合っても受信に影響はない。その処理の流れを図5は示している。
したがって、子セル1から子セル2へとセグメント番号0を継続して受信可能である。遡れば、親セルから子セル1、子セル2へとセグメント番号0を継続して受信可能になる訳である。このように子セルにて隣接するセルと送出するセグメントを変えながら伝送していけば、セルの数Nは任意に増やすことが可能になる。セルの数Nを任意に増やすことが可能であれば、ワンセグサービスの受信者は親セルから子セルNまで、継続してワンセグを受信可能になる。
【0042】
次に、サービスを行いたいコンテンツに加えて、各セル送信機の制御信号も伝送する実施例について説明する。
図6には、親セルを成す送信機10と子セルを成す送信機20の構成を示してある。
親セル送信機10は、地上デジタル放送変調部11、地上デジタル放送変調部12、出力合成部13に加えて、制御信号伝送部14を有している。
親セル送信機10にはサービスを行いたいコンテンツが入力され、このコンテンツは地上デジタル放送変調部11と地上デジタル放送変調部12に入力される。
【0043】
地上デジタル放送変調部11はセグメント番号0の信号として、セグメント番号0出力信号を出力信号合成部13へ送出し、地上デジタル放送変調部12はセグメント番号0以外の信号として、セグメント番号X出力信号を出力信号合成部13へ送出する。
制御信号伝送部14は、各セル送信機の制御信号として、制御信号出力信号を出力信号合成部13へ出力する。
出力信号合成部13は、セグメント番号0出力信号とセグメント番号X出力信号と制御信号出力信号を入力し、親セル送信信号を出力する。親セル送信信号が図7の親セル処理である。
【0044】
子セルN送信機20は、受信フィルタ部21、セグメントコピー部22に加えて、制御信号変更部23、出力信号合成部24を有している。
子セルN送信機20は、上位の送信機から伝搬路により受信特性が変化した子セルN受信信号として受信する。例えば子セル1送信機は、自分より上位の送信機である親セル送信機10が発射した親セル送信信号を子セル1受信信号として受信する。子セルN受信信号が図7の子セル1処理1である。
【0045】
子セルN受信機20は、子セルN受信信号を受信フィルタ部21に入力し、受信信号をセグメントコピー部22に出力する。受信フィルタ部21の処理が図7の子セル1処理2である。
セグメントコピー部22はセグメントをコピーし、子セルN送信信号として出力合成部24へ出力する。
【0046】
制御信号変更部23は、制御信号の内容を書き換えても書き換えなくてもよく、受信したセグメントとは異なるセグメントへ周波数をずらし、制御信号出力信号として出力合成部24へ出力する。
出力合成部24は、コピー信号と制御信号出力信号を合成し、子セルN送信信号として出力する。出力合成部24の処理が図7内の子セル1処理3である。
【0047】
子セル1が発射する子セル1送信信号は、回り込みにより、子セル1自身の受信信号である子セル受信信号として子セル1に入力される。この時の受信波と送信波の混信の様子が図7の子セル1処理4である。
しかし、後段の受信フィルタ部21にて、図4の子セル1処理5と同様な処理により、綺麗にワンセグの信号を取り出すことが可能で、回り込みによる発振は発生しない。
このようにして、子セル1送信機が発射した子セル1送信信号を、子セル2送信機が子セル2受信信号として受信し、子セル2出力信号として出力する。
【0048】
上記の処理を図7を参照して更に詳しく説明する。
例えばワンセグサービスを行いたい場合、任意チャンネルのセグメント番号0でコンテンツを送出する。その際に多段中継用にセグメント番号0以外の例えばセグメント番号12にも、セグメント番号0と同じ信号(コンテンツ)をコピーして発射する。それ以外に、セルを効率的に構築するために、各セル送信機が発射するセグメントを制御するためや、送信機のファームウェアの伝送用の信号である制御信号を更に他のセグメント番号(セグメント番号11)で伝送する。その様子を図7の親セル処理に示す。
【0049】
子セル1は親セルから発射した電波を受信する。その様子を図7の子セル1処理1に示す。
続いて後段に伝送したいコンテンツのセグメント番号12と制御用信号のセグメント11以外で受信した信号を除去する。その様子を図7の子セル1処理2に示す。
続いてセグメント番号0以外のセグメント番号12で受信した信号をセグメント番号0にずらし、また、子セル1より後段のセルに多段中継を可能にするために、セグメント番号0以外の例えばセグメント番号7にもコピーして伝送する。更に、制御用に伝送する信号をセグメントを1つずらして伝送する。その様子を図7の子セル1処理3に示す。
【0050】
子セル1が発射した電波は、セグメント番号0、1、7であり、親セルから受信する電波はセグメント番号0、11、12であるから、子セル1が発射したセグメント番号0の電波は、回り込みにより、子セル1の受信部に混入する。その様子を図7の子セル1処理4に示す。
しかし、子セル1はセグメント番号0の信号を除去するので回り込みによる影響は発生しない。その様子を図7の子セル1処理5に示す。
親セルで発射したセグメント番号0の信号と子セル1で発射したセグメント番号0の信号は、同じ信号なので親セルと子セル1間はSFN環境が構築可能で、親セルと子セル1の領域が重なり合っても受信に影響はない。つまり、ワンセグサービスの受信者は、親セルから子セル1へとセグメント番号0を継続して受信可能である。
【0051】
ここで、ワンセグの除去及び複製の処理を行なうための他の構成例を図8〜図10を参照して説明する。
ワンセグの除去及び複製の処理を周波数領域に変換して行なうと、FFT処理が必要となり、ガードインターバルを超える遅延が生じてSFNが実現困難となることが考えられ
ることから、図8にはワンセグの除去及び複製の処理を時間軸の信号で行なう構成例を示し、図9にはその処理の内容を示してある。
【0052】
この例では、規定セグメントと第1セグメントとにコンテンツを載せた受信信号(図9のa)を、アナログ/デジタル変換器30によりデジタル変換し、この受信信号の規定セグメントに載せられたコンテンツをフィルタ31により除去する(図9のb)。
続いて、フィルタ31から出力された信号を分岐して、一方の信号には乗算器32により第1セグメントを規定セグメントに移動する周波数シフトrot1を与え(図9のc)、他方の信号には乗算器33により第1セグメントを第2セグメントに移動する周波数シフトrot2を与える(図9のd)。
【0053】
そして、これら周波数シフト(変調)された信号を加算器34により合成し(図9のe)、合成された信号をデジタル/アナログ変換器35によりアナログ変換して送信信号とする。
なお、アナログ信号処理のみを用いた場合には、図10に示すような構成とすればよい。
【0054】
ここで、本発明は、直線的或いは平面的に複数の中継機を配置した多段中継システムだけでなく、高さ方向への中継機の配置を含む3次元的な配置構成によるシステム構成とすることもできる。例えば、半径300m程度の放送範囲のエリア放送では、300m以上の建物や障害物が存在すると電波伝搬が阻害されるので、中継システムを3次元的な配置構成とするのが好ましい。
【0055】
また、本発明は、部分セグメント放送の中継にも適用することができる。したがって、地上デジタル放送の各6MHzを14分割した内の13セグメントにおいて、ワンセグ放送だけでなく、3セグ(3セグメント)の所謂デジタルラジオ放送(地上デジタル音声放送)や4セグメントのSDTV教育テレビ放送などの部分セグメント放送の中継にも適用することができる。
具体的には、図13の放送の伝送チャンネル内の13セグメント中の3または4セグメントに放送データを載せた放送波を中継する中継機において、中継機が受信する放送波は、同じ放送データが規定の3または4セグメント(図1のf0)と当該3または4セグメント以外の第1の3または4セグメント(図1のf1)とにそれぞれ載せられており、当該中継機は、受信する放送波から当該規定の3または4セグメント(図1のf0)の放送データを除去し、当該受信する放送波の第1の3または4セグメント(図1のf1)の放送データを、当該規定の3または4セグメント(図1のf0)と当該第1の3または4セグメント(図1のf1)以外の第2の3または4セグメント(図1のf2)とにそれぞれの載せ換えた放送波を送信する。
【0056】
また、映像の符号化はMPEG−2,H.264,HEVC(High Efficiency Video Codec)と新しくなると、効率は順次倍になる。つまり、HEVCではMPEG−2の4倍の符号化効率となり、SDTV放送は1セグメントとなる。そのため、本発明は、SDTV放送の1セグメント等部分セグメント中継にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、放送の伝送チャンネル内の複数の周波数(セグメント)を有効活用して、回り込みによる影響を防止した中継伝送を実現することができる。さらに、回り込みの影響を受けず、多段中継が可能かつSFNを構築可能な、部分セグメント放送の中継伝送システムを実現することができる。また、多段中継によるエリア放送を高品質に実現することができ、電波を有効的に使用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:送信機、 2、3:中継機、
7:フィルタ、 8:載せ換え機能部、
9:送信機能部、 f0:規定セグメント、
f1:第1セグメント、 f2:第2セグメント、
【技術分野】
【0001】
本発明は、規定されたセグメント(周波数)に放送データを載せた放送波を中継する中継機に関し、ワンセグ放送方式を利用して比較的狭い特定のエリア(例えば、イベント会場)をカバーするエリア放送システムに用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ワンセグ放送は、地上デジタル放送ISDB-T(Integrated Services Digital
Broadcasting-Terrestrial)の1種で、伝送チャンネル内の特定の周波数(セグメント)に放送データを載せた放送波を伝送する部分セグメント放送の1種の方式であり、携帯端末向け放送等に利用されている。ワンセグ放送や、3セグ(3セグメント)の所謂デジタルラジオ放送(地上デジタル音声放送)や4セグメントのSDTV(Standard Definition TeleVision)教育テレビ放送など、放送の伝送チャンネル内の全セグメント数の部分セグメントで放送する方式を、以下部分セグメント放送と称する。
また、ワンセグ放送等の部分セグメント放送は、SFN(Single Frequency Network)方式による実施や、微小な送信電力で比較的小さなエリアをカバーする放送システム(エリア放送)による実施に適しており、今後の更なる利用拡大が期待されている。
【0003】
例えば、地上デジタル放送のカバーエリアを構築する際に、SFN環境下で広いエリアを構築しようとすると、放送波の多段中継を行なってSFN環境を構築する必要がある。
図11に示すように、地上デジタル放送は、送信所(親局)から発射された放送波を幾つかの中継送信所で中継して伝送しており、送信所間の安定した電波による多段中継が行い易い。
【0004】
しかしながら、地上デジタル放送において、送信所(親局、上位局)や中継送信所(中継局)が都市部や山間部にある場合には、図12に示すように、都市部の車の往来やビルや山などによる電波反射が多く、放送波の多段中継によるSFN環境の構築は難しい。例えば、地上デジタル放送の送信所で用いる回り込みキャンセラも、電波反射の影響による放送波の受信信号レベル変動や、マルチパス波の数やD/U比の変動が激しく、回り込み波を安定的に継続してキャンセルして、後段に放送波信号(再送信波)を伝送することは難しい。
【0005】
ここで、地上デジタル放送のセグメントの概念について説明する。
図13に示すように、地上デジタル放送のチャンネル(図示の例では、各6MHzを14分割した内の13セグメント)内において、ワンセグ放送波は放送データを1つのセグメント(セグメント番号0)に載せて方法波を発射し、放送サービスを行っている。ワンセグ放送の受信者は、セグメント番号0の放送波を受信し、映像、音声、データを受信している。
このような地上デジタル放送のワンセグ放送サービスを行う場合であっても、上記と同様に、都市部や山間部などにおいて安定的にSFN環境下で多段中継を行うことが難しい。
【0006】
特許文献1には、ワンセグの放送方式を利用して微小な送信電力で特定のエリアをカバーする放送システム(エリア放送)では、サービスエリア内に不感地が生じ易いという問題を解決するために、使用可能な送信周波数帯域の他の可能な送信周波数帯域部分においても同じ内容の信号を同時に送信することで、所謂周波数ダイバーシチにより、エリア放送における不感地を解消あるいは低減することができる放送システムが提案されている。
【0007】
特許文献2には、複数の送信機が同一のチャンネルの異なるセグメントを使用してOFDM変調方式により信号を無線送信する場合、受信機での受信特性を良好にするために、複数の送信機のうちの1台以上の送信機では、受信手段が外部からの所定の信号を受信し、送信タイミング制御手段が受信手段により受信された信号に基づくタイミングでOFDM変調信号の送信タイミングを制御する送信システムが提案されている。
【0008】
特許文献3には、例えば地上デジタル放送システムのエリア放送において、入力信号に基づいて出力するセグメント(周波数)を決定することができる送信機を提供するために、チャンネル検出手段が、入力された放送のための信号に含まれるチャンネルを特定する情報に基づいて、当該チャンネルを検出し、セグメント検出手段が、入力された放送のための信号に含まれるセグメントを特定する情報に基づいて、当該セグメントを検出し、変調信号生成手段が、チャンネル検出手段により検出されたチャンネルに設けられる複数のセグメントの中でセグメント検出手段により検出されたセグメントの位置に入力された放送のための信号に含まれる放送のためのデータを載せた変調信号を生成し、そして、変調信号生成手段により生成された変調信号を出力する送信機が提案されている。
【0009】
特許文献4には、例えば地上デジタル放送システムのエリア放送において、空中の周波数別の電波使用状況に基づいて出力するセグメント(周波数)を決定することができる送信機を提供するために、セグメント検出手段が、無線により受信された電波の周波数領域対信号レベルの関係に基づいて、送信に使用するための空き周波数領域に対応するセグメントを検出し、送信信号生成手段が、セグメント検出手段により検出されたセグメントの位置に入力された放送のための信号に含まれる放送のためのデータを載せた送信信号を生成し、そして、送信信号生成手段により生成された送信信号を出力する送信機が提案されている。
【0010】
特許文献5には、エリア放送を広い範囲で受信可能とするために、所定地域に共通の中央セグメントの地上デジタル放送電波を送信する第1の送信機と、所定地域の部分に周辺セグメントの地上デジタル放送電波を送信する電波を送信する他の送信機とを備え、中央セグメント及び中央セグメントに隣接する周辺セグメントの送信点配置、送信電界、再送信電界、周波数チャンネル間隔、送信アンテナ高さ、送信アンテナ指向性、送信位相同期、周波数セグメント間隔、送信電界伝搬性の少なくとも一つを制御する、地上デジタル放送電波の前記所定地域の地上付近での中央セグメントの受信電界から上記周辺セグメントの送信電界を離す手段を有する放送システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−118903号公報
【特許文献2】特開2010−154416号公報
【特許文献3】特開2010−62811号公報
【特許文献4】特開2010−62809号公報
【特許文献5】特開2009−212577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のように、ワンセグ放送方式等の部分セグメント放送における中継伝送では、電波反射の影響などによる回り込み波を安定的に継続してキャンセルすることが困難であり、これによって、後段への放送波信号の伝送に支障が生じてしまう場合があるという課題があった。
具体的には、例えばワンセグ放送方式では、中継送信所(中継機)では、セグメント番号0のセグメントに放送データを載せた放送波を受信し、この放送波を再度中継送信するが、当該中継送信した放送波が回り込みによって同じ中継送信所で受信されてしまうと、時間差をもった放送データが干渉することとなって放送波を正常に伝送することが困難となってしまうと言う課題があった。
【0013】
本発明は、上記従来の事情に鑑みなされたもので、回り込みによる影響を防止することにより、放送波を正常に中継伝送することができる中継機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、複数のセグメント中の規定セグメントに放送データを載せた放送波を中継する中継機であり、中継機が受信する放送波は、同じ放送データが規定セグメントと当該規定セグメント以外の第1セグメントとにそれぞれ載せられており、当該中継機は、受信する放送波から規定セグメントの放送データを除去し、当該受信する放送波の第1セグメントの放送データを、規定セグメントと当該規定セグメント及び第1セグメント以外の第2セグメントとにそれぞれの載せ換えた放送波を送信する。
【0015】
本発明は、回り込みを防止するために、放送波の余剰の或いは利用可能な周波数(セグメント)を有効活用する(より具体的には、放送データを他のセグメントに載せ換える)という新規な技術的思想に基づいてなされたものであり、図13に示した例を用いて説明すれば、同じ放送データが規定セグメント(例えば、セグメント番号0)と当該規定セグメント以外の第1セグメント(例えば、14分割されたセグメント番号0以外のいずれかのセグメント)とにそれぞれ載せられた放送波を中継伝送する。
したがって、本発明において、送信所(送信機)では、同じ放送データが規定セグメントと当該第1セグメントとにそれぞれ載せられた放送波を送信する。
【0016】
そして、本発明に係る中継機では、受信する放送波から規定セグメントの放送データを除去し、当該受信する放送波の第1セグメントの放送データを、規定セグメントと当該規定セグメント及び第1セグメント以外の第2セグメントとにそれぞれの載せ換えた放送波を送信する。これにより、送信放送波と受信放送波で同じ放送データが規定セグメント以外の異なるセグメントに載せられた形式で中継伝送され、回り込みによる影響を防止することができる。
なお、同じ中継機において受信波の第1セグメントと送信波の第2セグメントは異なるセグメントであるが、多段中継を行なう場合に、後段の中継機では、前段の中継機における受信波の第1セグメントを送信波の第2セグメントとしてもよく、或いは、これらセグメントとことなる第3のセグメントを送信波の第2セグメントとしてもよい。
【0017】
また、本発明は、複数のセグメント中の規定されたセグメントに放送データを載せた放送波を中継機を介して伝送する伝送システムとして実現することができ、当該伝送システムでは、送信側装置は、複数のセグメント中の規定セグメントと当該規定セグメント以外の第1のセグメントとに同じ放送データを載せた放送波を中継機へ送信し、中継機は、受信した放送波の規定セグメントの放送データを除去し、第1のセグメントの放送データを、規定セグメントと当該規定セグメント及び第1のセグメント以外の第2のセグメントとにそれぞれ載せ換えた放送波を送信する。
【0018】
また、本発明は、放送の伝送チャンネル内の13セグメント中の3または4セグメントに放送データを載せた放送波を中継する中継機において、中継機が受信する放送波は、同じ放送データが規定の3または4セグメントと当該3または4セグメント以外の第1の3または4セグメントとにそれぞれ載せられており、当該中継機は、受信する放送波から当該規定の3または4セグメントの放送データを除去し、当該受信する放送波の第1の3または4セグメントの放送データを、当該規定の3または4セグメントと当該第1の3または4セグメント以外の第2の3または4セグメントとにそれぞれの載せ換えた放送波を送信する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、周波数(セグメント)を有効活用して、回り込みによる影響を防止した放送波の中継伝送を実現することができる。
また、本発明によれば、多段中継によるエリア放送を高品質に実現することができ、電波を有効的に使用することができる。
より具体的には、1つの伝送チャンネル内で周波数(セグメント)をずらしながら後段に放送波を伝送することにより、回り込みの影響を受けず、多段中継が可能かつSFNを構築可能な中継伝送システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る中継機を説明する図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る中継伝送を説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る中継機を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る放送データの載せ換え処理を説明する図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る放送データの載せ換え処理を説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る中継機を説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る放送データの載せ換え処理を説明する図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る放送データの載せ換え処理を行なう構成を説明する図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る放送データの載せ換え処理を説明する図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る放送データの載せ換え処理を行なう構成を説明する図である。
【図11】地上デジタル放送の多段中継を説明する図である。
【図12】地上デジタル放送の信号劣化を説明する図である。
【図13】地上デジタル放送のセグメント分割を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を、図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る放送波の中継伝送システムを示している。
図1には、多段中継を行なう中継伝送システムの基本的な構成を示してあり、当該中継伝送システムでは、送信機1から送信された放送波を中継機(A)2、中継機(B)3、・・・を順次中継して伝送する。
【0022】
この中継電送システムは、伝送チャンネル内の特定のセグメント(規定セグメント:f0)に放送データを載せた放送波を伝送するワンセグ方式の地上デジタル放送波を伝送するものであるが、この放送データの伝送に他のセグメント(f1、f2、・・・fx)も利用する。
このために、送信機1は、複数のセグメント中の規定セグメントf0に載せられた放送データを規定セグメントf0以外の第1セグメントf1にコピーして載せる機能と、規定セグメントf0と第1セグメントf1とに同じ放送データを載せた放送波(f0、f1)を中継機(A)2へ送信する機能を有している。
【0023】
また、送信機1からの放送波(f0、f1)を中継する中継機(A)2は、放送波(f0、f1)を受信する受信機能6、受信した放送波(f0、f1)から規定セグメントf0の放送データを除去するフィルタ機能7、受信した放送波(f0、f1)の第1セグメントf1の放送データを、規定セグメントf0と、当該規定セグメント及び第1セグメント以外の第2セグメントf2にそれぞれ載せ換える載せ換え機能8と、規定セグメントf0と第2セグメントf2とに同じ放送データを載せた放送波(f0、f2)を中継機(B)3へ送信する送信機能9と、を有している。
【0024】
したがって、中継機(A)2は、受信放送波(f0、f1)から規定セグメントf0の放送データを除去し、第1セグメントf1の放送データを規定セグメントf0と第2セグメントf2にそれぞれ載せ換えた送信放送波(f0、f2)を中継機(B)3へ送信する。
これにより、送信放送波(f0、f2)の回り込みが生じたとしても、受信放送波(f0、f1)の規定セグメントf0ではなく第1セグメントf1の放送データが中継伝送されるので、中継機(A)2は放送データを正常に中継伝送することができる。
【0025】
そして、後段の中継機(B)3も中継機(A)2と同様な機能を有しており、受信した放送波(f0、f2)から規定セグメントf0の放送データを除去し、受信した放送波(f0、f2)の第2セグメントf2の放送データを、規定セグメントf0と、当該規定セグメント及び第2セグメント以外の第3セグメントfxにそれぞれ載せ換えた放送波(f0、fx)を後段へ送信する。
【0026】
なお、この場合、第3セグメントfxは、規定セグメントf0及び第2セグメントf2と異なるセグメントであればよく、第1セグメントf1を第3セグメントfxとして用いても中継機(B)3における回り込みを防止することができる。すなわち、“x”は、放送データ伝送に使用可能なセグメントの番号の内の“0”“2”以外の任意の整数である。
例えば、放送波がガードインターバル付きのOFDM信号である場合には、強い信号を選択受信することができるので、このセグメント(周波数)の任意性は高くなる。
【0027】
上記のような中継伝送システムにより、例えば、図2に示すような多段中継によるエリア放送を実現することができる。
すなわち、送信機(送信所)1から送信された放送波(f0、f1)を受信した中継機2−1,2−2が放送波(f0、f2)を中継送信し、更に、放送波(f0、f2)を受信した中継機3−1,3−2が放送波(f0、fx)を中継送信し、更に後段の中継機が放送データを載せるセグメントをずらしながら放送波を中継伝送し、また、テレビ受像機などの受信機5が伝送される放送波を受信して放送データによる映像を出力する。
【0028】
次に、放送データ(コンテンツ)の多段中継について、図3〜図5を参照して更に詳しく説明する。
例えばワンセグサービスを行いたい場合、任意チャンネルのセグメント番号の規定セグメントf0でコンテンツを送出する。その際に多段中継用にセグメントf0以外の例えばセグメント番号11のセグメントf11にも、セグメント番号f0と同じ信号(コンテンツ)をコピーして発射する。
ここの説明では、この最初の電波発射点から、ワンセグサービスをカバーする領域を親セルといい、親セルの電波を受信し多段中継を行う領域をそれぞれ子セルという。セルの数は、多段中継を行うだけ存在することとなる。
【0029】
図3には、親セルを成す送信機10と子セルを成す送信機20の構成を示してある。
なお、親セル送信機10は図1に示す送信機1に相当し、子セル送信機20は図1に示す中継機2に相当する。
また、必要に応じて、多段中継を行なう子セルをそれぞれ区別する場合には子セル1、子セル2、・・・等の番号を付して記載し、これら子セルを総称する場合には子セルNを記載する。
【0030】
親セル送信機10は、地上デジタル放送変調部11と地上デジタル放送変調部12、出力合成部13を有している。
親セル送信機10にはサービスを行いたいコンテンツが入力され、このコンテンツは地上デジタル放送変調部11と地上デジタル放送変調部12に入力される。
【0031】
地上デジタル放送変調部11はセグメント番号0の信号として、この出力信号を出力信号合成部13に送出し、地上デジタル放送変調部12はセグメント番号0以外の信号として、セグメント番号X出力信号を出力信号合成部13に送出する。
出力信号合成部13は、セグメント番号0出力信号とセグメント番号X出力信号を含んだ放送波を親セル送信信号として出力する。
なお、上記処理は図4の親セル処理である。
【0032】
子セルN送信機20は、受信フィルタ部21、セグメントコピー部22を有している。
子セルN送信機20は、上位の送信機から伝搬路により受信特性が変化した子セルN受信信号として受信する。例えば子セル1送信機は、自分より上位の送信機である親セル送信機10が発射した親セル送信信号を子セル1受信信号として受信する。このNの数字は、何段目の子セル送信機かを表しており、何番目であってもよい。
なお、子セルN受信信号の処理は、図4及び図5にそれぞれ示してある。
【0033】
子セルN受信機20は、子セルN受信信号を受信フィルタ部21に入力し、受信フィルタ部21から受信信号をセグメントコピー部22に出力する。この受信フィルタ部21の処理が図4の子セル1処理2である。
セグメントコピー部22は受信信号のコンテンツをコピーし、子セルN送信信号として出力する。このセグメントコピー部22の処理が図4の子セル1処理3である。
【0034】
子セル1が発射する子セル1送信信号は、回り込みにより、子セル1自身の受信信号である子セル受信信号として入力される。この時の受信波と送信波の混信の様子が図4の子セル1処理4である。
しかし、後段の受信フィルタ部21にて、図4の子セル1処理5の処理により、綺麗にワンセグの信号を取り出すことが可能で、回り込みによる発振は発生しない。
【0035】
このようにして、子セル1送信機が発射した子セル1送信信号を、子セル2送信機が子セル2受信信号として受信し、子セル2出力信号として出力する。
なお、Nの数字はいくら増えてもよく、このようにして1,2,3・・・Nと子セルを増やし、ワンセグの電波を後段に伝送していく。
【0036】
上記の処理を図4及び図5を参照して更に詳しく説明する。
例えば子セル1は、親セルから発射した電波を受信する。その様子を図4の子セル1処理1に示す。
続いてセグメント番号11以外で受信した信号を除去する。その様子を図4の子セル1処理2に示す。
【0037】
続いてセグメント番号0以外のセグメント番号11で受信した信号を、セグメント番号0にずらし、また、子セル1より後段のセルにて多段中継を可能にするために、セグメント番号0以外の例えばセグメント番号12にもコピーして伝送する。その様子を図4内の子セル1処理3に示す。
子セル1が発射した電波は、セグメント番号0と12であり、親セルから受信する電波はセグメント番号0と11であるから、子セル1が発射したセグメント番号0の電波は、回り込みにより、子セル1の受信部に混入する。その様子を図4の子セル1処理4に示す。
しかし、子セル1はセグメント番号0の信号を除去するので、回り込みによる影響は発生しない。その様子を図4の子セル1処理5に示す。
【0038】
親セルで発射したセグメント番号0の信号と子セル1で発射したセグメント番号0の信号は、同じ信号なので親セルと子セル1間はSFN環境が構築可能で、親セルと子セル1の領域が重なり合っても受信に影響はない。
つまり、ワンセグサービスの受信者は、親セルから子セル1へとセグメント番号0を継続して受信可能である。その様子を図4は示している。
【0039】
続いて子セル2では、子セル1からのセグメント番号0と12の信号を受信する。その様子を図5の子セル2処理1に示す。
続いてセグメント番号12以外の信号を除去する。その様子を図5の子セル2処理2に示す。
そして、セグメント番号12の信号をセグメント番号0にずらし、また、セグメント番号7にもずらし、セグメント番号0と7にコンテンツを載せた放送波(電波)を発射する。その様子を図5の子セル2処理3に示す。
【0040】
子セル1と同様に、子セル2でもセグメント番号0では、回り込みにより、子セル1から受信した電波と子セル2で発射した電波が子セル2の受信部に混入する。その様子を図5の子セル2処理4に示す。
しかし、子セル2はセグメント番号12以外の信号を除去するので、回り込みによる影響は発生しない。その様子を図5の子セル2処理5に示す。
【0041】
子セル1で発射したセグメント番号0の信号と子セル2で発射したセグメント番号0の信号は、同じ信号なので子セル1と子セル2間はSFN環境が構築可能で、子セル1と子セル2の領域が重なり合っても受信に影響はない。その処理の流れを図5は示している。
したがって、子セル1から子セル2へとセグメント番号0を継続して受信可能である。遡れば、親セルから子セル1、子セル2へとセグメント番号0を継続して受信可能になる訳である。このように子セルにて隣接するセルと送出するセグメントを変えながら伝送していけば、セルの数Nは任意に増やすことが可能になる。セルの数Nを任意に増やすことが可能であれば、ワンセグサービスの受信者は親セルから子セルNまで、継続してワンセグを受信可能になる。
【0042】
次に、サービスを行いたいコンテンツに加えて、各セル送信機の制御信号も伝送する実施例について説明する。
図6には、親セルを成す送信機10と子セルを成す送信機20の構成を示してある。
親セル送信機10は、地上デジタル放送変調部11、地上デジタル放送変調部12、出力合成部13に加えて、制御信号伝送部14を有している。
親セル送信機10にはサービスを行いたいコンテンツが入力され、このコンテンツは地上デジタル放送変調部11と地上デジタル放送変調部12に入力される。
【0043】
地上デジタル放送変調部11はセグメント番号0の信号として、セグメント番号0出力信号を出力信号合成部13へ送出し、地上デジタル放送変調部12はセグメント番号0以外の信号として、セグメント番号X出力信号を出力信号合成部13へ送出する。
制御信号伝送部14は、各セル送信機の制御信号として、制御信号出力信号を出力信号合成部13へ出力する。
出力信号合成部13は、セグメント番号0出力信号とセグメント番号X出力信号と制御信号出力信号を入力し、親セル送信信号を出力する。親セル送信信号が図7の親セル処理である。
【0044】
子セルN送信機20は、受信フィルタ部21、セグメントコピー部22に加えて、制御信号変更部23、出力信号合成部24を有している。
子セルN送信機20は、上位の送信機から伝搬路により受信特性が変化した子セルN受信信号として受信する。例えば子セル1送信機は、自分より上位の送信機である親セル送信機10が発射した親セル送信信号を子セル1受信信号として受信する。子セルN受信信号が図7の子セル1処理1である。
【0045】
子セルN受信機20は、子セルN受信信号を受信フィルタ部21に入力し、受信信号をセグメントコピー部22に出力する。受信フィルタ部21の処理が図7の子セル1処理2である。
セグメントコピー部22はセグメントをコピーし、子セルN送信信号として出力合成部24へ出力する。
【0046】
制御信号変更部23は、制御信号の内容を書き換えても書き換えなくてもよく、受信したセグメントとは異なるセグメントへ周波数をずらし、制御信号出力信号として出力合成部24へ出力する。
出力合成部24は、コピー信号と制御信号出力信号を合成し、子セルN送信信号として出力する。出力合成部24の処理が図7内の子セル1処理3である。
【0047】
子セル1が発射する子セル1送信信号は、回り込みにより、子セル1自身の受信信号である子セル受信信号として子セル1に入力される。この時の受信波と送信波の混信の様子が図7の子セル1処理4である。
しかし、後段の受信フィルタ部21にて、図4の子セル1処理5と同様な処理により、綺麗にワンセグの信号を取り出すことが可能で、回り込みによる発振は発生しない。
このようにして、子セル1送信機が発射した子セル1送信信号を、子セル2送信機が子セル2受信信号として受信し、子セル2出力信号として出力する。
【0048】
上記の処理を図7を参照して更に詳しく説明する。
例えばワンセグサービスを行いたい場合、任意チャンネルのセグメント番号0でコンテンツを送出する。その際に多段中継用にセグメント番号0以外の例えばセグメント番号12にも、セグメント番号0と同じ信号(コンテンツ)をコピーして発射する。それ以外に、セルを効率的に構築するために、各セル送信機が発射するセグメントを制御するためや、送信機のファームウェアの伝送用の信号である制御信号を更に他のセグメント番号(セグメント番号11)で伝送する。その様子を図7の親セル処理に示す。
【0049】
子セル1は親セルから発射した電波を受信する。その様子を図7の子セル1処理1に示す。
続いて後段に伝送したいコンテンツのセグメント番号12と制御用信号のセグメント11以外で受信した信号を除去する。その様子を図7の子セル1処理2に示す。
続いてセグメント番号0以外のセグメント番号12で受信した信号をセグメント番号0にずらし、また、子セル1より後段のセルに多段中継を可能にするために、セグメント番号0以外の例えばセグメント番号7にもコピーして伝送する。更に、制御用に伝送する信号をセグメントを1つずらして伝送する。その様子を図7の子セル1処理3に示す。
【0050】
子セル1が発射した電波は、セグメント番号0、1、7であり、親セルから受信する電波はセグメント番号0、11、12であるから、子セル1が発射したセグメント番号0の電波は、回り込みにより、子セル1の受信部に混入する。その様子を図7の子セル1処理4に示す。
しかし、子セル1はセグメント番号0の信号を除去するので回り込みによる影響は発生しない。その様子を図7の子セル1処理5に示す。
親セルで発射したセグメント番号0の信号と子セル1で発射したセグメント番号0の信号は、同じ信号なので親セルと子セル1間はSFN環境が構築可能で、親セルと子セル1の領域が重なり合っても受信に影響はない。つまり、ワンセグサービスの受信者は、親セルから子セル1へとセグメント番号0を継続して受信可能である。
【0051】
ここで、ワンセグの除去及び複製の処理を行なうための他の構成例を図8〜図10を参照して説明する。
ワンセグの除去及び複製の処理を周波数領域に変換して行なうと、FFT処理が必要となり、ガードインターバルを超える遅延が生じてSFNが実現困難となることが考えられ
ることから、図8にはワンセグの除去及び複製の処理を時間軸の信号で行なう構成例を示し、図9にはその処理の内容を示してある。
【0052】
この例では、規定セグメントと第1セグメントとにコンテンツを載せた受信信号(図9のa)を、アナログ/デジタル変換器30によりデジタル変換し、この受信信号の規定セグメントに載せられたコンテンツをフィルタ31により除去する(図9のb)。
続いて、フィルタ31から出力された信号を分岐して、一方の信号には乗算器32により第1セグメントを規定セグメントに移動する周波数シフトrot1を与え(図9のc)、他方の信号には乗算器33により第1セグメントを第2セグメントに移動する周波数シフトrot2を与える(図9のd)。
【0053】
そして、これら周波数シフト(変調)された信号を加算器34により合成し(図9のe)、合成された信号をデジタル/アナログ変換器35によりアナログ変換して送信信号とする。
なお、アナログ信号処理のみを用いた場合には、図10に示すような構成とすればよい。
【0054】
ここで、本発明は、直線的或いは平面的に複数の中継機を配置した多段中継システムだけでなく、高さ方向への中継機の配置を含む3次元的な配置構成によるシステム構成とすることもできる。例えば、半径300m程度の放送範囲のエリア放送では、300m以上の建物や障害物が存在すると電波伝搬が阻害されるので、中継システムを3次元的な配置構成とするのが好ましい。
【0055】
また、本発明は、部分セグメント放送の中継にも適用することができる。したがって、地上デジタル放送の各6MHzを14分割した内の13セグメントにおいて、ワンセグ放送だけでなく、3セグ(3セグメント)の所謂デジタルラジオ放送(地上デジタル音声放送)や4セグメントのSDTV教育テレビ放送などの部分セグメント放送の中継にも適用することができる。
具体的には、図13の放送の伝送チャンネル内の13セグメント中の3または4セグメントに放送データを載せた放送波を中継する中継機において、中継機が受信する放送波は、同じ放送データが規定の3または4セグメント(図1のf0)と当該3または4セグメント以外の第1の3または4セグメント(図1のf1)とにそれぞれ載せられており、当該中継機は、受信する放送波から当該規定の3または4セグメント(図1のf0)の放送データを除去し、当該受信する放送波の第1の3または4セグメント(図1のf1)の放送データを、当該規定の3または4セグメント(図1のf0)と当該第1の3または4セグメント(図1のf1)以外の第2の3または4セグメント(図1のf2)とにそれぞれの載せ換えた放送波を送信する。
【0056】
また、映像の符号化はMPEG−2,H.264,HEVC(High Efficiency Video Codec)と新しくなると、効率は順次倍になる。つまり、HEVCではMPEG−2の4倍の符号化効率となり、SDTV放送は1セグメントとなる。そのため、本発明は、SDTV放送の1セグメント等部分セグメント中継にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、放送の伝送チャンネル内の複数の周波数(セグメント)を有効活用して、回り込みによる影響を防止した中継伝送を実現することができる。さらに、回り込みの影響を受けず、多段中継が可能かつSFNを構築可能な、部分セグメント放送の中継伝送システムを実現することができる。また、多段中継によるエリア放送を高品質に実現することができ、電波を有効的に使用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:送信機、 2、3:中継機、
7:フィルタ、 8:載せ換え機能部、
9:送信機能部、 f0:規定セグメント、
f1:第1セグメント、 f2:第2セグメント、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセグメント中の規定セグメントに放送データを載せた放送波を中継する中継機において、
中継機が受信する放送波は、同じ放送データが規定セグメントと当該規定セグメント以外の第1セグメントとにそれぞれ載せられており、
当該中継機は、受信する放送波から規定セグメントの放送データを除去し、当該受信する放送波の第1セグメントの放送データを、規定セグメントと当該規定セグメント及び第1セグメント以外の第2セグメントとにそれぞれの載せ換えた放送波を送信することを特徴とする放送波の中継機。
【請求項2】
複数のセグメント中の規定セグメントに放送データを載せた放送波を多段中継する中継機において、
前段の中継機が受信する放送波は、同じ放送データが規定セグメントと当該規定セグメント以外の第1セグメントとにそれぞれ載せられており、
当該前段の中継機は、受信する放送波から規定セグメントの放送データを除去し、当該受信する放送波の第1セグメントの放送データを、規定セグメントと当該規定セグメント及び第1セグメント以外の第2セグメントとにそれぞれの載せ換えた放送波を送信し、
後段の中継機では、受信する放送波から規定セグメントの放送データを除去し、当該受信する放送波の第2セグメントの放送データを、規定セグメントと当該規定セグメント及び第1セグメント及び第2セグメント以外の第3セグメントとにそれぞれの載せ換えた放送波を送信することを特徴とする放送波の中継機。
【請求項3】
放送の伝送チャンネル内の13セグメント中の3または4セグメントに放送データを載せた放送波を中継する中継機において、中継機が受信する放送波は、同じ放送データが規定の3または4セグメントと当該3または4セグメント以外の第1の3または4セグメントとにそれぞれ載せられており、当該中継機は、受信する放送波から当該規定の3または4セグメントの放送データを除去し、当該受信する放送波の第1の3または4セグメントの放送データを、当該規定の3または4セグメントと当該第1の3または4セグメント以外の第2の3または4セグメントとにそれぞれの載せ換えた放送波を送信することを特徴とする放送波の中継機。
【請求項1】
複数のセグメント中の規定セグメントに放送データを載せた放送波を中継する中継機において、
中継機が受信する放送波は、同じ放送データが規定セグメントと当該規定セグメント以外の第1セグメントとにそれぞれ載せられており、
当該中継機は、受信する放送波から規定セグメントの放送データを除去し、当該受信する放送波の第1セグメントの放送データを、規定セグメントと当該規定セグメント及び第1セグメント以外の第2セグメントとにそれぞれの載せ換えた放送波を送信することを特徴とする放送波の中継機。
【請求項2】
複数のセグメント中の規定セグメントに放送データを載せた放送波を多段中継する中継機において、
前段の中継機が受信する放送波は、同じ放送データが規定セグメントと当該規定セグメント以外の第1セグメントとにそれぞれ載せられており、
当該前段の中継機は、受信する放送波から規定セグメントの放送データを除去し、当該受信する放送波の第1セグメントの放送データを、規定セグメントと当該規定セグメント及び第1セグメント以外の第2セグメントとにそれぞれの載せ換えた放送波を送信し、
後段の中継機では、受信する放送波から規定セグメントの放送データを除去し、当該受信する放送波の第2セグメントの放送データを、規定セグメントと当該規定セグメント及び第1セグメント及び第2セグメント以外の第3セグメントとにそれぞれの載せ換えた放送波を送信することを特徴とする放送波の中継機。
【請求項3】
放送の伝送チャンネル内の13セグメント中の3または4セグメントに放送データを載せた放送波を中継する中継機において、中継機が受信する放送波は、同じ放送データが規定の3または4セグメントと当該3または4セグメント以外の第1の3または4セグメントとにそれぞれ載せられており、当該中継機は、受信する放送波から当該規定の3または4セグメントの放送データを除去し、当該受信する放送波の第1の3または4セグメントの放送データを、当該規定の3または4セグメントと当該第1の3または4セグメント以外の第2の3または4セグメントとにそれぞれの載せ換えた放送波を送信することを特徴とする放送波の中継機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−34191(P2013−34191A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−145716(P2012−145716)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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