説明

放電ランプ、照明機器及び放電ランプの製造方法

【課題】発光効率の低下を抑え、光学特性を安定的に維持する。
【解決手段】両端に電極部12が設けられた蛍光管21を備える。蛍光管21の軸方向の中央の内部には、アマルガムが保持される保持部24が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガラス管の内面に蛍光体が設けられた蛍光ランプ等の放電ランプ、照明機器及び放電ランプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭には環状の蛍光ランプが普及しており、近年は高周波専用形の蛍光ランプも普及し始めている、昨今、照明機器に関して省エネルギー法の改訂法が適用されることに伴い、蛍光ランプの点灯効率を更に向上することが求められている。
【0003】
また、昨今では、環境への観点から、蛍光ランプに封入される水銀量を制限する必要もあり、液状水銀を用いる代わりに、所定量の水銀を含有させた固形状の水銀合金(以下、アマルガムと称する)が使用されるようになっている。
【0004】
この種のアマルガムが用いられた蛍光ランプでは、高温となる蛍光管の光束の低下を防ぐために、アマルガムを、蛍光管における最も低温の位置(以下、最冷点と称する)に配置することで、アマルガムからの水銀の放出量を良好に制御して、放電管内の水銀蒸気圧を最適な範囲内に制御することが可能にされている。すなわち、アマルガムは、蛍光ランプにおける最冷点に配置する必要がある。
【0005】
そして、グロースタータ形の照明機器に適用される環状の蛍光ランプは、グローランプの近傍、つまり口金の近傍が最冷点とされており、工業会の資料でも周知になっている。
【0006】
また、高周波点灯専用形の環状の蛍光ランプ(FHC,FHD)では、樹脂製の口金の近傍が最冷点とされている。また、蛍光ランプの電極部の一端側のフィラメントの位置が、他端側のフィラメントの位置よりも、蛍光管の端部からの離間距離が大きくされたハイマウント構造の蛍光ランプの場合には、電極部の一端側、つまりハイマウント側が最冷点とされている。
【0007】
したがって、本発明に関連する蛍光ランプでは、アマルガムが、蛍光管の電極部や口金近傍に配置される構成が一般に採られている。例えば特許文献1には、蛍光ランプのフィラメントの近傍に、アマルガムを保持するアマルガムホルダが設けられた構成が開示されている。
【特許文献1】特開2002−25501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した蛍光ランプでは、アマルガムが、電極部のフィラメントの近傍に配置されているので、フィラメントが発生する熱がアマルガムに伝導してしまう。このため、アマルガムがフィラメントからの熱伝導による影響を受けて、アマルガムから放出する水銀量が変動してしまう問題がある。
【0009】
したがって、蛍光ランプは、放電管の水銀蒸気圧を最適な範囲内に保つことが困難になり、蛍光ランプの発光効率の低下を招き、蛍光ランプの光学特性が不安定となるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、上述した課題を解決し、放電管内の水銀蒸気圧を安定的に維持し、発光効率の低下を防ぎ、光学特性を安定的に得ることができる放電ランプ、照明機器及び放電ランプの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明に係る放電ランプは、両端に電極部が設けられた放電管を備える。放電管の軸方向の中央の内部には、アマルガムが保持される保持部が設けられている。
【0012】
また、本発明に係る照明機器は、本発明の放電ランプと、放電ランプを点灯させる点灯回路部と、を備える照明機器。
【0013】
また、本発明に係る放電ランプの製造方法は、軸方向の中央の内部に、アマルガムを保持する保持部を有する放電管を形成する工程を有する。
【0014】
なお、本発明におけるアマルガムは、水銀を含有する固形状の水銀合金を指しており、例えば亜鉛水銀等を含んでいる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アマルガムの温度変動が抑えられるので、アマルガムから放出される水銀の量の安定化が図られる。このため、本発明は、放電管内の水銀蒸気圧を安定的に維持して、放電ランプの発光効率の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、実施形態の照明機器1は、放電灯としての環状の蛍光ランプ2と、この蛍光ランプ2を保持する基台6と、蛍光ランプ2を点灯させる点灯回路部7と、蛍光ランプ2を覆うドーム状のセード部材8とを備えている。基台6には、蛍光ランプ2を保持する複数のホルダ部材9が設けられている。また、点灯回路部7は、蛍光ランプ2と電気的に接続されるソケット10を有している。
【0018】
実施形態の蛍光ランプ2は、内面に蛍光体(不図示)が設けられた放電管としての蛍光管11を有している。蛍光体は、赤色発光を有するユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体と、緑色発光を有するテルビウム、セリウム付活燐酸ランタン蛍光体と、青色発光を有するユーロピウム付活アルミン酸バリウムマグネシウム蛍光体又はユーロピウム付活クロロ隣酸ストロンチウム、カルシウム、バリウム蛍光体のいずれかを含んで構成されている。また、この蛍光体は、青色発光を有する蛍光体の少なくとも1種類を含んで構成されている。なお、蛍光ランプ2としては、一般形、高周波点灯形のいずれに適用されてもよい。
【0019】
図2及び図3に示すように、蛍光管11は、環状に形成されており、両端の電極部12が口金13を介して互いに連結され、電極部12が口金13に電気的に接続されている。
【0020】
また、蛍光管11の内部には、環状の蛍光管11が構成している円の中心を挟んで口金13に対向する位置に、蛍光管11内の水銀蒸気圧を制御するためのアマルガム15が保持される保持部14が設けられている。
【0021】
この保持部14は、図4に示すように、蛍光管11の軸方向に直交する断面において、照明機器1に装着された使用状態における蛍光管11の外周側の鉛直下方に位置しており、蛍光管11の一部が蛍光管11の外周側に突出することによって蛍光管11の内部に形成された凹部16を有している。言い換えれば、保持部14が有する凹部16の開口縁は、照明機器1に装着された蛍光管11における鉛直下方に位置する下側内面に隣接して形成されている。そして、アマルガム15は、凹部16内に嵌め込まれて固定されている。
【0022】
上述した位置に凹部16が形成されていることで、蛍光ランプ2が照明機器1に装着された状態で、凹部16内に配置されたアマルガム15が重力によって移動することが防止され、アマルガム15を凹部16内に安定的に固定することができる。
【0023】
そして、保持部14は、口金13に対向する位置、つまり電極部12から最も離れた位置に設けられたことによって、アマルガム15の温度変動を良好に抑えることが可能になり、アマルガム15から放出される水銀の量を安定させることができる。
【0024】
加えて、蛍光管11の内周側の空間に比べて外周側の空間が、蛍光ランプ2による熱気による影響が比較的少なく、温度の上昇が抑えられるので、蛍光管11の外周側に凹部16が配置されることによってアマルガム15の温度変動を更に抑制することができる。
【0025】
また、保持部14は、斜め下方に突出して形成されているので、蛍光管11の軸方向を水平方向と平行にした横置きの使用状態だけでなく、蛍光管11の軸方向を鉛直方向と平行にした縦置きの使用状態であっても、保持部14を鉛直下方に位置させることが可能になる。したがって、保持部14は、蛍光ランプ2の使用状態の向きにかからずに、凹部16内にアマルガム15を安定的に保持することができる。
【0026】
以上のように構成された蛍光ランプ2が照明機器1に装着された状態について説明する。
【0027】
蛍光ランプ2は、照明機器1のホルダ部材9に保持されて、口金13にソケット10が差し込まれることで、電極部12が点灯回路部7と電気的に接続されて、点灯可能にされる。そして、図1に示したように、蛍光ランプ2が照明機器1に装着された状態で、蛍光ランプ2の鉛直下方に位置している保持部14の凹部16内に、アマルガム15が安定的に収容されている。
【0028】
また、以上のように構成された蛍光ランプ2の製造方法は、上述した保持部14を有する蛍光管11を形成する工程を有している。
【0029】
また、上述した保持部14は、蛍光管11の外周面から突出して形成されたが、例えば図5に示すように、蛍光管11の内面に、アマルガム15を保持する側壁19を有する皿状の保持部18が形成されてもよい。
【0030】
上述したように、蛍光ランプ2は、口金13に対向する位置、つまり電極部12から最も離れた位置にアマルガム15が保持される保持部14が設けられたことによって、アマルガム15の温度変動を良好に抑えることが可能になり、アマルガム15から放出される水銀の量を安定的に制御することが可能になる。このため、蛍光ランプ2は、蛍光管11内の水銀蒸気圧を安定的に維持し、発光効率の低下を防ぎ、光学特性を安定的に得ることができる。
【0031】
なお、上述した実施形態の蛍光ランプ2は、環状に形成されたが、直管状に形成されてもよい。図6に示すように、実施形態の蛍光ランプ3は、両端に電極部12が設けられた直管状の蛍光管21を有している。
【0032】
蛍光管21の軸方向(長さ方向)の中央の内部には、アマルガム15が保持される保持部24が設けられている。この保持部24は、蛍光ランプ3が照明機器1に装着された状態で、蛍光管21の内周面の鉛直下方に位置するように設けられている。この蛍光ランプ3においても、上述した蛍光ランプ2と同様の効果を得ることができる。
【0033】
また、本発明に係る放電ランプは、実施形態の蛍光ランプに適用されたが、環状や直管状に限定されるものでなく、例えば放電管の軸方向の中央部が折り返されたU字型の蛍光ランプに適用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態の照明機器を示す模式図である。
【図2】実施形態の環状の蛍光ランプを示す平面図である。
【図3】前記蛍光ランプを示す側面図である。
【図4】アマルガムが配置された凹部を示す断面図である。
【図5】保持部の他の構成例を示す断面図である。
【図6】他の実施形態の直管状の蛍光ランプを示す平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 照明機器
2 蛍光ランプ
11 蛍光管
12 電極部
13 口金
14 保持部
16 凹部
15 アマルガム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に電極部が設けられた放電管を備え、
前記放電管の軸方向の中央の内部には、アマルガムが保持される保持部が設けられている放電ランプ。
【請求項2】
前記放電管は環状に形成され、
前記両端の前記電極部は口金を介して互いに連結され、前記電極部が前記口金に電気的に接続され、
前記保持部は、環状の前記放電管が構成している円の中心を挟んで前記口金に対向する位置に配置されている、請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記保持部は、環状の前記放電管の外周側に配置されている、請求項2に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記保持部は、前記放電管の軸方向に直交する断面において、使用状態における前記放電管の前記外周側の鉛直下方に位置し、前記放電管の一部が環状の前記放電管の前記外周側に突出することによって前記放電管の内部に形成された凹部を有している、請求項3に記載の放電ランプ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載に記載の放電ランプと、
前記放電ランプを点灯させる点灯回路部と、を備える照明機器。
【請求項6】
軸方向の中央の内部に、アマルガムを保持する保持部を有する放電管を形成する工程を有する、放電ランプの製造方法。
【請求項7】
前記放電管を形成する工程では、環状の前記放電管を形成する、請求項6に記載の放電ランプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−129193(P2010−129193A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299416(P2008−299416)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】