説明

放電ランプ

【課題】 金属板61、62の中心をリード棒5、8の軸中心に一致するようにして、金属板61、62とリード棒5、8とを溶加材9により接合することができる放電ランプを提供すること。
【解決手段】 ガラス部材11の端面に続いて配置される金属板61、62と、ガラス部材11の外周面に配設され、前記金属板に接続される金属箔と、放電容器1の外方または発光管2に向かってのびるリード棒5、8と、を備える放電ランプにおいて、
金属板61、62はテーパ穴の貫通孔63を有し、テーパ穴の貫通孔63に、テーパ部53、83が形成されたリード棒5、8が挿入され、テーパ穴の貫通孔63とテーパ部53、83とが嵌合して、溶加材9により接合されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電ランプに関する。特に、投影露光装置、光化学反応装置などの光源として用いられるショートアーク型放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から放電ランプとしては種々のものが知られているが、発光管内に水銀が封入された放電ランプは、波長365nmのi線や、波長436nmのg線を放出する発光特性を有することから、例えば半導体ウェハ、液晶基板などの露光処理に用いられる露光装置用の光源として使用されている。
【0003】
大電流用の放電ランプにおいては、発光ガスの主成分である水銀の封入量が多く、点灯時に発光管内部が高圧となり、しかも発熱量が大きく、したがって、特に側管やその内部のガラスにおいては耐熱性および耐圧性が大きいことが必要とされる。そして点灯中においては発光管内の水銀が完全に蒸発していることが必要であり、このため点灯中の発光管内においては水銀の凝縮が生ずるような低い温度部分がないことが必要である。
【0004】
このようなことから、大電流用の放電ランプにおいては、発光管を形成するガラスを給電用のリード棒に直接溶着することにより、発光管の気密封止を達成するいわゆるロッドシール構造ではなく、封着用の金属箔を用いた箔シール構造が採用されている。また、電極に大電流を供給するために、金属箔や金属箔と電極を導通する部材に流れる電流量も大きいため、金属箔と電極を導通する部材としてディスク状の金属板が用いられる。
【0005】
図4は、箔シール構造を有する放電ランプの一部を示す説明図である。
特開2007−115498号公報にも示されるように、放電ランプは、発光管2に封止管3が連設された放電容器1を備え、発光管3の内部に電極4が配置される。封止部3の内部にガラス部材11および金属箔7、金属板61、62、電極リード棒5、外部リード棒8、保持用筒体12が配置され、発光管2の内部に配置される電極4を保持するとともに、放電ランプの外部と電極4とを電気的に導通させている。
【0006】
円柱状のガラス部材11の外周面を、軸方向に伸びるように帯状の金属箔7が、例えば5枚互いに離間して配置されている。これらの金属箔7の先端部は、電極リード棒5に挿通し配置される金属板61に接続されている。一方、金属箔7の後端部は、外部リード棒8を挿通する金属板62に接続されている。そして、電極リード棒5の外周には、ガラス製の保持用筒体12が配置され、ガラス部材11の後端には、金属板62を介して、ガラス製の保持用筒体12が配置される。
【0007】
電極リード棒5と金属板61とは溶加材により接合され、接触面積を確保して金属板61に供給された電力を効率よく電極リード棒5に伝達できるようにしている。外部リード棒8と金属板62とも、同様に溶加材により接続される。溶加材には、ガラス加工温度の約1600℃に耐え、電極リード棒5や外部リード棒8を形成するタングステン(W)と金属板61、62を形成するモリブデン(Mo)との濡れ性がよく、蒸気圧が低く、他の封入物と反応しないことが求められる。これらの要求項目を満たす材料である、ジルコニウム(Zr)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)が溶加材として用いられる。
【特許文献1】特開2007−115498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5は、金属板61と電極リード棒5との接合部分を拡大して示す拡大断面図である。
電極リード棒5の材料であるタングステン(W)と金属板61の材料であるモリブデン(Mo)は難切削材料であるため、電極リード棒5の軸径と金属板61の貫通孔63の径とはある程度公差が取ってあり、嵌め合いに余裕がある。そのため、電極リード棒5と金属板61の間に溶加材9が不均一に流れ込んで凝固してしまうと、金属板61がずれて、金属板61の中心が電極リード棒5の軸中心に一致しなくなってしまう。
【0009】
金属板61の中心がずれてしまうと、ガラス部材11の外周面と金属板61の外輪とが滑らかにつながらず、段差が生じてしまう。ガラス部材11の外周面を軸方向に伸び、金属板61の外輪に接続される金属箔7に、段差により余計な力が加わり、金属箔7が切れやすくなる。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、金属板の中心をリード棒の軸中心に一致するようにして、金属板とリード棒とを溶加材により接合することができる放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願第1の発明は、発光管とその両端に連続して外方に伸びる封止管とを有する放電容器と、前記封止管の内部に配置されるガラス部材と、前記ガラス部材の端面に続いて配置される金属板と、前記ガラス部材の外周面に配設され、前記金属板に接続される金属箔と、前記放電容器の外方または前記発光管に向かってのびるリード棒と、前記発光管に向かってのびるリード棒の先端に形成され、前記発光管の内部に互いに対向して配置される電極と、を備える放電ランプにおいて、
前記金属板はテーパ穴の貫通孔を有し、前記テーパ穴の貫通孔に、テーパ部が形成されたリード棒が挿入され、前記テーパ穴の貫通孔と前記テーパ部とが嵌合して、溶加材により接合されていることを特徴とする。
【0012】
また、本願第2の発明は、本願第1の発明において、前記金属板の貫通孔は、一端面が拡開して設けられた凹部が形成され、貫通孔とリード棒との隙間が広がる溶加材溜まりとなっていることを特徴とする。
また、本願第3の発明は、本願第1の発明において、前記リード棒に窪みを設けることによって凹部が形成されて溶加材溜まりとなっていることを特徴とする。
【0013】
また、本願第4の発明は、本願第1の発明において、前記金属板の貫通孔のテーパ角の角度が1°以上30°以下であることを特徴とする。
また、本願第5の発明は、本願第1の発明において、前記リード棒のテーパ部のテーパ角の角度が1°以上30°以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願第1の発明に係る放電ランプによれば、テーパ穴となっている貫通孔に、テーパ部を有するリード棒が挿入されて嵌合することによって、金属板の中心軸とリード棒の中心軸とを合わせることができる。また、金属板の貫通孔と、リード棒の外周面との隙間が小さいので、溶加材が薄く流れ込み、均一に凝固されるので、溶加材の注入による中心軸のずれを抑制することができる。
金属板の中心軸とリード棒の中心軸とを合わせることができるので、ガラス部材の外周面と金属板の外輪とが滑らかにつながり、段差が生じない。ガラス部材の外周面を軸方向に伸び、金属板の外輪に接続される金属箔に、段差により余計な力がかからず、金属箔が切れることを防止できる。
【0015】
本願第2または3の発明に係る放電ランプによれば、貫通孔とリード棒とは嵌合しているため、隙間の大きさが一定でかつ小さくなる。しかし、必要となる溶加材が小量なため、溶加材が想定以上にリード棒に付着してしまうと、隙間にしみ込ませる量が不足してしまう。そこで、金属板またはリード棒に凹部を設けて溶加材溜まりを形成することによって、隙間の大きさに対して必要となる量よりも多めに溶加材を用意し、隙間に十分に溶加材がしみ込むようにして溶加材が不足することによる溶接不良をなくすとともに、余った溶加材を溶加材溜まりに溜めて漏れ出ないようにしている。
【0016】
本願第4または5の発明に係る放電ランプによれば、金属板の貫通孔またはリード棒のテーパ部のテーパ角を1°以上にすることによって、リード棒の軸方向の取り付け位置のズレを調整しうる範囲に抑えることができる。また、金属板の貫通孔またはリード棒のテーパ部のテーパ角を30°以下にすることによって、リード棒に金属板が嵌合により固定され、溶加材により接合するときに金属板が傾きにくくなることがわかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の放電ランプの一例における構成を示す説明用断面図である。
放電ランプは、例えば石英ガラスなどの光透過性材料よりなり、概略球状の発光管2とその両端に連続して外方に伸びる封止管3とを有する放電容器1を備え、放電容器1の内部には、各々例えばタングステン(W)からなる電極4が放電容器1の管軸方向において対向配置されている。放電容器1の内部空間には、発光物質または始動補助用のガスとしての水銀およびバッファガスがそれぞれ所定の封入量で封入されている。バッファガスとしては、例えばキセノンガスが封入される。水銀の封入量は、例えば1〜70mg/cmの範囲内、例えば22mg/cmとされ、キセノンガスの封入量は、例えば0.05〜0.5MPaの範囲内、例えば0.1MPaとされる。
【0018】
放電容器1内には、電極4が先端に固定された電極リード棒5が封止管3内をその管軸に沿って伸びるよう配設されている。電極4は高融点金属からなるものとされ、具体的には、タングステン(W)、レニウム(Re)、タンタル(Ta)などの融点が約3000℃以上となる金属により構成される。これらの金属の中でも特にタングステン(W)が好ましい。電極4に一体的に接続される電極リード棒5は、電極4と同じ部材により形成され、例えば、タングステン(W)、レニウム(Re)、タンタル(Ta)などの金属により構成される。
【0019】
電極リード棒5の他端部は、封止管3内に配設された、例えばモリブデン(Mo)よりなる円盤状の金属板61に接合され、ガラス部材11に挿入されている。ガラス部材11の両端に金属板61、62が配置されており、他方の金属板62には、外部リード棒8の一端が接合されている。外部リード棒8は、放電容器1の外部に導出、すなわち封止管3の外端より外方に突出して伸びている。
【0020】
ガラス部材11の外周面には、互いに周方向に離間して、複数枚例えば5枚の帯状の金属箔7が放電ランプの管軸方向に沿って互いに平行に配設されている。各々の金属箔7の一端が電極リード棒5を接合する一方の金属板61に接続され、他端が外部リード棒8を接合する他方の金属板62に接続される。そして、放電容器1における封止管3とガラス部材11とが金属箔7を介して溶着されて気密シール構造が形成されている。保持用筒体12は、電極リード棒5または外部リード棒8が挿通された状態でこれを支持する例えば石英ガラス製の筒状の支持部材であって、放電容器1における封止管3と溶着されている。
【0021】
放電ランプの両端に口金13が取り付けられている。放電容器1の外部に導出された外部リード棒8に縒り線14を連結し、口金13につなげることによって、電極4に給電することができる。縒り線14は銅よりなる金属線を束ねて縒ったものよりなるので、ある程度の柔軟性があり、外部リード棒8と縒り線14とを接合した状態で、封止管3と口金13の位置関係を調整することが出来る。
【0022】
この放電ランプにおいて、図示を省略した点灯電源によって電極4の間に高電圧例えば20kVが印加されることにより、電極4の間で絶縁破壊が生じて、それに続いて放電アークが形成され、例えば波長365nmのi線や波長436nmのg線を含む光が放射される。
【0023】
図2は、放電ランプの発光管側に配置された金属板61と電極リード棒5の構成を説明するための断面図である。
ガラス部材11の一端に配置された金属板61は、その中央に貫通孔63を有する円盤形状をしている。金属板61には、中央に形成された貫通孔63に電極リード棒5の基端が挿入され、ガラス部材11の一端に設けられた有底孔15に挿入されている。
【0024】
電極リード棒5は、ガラス部材11に挿入された部分が、それ以外の部分に比べて径が小さくなっており、細径部51を構成している。そして、金属板61より電極側の部分が太径部52となる。細径部51と太径部52との間はテーパ部53となっており、太径部52から細径部51に向かって縮径するテーパ面が形成されている。テーパ部53の周囲に金属板61が接合される。
【0025】
金属板61の中央に形成された貫通孔63は、一端面の開口の径が、他端面に形成される開口の径より小さくなっており、一端から他端に向かって孔径が大きくなるテーパ穴になっている。テーパ穴の貫通孔63は、例えばテーパリーマー加工をすることによって形成される。電極リード棒5のテーパ部53のテーパ面の傾きと、金属板61の貫通孔63のテーパ穴の傾きとが、略一致するように形成されており、テーパ部53と貫通孔63とが嵌合するように、電極リード棒5に金属板61が挿通されている。
【0026】
また、図示していないが、放電容器1の外方側に配置される他方の金属板62と外部リード棒8も同様の構成よりなり、金属板62の中央に形成された貫通孔63に外部リード棒8の一端が挿入され、ガラス部材11の基端に設けられた有底孔15に挿入される。外部リード棒8は、ガラス部材11に挿入された部分が細径部81になっており、細径部81に続いてテーパ部83、太径部82が形成されている。金属板62の貫通孔63も、テーパ部83に対応するテーパ穴となっている。テーパ部83と貫通孔63とが嵌合するように、外部リード棒8に金属板62が挿通されている。
【0027】
外部リード棒8と金属板62との関係も、電極リード棒5と金属板61との関係と、同様の構成を有しているので、ガラス部材11の両端に配置された金属板61、62の貫通孔63のそれぞれに、リード棒5、8が挿通されているといえる。ここでいう「リード棒」とは、電極リード棒5と外部リード棒8のことをいう。
【0028】
したがって、金属板61、62のテーパ穴となっている貫通孔63に、外周がテーパ面となっているテーパ部53、83を有するリード棒5、8が挿通されて嵌合するので、円筒状の面同士を嵌合させる場合に比べて貫通孔63とリード棒5、8との隙間が小さくなる。また、テーパ穴とテーパ面とを嵌合させることにより、金属板61、62の貫通孔63のテーパ穴の中心軸と、リード棒5、8のテーパ部53、83のテーパ面に対する中心軸とが一致する。このため、テーパ穴とテーパ面を精度よく加工して形成することにより、金属板61、62の中心軸とリード棒5、8の中心軸とを合わせることができる。
【0029】
なお、ここでは、外部リード棒8と金属板62との関係も、電極リード棒5と金属板61との関係も、嵌合面がテーパ状となると説明したが、例えば、外部リード棒8と金属板62との嵌合面がテーパ状に形成されているが、電極リード棒5と金属板61との関係を円筒状の面が嵌合するように形成するようにして、外部リード棒8と金属板62との関係、もしくは、電極リード棒5と金属板61との関係の、どちらか一方の関係について嵌合面がテーパ面となるように構成することもできる。金属板61、62とリード棒5、8の関係は、どちらか一方の金属板62とリード棒8との嵌合面をテーパ状とするだけでも、従来技術にかかる放電ランプに比べて、金属箔7の箔切れの発生を抑制することができる。
【0030】
また、ガラス部材11に挿入されている部分を細径部51、81としてリード棒5、8にテーパ部53、83を形成しているが、ガラス部材11に挿通されている部分を太径部とし、金属板61、62に嵌合する部分をテーパ部とし、その他の部分を細径部とすることもできる。ただし、このように形成した場合は、細径部を長い
範囲に設けなければならず、旋盤加工によって棒状部材を削り取って細径部を形成するときには、加工作業上の手間となりうる。
【0031】
続いて、金属板61、62とリード棒5、8との接合方法について説明する。
電極リード棒5と金属板61とは溶加材9により接合され、電極リード棒5と溶加材9とが密着し、金属板61と溶加材9とが密着するため、溶加材9を介して接触面積を確保して金属板61に供給された電力を効率よく電極リード棒5に伝達できるようにしている。また、外部リード棒8と金属板62とも、同様に溶加材9により接続される。溶加材9には、ガラス加工温度の約1600℃に耐え、リード棒5、8を形成するタングステン(W)と金属板61、62を形成するモリブデン(Mo)との濡れ性がよく、蒸気圧が低く、他の封入物と反応しないことが求められる。これらの要求項目を満たす材料である、ジルコニウム(Zr)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)が溶加材9として用いられる。
【0032】
金属板61、62の貫通孔63は、径が小さい開口を有する一端面が拡開して設けられた凹部64が形成されており、金属板61の貫通孔63と電極リード棒5との隙間や、金属板62の貫通孔63と外部リード棒8との隙間が広がっている。貫通孔63の凹部64が形成された部分が、溶加材9の液を溜める溶加材溜まりとして機能し、溶加材9が漏れ出すことを防いでいる。
【0033】
溶加材9は次の手法によって、金属板61、62の貫通孔63と、リード棒5、8の外周面との間に注入される。
金属板61、62の貫通孔63にリード棒5、8を挿通して予め嵌合させておく。この状態の金属板61、62とリード棒5、8において、白金(Pt)よりなる金属ワイヤを、リード棒5、8の凹部64に対応する位置に巻きつける。そして、真空もしくは不活性ガスで満たした炉に入れ、1800℃まで昇温して5分間維持する。リード棒5、8を構成するタングステン(W)や金属板61、62を構成するモリブデン(Mo)の融点は1800℃より高いので溶融しないが、白金(Pt)の融点は約1800℃なので溶融する。溶融した白金(Pt)が貫通孔63とリード棒5、8との間に流入する。
【0034】
貫通孔63とリード棒5、8との間に白金(Pt)よりなる溶加材9が充填されることになる。また、金属板61、62の一端面に凹部64を設けることにより、貫通孔63とリード棒5、8との間に充填されず残った白金(Pt)を留めることができ、液化した白金(Pt)が他へ漏れ出すことを防止できる。冷却されると、溶加材9が凹部64に溜まった状態で凝固し、溶加材溜まりとなる。
【0035】
金属板61、62の貫通孔63と、リード棒5、8の外周面との隙間は小さいので、溶加材9の原料となる高価な白金(Pt)の使用量を減らすことができる。また、貫通孔63とリード棒5、8との隙間の大きさは一定となり、必要となる溶加材9の量の一定となる。しかしながら、必要となる溶加材9が小量なため、溶加材9が想定以上にリード棒5、8に付着してしまうと、隙間にしみ込ませる量が不足してしまう。そこで、金属板61、62の一端面に凹部64を設けて溶加材溜まりを形成することによって、隙間の大きさに対して必要となる量よりも多めに溶加材9を用意し、隙間に十分に溶加材9がしみ込むようにして溶加材9が不足することによる溶接不良をなくすとともに、余った溶加材9を溶加材溜まりに溜めて漏れ出ないようにしている。
【0036】
上述したように、金属板61、62のテーパ穴となっている貫通孔63に、外周がテーパ面となっているテーパ部53、83を有するリード棒5、8が挿通されて嵌合することによって、金属板61、62の中心軸とリード棒5、8の中心軸とを合わせることができる。また、金属板61、62の貫通孔63と、リード棒5、8の外周面との隙間が小さいので、溶加材9が薄く流れ込み、均一に凝固されるので、溶加材9の注入による中心軸のずれを抑制することができる。
【0037】
金属板61、62の中心軸とリード棒5、8の中心軸とを合わせることができるので、ガラス部材11の外周面と金属板61、62の外輪とが滑らかにつながり、段差が生じない。ガラス部材11の外周面を軸方向に伸び、金属板61、62の外輪に接続される金属箔7に、段差により余計な力がかからず、金属箔7が切れることを防止できる。
さらに、電極リード棒5の中心軸と金属板61の中心軸が一致し、金属板61の中心軸が封止管3の中心軸が一致することによって、電極リード棒5の先端に形成される電極4の軸と、放電容器1の軸とを合わせることができる。対向配置される電極4の軸がずれないので、点灯時の照度ムラが出にくく、アークが安定しやすくなり、放電ランプの寿命を延ばすことができる。
【0038】
なお、テーパ穴となっている貫通孔63に、外周がテーパ面となっているリード棒5、8を嵌合させることによって、金属板61、62の中心軸とリード棒5、8の中心軸とは一致させやすくなるが、金属板61、62の貫通孔63の穴径精度とリード棒5、8の軸径精度の関係で、軸方向の位置精度が悪くなる場合がある。しかし、図1に示すように、外部リード棒8の基端は口金13の内部に配置される縒り線14に接続されるため、軸方向の微小なズレは縒り線14で吸収できるため、問題とならない。
【0039】
続いて、溶加材溜まりの異なる形状について説明する。
図3は、溶加材溜まりの形状を説明するための断面図である。
ここに示す溶加材溜まりを有する放電ランプは、溶加材溜まりの形状を除いて、図1、2に示す放電ランプの形状と同様であり、溶加材溜まり以外の説明及び図示を省略する。
【0040】
図3(a)に示す溶加材溜まりは、金属板61、62の貫通孔63の、径が大きい開口を有する他端面に拡開して設けられた凹部64が形成されており、金属板61、62の貫通孔63と電極リード棒5との隙間を大きくして形成されている。このように、金属板61、62の他端面に凹部64を形成して溶加材溜まりを設けることもできる。
【0041】
図3(b)に示す溶加材溜まりは、金属板61、62ではなく、リード棒5、8に窪みを設けて凹部54、84が形成されており、金属板61、62の貫通孔63と電極リード棒5との隙間を大きくして形成されている。このように、金属板61、62ではなく、リード棒5、8に凹部54、84を形成して溶加材溜まりを設けることもできる。
【0042】
図3(c)に示す溶加材溜まりは、金属板61、62の一端面に表面が曲面となる凹部64が形成されており、金属板61、62の貫通孔63とリード棒5、8との隙間を大きくして形成されている。このように、凹部64の形状は貫通孔63の開口側に広がるテーパ面に限られず、表面を曲面とすることもできる。また、リード棒5、8の端面55、85を、金属板61、62の端面65と一致するように形成されている。
【0043】
図3(d)に示す溶加材溜まりは、金属板61、62の一端面に円筒状の凹部64が形成されており、金属板61、62の貫通孔63と電極リード棒5との隙間を大きくして形成されている。このように、液を溜めることができる空間があればよく、凹部64の形状は種々選ぶことができる。また、リード棒5、8の端面55、85を、金属板61、62の端面65よりも貫通孔63の内方に位置するように構成されている。リード棒5、8が接合された金属板61、62の中央に窪みが形成された状態となる。
【0044】
続いて、本発明の実施例について説明する。
〔実験例1〕
テーパ穴となっている貫通孔を有する金属板と、外周にテーパ面となっているテーパ部を有するリード棒とを嵌合させ、金属板の傾きとリード棒の中心軸からのズレを測定した。
実験対象とした金属板とリード棒の構成は下記の通りである。
<仕様>
金属板 材質:モリブデン、外径:26.5mm、軸方向の厚さ:4mm
貫通孔:最大径7.88mm、最小径7.72mm、テーパ角度2.3°
リード棒 材質:タングステン、
大径部:軸方向長さ137mm、外径8mm、細径部:軸方向長さ13mm、外径7.6mm
テーパ部:軸方向長さ10mm、テーパ角度2.3°
【0045】
リード棒のテーパ角度は、図3(a)に示すように、テーパ部を形成する部分のリード棒の表面を延長して形成される仮想平面が形成する円錐について、当該円錐の回転軸を含む平面で切断した切断面における円錐頂点の角度をいう。
金属板のテーパ角度は、図3(b)に示すように、テーパ穴の内表面を延長して形成される仮想平面が形成する円錐について、当該円錐の回転軸を含む平面で切断した切断面における円錐頂点の角度をいう。
金属板の傾きは、軸を中心にして回転させたときの、金属板円盤面の振れをダイヤルゲージで測定し、中心軸と測定点までの距離から金属板の傾きを求めて偏角とした。リード棒先端のズレは、金属板の中心軸の延長線に対して、リード棒の先端が径方向に離間する長さを測定した。
【0046】
テーパ穴となっている貫通孔に、リード棒を挿通してテーパ部で嵌合させて、溶加材で接合した連結体を3つ作成し、偏角とリード棒先端のズレを測定した。
比較対象として、円筒状の貫通孔に円柱状のリード棒を挿通し、嵌合させずに溶加材で接合した連結体も3つ作成し、偏角とリード棒先端のズレを測定した。
測定結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
測定結果より、テーパ穴となっている貫通孔に、リード棒を挿通してテーパ部で嵌合させて、溶加材で接合した方が、全体として偏角も小さく、リード棒先端のズレも小さくなることが確認できた。したがって、テーパ面で嵌合させて溶加材で接合することによって、金属板の中心軸とリード棒の中心軸とを合わせることができることが確かめられた。
【0049】
〔実験例2〕
テーパ穴となっている貫通孔を有する金属板と、外周にテーパ面となっているテーパ部を有するリード棒とを嵌合させ、リード棒の軸方向の取り付け位置精度を測定した。
テーパ角の角度を0.5°、1.0°、1.5°、2.0°、2.5°とする5つの場合を測定対象とした。
テーパ角の角度を除いた仕様は、実験例1で用いた金属板とリード棒と同様である。
取り付け位置精度は、リード棒細径部先端と金属板の細径部側の面との距離について、リード棒と金属板の規格中心値で組み合わせた場合の距離を基準として軸方向のずれ量とした。
測定結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
測定結果より、テーパ角の角度は1.0°以上が好ましいことがわかった。テーパ角の角度が0.5°のときは、リード棒の軸方向の取り付け位置が4.6mmもずれてしまうため、実用的ではない。一方、テーパ角の角度が1.0°のときも、リード棒の軸方向の取り付け位置が2.3mmずれているが、外部リード棒は口金の内部にのびる縒り線に接続することでズレ量を吸収することができ、電極リード棒も先端に電極を圧入するときに調整してズレ量を吸収することができるので、実用に耐えうる誤差である。
【0052】
〔実験例3〕
テーパ穴となっている貫通孔を有する金属板と、外周にテーパ面となっているテーパ部を有するリード棒とを嵌合させ、金属板が固定できるかどうか確かめた。
テーパ角の角度を28°、29°、30°、31°、32°とする5つの場合を測定対象とした。
テーパ角の角度を除いた仕様は、実験例1で用いた金属板とリード棒と同様である。
金属板が固定できるかどうかは、金属板とリード棒とを嵌合させ、溶加材によって接合させる前の状態の連結体について、上下逆さまにしてリード棒を保持し、金属板が抜け落ちるかどうかにより判断した。金属板が抜け落ちなかった場合を「○」とし、金属板が抜け落ちた場合を「×」とした。
測定結果を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
測定結果より、テーパ角の角度は30°以下が好ましいことがわかった。テーパ角の角度が30°以下のときは、リード棒に金属板が嵌合により固定され、溶加材により接合するときに金属板が傾きにくくなることがわかった。
実験例2、3の結果より、テーパ角の角度は1°以上30°以下が好ましいことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の放電ランプの一例における構成を示す説明用断面図
【図2】本発明の金属板と電極リード棒の接合部分を拡大して示す拡大断面図
【図3】本発明の溶加材溜まりの形状を説明するための断面図
【図4】従来の箔シール構造を有する放電ランプの一部を示す説明図
【図5】従来の金属板と電極リード棒との接合部分を拡大して示す拡大断面図
【符号の説明】
【0056】
1 放電容器
2 発光管
3 封止管
4 電極
5 電極リード棒
61、62 金属板
7 金属箔
8 外部リード棒
9 溶加材
51、81 細径部
52、82 太径部
53、83 テーパ部
54、84 凹部
63 貫通孔
64 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管とその両端に連続して外方に伸びる封止管とを有する放電容器と、
前記封止管の内部に配置されるガラス部材と、
前記ガラス部材の端面に続いて配置される金属板と、
前記ガラス部材の外周面に配設され、前記金属板に接続される金属箔と、
前記放電容器の外方または前記発光管に向かってのびるリード棒と、
前記発光管に向かってのびるリード棒の先端に形成され、前記発光管の内部に互いに対向して配置される電極と、を備える放電ランプにおいて、
前記金属板はテーパ穴の貫通孔を有し、
前記テーパ穴の貫通孔に、テーパ部が形成されたリード棒が挿入され、
前記テーパ穴の貫通孔と前記テーパ部とが嵌合して、溶加材により接合されていることを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記金属板の貫通孔は、一端面が拡開して設けられた凹部が形成され、貫通孔とリード棒との隙間が広がる溶加材溜まりとなっていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
前記リード棒に窪みを設けることによって凹部が形成されて溶加材溜まりとなっていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項4】
前記金属板の貫通孔のテーパ角の角度が1°以上30°以下であることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項5】
前記リード棒のテーパ部のテーパ角の角度が1°以上30°以下であることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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