説明

放電システム

【課題】2次電池の放電時の安全性が高く且つ各種2次電池への対応の拡張性に富んだものとする。
【解決手段】2次電池パック1と放電装置2とパーソナルコンピュータ3上で稼働するアプリケーションソフトとからなる。2次電池パックは、2次電池セルCと、2次電池セルの温度を検知する温度センサ11と、2次電池セルの過放電を検出する過放電検出回路10とを備え、放電装置は、2次電池を放電させるための放電回路21と、放電電流を検出する電流検出回路22と、放電回路の動作を制御する放電制御回路23とを備え、アプリケーションソフトは、放電装置を介して2次電池パックについての総和電圧情報、温度情報、過放電情報を受けてこれらの情報を基に2次電池パックの劣化を判断してその判断結果を表示するとともに、放電装置を介して受ける温度センサ及び過放電検出回路の出力信号に応じて、放電装置の放電回路による放電を中止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次電池を放電させるための放電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
2次電池の寿命を診断するために2次電池に放電を行わせる放電システムがある(特許文献1参照)。このような放電システムにおいて、2次電池に放電させると2次電池が高温となったり、2つ以上のセルを直列に接続した2次電池の場合、セル間に電圧の偏りがあるといずれかのセルが過放電となってしまうことがあり、安全性と寿命劣化の点で対応が求められている。
【0003】
また、従来の放電システムは、既存の2次電池に対応するだけで、例えば総和電池電圧が異なる2次電池が新たに提供されても、これに応ずることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−43059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、2次電池の放電時の安全性が高く且つ各種2次電池への対応の拡張性に富んだ放電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる放電システムは、2次電池パックと放電装置とパーソナルコンピュータ上で稼働するアプリケーションソフトとからなる放電システムであって、上記2次電池パックは、2次電池セルと、2次電池セルの温度を検知する温度センサと、2次電池セルの過放電を検出する過放電検出回路とを備え、上記放電装置は、2次電池を放電させるための放電回路と、放電電流を検出する電流検出回路と、上記放電回路の動作を制御する放電制御回路とを備えており、上記放電装置に接続されるパーソナルコンピュータ上で稼働する前記アプリケーションソフトは、上記放電装置を介して2次電池パックについての総和電圧情報、温度情報、過放電情報を受けてこれらの情報を基に2次電池パックの劣化を判断してその判断結果を表示するとともに、放電装置を介して受ける前記温度センサ及び過放電検出回路の出力信号に応じて、前記放電装置の放電回路による放電を中止させることに特徴を有している。
【0007】
2次電池セルの温度過昇からの保護に加えて、2次電池セルの電圧を個別に監視しているために電圧の偏りから生じる過放電を検出して保護することができる。また、放電装置とパーソナルコンピュータとを接続して電池の寿命判定はパーソナルコンピュータ上で稼働しているアプリケーションソフトによって行うために、今後新たな容量の電池が出現したとしてもアプリケーションソフトをアップデートするだけで新しい電池の寿命判定に対応可能となる。
【0008】
前記放電装置における前記放電制御回路は、2次電池セルが高温時や過放電のとき、パーソナルコンピュータ側の指示に応じて放電回路に放電を中止させるものであるとともに、一定時間以上パーソナルコンピュータ側からの指示がないときは独自に放電を中止させるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
温度検出端子や過放電検出端子を通じて取得する2次電池の状態によって放電を中止させるために、2次電池が高温となった場合や、過放電となった場合にも安全性を担保するとともに電池の寿命劣化を防ぐことができる。また、電池の寿命判定はパーソナルコンピュータ上で稼働する格納されたアプリケーションソフトによって行われるために、今後新たな容量の電池が出現したとしてもパーソナルコンピュータ側のアプリケーションソフトをアップデートするだけで新しい2次電池の寿命判定に対応可能となるため拡張性の面で有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態の一例のブロック図である。
【図2】同上の通常時の放電グラフである。
【図3】同上の電池高温時による放電中止の際の放電グラフである。
【図4】同上の過放電による放電中止の際の放電グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施の形態の一例に基づいて詳述すると、図1中の1は複数のリチウムイオン系の2次電池セルCを直列(もしくは並列)に接続している2次電池パックであって、該2次電池パック1は、パック内の温度を計測するための温度センサ(例えばサーミスタ)11を備えるとともに、各2次電池セルC毎の電圧を監視していずれかの2次電池セルCの電圧が一定の値を下回ると過放電信号を出力する過放電検出回路10とを内蔵している。また、この2次電池パック1における定格電圧及び定格容量についての情報を記憶した記憶素子(ROM)12も内蔵している。そして、2次電池セルCの出力用端子に加えて、上記温度センサ11と過放電検出回路10の信号出力用の端子、記憶素子12の読み出し用端子を備えている。
【0012】
図中2は放電装置であって、商用電源ACからの交流電圧を整流平滑して直流電圧に変換後、トランスとスイッチング素子のスイッチングによって降圧させることで一定の電圧を出力させる電源回路20のほか、2次電池セルCの出力用端子に接続されて2次電池セルCの放電を行うための放電回路21と、該放電回路21を通じた放電時の放電電流を測定する電流検出回路22と、上記放電回路21の動作を制御することで放電の開始、停止、中止、目標電流値への調整を行う放電制御回路23とを備えている。また、放電制御回路23は、上記電流検出回路21で測定した放電電流値や、接続された2次電池パック1の前記温度センサ11及び過放電検出回路10からの信号が入力されるものであり、さらに前記記憶素子12からの前記情報の読み出しも行う。
【0013】
そして上記放電装置2における放電制御回路23は、パーソナルコンピュータ(以下パソコンと称す)3との間で通信を行う通信部を備える。総和電圧情報、温度情報、過放電情報、2次電池パック1の定格情報の各情報のパソコン3への出力と、パソコン3からの放電の開始、停止、中止、目標電流値情報の入力とを担う上記通信部は、RS232CやUSB等のシリアルインターフェイスでパソコン3と接続される。
【0014】
上記パソコン3は、2次電池パックの寿命判断のためのアプリケーションソフトを稼働させるもので、放電制御回路23を通じて得た総和電圧情報、温度情報、過放電情報、2次電池パック1の定格情報を基に上記アプリケーションソフトが2次電池パックの寿命判断を行う。また、上記放電制御回路23を通じて放電回路21の動作を制御する。
【0015】
商用電源ACに放電装置2の電源回路20を接続するとともに、該放電装置2に接続されたパソコン3において上記アプリケーションソフトを起動し、さらに放電装置2に2次電池パック1を装着すれば、装着された2次電池パック1の定格情報が放電装置2を通じてパソコン3側に送信される。
【0016】
パソコン3上のアプリケーションソフトは得た定格情報を基に、放電装置2に放電開始指示と目標電流設定情報を送り、それを受けた放電制御回路23は2次電池パック1側の回路に電源を供給するとともに、放電回路21を制御して放電を開始させる。
【0017】
この放電中、放電装置2が2次電池パック1から取得する総和電圧情報、温度情報、過放電情報はパソコン3側へ送られる。そして総和電圧が一定値を下回ると、パソコン3上のアプリケーションソフトは放電停止指示を放電装置2へ送って放電を停止させる。また、上記アプリケーションソフトはこの放電時の放電カーブのパターンを認識して2次電池セルCの劣化の程度をパソコン3(のモニター)に表示させる。
【0018】
2次電池パック1内の温度センサ11で検出される温度が所定温度を超えた時や、過放電検出回路10による過放電検出時は、放電制御回路23を介してこの情報を受けたパソコン3上のアプリケーションソフトが放電中止指示を放電装置23へ送って放電を中止させ、パソコン3のモニターに放電中止に至った理由、つまりは電池温度過昇や、過放電を表示する。
【0019】
また、ここにおける放電制御回路23は、2次電池セルCが高温時や過放電のとき、パソコン3側からの指示に従って放電回路21に放電を中止させるものであるが、上記高温や過放電が検出されてから一定時間以上が経過してもパソコン3側からの放電中止の指示がないときは、独自に放電を中止させるものとなっている。更に高い安全性を担保することができるとともに電池の寿命劣化を確実に防ぐことができる。
【0020】
なお、放電装置2に接続された2次電池パック1の定格情報は、パソコン3のアプリケーションソフト上で予め用意されている中から対応する2次電池パック1に適応するものを選択するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0021】
C 2次電池セル
1 2次電池パック
2 放電装置
3 パーソナルコンピュータ
10 過放電検出回路
11 温度センサ
21 放電回路
22 放電制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次電池パックと放電装置とパーソナルコンピュータ上で稼働するアプリケーションソフトとからなる放電システムであって、上記2次電池パックは、2次電池セルと、2次電池セルの温度を検知する温度センサと、2次電池セルの過放電を検出する過放電検出回路とを備え、上記放電装置は、2次電池を放電させるための放電回路と、放電電流を検出する電流検出回路と、上記放電回路の動作を制御する放電制御回路とを備えており、上記放電装置に接続されるパーソナルコンピュータ上で稼働する前記アプリケーションソフトは、上記放電装置を介して2次電池パックについての総和電圧情報、温度情報、過放電情報を受けてこれらの情報を基に2次電池パックの劣化を判断してその判断結果を表示するとともに、放電装置を介して受ける前記温度センサ及び過放電検出回路の出力信号に応じて、前記放電装置の放電回路による放電を中止させることを特徴とする放電システム。
【請求項2】
前記放電装置における前記放電制御回路は、2次電池セルが高温時や過放電のとき、パーソナルコンピュータ側の指示に応じて放電回路に放電を中止させるものであるとともに、一定時間以上パーソナルコンピュータ側からの指示がないときは独自に放電を中止させるものであることを特徴とする請求項1に記載の放電システム

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−110876(P2013−110876A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254571(P2011−254571)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(509119153)パナソニックESパワーツール株式会社 (107)
【Fターム(参考)】