説明

放電灯点灯制御装置

【課題】放電灯の点灯直後に放電灯の立ち消えを防止できる技術を提供する。
【解決手段】放電灯点灯制御装置においては、放電灯に供給される電力を表す供給電力を、この供給電力が予め設定された目標値になるように生成する。そして、供給電力が予め設定された閾値(Wth)未満となった場合に、供給電力を目標値よりも増加させる。ここで、この閾値については、放電灯の点灯開始時に点灯時閾値に設定し、その後、点灯閾値よりも低い値である定常時閾値に変更する。即ち放電灯の点灯開始時には、放電灯の立ち消えが発生し易いため、放電灯の点灯開始時に放電灯が立ち消えする兆候を早期に検出できるように、電力を増加させる基準となる閾値を、点灯後充分時間が経過した定常時よりも高い値(点灯時閾値)に設定する。その後、放電灯の温度が上昇し、放電灯の立ち消えする可能性が低くなった頃に、閾値を点灯閾値よりも低い値である定常閾値に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯の点灯状態を制御する放電灯点灯制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の放電灯点灯制御装置において、放電灯に通電が起こらなくなり放電灯が消灯してしまう「立ち消え」を防止するために、放電灯に流れる電流値が閾値よりも低くなると、その都度、放電灯に印加する出力電圧を上昇させる制御を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−026560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に放電灯の点灯直後には、放電灯の温度が低い影響で、立ち消えが起こり易い。この原因は、温度が低い状態では放電灯内のガスが活性化し難く、インピーダンスが高くなるためと考えられる。
【0005】
ここで、上記放電灯点灯制御装置では、放電灯の定常点灯時における立ち消えを考慮して閾値を設定しており、放電灯の点灯直後における立ち消えを考慮して電流値等の閾値が設定されていない。このため、閾値の設定によっては放電灯の立ち消えが発生する虞がある。なお、放電灯が一度立ち消えてしまうと、放電灯にかなりの高電圧を印加しなければ再点灯させることができなくなるため、上記放電灯点灯制御装置では、再点灯できなくなる虞がある。
【0006】
そこでこのような問題点を鑑み、放電灯の点灯直後に放電灯の立ち消えを防止できる技術を提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために成された本発明の放電灯点灯制御装置において、電力生成手段は、放電灯に供給される電力を表す供給電力を、この供給電力が予め設定された目標値になるように生成し、電力取得手段は、供給電力の検出結果を取得する。そして、電力増加手段は、取得された供給電力が予め設定された閾値未満となった場合に、電力生成手段により生成される供給電力を目標値よりも増加させ、閾値変更手段は、放電灯の点灯開始時に閾値を点灯時閾値に設定し、その後、閾値を点灯閾値よりも低い値である定常時閾値に変更する(請求項1)。
【0008】
即ち放電灯の点灯開始時には、放電灯の立ち消えが発生し易いため、本発明では、放電灯の点灯開始時に放電灯が立ち消えする兆候を早期に検出できるように、電力を増加させる基準となる閾値を、点灯後充分時間が経過した定常時よりも高い値(点灯時閾値)に設定する。その後、放電灯の温度が上昇し、放電灯の立ち消えする可能性が低くなった頃に、閾値を点灯閾値よりも低い値である定常閾値に変更している。そして、放電灯への供給電力が閾値未満となると、放電灯が消灯してしまう前に、放電灯に供給される供給電力を増加させる。
【0009】
このような放電灯点灯制御装置によれば、放電灯の点灯直後において点灯時閾値に設定することにより放電灯への供給電力の低下を速やかに検出して供給電力を増加させることができるので、放電灯の点灯開始時における立ち消えを確実に防止することができる。
【0010】
また、放電灯への供給電力を増加させるか否かを判断する際に利用される閾値を、その後、点灯時閾値からこの閾値よりも低い値である定常閾値に変更するので、放電灯に不用意な高電力が印加され続けることを防止することができる。よって、放電灯の劣化を防止することができる。
【0011】
ところで、上記放電灯点灯制御装置において、閾値変更手段は、閾値を点灯時閾値から定常閾値まで、段階的または連続的に単調に減少させるようにしてもよい(請求項2)。
このような放電灯点灯制御装置によれば、放電灯の温度上昇とともに立ち消えが発生し難くなるにつれて、供給電力を増加し難くなるように閾値を変更することができる。
【0012】
さらに、上記放電灯点灯制御装置においては、放電灯の点灯開始時に目標値を点灯時目標値に設定し、その後、目標値を点灯時目標値よりも低い値である定常目標値に変更する目標値変更手段を備えていてもよい(請求項3)。この場合には、閾値変更手段は、目標値の変更に追従して閾値を変更するようにしてもよい。
【0013】
このような放電灯点灯制御装置によれば、供給電力の目標値の変化に追従して閾値を変更することができるので、放電灯の点灯時において供給電力が低下したことを速やかに検出することができる。よって、供給電力を増加させる際の応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】放電灯点灯制御装置の回路構成を示す回路図である。
【図2】制御回路の概略構成を示すブロック図、
【図3】制御回路によって出力される電力の波形を示すグラフである。
【図4】電力設定部が取り扱う信号の波形を示すグラフである。
【図5】放電灯の点灯の一周期において、検出されたランプ電力、実際のランプ電流、およびランプ電圧の一例を示すグラフである(図4に対応)。
【図6】無電流時間検出部が取り扱う信号の波形を示すグラフである。
【図7】放電灯の点灯の一周期において、検出されたランプ電力、実際のランプ電流、およびランプ電圧の一例を示すグラフである(図6に対応)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
[本実施形態の回路構成]
図1は、放電灯点灯制御装置1の回路構成を示す回路図である。
【0016】
放電灯点灯制御装置1は、例えば乗用車等の車両に搭載され、この車両の前方を照射するヘッドライトである放電灯11(バルブまたはランプともいう。)を点灯させるための装置である。図1に示すように、放電灯点灯制御装置1は、この装置1外に配置されたバッテリ6からスイッチ7を介して電力が供給されるよう構成されており、運転者がスイッチ7をON状態にすることにより放電灯点灯制御装置1にバッテリ6による電力が供給される。
【0017】
放電灯点灯制御装置1は、図1に示すように、フィルタ回路40、DC/DCコンバータ回路45、点灯補助回路50、Hブリッジ回路55、高電圧発生回路60、および制御回路70を備えている。
【0018】
フィルタ回路40は、入力コイル41および入力コンデンサ42を有している。このフィルタ回路40は、バッテリ6から得られる電源電圧を平滑化する平滑回路として構成されている。
【0019】
DC/DCコンバータ回路45は、DC/DCトランス46、パワー素子であるパワーMOSトランジスタ47、ダイオード48およびコンデンサ49を有している。このDC/DCコンバータ回路45は、電源電圧(例えば12V)をランプ供給電圧(例えば40V〜400V)まで昇圧するコンバータ回路として構成されている。
【0020】
ここで、パワーMOSトランジスタ47は、制御回路70を構成するPWM制御部77(図2参照)からのPWM信号に応じてON/OFFが制御される。したがって、ランプ供給電圧は、PWM制御部77にて出力されるPWM信号のデューティ比によって決定される。
【0021】
点灯補助回路50は、電源側端子に並列に接続された2つの抵抗器51,52、一方の抵抗器52に直列接続されたダイオード53、並びに他方の抵抗器51およびダイオード53に接続されたテイクオーバーコンデンサ54を備えている。点灯補助回路50は、放電灯11の点灯時において必要な電力を一時的に放電灯11に供給する回路であり、テイクオーバーコンデンサ54は必要な電力を蓄える機能を有する。
【0022】
Hブリッジ回路55は、4つのパワートランジスタ56および電流検出抵抗として配置された抵抗器57を備えている。Hブリッジ回路55は、制御回路70からの作動信号を受けてこれらのパワートランジスタ56をスイッチングするドライバ58によって制御され、この制御によってHブリッジ回路55からの出力が、直流から交流(ただし矩形波)に変換される。
【0023】
高電圧発生回路60は、高電圧発生用コンデンサ61、スパークギャップ62、およびスタータトランス63、およびノイズ低減コイル64を有している。高電圧発生用コンデンサ61はスタータトランス63の1次コイル側に流す電流を充電し、スパークギャップ62は、高電圧発生用コンデンサ61の放電をスイッチングする。
【0024】
そして、スタータトランス63は放電灯11の点灯を開始する始動電圧(例えば25kV)を発生する。なお、スパークギャップ62は、制御回路70(始動制御部79(図2参照))からの作動信号を受けた昇圧回路65から高電圧が供給され、スパークギャップ62の電圧が所定の電圧に達したタイミングで導通する。
【0025】
また、制御回路70は、上記各回路の電圧を検出し、これらの電圧に基づいて、ドライバ58や昇圧回路65等の回路素子を制御する半導体素子を備えてなる。なお、制御回路70は、ディスチャージヘッドライトにおける、周知のいわゆるバラストとして機能する。
【0026】
[制御回路70の詳細]
次に、制御回路70について図2および図3を用いて説明する。図2は制御回路70の概略構成を示すブロック図、図3は制御回路70によって出力される電力の波形を示すグラフである。
【0027】
制御回路70は、図2に示すように、ランプ電圧検出部71と、ランプ電流検出部72と、ランプパワー制御部73と、電力設定部74と、無電流時間検出部76と、PWM制御部77と、ブリッジ制御部78と、始動制御部79とを備えている。なお、制御回路70を構成する各部71〜79は、回路として構成されている。
【0028】
ここで、ランプ電圧検出部71、ランプ電流検出部72、ランプパワー制御部73、PWM制御部77、ブリッジ制御部78、および始動制御部79についての詳細構成は、周知技術(例えば特許第4085801号公報、特許第4350810号公報等に記載の技術)と概ね同様であるため、その機能のみを簡単に説明する。また、電力設定部74、および無電流時間検出部76についても、ランプパワー制御部73を構成する回路の一部を利用して構成することができるため、その機能のみを簡単に説明する。
【0029】
始動制御部79は、放電灯11の点灯開始時に昇圧回路65を制御することによって放電灯11に一時的な高電圧が印加されるよう制御し、放電灯11の点灯を開始させる。
次に、ブリッジ制御部78は、放電灯11に印加される電圧の極性を周期的に変化させる。つまり、ブリッジ制御部78は、Hブリッジ回路55を構成する複数組のパワートランジスタ56を順にON状態とすることにより放電灯11に印加される電圧の極性を周期的に変化させるよう構成されている。そして、ON状態とするパワートランジスタ56を変更する際には全てのパワートランジスタ56を一時的にOFF状態とするデッドタイム(例えば約2μs)を設けて制御する。
【0030】
なお、パワートランジスタ56を順にON状態とする周期は、放電灯11の点灯開始時の1周期のみ、約40msとし、その後は約3msとする。ランプの立ち消えを防止し易くするためである(特許第3500815号公報等参照)。
【0031】
ランプ電圧検出部71は、例えば、DC/DCコンバータ回路45からの出力電圧Vの電位を入力し、この電位が高くなるほど大きな電流を出力する周知の回路として構成されている。ランプ電圧検出部71からの出力は、出力電圧Vの電位を示す値として、ランプパワー制御部73および電力設定部74に入力される。
【0032】
また、ランプ電流検出部72は、放電灯11に流れる電流(ランプ電流)によって電位が変化するHブリッジ回路55の端子Iの電位を入力し、この電位が高くなるほど大きな電流を出力する周知の回路として構成されている。ランプ電流検出部72からの出力は、ランプ電流を表す値としてランプパワー制御部73、電力設定部74、および無電流時間検出部76に入力される。なお、ランプパワー制御部73、電力設定部74、および無電流時間検出部76は、それぞれランプ電圧検出部71およびランプ電流検出部72を備えた構成としてもよい。
【0033】
ランプパワー制御部73は、ランプ電圧検出部71およびランプ電流検出部72からの出力を入力し、放電灯11が点灯されてからの時間に応じた電流を生成するとともに、ランプ電圧の変化率に応じて電流を生成し、これらの電流を合成した電流を生成する。
【0034】
具体的には、放電灯11が点灯されてからの時間に応じた電流としては、放電灯11が点灯されてから放電灯11の発光状態が安定すると推定されるまでの一定時間(安定時間)内において、電流値を大きく設定し、その後、電流値が徐々に小さくなるようにする。また、ランプ電圧の変化率に応じた電流においては、ランプ電圧の変化率が一定値よりも大きくなると、変化率が大きくなるにつれて電流値も大きくする。ただし、電流値の上限が設定されている。
【0035】
そして、ランプパワー制御部73は、上記の各電流値、ランプ電圧検出部71およびランプ電流検出部72からの電流値をそれぞれ加算した合計電流値に基づく電圧を比較器に入力し、予め設定された基準電圧との比較を行い、比較結果に応じた出力をPWM制御部77に入力させる。ここで、比較器による比較結果は、合計電流値が大きくなるにつれて高い電位が出力されるよう設定されており、この設定では、放電灯11の点灯直後、および放電灯11に印加される電力値が低いときに、高い電位の信号が出力されることになる。
【0036】
PWM制御部77は、ランプパワー制御部73から入力される電位に応じたデューティ比を有するPWM信号を生成し、このPWM信号をDC/DCコンバータ回路45に送る。つまり、PWM制御部77は、ランプパワー制御部73から入力される信号の電位が高くなるにつれてデューティ比を高く設定する。
【0037】
ここで、PWM制御部77には、ランプパワー制御部73からの信号のみでなく、後述する電力設定部74および無電流時間検出部76からの信号も入力される。この構成において、PWM制御部77は、入力された信号のうちの最も電位が高い信号に基づいてデューティ比を設定する。つまり、電力設定部74または無電流時間検出部76からデューティ比を増加させる指令(パワーアップ信号)を受けると、PWM制御部77は、ランプパワー制御部73からの信号に拘わらずデューティ比を増加させることになる。
【0038】
このようなランプパワー制御部73およびPWM制御部77では、図3に示すように、ランプ点灯開始直後から一定時間の間、ランプ印加電力(供給電力の目標値、図1の端子Vにおける電位と端子Iにて検出される電流の積)を通常のランプ印加電力(例えば25W)よりも高い電力値(例えば60W)に設定し、その後、徐々にランプ印加電力を低くし、最終的に通常のランプ印加電力で収束させる。
【0039】
ランプ点灯開始直後においては、放電灯11の内部のガスの温度が低く、放電灯内のガスが活性化し難いため、インピーダンスが高くなり、図3に示すように、ランプ印加電圧(図1のc点での電位)は比較的低い状態となる。このとき、ランプ印加電力は通常よりも高く設定されているので、ランプ印加電流は比較的大きくなり、放電灯11が消灯してしまうことを防止し易くしている。
【0040】
その後、放電灯11の内部のガスの温度が高くなるにつれて、ランプ印加電圧は上昇する。すると、図3に示すように、ランプ印加電力は徐々に減少し、ランプ印加電流も減少する。
【0041】
このようにして、ランプパワー制御部73を介してPWM制御部77が出力するPWM信号のデューティ比を制御する場合には、検出した電力値に基づくフィードバック制御が実施されることになる。
【0042】
次に、電力設定部74は、図2に示すように、閾値設定部75を備えており、検出した放電灯11への供給電力(ランプ電力)が、予め設定された閾値未満となった場合に、PWM制御部77による出力が最大になるような指令を出力し、DC/DCコンバータ回路45による供給電力を、ランプパワー制御部73による供給電力の目標値より一時的に増加させる。
【0043】
具体的な電力設定部74の構成としては、閾値設定部75にて生成される電流の電流値、ランプ電圧検出部71およびランプ電流検出部72からの電流値をそれぞれ加算した合計電流値に基づく電圧を入力する比較器と、比較器による比較結果に応じてパワーアップ信号を一時的に出力するタイマ回路と、放電灯11に印加される電圧の極性が反転する毎に一定時間(デッドタイム(図5におけるdの期間)よりも若干長い期間において)マスクパルス(詳細は後述する。)を出力するマスクパルス発生部と、を備えている。
【0044】
電力設定部74における比較器は、比較対象の電圧と予め設定された基準電圧とを比較し、例えば、比較対象の電圧が基準電圧よりも高い場合、HIレベルを出力し、比較対象の電圧が基準電圧よりも低い場合、LOWレベルを出力する。タイマ回路は、例えば単安定マルチバイブレータとして構成されており、マスクパルスが発生されていないときに比較器からHIレベルが入力されると、内部素子の時定数によって決定される一定時間(例えば30μs)だけパワーアップ信号を出力する。
【0045】
ここで、パワーアップ信号はPWM制御部77が出力するPWM信号のデューティ比を上限値(例えば、デューティ比90%)に設定する電位を有する信号である。このパワーアップ信号は、PWM制御部77に入力される。なお、パワーアップ信号は、放電灯11に印加される電圧の極性が反転するまで、出力が終了するように、パワーアップ信号が出力される時間が設定されている。
【0046】
次に、電力設定部74を構成する閾値設定部75は、放電灯11の点灯開始時に閾値を点灯時閾値に設定し、その後、閾値を点灯閾値よりも低い値である定常時閾値に、この閾値を段階的または連続的に単調に減少させる。特に、本実施形態では、ランプ印加電力の目標値を示す信号をランプパワー制御部73から入力し、ランプ印加電力の目標値に応じた電圧値を生成することによって、図3に示すように、閾値Wthを、ランプ印加電力の目標値の所定割合(例えば約90〜95%)の値に設定している。
【0047】
即ち、ランプパワー制御部73では、ランプ点灯開始直後にランプ印加電力の目標値を比較的高い値に設定しているが、このとき、閾値Wthもランプ印加電力に対応して比較的高い値(点灯時閾値)に設定する。そして、ランプ印加電力の目標値が低くなるにつれて閾値Wthも低い値に設定し、最終的には閾値Wthを通常時(安定時)のランプ印加電力の所定割合(定常時閾値)に収束させる。
【0048】
ここで、電力設定部74による作動を図4および図5のグラフを用いて説明する。図4は電力設定部74が取り扱う信号の波形を示すグラフである。また、図5は放電灯11の点灯の一周期(放電灯11に印加される電圧の極性が変化する一周期)において、検出されたランプ電力、実際のランプ電流、およびランプ電圧の一例を示すグラフである。
【0049】
放電灯11に印加される電圧の極性が変化する際には、図4に示すように、マスクパルス発生部から一定時間だけマスクパルスが発生される。そして、所定のパワートランジスタ56がON状態とされると、図5に示すように、ランプ電流が流れることによって検出されるランプ電力が閾値Wth以上の値となる。しかし、ランプ点灯開始直後には、放電灯11の点灯状態が不安定になりがちであり、ランプ電力が閾値Wthを下回ることがある。
【0050】
このようにランプ電力が閾値Wthを下回ると、電力設定部74においては、前述の比較器において、比較対象の電圧が基準電圧よりも高くなり、図4に示すように、比較器からはHIレベルが出力される(閾値比較)。このとき、マスクパルスが発生されていなければ、図4に示すように、一定時間だけパワーアップ信号が出力される。
【0051】
すると、パワーアップ信号によりPWM信号のデューティ比が増加され、図5に示すように、ランプ電圧が上昇し、これに伴ってランプ電流も増加する。なお、比較器からはHIレベルが出力されたとしても、マスクパルスが発生されていれば、マスクパルスが発生されている間においてはパワーアップ信号が出力されることはない。
【0052】
また、パワーアップ信号を出力する時間は、消灯しかけている放電灯11(通電されていないが放電灯11内部のガスが発光している状態)を再通電させるために必要な電圧(例えば130V程度)までランプ電圧が上昇するまでの時間に設定されている。因みに、消灯した放電灯11(内部のガスが発光していない状態)を再通電するのに必要な電圧は、消灯しかけている放電灯11に再通電させるのに必要な電圧よりも極めて高く、消灯しかけている放電灯11に対しては、通電されなくなってからの時間が経過すればするほど再通電に必要な電圧は高くなる。
【0053】
次に、無電流時間検出部76による作動を図6および図7のグラフを用いて説明する。図6は無電流時間検出部76が取り扱う信号の波形を示すグラフである。また、図7は放電灯11の点灯の一周期(放電灯11に印加される電圧の極性が変化する一周期)において、検出されたランプ電力、実際のランプ電流、およびランプ電圧の一例を示すグラフである。
【0054】
無電流時間検出部76は、ランプ電流検出部72からの電流値に基づく電圧(図6に示す「ランプ印加電流」)を入力する比較器と、前述のタイマ回路およびマスクパルス発生部と、を備えている。
【0055】
無電流時間検出部76における比較器は、比較対象の電圧とランプ電流検出部72からの電流値0(閾値Ith(例えば0.01A))が対応する基準電圧とを比較し、比較結果を出力する(図6に示す「ゼロ電流検出信号」)。比較器においては、例えば、比較対象の電圧が基準電圧よりも低い場合(ランプ電流検出部72からの電流値が閾値未満の場合)、HIレベルを出力し、比較対象の電圧が基準電圧よりも高い場合(ランプ電流検出部72からの電流値が閾値以上の場合)、LOWレベルを出力する。
【0056】
タイマ回路は、例えば単安定マルチバイブレータとして構成されており、マスクパルスが発生されていないときに比較器からHIレベルが入力されると、内部素子の時定数によって決定される一定時間(再通電時間、例えば30μs)だけパワーアップ信号を出力する(図6の「パワーアップ信号」)。このパワーアップ信号はPWM制御部77に入力される。また、タイマ回路は、マスクパルスが発生されているときに比較器からHIレベルが入力されたとしても、パワーアップ信号を出力しない。
【0057】
ここで、マスクパルスが出力される時間は、デッドタイムよりも長い時間に設定されている。本構成の無電流時間検出部76では、マスクパルスが出力されていない状態において、ランプ電流値が閾値未満となると、一定時間パワーアップ信号が出力される。
【0058】
このような無電流時間検出部76では、マスクパルス出力終了後に無電流に相当するランプ電流が検出された場合、図7に示すように、ランプ電圧を上昇させる。そして、ランプ電圧が一定電位に到達すると、放電灯11が再通電し、電流が流れる。その後、ランプパワー制御部73による通常のフィードバック制御に戻ることによって、ランプ電圧は元の電圧に戻る。
【0059】
なお、正常時においては、図7における破線に示すように、ランプ電圧上昇後速やかに放電灯11が通電されるので、ランプ電圧を上昇させることはない。
[本実施形態による効果]
以上のように詳述した放電灯点灯制御装置1において、ランプパワー制御部73は、DC/DCコンバータ回路45およびPWM制御部77を利用して、放電灯11に供給される電力を表す供給電力を、この供給電力が予め設定された目標値になるように生成する。そして、電力設定部74は、ランプ電圧検出部71およびランプ電流検出部72を利用して、供給電力の検出結果を取得する。
【0060】
また、電力設定部74は、取得された供給電力が予め設定された閾値未満となった場合に、DC/DCコンバータ回路45により生成される供給電力を目標値よりも増加させる。さらに、閾値設定部75は、放電灯11の点灯開始時に閾値を点灯時閾値に設定し、その後、閾値を点灯閾値よりも低い値である定常時閾値に変更する。
【0061】
即ち放電灯11の点灯開始時には、放電灯11の立ち消えが発生し易いため、本実施形態では、放電灯11の点灯開始時に放電灯11が立ち消えする兆候を早期に検出できるように、電力を増加させる基準となる閾値を、点灯後充分時間が経過した定常時よりも高い値(点灯時閾値)に設定する。その後、放電灯11の温度が上昇し、放電灯11の立ち消えする可能性が低くなった頃に、閾値を点灯閾値よりも低い値である定常閾値に変更している。そして、放電灯11への供給電力が閾値未満となると、放電灯11が消灯してしまう前に、放電灯11に供給される供給電力を増加させる。
【0062】
このような放電灯点灯制御装置1によれば、放電灯11の点灯直後において点灯時閾値に設定することにより放電灯11への供給電力の低下を速やかに検出して供給電力を増加させることができるので、放電灯11の点灯開始時における立ち消えを確実に防止することができる。
【0063】
また、放電灯11への供給電力を増加させるか否かを判断する際に利用される閾値を、その後、点灯時閾値からこの閾値よりも低い値である定常閾値に変更するので、放電灯11に不用意な高電力が印加され続けることを防止することができる。よって、放電灯11の劣化を防止することができる。
【0064】
また、放電灯点灯制御装置1において、閾値設定部75は、閾値を点灯時閾値から定常閾値まで、段階的または連続的に単調に減少させる。
このような放電灯点灯制御装置1によれば、放電灯11の温度上昇とともに立ち消えが発生し難くなるにつれて、供給電力を増加し難くなるように閾値を変更することができる。
【0065】
さらに、上記放電灯点灯制御装置1において電力設定部74は、放電灯11の点灯開始時に目標値を点灯時目標値に設定し、その後、目標値を点灯時目標値よりも低い値である定常目標値に変更する。そして、閾値設定部75は、目標値の変更に追従して閾値を変更する。
【0066】
このような放電灯点灯制御装置1によれば、供給電力の目標値の変化に追従して閾値を変更することができるので、放電灯11の点灯時において供給電力が低下したことを速やかに検出することができる。よって、供給電力を増加させる際の応答性を向上させることができる。
【0067】
[その他の実施形態]
本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0068】
例えば、上記実施形態においては、制御回路70を回路として構成したが、制御回路70の機能をコンピュータによる処理として実現するようにしてもよい。この場合には、コンピュータが制御回路70を構成する各部71〜79としての機能をプログラムによって実現するようにすればよい。
【0069】
このようにしても本発明と同様の効果を享受することができる。
[本発明と上記実施形態との対応関係]
本発明の電力生成手段は、上記実施形態におけるDC/DCコンバータ回路45、ランプパワー制御部73、PWM制御部77等に相当する。また、電力取得手段は、電力設定部74、ランプ電圧検出部71、ランプ電流検出部72に相当し、電力増加手段は、電力設定部74に相当する。
【0070】
さらに、閾値変更手段は、閾値設定部75に相当し、目標値変更手段は、ランプパワー制御部73に相当する。
【符号の説明】
【0071】
1…放電灯点灯制御装置、6…バッテリ、7…スイッチ、11…放電灯、40…フィルタ回路、45…DC/DCコンバータ回路、46…DC/DCトランス、47…パワーMOSトランジスタ、50…点灯補助回路、55…Hブリッジ回路、56…パワートランジスタ、57…抵抗器、60…高電圧発生回路、65…昇圧回路、70…制御回路、71…ランプ電圧検出部、72…ランプ電流検出部、73…ランプパワー制御部、74…電力設定部、75…閾値設定部、76…無電流時間検出部、77…PWM制御部、78…ブリッジ制御部、79…始動制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯の点灯状態を制御する放電灯点灯制御装置であって、
放電灯に供給される電力を表す供給電力を、該供給電力が予め設定された目標値になるように生成する電力生成手段と、
前記供給電力の検出結果を取得する電力取得手段と、
前記取得された供給電力が予め設定された閾値未満となった場合に、前記電力生成手段により生成される供給電力を前記目標値よりも増加させる電力増加手段と、
放電灯の点灯開始時に前記閾値を点灯時閾値に設定し、その後、前記閾値を前記点灯閾値よりも低い値である定常時閾値に変更する閾値変更手段と、
を備えたことを特徴とする放電灯点灯制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放電灯点灯制御装置において、
前記閾値変更手段は、前記閾値を前記点灯時閾値から前記定常閾値まで、段階的または連続的に単調に減少させること
を特徴とする放電灯点灯制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放電灯点灯制御装置において、
放電灯の点灯開始時に前記目標値を点灯時目標値に設定し、その後、前記目標値を前記点灯時目標値よりも低い値である定常目標値に変更する目標値変更手段を備え、
前記閾値変更手段は、前記目標値の変更に追従して前記閾値を変更すること
を特徴とする放電灯点灯制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−171156(P2011−171156A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34744(P2010−34744)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】