説明

放電灯点灯装置

【課題】簡易で小型かつ安価な回路構成でありながら、出力電圧及び出力電流の波形歪の少ない放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】放電灯点灯装置10は、スイッチング回路11と昇圧トランスT1とを備え、昇圧トランスT1の入力側の巻線は、中間タップP1を共通点とする第1の一次巻線Wp1と第2の一次巻線Wp2により構成される。スイッチング回路11の第1の出力端子Aは、第1の一次巻線Wp1の一端に接続され、スイッチング回路11の第2の出力端子Bは、第2の一次巻線Wp2の一端に接続されており、コンデンサCfの一方端は、昇圧トランスT1の中間タップP1に接続され、コンデンサCfの他方端は、第2の一次巻線Wp2の一端とともに、スイッチング回路11の第2の出力端子Bに接続されている。これによって、第1の一次巻線Wp1の自己インダクタンスとコンデンサCfの静電容量とにより、LCフィルタ回路が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置に関し、特に、液晶表示装置のバックライトとして使用される放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電圧をスイッチングして、高周波交流電圧を得る放電灯点灯装置が知られている。図7は、その一例である放電灯点灯装置101を示している。放電灯点灯装置101は、スイッチング回路11、昇圧トランスT10、及び制御回路12を含むインバータを備え、このインバータにより直流電源Viからの直流電圧を交流電圧に変換して放電灯La10を駆動するものである。スイッチング回路11は、電界効果型トランジスタ(FET)Q1、Q2とコンデンサC1、C2とで構成されている。また、スイッチング回路11のFET Q1、Q2は、制御回路12に接続されており、FET Q1、Q2はこの制御回路12によって交互にオン・オフ動作を行う。
【0003】
スイッチング回路11の第1の出力端子Aは昇圧トランスT10の入力側の一次巻線Wp101の一方端に接続され、スイッチング回路11の第2の出力側端子Bは昇圧トランスT10の入力側の一次巻線Wp101の他方端に接続されている。また、昇圧トランスT10の一次巻線Wp101の両端間にはコンデンサC3が並列に接続され、昇圧トランスT10の出力側の二次巻線Ws101の一方端はバラストコンデンサC4を介して放電灯La10に接続され、二次巻線Ws101の他方端は放電灯La10の他方端に接続されるとともに、接地されている。
【0004】
放電灯点灯装置101では、直流電源Viからの直流電圧がスイッチング回路11に供給され、FET Q1、Q2のオン・オフ動作(スイッチング)によって高周波の交流電圧が生成され、昇圧トランスT10によって放電灯La10を点灯させるための所望の電圧が得られる。この際、昇圧トランスT10のインダクタンスLs1と放電灯が筐体間に持つ寄生容量Cp1、Cp2、・・・、CpnとのLC共振を起こさせることにより、放電灯に流れる電流の高調波成分を除去し、歪みの小さな正弦波状の波形としている。
【0005】
しかし、放電灯点灯装置101のような構成を短尺の放電灯に適用する場合、寄生容量が小さくなるため、共振による高調波成分の除去を行うために、昇圧トランスの出力側の高圧部にコンデンサを放電灯と並列に配置しなければならず、安全性の上で好ましくないという問題がある。
さらに、今後、技術的な進歩により、寄生容量が著しく小さい、あるいは、寄生容量が存在しないとみなせるような放電灯の登場も予想されている。図8(a)、(b)は、それぞれ、放電灯を純抵抗負荷と見立てた場合、すなわち、寄生容量が存在しない場合を想定した時の放電灯に印加される電圧波形及び電流波形を示しているが、共振が起こっていないため、高調波成分を多く含んだ歪波形となっている。
【0006】
そこで、上記の波形歪を改善するため、高調波成分を取り除く方法として、インバータに共振回路を付加する従来技術がある。例えば、特許文献1に記載された放電灯点灯装置におけるインバータ回路は、トランスの二次巻線にコンデンサが並列に接続され、また、二次巻線の一端がコイルを介して放電灯の一方の電極に接続されており、コンデンサとコイルとは、トランスの二次巻線側にてLC共振回路を構成していることが開示されている。このLC共振回路を構成することにより、高調波成分は除去され、歪の少ない交流波形が得られる。
【0007】
【特許文献1】特開2004−241136号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された放電灯点灯装置では、コイル及びコンデンサからなる共振回路を追加する必要があり、部品コストの高騰及び放電灯点灯装置の大型化につながるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易で小型かつ安価な回路構成でありながら、出力電圧及び出力電流の波形歪の少ない放電灯点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、さらに他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0011】
(1)スイッチング回路と昇圧トランスとを備え、前記スイッチング回路の出力電圧を前記昇圧トランスにより昇圧して、前記昇圧トランスの出力側に接続された放電灯に印加することにより、前記放電灯を点灯する放電灯点灯装置において、
前記スイッチング回路の出力に入力側が接続されるトランスの前記入力側に、該入力側の自己インダクタンスの一部とコンデンサの静電容量とによるフィルタ回路を構成したことを特徴とする放電灯点灯装置(請求項1)。
【0012】
本項に記載の放電灯点灯装置によれば、スイッチング回路の出力に入力側が接続されるトランスの入力側に、該トランスの入力側の自己インダクタンスの一部とコンデンサの静電容量とによるフィルタ回路を構成したことによって、このフィルタ回路の働きにより、スイッチング回路の出力から高調波成分が除去されるため、トランスの出力電圧及び出力電流を歪みの少ない高周波電圧及び高周波電流とすることが可能となる。
さらに、このフィルタ回路は、上記トランス自体の入力側の自己インダクタンスの一部とコンデンサの静電容量とによって構成されるため、簡易で小型かつ安価な回路構成により、スイッチング回路の出力から高調波成分を除去することが可能となる。
【0013】
(2)(1)項に記載の放電灯点灯装置において、前記トランスは、前記入力側の巻線に中間タップを有しており、前記コンデンサは、一方端が前記中間タップに接続され、他方端が前記トランスの前記入力側の巻線の一方端に接続されることを特徴とする放電灯点灯装置(請求項2)。
本項に記載の放電灯点灯装置によれば、トランスの入力側の一方端と中間タップとの間の自己インダクタンスとコンデンサの静電容量とから、簡易で小型かつ安価な回路構成によりフィルタ回路を実現することができる。
【0014】
(3)(1)又は(2)項に記載の放電灯点灯装置において、前記トランスは、前記昇圧トランスを含むことを特徴とする放電灯点灯装置(請求項3)。
本項に記載の放電灯点灯装置では、昇圧トランスの入力側にフィルタ回路を構成したことにより、昇圧トランスの出力側の高圧部にコンデンサを放電灯と並列に配置する必要がなくなり、放電灯点灯装置の安全性を向上させることが可能となる。また、昇圧トランスに印加される電圧波形が正弦波に近い波形となるため、昇圧トランス内部の単位時間あたりの磁束変化が緩やかになり、昇圧トランスのET積(電圧・時間積)が、方形波電圧を入力した場合に比べて小さくなる結果、従来の昇圧トランスよりも小型軽量化することが可能となる。
【0015】
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置において、前記トランスは、前記昇圧トランスの入力側に出力側が接続される絶縁トランスを含むことを特徴とする放電灯点灯装置(請求項4)。
本項に記載の放電灯点灯装置では、絶縁トランスとコンデンサとで構成される回路が、絶縁トランスの入力側の自己インダクタンスの一部とコンデンサの静電容量とによるフィルタ回路を備えることによって、力率改善回路として機能することになり、安全上の理由からスイッチング回路と昇圧トランスとの間に挿入される絶縁トランスを活用して、簡易かつ安価な回路構成により、スイッチング回路の出力から高調波成分を除去し、絶縁トランスの出力電圧及び出力電流(すなわち、昇圧トランスの入力電圧及び入力電流)、ひいては、昇圧トランスの出力電圧及び出力電流を、歪みの少ない高周波電圧及び高周波電流とすることが可能となる。
【0016】
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置において、前記放電灯の少なくとも一部は、フローティング駆動により点灯されることを特徴とする放電灯点灯装置(請求項5)。
本項に記載の放電灯点灯装置によれば、長尺の放電灯であっても、管長方向の輝度勾配を抑制して、放電灯の輝度を均一化することができる。
【0017】
(6)(5)項に記載の放電灯点灯装置において、好ましくは、前記放電灯をフローティング駆動する前記昇圧トランスの出力側の巻線の一方端には、2本の放電灯のうちの一方の放電灯の一方端が接続され、前記昇圧トランスの出力側の巻線の他方端には、前記2本の放電灯のうちの他方の放電灯の一方端が接続されており、前記2本の放電灯の他方端同士は接続されているものである。
本項に記載の放電灯点灯装置は、1つの昇圧トランスにより2本の放電灯を点灯することができるため、装置の小型軽量化のために有利なものである。
【0018】
(7)(1)〜(6)のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置において、前記昇圧トランスをn個(但しnは2以上の整数)備えており、n個の前記昇圧トランスの入力側の巻線は、直列に多連接続されていることを特徴とする放電灯点灯装置(請求項6)。
本発明に係る放電灯点灯装置において、各昇圧トランスを従来の昇圧トランスよりも小型軽量化することができる利点は、放電灯点灯装置に使用される昇圧トランスの個数が多いほど顕著なものとなるため、本項に記載の放電灯点灯装置のように、n個の昇圧トランスが含まれる放電灯点灯装置は、従来の昇圧トランスをn個用いた放電灯点灯装置と比べて、より効果的に装置を小型軽量化することができる。
また、本項に記載の放電灯点灯装置において、スイッチング回路の出力に入力側が接続されるトランスに、絶縁トランスが含まれる場合には、絶縁トランスの入力側にフィルタ回路を構成することによって、フィルタ回路を構成するコンデンサの数を、点灯する放電灯の本数(及び、放電灯を駆動する昇圧トランスの個数)に関わらず1個とすることができるため、簡易で安価な回路構成により放電灯点灯装置の小型軽量化が可能となる。
さらに、本項に記載の放電灯点灯装置では、n個の昇圧トランスの入力側の巻線を直列に多連接続することにより、各放電灯のランプ電流を容易に均一化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る放電灯点灯装置は、以上のように構成したため、簡易で小型かつ安価な回路構成でありながら、トランスの出力電圧及び出力電流の波形歪を少なくすることが可能となり、それによって放電灯に印加される高周波電圧及び高周波電流の歪みを低減し、ひいては、放電灯の寿命を伸ばすことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る放電灯点灯装置10を示す回路図である。図1において、図7に示した従来の放電灯点灯装置101と共通する構成要素には同一符号を付している。
【0021】
図1に示す放電灯点灯装置10は、スイッチング回路11、昇圧トランスT1、制御回路12を含みインバータを備えるものであり、このインバータにより直流電源Viから供給される直流電圧を交流電圧に変換して、放電灯La1を点灯するものである。
スイッチング回路11は、スイッチング素子(例えば、電界効果型トランジスタ)Q1、Q2とコンデンサC1、C2とで構成されたハーフブリッジ回路である。スイッチング回路11のスイッチング素子Q1、Q2は、制御回路12に接続されており、スイッチング素子Q1、Q2はこの制御回路12によって交互にオン・オフ動作を行う。
本発明に係るトランスの一実施形態である昇圧トランスT1は、入力側の巻線(一次巻線)に中間タップP1を有しており、この一次巻線は、中間タップP1を共通点とする第1の一次巻線Wp1と第2の一次巻線Wp2により構成されている。また、昇圧トランスT1の出力側の巻線(二次巻線)Ws1の一方端は、放電灯La1に接続され、二次巻線Ws1の他方端は、放電灯La1の他方端に接続されるとともに、接地されている。
【0022】
スイッチング回路11の第1の出力端子Aは、昇圧トランスT1の入力側の一方端(第1の一次巻線Wp1の一端)に接続され、スイッチング回路11の第2の出力端子Bは、昇圧トランスT1の入力側の他方端(第2の一次巻線Wp2の一端)に接続されている。そして、コンデンサCfの一方端は、昇圧トランスT1の入力側の中間タップP1に接続され、コンデンサCfの他方端は、昇圧トランスT1の第2の一次巻線Wp2の一端とともに、スイッチング回路11の第2の出力端子Bに接続されている。
【0023】
以上の構成において、コンデンサCfは昇圧トランスT1の第1の一次巻線Wp1と直列接続されており、第1の一次巻線Wp1の自己インダクタンスとコンデンサCfの静電容量とにより、LCフィルタ回路が構成されている。このLCフィルタ回路の働きにより、スイッチング回路11の出力から高調波成分が除去されるため、昇圧トランスT1の二次側には歪みの少ない高周波電圧及び高周波電流が出力され、この高周波電圧及び高周波電流が放電灯La1に印加される。図2(a)、(b)は、それぞれ、放電灯La1に印加される電圧波形及び電流波形を示しており、いずれの波形においても高調波成分を含まない歪の少ない波形となっている。
【0024】
また、放電灯点灯装置10では、上記LCフィルタ回路を、昇圧トランスT1の入力側に構成したため、昇圧トランスの出力側の高圧部にコンデンサを放電灯と並列に配置する必要がなくなり、安全性の観点から有利なものである。
さらに、昇圧トランスT1では、印加される電圧波形が正弦波となるため、内部の単位時間あたりの磁束変化が緩やかになり、昇圧トランスT1内部のET積(電圧・時間積)が、方形波電圧を入力した場合に比べて小さくなる。このため、昇圧トランスT1は、従来の昇圧トランスよりも小型軽量化することが可能となる。
【0025】
以上のように、本実施形態における放電灯点灯装置10は、昇圧トランスT1の入力側において、第1の一次巻線Wp1の自己インダクタンスとコンデンサCfの静電容量とによるLCフィルタ回路を構成したことにより、簡易で小型かつ安価な回路構成でありながら、昇圧トランスT1の出力電圧及び出力電流の波形歪が低減するとともに安全性の高い放電灯点灯装置を提供することが可能となる。
【0026】
図3は、本発明の第2の実施形態における放電灯点灯装置10aの回路構成を示す図である。放電灯点灯装置10aは、上述した第1の実施形態における放電灯点灯装置10と共通する基本構成を有するものであり、図3において、図1と共通する構成要素には同一符号を付し、以下では、放電灯点灯装置10との相違点を中心に説明する。
【0027】
図3に示す放電灯点灯装置10aにおいて、昇圧トランスT1aは、出力側の巻線(二次巻線)にも中間タップP2を有しており、この二次巻線は、中間タップP2を共通点とする第1の二次巻線Ws1aと第2の二次巻線Ws2aにより構成され、中間タップP2は接地されている。
【0028】
本実施形態における放電灯点灯装置10aは、1つの昇圧トランスT1aにより2本の放電灯La1a、La2aを駆動するものであり、昇圧トランスT1aの出力側の巻線の一方端(第1の二次巻線Ws1aの一端)には、2本の放電灯のうちの一方の放電灯La1aの一方端が接続され、昇圧トランスT1aの出力側の巻線の他方端(第2の二次巻線Ws2aの一端)には、2本の放電灯のうちの他方の放電灯La2aの一方端が接続されている。そして、これらの2本の放電灯La1a、La2aの他方端同士は接続されている。
このように構成された放電灯点灯装置10aは、放電灯La1aの第1の二次巻線Ws1aに接続されている一端と、放電灯La2aの第2の二次巻線Ws2aに接続されている一端に対して、互いに逆位相の電圧を印加し、直列に接続された2本の放電灯La1a、La2aをフローティング駆動するものである。
【0029】
ここで、本実施形態における放電灯点灯装置10aには、第1の実施形態における放電灯点灯装置10と同様に、昇圧トランスT1aの入力側において、第1の一次巻線Wp1の自己インダクタンスとコンデンサCfの静電容量とによるLCフィルタ回路が構成されており、それによって、上述した放電灯点灯装置10と同様の作用効果を奏するものである。
加えて、放電灯点灯装置10aでは、1つの昇圧トランスT1aで2本の放電灯La1a、La1bを駆動することができるため、図1に示すトランスT1と一端が接地された放電灯La1との組を二組設けることにより、2本の放電灯を点灯する放電灯点灯装置を構成する場合と比較して、装置を小型軽量化することができる。
【0030】
図4は、本発明の第3の実施形態における放電灯点灯装置10bの回路構成を示す図である。放電灯点灯装置10bは、上述した第2の実施形態における放電灯点灯装置10aと共通する基本構成を有するものであり、図4において、図3と共通する構成要素には同一符号を付し、以下では、放電灯点灯装置10aとの相違点を中心に説明する。
【0031】
放電灯点灯装置10bは、それぞれ図3に示す昇圧トランスT1aと同様に構成されたn個(但しnは2以上の整数)の昇圧トランスT1b1〜T1bnを備えている。これらのn個の昇圧トランスT1b1〜T1bnの各々は、2本の放電灯(La1b1,La2b1)〜(La1bn,La2bn)をフローティング駆動するものであり、n個(但しnは2以上の整数)の昇圧トランスT1b1〜T1bnの入力側の巻線(一次巻線)は、直列に多連接続されている。
【0032】
各昇圧トランスT1b1〜T1bnと放電灯La1b1〜La1bn、La2b1〜La2bnの結線構成について詳述すれば、次の通りである。すなわち、昇圧トランスT1bk(但し、k=1,2,...,n、以下同様)は、出力側の巻線(二次巻線)が、中間タップP2bkを共通点とする第1の二次巻線Ws1bkと第2の二次巻線Ws2bkにより構成され、中間タップP2bkは接地されている。そして、昇圧トランスT1bkの出力側の巻線の一方端(第1の二次巻線Ws1bkの一端)には、2本の放電灯のうちの一方の放電灯La1bkの一方端が接続され、昇圧トランスT1bkの出力側の巻線の他方端(第2の二次巻線Ws2bkの一端)には、2本の放電灯のうちの他方の放電灯La2bkの一方端が接続されて、これらの2本の放電灯La1bk、La2bkの他方端同士は接続されている。
【0033】
スイッチング回路11の第1の出力端子Aは、昇圧トランスT1b1の入力側の第1の一次巻線Wp1b1の一方端に接続され、スイッチング回路11の第2の出力端子Bは、昇圧トランスT1bnの入力側の第2の一次巻線Wp2の一方端に接続されている。そして、昇圧トランスT1b1、T1b2、・・・、及びT1bn−1(図示は省略する)の第2の一次巻線Wp2b1、Wp2b2、・・・、Wp2bn−1(図示は省略する)の一方端は、それぞれ昇圧トランスT1b2、T1b3(図示は省略する)、・・・、T1bnの第1の一次巻線Wp1b2、・・・、Wp1bnの一方端に接続されており、これによって、スイッチング回路11の第1の出力端子Aと第2の出力端子Bとの間に、昇圧トランスT1b1〜T1bnの一次巻線(Wp1b1,Wp2b1)〜(Wp1bn,Wp2bn)を多連接続した直列回路が構成されている。
【0034】
また、本実施形態における放電灯点灯装置10bでは、各昇圧トランスT1b1〜T1bnには、それぞれ対応するコンデンサCf1b〜Cfnbが接続されており、各コンデンサCf1b〜Cfnbの一方端は、それぞれ対応する昇圧トランスT1b1〜T1bnの一次巻線の中間タップP1b1〜P1bnに接続され、各コンデンサCf1b〜Cfnbの他方端は、それぞれ対応する昇圧トランスT1b1〜T1bnの第2の一次巻線Wp2b1〜Wp2bnの一端に接続されている。
【0035】
本実施形態における放電灯点灯装置10bは、第1の実施形態における放電灯点灯装置10と同様に、それぞれの昇圧トランスT1b1〜T1bnの入力側において、第1の一次巻線Wp1b1〜Wb1bnの自己インダクタンスとコンデンサCf1b〜Cfnbの静電容量とによるLCフィルタ回路が構成されており、それによって、上述した放電灯点灯装置10と同様の作用効果を奏するものである。
特に、昇圧トランスT1b1〜T1bnを従来の昇圧トランスよりも小型軽量化することができる利点は、使用される昇圧トランスの個数が多いほど顕著なものとなるため、本実施形態における放電灯点灯装置10bのように、昇圧トランスT1b1〜T1bnをn個(nは2以上の整数)有する放電灯点灯装置の場合には、従来の昇圧トランスをn個用いた放電灯点灯装置と比べて、より効果的に装置を小型軽量化することができる。
【0036】
図5は、本発明の第4の実施形態における放電灯点灯装置10cの回路構成を示す図である。放電灯点灯装置10cは、上述した第2の実施形態における放電灯点灯装置10aと共通する基本構成を有するものであり、図5において、図3と共通する構成要素には同一符号を付し、以下では、放電灯点灯装置10aとの相違点を中心に説明する。
【0037】
放電灯点灯装置10cは、スイッチング回路11と昇圧トランスT2との間に絶縁トランスT1cを備えており、この絶縁トランスT1cが、本発明に係るトランスの一実施形態として、スイッチング回路11の出力に、その入力側が接続されているものである。
すなわち、絶縁トランスT1cは、入力側の巻線(一次巻線)に中間タップP1cを有しており、この一次巻線は、中間タップP1cを共通点とする第1の一次巻線Wp1cと第2の一次巻線Wp2cにより構成されている。また、絶縁トランスT1cの出力側の巻線(二次巻線Ws1c)の一方端は、昇圧トランスT2の入力側の巻線(一次巻線)の一方端(例えば、図5に示す例において符号Wp11が付された側の一端)に接続され、二次巻線Ws1cの他方端は、昇圧トランスT2の一次巻線の他方端(例えば、図5に示す例において符号Wp12が付された側の一端)に接続されている。
尚、図5では、昇圧トランスT2の一次巻線に対してWp11及びWp12に分けて符号を付しているが、これは、説明の便宜のためであり、本実施形態における昇圧トランスT2がその機能を果す上で、一次巻線を構造的及び/又は機能的に第1の一次巻線Wp11と第2の一次巻線Wp12に分割する必要があることを意味するものではない。
【0038】
ここで、本実施形態における放電灯点灯装置10cは、図3に示す放電灯点灯装置10aと同様に、1つの昇圧トランスT2により2本の放電灯La1c、La2cをフローティング駆動するものであり、その昇圧トランスT2は、図3に示す昇圧トランスT1aと同様に、出力側の巻線(二次巻線)に中間タップP22を有しており、この二次巻線は、中間タップP22を共通点とする第1の二次巻線Ws21と第2の二次巻線Ws22により構成され、中間タップP22は接地されている。
そして、昇圧トランスT2の出力側の巻線の一方端(第1の二次巻線Ws21の一端)に、2本の放電灯のうちの一方の放電灯La1cの一方端が接続され、昇圧トランスT2の出力側の巻線の他方端(第2の二次巻線Ws22の一端)に、2本の放電灯のうちの他方の放電灯La2cの一方端が接続されて、2本の放電灯La1c、La2cの他方端同士は接続されている。
【0039】
本実施形態では、スイッチング回路11の第1の出力端子Aは、絶縁トランスT1cの入力側の一方端(第1の一次巻線Wp1cの一端)に接続され、スイッチング回路11の第2の出力端子Bは、絶縁トランスT1cの入力側の他方端(第2の一次巻線Wp2cの一端)に接続される。そして、コンデンサCfcの一方端は、絶縁トランスT1cの入力側の中間タップP1cに接続され、コンデンサCfcの他方端は、絶縁トランスT1cの第2の一次巻線Wp2cの一端とともに、スイッチング回路11の第2の出力端子Bに接続されている。
【0040】
以上のように構成された放電灯点灯装置10cにおいて、コンデンサCfcは絶縁トランスT1cの第1の一次巻線Wp1cと直列接続されており、第1の一次巻線Wp1cの自己インダクタンスとコンデンサCfcの静電容量とにより、LCフィルタ回路が構成されている。このLCフィルタ回路の働きにより、スイッチング回路11の出力から高調波成分が除去されるため、絶縁トランスT1cの二次側には歪みの少ない高周波電圧及び高周波電流が出力され、その高周波電圧により昇圧トランスT2が駆動される。したがって、昇圧トランスT2の二次側には、歪みの少ない高周波電圧及び高周波電流が出力されることになり、これによって、上述した第2の実施形態における放電灯点灯装置10aと同様の作用効果を奏するものである。
【0041】
すなわち、本発明に従って絶縁トランスT1cとコンデンサCfcとで構成される回路は、第1の一次巻線Wp1cの自己インダクタンスとコンデンサCfcの静電容量とから構成されるLCフィルタ回路を備えることにより、放電灯点灯装置10cにおいて力率改善回路PF1として機能するものであり、本実施形態は、通常、安全上の理由から設けられる絶縁トランスT1cを活用して、簡易かつ安価な回路構成により、放電灯La1c、La2cに印加される高周波電圧及び高周波電流の波形歪を低減するものである。
【0042】
図6は、本発明の第5の実施形態に係る放電灯点灯装置10dの回路構成を示す図である。放電灯点灯装置10dは、上述した第4の実施形態における放電灯点灯装置10cと共通する基本構成を有するものであり、図6において、図5と共通する構成要素には同一符号を付し、以下では、放電灯点灯装置10cとの相違点を中心に説明する。
【0043】
放電灯点灯装置10dは、それぞれ図5に示す昇圧トランスT2と同様に構成されたn個(但しnは2以上の整数)の昇圧トランスT2a1〜T2anを備えている。これらn個の昇圧トランスT2a1〜T2anの各々は、2本の放電灯(La1c1,La2c1)〜(La1cn,La2cn)をフローティング駆動するものであり、n個(但しnは2以上の整数)の昇圧トランスT2a1〜T2anの入力側の巻線(一次巻線)は、直列に多連接続されている。
【0044】
各昇圧トランスT2a1〜T2anと放電灯La1c1〜La1cn、La2c1〜La2cnの結線構成について詳述すれば、次の通りである。すなわち、昇圧トランスT2ak(但し、k=1,2,...,n、以下同様)は、出力側の巻線(二次巻線)が、中間タップP2akを共通点とする第1の二次巻線Ws21akと第2の二次巻線Ws22akにより構成され、中間タップP2akは接地されている。そして、昇圧トランスT2akの出力側の巻線の一方端(第1の二次巻線Ws21akの一端)には、2本の放電灯のうちの一方の放電灯La1ckの一方端が接続され、昇圧トランスT2akの出力側の巻線の他方端(第2の二次巻線Ws22akの一端)には、2本の放電灯のうちの他方の放電灯La2ckの一方端が接続されて、これらの2本の放電灯La1ck、La2ckの他方端同士は接続されている。
【0045】
本実施形態における放電灯点灯装置10dは、図5に示す放電灯点灯装置10cと同様に、スイッチング回路11の出力に入力側が接続された絶縁トランスT1cを備えており、絶縁トランスT1cの出力側の巻線(二次巻線Ws1c)の一方端は、昇圧トランスT2a1の入力側の巻線(一次巻線)の一方端(例えば、図6に示す例において符号Wp11a1が付された側の一端)に接続され、絶縁トランスT1cの二次巻線Ws1cの他方端は、昇圧トランスT2anの入力側の巻き線の一方端(例えば、図6に示す例において符号Wp12anが付された側の一端)に接続されている。
そして、昇圧トランスT2a1、T2a2、・・・、及びT2an−1(図示は省略する)の一次巻線の一方端(例えば、図6に示す例において、それぞれ符号Wp12a1、Wp12a2、・・・、W12pan−1(図示は省略する)が付された側の一端)は、それぞれ昇圧トランスT2a2、T2a3(図示は省略する)、・・・、T2anの一次巻線の他方端(例えば、図6に示す例において、それぞれ符号Wp11a2、Wp11a3(図示は省略すする)、・・・、W11anが付された側の一端)に接続されており、これによって、絶縁トランスT1cの二次巻線Ws1cの両出力端の間に、昇圧トランスT2a1〜T2anの一次巻線(Wp11a1,Wp12a1)〜(Wp11an,Wp12an)を多連接続した直列回路が構成されている。
【0046】
本実施形態では、第4の実施形態における放電灯点灯装置10cと同様に、スイッチング回路11の第1の出力端子Aは、絶縁トランスT1cの入力側の一方端(第1の一次巻線Wp1cの一端)に接続され、スイッチング回路11の第2の出力端子Bは、絶縁トランスT1cの入力側の他方端(第2の一次巻線Wp2cの一端)に接続される。そして、コンデンサCfcの一方端は、絶縁トランスT1cの入力側の中間タップP1cに接続され、コンデンサCfcの他方端は、絶縁トランスT1cの第2の一次巻線Wp2cの一端とともに、スイッチング回路11の第2の出力端子Bに接続されている。
【0047】
以上のように構成された放電灯点灯装置10dにおいて、コンデンサCfcは絶縁トランスT1cの第1の一次巻線Wp1cと直列接続されており、第1の一次巻線Wp1cの自己インダクタンスとコンデンサCfcの静電容量とにより、LCフィルタ回路が構成されている。このLCフィルタ回路の働きにより、スイッチング回路11の出力から高調波成分が除去されるため、絶縁トランスT1cの二次側には歪みの少ない高周波電圧及び高周波電流が出力され、その高周波電圧により昇圧トランスT2が駆動される。したがって、昇圧トランスT2の二次側には、歪みの少ない高周波電圧及び高周波電流が出力されることになり、これによって、上述した第3の実施形態における放電灯点灯装置10bと同様の作用効果を奏するものである。
加えて、放電灯点灯装置10dでは、フィルタ回路を構成するコンデンサCfcの数を、点灯する放電灯の本数(及び、放電灯を駆動する昇圧トランスの個数)に関わらず1個とすることができるため、簡易で安価な回路構成により放電灯点灯装置の小型軽量化が可能となる。
【0048】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上記の実施形態において、スイッチング回路11をスイッチング素子Q1、Q2とコンデンサC1、C2とで構成されるハーフブリッジ回路としたが、本発明に係るスイッチング回路はこの態様に限定されるものではなく、例えば、フルブリッジ回路、又は、プッシュプル回路とするものであってもよい。
また、上述した第4及び第5の実施形態において、放電灯はフローティング駆動されるものとしたが、これらの各実施形態において、放電灯の一端を接地して点灯するものであってもよい。さらに、本発明に係る放電灯点灯装置に適用される放電灯は、例えばU字管等の直管以外のタイプであってもよいことは言うまでもない。
また、第3及び第5の実施形態において、n個の昇圧トランスの一次巻線は、直列に多連接続されるものとした。この接続態様は、各放電灯のランプ電流を容易に均一化することができる点で有利なものであるが、本発明に係る放電灯点灯装置は、このような昇圧トランスの接続態様に限定されるものではなく、スイッチング回路11の両出力端A、B(第3の実施形態)又は絶縁トランスT1cの二次巻線Ws1cの両出力端(第5の実施形態)に対して、n個の昇圧トランスの一次巻線を並列に接続するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態における放電灯点灯装置の回路構成図である。
【図2】(a)は、本発明の第1の実施形態において、放電灯の電圧波形を示す図であり、(b)は、本発明の第1の実施形態において、放電灯の電流波形を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における放電灯点灯装置の回路構成図である。
【図4】本発明の第3の実施形態における放電灯点灯装置の回路構成図である。
【図5】本発明の第4の実施形態における放電灯点灯装置の回路構成図である。
【図6】本発明の第5の実施形態における放電灯点灯装置の回路構成図である。
【図7】従来の放電灯点灯装置の一例を示す回路構成図である。
【図8】(a)は、従来の放電灯点灯装置において、放電灯の電圧波形を示す図であり、(b)は、従来の放電灯点灯装置において、放電灯の電流波形を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10,10a,10b,10c,10d:放電灯点灯装置、11:スイッチング回路、12:制御回路、A:スイッチング回路の第1の出力端子、B:スイッチング回路の第2の出力端子、C1,C2:スイッチング回路のコンデンサ、Cf,Cf1b〜Cfnb,Cfc:コンデンサ、La1,La1a,La2a,La1b1〜La1bn,La2b1〜La2bn,La1c,La2c,La1c1〜La1cn,La2c1〜La2cn:放電灯、P1,P1b1〜P1bn:昇圧トランスの一次巻線の中間タップ(トランスの入力側の巻線の中間タップ)、P1c:絶縁トランスの一次巻線の中間タップ(トランスの入力側の巻線の中間タップ)、P2,P2b1〜P2bn,P22,P2a1〜P2an:昇圧トランスの二次巻線の中間タップ、PF1:力率改善回路、Q1,Q2:スイッチング素子、T1,T1a,T1b1〜T1bn:昇圧トランス(トランス)、T2,T2a1〜T2an:昇圧トランス、T1c:絶縁トランス(トランス)、Vi:直流電源、Wp1,Wp2,Wp1b1〜Wp1bn,Wp2b1〜Wp2bn:昇圧トランスの一次巻線(トランスの入力側の巻線)、Wp11,Wp12,Wp11a1〜Wp11an,Wp12a1〜Wp12an:昇圧トランスの一次巻線(入力側)、Ws1,Ws1a,Ws2a,Ws1b1〜Ws1bn,Ws2b1〜Ws2bn,Ws21,Ws22,Ws21a1〜Ws21an,Ws22a1〜Ws22an:昇圧トランスの二次巻線(出力側)、Wp1c,Wp2c,:絶縁トランスの一次巻線(トランスの入力側の巻線)、Ws1c:絶縁トランスの二次巻線(出力側)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング回路と昇圧トランスとを備え、前記スイッチング回路の出力電圧を前記昇圧トランスにより昇圧して、前記昇圧トランスの出力側に接続された放電灯に印加することにより、前記放電灯を点灯する放電灯点灯装置において、
前記スイッチング回路の出力に入力側が接続されるトランスの前記入力側に、該入力側の自己インダクタンスの一部とコンデンサの静電容量とによるフィルタ回路を構成したことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記トランスは、前記入力側の巻線に中間タップを有しており、前記コンデンサは、一方端が前記中間タップに接続され、他方端が前記トランスの前記入力側の巻線の一方端に接続されることを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記トランスは、前記昇圧トランスを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記トランスは、前記昇圧トランスの入力側に出力側が接続される絶縁トランスを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記放電灯の少なくとも一部は、フローティング駆動により点灯されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記昇圧トランスをn個(但しnは2以上の整数)備えており、n個の前記昇圧トランスの入力側の巻線は、直列に多連接続されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−99388(P2009−99388A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270102(P2007−270102)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】