説明

放電灯点灯装置

【課題】異常な点灯動作及び点灯失敗の発生を防いで絶縁破壊からアーク放電へ転移するエネルギを放電灯へ供給する放電灯点灯装置を得る
【解決手段】DC/DCコンバータ2の出力端子に接続している平滑コンデンサ13に対して並列に設けられ、シャント抵抗14の一端とDC/DCコンバータ2の出力端子との接続点Aに点灯補助コンデンサ16の一端が接続されるように構成した充電回路、及び、平滑コンデンサ13に対して並列に設けられ、シャント抵抗14の他端とインバータ3との接続点Bに点灯補助コンデンサ16の一端が接続されるように構成した放電回路を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放電灯を点灯させる放電灯点灯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直流点灯用放電灯の点灯を開始するとき、当該放電灯が絶縁破壊を起してアーク放電に至るためには転移エネルギが必要になる。そのため、放電灯点灯装置に上記の転移エネルギを蓄積しておくコンデンサを備え、また、このコンデンサに転移エネルギを適切に蓄積して放電灯へ供給すべく、抵抗とダイオードとを並列に接続した回路を上記のコンデンサに直列接続している(例えば、特許文献1参照)。
また、放電灯点灯装置には、放電灯の絶縁破壊直後にエネルギを供給するコンデンサに直列接続したスイッチと、放電灯に流れる電流を検出する電流検出回路とを備え、検出した電流値に応じてスイッチを操作してコンデンサの充電・放電を行い、効率よく動作するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
また、放電灯の絶縁破壊直後にエネルギを供給するコンデンサの充電方向とは逆方向となるようにダイオードを上記のコンデンサと直列接続し、このダイオードと抵抗とスイッチとを並列接続した回路を備え、放電灯がアーク放電に移行した後、スイッチを閉じて上記のコンデンサを直流電流のリップル除去に活用するものがある(例えば、特許文献3参照)。
上記の各装置は、放電灯の絶縁破壊直後にコンデンサの蓄積エネルギを当該放電灯へ供給してグロー放電からアーク放電への転移を安定させているが、放電灯の点灯前後における電流検出用のシャント抵抗に流れる電流と制御手段の挙動を考慮していないため、点灯前後に発生する異常な挙動を避けることができない。
【0003】
【特許文献1】特開昭61−64099号公報(第2,3頁、第1,2図)
【特許文献2】特開平8−255688号公報(第3,4頁、図1)
【特許文献3】特開2005−322500号公報(第3〜5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の放電灯点灯装置は以上のように構成され、点灯開始時に絶縁破壊からアーク放電に至る転移エネルギを供給するコンデンサ(以下、点灯補助コンデンサと記載する)は、DC/DCコンバータの出力端子間に接続されている平滑コンデンサと並列になるように設けられ、放電灯バルブの出力電流を検出するシャント抵抗とDC/DCコンバータ等との接続点、あるいは、シャント抵抗とインバータ等の端子との接続点に一端を接続させている。
点灯補助コンデンサの一端をシャント抵抗とインバータの接続点に接続した回路では、点灯補助コンデンサを充電する電流がシャント抵抗に流れる。すると、DC/DCコンバータは、放電灯バルブが絶縁破壊を起こす前に、該放電灯バルブが絶縁破壊を起こして出力電流が流れたと誤認識し、点灯前に放電灯バルブへ印加する電圧の昇圧動作を制限して点灯を遅延させる、もしくは点灯動作を中断するなどの異常動作に陥ってしまうという課題があった。
【0005】
また、点灯補助コンデンサの一端をシャント抵抗とDC/DCコンバータとの接続点に接続した回路では、放電灯が絶縁破壊を起こした直後の大きな電流がシャント抵抗に流れ、放電灯点灯装置の動作を制御する制御手段等が、大きな検出電流に対して正規な電流を維持すべく制御動作を行い、DC/DCコンバータの出力電力を減少させてしまう。
然るに、放電灯が絶縁破壊を起こしてからアーク放電へ転移するまでの間に、当該放電灯へ供給される電流は点灯補助コンデンサの放電によるものであるが、この点灯補助コンデンサの放電は短時間で費えてしまう。そのため制御手段等は、再びDC/DCコンバータの出力を増加させるべく素早く反応する必要がある。このようなときにDC/DCコンバータの応答が遅れると、絶縁破壊直後の放電灯に対して充分な電流を供給することができず、放電灯に流れる電流が途絶えて点灯を失敗してしまうという課題があった。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、異常な点灯動作及び点灯失敗の発生を防いで絶縁破壊からアーク放電へ転移するエネルギを放電灯へ供給する放電灯点灯装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る放電灯点灯装置は、DC/DCコンバータの出力端子に接続している平滑コンデンサに対して並列に設けられ、電流検出用シャント抵抗の一端とDC/DCコンバータの出力端子との接続点に点灯補助コンデンサの一端を接続させる充電回路、及び、平滑コンデンサに対して並列に設けられ、電流検出用シャント抵抗の他端とインバータとの接続点に点灯補助コンデンサの一端を接続させる放電回路を備えた。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、電流検出用シャント抵抗の一端とDC/DCコンバータの出力端子との接続点に点灯補助コンデンサの一端を接続させる充電回路、及び、電流検出用シャント抵抗の他端とインバータとの接続点に点灯補助コンデンサの一端を接続させる放電回路を備えたので、点灯補助コンデンサの充電電流及び放電電流が電流検出用シャント抵抗に流れることがなく、点灯補助コンデンサの充電動作ならびに放電動作の影響を受けずに点灯動作の制御を行うことができ、異常な点灯動作制御及び点灯失敗を防ぐことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。図示した放電灯点灯装置は、直流電力を供給する電源1、電源1から入力した電圧を昇圧するDC/DCコンバータ2、DC/DCコンバータ2の出力電圧の極性を逐次反転させるインバータ3、DC/DCコンバータ2の出力電圧から高電圧を生成して放電灯バルブ5の放電電極間の絶縁破壊を生じさせるイグナイタ4、及び、DC/DCコンバータ2とインバータ3とを制御する制御部6を備えている。
【0010】
DC/DCコンバータ2は、一次及び二次巻線を有するトランス10と、トランス10の二次巻線に接続され、当該二次巻線に発生する電流を整流して高電位側の電圧を当該DC/DCコンバータ2の外部へ出力する整流ダイオード11と、制御部6の制御に応じてトランス10の一次巻線に流れる電流をON/OFFするスイッチ12とを備えている。なお、トランス10の一次巻線には電源1が接続されている。また、図示した装置では、電源1及びDC/DCコンバータ2の出力電圧の低電位側を接地して、グランドレベルとしている。
インバータ3は、DC/DCコンバータ2の生成した直流の点灯電圧を矩形波交流電圧に変換するもので、例えばMOSトランジスタから成るスイッチを四個使用してH型ブリッジ回路を構成し、各スイッチのON/OFF動作を個別に制御するように制御部6と接続構成されている。上記のH型ブリッジ回路の高電位側と低電位側の入力端子には、各々DC/DCコンバータ2の高電位側と低電位側の出力端子が接続され、当該H型ブリッジ回路の二つの出力端子には放電灯バルブ5が接続されている。インバータ3の出力端子と放電灯バルブ5の端子との間には、イグナイタ4が接続構成されている。
DC/DCコンバータ2の高電位側の出力端子と低電位側の出力端子との間には、当該DC/DCコンバータ2の出力電圧を平滑化する平滑コンデンサ13が接続されている。即ち、平滑コンデンサ13は、一端をDC/DCコンバータ2の整流ダイオード11のカソードに接続し、他端を接地している。なお、平滑コンデンサ13をDC/DCコンバータ2に含めて構成してもよい。
【0011】
DC/DCコンバータ2の低電位側の出力端子とインバータ3の低電位側の入力端子との接続線には、放電灯バルブ5に流れる電流、即ち放電灯点灯装置の出力電流検出用のシャント抵抗14が直列に接続されている。
DC/DCコンバータ2の高電位側の出力端子とインバータ3の高電位側の入力端子との接続線には、抵抗15の一端が接続されている。抵抗15の他端は点灯補助コンデンサ16の一端が接続されている。点灯補助コンデンサ16の他端には、抵抗17の一端及びダイオード18のカソードが接続されている。シャント抵抗14の一端、平滑コンデンサ13の他端、及びDC/DCコンバータ2の低電位側の出力端子を接続した接続点Aには、抵抗17の他端が接続されている。なお、接続点Aは接地されている。
【0012】
シャント抵抗14の他端とインバータ3の低電位側の入力端子とを接続した接続点Bには、ダイオード18のアノードが接続されている。また、シャント抵抗14の他端を含む接続点Bには、シャント抵抗14の両端電圧から放電灯バルブ5に流れる電流を検出するように制御部6が接続されている。上記のように抵抗15,17、ダイオード18、及び点灯補助コンデンサ16を接続し、抵抗15,17を備える点灯補助コンデンサ16の充電回路を構成し、また抵抗17及びダイオード18を備える点灯補助コンデンサ16の放電回路を構成する。このように、点灯補助コンデンサ16の充電回路ならびに放電回路は、平滑コンデンサ13に対して並列となるように設けられている。
【0013】
次に動作について説明する。
図2は、実施の形態1による放電灯点灯装置の動作を示す説明図である。この図は、図1の放電灯点灯装置が放電灯バルブ5の点灯を開始するときの、放電灯バルブ5の端子間に印加する電圧と放電灯バルブ5に流れる電流とを示しもので、上段に放電灯バルブ5の端子間電圧即ち放電灯点灯装置の出力電圧波形を、下段に放電灯点灯装置の出力電流波形を示している。なお、実施の形態1による放電灯点灯装置は、正電圧を用いて放電灯バルブ5を点灯させるものである。
放電灯バルブ5の点灯を開始するとき、制御部6は、DC/DCコンバータ2のスイッチ12を制御して電源1の電力をトランス10に供給し、DC/DCコンバータ2の動作を開始させる。トランス10は電源1から供給されている電源電圧を昇圧し、この電圧を整流ダイオード11によって整流して当該DC/DCコンバータ2の外部へ出力する。この出力電圧は、平滑コンデンサ13によってリップルなどが除去されてインバータ3に入力される。このとき制御部6はインバータ3を動作させていないので、DC/DCコンバータ2から出力された直流の高電圧が放電灯バルブ5の端子間に印加される。
【0014】
放電灯バルブ5の端子間に、DC/DCコンバータ2から出力された直流電圧の印加が開始されると、イグナイタ4がイグナイタパルスを発生させるための動作を開始する。また、点灯補助コンデンサ16の両端に、抵抗15及び抵抗17を介して上記の直流電圧が印加される。すると、図1に破線の矢印で示した充電電流Icが流れ、点灯補助コンデンサ16の充電が行われる。充電電流Icは、図1に示したようにDC/DCコンバータ2の高電位側の出力端子に接続されている抵抗15を介して点灯補助コンデンサ16へ流れ込み、抵抗17を介してDC/DCコンバータ2の低電位側の出力端子へ回帰する。点灯補助コンデンサ16の充電電流Icは、ダイオード18によってシャント抵抗14の他端即ち接続点Bへ流れないように抑止され、全て抵抗17へ流れ込む。即ち、充電電流Icは、シャント抵抗14を含んでいない充電回路を流れる。このとき、放電灯点灯装置の出力電圧は、放電灯バルブ5の放電電極間において放電が発生していないことから、図2に示したOCV(Open Circuit Voltage)即ち開回路電圧となる。
【0015】
抵抗15及び抵抗17によって充電電流Icの値が抑制されることから、OCVは点灯補助コンデンサ16の充電が満了するまで比較的穏やかな変化曲線を描いて増大する。このとき、上記のように放電灯バルブ5は放電を行っていないので、シャント抵抗14が検出している出力電流は、図2に示したように電流が流れていないことを示すゼロ値で一定となっている。
【0016】
点灯補助コンデンサ16の充電が満了して出力電圧の値が概ね一定になると、イグナイタ4が高電圧のイグナイタパルスを発生して放電灯バルブ5へ出力する。このとき、OCVにイグナイタパルスが重畳され、高電圧が放電灯バルブ5の放電電極間に印加されて絶縁破壊が生じる。絶縁破壊が発生した直後、放電灯バルブ5の端子には大電流が流れて電極間電圧が急激に減少する。
絶縁破壊が発生した直後は放電灯バルブ5の放電電極が暖まっていないため、当該放電電極において熱電子の放出が活発に行われず、放電点灯が立ち消えになる。そこで、絶縁破壊が発生した後、上記の放電電極の温度が上昇してアーク放電へ転移するまでの間、点灯補助コンデンサ16に蓄積しておいたエネルギを放電灯バルブ5へ供給して放電点灯を補助する。即ち、点灯補助コンデンサ16から、放電灯バルブ5の放電電極を暖める熱源となるエネルギを供給する。
【0017】
放電灯バルブ5に絶縁破壊が生じて電流が流れると、当該放電灯バルブ5の端子間電圧、即ち図2の出力電圧も急峻に低下し、DC/DCコンバータ2とインバータ3とを接続する二つの接続線間の電位差が小さくなって、点灯補助コンデンサ16から図1に破線の矢印で示した放電電流Idが流れ出る。放電電流Idは、抵抗15を介してDC/DCコンバータ2とインバータ3とを接続する高電位側の接続線に流れ込み、放電灯バルブ5へ流れる。またさらに、放電灯バブ5からインバータ3を介して接続点Bへ流れ、接続点Bにアノードを接続しているダイオード18へ流れ込み、当該ダイオード18の順方向電流として点灯補助コンデンサ16に回帰する。このように放電電流Idは、シャント抵抗14が含まれていない放電回路を流れる。
制御部6は、シャント抵抗14を用いて検出している出力電流の状態から、点灯補助コンデンサ16の放電により放電灯バルブ5の放電現象が安定したことを検知すると、インバータ3を制御して放電灯バルブ3に印加する電位を所定の周期で反転させ、定常状態の放電点灯を継続させる。
【0018】
図1に示したように点灯補助コンデンサ16と直列接続されている抵抗15は、点灯補助コンデンサ16から流れ出る放電電流Idを制限するもので、放電灯バルブ5が絶縁破壊を起してからアーク放電へ転移するまでの間、転移エネルギを供給し続けることができるように点灯補助コンデンサ16の放電時間を延伸させている。
点灯補助コンデンサ16に流れる充電電流Icは、点灯補助コンデンサ16の両端に各々接続されている抵抗15と抵抗17によって制限される。点灯補助コンデンサ16の充電回路において抵抗15と抵抗17は直列接続されていることから、充電時の抵抗17の電力的負担が軽減され、当該抵抗17を小型化することができる。
【0019】
例えば、車載ヘッドランプ用の35[W]の水銀を使用していない放電灯の定格電流は0.83[A]で、上記と同様な35[W]の水銀を使用している放電灯の定格電流0.41[A]よりも大きい。このように水銀を使用していない放電灯は通電電流が多く、太い電極が使用されている。太い電極を備えている水銀を使用していない放電灯を点灯させるときには、上記の太い電極を素早く加熱するために大きな電力が必要になる。
点灯補助コンデンサ16は、前述のように放電灯バルブ5の絶縁破壊直後にグロー放電をアーク放電に至らしめ、さらにアーク放電を増長する熱源となるエネルギ量を供給するものである。水銀を使用していない放電灯バルブ5を点灯させる放電灯点灯装置には、大きな容量の点灯補助コンデンサ16を使用することになる。
点灯補助コンデンサ16の容量を増大させると充電電流Icも必然的に大きくなるが、図1に示したように充電電流Icと放電電流Idの流れる経路を分離して、即ち充電回路と放電回路とを分離して備えると、充電回路はDC/DCコンバータ2の負担を増大させない小さな充電電流Icによって充電動作を行うように、また、放電回路は太い電極を加熱する大きな放電電流Idを流すように、各々の回路に任意の定数を選択して回路動作を設定することができ、好ましい回路構成が可能になる。
【0020】
図1に示した点灯補助コンデンサ16は、前述のように放電灯バルブ5が絶縁破壊を起した直後に、アーク放電へ至らしめる転移エネルギ即ち上記の放電電極のアーク放電を増長するエネルギを供給することから、放電電極の温度を上昇させる熱エネルギを蓄えることができる容量を備える必要がある。また、平滑コンデンサ13は、DC/DCコンバータ2の出力電圧からリップルを吸収する容量が必要であるが、DC/DCコンバータ2の出力電圧が放電灯バルブ5の放電電極間の電圧変動に素早く追従することができるように容量を小さくすることが好ましい。そのため、平滑コンデンサ13には上記のような動作条件を満足する適切な容量が存在し、点灯補助コンデンサ16に比べて小容量にならざるを得ない。
【0021】
平滑コンデンサ13に比べて大きな容量を有する点灯補助コンデンサ16を充電するとき、充電電流Icが大きくならないように抵抗15,17によって制限して、小さな容量の平滑コンデンサ13を用いているDC/DCコンバータ2の出力電圧に影響を与えないようにし、放電灯バルブ5の点灯動作による電圧変動に対してDC/DCコンバータ2が素早く出力電圧を変動させることができるようにしている。
上記のような各動作条件を満足させるため、例えば、水銀を使用していない車載用ヘッドランプ用の35[W]の放電灯を点灯させる放電灯点灯装置として、点灯補助コンデンサ16の容量C1を2.2[μF]、平滑コンデンサ13の容量C2を0.33[μF]、抵抗15の抵抗値R1を680[Ω]、抵抗17の抵抗値R2を120[Ω]として回路構成する。
【0022】
点灯補助コンデンサ16の充電電流Icを制限しながら放電電流Idを適切に流すように、図1に示したようにダイオード18を接続して放電回路を構成すると、前述のように抵抗15,17の抵抗値を定めたときには充電抵抗が800[Ω]、放電抵抗が120[Ω]となる。このように充電抵抗の抵抗値R1+R2と放電抵抗の抵抗値R2とを任意に設定することができ、水銀を使用していない放電灯バルブのように大きな放電電流Idが必要になる放電灯バルブ5を点灯させる放電灯点灯装置として好ましい動作が可能になる。
【0023】
例えば、車載用ヘッドランプ用の35[W]の水銀を使用していない放電灯バルブの定常点灯時の等価抵抗値は、50[Ω]程である。点灯補助コンデンサ16の充電回路と水銀を使用していない放電灯バルブ5とを、DC/DCコンバータ2の負荷として考えた場合、充電回路の抵抗値、即ち抵抗15と抵抗17とを直列接続した抵抗値800[Ω]は、放電灯バルブ5の等価抵抗値50[Ω]に対して10倍以上の抵抗である。そのため、この充電回路は、放電灯バルブ5を点灯させる動作中においてDC/DCコンバータ2の応答性を妨げない軽い負荷となる。従って、図1のように回路構成すると、放電灯バルブ5を点灯するとき、点灯補助コンデンサ16の充電動作による影響、即ち充電回路の挙動を考慮する必要がなくなる。なお、点灯補助コンデンサ16の放電動作ではDC/DCコンバータ2に負荷を生じさせないので、放電回路の挙動を考慮する必要はない。
【0024】
図3は、放電灯点灯装置の一般的な構成を示す回路図である。図1に示したものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を使用し、その説明を省略する。この図は、DC/DCコンバータ2とインバータ3との接続線に設けられている、放電灯バルブ5が絶縁破壊を起してからアーク放電に至らしめる転移エネルギを放電灯バルブ5へ供給する一般的な回路の一例を示したものである。図3に示した点灯補助コンデンサ16は、その一端をDC/DCコンバータ2の高電位側の出力端子とインバータ3の高電位側の入力端子との接続線に接続し、他端を抵抗17の一端及びダイオード18のカソードに接続している。図3に示した抵抗17の他端及びダイオード18のアノードは、シャント抵抗14の他端とインバータ3の低電位側の入力端子とを接続している接続点Bに接続されている。他の部分は、図1に示した装置と同様に回路構成されている。なお、図3の回路には抵抗15が備えられていないが、適宜使用することもある。
【0025】
図4は、放電灯点灯装置の動作を示す説明図である。この図は、図3に示した回路構成の装置が放電灯バルブ5を点灯させるときの動作を示したもので、上段に放電灯バルブ5の端子間電圧即ち放電灯点灯装置の出力電圧波形を、中段にシャント抵抗14によって検出された出力電流波形を、また、下段に当該放電灯点灯装置のDC/DCコンバータ2の出力電力の増減を表す波形を示している。前述の図2を用いた動作説明と同様に、図3の放電灯点灯装置が放電灯バルブ5の点灯を開始するときには、制御部6がDC/DCコンバータ2を制御して電源1からの電源電圧を昇圧し、この電圧を整流してインバータ3に入力する。このとき制御部6は、インバータ3を動作させていないので、DC/DCコンバータ2から出力された直流の高電圧が放電灯バルブ5の端子間に印加される。
【0026】
放電灯バルブ5の端子間にDC/DCコンバータ2から出力された直流電圧の印加が開始されると、点灯補助コンデンサ16に直流電圧が印加され、図3に破線の矢印で示した充電電流Icが流れる。この充電電流Icは、DC/DCコンバータ2の高電位側の出力端子から点灯補助コンデンサ16へ流れ込み、点灯補助コンデンサ16から抵抗17及びシャント抵抗14を通ってDC/DCコンバータ2の低電位側の出力端子へ回帰する。そのため、図4の上段に示した出力電圧波形のOCVが生じている期間において、実際には放電灯バルブ5から出力電流が流れ出ていないが、図4の中段に示したようにシャント抵抗14が検出した出力電流には充電電流Icが含まれ、放電灯バルブ5に電流が流れていることを示す検出結果が制御部6へ入力されてしまう。すると、制御部6は、当該充電電流Icを含んでいる誤った検出結果に応じてDC/DCコンバータ2の動作を制御し、図4の下段に示したようにDC/DCコンバータ2の出力電力を減少させてしまう。このように出力電流の誤検出に対応してDC/DCコンバータ2の出力電力が制限されると、DC/DCコンバータ2もしくは当該放電灯点灯装置の出力電圧の上昇が緩慢になり、また、イグナイタ4がイグナイタパルスを発生して放電灯バルブ5を点灯させるまでの時間が遅延されてしまう。
【0027】
図5は、放電灯点灯装置の一般的な他の構成を示す回路図である。図1及び図3に示したものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を使用し、その説明を省略する。この図は、図3に示したものと同様に、放電灯バルブ5が絶縁破壊を起してからアーク放電に至らしめる転移エネルギを放電灯バルブ5へ供給する一般的な回路の他の一例を示したものである。図5に示した点灯補助コンデンサ16は、その一端をDC/DCコンバータ2の高電位側の出力端子とインバータ3の高電位側の入力端子との接続線に接続し、他端を抵抗17の一端及びダイオード18のカソードに接続している。図5に示した抵抗17の他端及びダイオード18のアノードは、DC/DCコンバータ2の低電位側の出力端子とシャント抵抗14の一端とを接続している接続点Aに接続されている。他の部分は、図3に示した装置と同様に回路構成されている。
【0028】
図6は、放電灯点灯装置の動作を示す説明図である。この図は、図5に示した回路構成の装置が放電灯バルブ5を点灯させるときの動作を示したもので、図4と同様に、上段に放電灯バルブ5の端子間電圧即ち放電灯点灯装置の出力電圧波形を、中段にシャント抵抗14によって検出された出力電流波形を、また、下段に当該放電灯点灯装置のDC/DCコンバータ2の出力電力の増減を表す波形を示している。
図5の放電灯点灯装置が放電灯バルブ5の点灯を開始するときには、これまで説明した装置と同様に、制御部6がDC/DCコンバータ2を制御して電源1からの電源電圧を昇圧し、この電圧を整流してインバータ3へ入力する。このとき制御部6は、インバータ3を動作させていないので、DC/DCコンバータ2から出力された直流の高電圧が放電灯バルブ5の端子間に印加される。
【0029】
放電灯バルブ5の端子間に、DC/DCコンバータ2から出力された直流電圧の印加が開始されると、点灯補助コンデンサ16に直流電圧が印加され、図5に破線の矢印で示した充電電流Icが流れ、点灯補助コンデンサ16に充電が行われる。また、このときイグナイタ4がイグナイタパルスを発生させるための動作を開始する。
点灯補助コンデンサ16の充電が満了となってOCVが概ね一定になり、また、イグナイタ4が作動してイグナイタパルスを出力し、放電灯バルブ5に絶縁破壊を発生させると、図5に破線の矢印で示した放電電流Idが流れ、当該放電電流Idと共に絶縁破壊直後の大電流がシャント抵抗14へ流れ込む。そのため、シャント抵抗14によって検出される出力電流は上記の放電電流Idを含む大電流になり、このような大電流を検知した制御部6は、DC/DCコンバータ2の出力電力を大幅に低下させる制御を行うことになる。
【0030】
制御部6が、シャント抵抗14を用いて検出した出力電流に応じてDC/DCコンバータ2の制御を行うときには遅延時間が生じる。この制御遅延時間により、絶縁破壊直後の大電流が減少したときに前述のようなDC/DCコンバータ2の出力電力を低下させる制御が行われ、点灯補助コンデンサ16からの放電エネルギを加えても電力不足となって放電灯バルブ5に流れる電流が少なくなり放電が途切れる場合がある。即ち、放電灯バルブ5が絶縁破壊を起した後、アーク放電へ転移することが難しい状態になって点灯失敗となる。
【0031】
図1に示した放電灯点灯装置は、図3,4を用いて説明した装置と異なり、シャント抵抗14に点灯補助コンデンサ16の充電電流Icが流れることに起因する絶縁破壊前の電流誤検出が起こらないので、上記の誤検出に応じた異常な制御を行うことを防ぐことができる。また、図5,6を用いて説明した装置と異なり、点灯補助コンデンサ16の放電電流Idがシャント抵抗14に流れ込むことがないので、制御部6がDC/DCコンバータ2を制御するときの制御遅延に起因する絶縁破壊後の電力不足が発生しないようにして点灯失敗を防ぐことができる。
【0032】
以上のように実施の形態1によれば、充電電流Icがシャント抵抗14の一端とDC/DCコンバータ2の出力端子との接続点Aを流れてシャント抵抗14には流れないように点灯補助コンデンサ16の充電回路を構成し、また、放電電流Idがシャント抵抗14の他端とインバータ3の入力端子即ち放電灯バルブ5の端子との接続点Bを流れてシャント抵抗14には流れないように放電回路を構成したので、シャント抵抗14を用いて放電灯バルブ5に流れる電流を検出している制御部6が当該電流の誤検出に応じてDC/DCコンバータ2の制御を行うことを防ぎ、点灯失敗ならびに異常な点灯制御を行うことを防ぐことができるという効果がある。
【0033】
実施の形態2.
図7は、この発明の実施の形態2による放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。図1に示したものと同一あるいは相当する部分に同じ符号を使用し、その説明を省略する。図7に示した装置は、負電圧によって放電灯バルブ5を点灯させるように構成したもので、図1に示した放電灯点灯装置と同様に構成される部分の重複説明を省略する。
整流ダイオード11のカソード即ちDC/DCコンバータ2の高電位側の出力端子と、インバータ3の入力端子即ち放電灯バルブ5の端子との間にはシャント抵抗14が直列接続されている。DC/DCコンバータ2の高電位側の出力端子とシャント抵抗14の一端が接続されている接続点Xには抵抗17の一端が接続されている。シャント抵抗14の他端とインバータ3の入力端子が接続されている接続点Yにはダイオード18のカソードが接続され、この接続点Yは接地されている。なお、DC/DCコンバータ2の低電位側の出力端子とインバータ3の入力端子とを接続する接続線は、図1に示したものと異なり接地されていない。
【0034】
抵抗17の他端及びダイオード18のアノードは、点灯補助コンデンサ16の一端と接続されている。点灯補助コンデンサ16の他端は抵抗15の一端に接続されている。抵抗15の他端は、DC/DCコンバータ2の低電位側の出力端子とインバータ3の入力端子との間の接続線に接続されている。制御部6は、シャント抵抗14の一端が接続される接続点Xに接続して、シャント抵抗14の両端電圧から出力電流即ち放電灯バルブ5に流れる電流を検出するように接続構成されている。なお、前述のようにシャント抵抗14の他端は接地されている。また、DC/DCコンバータ2のトランス10は1次巻線と2次巻線が絶縁されている。電源1は負電極を接地している。このように、放電灯バルブ5に印加される高電位側の電圧が接地レベルとなるように回路構成されている。また、点灯補助コンデンサ16の充電回路ならびに放電回路は、平滑コンデンサ13に対して並列となるように設けられている。
【0035】
次に動作について説明する。
実施の形態1で説明した放電灯点灯装置と同様な動作について重複説明を省略する。
図7に示した放電灯バルブ5の点灯を開始するとき、制御部6はDC/DCコンバータ2を制御して電源1からの電圧を昇圧する。昇圧された電圧がDC/DCコンバータ2の出力端子に生じると、図7に破線の矢印で示したように充電電流Icが流れる。この充電電流Icは、DC/DCコンバータ2の高電位側の出力端子から抵抗17を介して点灯補助コンデンサ16へ流れる。点灯補助コンデンサ16に流れた充電電流Icは、抵抗15を介してDC/DCコンバータ2の低電位側の出力端子に回帰する。シャント抵抗14を流れた電流は、前述のように接続点Yにアノードを接続しているダイオード18によって点灯補助コンデンサ16へ流れることが抑止される。即ち、シャント抵抗14には点灯補助コンデンサ16を充電する電流が流れない。なお、図7に示したように回路接続されたダイオード18は、点灯補助コンデンサ16から流れ出す放電電流Idを導通させる。
このように、図7に示した点灯補助コンデンサ16の充電回路にはシャント抵抗14が含まれず、制御部6は、実施の形態1で説明したものと同様に充電電流Icを誤検出することなくDC/DCコンバータ2の制御を行い、異常な点灯制御を防ぐことができる。
【0036】
イグナイタ4が動作して放電灯バルブ5の放電電極間に絶縁破壊が起こると、その直後に点灯補助コンデンサ16から図7に破線の矢印で示した放電電流Idが流れ、アーク放電に転移するためのエネルギが放電灯バルブ5に供給される。図7の放電電流Idは、点灯補助コンデンサ16からダイオード18へ流れ、接続点Yからインバータ3を通って放電灯バルブ5へ流れ、また、放電灯バルブ5からインバータ3を通り、さらに抵抗15を通って点灯補助コンデンサ16に回帰する。このように点灯補助コンデンサ16の放電回路にはシャント抵抗14が含まれず、制御部6は、実施の形態1で説明したものと同様に放電電流Idを検出することなくDC/DCコンバータ2の出力電力を制御し、当該DC/DCコンバータ2の応答遅れによる電力不足が発生して放電点灯が途絶えることを防ぐことができる。
【0037】
シャント抵抗14は、その一端を接地して検出電流を示す信号レベルが制御部6へ入力することができるレベルとなるようにしているため、DC/DCコンバータ2とインバータ3即ちDC/DCコンバータ2と放電灯バルブ5とを接続する二つの接続線のうち、接地レベルとなる接続線に直列接続される。そのため、図7に示した負電圧で放電灯バルブ5を点灯させる放電灯点灯装置では、DC/DCコンバータ2の高電位側の出力端子にシャント抵抗14を接続しているが、図7に示したように抵抗17、ダイオード18、及び抵抗15を点灯補助コンデンサ16へ回路接続することにより、点灯補助コンデンサ16の充電回路及び放電回路が動作するときには、実施の形態1で説明したものと同様にシャント抵抗14に充電電流Icならびに放電電流Idが流れない。
【0038】
以上のように実施の形態2によれば、充電電流IcがDC/DCコンバータ2の高電位側の出力端子とシャント抵抗14の一端との接続点Xを流れてシャント抵抗14に流れないように充電回路を構成し、放電電流Idがインバータ3即ち放電灯バルブ5の端子とシャント抵抗14の他端との接続点Yを流れてシャント抵抗14に流れないように放電回路を構成したので、負電圧を用いて放電灯バルブ5を点灯させるときでも点灯補助コンデンサ16の充電電流Ic及び放電電流Idがシャント抵抗14を流れないようにすることができ、シャント抵抗14を用いて放電灯バルブ5に流れる電流を検出している制御部6が当該電流の誤検出に応じてDC/DCコンバータ2の制御を行うことを防ぎ、点灯失敗ならびに異常な点灯制御を行うことを防ぐことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施の形態1による放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。
【図2】実施の形態1による放電灯点灯装置の動作を示す説明図である。
【図3】放電灯点灯装置の一般的な構成を示す回路図である。
【図4】放電灯点灯装置の動作を示す説明図である。
【図5】放電灯点灯装置の一般的な他の構成を示す回路図である。
【図6】放電灯点灯装置の動作を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態2による放電灯点灯装置の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0040】
1 電源、2 DC/DCコンバータ、3 インバータ、4 イグナイタ、5 放電灯バルブ、6 制御部、10 トランス、11 整流ダイオード、12 スイッチ、13 平滑コンデンサ、14 シャント抵抗、15,17 抵抗、16 点灯補助コンデンサ、18 ダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯の点灯電圧を生成するDC/DCコンバータ、前記DC/DCコンバータの生成する点灯電圧を矩形波交流に変換するインバータ、前記DC/DCコンバータの動作を前記放電灯の点灯に必要な電流に制御する制御手段、前記放電灯が絶縁破壊を起した直後に該放電灯へエネルギを供給する点灯補助コンデンサ、及び、DC/DCコンバータの出力端子と前記インバータとの間に直列接続され前記放電灯に流れる電流を検出して前記制御手段へ入力する電流検出用シャント抵抗を備える放電灯点灯装置において、
前記DC/DCコンバータの出力端子に接続している平滑コンデンサに対して並列に設けられ、前記電流検出用シャント抵抗の一端とDC/DCコンバータの出力端子との接続点に接続させた前記点灯補助コンデンサの充電回路、
及び、前記平滑コンデンサに対して並列に設けられ、前記電流検出用シャント抵抗の他端とインバータとの接続点に接続させた前記点灯補助コンデンサの放電回路、
を備えることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
水銀を使用していない放電灯を点灯させることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
点灯補助コンデンサの充電回路は、電流検出用シャント抵抗の一端及びDC/DCコンバータの出力端子の接続点と点灯補助コンデンサとの間に充電電流を制限する抵抗を備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
点灯補助コンデンサの放電回路は、電流検出用シャント抵抗の他端及びインバータの入力端子の接続点と点灯補助コンデンサとの間に、充電電流を抑止し放電電流を通電するダイオードを備えることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
放電灯を正電位で点灯させることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
放電灯を負電位で点灯させることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−67347(P2010−67347A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−696(P2007−696)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】