説明

放電回路及び電力変換回路

【課題】電力変換回路において、より迅速にコンデンサに蓄積された電荷を放電させることである。
【解決手段】直流電源13と交流負荷14との間に配置されるインバータモジュール20と、インバータモジュール20に並列に接続される平滑コンデンサと、平滑コンデンサに充電された電荷を放電するための放電回路10と、を備える電力変換回路100であって、放電回路10は、コンデンサ30に並列に接続され、電圧と電流の位相が同位相である有効電力の消費を行う放電抵抗と、放電抵抗に直列に接続される2次側コイルと、2次側コイルにおいて電圧と電流との位相差が90度である無効電力の消費を行われるように2次側コイルと協働する1次側コイルと、1次側コイルに直列に接続され、2次側コイルと1次側コイルとの間に交番磁界を発生させる発振回路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電回路及び電力変換回路に係り、特に、コンデンサに蓄えられた電荷を放電する放電回路及びその放電回路を含む電力変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路に接続されるコンデンサに蓄えられる電荷は放電させる必要がある場合があり、そのための回路として放電回路が電気回路に設けられている場合がある。例えば、特許文献1には、インバータ主回路として、交流の商用電源を整流する整流回路と、整流回路の出力を直流に平滑する平滑コンデンサと、平滑コンデンサの直流電圧を交流電圧に逆変換して出力するインバータモジュールと、整流回路に並列に接続された放電抵抗と、整流回路のプラス出力側と平滑コンデンサのプラス側との間に設けられた力率改善用のリアクトルとを備えるものが開示されている。ここでは、放電抵抗の代わりに、整流回路の出力側にスイッチング素子であるリレーの接点を並列接続し、リレーの接点がオンしたときに突入電流防止抵抗及びリアクトルを放電素子としても機能するようにしたものである。
【0003】
【特許文献1】特開平11−235043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、特許文献1の構成を用いることでコンデンサに蓄積された電荷を放電させることができる。しかし、特許文献1の構成では、放電抵抗による放電あるいは、リアクトルを放電素子として機能させることにより放電を行っており、放電に時間がかかることが多い。
【0005】
本発明の目的は、より迅速にコンデンサに蓄積された電荷を放電させる放電回路及びその放電回路を含む電力変換回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る放電回路において、コンデンサに充電された電荷を放電するための放電回路であって、コンデンサに並列に接続され、電圧と電流の位相が同位相である有効電力の消費を行う放電抵抗と、放電抵抗に直列に接続される2次側コイルと、2次側コイルにおいて電圧と電流との位相差が90度である無効電力の消費を行われるように2次側コイルと協働する1次側コイルと、1次側コイルに直列に接続され、2次側コイルと1次側コイルとの間に交番磁界を発生させる発振回路と、を備える。
【0007】
また、本発明に係る放電回路において、コンデンサは、インバータモジュールを含む電力変換回路に接続される平滑コンデンサであることが好ましい。
【0008】
本発明に係る電力変換回路において、電源と負荷との間に配置されるインバータモジュールと、インバータモジュールに並列に接続される平滑コンデンサと、平滑コンデンサに充電された電荷を放電するための放電回路と、を備える電力変換回路であって、放電回路は、コンデンサに充電された電荷を放電するための放電回路であって、コンデンサに並列に接続され、電圧と電流の位相が同位相である有効電力の消費を行う放電抵抗と、放電抵抗に直列に接続される2次側コイルと、2次側コイルにおいて電圧と電流との位相差が90度である無効電力の消費を行われるように2次側コイルと協働する1次側コイルと、1次側コイルに直列に接続され、2次側コイルと1次側コイルとの間に交番磁界を発生させる発振回路と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の少なくとも1つにより、放電回路は、コンデンサに充電された電荷を放電するための放電回路であって、コンデンサに並列に接続され、電圧と電流の位相が同位相である有効電力の消費を行う放電抵抗と、放電抵抗に直列に接続される2次側コイルと、2次側コイルにおいて電圧と電流との位相差が90度である無効電力の消費を行われるように2次側コイルと協働する1次側コイルと、1次側コイルに直列に接続され、2次側コイルと1次側コイルとの間に交番磁界を発生させる発振回路と、を備える。したがって、コンデンサに充電された電荷の放電時間について、放電抵抗のみで行う場合に比べ、1次側コイルと2次側コイルと発振回路を用いることで無効電流成分も合わせて消費させることにより、より速く放電を完了させることができる。
【0010】
上記構成の少なくとも1つにより、電力変換回路は、コンデンサに充電された電荷を放電するための放電回路であって、コンデンサに並列に接続され、電圧と電流の位相が同位相である有効電力の消費を行う放電抵抗と、放電抵抗に直列に接続される2次側コイルと、2次側コイルにおいて電圧と電流との位相差が90度である無効電力の消費を行われるように2次側コイルと協働する1次側コイルと、1次側コイルに直列に接続され、2次側コイルと1次側コイルとの間に交番磁界を発生させる発振回路とを有する放電回路を備える。したがって、コンデンサに充電された電荷の放電時間について、放電抵抗のみで行う場合に比べ、1次側コイルと2次側コイルと発振回路を用いることで無効電流成分も合わせて消費させることにより、より速く放電を完了させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。なお、以下では、放電回路が接続されるのはインバータモジュールを含んだ電力変換回路であるものとして説明するが、電力変換回路以外の他の電気回路の放電のためのものであってもよい。
【0012】
図1は、放電回路10を含んだ電力変換回路100を示す図である。電力変換回路100は、直流電源13と交流負荷14との間に配置された直流電力を交流電力に変換するもので、直流電力を交流電力に変換するスイッチング素子を含むインバータモジュール20と、インバータモジュール20に並列に接続されるコンデンサ30と、コンデンサ30に並列に接続される放電回路10とを含んで構成される。直流電源13は、例えば、バッテリを用いて構成され、交流負荷14は、例えば、三相交流モータを用いて構成される。
【0013】
電力変換回路100の接続関係について説明すると、直流電源13の一方端は端子52に接続され、他方端は端子54に接続される。コンデンサ30の一方端は、端子52に接続され、他方端は端子54に接続される。放電回路10は、コンデンサ30に並列に接続される。また、放電回路10の一方端は端子56に接続され、他方端は端子58に接続される。インバータモジュール20の入力端子の一方端は端子56に接続され、入力端子の他方端は端子58に接続される。交流負荷14は、インバータモジュール20の出力端子22に接続される。
【0014】
インバータモジュール20は、直流電力を交流電力に変換する機能を有する回路である。インバータモジュール20は、制御回路によって制御されるスイッチング素子のスイッチングにより、直流電力から交流電力を生成し、その交流電力が交流負荷14に供給される。
【0015】
コンデンサ30は、電気回路に流れる電荷を充放電する機能を有するキャパシタである。コンデンサ30は、例えば、インバータモジュール20のスイッチング素子のスイッチングで生じる電源リップルを平滑化する平滑コンデンサとして機能する。例えば、直流電源13の動作が停止されると、コンデンサ30に蓄積されていた電荷を放電することが望ましい場合ことがある。
【0016】
図2は、放電回路10を示す図である。放電回路10は、コンデンサ30の蓄積された電荷を放電する機能を有する。放電回路10は、放電抵抗12と、トランス回路16とを含んで構成される。
【0017】
放電抵抗12は、コンデンサ30の電荷を放電する機能を有する抵抗素子である。放電抵抗12は、コンデンサ30に並列に接続された抵抗素子であって、直流電源13の動作が停止したときには、コンデンサ30の電荷を放電する。放電抵抗12は、電圧と電流とが同位相である有効電力の消費によってコンデンサ30に蓄積された電荷が放電される。
【0018】
トランス回路16は、2次側コイル162と、1次側コイル164と、発振回路166とを含んで構成される。トランス回路16は、電圧と電流との位相差が90度である無効電力の消費を行う機能を有する回路である。トランス回路16は、入力巻線(1次側コイル164)の交流電流により変化する交番磁界を発生させ、それを相互インダクタンスで結合された出力巻線(2次側コイル162)に伝える。
【0019】
2次側コイル162は、放電抵抗12に直列に接続されるインダクタンスである。2次側コイル162は、1次側コイル164と協働して電圧と電流との位相差が90度である無効電力の消費を行う機能を有する。
【0020】
発振回路166は、トランス回路16を構成する1次側コイル164に接続され、予め定められた周波数の交流信号を、1次側コイル164に対して供給する機能を有する。発振回路166の交流信号、例えば、正弦波信号が1次側コイル164に供給されることによって、2次側コイル162と1次側コイル164との間に交番磁界が発生することとなる。
【0021】
図3は、有効電力と無効電力の関係を示す図である。放電抵抗12に流れる電流IRは電圧Vと同位相である。放電抵抗12に流れる電流IRのように、電気エネルギの消費に伴う電流を有効電流といい、(電圧)×(電圧と同相分の電流)を有効電力PRと呼ぶことができる。2次側コイル162に流れる電流ILは、電圧より90度位相の遅れた電流となる。また、例えば、放電抵抗12と2次側コイル162の他にコンデンサが接続されている場合にそのコンデンサに流れる電流ICは、電圧より90度位相の進んだ電流となる。電気エネルギの消費に伴わない電流を無効電流といい、(電圧)×(電圧と90度位相差のある電流)を無効電力と呼ぶことができる。ここで、放電抵抗12によって消費される有効電力をPRとし、2次側コイル162を含んだトランス回路16で消費される無効電力をPLとし、また、例えば、上記のコンデンサが接続されている場合に、そのコンデンサで消費される無効電力をPCとすると図3に示される関係となる。
【0022】
図4は、有効電力と無効電力といわゆる皮相電力との関係を示す図である。放電回路10では、放電抵抗12と、コイルを含んだトランス回路16とを含んで構成されるため、有効電力PRと無効電力PLを考慮するといわゆる皮相電力Pは、図4に示されるように合成ベクトルで示される値となる。ここで、皮相電力PとVIとすると、有効電力PRはVIcosθで、無効電力PLはVIsinθである。したがって、(皮相電力の値P)>(有効電力の値PR)の関係であることが分かる。なお、放電開始前のコンデンサ30の両端電圧をE0とした場合に、放電開始後の両端電圧Vを式で示すと、V=E0・e-Lt/RCと示すことができる。
【0023】
上記構成の作用について説明する。図5は、コンデンサ30の充電電圧放電のフローチャートを示す図である。インバータモジュール20のスイッチング素子のスイッチング等によりコンデンサ30に電荷が蓄積される。ここで、直流電源13が停止したときにコンデンサ30から直流電流が放電される(S12)。
【0024】
また、トランス回路16において、発振回路166は1次側コイル164に対して交流信号の電流を供給し、この交流信号の電流によって発生させる交番磁界を相互インダクタンスで結合された2次側コイル162に伝えられる(S14)。
【0025】
そして、上記のように電圧Vと、その電圧Vとの位相差が90度である電流ILによる無効電力PLによっても放電することができる(S16)。
【0026】
放電抵抗12は、コンデンサ30に並列に接続されていることから、コンデンサ30に蓄積された電荷は放電抵抗12を介して放電される。このとき、上記のように、放電抵抗12における電流IRと電圧Vとの間には位相差がないから有効電力PRの消費のみによって放電が行われる(S18)。つまり、放電回路10においては、有効電力PRと無効電力PLの合成電力である皮相電力Pによってコンデンサ30に蓄積された電荷が放電されるため、有効電力のみによって放電される場合に比べて放電時間の短縮を行うことが可能となる(S20)。
【0027】
図6は、他の実施の形態として放電回路11を示す図である。放電回路11は、放電回路10とほとんど同様の構成であるが、トランス回路16をそのまま用いるのではなく、2次側コイル162に発振回路166を並列に接続する。ここで、発振回路166から高周波信号として、高周波電流を2次側コイル162に供給すると電流密度が導体の表面で高く、表面から離れると低くなる表皮効果の現象が生じる。このとき、周波数が高いほど電流が表面へ集中するので、導体の抵抗、つまり2次側コイル162の抵抗が高くなる。
【0028】
上記のように、2次側コイル162を放電素子として利用する場合には、発振回路166の周波数を高周波にすることで2次側コイル162の抵抗を高くすることができるため、放電抵抗12のみの有効電力のみによって消費する場合に比べて放電時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る放電回路を含んだ電力変換回路を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る放電回路を示す図である。
【図3】有効電力と無効電力の関係を示す図である。
【図4】有効電力と無効電力といわゆる皮相電力との関係を示す図である。
【図5】コンデンサの充電電圧放電のフローチャートを示す図である。
【図6】他の実施の形態として放電回路を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
10,11 放電回路、12 放電抵抗、13 直流電源、14 交流負荷、16 トランス回路、20 インバータモジュール、22 出力端子、30 コンデンサ、52,54,56,58 端子、100 電力変換回路、162 2次側コイル、164 1次側コイル、166 発振回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサに充電された電荷を放電するための放電回路であって、
コンデンサに並列に接続され、電圧と電流の位相が同位相である有効電力の消費を行う放電抵抗と、
放電抵抗に直列に接続される2次側コイルと、
2次側コイルにおいて電圧と電流との位相差が90度である無効電力の消費を行われるように2次側コイルと協働する1次側コイルと、
1次側コイルに直列に接続され、2次側コイルと1次側コイルとの間に交番磁界を発生させる発振回路と、
を備えることを特徴とする放電回路。
【請求項2】
請求項1に記載の放電回路において、
コンデンサは、インバータモジュールを含む電力変換回路に接続される平滑コンデンサであることを特徴とする放電回路。
【請求項3】
電源と負荷との間に配置されるインバータモジュールと、
インバータモジュールに並列に接続される平滑コンデンサと、
平滑コンデンサに充電された電荷を放電するための放電回路と、
を備える電力変換回路であって、
放電回路は、
コンデンサに充電された電荷を放電するための放電回路であって、
コンデンサに並列に接続され、電圧と電流の位相が同位相である有効電力の消費を行う放電抵抗と、
放電抵抗に直列に接続される2次側コイルと、
2次側コイルにおいて電圧と電流との位相差が90度である無効電力の消費を行われるように2次側コイルと協働する1次側コイルと、
1次側コイルに直列に接続され、2次側コイルと1次側コイルとの間に交番磁界を発生させる発振回路と、
を備えることを特徴とする電力変換回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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