説明

放電灯点灯装置および、これを用いた照明装置

【課題】放電灯の調光を安定させると共に、閃光を低減させることができる放電灯点灯装置および、これを用いた照明装置を提供する。
【解決手段】インバータ回路4と、電流I1,I2の和で決定される電流I0に応じて発振周波数を決定する発振器62と、制御信号Svcに応じた電流I1を生成する第1の電流制御部63と制御電圧Vfbを生成し、制御電圧Vfbに応じた電流I2を生成する第2の電流制御部64,フィードバック回路65と、制御信号Svcを生成することで電流I1を制御し、電流指令値Vaを生成することで制御電圧Vfbを制御するマイコン61とを備え、マイコン61は、予熱期間T2において制御電圧Vfbが閾値Vthと一致するように電流指令値Vaを生成し、点灯後において制御電圧Vfbが閾値Vth未満となるように電流指令値Vaを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置および、これを用いた照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から放電灯(蛍光灯)を広範囲に調光する技術は開発されている。
【0003】
図8に従来の放電灯点灯装置1Aの回路構成図を示す。放電灯点灯装置1Aは、整流器2と、力率改善回路3と、インバータ回路4と、予熱回路5と、制御回路6とで構成されており、商用電源Vinを入力電源として放電灯FL(蛍光灯)に電力を供給することで放電灯FLを点灯させる。
【0004】
以下に、放電灯点灯装置1Aの回路構成について説明する。
【0005】
整流器2は、ダイオードブリッジで構成されており、商用電源Vinの出力端間に接続されている。そして、整流器2は、商用電源Vinの交流電圧を整流して力率改善回路3に出力する。
【0006】
力率改善回路3(PFC回路)は、コンデンサC1,C2と、インダクタL1と、MOSFETからなるスイッチング素子Q1と、ダイオードD1と、発振器31(OSC31)とで構成されている。コンデンサC1は、整流器2の出力端間に接続され、コンデンサC1と並列にインダクタL1とスイッチング素子Q1とからなる直列回路が接続されている。また、スイッチング素子Q1と並列にダイオードD1とコンデンサC2とからなる直列回路が接続されている。そして、発振器31がスイッチング素子Q1のスイッチング制御を行うことでコンデンサC2の両端間に直流電圧Vdcを生成してインバータ回路4に出力すると共に、入力歪を改善する。
【0007】
インバータ回路4は、MOSFETからなるスイッチング素子Q2,Q3と、コンデンサCd1,Cd2,Cr1と、インダクタLr1とでハーフブリッジインバータ回路を構成している。力率改善回路3の出力端間にスイッチング素子Q2,Q3からなる直列回路が接続され、スイッチング素子Q3と並列にコンデンサCd1とインダクタLr1とコンデンサCr1とからなる直列回路が接続されている。また、コンデンサCr1と並列に放電灯FLと抵抗Rs1からなる直列回路が接続されている。そして、スイッチング素子Q2,Q3は、制御回路6の発振器62(OSC62)(発振回路)によってスイッチング制御されており、スイッチング素子Q2,Q3が交互にオン・オフを繰り返すことによって、直流電圧Vdcを高周波電圧に変換する。また、コンデンサCr1とインダクタLr1とで共振回路を構成しており、共振作用によって高周波電圧からなるランプ電圧Vlaを放電灯FLに印加して放電灯FLを始動・点灯したり、放電灯FLに流れるランプ電流Ilaを制限する。
【0008】
予熱回路5は、トランスTr1,Tr2で構成されており、スイッチング素子Q3と並列に、コンデンサCd2とトランスTr1,Tr2の一次巻線とからなる直列回路が接続されている。トランスTr1の二次巻線は放電灯FLの一方のフィラメントに接続され、トランスTr2の二次巻線は放電灯FLの他方のフィラメントに接続されている。上記構成によって、予熱回路5は、インバータ回路4が出力する高周波電圧を降圧し、放電灯FLのフィラメントに電力を供給することでフィラメントを加熱する。
【0009】
制御回路6は、放電灯FLに直列接続された抵抗Rs1の両端電圧を検出することで、放電灯FLに流れるランプ電流Ilaを検出し、放電灯FLの点灯時において、ランプ電流Ilaが目標電流と一致するようにフィードバック制御を行う。
【0010】
制御回路6は、マイクロコントローラ61(MPU61)を備えており、発振器62に制御信号Senを出力することで、発振器62の発振動作の開始・停止を制御する。以降、マイクロコントローラ61をマイコン61と略称する。発振器62は、マイコン61から出力される制御信号SenがLの場合、スイッチング素子Q2,Q3のスイッチング制御を行い、制御信号SenがHの場合、スイッチング素子Q2,Q3のスイッチング制御を停止する。発振器62の発振周波数は、発振器62に設けられた発振制御端子から出力される電流値によって決定される。発振器62は図示しない定電圧源を備えており、発振制御端子には、定電圧源の出力電圧(電圧Vfs)が印加されている。そして、この発振制御端子から出力される電流I0(発振制御量)が大きくなると発振周波数が高くなり、電流I0が小さくなると発振周波数が低くなる。なお、本実施形態では、電流I0が0の場合、発振周波数が、コンデンサCr1,インダクタLr1からなる共振回路の共振周波数となるように設定されている。なお、発振器62は電流I0に応じてスイッチング素子Q2,Q3のオン時間または、オン時間と発振周波数との両方を決定するように構成してもよい。
【0011】
発振器62の発振制御端子から出力される電流I0は、第1の電流制御部63(第1の制御量生成部)と第2の電流制御部64とで制御される。第1の電流制御部63は、発振器62の発振制御端子から自己に向かって流れる電流I1(第1の制御量)を生成し、第2の発振制御部64は、発振器62の発振制御端子から自己に向かって流れる電流I2(第2の制御量)を生成する。すなわち、発振器62の発振周波数を決定する電流I0は、第1,第2の電流制御部63,64で生成される電流I1と電流I2との和で決定される。
【0012】
第1の電流制御部63は、ダイオードD2と抵抗Rc2と可変電圧源631とで構成されており、ダイオードD2のアノードは発振器62の発振制御端子に接続され、カソードは抵抗Rc2を介して可変電圧源631に接続されている。可変電圧源631は、マイコン61が出力する制御信号Svc(第1の操作量)が入力されており、この制御信号Svcに応じた電圧Vc1を生成する。そして、可変電圧源631が生成する電圧Vc1が高い場合、電流I1は発生しないが、電圧Vc1が低い場合、発振器62の発振制御端子からダイオードD2,抵抗Rc2を介して可変電圧源631に向かって電流I1が流れる。具体的には、発振器62の発振制御端子に印加されている電圧をVfs,ダイオードD2の順方向電圧をVf2とした場合、電圧Vc1がVfs−Vf2を下回ると、電流I1が発生する。
【0013】
第2の発振制御部64は、ダイオードD3と抵抗Rc1とで構成されており、ダイオードD3のアノードは発振器62の発振制御端子に接続され、カソードは抵抗Rc1を介してフィードバック回路65のオペアンプ651の出力端子に接続されている。そして、オペアンプ651が出力する制御電圧Vfb(第2の操作量)に応じた電流I2が生成される。
【0014】
フィードバック回路65は、オペアンプ651と、整流部652(REC652)と、平滑部653,654(LPF653,654)と、抵抗Ri1,Rfbと、コンデンサCfbとで構成されている。
【0015】
オペアンプ651の非反転入力端子は、平滑部654を介してマイコン61に接続されている。平滑部654は、マイコン61から出力される電流指令値Vaを平滑してオペアンプ651の非反転入力端子に出力する。
【0016】
また、オペアンプ651の反転入力端子は、抵抗Ri1,平滑部653,整流部652を介して、放電灯FLと抵抗Rs1との接続点に接続されている。抵抗Rs1は、放電灯FLとグランドとの間に介挿されており、ランプ電流Ilaの検出部として機能する。整流部652は、抵抗Rs1の一端に接続されており、ランプ電流Ilaに応じた電流信号を整流し、平滑部653に出力する。そして、平滑部653は、整流部652で整流された電流信号を平滑することで平均電流信号(以降、電流検出値Vsと称す)を生成し、抵抗Ri1を介してオペアンプ651の反転入力端子に出力する。
【0017】
また、オペアンプ651の反転入力端子と出力端子との間に抵抗RfbとコンデンサCfbとからなる直列回路が接続されており、フィードバック回路65の位相補償回路を構成している。この位相補償回路を構成する抵抗RfbとコンデンサCfbの乗数で決定される時定数は、フィードバックループ内の遅れ要素による発振の発生を防止するように設定される。
【0018】
そして、オペアンプ651は、電流検出値Vsと電流指令値Vaとが一致するように制御電圧Vfbを出力し、第2の発振制御部64に流れる電流I2を制御することで発振器62の発振周波数を制御する。なお、発振器62の発振制御端子に印加されている電圧をVfs,ダイオードD3の順方向電圧をVf3とした場合、電流I2は、(Vfs−Vf3−Vfb)/Rc1となる。なお、ダイオードD3が接続されているため、オペアンプ651が出力する制御電圧VfbがVfs−Vf3以上である場合、電流I2は発生しない。以降、Vfs−Vf3を閾値Vthと称す。
【0019】
また、マイコン61には、調光信号生成部66(Dim66)が接続されており、所望の調光レベルを示す調光信号が出力される。そして、マイコン61は受信した調光信号から目標電流値を示す電流指令値Vaを生成し、オペアンプ651に出力する。なお、調光信号は、例えばシリアルのデジタル信号で構成されている。
【0020】
上記構成によって、フィードバック回路65は電流I2を制御することで、放電灯FLの点灯時におけるランプ電流Ilaを目標電流値に一致させるフィードバック制御を行っている。なお、フィードバック回路65は、アナログ回路で構成するのが一般的であるが、マイクロコントローラの演算によって構成することもなされている。
【0021】
次に、放電灯点灯装置1Aの動作について図9(a)〜(e)を用いて説明する。図9(a)はランプ電流Ilaの波形図、図9(b)はランプ電圧Vlaの波形図である。図9(c)は検出電流値Vsの波形図、図9(d)は電流I1の波形図、図9(e)は制御電圧Vfbの波形図である。
【0022】
時間t100〜t101は、消灯期間T101であり、調光信号生成部66からマイコン61に消灯を示す調光信号が入力されており、マイコン61は発振器62に出力する制御信号SenをHにすることで発振器62の動作を停止している。また、マイコン61は、この消灯期間T101中において、前回の状態を読み出すなどの初期プログラムを実行し、回路の異常などを確認する動作を行う。さらに、マイコン61は、第1の電流制御部63の可変電圧源631に出力する制御信号Svcを制御して電流I1を所定値まで増加させる。
【0023】
次に、時間t101〜t102は、予熱期間T102であり、調光信号生成部66からマイコン61に点灯を示す調光信号が出力され、マイコン61は発振器62に出力する制御信号SenをHからLに変動し、発振器62の発振動作を開始させる。このとき、マイコン61は、放電灯FLの始動後における目標電流値を示す電流指令値Vaをオペアンプ651に出力しており、この時点ではランプ電流Ilaが流れていないため、制御電圧Vfbは飽和電圧Vmax(>Vfs−Vf3)となっている。それによって、電流I2が0となり、電流I1のみで発振器62の発振周波数を制御する。
【0024】
予熱期間T102において、電流I1は所定値に設定されているため発振器62の発振周波数が共振周波数よりも十分高くなり、放電灯FLのフィラメントの先行予熱が行われる。
【0025】
次に、時間t102〜t103は始動期間T103であり、電流I1を徐々に低減することで、発振器62の発振周波数を低減させ、コンデンサCr1とインダクタLr1とからなる共振回路の共振周波数に近づけることで、ランプ電圧Vlaが上昇する。なお、電流I0が0となった場合に、発振器62の発振周波数が共振周波数となるように設定されており、電流I1を0にすることでランプ電圧Vlaが最大となる。
【0026】
そして、時間t103において、放電灯FLが始動するとランプ電流Ilaが発生し、電流検出値Vsが急激に増加する。それによって、制御電圧Vfbが飽和電圧Vmaxから低減する。ここで、制御電圧Vfbが閾値Vth(=Vfs−Vf3)未満となるまで期間は、上述したように電流I2が発生しない。すなわち、時間t103〜t104は、ランプ電流Ilaのフィードバック制御を行うことができない応答期間T104となる。
【0027】
この応答期間T104中は、電流I0が略0であるので、ランプ電流Ilaが増加し続ける。そして、電流検出値Vsの上昇によって制御電圧Vfbが低減し、時間t104において制御電圧Vfbが閾値Vthを下回って電流I2が発生することによって発振器62の発振周波数が上昇し始めてランプ電流Ilaのフィードバック制御が開始される。そして、時間t105において、応答期間T104中に増加したランプ電流Ilaが収束する。
【0028】
このように、応答期間T104は、ランプ電流Ilaのフィードバック制御を行うことができないので、ランプ電流Ilaが増加し、時間t103〜t105までの期間に、放電灯FLが一瞬明るくなる閃光が発生してしまう。特に、蛍光灯FLの調光においては、白熱電球に近い光出力特性が求められており、始動直後の放電灯FLの調光レベルを下限に設定していた場合、閃光がより大きく感じられる。
【0029】
オペアンプ651が出力する制御電圧Vfbの飽和電圧Vmaxは、オペアンプ651の電源電圧付近であるが、電源電圧が高いほど制御電圧Vfbが閾値Vth未満となるまでの期間(応答期間T104)が長くなり、閃光が大きくなる。また、オペアンプ651の電源電圧を低減させることで上記問題を解消することができるが、オペアンプ651専用の電源回路を構成する必要があり、コストが増加するという問題が発生する。例え専用電源を用いたとしても、温度と構成などを考慮すると電圧の設定が難しく、その電源電圧は一般的な5Vや3.3Vのようなレギュレータ電圧を選択することができない。
【0030】
また、放電灯FLを広範囲に調光するためには、放電灯FLのちらつきを抑制する必要があり、点灯が不安定になる電流領域においても安定に電流制御を行う必要がある。そのため、ランプ出力(ランプ電流Ila)のフィードバック制御の応答設計が重要となっている。すなわち、放電灯点灯装置1Aには、調光安定と閃光低減との2つの特性を両立した設計が求められる。
【0031】
また、放電灯の始動時に生じる閃光を低減する技術としてパルス調光がある(例えば、特許文献1参照)。パルス調光は、放電灯を始動させる電圧を周期的に短時間印加しながら、ランプ電流を増加させることで始動時の閃光を目立たなくすることができる。
【0032】
しかし、パルス調光には以下の問題がある。1点目は、周波数を高速に変調するため、制御回路が複雑となる。2点目は、周波数の急変にインバータの共振回路が追従するように設計するため、共振回路が困難となり、共振回路が周波数変化に追従できなければスイッチにストレスが発生する。3点目は、繰り返し高電圧を発生させるため、ノイズが多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特開2007−149408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
上記で説明した放電灯点灯装置1Aにおいて、調光安定と閃光低減との2つの特性を両立した設計を行うのは以下の点から困難であった。1点目は、フィードバック制御において極めて高いDCゲインを必要とするため、それに伴いフィードバック制御の位相遅れが大きくなる。2点目は、位相補償回路の設計の制約が多くなり、チラツキ防止と応答速度にトレードオフが生じる。なお、省エネルギーの放電灯は、ランプインピーダンス変化が大きくちらつきやすいため、チラツキ防止寄りの設計になる。
【0035】
例えば、調光下限でのちらつきを防止するために、フィードバック回路65の位相補償回路のカットオフ周波数を数100Hzに設定するように抵抗RfbおよびコンデンサCfbの乗数を決定する。抵抗Rfb=6.8kΩ,コンデンサCfb=0.1μFに設定した場合、カットオフ周波数fz=1(2×π×Rfb×Cfb)=234Hzとなり、時定数は、0.68msとなる。この時定数により、始動から安定点灯までの応答期間T104が決定し、閃光が発生する期間(時間t103〜t105)は時定数の2〜3倍(約2ms)となる。この期間(時間t103〜t105)が数100μsであれば閃光を感じないが、数msとなると明らかな閃光が認識される。
【0036】
上記問題を解決するために、マイクロコントローラ(以下、マイコンと略称する)を用いてフィードバック制御を行うことも考えられ、マイコンでフィードバック制御を行うことによって複雑なパラメータでの制御も実現できる。しかし、マイコンを用いた制御では、滑らかな調光を実現するには高いクロック周波数で動作する必要がある。さらに、A/Dコンバータの分解能も高くする必要があり、高価なマイコンを必要とする。
【0037】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、放電灯の調光を安定させると共に、閃光を低減させることができる放電灯点灯装置および、これを用いた照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の放電灯点灯装置は、スイッチング素子を具備し、当該スイッチング素子がスイッチング制御されることで直流電圧を高周波電圧に変換し、当該高周波電圧を放電灯に供給するインバータ回路と、第1の制御量と第2の制御量との和で決定される発振制御量に応じて前記スイッチング素子のオン時間および発振周波数のうち少なくとも一方を決定し、前記スイッチング素子のスイッチング制御を行う発振回路と、第1の操作量に応じた前記第1の制御量を生成する第1の制御量生成部と、上限値を有し、第3の操作量に応じた第2の操作量を生成しており、当該第2の操作量の大きさが閾値に対して一方側にある場合、前記第2の制御量を0とし、前記第2の操作量の大きさが前記閾値に対して他方側にある場合、前記インバータ回路の出力電流と目標電流値との差分に応じた前記第2の制御量を生成する第2の制御量生成部と、前記第1の操作量を生成することで前記第1の制御量を制御し、前記第3の操作量を生成することで前記第2の操作量を制御する発振制御部とを備え、前記発振制御部は、前記放電灯の点灯前の第1の期間において、前記第1の制御量が0より大きくなるように前記第1の操作量を生成すると共に、前記第2の操作量の大きさが前記閾値に対して一方側かつ前記上限値未満となるように前記第3の操作量を生成し、前記放電灯の点灯後の第2の期間において、前記第1の制御量が0となるように前記第1の操作量を生成すると共に、前記第2の操作量の大きさが前記閾値に対して他方側となるように前記第3の操作量を生成することを特徴とする。
【0039】
この放電灯点灯装置において、前記発振制御量は、定電圧源からの出力電流であり、前記第2の制御量生成部は、前記第2の操作量を生成することで前記定電圧源からダイオードを介して流れる電流を生成しており、前記閾値は、前記定電圧源の出力電圧から前記ダイオードの順方向電圧を減算した値であり、前記第1の期間において、前記発振制御部は、前記第2の操作量の大きさが、前記閾値と前記定電圧源の出力電圧に前記順方向電圧を加算した値との間になるように前記第3の操作量を生成することが好ましい。
【0040】
この放電灯点灯装置において、前記第1の期間は、前記放電灯の予熱期間を含むことが好ましい。
【0041】
この放電灯点灯装置において、前記インバータ回路の出力電流の検出結果の誤差による前記第2の操作量の誤差が低減するように前記第2の操作量を補正する補正部を備え、前記第1の期間において、前記発振制御部は、前記第2の操作量の大きさが前記閾値に対して一方側かつ前記上限値未満の所定値となるように前記第3の操作量を生成しており、前記第2の期間において、前記補正部は、前記第1の期間における前記第3の操作量の大きさに基づいて前記第2の操作量を補正することが好ましい。
【0042】
この放電灯点灯装置において、前記目標電流値を補正する目標補正部を備え、前記目標補正部は、前記第2の期間における前記第2の操作量を検出し、当該第2の操作量の変化量に基づいて、前記目標電流値を補正することが好ましい。
【0043】
この放電灯点灯装置において、前記放電灯の消灯・点灯を検知する点灯検知回路を備え、前記発振制御部は、前記点灯検知回路が前記放電灯の消灯から点灯への移行を検知すると、前記第3の操作量を0にすることで、前記第2の操作量の大きさを前記閾値に対する他方側に調整することが好ましい。
【0044】
この放電灯点灯装置において、複数の前記放電灯に電力を供給する分流回路を備え、前記点灯検知回路は、前記放電灯の各々に流れる電流の差分に基づいて前記放電灯の点灯を検知することが好ましい。
【0045】
本発明の照明装置は、スイッチング素子を具備し、当該スイッチング素子がスイッチング制御されることで直流電圧を高周波電圧に変換し、当該高周波電圧を放電灯に供給するインバータ回路と、第1の制御量と第2の制御量との和で決定される発振制御量に応じて前記スイッチング素子のオン時間および発振周波数のうち少なくとも一方を決定し、前記スイッチング素子のスイッチング制御を行う発振回路と、第1の操作量に応じた前記第1の制御量を生成する第1の制御量生成部と、上限値を有し、第3の操作量に応じた第2の操作量を生成しており、当該第2の操作量の大きさが閾値に対して一方側にある場合、前記第2の制御量を0とし、前記第2の操作量の大きさが前記閾値に対して他方側にある場合、前記インバータ回路の出力電流と目標電流値との差分に応じた前記第2の制御量を生成する第2の制御量生成部と、前記第1の操作量を生成することで前記第1の制御量を制御し、前記第3の操作量を生成することで前記第2の操作量を制御する発振制御部とを備え、前記発振制御部は、前記放電灯の点灯前の第1の期間において、前記第1の制御量が0より大きくなるように前記第1の操作量を生成すると共に、前記第2の操作量の大きさが前記閾値に対して一方側かつ前記上限値未満となるように前記第3の操作量を生成し、前記放電灯の点灯後の第2の期間において、前記第1の制御量が0となるように前記第1の操作量を生成すると共に、前記第2の操作量の大きさが前記閾値に対して他方側となるように前記第3の操作量を生成する放電灯点灯装置と、前記放電灯点灯装置によって点灯される放電灯と、前記放電灯点灯装置を収納し、前記放電灯が取り付けられる器具本体とを備えることを特徴とする
【発明の効果】
【0046】
以上説明したように、本発明では、放電灯の調光を安定させると共に、閃光を低減させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態1の放電灯点灯装置の回路構成図である。
【図2】(a)ランプ電流Ilaのタイミングチャートである。(b)制御信号Senのタイミングチャートである。(c)ランプ電圧Vlaのタイミングチャートである。(d)電流検出値Vsのタイミングチャートである。(e)電流I1のタイミングチャートである。(f)制御電圧Vfbのタイミングチャートである。(g)電流指令値Vaのタイミングチャートである。
【図3】実施形態2の放電灯点灯装置の回路構成図である。
【図4】(a)ランプ電流のタイミングチャートである。(b)制御信号Senのタイミングチャートである。(c)放電灯検出電圧Vflのタイミングチャートである。(d)電流検出値Vsのタイミングチャートである。(e)電流I1のタイミングチャートである。(f)制御電圧Vfbのタイミングチャートである。(g)補正値Vhのタイミングチャートである。
【図5】第1の電流指令値Va1と第2の電流指令値Va2との関係を示すグラフである。
【図6】制御電圧Vfbの変動を示すグラフである。
【図7】照明装置の外観図である。
【図8】従来の放電灯点灯装置の回路構成図である。
【図9】(a)ランプ電流Ilaのタイミングチャートである。(b)ランプ電圧Vlaのタイミングチャートである。(c)電流検出値Vsのタイミングチャートである。(d)電流I1のタイミングチャートである。(e)制御電圧Vfbのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0049】
(実施形態1)
本実施形態の放電灯点灯装置1の回路構成図を図1に示す。なお、従来の放電灯点灯装置1Aと同一構成には同一符号を付して説明は省略する。本実施形態の放電灯点灯装置1は、従来の放電灯点灯装置1Aの構成に加えて、オペアンプ651が出力する制御電圧Vfbを検出し、検出結果をマイコン61に出力する制御電圧検出部67を備えている。なお、マイコン61が本願発明の発振制御部に相当し、第2の電流制御部64とフィードバック回路65とが本願発明の第2の制御量生成部に相当する。
【0050】
制御電圧検出部67(LPF67)は、オペアンプ651の出力端子に接続されており、オペアンプ651が出力する制御電圧Vfbを検出する。そして、制御電圧検出部67は、マイコン61のA/D変換部(図示なし)に入力するために制御電圧Vfbを平滑してマイコン61に出力する。なお、制御電圧Vfbがマイコン61の電源電圧より高い場合、分圧回路を用いて制御電圧Vfbに相当する電圧を生成してマイコン61に出力する。
【0051】
そして、マイコン61は、放電灯FLの始動前において、制御電圧Vfbを変動させる制御を行う。図2(a)〜(g)を用いて、本実施形態の放電灯点灯装置1の点灯動作について説明する。
【0052】
時間t0〜t1は、消灯期間T1であり、調光信号生成部66からマイコン61に消灯を示す調光信号が入力されており、マイコン61は発振器62に出力する制御信号SenをHにすることで発振器62の動作を停止している。また、マイコン61は、この消灯期間T1中において、前回の状態を読み出すなどの初期プログラムを実行し、回路の異常などを確認する動作を行う。さらに、マイコン61は、可変電圧源631が出力する電圧Vc1を制御して、電流I1を所定値まで増加させる。また、マイコン61は、オペアンプ651の非反転入力端子に出力する電流指令値Vaを所定のVa0に設定する。この時点では、ランプ電流Ilaが流れていないため、制御電圧Vfbは飽和電圧Vmax(>Vth)となり、電流I2は0となる。
【0053】
次に、時間t1〜t3は、予熱期間T2であり、調光信号生成部66からマイコン61に点灯を示す調光信号が出力され、マイコン61は発振器62に出力する制御信号SenをHからLに変動し、発振器62の発振動作を開始させる。このとき、電流I1は所定値に設定されているため発振器62の発振周波数が共振周波数よりも十分高くなり、放電灯FLのフィラメントの先行予熱が行われる。
【0054】
また、予熱期間T2において、マイコン61は、制御電圧Vfbを監視しながら、電流指令値VaをVa0から低減させる。なお、本実施形態では、予熱期間T2が本願発明の第1の期間に相当する。また、予熱期間T2における電流指令値Vaが本願発明の第3の操作量に相当し、予熱期間T2における電流指令値Vaは、目標電流値を示すものではなく、制御電圧Vfbをオフセットするためのオフセット値として用いる。
【0055】
そして、制御電圧Vfbが閾値Vthまで低下した時点(時間t2)で電流指令値Vaの低減を停止し、時間t3まで電流指令値VaをVa1(以降、第1の電流指令値Va1と称す)で維持する。すなわち、オペアンプ651が出力する制御電圧Vfbを、電流I2が発生しない閾値Vth(=Vfs−Vf3)まで低下するようにフィードバック制御する。例えば、Vfs=2.5V、Vf3=0.5Vである場合、マイコン61は、制御電圧Vfbが2V(閾値Vth=Vfs−Vf3)となるように第1の電流指令値Va1を生成する。
【0056】
なお、放電灯FLが点灯していないときにおける制御電圧Vfbは、設計的には電流検出値Vsが発生しないため、電流指令値Vaが0V以上であれば飽和電圧Vmax(オペアンプ651の電源電圧)となる。しかし、ランプ配線間やプリント基板間の漏れ電流などによって、電流検出値Vsには、ランプ電流Ila以外のものによる電圧が発生する場合がある。その結果、放電灯FLの不点灯時においても電流検出値Vsには微小な電圧が発生する。特定の照明器具やプリント基板配置条件では、第1の電流指令値Va1の値を固定値としてもよいが、上述したように電流検出値Vsは照明器具の配線状況やプリント基板の配置条件によって変化する。したがって、本実施形態では、第1の電流指令値Va1を固定値とはせず、制御電圧Vfbを監視し、状況に合わせて第1の電流指令値Va1を変動させることで、制御電圧Vfbが閾値Vthに一致するようにフィードバック制御している。
【0057】
次に時間t3〜t4は始動期間T3であり、マイコン61は可変電圧源631が出力する電圧Vc1を制御し、電流I1を徐々に低減させる。それによって、発振器62の発振周波数が低減し、コンデンサCr1とインダクタLr1とからなる共振回路の共振周波数に近づけることで、ランプ電圧Vlaが上昇する。
【0058】
このとき、ランプ電圧Vlaの上昇によって電流検出値Vsも僅かに増加する。これは、ランプ電流Ilaの検出回路に発生する誤差信号(誤差電圧)がランプ電圧Vlaに比例するためである。したがって、始動期間T3において電流指令値Vaを第1の電流指令値Va1で維持していると、電流検出値Vsの増加によって制御電圧Vfbが低下し、閾値Vfb未満となるおそれがある。これを防止するために、本実施形態では、始動期間T3において、マイコン61は、電流I1の低下に応じて電流指令値Vaを第1の電流指令値Va1からVa2(>Va1)まで変動させる。以降、Va2を第2の電流指令値Va2と称す。この第2の電流指令値Va2は、点灯後の目標電流値を示しており、本実施形態では放電灯FLの調光下限を示す目標電流値に設定されている。なお、第2の電流指令値Va2は、予め設定された値を用いてもよいが、第1の電流指令値Va1の値から所定値を加算することで算出してもよい。それによって、電流回路のノイズや寄生容量などによるランプ電流Ilaの誤差を小さくすることができる。
【0059】
また、本実施形態では時間t3〜t4にかけて電流指令値Vaを徐々に変動させることで、制御電圧Vfbの電圧上昇を抑制している。一般的に始動期間T3は、予熱期間T2に比べて時間が短い。例えば、予熱期間T2は600ms程度であるのに対し、始動期間T3は20ms程度に設定される。通常の放電灯FLであれば、始動モード開始(時間t3)から10ms以内に放電灯FLが始動する。そのため、電流指令値Vaを第1の電流指令値Va1から第2の電流指令値Va2に上昇させても、制御電圧Vfbが大きく変動(上昇)する前に始動する。これは、放電灯FLのちらつきを防止するためにフィードバック回路65の応答速度は比較的遅く設定されている。そのため、電流指令値Vaの変動による制御電圧Vfbの上昇が多少あるが、始動直前においても制御電圧Vfbは閾値Vthに近い電圧となる。
【0060】
そして、時間t4において、放電灯FLが始動するとランプ電流Ilaが発生し、電流検出値Vsが急激に増加する。それによって、制御電圧Vfbが低減する。ここで、制御電圧Vfbが閾値Vth(=Vfs−Vf3)未満となるまで期間は、上述したように電流I2が発生しない。すなわち、時間t4〜t5は、ランプ電流Ilaのフィードバック制御を行うことができない応答期間T4となる。なお、時間t4以降が、本願発明の第2の期間に相当する。
【0061】
この応答期間T4中は、電流I0が略0であるので、ランプ電流Ilaが増加し続ける。そして、電流検出値Vsの上昇によって制御電圧Vfbが低減し、時間t5において制御電圧Vfbが閾値Vthを下回って電流I2が発生することによって発振器62の発振周波数が上昇し始めてランプ電流Ilaのフィードバック制御が開始される。その結果、ランプ電流Ilaが減少し始め、ランプ電流Ilaは第2の電流指令値Va2が示す目標電流値に収束する。
【0062】
すなわち、本実施形態において電流指令値Vaは、点灯前は制御電圧Vfbをオフセットして閾値Vthに一致させるためのオフセット値(第3の操作量)として用いる。そして、点灯後は、制御電圧Vfbのオフセット値を0にして、ランプ電流Ilaの目標電流値として用いる。
【0063】
本実施形態では、放電灯FLが始動する前(予熱期間T2)に、予め制御電圧Vfbを飽和電圧Vmaxから低減させ、閾値Vthとなるようにフィードバック制御を行っている。そのため、放電灯FLが始動してから制御電圧Vfbが閾値Vth未満となるまでの期間(応答期間T4)は、従来のように制御電圧Vfbが飽和電圧Vmaxから閾値Vthまで低減するまでの期間(応答期間T104)よりも短くなる。そのため、応答期間4におけるランプ電流Ilaの増加を抑制し、始動直後の閃光を低減することができる。
【0064】
また、従来の放電灯点灯装置1Aでも、フィードバック制御の応答速度を向上させることで、閃光を低減することができたが、応答速度の向上によって放電灯FLにちらつきが発生するおそれがあった。しかし、本実施形態では、閃光を低減するためにフィードバック回路65の応答速度を向上させる必要がないので、放電灯FLのちらつきを抑制することができる。すなわち、本実施形態の放電灯点灯装置1は、閃光低減と調光安定とを両立することができる。
【0065】
また、オペアンプ651が出力する制御電圧Vfbの飽和電圧Vmaxは、オペアンプ651の電源電圧付近となるが、本実施形態では制御電圧Vfbを飽和電圧Vmaxから低減し閾値Vthで放電灯FLを始動させる。そのため、オペアンプ651の電源電圧に依存することなく閃光を低減することができ、オペアンプ651の電源電圧を自由に設定することができるので、回路設計の自由度が高くなる。
【0066】
なお、本実施形態では、予熱期間T2において、電流指令値Vaを制御することで制御電圧Vfbが閾値Vthに一致するように制御しているが、上記に限定するものではない。制御電圧Vfbが飽和電圧Vmax未満かつ閾値Vth以上であれば従来よりも閃光を低減することができ、制御電圧Vfbが閾値Vth(Vfs−Vf3)とVfs+Vf3との間の値であれば、より閃光を低減することができる。
【0067】
(実施形態2)
本実施形態の放電灯点灯装置1の回路構成図を図3に示す。なお、実施形態1の放電灯点灯装置1と同一構成には、同一符号を付して説明は省略する。
【0068】
本実施形態の放電灯点灯装置1は、放電灯検出部7(点灯検知回路)を備えており、放電灯FLの装着有無および、点灯・消灯を検出する。放電灯検出部7は、抵抗Rk1,Rk2,Rk3とコンデンサCk1とで構成されている。抵抗Rk1は、一端が力率改善回路3の出力端に接続され、他端が放電灯FLの一方のフィラメントを介して抵抗Rk2の一端に接続され、抵抗Rk2の他端は抵抗Rk3を介してグランドに接続されている。すなわち、力率改善回路3の出力端間に抵抗Rk1→放電灯FLのフィラメント→抵抗Rk2→抵抗Rk3の順に接続された直流電流経路を構成している。また、抵抗Rk3と並列にコンデンサCk1が接続されている。そして、抵抗Rk3の両端電圧をコンデンサCk1で平滑した放電灯検出電圧Vflがマイコン61に出力される。
【0069】
放電灯FLが接続されていない場合、直流電流経路が遮断されるので、放電灯検出電Vflの電圧レベルはL(0)となる。また、放電灯FLが接続され、かつ消灯状態である場合、力率改善回路3から直流電流経路に電流が流れ、放電灯検出電圧Vflの電圧レベルがH(所定値)となる。また、抵抗Rk2,Rk3は放電灯FLと並列に接続されているため、放電灯FLが消灯状態から点灯状態に切り替わると、放電灯検出電圧Vflが低減しL(0)となる。マイコン61は、放電灯検出電圧Vflの電圧レベルを検知することで、放電灯FLの装着有無および、点灯・消灯を検出する。
【0070】
また、本実施形態の制御回路6は、平滑部68(LPF68)を備えている。実施形態1の放電灯点灯装置1は、予熱期間T2において、オペアンプ651の非反転入力端子に印加する電流指令値Vaを制御することで、オペアンプ651が出力する制御電圧Vfbを閾値Vthに一致させていた。しかし、本実施形態では、オペアンプ651の反転入力端子に補正値Vhを出力することで、オペアンプ651が出力する制御電圧Vfbを閾値Vthに一致させる制御を行う。平滑部68は、マイコン61から出力される補正値Vhを平滑してオペアンプ651の反転入力端子に出力する。したがって、オペアンプ651の反転入力端子には、電流検出値Vsと補正値Vhとを加算した電圧が印加される。なお、補正値Vhは、出力レベルを急速に変動させる必要があるため、時定数は500μs以下であるのが望ましい。
【0071】
次に、図4(a)〜(g)を用いて、本実施形態の放電灯点灯装置1の点灯動作について説明する。
【0072】
時間t0から時間t11は、消灯期間T11であり、調光信号生成部66からマイコン61に消灯を示す調光信号が入力されており、マイコン61は発振器62に出力する制御信号SenをHにすることで発振器62の動作を停止している。また、マイコン61は、この消灯期間T11中において、前回の状態を読み出すなどの初期プログラムを実行し、回路の異常などを確認する動作を行う。さらに、マイコン61は、第1の電流制御部63の可変電圧源631に出力する制御信号Svcを制御して電流I1を所定値まで増加させる。また、マイコン61は、オペアンプ651の反転入力端子に印加する補正値Vhを略0に設定し、オペアンプ651の非反転入力端子に印加する電流指令値Vaを点灯後の目標電流値(調光下限)を示す第2の電流指令値Va2に設定している。そのため、消灯期間T11における制御電圧Vfbは飽和電圧Vmaxとなっている。また、放電灯FLが装着され、かつ消灯しているため、放電灯検出電圧Vflの電圧レベルはHとなっている。
【0073】
次に、時間t11〜t13は、予熱期間T12であり、調光信号生成部66からマイコン61に点灯を示す調光信号が出力され、マイコン61は発振器62に出力する制御信号SenをHからLに変動し、発振器62の発振動作を開始させる。そして、マイコン61は、制御電圧Vfbが閾値Vthに近付くように、補正値Vhを徐々に増加さる。そして、制御電圧Vfbが閾値Vthに到達した時点(時間t12)で、補正値Vhの増加を停止し、時間t13までは制御電圧Vfbを閾値Vthで維持する。
【0074】
予熱期間T12において、オペアンプ651が出力する制御電圧Vfbは閾値Vth以上を維持しているため、電流I2は0となり、第1の電流制御部63に流れる電流I1のみで発振器62の発振周波数を制御する。したがって、予熱期間T12において、電流I1は所定値に設定されているため発振器62の発振周波数が共振周波数よりも十分高くなり、放電灯FLのフィラメントの先行予熱が行われる。
【0075】
次に、時間t13〜t14は始動期間T13であり、電流I1を徐々に低減することで、発振器62の発振周波数を低減させ、コンデンサCr1とインダクタLr1とからなる共振回路の共振周波数に近づけることで、ランプ電圧Vlaが上昇する。ここで、マイコン61は、ランプ電圧Vlaの上昇により電流検出値Vsが上昇するので、制御電圧Vfbを閾値Vthに一致させるために、電流検出値Vsの上昇に合わせて補正値Vhを低減するフィードバック制御を行う。
【0076】
なお、予熱期間T12,始動期間T13における電流指令値Vaおよび補正値Vhが本願発明の第3の操作量に相当し、制御電圧Vfbを閾値Vthに一致させるためのオフセット値を示す。そして、本実施形態では、電流指令値Vaを一定値(第2の電流指令値Va2)とし、補正値Vhのみを変動させることで、制御電圧Vfbを閾値Vthに一致させている。
【0077】
そして、時間t14において、放電灯FLが始動すると、放電灯検出電圧Vflの電圧レベルがHからLに切り替わる。そして、マイコン61は、放電灯検出電圧Vflの電圧レベルがLに切り替わったのを検出すると補正値Vhを直ちに0にする。また、放電灯FLの始動によって、ランプ電流Ilaが発生し、電流検出値Vsが上昇する。しかし、オペアンプ651が出力する制御電圧Vfbは、放電灯FLの始動直前まで閾値Vthに維持しているため、放電灯FLが始動して間もなく制御電圧Vfbが閾値Vth未満となる。そして、時間t15にランプ電流Ilaが収束し、目標電流値と一致するようにフィードバック制御が行われる。なお、時間t14以降が本願発明の第2の期間に相当する。
【0078】
すなわち、本実施形態では、予熱期間T12,始動期間T13において、電流指令値Vaおよび補正値Vhを制御しし、制御電圧Vfbをオフセットすることで閾値Vthと一致するようにフィードバック制御を行う。そして、点灯後は補正値Vhを0とすることで制御電圧Vfbのオフセットを解除し、ランプ電流Ilaが目標電流値と一致するようにフィードバック制御を行う。
【0079】
このように、本実施形態では、放電灯FLの始動直前まで閾値Vthに維持しているため、放電灯FLが始動してから制御電圧Vfbが閾値Vth以上である期間(応答期間)を極力短くすることができるので、始動直後の閃光をより低減することができる。
【0080】
また、本実施形態では、放電灯検出部7を備え、放電灯FLが始動した直後に補正値Vhを0にすることで、制御電圧Vfbのオフセットを解除しているので、始動直前まで精度よく制御電圧Vfbを閾値Vthに保つことができる。
【0081】
なお、放電灯検出回路7は、上記構成に限定するものではない。例えば、放電灯FLが2灯である場合、各放電灯FLに供給する電力(ランプ電流Ila)が一致するようにバランサ回路(分流回路)を用いる。この場合、放電灯検出回路7は、放電灯FLの各々に流れるランプ電流Ilaの差分、すなわちバランサ回路の差電圧に基づいて放電灯FLの点灯・消灯を検出する。例えば、バランサ回路の差電圧が所定範囲内となったときに放電灯FLが点灯状態であると判断する。
【0082】
(実施形態3)
本実施形態の放電灯点灯装置1は、実施形態1の放電灯点灯装置1と同一構成であるので、構成についての説明は省略する。
【0083】
実施形態1で説明したように、予熱期間T2において、マイコン61制御電圧Vfbが閾値Vthと一致するように電流指令値Vaを第1の電流指令値Va1に変動させる。そして、始動期間T3において、電流指令値Vaを第1の電流指令値Va1から点灯時の目標電流値を示す第2の電流指令値Va2に変動させる。本実施形態では、マイコン61は第1の電流指令値Va1に基づいて、第2の電流指令値Va2の補正を行う。なお、マイコン61が本願発明の補正部に相当する。
【0084】
マイコン61は、図5に示す第1の電流指令値Va1に対する第2の電流指令値Va2を決定するためのデータを格納している。図5に示すように、第1の電流指令値Va1と第2の電流指令値Va2は略比例関係であり、第1の電流指令値Va1がVa1a以下の領域では、第2の電流指令値Va2をVa2aに設定する。第1の電流指令値Va1がVa1aを上回ると第1の電流指令値Va1に比例して第2の電流指令値Va2も増加する。そして、第1の電流指令値Va1がVa1b(>Va1a)では第2の電流指令値Va2をVa2b(>Va2a)に設定する。また、第1の電流指令値Va1がVa1c(>Va1b)では第2の電流指令値Va2をVa2c(>Va2b)に設定する。また、第1の電流指令値Va1がVa1d(>Va1c)では第2の電流指令値Va2をVa2d(>Va2c)に設定する。
【0085】
このように、本実施形態では、予熱期間T2において制御電圧Vfbが閾値Vthと一致させたときの第1の電流指令値Va1に基づいて、第2の電流指令値Va2を決定する。
【0086】
制御電圧Vfbは、電流指令値Vaと電流検出値Vsとの差分で決定される値であり、制御電圧Vfbを閾値Vthに一致させた時の第1の電流指令値Va1から、配線状況や漏れ電流などによる電流検出値Vsの誤差を検出することができる。そして、第1の電流指令値Va1に基づいて第2の電流指令値Va2を決定することで、器具の配線状況などを考慮した目標電流値を示す第2の電流指令値Va2を設定することができる。すなわち、放電灯FLの点灯時において、電流検出値Vsの誤差による制御電圧Vfbの誤差を低減することができる。そのため、目標電流値に対するランプ電流Ilaの精度を向上させることができ、特に放電灯FLの調光下限を安定して実現することができる。
【0087】
また、放電灯点灯装置1が正常である場合、第1の電流指令値Va1はVa1b〜Va1cの間の値となる。しかし、放電灯FLに電力を供給するためのランプ線の絶縁が寿命などによって劣化した場合、ランプ線からの漏れ電流が増加することがある。この場合、電流検出値Vsに増加方向の誤差が発生する。そのため、制御電圧Vfbを閾値Vthに一致させるフィードバック制御を行うため、電流検出値Vsの増加に伴って第1の電流指令値Va1が高くなる。そして、マイコン61は、第1の電流指令値Va1がVa1d以上である場合、器具の異常状態であると判断し、発振器62の動作を停止する。このように、本実施形態では、器具の寿命などを検知することができ、放電灯点灯装置1の安全性を向上させることができる。
【0088】
(実施形態4)
本実施形態の放電灯点灯装置1は、実施形態1または2の放電灯点灯装置1と同一構成であるので、構成についての説明は省略する。
【0089】
放電灯FLは、一般的に低温状態では放電が不安定となり、特に放電灯FLの調光レベルが低い場合にちらついたり立ち消えするおそれがある。ランプ電流Ilaを一定に制御するために、図6に示すように、ランプ放電電圧の変動に応じてオペアンプ651が出力する制御電圧Vfbが大きく変動するおそれがある。
【0090】
そこで、本実施形態では、マイコン61が放電灯FLの点灯中における制御電圧Vfbの変動を監視し、その変動量が所定の値以上となった場合に、調光レベル(第2の電流指令値Va2)を増加させる。なお、マイコン61が本願発明の目標補正部に相当する。
【0091】
マイコン61は、放電灯FLの点灯時(第2の期間)において制御電圧Vfbを周期的に検出しており、時間taにおける制御電圧VfbがVpk1、直後の時間tbにおける制御電圧VfbがVpk2とする。そして、マイコン61は、Vpk1とVpk2との差分が所定値以上である場合、放電灯FLがちらついている状態であると判断し、第2の電流指令値Va2を増加、すなわち目標電流値を増加することで放電灯FLの調光レベルを増加させる制御を行う。それによって、放電灯FLの放電を安定させ、ちらつきを低減することができる。
【0092】
なお、制御電圧Vfbを検出するサンプリング周波数(時間ta,tbの間隔)は、放電灯FLのちらつきを感じやすい1Hz〜30Hzの周期内で発生するのを複数回検知すればよい。なお、サンプリング周波数は数kHz程度でも放電灯FLのちらつきを検出することができる。
【0093】
このように、本実施形態の放電灯点灯装置1は、始動時の閃光を低減させると共に、調光時の不快なちらつきを防止することができる。
【0094】
(実施形態5)
図7は、実施形態1〜4のうちいずれかの放電灯点灯装置1を備えた照明装置10の外観斜視図である。照明装置10は、放電灯点灯装置1と、放電灯FLと、放電灯点灯装置1を収納し、放電灯FLが取り付けられる器具本体11とで構成されている。器具本体11は下面に2つのソケット12を備えており、ソケット12は、器具本体11の下面に放電灯FLを固定すると共に、放電灯FLと放電灯点灯装置1とを電気的に接続する。
【0095】
本実施形態の照明装置10においても、実施形態1〜4のうちいずれかの放電灯点灯装置1を備えているため、上述してように始動時の閃光を低減すると共に、調光時のちらつきを抑制することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 放電灯点灯装置
2 整流器
3 力率改善回路
4 インバータ回路
5 予熱回路
6 制御回路
61 マイコン(発振制御部)
62 発振器(発振回路)
63 第1の電流制御部(第1の制御量生成部)
64 第2の電流制御部
65 フィードバック回路
66 調光信号生成部
FL 放電灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を具備し、当該スイッチング素子がスイッチング制御されることで直流電圧を高周波電圧に変換し、当該高周波電圧を放電灯に供給するインバータ回路と、
第1の制御量と第2の制御量との和で決定される発振制御量に応じて前記スイッチング素子のオン時間および発振周波数のうち少なくとも一方を決定し、前記スイッチング素子のスイッチング制御を行う発振回路と、
第1の操作量に応じた前記第1の制御量を生成する第1の制御量生成部と、
上限値を有し、第3の操作量に応じた第2の操作量を生成しており、当該第2の操作量の大きさが閾値に対して一方側にある場合、前記第2の制御量を0とし、前記第2の操作量の大きさが前記閾値に対して他方側にある場合、前記インバータ回路の出力電流と目標電流値との差分に応じた前記第2の制御量を生成する第2の制御量生成部と、
前記第1の操作量を生成することで前記第1の制御量を制御し、前記第3の操作量を生成することで前記第2の操作量を制御する発振制御部とを備え、
前記発振制御部は、前記放電灯の点灯前の第1の期間において、前記第1の制御量が0より大きくなるように前記第1の操作量を生成すると共に、前記第2の操作量の大きさが前記閾値に対して一方側かつ前記上限値未満となるように前記第3の操作量を生成し、
前記放電灯の点灯後の第2の期間において、前記第1の制御量が0となるように前記第1の操作量を生成すると共に、前記第2の操作量の大きさが前記閾値に対して他方側となるように前記第3の操作量を生成することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記発振制御量は、定電圧源からの出力電流であり、
前記第2の制御量生成部は、前記第2の操作量を生成することで前記定電圧源からダイオードを介して流れる電流を生成しており、
前記閾値は、前記定電圧源の出力電圧から前記ダイオードの順方向電圧を減算した値であり、
前記第1の期間において、前記発振制御部は、前記第2の操作量の大きさが、前記閾値と前記定電圧源の出力電圧に前記順方向電圧を加算した値との間になるように前記第3の操作量を生成することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記第1の期間は、前記放電灯の予熱期間を含むことを特徴とする請求項1または2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記インバータ回路の出力電流の検出結果の誤差による前記第2の操作量の誤差が低減するように前記第2の操作量を補正する補正部を備え、
前記第1の期間において、前記発振制御部は、前記第2の操作量の大きさが前記閾値に対して一方側かつ前記上限値未満の所定値となるように前記第3の操作量を生成しており、
前記第2の期間において、前記補正部は、前記第1の期間における前記第3の操作量の大きさに基づいて前記第2の操作量を補正することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記目標電流値を補正する目標補正部を備え、
前記目標補正部は、前記第2の期間における前記第2の操作量を検出し、当該第2の操作量の変化量に基づいて、前記目標電流値を補正することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記放電灯の消灯・点灯を検知する点灯検知回路を備え、
前記発振制御部は、前記点灯検知回路が前記放電灯の消灯から点灯への移行を検知すると、前記第3の操作量を0にすることで、前記第2の操作量の大きさを前記閾値に対する他方側に調整することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
複数の前記放電灯に電力を供給する分流回路を備え、
前記点灯検知回路は、前記放電灯の各々に流れる電流の差分に基づいて前記放電灯の点灯を検知することを特徴とする請求項6記載の放電灯点灯装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の放電灯点灯装置と、
前記放電灯点灯装置によって点灯される放電灯と、
前記放電灯点灯装置を収納し、前記放電灯が取り付けられる器具本体とを備えることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−45652(P2013−45652A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183027(P2011−183027)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】