説明

放電灯点灯装置及びそれを用いた灯具並びに車両

【課題】スイッチング周波数の過度な上昇を抑えつつ、大型化やコストアップを抑えた放電灯点灯装置及びそれを用いた灯具並びに車両を提供する。
【解決手段】放電灯点灯装置Aは、電力変換回路2と、ゼロ電流検出回路を構成するコンパレータ42と、タイマ回路を構成する単安定マルチバイブレータ44とを備える。単安定マルチバイブレータ44は、コンパレータ42の検出信号が入力されてから所定の遅延時間が経過すると電力変換回路2のスイッチング素子22をオンにするためのオン信号を出力し、また上記遅延時間が経過するまでは次の検出信号の入力を無効としている。また上記遅延時間は、少なくともスイッチング素子22のスイッチング状態又は電力変換回路2の入出力状態の何れか一方に応じて変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置及びそれを用いた灯具並びに車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、放電灯を点灯させるために用いられる放電灯点灯装置が提供されている(例えば特許文献1参照)。この放電灯点灯装置は、直流電源から供給される電力を放電灯が必要とする直流電力に変換するDC−DC変換回路と、DC−DC変換回路の出力を低周波の交番電力に変換して放電灯に供給するインバータ回路と、放電灯の点灯開始時にインバータ回路の出力電圧を受けて放電灯を起動するための高電圧パルスを発生させる始動回路とを備える。DC−DC変換回路はフライバック方式のコンバータからなり、DC−DC変換回路を構成するトランスの1次巻線に直列接続されたスイッチング素子を駆動するPWM信号を調整することで放電灯に供給する電力を調整する。
【0003】
具体的に説明すると、この放電灯点灯装置では、DC−DC変換回路の出力電圧を検出することによって等価的にランプ電圧を検出し、検出した出力電圧と供給すべき電力指令値から指令電流値を算出する。またこの放電灯点灯装置では、DC−DC変換回路の出力電流を検出することによって等価的にランプ電流を検出し、検出した出力電流を上記指令電流値と比較、演算して得られた信号を、PWM信号としてスイッチング素子に出力する。そして、上記PWM信号によりスイッチング素子のオン時間や周波数を調整することで、放電灯に供給する電力を調整する。
【0004】
ところで、フライバック方式のコンバータやチョッパ回路などで構成されたDC−DC変換回路では、インダクタ素子に蓄積させたエネルギーをスイッチング素子のオフ時に電流として2次側に放出し終わった時点でスイッチング素子を再度オンにしてインダクタ素子に再びエネルギーを蓄積させる、所謂電流境界モードで動作させるのが回路効率の面で有効である。しかしながら、電流境界モードではスイッチング周波数が変動してしまうため、例えばHIDランプのようにランプ電圧が大きく変動する負荷が接続されている場合や電源電圧が幅広く変動する場合には、スイッチング周波数の変動範囲が広くなる。また、スイッチング動作に伴うノイズの周波数の変動範囲も広くなるため、ノイズ抑制用のフィルタも広範囲のノイズ抑制特性が必要となり、その結果、フィルタ回路の大型化やコストアップにつながるものであった。
【0005】
またこの放電灯点灯装置では、スイッチング素子のスイッチング動作におけるオフ時間に対して最小オフ時間を設定しており、特に出力電圧が高く、スイッチング素子のオフ時に2次側へと電流が流れ出す時間が短くなった場合には、2次側への電流がゼロになってもオフ時間が最小オフ時間を経過するまではスイッチング素子を再度オンにしないことでインダクタ素子に流れる電流がゼロの期間を設け、所謂電流不連続モードで動作させる。本動作によって、スイッチング周波数が過度に上昇するのを抑制することができる。
【0006】
また、スイッチング素子のオン信号として、インダクタ要素の2次巻線に発生する電圧信号を利用した放電灯点灯装置も提供されている(例えば特許文献2参照)。この放電灯点灯装置では、上述の特許文献1に示した放電灯点灯装置と同様に、スイッチング動作におけるオフ時間に対して最小オフ時間を設定しており、この最小オフ時間が経過するまではスイッチング素子のオフ状態が継続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−340385号公報
【特許文献2】特表平10−511220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述の特許文献1に示した放電灯点灯装置では、バッテリなどのように電源電圧が大幅に変動する場合、想定される最小出力電圧、最大出力電圧において電源電圧が高い条件で所定のスイッチング周波数を超えないように最小オフ時間を設定すると、電源電圧が低い場合には元々オン時間が長く、スイッチング周波数が低い状態で電流不連続モードを行うことになるため、スイッチング周波数がさらに低くなる。また電流不連続モードでは、インダクタ素子やスイッチング素子、電源の利用率が低く、スイッチング素子の1回のオン期間においてインダクタ素子に流す電流ピークを大きくする必要があるため、スイッチング素子のオン抵抗による損失や、インダクタ素子及びスイッチング素子の大型化を招くものであった。
【0009】
また、上述の特許文献2に示した放電灯点灯装置では、最小オフ時間があまりに長くなると、インダクタ要素の2次巻線に発生する電圧信号をオン信号として検出できない場合があった。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、スイッチング周波数の過度な上昇を抑えつつ、大型化やコストアップを抑えた放電灯点灯装置及びそれを用いた灯具並びに車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の放電灯点灯装置は、少なくともスイッチング素子、インダクタ素子及び整流素子を有し、スイッチング素子がオンのときに電源から供給されるエネルギーをインダクタ素子に蓄積し、インダクタ素子に蓄積させたエネルギーをスイッチング素子がオフのときに放電灯を含む負荷側に出力する電力変換回路と、スイッチング素子のオフ期間においてインダクタ素子に流れる電流がゼロになったことを直接的又は間接的に検出するゼロ電流検出回路と、ゼロ電流検出回路の検出信号が入力されてから所定の遅延時間が経過すると、スイッチング素子をオンにするためのオン信号を出力するタイマ回路とを備え、タイマ回路は、ゼロ電流検出回路の検出信号が入力されてから遅延時間が経過するまでは次の検出信号の入力を無効とするマスク機能を有し、遅延時間は、少なくともスイッチング素子のスイッチング状態又は電力変換回路の入出力状態の何れか一方に応じて変更されることを特徴とする。
【0012】
本発明の放電灯点灯装置は、少なくともスイッチング素子、インダクタ素子及び整流素子を有し、スイッチング素子がオンのときに電源から供給されるエネルギーをインダクタ素子に蓄積し、インダクタ素子に蓄積させたエネルギーをスイッチング素子がオフのときに放電灯を含む負荷側に出力する電力変換回路と、スイッチング素子のオフ期間においてインダクタ素子に流れる電流がゼロになったことを直接的又は間接的に検出するゼロ電流検出回路と、ゼロ電流検出回路の検出信号を一時的に保持し、検出信号を保持している間は検出信号を出力し続ける信号保持回路と、信号保持回路の出力信号を受けてスイッチング素子をオンにするPWM信号を出力するPWM信号発生回路と、スイッチング素子がオンからオフに切り替わったときに所定の最小オフ時間が経過するまでは信号保持回路の出力信号がPWM信号発生回路に入力されないように動作するマスク回路とを備え、最小オフ時間は、少なくともスイッチング素子のスイッチング状態又は電力変換回路の入出力状態の何れか一方に応じて変更されることを特徴とする。
【0013】
この放電灯点灯装置において、スイッチング素子のスイッチング状態に応じたインダクタ素子の電圧と、電力変換回路の出力電力又は電力指令値に基づいて、遅延時間又は最小オフ時間を調整する調整回路を備えるのが好ましい。
【0014】
また、この放電灯点灯装置において、インダクタ素子は巻数比nのトランス構造であり、スイッチング素子がオンのときに形成される閉回路においてインダクタ素子に印加される電圧をV1、このときのインダクタ素子のインダクタンス値をL1とし、スイッチング素子がオフのときに形成される閉回路に電流が流れているときにインダクタ素子に生じる電圧をV2、電力変換回路の出力電力又は電力指令値をP、所定の係数をα、遅延時間をT1、スイッチング素子のスイッチング周期の下限値をT2とすると、
【0015】
【数1】

で示す式に従って、スイッチング素子のスイッチング周期の下限値が調整されるのも好ましい。
【0016】
さらに、この放電灯点灯装置において、インダクタ素子は巻数比nのトランス構造であり、スイッチング素子がオンのときに形成される閉回路においてインダクタ素子に印加される電圧をV1、このときのインダクタ素子のインダクタンス値をL1とし、スイッチング素子がオフのときに形成される閉回路に電流が流れているときにインダクタ素子に生じる電圧をV2、電力変換回路の出力電力又は電力指令値をP、所定の係数をα、最小オフ時間をT3、スイッチング素子のスイッチング周期の下限値をT4とすると、
【0017】
【数2】

で示す式に従って、スイッチング素子のスイッチング周期の下限値が調整されるのも好ましい。
【0018】
また、この放電灯点灯装置において、電力変換回路はフライバックコンバータ又は昇降圧チョッパ回路からなり、係数α=1であるのも好ましい。
【0019】
さらに、この放電灯点灯装置において、電力変換回路は昇圧チョッパ回路からなり、係数α=V2/(V1+V2)で調整されるのも好ましい。
【0020】
また、この放電灯点灯装置において、電力変換回路は降圧チョッパ回路からなり、係数α=V1/(V1+V2)で調整されるのも好ましい。
【0021】
さらに、この放電灯点灯装置において、電力変換回路の入力電圧及び出力電圧を用いて演算することによって、スイッチング素子がオンのときにインダクタ素子に印加される電圧及びスイッチング素子がオフのときにインダクタ素子に生じる電圧を等価的に求めるのも好ましい。
【0022】
また、この放電灯点灯装置において、スイッチング素子のスイッチング周期を計測する計測手段を備え、計測手段の計測結果が所定の最小周期以下とならないように遅延時間又は最小オフ時間が調整されるのも好ましい。
【0023】
本発明の灯具は、上記の放電灯点灯装置が搭載されていることを特徴とする。
【0024】
本発明の車両は、上記の放電灯点灯装置が搭載されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
スイッチング周波数の過度な上昇を抑えつつ、大型化やコストアップを抑えた放電灯点灯装置、灯具及び車両を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態1の放電灯点灯装置を示す概略回路図である。
【図2】(a)〜(c)は同上に用いられる電力変換回路の他の例を示す概略回路図である。
【図3】実施形態2の放電灯点灯装置を示す概略回路図である。
【図4】実施形態3の灯具の断面図である。
【図5】実施形態4の車両の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、放電灯点灯装置、灯具及び車両の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
(実施形態1)
図1は実施形態1の放電灯点灯装置Aを示す概略回路図であり、この放電灯点灯装置Aは、電力変換回路2と、インバータ回路3と、信号発生回路4と、始動回路5と、フィードバック制御回路6と、調整回路7とを主要な構成として備える。
【0029】
電力変換回路2は、トランス(インダクタ素子)21、スイッチング素子22、整流ダイオード(整流素子)23及びコンデンサ24で構成されたフライバック方式のコンバータからなり、直流電源1からの入力電圧Viを、放電灯10が安定点灯するために必要な出力電圧Voに変換し、後段のインバータ回路3に出力する。
【0030】
インバータ回路3は、4個のスイッチング素子Q1〜Q4で構成されたフルブリッジ型のインバータ回路であり、低周波駆動信号発生回路8及びドライブ回路9を介して出力される駆動信号により各スイッチング素子Q1〜Q4をオン/オフすることで、数百Hzの矩形波交番電圧を出力する。
【0031】
始動回路5は、パルス駆動回路51及びパルストランス52で構成され、放電灯10の点灯開始時にインバータ回路3の出力電圧を受けて放電灯10を起動するための高電圧パルスを発生させる。
【0032】
フィードバック制御回路6は、指令電流発生回路61、誤差演算器62及び誤差増幅器63で構成される。指令電流発生回路61には、電力変換回路2の出力電圧Voが入力されるとともに外部から電力指令値が入力され、これらの値から指令電流値を算出する。誤差演算器62には、指令電流発生回路61から指令電流値が入力されるとともに、電力変換回路2の出力電流が入力され、これらの値から誤差を算出する。誤差演算器62で算出された誤差は誤差増幅器63で増幅され、PWM指令信号として信号発生回路4に入力される。なお、フィードバック値としては放電灯10のランプ電圧、ランプ電流を検出するのが好ましいが、本実施形態では電力変換回路2の出力電圧、出力電流を、放電灯10のランプ電圧、ランプ電流に略等しいものとして検出している。
【0033】
信号発生回路4は、微分回路48、コンパレータ41,42、単安定マルチバイブレータ44,45、RSフリップフロップ43及び遅延回路46,47を主要な構成として備える。微分回路48及びコンパレータ42はトランス21の2次巻線に流れる電流がゼロになったことを検出するためのゼロ電流検出回路を構成し、微分回路48にはスイッチング素子22の素子電圧が入力され、この素子電圧の低下を検出することで上記2次巻線の電流がゼロになったことを検出できるようになっている。そして、上記2次巻線の電流がゼロになったことを検出すると、コンパレータ42からはHi信号が出力され、AND回路を介して単安定マルチバイブレータ44に入力される。つまり本実施形態では、トランス21の2次巻線に流れる電流を間接的に検出している。
【0034】
単安定マルチバイブレータ44は、コンパレータ42からHi信号が入力されると所定の遅延時間T1の間Hi信号を出力した後、Lo信号を出力する。この単安定マルチバイブレータ44の出力信号は、NOT回路を介して単安定マルチバイブレータ45に入力されるとともに、上記AND回路に入力される。単安定マルチバイブレータ45では、単安定マルチバイブレータ44からの出力信号がHiからLoに変化すると所定の最小オン時間T5の間Hi信号を出力した後、Lo信号を出力する。ここに本実施形態では、単安定マルチバイブレータ44,45、AND回路及びNOT回路によりタイマ回路が構成されており、単安定マルチバイブレータ44,45の何れかがHi信号を出力している間はコンパレータ42の信号入力を無効とするマスク機能を有している。
【0035】
単安定マルチバイブレータ45の出力信号はOR回路を介してRSフリップフロップ43のセット端子Sに入力され、RSフリップフロップ43のトリガ信号として作用し、このトリガ信号がLoからHiに立ち上がるとRSフリップフロップ43の出力信号はHiになる。また、単安定マルチバイブレータ45の出力信号と、RSフリップフロップ43の出力信号とがOR回路を介して合成され、遅延回路46,47に入力されるとともに、スイッチング素子22をオン/オフさせる駆動信号として作用する。ここにおいて、単安定マルチバイブレータ45の出力信号がHiである間、つまり上記最小オン時間T5の間はスイッチング素子22のオン状態が継続するため、スイッチング素子22のオン直後のノイズなどによってスイッチング素子22がオフしてしまうのを防止することができる。
【0036】
遅延回路47には単安定マルチバイブレータ45とRSフリップフロップ43の合成信号が入力されるが、この合成出力がLoからHiに変化したときには出力信号が即座にLoからHiに変化するように構成され、このときコンパレータ42の検出信号が単安定マルチバイブレータ44に入力されないようにマスクする。また遅延回路47は、上記OR回路を介して入力される信号がHiからLoに変化すると、所定の最小オフ時間T3が経過するまではHi信号を出力し、最小オフ時間T3が経過するとLo信号を出力してAND回路をアクティブにする。つまり、最小オフ時間T3が経過するまではコンパレータ42の出力信号は単安定マルチバイブレータ44には入力されず、最小オフ時間T3が経過すると上記出力信号が単安定マルチバイブレータ44に入力される。これは、スイッチング素子22のオフ直後にスイッチング素子22の両端に生じるサージ電圧による電圧変化をコンパレータ42が誤検出し、オフ直後にオン信号が出力されるのを防止するためである。そのため、最小オフ時間T3は、少なくともスイッチング素子22に生じるサージ電圧によるリンギング期間よりも長く設定する必要がある。
【0037】
遅延回路46には単安定マルチバイブレータ45とRSフリップフロップ43の合成信号が入力されるが、この合成信号がHiからLoに変化すると、所定の最大オフ時間T6が経過するまではHi信号を出力し、最大オフ時間T6が経過するとLo信号を出力し、RSフリップフロップ43のセット端子SにHi信号を出力する。これは、トランス21の2次巻線に流れる電流がゼロにならなくても強制的にオン信号を出力して、スイッチング周波数が過度に低下するのを防止するためである。
【0038】
RSフリップフロップ43のリセット端子Rにはコンパレータ41が接続されており、スイッチング素子22がオンしたことにより増加するトランス21の1次巻線に流れる電流が、フィードバック制御回路6からのPWM指令信号レベルに達したときにコンパレータ41からリセット信号が出力され、RSフリップフロップがリセットされる。その結果、スイッチング素子22へのHi信号がLo信号に変化し、スイッチング素子22がオフになる。つまり、スイッチング素子22のオン時間は、フィードバック制御回路6のPWM指令信号のオン幅を変更することで調整される。
【0039】
調整回路7は、単安定マルチバイブレータ44における遅延時間T1を調整するための回路であり、電力変換回路2の入力電圧Vi、出力電圧Vo及び外部からの電力指令値に基づいて遅延時間T1を決定する。なお、詳細については後述する。
【0040】
次に、電力変換回路2の動作について簡単に説明する。スイッチング素子22がオンになると、直流電源1から供給される電力エネルギーがトランス21の1次巻線に蓄積される。その後スイッチング素子22がオフになると、トランス21の1次巻線に蓄積された電力エネルギーが2次巻線を介してインバータ回路3側に出力され、すべての電力エネルギーが出力された時点では2次巻線に流れる電流がゼロになる。
【0041】
ところで、電力変換回路2のスイッチング素子22をオフからオンに切り替えるタイミングは、通常回路効率のよい電流境界モードで行われる。つまり、スイッチング素子22がオフした後はトランス21の2次巻線からインバータ回路3側に電流が流れるが、この電流がゼロになったことを直接的又は間接的に検出して、スイッチング素子22をオンに切り替えるのである。例えば本実施形態では、微分回路48及びコンパレータ42で構成されたゼロ電流検出回路によりスイッチング素子22の両端電圧を検出しており、スイッチング素子22がオフになるとスイッチング素子22にはVi+Vo/N(Nはトランス21の巻数比)なる電圧が印加される。そして、トランス21に蓄積されたエネルギーがすべて放出され、トランス21の2次巻線に流れる電流がゼロになると、スイッチング素子22の両端電圧はVi+Vo/Nより低下する。したがって、スイッチング素子22の両端電圧が低下したことを微分回路48及びコンパレータ42により検出することで、トランス21の2次巻線に流れる電流がゼロになったことを間接的に検出することができる。
【0042】
ここで、例えば電源電圧Viが高い場合、負荷電圧が高い場合、出力電力が小さい場合、或いはこれらが複合的に生じた場合には、電流境界モードで動作させるとスイッチング周波数が高くなる条件では、スイッチング損失が増加したり、ノイズ抑制能力が低下したり、通信系に影響を及ぼすなどの悪影響が考えられるため、スイッチング周波数の上限を制限するのが好ましく、したがって本実施形態では、単安定マルチバイブレータ44における遅延時間T1を調整することで電流不連続モードへの切り替えを行っている。
【0043】
例えば、回路効率のよい電流境界モードで動作させたい場合には、単安定マルチバイブレータ45のトリガ信号として有効な最小信号幅まで遅延時間T1を小さくする。この場合、トランス21の2次側に設けられた整流ダイオード23の逆回復時間があるため、わずかな遅延時間T1では電流境界モードでの動作が実現できる。このように、単安定マルチバイブレータ44における遅延時間T1を調整すれば、電流境界モードから電流不連続モードへの切り替えを連続的に行うことができる。
【0044】
なお、上述のようにスイッチング素子22の両端電圧の変化からトランス21の2次電流がゼロになったことを検出する場合、遅延時間T1をあまり長くすると電圧変化が小さくなって2次電流がゼロになったことを検出できなくなる可能性があるが、本実施形態ではコンパレータ42の検出信号を単安定マルチバイブレータ44において遅延させる構成であるため、遅延時間T1を大きくしてもスイッチング素子22をオンするためのオントリガ信号を確実に出力することができる。
【0045】
ここで、スイッチング周波数が高くなる条件で遅延時間T1を調整して電流不連続モードに移行させる場合、例えばスイッチング素子22のスイッチング周波数を計測手段(図示せず)により計測し、このスイッチング周期と、予め設定された最小周期との誤差量から遅延時間T1の調整量を決定するのが好ましい。この場合、スイッチング素子22のスイッチング周波数を直接計測することで遅延時間T1を正確に設定することができ、その結果、スイッチング素子22のスイッチング周波数が過度に上昇するのを確実に抑えることができる。またより好ましくは、電力変換回路2への入力電圧や入力電流、或いは電力変換回路2からの出力電圧や出力電流などの入出力条件により遅延時間T1を調整すればよく、この場合、フィードバックループを多重化しなくてもよく、出力安定性を確保する上でも好ましい。
【0046】
次に、電流不連続モードで動作させる際の単安定マルチバイブレータ44における遅延時間T1を求める。トランス21の1次巻線のインダクタンス値をL1、スイッチング素子22がオンのときに1次巻線に印加される電圧をV1、スイッチング素子22のオン時間をTonとすると、1次巻線に流れる電流I1のピーク値は、
【0047】
【数3】

となる。また、スイッチング素子22のスイッチング周期をTsw、このときのスイッチング周波数をfswとすると、このときの出力電力Pは、
【0048】
【数4】

となり、スイッチング周期Tswが下限値(最小周期)T2のときのオン時間Tonは、
【0049】
【数5】

となる。
【0050】
一方、スイッチング素子22がオフのときにトランス21の2次巻線に電流が流れる時間をT7、トランス21の巻数比をn、2次巻線に電流が流れているときに2次巻線に生じる電圧をV2とすると、1次巻線に流れる電流I1のピーク値は、
【0051】
【数6】

となる。そして、(1)式、(3)式及び(4)式より、2次巻線に電流が流れる時間T7は、
【0052】
【数7】

となる。
【0053】
以上の結果から、遅延時間T1は、
【0054】
【数8】

で求められ、(6)式に従って調整回路7により遅延時間T1を調整することで、スイッチング周波数fswを1/T2以下に制限することができる。
【0055】
ところで、上記(6)式は電力変換回路2がフライバック方式のコンバータの場合の式であり、一般式は、
【0056】
【数9】

となる。ここに(7)式中のαは所定の係数であり、電力変換回路2がフライバック方式のコンバータの場合にはα=1となる。また、電力変換回路2がフライバック方式のコンバータの場合には、V1=Vi、V2=Voとなる。したがってこの場合には、トランス21の1次巻線及び2次巻線に印加される電圧V1,V2を直接測定しなくてもよく、電力変換回路2の入力電圧Vi及び出力電圧Voを測定して、上記(6)式により演算すればよい。
【0057】
なお、上記の(6)式から遅延時間T1を求めた際に、この遅延時間T1が負の値であったり、単安定マルチバイブレータ45のトリガ信号として有効な最小信号幅よりも小さい場合には、電流境界モード或いは電流連続モードでの動作を行う領域として、遅延時間T1は上記最小信号幅に設定される。
【0058】
図2(a)は電力変換回路2を昇降圧チョッパ回路で構成した場合の概略回路図であり、この場合、フライバック方式のコンバータと同様に(6)式より遅延時間T1が求められる。なお図2(a)では、インダクタ要素21が中間タップを有し、直流電源1側から見た巻数比が1:nであるオートトランス構成を示しているが、単純な1巻線構成のインダクタ要素でも同様であり、このときn=1となる。
【0059】
図2(b)は電力変換回路2を昇圧チョッパ回路で構成した場合の概略構成図であり、この場合、係数α=V2/(V1+V2)を(7)式に代入することで、遅延時間T1は、
【0060】
【数10】

となる。この場合も、(8)式に従って調整回路7により遅延時間T1を調整することで、スイッチング周波数fswを1/T2以下に制限することができる。なおこのとき、V1=Vi、V2=Vo−Viとなる。
【0061】
ここで図2(b)では、インダクタ要素21が中間タップを有し、直流電源1側から見た巻数比が1:nであるオートトランス構成を示しているが、単純な1巻線構成のインダクタ要素でも同様であり、このときn=1となる。
【0062】
図2(c)は電力変換回路2を降圧チョッパ回路で構成した場合の概略回路図であり、この場合、係数α=V1/(V1+V2)を(7)式に代入することで、遅延時間T1は、
【0063】
【数11】

となる。この場合も、(9)式に従って調整回路7により遅延時間T1を調整することで、スイッチング周波数fswを1/T2以下に制限することができる。なおこのとき、V1=Vi−Vo、V2=Voとなる。
【0064】
ここで図2(c)では、インダクタ要素21が中間タップを有し、負荷側(インバータ回路3側)から見た巻数比が1:nであるオートトランス構成を示しているが、単純な1巻線構成のインダクタ要素でも同様であり、このときn=1となる。
【0065】
而して本実施形態によれば、スイッチング素子22をオフからオンに切り替える際の遅延時間T1を設定して電流不連続モードで動作させることで、スイッチング周波数を低く抑えることができる。また、電源電圧が高い場合や負荷電圧が高い場合、出力電力が小さい場合には、電力変換回路2を電流境界モードで動作させると、スイッチング周波数の上昇に伴ってスイッチング損失が上昇したり、ノイズ抑制能力が低下したり、通信系に影響を及ぼしたりするが、遅延時間T1を設定してスイッチング周波数を低く抑えることで上記の悪影響を抑えることができ、結果的にフィルタ回路の大型化が抑えられるとともに、それに伴うコストアップを抑えることができる。
【0066】
なお本実施形態では、スイッチング素子22の両端電圧の変化からトランス21の2次巻線に流れる電流がゼロになったことを間接的に検出しているが、直接検出する構成でもよい。また、スイッチング素子22の両端電圧の代わりに、整流ダイオード23の両端電圧やトランス21の巻線電圧の変化から上記2次巻線に流れる電流がゼロになったことを検出する構成でもよい。さらに、上記(6)〜(9)式において、電力値Pに効率を掛けたものを、電力値Pとしてもよい。
【0067】
(実施形態2)
放電灯点灯装置Aの実施形態2を図3に基づいて説明する。実施形態1では、スイッチング素子22の両端電圧の変化からトランス21の2次巻線に流れる電流がゼロになったことを間接的に検出しているが、本実施形態では、トランス21の2次巻線に流れる電流を直接検出している。なお実施形態1と同様に、スイッチング素子22の両端電圧の変化から上記2次巻線に流れる電流がゼロになったことを間接的に検出する構成でもよい。また、スイッチング素子22の両端電圧の代わりに、整流ダイオード23の両端電圧やトランス21の巻線電圧の変化から上記2次巻線に流れる電流がゼロになったことを検出する構成でもよい。
【0068】
本実施形態の放電灯点灯装置Aは、電力変換回路2と、インバータ回路3と、信号発生回路4と、始動回路5と、フィードバック制御回路6と、調整回路11とを主要な構成として備える。なお、信号発生回路4及び調整回路11以外の構成については実施形態1と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0069】
信号発生回路4は、コンパレータ41,42、RSフリップフロップ43,50及び遅延回路46,49を主要な構成として備える。コンパレータ42は、トランス21の2次巻線に流れる電流が入力され、この電流がゼロになったことを検出するためのゼロ電流検出回路として機能する。この場合、上記2次巻線に流れる電流がゼロになると、整流ダイオード23の逆回復時間などによってごく短時間の間電流が逆流するため、これをコンパレータ42で検出することでゼロ電流を検出することができる。
【0070】
ここで、スイッチング素子22のスイッチング周波数が過度に上昇しないように電流不連続モードで動作させる場合、整流ダイオード23の逆回復時間が経過してしまうと上記2次巻線に流れる電流がゼロになったことをコンパレータ42により検出できなくなる可能性がある。このため本実施形態では、スイッチング素子22に対して出力されるPWM信号がオフレベルの状態で、上記2次巻線に流れる電流がゼロになったことをコンパレータ42により検出した場合には、コンパレータ42のゼロ検出信号がRSフリップフロップ50のセット端子Sに入力され、RSフリップフロップ50では、このゼロ検出信号を一時的に保持するとともに、保持している間はゼロ検出信号を出力し続ける。ここに本実施形態では、RSフリップフロップ50により信号保持回路が構成されている。
【0071】
RSフリップフロップ50から出力されたゼロ検出信号は、AND回路及びOR回路を介してRSフリップフロップ43のセット端子Sに入力され、このときRSフリップフロップからはスイッチング素子22及び遅延回路46,49に対してHi信号が出力される。ここに本実施形態では、RSフリップフロップ43によりPWM信号が構成されている。
【0072】
遅延回路49は、RSフリップフロップ43の出力信号がHiからLoに変化すると、所定の最小オフ時間T3が経過した時点で出力信号をHiからLoに変化させる。つまり、最小オフ時間T3が経過するまではRSフリップフロップ50から出力されるゼロ検出信号をマスクし、RSフリップフロップ43のセット端子Sに入力されないようにしている。そして、最小オフ時間T3が経過した時点でAND回路がアクティブになり、RSフリップフロップ50のゼロ検出信号がRSフリップフロップ43に入力される。ここに本実施形態では、遅延回路49によりマスク回路が構成されている。
【0073】
なお、最小オフ時間T3が上記2次巻線に電流が流れている時間よりも長く設定されると、電流不連続モードが実行される。一方、最小オフ時間T3を略ゼロにすれば、電流境界モードが実行される。つまり、遅延回路49における最小オフ時間T3を調整することで、電流境界モードから電流不連続モードへの切り替えを連続的に行うことができる。
【0074】
調整回路11は、遅延回路49における最小オフ時間T3を調整するための回路であり、電力変換回路2の入力電圧Vi及び外部からの電力指令値に基づいて最小オフ時間T3を決定する。なお、詳細については後述する。
【0075】
ここで、ランプ電圧が高い場合や放電灯10を調光して出力を低下させた場合には、スイッチング素子22のオフ時間が短くなり、そのため電流境界モードではスイッチング周波数が高くなってしまう。したがってこの場合には、遅延回路49の最小オフ時間T3を調整して電流不連続モードで動作させることで、スイッチング周波数の過度な上昇を抑える。その際、スイッチング素子22のスイッチング周波数を計測手段(図示せず)により実際に計測し、この計測結果と予め設定された最小周期の誤差量から最小オフ時間T3を調整するのが好ましく、スイッチング素子22のスイッチング周波数を直接計測することで最小オフ時間T3を正確に設定することができ、その結果、スイッチング素子22のスイッチング周波数が過度に上昇するのを確実に抑えることができる。
【0076】
より好ましいのは出力条件により最小オフ時間T3を調整するのがよく、以下具体的に説明する。なお、以下に示す(10)〜(12)式中のT4は、スイッチング素子22のスイッチング周期の下限値(最小周期)である。
【0077】
スイッチング周波数fswを最大周波数1/T4で動作させた場合の最小オフ時間T3は、上述の実施形態1で説明した(3)式を用いて、
【0078】
【数12】

となり、(10)式に従って調整回路11により最小オフ時間T3を調整することで、スイッチング周波数が高い領域は電流不連続モードで動作させて、スイッチング周波数fswを1/T4以下に制限することができる。なお、本構成ではV1=Viとなるため、トランス21の1次巻線に印加される電圧V1を測定する代わりに、電力変換回路2の入力電圧Viを検出し、この入力電圧Viを用いて演算してもよい。また、電力変換回路2を昇降圧チョッパ回路で構成した場合も、(10)式に従って最小オフ時間T3を演算すればよい。
【0079】
また、実施形態1と同様に、電力変換回路2を昇圧チョッパ回路で構成した場合には、最小オフ時間T3は、
【0080】
【数13】

となり、(11)式に従って調整回路11により最小オフ時間T3を調整することで、スイッチング周波数fswを1/T4以下に制限することができる。なお、本構成ではV1=Vi、V2=Vo−Viとなる。
【0081】
さらに、実施形態1と同様に、電力変換回路2を降圧チョッパ回路で構成した場合には、最小オフ時間T3は、
【0082】
【数14】

となり、(12)式に従って調整回路11により最小オフ時間T3を調整することで、スイッチング周波数fswを1/T4以下に制限することができる。なお、本構成ではV1=Vi−Vo、V2=Voとなる。
【0083】
而して本実施形態によれば、スイッチング素子22をオフからオンに切り替える際の最小オフ時間T3を設定して電流不連続モードで動作させることで、スイッチング周波数を低く抑えることができる。また、電源電圧が高い場合や負荷電圧が高い場合、出力電力が小さい場合には、電力変換回路2を電流境界モードで動作させると、スイッチング周波数の上昇に伴ってスイッチング損失が上昇したり、ノイズ抑制能力が低下したり、通信系に影響を及ぼしたりするが、最小オフ時間T3を設定してスイッチング周波数を低く抑えることで上記の悪影響を抑えることができ、結果的にフィルタ回路の大型化が抑えられるとともに、それに伴うコストアップを抑えることができる。
【0084】
なお、上記(10)〜(12)式において、電力値Pに効率を掛けたものを、電力値Pとしてもよい。
【0085】
なお、上述の実施形態1,2は一例であり、スイッチング周波数が高い領域ではスイッチング素子22のオフ時間を調整して電流不連続モードで動作させ、スイッチング周波数の過度な上昇を抑制する構成のものであればよい。また、マイコンなどを利用してソフトウェア上で同様の動作を実現してもよい。
【0086】
(実施形態3)
上述の実施形態1,2で説明した放電灯点灯装置Aを搭載した灯具の実施形態を図4に基づいて説明する。
【0087】
図4は本実施形態の車両用のヘッドライト(灯具)Bの断面図であり、このヘッドライトBは、放電灯10と、放電灯10を機械的に保持するとともに放電灯10に電気的に接続されたソケット12と、放電灯10に点灯電力を供給する放電灯点灯装置Aとを主要な構成として備える。
【0088】
放電灯点灯装置Aとバッテリ(直流電源)1の間には、スイッチ13とヒューズ14が接続されており、スイッチ13をオンにすることでバッテリ1から放電灯点灯装置Aに電源が供給される。
【0089】
而して本実施形態によれば、上述の実施形態1,2で説明した放電灯点灯装置Aを搭載することによって、スイッチング素子22のスイッチング周波数が過度に上昇するのを抑えつつ、大型化やコストアップを抑えたヘッドライト(灯具)Bを提供することができる。
【0090】
なお、灯具は本実施形態のヘッドライトBに限定されるものではなく、後述する車両Cの尾灯などであってもいいし、それ以外のものでもよい。
【0091】
(実施形態4)
ヘッドライトBを搭載した車両の実施形態を図5に基づいて説明する。
【0092】
図5は本実施形態の車両Cの外観斜視図であり、この車両Cには上述の実施形態3で説明した一対のヘッドライトB,Bが搭載されている。
【0093】
而して本実施形態によれば、実施形態3で説明したヘッドライトB,Bを搭載することによって、スイッチング素子22のスイッチング周波数が過度に上昇するのを抑えつつ、大型化やコストアップを抑えた車両Cを提供することができる。
【符号の説明】
【0094】
2 電力変換回路
22 スイッチング素子
42 コンパレータ(ゼロ電流検出回路)
44 単安定マルチバイブレータ(タイマ回路)
45 単安定マルチバイブレータ(タイマ回路)
48 微分回路(ゼロ電流検出回路)
A 放電灯点灯装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともスイッチング素子、インダクタ素子及び整流素子を有し、前記スイッチング素子がオンのときに電源から供給されるエネルギーを前記インダクタ素子に蓄積し、前記インダクタ素子に蓄積させたエネルギーを前記スイッチング素子がオフのときに放電灯を含む負荷側に出力する電力変換回路と、
前記スイッチング素子のオフ期間において前記インダクタ素子に流れる電流がゼロになったことを直接的又は間接的に検出するゼロ電流検出回路と、
前記ゼロ電流検出回路の検出信号が入力されてから所定の遅延時間が経過すると、前記スイッチング素子をオンにするためのオン信号を出力するタイマ回路とを備え、
前記タイマ回路は、前記ゼロ電流検出回路の検出信号が入力されてから前記遅延時間が経過するまでは次の検出信号の入力を無効とするマスク機能を有し、
前記遅延時間は、少なくとも前記スイッチング素子のスイッチング状態又は前記電力変換回路の入出力状態の何れか一方に応じて変更されることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
少なくともスイッチング素子、インダクタ素子及び整流素子を有し、前記スイッチング素子がオンのときに電源から供給されるエネルギーを前記インダクタ素子に蓄積し、前記インダクタ素子に蓄積させたエネルギーを前記スイッチング素子がオフのときに放電灯を含む負荷側に出力する電力変換回路と、
前記スイッチング素子のオフ期間において前記インダクタ素子に流れる電流がゼロになったことを直接的又は間接的に検出するゼロ電流検出回路と、
前記ゼロ電流検出回路の検出信号を一時的に保持し、前記検出信号を保持している間は前記検出信号を出力し続ける信号保持回路と、
前記信号保持回路の出力信号を受けて前記スイッチング素子をオンにするPWM信号を出力するPWM信号発生回路と、
前記スイッチング素子がオンからオフに切り替わったときに所定の最小オフ時間が経過するまでは前記信号保持回路の出力信号が前記PWM信号発生回路に入力されないように動作するマスク回路とを備え、
前記最小オフ時間は、少なくとも前記スイッチング素子のスイッチング状態又は前記電力変換回路の入出力状態の何れか一方に応じて変更されることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記スイッチング素子のスイッチング状態に応じた前記インダクタ素子の電圧と、前記電力変換回路の出力電力又は電力指令値に基づいて、前記遅延時間又は前記最小オフ時間を調整する調整回路を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記インダクタ素子は巻数比nのトランス構造であり、前記スイッチング素子がオンのときに形成される閉回路において前記インダクタ素子に印加される電圧をV1、このときの前記インダクタ素子のインダクタンス値をL1とし、前記スイッチング素子がオフのときに形成される閉回路に電流が流れているときに前記インダクタ素子に生じる電圧をV2、前記電力変換回路の出力電力又は電力指令値をP、所定の係数をα、前記遅延時間をT1、前記スイッチング素子のスイッチング周期の下限値をT2とすると、
【数1】

で示す式に従って、前記スイッチング素子のスイッチング周期の下限値が調整されることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記インダクタ素子は巻数比nのトランス構造であり、前記スイッチング素子がオンのときに形成される閉回路において前記インダクタ素子に印加される電圧をV1、このときの前記インダクタ素子のインダクタンス値をL1とし、前記スイッチング素子がオフのときに形成される閉回路に電流が流れているときに前記インダクタ素子に生じる電圧をV2、前記電力変換回路の出力電力又は電力指令値をP、所定の係数をα、前記最小オフ時間をT3、前記スイッチング素子のスイッチング周期の下限値をT4とすると、
【数2】

で示す式に従って、前記スイッチング素子のスイッチング周期の下限値が調整されることを特徴とする請求項2記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記電力変換回路はフライバックコンバータ又は昇降圧チョッパ回路からなり、前記係数α=1であることを特徴とする請求項4又は5記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
前記電力変換回路は昇圧チョッパ回路からなり、前記係数α=V2/(V1+V2)で調整されることを特徴とする請求項4又は5記載の放電灯点灯装置。
【請求項8】
前記電力変換回路は降圧チョッパ回路からなり、前記係数α=V1/(V1+V2)で調整されることを特徴とする請求項4又は5記載の放電灯点灯装置。
【請求項9】
前記電力変換回路の入力電圧及び出力電圧を用いて演算することによって、前記スイッチング素子がオンのときに前記インダクタ素子に印加される電圧及び前記スイッチング素子がオフのときに前記インダクタ素子に生じる電圧を等価的に求めたことを特徴とする請求項3〜8の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項10】
前記スイッチング素子のスイッチング周期を計測する計測手段を備え、
前記計測手段の計測結果が所定の最小周期以下とならないように前記遅延時間又は前記最小オフ時間が調整されることを特徴とする請求項1又は2記載の放電灯点灯装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の放電灯点灯装置が搭載されていることを特徴とする灯具。
【請求項12】
請求項1〜10の何れか1項に記載の放電灯点灯装置が搭載されていることを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−243707(P2012−243707A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115532(P2011−115532)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】