説明

放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具

【課題】交流電源の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合でも放電灯を点灯維持可能な放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具を提供する。
【解決手段】放電灯点灯装置10は、交流電源1から供給される交流電圧を所望の電圧値の直流電圧に変換する直流電源回路2及びダウンコンバータ回路3と、ダウンコンバータ回路3から出力される直流電圧を、極性が周期的に反転する交流電圧に変換して放電灯6に供給するインバータ回路4と、放電灯6を始動させるための始動電圧を発生させる共振回路5と、交流電源1の電圧状態を検出する電圧検出回路7と、インバータ回路4を制御する制御回路8cとを備える。制御回路8cは、電圧検出回路7により交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が検出されると、インバータ回路4の動作周波数を、共振回路5の共振周波数近傍の周波数若しくはこの共振周波数の奇数分の1の周波数近傍の周波数に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、メタルハライドランプや高圧水銀ランプなどの高圧放電灯を点灯させるための放電灯点灯装置が提供されている(例えば特許文献1参照)。この放電灯点灯装置は、交流電源より供給される交流電流を直流電流に変換する直流電源部と、直流電源部の直流電流を所定の周波数で極性が反転する矩形波交流に変換して高圧放電灯に供給する出力部とを備える。またこの放電灯点灯装置は、出力部を制御する制御部と、交流電源の瞬時的な電圧降下(瞬時停電や瞬時電圧降下)を検知する異常検知部とを備える。
【0003】
直流電源部は、交流電源の交流電流を全波整流する整流器と、整流器の出力電圧を所定値まで昇圧する昇圧チョッパ回路と、昇圧チョッパ回路の出力を平滑する平滑コンデンサとを有している。また出力部は、直流電源部の出力電圧を所定値まで降圧する降圧チョッパ回路と、降圧チョッパ回路の出力電圧を平滑する平滑コンデンサと、インバータ回路と、トランスの一次巻線及びコンデンサで構成された共振回路とを有している。インバータ回路は、4つのスイッチング素子により構成された所謂フルブリッジ型のインバータ回路であり、対角に位置する2つのスイッチング素子を1組とし、各組のスイッチング素子を交互にスイッチングすることで、スイッチング周波数に応じた交流電圧が高圧放電灯の両端間に発生する。
【0004】
この放電灯点灯装置により高圧放電灯を点灯させるには、まずインバータ回路の各組のスイッチング素子を交互にオン/オフさせて、高圧放電灯の両端間に数10kHz〜数100kHzの高周波電圧を発生させる。そして、この高周波電圧を共振回路により共振昇圧させて、高圧放電灯の両端間に高圧な共振電圧を印加することで高圧放電灯がブレイクダウンし、点灯する。その後、インバータ回路の動作周波数(スイッチング周波数)が数10Hz〜数100Hzの低周波に切り替えられ、高圧放電灯の点灯状態が安定的に維持される。
【0005】
またこの放電灯点灯装置では、異常検知部により交流電源の瞬時的な電圧降下が検出されると、通常点灯時の矩形波交流よりも周波数が低い矩形波交流が出力部から高圧放電灯に供給され、この矩形波交流により高圧放電灯の点灯状態が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−289480号公報(段落[0032]−段落[0061]、及び、第1図−第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1に示した放電灯点灯装置では、交流電源の瞬時的な電圧降下が発生すると、通常点灯時よりも周波数の低い矩形波交流を高圧放電灯に供給することで高圧放電灯の点灯状態を維持することができる。しかしながら、この場合周波数を低くすることで高圧放電灯に供給される矩形波交流の電圧レベルも低くなり、それに伴って点灯維持時間も短くなることから、交流電源の瞬時的な電圧降下が復旧する前に高圧放電灯が消灯してしまう可能性があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、交流電源の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合でも放電灯を点灯維持可能な放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の放電灯点灯装置は、交流電源から供給される交流電圧を所望の電圧値の直流電圧に変換する電力変換回路と、電力変換回路から出力される直流電圧を、極性が周期的に反転する交流電圧に変換して放電灯に供給する極性反転回路とを備える。また本放電灯点灯装置は、放電灯を始動させるための始動電圧を発生させる共振回路と、電力変換回路及び極性反転回路を制御する制御回路と、交流電源の電圧状態を検出する電圧検出手段とを備える。制御回路は、電圧検出手段により交流電源の瞬時的な停電又は電圧降下が検出されると、極性反転回路の動作周波数を、放電灯を定格点灯させるときの点灯周波数よりも高い周波数であって、共振回路のインダクタンス及びキャパシタンスで決定される共振周波数近傍の周波数若しくは当該共振周波数の奇数分の1の周波数近傍の周波数に設定する。
【0010】
この放電灯点灯装置において、制御回路は、極性反転回路の動作周波数を点灯周波数より高い周波数に設定する期間を、交流電源の瞬時的な停電又は電圧降下の継続期間よりも長く設定するのが好ましい。
【0011】
また、この放電灯点灯装置において、制御回路は、電圧検出手段により交流電源の瞬時的な停電又は電圧降下が検出されると、共振周波数の近傍であって且つ共振周波数を含まない所定の周波数範囲で極性反転回路の動作周波数をスイープさせるのも好ましい。
【0012】
さらに、この放電灯点灯装置において、制御回路は、電圧検出手段により交流電源の瞬時的な停電又は電圧降下が検出されると、共振周波数を含む所定の周波数範囲で極性反転回路の動作周波数をスイープさせるのも好ましい。
【0013】
また、この放電灯点灯装置において、制御回路は、電圧検出手段により交流電源の瞬時的な停電又は電圧降下が検出されると、共振周波数の奇数分の1の周波数の近傍であって且つ当該周波数を含まない所定の周波数範囲で極性反転回路の動作周波数をスイープさせるのも好ましい。
【0014】
さらに、この放電灯点灯装置において、制御回路は、電圧検出手段により交流電源の瞬時的な停電又は電圧降下が検出されると、共振周波数の奇数分の1の周波数を含む所定の周波数範囲で極性反転回路の動作周波数をスイープさせるのも好ましい。
【0015】
本発明の照明器具は、上記何れかの放電灯点灯装置と、放電灯とを備えている。
【発明の効果】
【0016】
交流電源の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合でも放電灯を点灯維持可能な放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1の放電灯点灯装置を用いた照明器具の一例を示す概略回路図である。
【図2】同上の動作を説明するタイムチャートである。
【図3】同上の動作を説明する別のタイムチャートである。
【図4】同上の他の例を示す概略回路図である。
【図5】実施形態2の放電灯点灯装置を用いた照明器具の一例を示す概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、放電灯点灯装置及び照明器具の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(実施形態1)
図1は本実施形態の照明器具の一例を示す概略回路図であり、この照明器具は、放電灯点灯装置10と、放電灯点灯装置10から供給される高周波電力によって点灯する放電灯6とを備える。ここに放電灯6としては、例えばメタルハライドランプや高圧水銀ランプなどの高圧放電灯が用いられる。なお、これらのランプは従来周知のものであるから、ここでは説明を省略する。
【0020】
放電灯点灯装置10は、直流電源回路2と、ダウンコンバータ回路3と、インバータ回路(極性反転回路)4と、共振回路5と、電圧検出回路(電圧検出手段)7と、制御回路8a〜8cとを備える。
【0021】
直流電源回路2は、交流電源1の高周波成分をカットするためのラインフィルタLF1と、交流電源1の交流出力を全波整流する全波整流回路(ダイオードブリッジ)21と、インダクタL4、ダイオードD2、スイッチング素子Q6及び平滑コンデンサC6で構成された従来周知の昇圧チョッパ回路とを備える。スイッチング素子Q6とグランドとの間には抵抗R1が接続されており、この抵抗R1にかかる電圧がフィードバック信号として後述の制御回路8aに入力される。
【0022】
ダウンコンバータ回路3は、スイッチング素子Q1及びインダクタL1の直列回路と、スイッチング素子Q1とインダクタL1の接続点にカソード側が接続され、アノード側が抵抗R2を介してグランドに接続されたダイオードD1とで構成される。ダウンコンバータ回路3の出力端間にはコンデンサC1が接続され、また高圧側の出力端とグランドとの間には抵抗R7,R8の直列回路が接続されている。このダウンコンバータ回路3のスイッチング素子Q1は後述の制御回路8bにより動作周波数が制御されるが、この制御回路8bには、抵抗R2にかかる電圧と抵抗R7,R8の分圧とがフィードバック信号として入力される。
【0023】
インバータ回路4は、4つのスイッチング素子Q2〜Q5で構成された所謂フルブリッジ型のインバータ回路である。直列接続されたスイッチング素子Q2,Q3の接続点と直列接続されたスイッチング素子Q4,Q5の接続点の間には、トランスT3を介して放電灯6が接続されている。なお、これらのスイッチング素子Q2〜Q5は後述の制御回路8cにより動作周波数が制御され、スイッチング素子Q2,Q5の組とスイッチング素子Q3,Q4の組とが交互にオン/オフされる。
【0024】
共振回路5は、トランスT3とコンデンサC2とで構成され、放電灯6を始動させる高周波の始動電圧を発生させる。ここで、共振回路5の共振周波数はコンデンサC2のキャパシタンスとトランスT3のインダクタンスで決定されるが、点灯開始時にはインバータ回路4のスイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数が上記共振周波数近傍の周波数に設定される。その結果、共振回路5に高周波の始動電圧が発生し、この始動電圧により放電灯6がブレイクダウンして点灯する。なお、放電灯6の点灯動作については後述する。
【0025】
電圧検出回路7は、抵抗R3〜R6の直列回路と、抵抗R6と並列に接続されたコンデンサC7とで構成され、抵抗R5と抵抗R6の接続点の電圧が制御回路8cに入力される。ここに本実施形態では、直流電源回路2の昇圧チョッパ回路の出力電圧を電圧検出回路7の検出電圧としており、制御回路8cではこの検出電圧の値に応じてスイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数を設定する。なお、本動作については後述する。
【0026】
制御回路8aは、直流電源回路2のスイッチング素子Q6のオン/オフ動作を制御する機能を有し、抵抗R1にかかる電圧がフィードバック信号として入力され、このフィードバック信号の大きさに応じてスイッチング素子Q6の動作周波数を設定する。そして、スイッチング素子Q6が設定された動作周波数でスイッチング動作を行うことで、所望の電圧値の直流電圧がコンデンサC6の両端間に発生する。
【0027】
制御回路8bは、ダウンコンバータ回路3のスイッチング素子Q1のオン/オフ動作を制御する機能を有し、抵抗R2にかかる電圧と抵抗R7,R8の分圧とがフィードバック信号として入力され、このフィードバック信号の大きさ(すなわち負荷電流及び出力電圧の大きさ)に応じてスイッチング素子Q1の動作周波数を設定する。そして、スイッチング素子Q1が設定された動作周波数でスイッチング動作を行うことで、直流電源回路2の出力電圧が所望の電圧値の直流電圧に降圧される。ここに本実施形態では、直流電源回路2とダウンコンバータ回路3とで電力変換回路が構成されている。
【0028】
制御回路8cは、インバータ回路4のスイッチング素子Q2〜Q5のオン/オフ動作を制御する機能を有し、放電灯6の始動時にはスイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数を共振回路5の共振周波数近傍の周波数に設定する。そして放電灯6が安定点灯した後は、制御回路8cはスイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数を、共振周波数よりも低い周波数に切り替えて、点灯状態を維持させる。
【0029】
次に、放電灯6の点灯動作について簡単に説明する。造営面(壁面など)に取り付けられた電源スイッチ(図示せず)をユーザーが操作して、交流電源1から所定の交流電力が供給されると、制御回路8aは直流電源回路2のスイッチング素子Q6の動作周波数を制御して所望の電圧値の直流電圧に昇圧させる。直流電源回路2で昇圧された直流電圧はダウンコンバータ回路3に供給され、制御回路8bはスイッチング素子Q1の動作周波数を制御して供給された直流電圧を所望の電圧値の直流電圧に降圧させる。
【0030】
ダウンコンバータ回路3で降圧された直流電圧はインバータ回路4に供給され、制御回路8cはスイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数を、共振回路5の共振周波数近傍の周波数に制御して共振回路5に高周波の始動電圧を発生させる。その結果、放電灯6はこの始動電圧によりブレイクダウンして点灯する。そして、放電灯6が安定点灯した後は、制御回路8cはスイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数を、共振周波数よりも低い周波(例えば160Hz)に切り替えて、放電灯6の点灯状態を維持させる。
【0031】
ところで、ユーザー側での負荷事情や電源スイッチ(図示せず)の瞬時的なオン/オフ、電源環境などにより、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生する場合がある。この場合、上述の従来例では点灯維持時間が短いことから、停電や電圧降下が復旧する前に高圧放電灯が消灯してしまう可能性があるが、本実施形態では以下の方法を採用することにより上記の問題を解決している。
【0032】
図2は放電灯点灯装置10の動作を説明するタイムチャートである。本例では、共振回路5のコンデンサC2のキャパシタンスが1500pF、トランスT3のインダクタンスが150μHであり、その結果、共振回路5の共振周波数は約335kHzに設定される。なお、図2中の検出電圧V2は電圧検出回路7による検出電圧を示す。
【0033】
時刻t1のときに交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生すると、直流電源回路2の出力電圧(検出電圧V2)が定常時の300Vから徐々に低下していく。時刻t2のときに検出電圧V2が260Vを下回ると、制御回路8cはスイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数f1を、通常動作時の160Hzから共振回路5の共振周波数335kHzよりも数kHz高い周波数に切り替える。すると、図2に示すように放電灯6に印加されるランプ電圧V1が点灯維持電圧よりも高い電圧まで上昇し、その結果、直流電源回路2の出力電圧が低下した場合でも放電灯6の点灯状態を維持することが可能になる。
【0034】
その後、時刻t3のときに検出電圧V2が260Vを上回ると、制御回路8cはスイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数f1を160Hzまで低下させて、放電灯6の点灯状態を維持させる。ここに本実施形態では、スイッチング素子Q2〜Q5を共振周波数よりも高い周波数で動作させる期間を、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が継続すると想定される継続期間(例えば数ms〜数10ms)と同じ期間に設定している。したがって、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が回復する前に放電灯6が消灯することはなく、放電灯6の点灯状態を確実に維持することができる。
【0035】
次に、図3は放電灯点灯装置10の動作を説明する別のタイムチャートである。本例では、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合、共振回路5の共振周波数335kHzの1/3の周波数(約112kHz)を通るように、スイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数f1を100kHz〜120kHzの間でスイープさせている。その結果、図2で示した例と同様に放電灯6に印加されるランプ電圧V1を点灯維持電圧よりも高い電圧に維持することができ、放電灯6の点灯状態を維持できる。なおこの場合も、スイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数f1をスイープさせる期間を、上記継続期間(数ms〜数10ms)と同じ期間に設定している。したがってこの場合も、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が回復する前に放電灯6が消灯することはなく、放電灯6の点灯状態を確実に維持することができる。さらに本例によれば、共振回路5を構成するトランスT3及びコンデンサC2の性能のばらつきを考慮しなくてもよく、しかも共振周波数を通るようにスイープさせる場合に比べてトランスT3及びコンデンサC2の小型化が可能になる。
【0036】
而して本実施形態では、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合には、インバータ回路4のスイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数を共振回路5の共振周波数近傍の周波数に設定したり、共振周波数の1/3の周波数を含む所定の周波数範囲でスイープさせている。その結果、直流電源回路2の出力電圧が低くなった場合でも放電灯6の点灯維持電圧よりも高い電圧を放電灯6に供給できるので、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合でも放電灯6の点灯状態を維持することができる。しかも従来例に比べて放電灯6の点灯維持時間を長くできるので、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が復旧する前に放電灯6が消灯してしまうのを抑えることができる。
【0037】
なお本実施形態では、4つのスイッチング素子Q2〜Q5で構成されたフルブリッジ型のインバータ回路4を例に説明したが、例えば図4に示すように2つのスイッチング素子Q2,Q3と2つのコンデンサC8,C9とで構成された所謂ハーフブリッジ型のインバータ回路であってもよい。この場合も同様に、直流電源回路2の出力電圧が低くなった場合でも放電灯6の点灯維持電圧よりも高い電圧を放電灯6に供給できるので、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合でも放電灯6の点灯状態を維持することができる。
【0038】
(実施形態2)
放電灯点灯装置10を用いた照明器具の実施形態2を図5に基づいて説明する。
【0039】
図5は本実施形態の照明器具の一例を示す概略回路図であり、この照明器具は、放電灯点灯装置10と放電灯6とを備える。
【0040】
放電灯点灯装置10は、直流電源回路2と、共振回路5と、電圧検出回路(電圧検出手段)7と、制御回路8a,8cと、極性反転型の降圧チョッパ回路(極性反転回路)9とを備える。なお、直流電源回路2、電圧検出回路7及び制御回路8a,8cについては実施形態1と同様であるから、ここでは説明を省略する。ここに本実施形態では、直流電源回路2により電力変換回路が構成されている。
【0041】
降圧チョッパ回路9は、4つのスイッチング素子Q2〜Q5で構成された所謂フルブリッジ型のインバータ回路を有している。直列接続されたスイッチング素子Q2,Q3の接続点と直列接続されたスイッチング素子Q4,Q5の接続点の間には、降圧チョッパ用のインダクタL3と平滑用のコンデンサC2の直列回路が接続されている。
【0042】
共振回路5は、インダクタL5と共振用のコンデンサC10とで構成され、インダクタL5の一端側はスイッチング素子Q2,Q3の接続点に接続され、インダクタL5の他端側は放電灯6に接続されている。またコンデンサC10は、一端側がインダクタL5と放電灯6の接続点に接続され、他端側が抵抗R2を介してグランドに接続されている。なお、放電灯6の点灯動作については実施形態1と同様であるから、ここでは説明を省略する。
【0043】
次に、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合の放電灯点灯装置10の動作について説明する。
【0044】
通常動作時において交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生すると、制御回路8cはスイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数を、通常動作時の低周波から共振回路5の共振周波数近傍の周波数に切り替える。そして、スイッチング素子Q2〜Q5が変更後の周波数でスイッチング動作を行うことで共振回路5に高周波の始動電圧が発生し、この始動電圧により放電灯6の点灯状態が維持される。また実施形態1と同様に、共振回路5の共振周波数の1/3の周波数を含む所定の周波数範囲で、スイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数をスイープさせてもよく、同様に放電灯6の点灯状態を維持できる。なお本実施形態でも、スイッチング素子Q2〜Q5を共振周波数よりも高い周波数で動作させる期間や、スイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数をスイープさせる期間を、上記継続期間(数ms〜数10ms)と同じ期間に設定している。したがって、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が回復する前に放電灯6が消灯することはなく、放電灯6の点灯状態を確実に維持することができる。
【0045】
而して本実施形態では、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合には、降圧チョッパ回路9のスイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数を共振回路5の共振周波数近傍の周波数に設定したり、共振周波数の1/3の周波数を含む所定の周波数範囲でスイープさせている。その結果、直流電源回路2の出力電圧が低くなった場合でも放電灯6の点灯維持電圧よりも高い電圧を放電灯6に供給できるので、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合でも放電灯6の点灯状態を維持することができる。しかも従来例に比べて放電灯6の点灯維持時間を長くできるので、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が復旧する前に放電灯6が消灯してしまうのを抑えることができる。
【0046】
また上述の実施形態1,2で説明した放電灯点灯装置10を用いることによって、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合でも放電灯6を点灯維持可能な照明器具を提供することができる。
【0047】
なお本実施形態においても、降圧チョッパ回路9をハーフブリッジ型のインバータ回路で構成してもよく、同様に交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合でも放電灯6の点灯状態を維持することができる。
【0048】
また上述の実施形態1,2では、直流電源回路2の昇圧チョッパ回路の出力電圧を電圧検出回路7の検出電圧としているが、例えば全波整流回路21の出力電圧を電圧検出回路7の検出電圧としてもよく、本実施形態に限定されない。
【0049】
さらに実施形態1,2では、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧低下が発生した場合、スイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数を共振回路5の共振周波数近傍の周波数に設定しているが、共振周波数の奇数分の1の周波数近傍の周波数に設定してもよい。この場合も、直流電源回路2の出力電圧が低くなった場合でも放電灯6の点灯維持電圧よりも高い電圧を放電灯6に供給できるので、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合でも放電灯6の点灯状態を維持することができる。
【0050】
また実施形態1,2では、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合、スイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数を共振回路5の共振周波数の1/3の周波数を含む所定の周波数範囲でスイープさせているが、上記周波数範囲は共振周波数の奇数分の1の周波数を含む所定の周波数範囲であればよく、上記実施形態に限定されない。さらに上記周波数範囲は、共振回路5の共振周波数を含む所定の周波数範囲であってもよい。これらの場合も、直流電源回路2の出力電圧が低くなった場合でも放電灯6の点灯維持電圧よりも高い電圧を放電灯6に供給できるので、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合でも放電灯6の点灯状態を維持することができる。またこれらの場合には、共振回路5を構成するトランスT3及びコンデンサC2の性能のばらつきを考慮しなくてもよく、しかも前者の場合には共振周波数を通るようにスイープさせる場合に比べてトランスT3及びコンデンサC2の小型化が可能になる。
【0051】
さらに上記周波数範囲は、共振周波数の奇数分の1の周波数近傍であって且つ当該周波数を含まない所定の周波数範囲であってもいいし、共振周波数近傍であって且つ共振周波数を含まない所定の周波数範囲であってもよい。これらの場合も、直流電源回路2の出力電圧が低くなった場合でも放電灯6の点灯維持電圧よりも高い電圧を放電灯6に供給できるので、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が発生した場合でも放電灯6の点灯状態を維持することができる。またこれらの場合には、共振周波数又は共振周波数の奇数分の1の周波数を通らないようにスイープさせるので、インバータ回路4のストレスを低減することができ、しかも前者の場合には後者に比べてトランスT3及びコンデンサC2の小型化が可能になる。なおこれらの場合には、上記周波数範囲として放電灯6の点灯状態を維持できる周波数範囲に設定する必要がある。
【0052】
また実施形態1,2では、スイッチング素子Q2〜Q5を共振周波数よりも高い周波数で動作させる期間や、スイッチング素子Q2〜Q5の動作周波数をスイープさせる期間を、交流電源1の瞬時的な停電又は電圧降下が継続すると想定される継続期間(数ms〜数10ms)と同じ期間に設定しているが、この継続期間よりも長い期間に設定してもよく、この場合も交流電源1の瞬時的な停電や電圧降下が発生した場合に放電灯6を確実に点灯維持することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 交流電源
2 直流電源回路(電力変換回路)
3 ダウンコンバータ回路(電力変換回路)
4 インバータ回路(極性反転回路)
5 共振回路
6 放電灯
7 電圧検出回路(電圧検出手段)
8c 制御回路
10 放電灯点灯装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給される交流電圧を所望の電圧値の直流電圧に変換する電力変換回路と、
前記電力変換回路から出力される直流電圧を、極性が周期的に反転する交流電圧に変換して放電灯に供給する極性反転回路と、
前記放電灯を始動させるための始動電圧を発生させる共振回路と、
前記電力変換回路及び前記極性反転回路を制御する制御回路と、
前記交流電源の電圧状態を検出する電圧検出手段とを備え、
前記制御回路は、前記電圧検出手段により前記交流電源の瞬時的な停電又は電圧降下が検出されると、前記極性反転回路の動作周波数を、前記放電灯を定格点灯させるときの点灯周波数よりも高い周波数であって、前記共振回路のインダクタンス及びキャパシタンスで決定される共振周波数近傍の周波数若しくは当該共振周波数の奇数分の1の周波数近傍の周波数に設定することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記極性反転回路の動作周波数を前記点灯周波数より高い周波数に設定する期間を、前記交流電源の瞬時的な停電又は電圧降下の継続期間よりも長く設定することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記電圧検出手段により前記交流電源の瞬時的な停電又は電圧降下が検出されると、前記共振周波数の近傍であって且つ前記共振周波数を含まない所定の周波数範囲で前記極性反転回路の動作周波数をスイープさせることを特徴とする請求項1又は2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記電圧検出手段により前記交流電源の瞬時的な停電又は電圧降下が検出されると、前記共振周波数を含む所定の周波数範囲で前記極性反転回路の動作周波数をスイープさせることを特徴とする請求項1又は2記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記電圧検出手段により前記交流電源の瞬時的な停電又は電圧降下が検出されると、前記共振周波数の奇数分の1の周波数の近傍であって且つ当該周波数を含まない所定の周波数範囲で前記極性反転回路の動作周波数をスイープさせることを特徴とする請求項1又は2記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記電圧検出手段により前記交流電源の瞬時的な停電又は電圧降下が検出されると、前記共振周波数の奇数分の1の周波数を含む所定の周波数範囲で前記極性反転回路の動作周波数をスイープさせることを特徴とする請求項1又は2記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の放電灯点灯装置と、前記放電灯とを備えていることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−37800(P2013−37800A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170696(P2011−170696)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】