説明

放電ランプ保持機構

【課題】容易に放電ランプを固定することができる放電ランプ用保持機構を提供する。
【解決手段】一方の端部に口金4が装着された放電ランプと、この放電ランプを吊り下げるとともに着脱することのできるよう保持するランプホルダ5とからなり、前記口金4は、口金側仮固定機構と当該口金側基体部41の先端側の外周面に形成された口金側本固定機構とを備え、前記ランプホルダ5は、前記口金側仮固定機構と係合するためのホルダ側仮固定機構と前記口金側本固定機構と係合するためのホルダ側本固定機構とを備え、前記口金と前記ランプホルダとが、前記口金側仮固定機構と前記ホルダ側仮固定機構とを係合することにより仮固定されるとともに、前記口金側本固定機構と前記ホルダ側本固定機構とを係合することにより本固定される放電ランプ保持機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプ保持機構に関し、特に、ホルダへの取り付け作業が困難な大型の放電ランプに対する放電ランプ保持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や液晶の露光、その他の微細加工の分野でフォトリソグラフィ用光源としてショートアーク型水銀ランプを用いた露光技術が利用される。
フォトリソグラフィ用の露光では、フォトレジストが感度を有する波長365nm(i線)の光を効率良く放射する水銀ランプが使われ、また、液晶やプリント基板の露光では、波長350nm〜450nmの光を放射する水銀ランプが使われる。水銀ランプは発光物質として水銀が封入されるとともに、始動用ガスとしてアルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガスが封入される。このような水銀ランプは、例えば、特開平9−213129号に示されるように凹面反射鏡と組み合わせて光学系を構成する。
【0003】
露光装置は、露光すべき面積が大きくなる一方で、処理時間(スループット)は短くなる傾向にある。光源である水銀ランプも、入力を増加させることで露光量を増加させる傾向にある。しかし、ランプ入力の増大は、ランプを物理的に大型化させることとなり、反射ミラーへ組み付ける作業が一段と煩雑化してしまう。特に、ランプが大型化すると、寸法的にも重量的にも作業者がランプを保持することが困難になる。
【0004】
例えば、前記特開平9−213129号に示すように吊り下げてランプを保持する構造の場合、ランプを吊り下げた状態で保持しつつ、同時に、ネジ止めなどの固定作業をする必要がある。さらに、ランプが大型化すると反射ミラーも大型化する。上記作業は、ランプの口金を、反射ミラーの内側空間から入れて頂部開口を通して、頂部開口の外部にある保持機構で固定させる。この固定作業では、反射ミラーの内側空間でランプの一端を保持しつつ、同時に、反射ミラーの頂部開口の外側でネジ止めなどの固定作業をする必要があるが、この場合、反射ミラーの内側空間において片手でランプを保持するとともに、もう一方の片手でネジ止め作業をしなければならない。この作業は、ランプが大型化すると、片手で保持することとなり、時として、ランプを落下させたり、反射ミラーを傷つけるという問題を生じる。
【0005】
さらに、放電ランプと保持機構の固定作業では、確実な給電構成を形成しなければならない。給電リードや給電線の電気的接続が不十分であると電流供給が不十分になるからである。
【特許文献1】特開平9−213129号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、大型化した放電ランプであっても、容易に放電ランプを固定することができる放電ランプ用保持機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明に係る放電ランプ用保持機構は、少なくとも一方の端部に口金が装着された放電ランプと、この放電ランプを吊り下げるとともに着脱することのできるよう保持するランプホルダとからなり、
前記放電ランプの口金は、放電ランプの管軸に沿って伸びて放電ランプの端部に被さるよう装着される口金側基体部と、当該口金側基体部よりも管軸に対し直交する方向の幅の小さい柱状に形成され、当該口金側基体部の先端面から突出するとともに前記ランプホルダに向けて管軸に沿って伸びる口金側仮固定機構と、当該口金側基体部の先端側 の外周面に形成された口金側本固定機構とを備え、
前記ランプホルダは、前記口金側仮固定機構と係合するための、管軸に沿って伸びる凹所よりなるホルダ側仮固定機構を備えるホルダ側基体部と、前記口金側本固定機構と係合するための、当該ホルダ側基体部の外周面に設けられ、当該ホルダ側基体部を中心として周方向に回転する筒状のホルダ側本固定機構とを備え、
前記口金と前記ランプホルダとが、前記口金側仮固定機構と前記ホルダ側仮固定機構とを係合することにより仮固定されるとともに、前記口金側本固定機構と前記ホルダ側本固定機構とを係合することにより本固定される放電ランプ保持機構であって、
前記口金側仮固定機構には、管軸方向に離間した2箇所に、基端側嵌合部と先端側嵌合部とが形成されると共に、当該基端側嵌合部と当該先端側嵌合部との間に口金側挿入部が形成され、
前記ホルダ側仮固定機構には、ランプホルダの中心軸方向に離間した2箇所に、前記基端側嵌合部と前記先端側嵌合部のそれぞれに嵌合するための基端側嵌合用凹部と先端側嵌合用凹部とが形成されると共に、当該基端側嵌合用凹部と当該先端側嵌合用凹部との間に、前記口金側挿入部を挿入するためのホルダ側被挿入部が形成され、
前記口金と前記ランプホルダとは、以下の関係1に示す関係を満たすことを特徴とする放電ランプ保持機構。
(関係1)
前記基端側嵌合用凹部におけるランプホルダの中心軸に直交する方向の幅と、前記先端側嵌合部の管軸に直交する方向の幅との差をAとし、
前記基端側嵌合用凹部におけるランプホルダの中心軸に直交する方向の幅と、前記口金側挿入部の管軸に直交する方向の幅との差をBとし、
前記ホルダ側被挿入部におけるランプホルダの中心軸に直交する方向の幅と、前記先端側嵌合部の管軸に直交する方向の幅との差をCとし、
前記ホルダ側被挿入部におけるランプホルダの中心軸に直交する方向の幅と、前記口金側挿入部における管軸に直交する方向の幅との差をDとし、
前記基端側嵌合用凹部におけるランプホルダの中心軸に直交する方向の幅と、前記基端側嵌合部における管軸に直交する方向の幅との差をEとし、
前記先端側嵌合用凹部におけるランプホルダの中心軸に直交する方向の幅と、前記先端側嵌合部における管軸に直交する方向の幅との差をFとしたとき、
AないしDの何れもが、EおよびFの何れもより大である。
【0008】
前記ホルダ側仮固定機構には、前記放電ランプの管軸に対し直交する方向において前記ホルダ側基体部の中心軸に向けて凸状に伸びる係合部が形成され、
前記口金側仮固定機構には、前記係合部に係合するための、前記口金側基体部の中心軸に向けて陥没する鉤状の凹所よりなる被係合部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記口金側本固定機構は、前記口金側基体部の先端側の外周面に口金側螺子部が形成され、
前記ホルダ側本固定機構は、その内周面にホルダ側螺子部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
前記口金および前記ランプホルダは、導電性部材よりなり、前記口金側基体部の先端面と前記ホルダ側基体部の基端面とが当接した状態で前記口金と前記ランプホルダとが本固定されることにより、電気的給電機構が形成されることを特徴とする。
【0011】
前記ランプホルダには、前記ホルダ側基体部の基端面から前記口金側基体部に向けて突出する回転抑制体が形成され、
前記口金には、前記口金側基体部の先端面に前記回転抑制体に係合するための凹所が形成されていることを特徴とする。
【0012】
前記放電ランプは、定格電流が50A以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る放電ランプ用保持機構は、口金側仮固定機構とホルダ側仮固定機構を動作させることで、放電ランプを手放しても保持できる(仮固定)ので、従来のように、片手でランプを保持しつつ、他方の片手でランプを固定させる困難を必要としない。
しかも、口金側仮固定機構には、管軸方向に離間した2箇所に口金側嵌合部が形成され、ホルダ側仮固定機構には、各口金側嵌合部に対応する管軸方向に離間した2箇所にホルダ側嵌合部が形成されているので、ランプホルダに対して放電ランプを仮固定する作業において、仮固定が終了したことを確実に認識することができるため、仮固定する作業の効率が向上する。
また、口金とランプホルダとは、上記の関係1を満たす構成であるので、ホルダ側仮固定機構の内部において口金側仮固定機構が管軸に対し直交する方向に自在に動くことができるので、仮固定の作業を行う際に口金側仮固定機構の中心軸がホルダ中心軸から偏芯した状態となったとしても、放電ランプを損傷することなく口金側仮固定機構をホルダ側仮固定機構に確実に係合することができる。
【0014】
さらに、本発明に係る放電ランプ用保持機構は、前記の関係1に加え、前記の関係2を満たす構成であるので、ホルダ側仮固定機構の内部において口金側仮固定機構が管軸に対し直交する方向に自在に動くことがさらに容易となるので、仮固定の作業を行う際に放電ランプが損傷することをより確実に防止することができる。
【0015】
さらに、前記ホルダ側仮固定機構には、前記放電ランプの管軸に対し直交する方向において前記ホルダ側基体部の中心軸に向けて凸状に伸びる係合部が形成され、前記口金側仮固定機構には、前記突状部に係合するための、前記口金側基体部の中心軸に向けて陥没する鉤状の凹所よりなる被係合部が形成されているので、
口金に設けられた被係合部に対してランプホルダに設けられた係合部を係合させることにより、放電ランプを宙吊りの状態で確実に支持することができ、片手で放電ランプを支持する必要がないので、放電ランプとランプホルダとを本固定する作業の効率が向上する。
【0016】
さらに、口金側本固定機構の先端側の外周面に口金側螺子部が形成され、ホルダ側本固定機構の内周面にホルダ側螺子部が形成されているので、それぞれの螺子部を螺合することにより放電ランプの口金とランプホルダとを確実に本固定することができる。
【0017】
さらには、口金およびランプホルダが導電性部材よりなり、口金側基体部の先端面とホルダ側基体部の基端面とが当接した状態で口金とランプホルダとが本固定されることによって、口金とランプホルダとの電気的給電機構が形成されており、従来のようにリード線を用いる必要がないので、反射ミラーに対して放電ランプを取付ける際に反射ミラーを傷つける虞がない。
【0018】
さらにまた、ランプホルダには、ホルダ側基体部の基端面から口金側基体部に向けて突出する突起部が形成され、口金には、口金側基体部の先端面に前記突起部に係合するための凹所が形成されているので、ホルダ側本固定機構を回転させてホルダ側本固定機構を口金側本固定機構に対して固定する本固定作業の際に、口金が周方向に回転することがないために本固定の作業効率が向上する。
【0019】
上記のような本発明の放電ランプ保持機構によれば、定格電流が50A以上の大型の放電ランプをランプホルダに対して固定する場合において、放電ランプを損傷させたり反射ミラーを傷付ける虞がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、図1〜図3を用いて本発明の放電ランプ保持機構の全体の構成の概略を説明する。図1は、露光装置の保持台30に取り付けられたランプホルダ5に放電ランプ10が装着され、両者が固定された状態の放電ランプ保持機構を示す。
放電ランプ10(以下、単に「ランプ」ともいう)は、反射ミラー20の頂部開口を通過して、ランプホルダ5(以下、単に「ホルダ」ともいう)に取り付けられる。ここで、ランプ10とホルダ5を放電ランプ保持機構とし、ランプ10、反射ミラー20、ホルダ5を光源装置と称する。ホルダ5は、例えばネジ止めにより露光装置の保持台30に固定される。また、保持台30には、ホルダ5の軸中心から外れたところに、補助的な固定点31が設けられている。ホルダ5は、固定点31にも補助的に固定される。なお、反射ミラー20および保持台30は、図示略の機構により露光装置に固定されている。
【0021】
図2は、ランプホルダ5に放電ランプ10が固定される前の状態のランプ10のみを示す。放電ランプ10は、放電ランプ10の管軸(以下、単に「管軸」ともいう)方向(図面の上下方向)の略中央に、例えば石英ガラスからなる発光管部11を有し、発光管部11の両端にロッド状の封止部12が管軸に沿って伸びるように一体的に形成される。発光管部11は、球形あるいは管軸方向に細長く伸びる紡錘形になっており、その内部に形成された気密空間に、発光物質である水銀や始動用ガスであるキセノンやアルゴンが封入されている。また、発光管部11の内部には陽極13と陰極14が対向配置しており、その先端同士の間隔が放電ギャップとして形成される。放電ギャップは電極間距離でもあり、例えば5mm程度である。封止部12の先端に筒状の口金4が装着されている。なお、図2における下方の封止部の先端にも筒状の口金が装着されるが、本発明ではこの口金は必須ではない。このランプ10は、何れかの電極を上方に、他方の電極を下方に位置させる垂直配置をしており、この実施例では陰極を下方に、陽極を上方に配置している。
【0022】
図1に戻り、反射ミラー20は、例えばガラス基材の反射面に多層膜をコーティングしたもので、全体が凹面形状でランプ10からの放射光を良好に反射する。反射ミラー20は楕円集光鏡が用いられることが多く、その場合は、放電ランプ10のアークと、反射ミラー20の第一焦点を一致させる必要がある。このアークは、一般に放電ギャップ間に形成されるので、反射ミラー20の第一焦点に放電ギャップ間の適当な箇所が来るようにランプを設置する。ミラーの向きは下に開のものを示したが、上(ホルダ側)に開のものもある。
【0023】
ランプ10や反射ミラー20は、近年、大型化している。前述のとおり、この発明の放電ランプ保持機構は、特にランプや反射ミラーが大型化した場合に有用となる。
ランプ10について数値例を示すと、ランプ電力は定格値3KW〜40KW、ランプ電流は定格値50A〜200A、発光管部11の最大外径(電極の伸びる方向に垂直な方向の径)は50mm〜250mmである。また、ランプの重量は0.5kg〜10kgである。反射ミラー20について数値例を示すと、前面開口はφ300mm〜1000mmであり、ランプが伸びる方向の奥行きは200mm〜800mmである。
【0024】
図3は、図1に示す光源装置を、図1とは異なる方向から眺めた状態を示し、反射ミラー20の一部を切り欠いて反射ミラー20の内部構造を表現している。反射ミラー20の頂部開口21は、ランプ10の封止部12あるいは口金4が通過できるだけの大きさを少なくとも必要とする。頂部開口21があまりに大きいと、ランプ10の放射光が、頂部開口21から漏れてしまい光の利用効率が低下する。
【0025】
以下に、図4および図5を用いて本発明の放電ランプ保持機構に係る口金4とランプホルダ5の構成について説明する。図4は、本発明の放電ランプの封止部に装着される口金の構成の概略を示す斜視図である。図5は、本発明に係るランプホルダの構成の概略を示す、ランプホルダを中心軸方向に切断した断面の斜視図である。
【0026】
図4を用いて、本発明に係る口金4の構成について説明する。口金4は、全体として円筒状に形成され放電ランプ10の管軸(以下、単に「管軸」ともいう)に沿って伸びて封止部12に装着される口金側基体部41と、口金側基体部41に連続して形成され、管軸に沿って伸びる柱状の口金側仮固定機構42とを備えている。口金側基体部41は、ランプ10の封止部12に装着される口金側胴部411と、この口金側胴部411の先端側に連続して、口金側胴部411よりも管軸に対し直交する方向の幅(以下、単に「幅」ともいう)が大きくなるよう鍔状に形成された口金側フランジ部412とを備えている。口金側基体部41と口金側仮固定機構42とは、物理的に一つの部材によって構成されており、例えば真鍮などの導電性部材により構成されている。
【0027】
口金側フランジ部412は、先端側に平坦な口金側給電面413を備えると共に、その外周面に口金側螺子部414が形成されている。図4に示す例では、この口金側螺子部414が口金側本固定機構である。口金側給電面413は、放電ランプ10の管軸に対し直交する方向に広がっており、後述するランプホルダ5のホルダ側給電面516と面接触することにより、ランプ10と口金4との電気的給電機構を形成する。
【0028】
口金側仮固定機構42は、口金側胴部411および口金側フランジ部412よりも幅の小さい柱状に形成され、口金側給電面413の概ね中心位置において、ランプホルダ5側に向けて管軸に沿って凸状に伸びるよう設けられている。口金側仮固定機構42は、ランプホルダ5の基端側嵌合用凹部531に嵌合するための、口金側給電面413に連続して形成された円柱状の基端側嵌合部421と、ランプホルダ5のホルダ側被挿入部532に挿通するための、先端側に向かうにつれて次第に幅が小さくなるテーパー部421aを挟んで基端側嵌合部421に連続する、基端側嵌合部421よりも幅の小さい円柱状に形成された口金側挿入部422と、ランプホルダ5の先端側凹部533に嵌合するための、口金側挿入部422と同一の幅を有する先端側嵌合部423とを備えると共に、先端側嵌合部423に連続して先端側に向かうにつれて次第に幅が小さくなるテーパー部423aと、テーパー部423aに連続して先端側嵌合部423よりも小さい幅を有する円柱状の先端部424とを備えている。すなわち、口金側仮固定機構42は、口金側挿入部422を挟んで管軸方向に離間した2箇所に口金側嵌合部(421、423)が形成されている。
【0029】
口金側仮固定機構42の先端部424は、ホルダ側仮固定機構53における基端側嵌合用凹部531、ホルダ側被挿入部532並びに先端側嵌合用凹部533の何れもより幅が小さいことで、口金側仮固定機構42をホルダ側仮固定機構53に向けて進入させるときのガイドとして機能するものであって、口金側仮固定機構42の進入を容易にするために設けられている。
【0030】
口金側仮固定機構42には、ランプホルダ5に設けられた係合部54に係合するための、口金側基体部41の中心軸に向けて陥没する鉤状の凹所よりなる被係合部425が、口金側挿入部422、先端側嵌合部423およびテーパー部423aに跨るよう形成されている。
鉤状の被係合部425は、図7に示すように、口金側挿入部422、先端側嵌合部423およびテーパー部423aに跨る領域に形成された、管軸方向における先端側がテーパー部423aにおいて開口すると共に管軸方向における他端側に内壁面426aを有する軸方向溝425aと、口金側挿入部422に形成された、軸方向溝425aに連続して軸方向溝425aに対して直交する方向に伸びる幅方向溝425bと、口金側挿入部422に形成された、幅方向溝425bに連続して幅方向溝425bに対して直交する方向に伸びる軸方向溝425cとにより構成されている。
【0031】
口金側フランジ部412に形成された口金側給電面413上の2箇所には、ランプホルダ5に設けられた回転抑制体517の各々を係合するための凹所415の各々が形成されている。さらに、口金側給電面413上の2箇所には、ランプホルダ5に設けられた突起部520を係合するための凹所416がそれぞれ形成されている。このような凹所416を設けることで、ランプホルダ5との関係で適合しない口金4を備える放電ランプ10がランプホルダ5に本固定されることを排除することができる。
【0032】
続いて、図5を用いて本発明に係るランプホルダ5の構成について説明する。ランプホルダ5は、口金側基体部41と係合するためのホルダ側基体部51と、ホルダ側基体部51の基端側に取付けられ、ホルダ側基体部51を中心として回転する回転体52とを備えている。ホルダ側基体部51は、露光装置の保持台30に電気的に接続される円柱状のホルダ側胴部511と、ホルダ側胴部511の基端側に連続して形成された、ホルダ側胴部511の基端部518よりも大きい幅を有する鍔状のホルダ側フランジ部512とを備えている。
【0033】
ホルダ側胴部511は、ホルダ側フランジ部512の先端面519からホルダ側胴部511の先端側に向けて所定の距離だけ離間した位置に、口金側フランジ部412と回転体52とが完全に本固定されたときの回転体52の位置を示す目印514が形成されている。目印514は、ホルダ側胴部511の周方向に環状の切欠きを設けたもの、ホルダ側胴部511の外周面に環状に染料を塗布したものなど、目視により視認できるものであれば良い。ホルダ側胴部511の先端部515は、露光装置の保持台30に取付けられて保持台30に電気的に接続されている。ホルダ側フランジ部512の基端側には、平坦なホルダ側給電面516が形成されている。
【0034】
ホルダ側フランジ部512は、概ね中心の位置に、ランプホルダ5の中心軸に沿ってホルダ側胴部511の先端部515側に向けて伸びる凹部よりなるホルダ側仮固定機構53を備えている。ホルダ側仮固定機構53は、口金4の基端側嵌合部421に嵌合するための基端側嵌合用凹部531と、口金側挿入部422を挿入するための、ホルダ側基体部51の中心軸に直交する方向の幅(以下、単に「幅」ともいう)が基端側嵌合用凹部531と同一であるホルダ側被挿入部532と、先端側嵌合部423に嵌合するための、ホルダ側被挿入部532よりも小さい幅を有する先端側嵌合用凹部533とを備えている。すなわち、ホルダ側仮固定機構53は、ホルダ側被挿入部532を挟んでホルダ側基体部51の中心軸方向に離間した2箇所に、口金側仮固定機構42を嵌合するためのホルダ側嵌合用凹部が形成されている。
【0035】
ホルダ側仮固定機構53は、ホルダ側被挿入部532に、管軸に対し直交する方向においてランプホルダの中心軸に向けて凸状に伸びる柱状の係合部54が形成されている(図6を参照)。
前記した口金側仮固定機構42に設けられた被係合部425に対し、ホルダ側仮固定機構53に設けられた係合部54を係合することで、後述するように、係合部54によって口金4が装着された放電ランプ10を宙吊り状態で仮固定することができるので、放電ランプ10を作業者が片手で保持する必要がなくなる。
【0036】
ここで、口金側仮固定機構42とホルダ側仮固定機構53の仕様について以下に説明する。基端側嵌合部421は、基端側嵌合用凹部531に対して嵌め合いの関係になるよう、幅が基端側嵌合用凹部531よりも0〜1%(通常は0.05〜0.3%)小さく形成されている。口金側挿入部422は、ホルダ側被挿入部532に対して嵌め合いの関係にならないよう、幅がホルダ側被挿入部532よりも0.5〜100%(通常は5〜20%)小さく形成されている。先端側嵌合部423は、先端側嵌合用凹部533に対して嵌め合いの関係になるよう、幅が先端側嵌合用凹部533よりも0〜1%(通常は0.05〜0.3%)小さく形成されている。
【0037】
口金側仮固定機構42とホルダ側仮固定機構53とがこのような仕様を有することにより、口金4とランプホルダ5とを仮固定した際に、口金4が径方向に動いて偏芯しないようにすることができるとともに、口金4を管軸方向において適切な位置に固定することができるので、放電ランプ10を管軸方向において確実に位置決めすることができる。
【0038】
さらに、前記の放電ランプ保持機構の例によれば、口金側仮固定機構42とホルダ側仮固定機構53とは、以下の関係を満たすよう構成されている。
基端側嵌合用凹部531の幅D1と先端側嵌合部423の幅d3との差をAとし、
基端側嵌合用凹部531の幅D1と口金側挿入部422の幅d2との差をBとし、
ホルダ側被挿入部532の幅D2と先端側嵌合部423の幅d3との差をCとし、
ホルダ側被挿入部532の幅D2と口金側挿入部422の幅d2との差をDとし、
基端側嵌合用凹部531の幅D1と基端側嵌合部421の幅d1との差をEとし、
先端側嵌合用凹部533の幅D3と先端側嵌合部423の幅d3との差をFとしたとき、
A、B、C及びDの何れもがE及びFの何れもより大である。
【0039】
このような構成を備えることにより、後述するように、放電ランプ10に装着された口金4をランプホルダ5に進入させて仮固定する作業を行う際に、口金4の中心軸がランプホルダ5の中心軸に対して傾斜した状態で口金が挿入されたとしても、傾斜が極端に大きくない限りは放電ランプ10の封止部12が破損する虞がない。
【0040】
さらに、ランプホルダ5の他の構成について説明する。ランプホルダ5の中心軸に沿って伸びる回転体52は、筒状の回転本体部521がホルダ側フランジ部512の外周面に取付けられており、口金4とランプホルダ5とを本固定する前において、回転本体部521の基端側の一部分がホルダ側給電面516を超えて中心軸方向に伸び出しているものであって、ホルダ側基体部51を中心として周方向に手動により回転するものである。
【0041】
回転本体部521の先端側には、回転本体部521よりも小さい外径を有する筒状の回転縮径部522が連続して形成されており、回転縮径部522がホルダ側胴部511の基端部518の外周面に取付けられている。ホルダ側胴部511に設けられた目印514は、口金4とランプホルダ5とを本固定する前において、回転体52の内側に隠れて視認することのできない状態とされている。回転体52は、手動により周方向に回転することによって、回転縮径部522の基端面523がホルダ側フランジ部512の先端面519に当接する位置、即ち、目印514を視認することのできる位置と、ホルダ側フランジ部512の先端面519よりもホルダ側胴部511の先端寄りに形成された不図示の回転体留との間にわたって、上下方向に可動することができる。
回転本体部521の内周面には、口金4に形成された口金側螺子部414に螺合するためのホルダ側螺子部525が形成されている。回転本体部521の外周面には、手動による回転作業がやりやすいように、例えばローレット加工が施されている。ホルダ側本固定機構は、ホルダ側螺子部525を備える回転体52により構成されている。
【0042】
ホルダ側基体部51、回転体52並びに口金4は、例えば、銅、真鍮などや、これらの基材にニッケル、銀、金などの低酸化性、耐薬品性のものをコーティングした導電性材料から構成されている。導電性を有するホルダ側給電面516と、導電性を有する口金側給電面413とを面接触させることにより、口金4とランプホルダ5とを電気的に接続することができる。従って、従来のようにリード線を使用することなく、口金側給電面413とホルダ側給電面516とを面接触させるのみで、ランプホルダ5を介して放電ランプ10に対して給電することができる。
【0043】
ホルダ側フランジ部512には、ホルダ側胴部511を挟んだ2箇所に、口金側給電面413に設けられた凹所415の各々に挿入するための管軸に沿って伸びる回転抑制体517の各々が以下のようにして設けられている。
回転抑制体517は、口金側給電面413の凹所415に係合するための管軸に沿って伸びる棒状の基端部517aと、基端部517aに連続して基端部517aよりも大きい幅を有する鍔状のフランジ部517bと、フランジ部517bに連続してフランジ部517bよりも幅の小さい棒状の先端部517cとを有すると共に、基端部517aの外周面に当接することなく基端部517aの周囲を螺旋状に取り巻くようフランジ部517bに取付けられた弾性体517dを備えている。
ホルダ側フランジ部512には、回転抑制体517を収容することのできる空洞が管軸に沿って形成されており、詳細には、基端部517aがホルダ側給電面516から口金4側に向けて伸び出ることのできる大きさを有する基端側開口512aと、基端側開口512aに連続してフランジ部517bおよび基端部517aを収容することのできる大きさを有する収容部512bと、収容部512bに連続して先端部517cがホルダ側フランジ部512の先端面519から伸び出ることのできる大きさを有する先端側開口512cとが形成されている。
【0044】
このような回転抑制体517を設けることにより、回転体52を回して口金4とランプホルダ5とを本固定する作業の際に、回転体52が回転抑制体517の先端部517cの先端面に当接することで、回転抑制体517の基端部517aがホルダ側給電面516から口金4側に向けて伸び出ると共に口金側給電面413に設けられた凹所415の各々に係合された状態となって、各回転抑制体517により口金4が周方向に回転することが規制されるので、本固定の作業性が格段に向上する。
【0045】
さらに、ホルダ側フランジ部512には、口金側給電面413に設けられた各凹所416に挿入するための2つの突起部520が、ホルダ側給電面516上の2箇所から口金側基体部41に向けて凸状に伸びるよう形成されている(図5は、断面であるので1箇所のみに突起部520が形成されている)。突起部520の各々を凹所416の各々に対して係合することで、互いに適合することが可能な関係にある口金4とランプホルダ5とのみを固定することができ、ランプホルダ5との関係で適合しない口金4を備える放電ランプ10がランプホルダ5に対して本固定される虞がない。
【0046】
以下に、ランプホルダ5に対して放電ランプ10に装着された口金4を仮固定および本固定する作業について説明する。図6〜図10は、ランプホルダ5に対して放電ランプ10に装着された口金4を固定するための手順を説明するための図である。口金4をランプホルダ5に固定するときの手順は図6〜10の順であり、図6から図10に進むに従い、口金4がランプホルダ5に装着される。口金4をランプホルダ5から取り外すときの手順は図10〜図6の順となる。なお、本来であれば、省略されている側の断面に係合部54が設けられているのであるが、説明の便宜のために図6〜図10においては係合部を示してある。
【0047】
ランプホルダ5に対して放電ランプ4を仮固定する仮固定作業の第1工程について、図6、図7を用いて説明する。図6は、口金4の口金側仮固定機構42がランプホルダ5のホルダ側仮固定機構53に挿入される直前の状態を示す。作業者は、放電ランプ10を片手で保持して、口金側仮固定機構42を口金4の上方側に位置するランプホルダ5のホルダ側仮固定機構53に向けて、鉛直方向においてランプホルダ5の下側からランプホルダ5に向けて進出させる。
【0048】
図7は、口金4の口金側仮固定機構42にランプホルダ5のホルダ側仮固定機構53が挿入された状態を示す。口金4は、口金側仮固定機構42の鉤状の被係合部425における軸方向溝425aの内壁面426aに対して、ホルダ側仮固定機構53に設けられた係合部54が当接すると共に、口金側給電面413がランプホルダ5のホルダ側給電面516に当接するまでランプホルダ5側に進入することにより、先端側嵌合部423が先端側嵌合用凹部533に嵌合され、口金側挿入部422がホルダ側被挿入部532に挿入され、基端側嵌合部421が基端側嵌合用凹部531に嵌合された状態にする。
【0049】
なお、口金側仮固定機構42をホルダ側仮固定機構53に仮固定する際には、ホルダ側仮固定機構53に係合部54が存在するので、口金側仮固定機構42が係合部54に衝突することによって、口金4の進入が阻害されることがある。この場合には、口金4を回転させることで、係合部54を被係合部425における軸方向溝425aに一致させて、口金4の進入が阻害されないようにする。
【0050】
次に、仮固定作業の第2工程について図8、図9を用いて説明する。図7に示すように、係合部54が軸方向溝425aの内壁面426aに当接した状態とした後に、図8に示すように、係合部54が幅方向溝425bに沿って進むとともに軸方向溝425cの内壁面426bに当接するよう口金4を回転させる。図8に示す状態とした後に、放電ランプ10から手を放すことにより、放電ランプ10の自重によって放電ランプ10が鉛直方向下方に落下して、図9に示すように、係合部54が軸方向溝425cの内壁面426cに当接することで放電ランプ10が係止された状態になり、仮固定作業が完了する。仮固定作業が完了した図9に示す状態においては、軸方向溝425cの全長に相当する距離だけ放電ランプ10が鉛直方向下方側に落下することにより、口金側給電面413とホルダ側給電面516との間には空隙が介在している。
このように、「仮固定」とは、口金4に設けられた被係合部425に対してランプホルダ5に設けられた係合部54が係合することで、係合部54によって放電ランプ10が吊り下げられた状態をいう。
【0051】
最後に、本固定作業について説明する。図10は、口金4とランプホルダ5とが本固定された状態を示す。ホルダ側胴部511に形成された目印514を視認できる状態まで、回転体52を手動により周方向に回転させて回転本体部521の内周面に形成されたホルダ側螺子部525と口金側螺子部414とを螺合させることによって口金4とランプホルダ5との本固定の作業が完了する。このように、「本固定」とは、回転体52のホルダ側螺子部525と口金4の口金側螺子部414とが螺合した状態をいう。
この本固定の作業の際には、回転縮径部522の基端面523が回転抑制体517の先端部517cの先端面に当接することで回転抑制体517の全体が鉛直方向下方側に押し下げられ、ホルダ側給電面516から各々の回転抑制体517の基端部517aが伸び出るとともに、各々の回転抑制体517の基端部517aが口金側給電面413に設けられた各々の凹所415に係合される。こうすることにより、回転体52を回転させると同時に口金4までもが回転する虞がないので、本固定作業の作業性が向上するものと期待される。
【0052】
本固定作業の完了後には、口金側給電面413とホルダ側給電面516とが当接することで、口金側給電面413がホルダ側給電面516を下方側に押圧し、回転縮径部522の基端面523がホルダ側フランジ部512の先端面519に当接することで、回転縮径部522がホルダ側フランジ部512を下方側に押圧することになるので、口金側給電面413とホルダ側給電面516とが当接した状態で、口金4とランプホルダ5とを強固に固定することができる。従って、本固定後には、口金4とランプホルダ5とが導通した状態になって電気的給電機構が形成される。
【0053】
寿命末期を迎えた放電ランプを取り外す際には、図10〜図6の手順を行うことになる。すなわち、回転体52を本固定時と反対方向に回転させて、口金側螺子部414をホルダ側螺子部525から解除するとともに、回転体52を鉛直方向上方側に移動させ、図9に示す状態とする。この状態で、口金4を周方向に回転させて、係合部54を図8、図7の順に移動させた後、口金4が装着された放電ランプ10を鉛直方向下方側に引き抜くことによって、寿命末期を迎えた放電ランプ10をランプホルダ5から取り外す。
【0054】
以上のような本発明の放電ランプ保持機構によれば、基本的には、ホルダ側仮固定機構53に対して口金側仮固定機構42を係合して、鉤状の被係合部425の軸方向溝425cに係合部54が係止された状態とすることで、放電ランプ10が落下することのない程度に宙吊り状態で仮固定される。従って、重量の大きい放電ランプ10をランプホルダ5に固定する場合に、放電ランプを一方の手で支えつつ他方の手のみで本固定作業を行うというような煩雑な作業を行う必要がないので、ランプホルダに対して放電ランプを取付ける作業の効率が向上する。
【0055】
しかも、本発明の放電ランプ保持機構によれば、口金側給電面413とホルダ側給電面516とを強固に面接触させることにより、口金4とランプホルダ5とを導通することができるので、ランプホルダ5を介して放電ランプ10に対して給電することができる。そのため、例えば50〜250A(アンペア)もの大電流を流す必要のある大型の放電ランプに対し大電流を確実に供給することができるものでありながら、従来の放電ランプ10のように給電用のリード線を必要としないので、放電ランプ10をランプホルダ5に固定する際に反射ミラー20の反射面に傷を付けることがなく、反射面の光反射特性を損なう虞がない。
【0056】
さらに、本発明に係る放電ランプ保持機構によれば、図6〜図10に基づいて説明した仮固定作業における作業性が格段に向上するものであり、これについて以下に説明する。
【0057】
本発明の放電ランプ保持機構によれば、前記したように、口金側仮固定機構42の管軸方向に離間した2箇所に形成された基端側嵌合部421と先端側嵌合部423とは、それぞれ、ホルダ側仮固定機構53のホルダ中心軸方向に離間した2箇所に形成された基端側嵌合用凹部531と先端側嵌合用凹部533とに嵌合されている。これにより、口金側仮固定機構42が、ホルダ側仮固定機構53における奥側の位置と入り口側の位置の2箇所において、放電ランプが管軸に対して直交する方向に動くことが規制されて、放電ランプ10がランプホルダ5に対して可動する範囲が狭くなるので、図7に示す仮固定作業の第1工程が完了したことを作業者が認識することができる。
【0058】
さらに、本発明の放電ランプ保持機構によれば、前記したように(段落0038)、A,B,C,Dの何れもがE,Fの何れもより大であるという関係を満たすよう構成されているので、口金4の中心軸がランプホルダ5の中心軸に対して傾斜した状態で口金が挿入されたとしても、傾斜が極端に大きくない限りは放電ランプ10の封止部12が破損する虞がない。これについて以下に図11〜図14を用いて説明する。
【0059】
図11は、口金4の口金側仮固定機構42がランプホルダ5のホルダ側仮固定機構53に係合される前の状態を示す。図12は、口金側仮固定機構42が、その中心軸がランプホルダ5の中心軸に対して傾斜してランプホルダ5のホルダ側仮固定機構53に係合される状態を示す。図13は、口金側仮固定機構42の先端側嵌合部423が、ホルダ側仮固定機構53の先端側嵌合用凹部533に完全に嵌合されるとともに、基端側嵌合部421が、基端側嵌合用凹部531に完全に嵌合される状態を示す。図14は、本発明の放電ランプ保持機構の構成を有しない比較例を示すものである。
【0060】
すなわち、図12に示すように、口金側仮固定機構42の中心軸がランプホルダ5の中心軸に対して傾斜した状態で、ホルダ側仮固定機構53に対して口金側仮固定機構42が進入したとしても、ランプホルダ5における基端側嵌合用凹部531とホルダ側被挿入部532とにおいて、口金4における先端側嵌合部423と口金側挿入部422とが幅方向に自在に動くことのできるスペースがあるため、口金側仮固定機構42の傾斜が極端に大きくない限りは放電ランプ10の封止部12に応力が加わることがない。従って、放電ランプ10の封止部12が破損するという不具合を生じる虞がない。
しかも、口金側仮固定機構42に設けられた鉤状の被係合部425における軸方向溝425aの幅が係合部54の幅よりも若干大きめであるため、係合部54が被係合部425における開口を通過しさえすれば、軸方向溝425aの内壁面がガイドになって、口金側仮固定機構42の中心軸がランプホルダ5の中心軸に一致した状態で口金4を進入させることができる。そのため、図13に示すように、口金4とランプホルダ5とを、係合部54が軸方向溝425aの内壁面426aに当接すると共に、先端側嵌合用凹部533に先端側嵌合部423が嵌合され、基端側嵌合用凹部531に基端側嵌合部421が嵌合した状態とすることが容易になる。
【0061】
これに対し、図14に示すように、口金側仮固定機構42´とホルダ側仮固定機構53´とが、口金側仮固定機構42´の全長にわたってホルダ側仮固定機構53に嵌合される場合によれば、口金側仮固定機構42´がホルダ側仮固定機構53´において幅方向に自在に動くスペースがないため、仮固定の作業の際に僅かでも口金側仮固定機構42´の中心軸がランプホルダ5´の中心軸に対して傾斜するようなことがあれば、放電ランプ10の封止部12に応力が加わることになって、封止部12が破損する危険性が高い。
【0062】
以下に、本発明の他の実施形態について図15〜図17を用いて説明する。図15〜図17に示す実施形態においては、図4、5と共通している構成と、仮固定作業および本固定作業とについては説明を省略する。
【0063】
図15〜図17に示す実施形態は、図4、5に示す実施形態と同様に、前記した(段落0032)A,B,C及びDの何れもがE,Fの何れもより大であるという関係と、先端側嵌合部の幅d3が基端側嵌合部の幅d1よりも小である、という関係を共に満たしている。
【0064】
図15に示す実施形態について以下に説明する。口金側仮固定機構42vは、口金側給電面413vの中央から突出する円柱状の基端側嵌合部421vと、基端側嵌合部421vよりも幅の小さい円柱状となるよう基端側嵌合部421vに連続して形成された口金側挿入部422vとを備え、口金側挿入部422vの先端側に先端側嵌合部423vを備えている。この実施形態においては、鉤状の被係合部425vが口金側挿入部422vと先端側嵌合部423vとに跨るよう形成されている。
【0065】
ホルダ側仮固定機構53vは、基端側嵌合部421vに嵌合するための、ホルダ側給電面516vの中央に形成された基端側嵌合用凹部531vと、口金側挿入部422vを挿入するための、基端側嵌合用凹部531vと同一の幅を有するホルダ側被挿入部532vと、先端側嵌合部423vを嵌合するための、ホルダ側被挿入部532vよりも幅の小さい先端側嵌合用凹部533vとが形成されている。
【0066】
図16に示す実施形態について以下に説明する。口金側仮固定機構42wは、口金側給電面413wの中央から突出する基端側嵌合部421wと、先端側に向かうにつれて次第に幅が小さくなるテーパー部421mを介して基端側嵌合部421wに連続する、基端側嵌合部421wよりも幅の小さい円柱状に形成された口金側挿入部422wと、口金側挿入部422wと同一の幅を有する先端側嵌合部423wとを備えると共に、先端側嵌合部423wに連続して先端側に向かうにつれて次第に幅が小さくなるテーパー部423mと、テーパー部423mに連続して先端側嵌合部423wよりも幅の小さい円柱状に形成された先端部424wとを備えている。この実施形態においては、鉤状の被係合部425wが、口金側挿入部422w、先端側嵌合部423wおよびテーパー部423mに跨るよう形成されている。
【0067】
ホルダ側仮固定機構53wは、基端側嵌合部421wを嵌合するための、ホルダ側給電面516wの中央に形成された基端側嵌合用凹部531wと、口金側挿入部422wを挿入するための、基端側嵌合用凹部531wよりも大きい幅を有するホルダ側被挿入部532wと、先端側嵌合部423wを嵌合するための、ホルダ側被挿入部532wよりも幅の小さい先端側嵌合用凹部533wとを備えている。
【0068】
図17に示す形態について以下に説明する。口金側仮固定機構42xは、口金側給電面413xの中央から突出する円柱状の基端部420xと、基端部420xに連続して幅方向に鍔状に広がる基端側嵌合部421xと、基端側嵌合部421xよりも幅の小さい円柱状となるよう基端側嵌合部421xに連続して形成された口金側挿入部422xと、口金側挿入部422xに連続して幅方向に鍔状に広がる先端側嵌合部423xとを備えている。この実施形態においては、鉤状の被係合部425xが口金側挿入部422xと先端側嵌合部423xとに跨るよう形成されている。
【0069】
ホルダ側仮固定機構53xは、基端側嵌合部421xを嵌合するための基端側嵌合用凹部531xと、口金側挿入部422xを挿入するための、基端側嵌合用凹部531xと同一の幅を有するホルダ側被挿入部532xと、先端側嵌合部423xを嵌合するための、ホルダ側被挿入部532xよりも幅の小さい先端側嵌合用凹部533xとを備えている。
【0070】
このような図15〜17に示す実施形態によれば、図4、5に示す実施形態と実質的に同様の効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る放電ランプ保持機構を有する光源装置を示す。
【図2】本発明に係る放電ランプを示す。
【図3】本発明に係る放電ランプ保持機構を有する光源装置を示す。
【図4】本発明に係る口金を示す。
【図5】本発明に係るランプホルダを示す。
【図6】本発明に係る口金とランプホルダとを固定する手順を示す。
【図7】本発明に係る口金とランプホルダとを固定する手順を示す。
【図8】本発明に係る口金とランプホルダとを固定する手順を示す。
【図9】本発明に係る口金とランプホルダとを固定する手順を示す。
【図10】本発明に係る口金とランプホルダとを固定する手順を示す。
【図11】本発明に係る放電ランプ保持機構の作用の説明を示す。
【図12】本発明に係る放電ランプ保持機構の作用の説明を示す。
【図13】本発明に係る放電ランプ保持機構の作用の説明を示す。
【図14】比較例に係る放電ランプ保持機構を示す。
【図15】本発明に係る放電ランプ保持機構の他の実施形態を示す。
【図16】本発明に係る放電ランプ保持機構の他の実施形態を示す。
【図17】本発明に係る放電ランプ保持機構の他の実施形態を示す。
【符号の説明】
【0072】
10 放電ランプ
11 発光管部
12 封止部
13 陽極
14 陰極
20 反射ミラー
4 口金
41 口金側基体部
411 口金側胴部
412 口金側フランジ部
413 口金側給電面
414 口金側螺子部
415 凹所
416 凹所
42 口金側仮固定機構
421 基端側嵌合部
422 口金側挿入部
423 先端側嵌合部
425 被係合部
5 ランプホルダ
51 ホルダ側基体部
511 ホルダ側胴部
512 ホルダ側フランジ部
514 目印
516 ホルダ側給電面
517 回転抑制体
52 回転体
521 回転本体部
522 回転縮径部
525 ホルダ側螺子部
53 ホルダ側仮固定機構
531 基端側嵌合用凹部
532 ホルダ側被挿入部
533 先端側嵌合用凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の端部に口金が装着された放電ランプと、この放電ランプを吊り下げるとともに着脱することのできるよう保持するランプホルダとからなり、
前記放電ランプの口金は、放電ランプの管軸に沿って伸びて放電ランプの端部に被さるよう装着される口金側基体部と、当該口金側基体部よりも管軸に対し直交する方向の幅の小さい柱状に形成され、当該口金側基体部の先端面から突出するとともに前記ランプホルダに向けて管軸に沿って伸びる口金側仮固定機構と、当該口金側基体部の先端側の外周面に形成された口金側本固定機構とを備え、
前記ランプホルダは、前記口金側仮固定機構と係合するための、管軸に沿って伸びる凹所よりなるホルダ側仮固定機構を備えるホルダ側基体部と、前記口金側本固定機構と係合するための、当該ホルダ側基体部の外周面に設けられ、当該ホルダ側基体部を中心として周方向に回転する筒状のホルダ側本固定機構とを備え、
前記口金と前記ランプホルダとが、前記口金側仮固定機構と前記ホルダ側仮固定機構とを係合することにより仮固定されるとともに、前記口金側本固定機構と前記ホルダ側本固定機構とを係合することにより本固定される放電ランプ保持機構であって、
前記口金側仮固定機構には、管軸方向に離間した2箇所に、基端側嵌合部と先端側嵌合部とが形成されると共に、当該基端側嵌合部と当該先端側嵌合部との間に口金側挿入部が形成され、
前記ホルダ側仮固定機構には、ランプホルダの中心軸方向に離間した2箇所に、前記基端側嵌合部と前記先端側嵌合部のそれぞれに嵌合するための基端側嵌合用凹部と先端側嵌合用凹部とが形成されると共に、当該基端側嵌合用凹部と当該先端側嵌合用凹部との間に、前記口金側挿入部を挿入するためのホルダ側被挿入部が形成され、
前記口金と前記ランプホルダとは、以下の関係1に示す関係を満たすことを特徴とする放電ランプ保持機構。
(関係1)
前記基端側嵌合用凹部におけるランプホルダの中心軸に直交する方向の幅と、前記先端側嵌合部の管軸に直交する方向の幅との差をAとし、
前記基端側嵌合用凹部におけるランプホルダの中心軸に直交する方向の幅と、前記口金側挿入部の管軸に直交する方向の幅との差をBとし、
前記ホルダ側被挿入部におけるランプホルダの中心軸に直交する方向の幅と、前記先端側嵌合部の管軸に直交する方向の幅との差をCとし、
前記ホルダ側被挿入部におけるランプホルダの中心軸に直交する方向の幅と、前記口金側挿入部における管軸に直交する方向の幅との差をDとし、
前記基端側嵌合用凹部におけるランプホルダの中心軸に直交する方向の幅と、前記基端側嵌合部における管軸に直交する方向の幅との差をEとし、
前記先端側嵌合用凹部におけるランプホルダの中心軸に直交する方向の幅と、前記先端側嵌合部における管軸に直交する方向の幅との差をFとしたとき、
AないしDの何れもが、EおよびFの何れもより大である。
【請求項2】
前記ホルダ側仮固定機構には、前記放電ランプの管軸に対し直交する方向において前記ホルダ側基体部の中心軸に向けて凸状に伸びる係合部が形成され、
前記口金側仮固定機構には、前記係合部に係合するための、前記口金側基体部の中心軸に向けて陥没する鉤状の凹所よりなる被係合部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ保持用機構
【請求項3】
前記口金側本固定機構は、前記口金側基体部の先端側の外周面に口金側螺子部が形成され、
前記ホルダ側本固定機構は、その内周面にホルダ側螺子部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ保持機構。
【請求項4】
前記口金および前記ランプホルダは、導電性部材よりなり、前記口金側基体部の先端面と前記ホルダ側基体部の基端面とが当接した状態で前記口金と前記ランプホルダとが本固定されることにより、電気的給電機構が形成されることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ保持機構。
【請求項5】
前記ランプホルダには、前記ホルダ側基体部の基端面から前記口金側基体部に向けて突出する回転抑制体が形成され、
前記口金には、前記口金側基体部の先端面に前記回転抑制体に係合するための凹所が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ保持機構。
【請求項6】
前記放電ランプは、定格電流が50A以上であることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ保持機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−43479(P2009−43479A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205402(P2007−205402)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】