説明

故障診断装置、故障診断方法、画像形成装置及び記録媒体

【課題】複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置の定着部の故障に関する故障診断装置、故障診断方法、かかる故障診断装置あるいはかかる故障診断方法によりかかる故障を診断される画像形成装置、かかる故障診断方法を実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読取可能な記録媒体の提供。
【解決手段】画像形成装置100の定着部の駆動負荷量を取得する駆動負荷量取得手段によって取得されたかかる駆動負荷量を記録する駆動負荷量記録手段によって記録された複数のかかる駆動負荷量の平均を示す第1の特徴量を算出する第1の特徴量算出手段113と、かかる複数の用紙搬送時間のばらつきを示す第2の特徴量を算出する第2の特徴量算出手段113と、第1の特徴量と第2の特徴量とを用いて、定着部の障害の原因の推定を含んだ故障を診断する診断手段113とを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置の故障、特に定着部の故障に関する故障診断装置、故障診断方法、かかる故障診断装置あるいはかかる故障診断方法によりかかる故障を診断される画像形成装置、かかる故障診断方法を実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読取可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置は、多くのユニットあるいは部品で構成されている。これらユニット等の故障や寿命により画像形成装置の異常が起きた場合には、その交換を行うなどの修理やメンテナンスを行う必要がある。修理等を施す間は、画像形成装置の一部、あるいは全ての機能を停止させる必要があるが、修理等を行なうにあたって、異常の原因を突き止めるために、長時間を要することもあり、ユーザは、修理等の正味時間のみならず、この間も、画像形成装置の使用ができなくなるという不便を被るという問題がある。これは異常の起きる前に異常が起こりうる部分についてメンテナンスを施す場合も同様に生じる問題である。この問題を解決するには、画像形成装置の異常がどこで起きているのかもしくは起こるのか診断し、メンテナンス等を施すことにより、ダウンタイムを低減することが望まれる。
【0003】
この点、従来より、故障箇所を推定する技術(たとえば、〔特許文献1〕参照)、故障箇所や故障を起こす可能性のある箇所の候補を抽出する技術(たとえば、〔特許文献2〕参照)、装置の異常状態の有無を判別したり、装置の故障の発生を予測したりする技術(たとえば、〔特許文献3〕参照)などが提案されている。
【0004】
一方、かかる画像形成装置に備えられている構成のうち、一般に部品点数が多く、他の構成と比較して相対的にコストの大きい構成として、定着装置がある。定着装置は、部品点数が多いことから、その不具合や故障の原因には様々な原因が考えられるため、上述の問題と同様の問題、たとえば、メンテナンスを行う時間が長時間化する傾向が強いとともに、原因とは異なる箇所の不要なメンテナンスを行なってしまう可能性があるという問題が定着装置自体に当てはまる。よって同様に、定着装置におけるかかる問題を解決するには、定着装置の異常がどこで起きているのかもしくは起こるのか診断し、メンテナンス等を施すことにより、ダウンタイムを低減することが重要である。
【0005】
この点、出願人は、先に、特願2009−163382において、かかる画像形成装置に備えられている定着部について、定着部における用紙搬送時間に関連する障害の原因の推定を含む故障を診断する故障診断装置を提案したところである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、定着部の障害の原因は、かかる用紙搬送時間に関連するものに限られないため、さらに他の障害の原因についても対応可能な技術を提案することが望まれるところである。
【0007】
本発明は、かかる要望に対応するための、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置の定着部の故障に関する故障診断装置、故障診断方法、かかる故障診断装置あるいはかかる故障診断方法によりかかる故障を診断される画像形成装置、かかる故障診断方法を実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読取可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、画像形成装置の定着部の障害に関する故障診断装置であって、前記定着部の駆動負荷量を取得する駆動負荷量取得手段によって取得された前記駆動負荷量を記録する駆動負荷量記録手段によって記録された複数の前記駆動負荷量の平均を示す第1の特徴量を算出する第1の特徴量算出手段と、前記駆動負荷量記録手段によって記録された複数の前記駆動負荷のばらつきを示す第2の特徴量を算出する第2の特徴量算出手段と、少なくとも第1の特徴量算出手段によって算出された第1の特徴量と第2の特徴量算出手段によって算出された第2の特徴量とを用いて、前記定着部の障害の原因の推定を含んだ故障を診断する診断手段とを有する故障診断装置にある。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の故障診断装置において、前記駆動負荷量記録手段によって記録された複数の前記駆動負荷量の中の最大値を示す第3の特徴量を算出する第3の特徴量算出手段を有し、前記診断手段は、少なくとも第1の特徴量算出手段によって算出された第1の特徴量と第2の特徴量算出手段によって算出された第2の特徴量と第3の特徴量算出手段によって算出された第3の特徴量とを用いて、前記故障を診断することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の故障診断装置において、前記診断手段は、前記故障の予備的な診断結果を算出するための、ブースティング法を用いて作成されたスタンプ弱判別器を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の故障診断装置において、前記診断手段は、前記スタンプ弱判別器によって算出した前記診断結果を用いて重み付き多数決を行なって前記故障を診断するための重み付き多数決計算手段を有することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の故障診断装置において、前記診断手段は、前記定着部の障害の、複数の原因を推定するものであり、各原因について、前記故障を診断したときに、当該原因及びこれを含む前記故障を報知するための出力を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載の故障診断装置において、前記診断手段は、診断する故障が、前記定着部に備えられ記録媒体に当接する定着部材への離型剤の供給不良に関することを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の故障診断装置において、前記診断手段は、推定する前記定着部の障害の原因が、前記定着部材に離型剤を供給するための供給部材の劣化に関することを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項6または7記載の故障診断装置において、前記診断手段は、推定する前記定着部の障害の原因が、前記定着部材に供給される離型剤をろ過するろ過部材の劣化に関することを特徴とする。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項1ないし8の何れか1つに記載の故障診断装置において、前記駆動負荷量取得手段は前記定着部の駆動電流に基づいて前記駆動負荷量を取得することを特徴とする。
【0017】
請求項10記載の発明は、画像形成装置の定着部の障害に関する故障診断方法であって、前記定着部の駆動負荷量を取得する駆動負荷量取得手段によって取得された前記駆動負荷量を記録する駆動負荷量記録手段によって記録された複数の前記駆動負荷量の平均を示す第1の特徴量を算出する第1の特徴量算出手段と、前記駆動負荷量記録手段によって記録された複数の前記駆動負荷量のばらつきを示す第2の特徴量を算出する第2の特徴量算出手段と、少なくとも第1の特徴量算出手段によって算出された第1の特徴量と第2の特徴量算出手段によって算出された第2の特徴量とを用いて、前記定着部の障害の原因の推定を含んだ故障を診断する診断手段とを用いる故障診断方法にある。
【0018】
請求項11記載の発明は、前記駆動負荷量取得手段を有し、請求項1ないし9の何れか1つに記載の故障診断装置、または、請求項10記載の故障診断方法により、前記故障を診断される画像形成装置にある。
【0019】
請求項12記載の発明は、請求項10記載の故障診断方法を実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読取可能な記録媒体にある。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、画像形成装置の定着部の障害に関する故障診断装置であって、前記定着部の駆動負荷量を取得する駆動負荷量取得手段によって取得された前記駆動負荷量を記録する駆動負荷量記録手段によって記録された複数の前記駆動負荷量の平均を示す第1の特徴量を算出する第1の特徴量算出手段と、前記駆動負荷量記録手段によって記録された複数の前記駆動負荷のばらつきを示す第2の特徴量を算出する第2の特徴量算出手段と、少なくとも第1の特徴量算出手段によって算出された第1の特徴量と第2の特徴量算出手段によって算出された第2の特徴量とを用いて、前記定着部の障害の原因の推定を含んだ故障を診断する診断手段とを有する故障診断装置にあるので、定着部の駆動負荷量を用いて行われる故障の診断が障害の原因の推定を含むため、故障の診断が行われたときの修理やメンテナンスが容易化可能であり、またこれによりダウンタイムを軽減可能な、信頼性の高い故障診断装置を提供することができる。
【0021】
前記駆動負荷量記録手段によって記録された複数の前記駆動負荷量の中の最大値を示す第3の特徴量を算出する第3の特徴量算出手段を有し、前記診断手段は、少なくとも第1の特徴量算出手段によって算出された第1の特徴量と第2の特徴量算出手段によって算出された第2の特徴量と第3の特徴量算出手段によって算出された第3の特徴量とを用いて、前記故障を診断することとすれば、定着部の駆動負荷量を用いて行われる故障の診断に第1の特徴量、第2の特徴量のみならず第3の特徴量が用いられ、故障の診断が障害の原因の推定を含むとともに、故障の診断精度が向上するため、故障の診断が行われたときの修理やメンテナンスがより容易化可能であり、またこれによりダウンタイムをより軽減可能な、信頼性の高い故障診断装置を提供することができる。
【0022】
前記診断手段は、前記故障の予備的な診断結果を算出するための、ブースティング法を用いて作成されたスタンプ弱判別器を備えていることとすれば、定着部の駆動負荷量を用いて行われる故障の診断を高速且つ高精度で行うことができるとともに、故障の診断が障害の原因の推定を含むため、故障の診断が行われたときの修理やメンテナンスがより容易化可能であり、またこれによりダウンタイムをより軽減可能な、信頼性の高い故障診断装置を提供することができる。
【0023】
前記診断手段は、前記スタンプ弱判別器によって算出した前記診断結果を用いて重み付き多数決を行なって前記故障を診断するための重み付き多数決計算手段を有することとすれば、定着部の駆動負荷量を用いて行われる故障の診断をより高速且つ高精度で行うことができるとともに、故障の診断が障害の原因の推定を含むため、故障の診断が行われたときの修理やメンテナンスがさらに容易化可能であり、またこれによりダウンタイムをさらに軽減可能な、信頼性の高い故障診断装置を提供することができる。
【0024】
前記診断手段は、前記定着部の障害の、複数の原因を推定するものであり、各原因について、前記故障を診断したときに、当該原因及びこれを含む前記故障を報知するための出力を行うこととすれば、定着部の駆動負荷量を用いて行われる故障の診断が障害の複数の原因の推定を含むとともに、故障が診断されたときに各原因について当該原因及び故障を放置することができ、故障の診断が行われたときの修理やメンテナンスが高度に容易化可能であり、またこれによりダウンタイムを高度に軽減可能な、信頼性の極めて高い故障診断装置を提供することができる。
【0025】
前記診断手段は、診断する故障が、前記定着部に備えられ記録媒体に当接する定着部材への離型剤の供給不良に関することとすれば、定着部の駆動負荷量を用いて行われる故障の診断が障害の原因である定着部材への離型剤の供給不良発生の推定を含むため、定着部材への離型剤の供給不良が発生している場合にはこれが分かるために定着部全体を交換することなくピンポイントで修理等を行うことが可能となるから、故障の診断が行われたときの修理やメンテナンスがより容易化可能であり、またこれによりダウンタイムをより軽減可能な、信頼性の高い故障診断装置を提供することができる。
【0026】
前記診断手段は、推定する前記定着部の障害の原因が、前記定着部材に離型剤を供給するための供給部材の劣化に関することとすれば、定着部の駆動負荷量を用いて行われる故障の診断が障害の原因である、供給部材の劣化による定着部材への離型剤の供給不良発生の推定を含むため、供給部材の劣化による定着部材への離型剤の供給不良が発生している場合にはこれが分かるために定着部全体を交換することなく供給部材の交換によりピンポイントで修理等を行うことが可能となるから、故障の診断が行われたときの修理やメンテナンスがより容易化可能であり、またこれによりダウンタイムをより軽減可能な、信頼性の高い故障診断装置を提供することができる。
【0027】
前記診断手段は、推定する前記定着部の障害の原因が、前記定着部材に供給される離型剤をろ過するろ過部材の劣化に関することとすれば、定着部の駆動負荷量を用いて行われる故障の診断が障害の原因である、ろ過部材の劣化による定着部材への離型剤の供給不良発生の推定を含むため、ろ過部材の劣化による定着部材への離型剤の供給不良が発生している場合にはこれが分かるために定着部全体を交換することなくろ過部材の交換によりピンポイントで修理等を行うことが可能となるから、故障の診断が行われたときの修理やメンテナンスがより容易化可能であり、またこれによりダウンタイムをより軽減可能な、信頼性の高い故障診断装置を提供することができる。
【0028】
前記駆動負荷量取得手段は前記定着部の駆動電流に基づいて前記駆動負荷量を取得することとすれば、定着部の駆動負荷量として定着部の駆動電流を用いて行われる故障の診断が障害の原因の推定を含むため、定着部の駆動負荷量の取得が比較的容易であり、故障の診断が行われたときの修理やメンテナンスが容易化可能であり、またこれによりダウンタイムを軽減可能な、信頼性の高い故障診断装置を提供することができる。
【0029】
本発明は、画像形成装置の定着部の障害に関する故障診断方法であって、前記定着部の駆動負荷量を取得する駆動負荷量取得手段によって取得された前記駆動負荷量を記録する駆動負荷量記録手段によって記録された複数の前記駆動負荷量の平均を示す第1の特徴量を算出する第1の特徴量算出手段と、前記駆動負荷量記録手段によって記録された複数の前記駆動負荷量のばらつきを示す第2の特徴量を算出する第2の特徴量算出手段と、少なくとも第1の特徴量算出手段によって算出された第1の特徴量と第2の特徴量算出手段によって算出された第2の特徴量とを用いて、前記定着部の障害の原因の推定を含んだ故障を診断する診断手段とを用いる故障診断方法にあるので、定着部の駆動負荷量を用いて行われる故障の診断が障害の原因の推定を含むため、故障の診断が行われたときの修理やメンテナンスが容易化可能であり、またこれによりダウンタイムを軽減可能な、信頼性の高い故障診断方法を提供することができる。
【0030】
本発明は、前記駆動負荷量取得手段を有し、かかる故障診断装置、または、かかる故障診断方法により、前記故障を診断される画像形成装置にあるので、定着部の駆動負荷量を用いて行われる定着部の故障の診断が障害の原因の推定を含むため、定着部の故障の診断が行われたときの修理やメンテナンスが容易化可能であり、またこれによりダウンタイムを軽減可能な、信頼性の高い画像形成装置を提供することができる。
【0031】
本発明は、かかる故障診断方法を実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読取可能な記録媒体にあるので、故障の診断が障害の原因の推定を含むため、定着部の駆動負荷量を用いて行われる故障の診断が行われたときの修理やメンテナンスが容易化可能であり、またこれによりダウンタイムを軽減可能な、信頼性の高い故障診断方法を実現するためのプログラムを提供できる記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用した故障診断装置の概略を示した制御ブロック図である。
【図2】図1に示した画像形成装置の概略正面図である。
【図3】図2に示した画像形成装置に備えられた定着部の構成及び故障診断装置を示した制御ブロック図である。
【図4】定着部の駆動負荷量である定着駆動モータの電流値と定着部における通紙タイミングとの間に相関があることを示す相関図である。
【図5】第1ないし第3の特徴量が定着部の故障の診断に有効であることを示す相関図である。
【図6】第1ないし第3の特徴量を用いて作成した診断手段において、同診断手段を作成するのに用いたかかる特徴量を用いて定着部の故障の診断を行った結果を示す相関図である。
【図7】本発明を適用した故障診断装置を備えた画像形成装置の一部の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に本発明を適用した故障診断システムの概略を示す。
故障診断システム1は、本発明を適用した故障診断装置110と、故障診断装置110による故障診断対象である複数の画像形成装置100と、複数の画像形成装置100のうち所定のエリア内にある画像形成装置100同士を接続した第1のネットワークである複数のLAN120と、複数のLAN120と故障診断装置110とを接続した第2のネットワークであるインターネット130とを有している。
【0034】
故障診断システム1はまた、故障診断装置110の操作及び保守・管理、並びに、画像形成装置100の保守・管理等を行う管理者等のオペレータである操作者が操作する操作端末としての端末であるPC140と、故障診断装置110とPC140とを接続した第3のネットワークであるLAN150とを有している。
【0035】
故障診断装置110は、PC140に対するサーバとして構成されている。その他、故障診断装置110の詳細については後述する。
LAN120は、画像形成装置100が接続されているとともにインターネット130が接続されたHUB部121を備えている。ただし、LAN120、HUB部121、インターネット130は必須でなく、適宜組み合わせて用いられるものであって、画像形成装置100がインターネット130あるいは故障診断装置110に直接接続されていても良いし、LAN120が故障診断装置110に直接接続されていても良い。LAN120とLAN150とは同一のものであっても良い。
【0036】
図2に画像形成装置100の概略を示す。画像形成装置100は、複写機、プリンタ、ファクシミリの複合機であってフルカラーの画像形成を行うことができるようになっている。画像形成装置100は、プリンタ、ファクシミリとして用いられる場合には、LAN120あるいは電話回線等、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。
【0037】
画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをも転写材であり記録用紙であるシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。
【0038】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能な複数の像担持体としての潜像担持体である円筒状の感光体ドラム20BK、20Y、20M、20Cを並設したタンデム構造を採用したタンデム方式すなわちタンデム型のカラー画像形成装置である。
【0039】
感光体ドラム20BK、20Y、20M、20Cは、互いに同一径であり、画像形成装置100の本体99の内部のほぼ中央部に配設された無端ベルトである中間転写体たる中間転写ベルトとしての転写ベルト11の外周面側すなわち作像面側に、等間隔で並んでいる。転写ベルト11は、各感光体ドラム20BK、20Y、20M、20Cに対峙しながら矢印A1方向に移動可能となっている。
【0040】
感光体ドラム20BK、20Y、20M、20Cは、A1方向の上流側からこの順で並設されている。各感光体ドラム20BK、20Y、20M、20Cはそれぞれ、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの画像を形成するための、画像形成部としての作像部たる作像手段である画像ステーション60BK、60Y、60M、60Cに備えられている。
【0041】
各感光体ドラム20BK、20Y、20M、20Cに形成された可視像すなわちトナー像は、矢印A1方向に移動する転写ベルト11に対しそれぞれ重畳転写され、その後、記録媒体である転写媒体たる転写紙Sに一括転写されるようになっている。
【0042】
転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20BK、20Y、20M、20Cに形成されたトナー像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20BK、20Y、20M、20Cのそれぞれに対向する位置に配設された転写チャージャとしての1次転写ローラ12BK、12Y、12M、12Cによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして、各感光体ドラム20BK、20Y、20M、20Cと転写ベルト11との対向位置である転写位置にて行われる。
【0043】
画像形成装置100は、上下方向において中央位置を占める本体99と、本体99の上側に位置し原稿を読み取るスキャナとしての読取装置21と、読取装置21の上側に位置し原稿を積載され積載された原稿を読取装置21に向けて送り出すADFといわれる自動原稿給紙装置22と、本体99の下側に位置し感光体ドラム20BK、20Y、20M、20Cと中間転写ベルト11との間に向けて搬送される転写紙Sを積載した給紙テーブルとしてのシート給送装置23とを有している。
【0044】
画像形成装置100はまた、4つの画像ステーション60BK、60Y、60M、60Cと、各感光体ドラム20BK、20Y、20M、20Cの下方に対向して配設され、転写ベルト11を備えた中間転写装置である中間転写ユニットとしての転写ベルトユニット10と、転写ベルトユニット10の下方に対向して配設され、転写ベルト11上のトナー像を転写紙Sに転写する転写手段としての2次転写手段である2次転写装置47とを有している。
【0045】
画像形成装置100はまた、方向A1における2次転写装置47と画像ステーション60BKとの間において転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11上をクリーニングする中間転写ベルトクリーニング装置としての中間転写ベルトクリーニングユニットであるクリーニング装置32とを有している。
【0046】
画像形成装置100はまた、画像ステーション60BK、60Y、60M、60Cの上方に対向して配設された書き込み手段である光書き込み装置としての潜像形成手段たる光走査装置8と、2次転写装置47の下方において2次転写装置47に対向するように配設された中間転写体用廃トナー収納部34と、クリーニング装置32と中間転写体用廃トナー収納部34とを接続した図示しないトナー搬送経路とを有している。
【0047】
画像形成装置100はまた、シート給送装置23から搬送されてきた転写紙Sを、画像ステーション60BK、60Y、60M、60Cによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、転写ベルト11と2次転写装置47との間の2次転写部に向けて繰り出すレジストローラ対13と、転写紙Sの先端がレジストローラ対13に到達したことを検知する図示しないセンサとを有している。
【0048】
画像形成装置100はまた、トナー像を転写され矢印C1方向に搬送されることで進入してきた転写紙Sに同トナー像を定着させるためのベルト定着方式の定着ユニットとしての定着手段である定着部たる定着装置6と、定着装置6を経た転写紙Sを本体99の外部に排出する排紙ローラ7と、定着装置6に対向する位置に配設された開閉自在の側板89とを有している。
【0049】
画像形成装置100はまた、本体99の上部に配設され排紙ローラ7により本体99の外部に排出された転写紙Sを積載する排紙部としての排紙トレイ17と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーを充填された図示しないトナーボトルとを有している。
【0050】
画像形成装置100はまた、図3に示すように、画像形成装置100の動作等の全般を制御する制御手段としての制御部36と、LAN120が接続され制御部36によって制御されて故障診断装置110との通信を行う通信手段としての通信部37と、ユーザ等のオペレータすなわち操作者が画像形成装置100の操作を行う等するための操作パネル40とを備えている。
【0051】
図2に示すように、画像形成装置100は、排紙トレイ17が本体99の上方でかつ読取装置21の下側に位置した胴内排紙型の画像形成装置である。排紙トレイ17上に積載された転写紙Sは、同図において左方に対応するD1方向下流側に取り出されるようになっている。
【0052】
転写ベルトユニット10は、転写ベルト11の他に、1次転写ローラ12BK、12Y、12M、12Cと、中間転写ベルト11を巻き掛けられた、テンションローラ72と、中間転写ベルト11を介してクリーニング装置32に対向した駆動ローラを兼ねたクリーニング対向ローラ73と、中間転写ベルト11を介して2次転写装置47に対向した従動ローラであり張架ローラである2次転写対向ローラとしての転写入口ローラ74と、テンションローラ72をクリーニング対向ローラ73から離間する方向に付勢したバネ28と、転写ベルト11を張架している各ローラすなわちテンションローラ72、クリーニング対向ローラ73および転写入口ローラ74をそれぞれの両側において回転自在に支持するとともに、中間転写ベルト11を挟むように配置された図示しない一対の中間転写ユニット側板とを有している。
【0053】
2次転写装置47は、転写ベルト11への当接位置において転写ベルト11と同方向に回転する転写部材としての2次転写対向ローラである2次転写ローラ5と、2次転写ローラ5に接続され、転写ベルト11に対して2次転写バイアスを印加し、転写ベルト11上のトナー像を転写紙Sに転移させる図示しない高圧電源とを有している。高圧電源によって印可されるバイアス値は制御部36によって制御されるようになっている。
【0054】
2次転写ローラ5は、転写ベルト11を介して転写入口ローラ74と対向し、中間転写ベルト11との間に2次転写部を形成している。2次転写ローラ5は、SUS等の金属製芯金上に、導電性材料によって抵抗値を調整されたウレタン性の弾性体を被覆することで構成されている。
【0055】
クリーニング装置32は、転写入口ローラ73との対向位置において転写ベルト11に当接したクリーニングブレードとしての中間転写クリーニングブレード35を備えており、中間転写クリーニングブレード35により転写ベルト11上の転写残トナー、紙粉等の不要物を掻き取ることで転写ベルト11のクリーニングを行う。
【0056】
中間転写クリーニングブレード35は、転写ベルト11に対してカウンタ当接している。中間転写クリーニングブレード35によって掻き取られた転写残トナー等の不要物はトナー搬送経路を通り中間転写体用廃トナー収納部34に収納される。転写ベルト11の、中間転写クリーニングブレード35が当接するクリーニングニップ部に該当する部分、あるいは中間転写クリーニングブレード35のエッジ部、の少なくとも一方は、組み付け時に潤滑剤、トナー、ステアリン酸亜鉛等の塗布剤が塗布されており、クリーニングニップ部における中間転写クリーニングブレード35の捲れ上がりが防止されているとともに、クリーニングニップ部にダム層を形成することでクリーニング性能を高めている。
【0057】
光走査装置8は、光源としてレーザダイオードを用いたレーザビームスキャナであって、感光体ドラム20BK、20Y、20M、20Cの表面によって構成された被走査面をそれぞれ走査して露光し、静電潜像を形成するための、画像信号に基づくレーザービームとしてのレーザー光であるビームLBK、LY、LM、LCを発するものである。光走査装置8は、LEDを光源としても良い。
【0058】
光走査装置8は、本体99に対し着脱自在となっており、離脱時には、画像ステーション60BK、60Y、60M、60Cにそれぞれ備えられた後述するプロセスカートリッジをそれぞれ独立で本体99から上方に取り出せるようになっている。
【0059】
シート給送装置23は、転写紙Sを積載した給紙トレイ15と、給紙トレイ15上に積載された転写紙Sを送り出す給紙搬送ローラとしての給紙コロ16とを有している。給紙トレイ15は、複数の大きさの転写紙Sを積載可能となっている。
【0060】
読取装置21は、本体99の上方に位置し、画像形成装置100のD1方向上流側端部言い換えると画像形成装置100の奥側に配設された軸24により本体99に回動自在に一体化され本体99に対して開閉可能となっている。
【0061】
読取装置21は、D1方向下流側端部に、読取装置21を本体99に対して開くときに把持するための把持部25を有している。読取装置21は、軸24を中心に回動自在であって、把持部25を把持して上方に回動させることで本体99に対して開く。本体99に対する読取装置21の開放角度はほぼ90度であり、本体99内部へのアクセス、読取装置21を閉じる作業等が容易となっている。
【0062】
読取装置21は、原稿を載置するコンタクトガラス21a、コンタクトガラス21aに載置された原稿に光を照射する図示しない光源及び光源から原稿に照射され反射された光を反射する図示しない第1の反射体を備え図2における左右方向に走行する第1走行体21b、第1走行体21bの反射体によって反射された光を反射する図示しない第2の反射体を備えた第2走行体21c、第2走行体21cからの光を結像するための結像レンズ21d、結像レンズ21dを経た光を受け原稿の内容を読み取る読み取りセンサ21e等を備えている。
【0063】
自動原稿給紙装置22は、読取装置21の上方に位置し、画像形成装置100のD1方向上流側端部に配設された軸26により読取装置21に回動自在に一体化され読取装置21に対して開閉可能となっている。
【0064】
自動原稿給紙装置22は、D1方向下流側端部に、自動原稿給紙装置22を読取装置21に対して開くときに把持するための把持部27を有している。自動原稿給紙装置22は、軸26を中心に回動自在であって、把持部27を把持して上方に回動させることで読取装置21に対して開き、コンタクトガラス21aを露出させる。
【0065】
自動原稿給紙装置22は原稿を載置する原稿台22aと、原稿第22aに載置された原稿を給送する、図示しないモータ等を備えた駆動部とを有している。画像形成装置100を用いて複写を行うときには、原稿を自動原稿給送装置22の原稿台22aにセットするか、自動原稿給送装置22を上方に向けて回動して手動でコンタクトガラス21a上に原稿を載置してから自動原稿給送装置22を閉じて原稿をコンタクトガラス21aに押圧する。読取装置21に対する自動原稿給紙装置22の開放角度はほぼ90度であり、コンタクトガラス21a上に原稿を載置する作業、コンタクトガラス21aのメンテナンス作業等が容易となっている。
【0066】
図3に示すように、定着装置6は、熱源としての加熱ローラヒータ61と、加熱ローラヒータ61を内部に有するローラ形状の加熱ローラ62と、加熱ローラ62に巻き掛けられた定着部材としての定着ベルト64と、軸65aを中心に回転可能であり加熱ローラ62とともに定着ベルト64を掛けまわした、言い換えると巻き掛けたローラ形状の定着ローラ65と、定着ベルト64を挟んで定着ローラ65と対向した位置に配設され定着ローラ65との間で定着ベルト64に圧接し圧接部である定着ニップ80を形成するローラ形状の加圧部材としての加圧ローラ63とを有している。
【0067】
定着装置6はまた、加熱ローラ62に巻き掛けられている部分の定着ベルト64の温度を検知する第1のサーミスタ76及び第1のサーモスタット77と、加圧ローラ63の回転方向において定着ニップ80上流側近傍の加圧ローラ63の温度を検知する第2のサーミスタ78及び第2のサーモスタット79とを有している。
【0068】
定着装置6はまた、C1方向において定着ニップ80の上流側に位置し転写紙Sを定着ニップ80に案内する入口ガイド板81と、C1方向において定着ニップ80の下流側に位置し定着ニップ80を通過した転写紙Sを定着装置6外部に案内し排出する出口ガイド板82とを有している。
【0069】
定着装置6はまた、定着装置6内部に進入してきて入口ガイド板81に案内される転写紙Sの先端を検知する定着入口センサ83と、定着ニップ80を通過し出口ガイド板82に案内されて定着装置6外部に排出される転写紙Sの先端を検知する定着出口センサ84とを有している。
【0070】
定着装置6はまた、軸85aと一体に配設され、定着ローラ65、定着ベルト64、加熱ローラ62及び加圧ローラ63を回転駆動するための、本体99側に配設された画像形成装置本体側部材としての定着駆動ギアとしての駆動ギア75と、駆動ギア75に噛み合った出力ギア86aを有し定着ローラ65、定着ベルト64、加熱ローラ62及び加圧ローラ63を回転駆動する定着駆動源としての駆動源である、本体99側に配設された画像形成装置本体側部材としての定着駆動モータたるモータ86とを有している。
【0071】
定着装置6はまた、定着ベルト64と転写紙Sとの離型性を向上するための離型剤を定着ベルト64に塗布して供給する離型剤塗布手段である離型剤供給手段90と、定着装置6に備えられた以上の構成のうち駆動ギア75及びモータ86を除く構成を囲繞した態様で支持した定着ケース85とを有している。
【0072】
定着装置6に備えられた以上の構成のうち駆動ギア75及びモータ86を除く構成は、本体99に着脱自在の定着ユニットを形成している。定着装置6は、側板89を開くと本体99外部に露出し、定着ユニットが本体99の外部に取り出し可能となる。このようにユニット化すると、交換部品として取り扱うことが可能となり、また本体99から取り出した状態での修理等のアクセスが容易化するため、メンテナンス性が著しく向上し、大変好ましい。定着ユニットを本体99から取り出すと、定着装置6に備えられた以上の構成のうち駆動ギア75及びモータ86が本体99側に残留するとともに、駆動ギア75が本体99外側に向けて露出して駆動ギア75及びモータ86に対する本体99外側からのアクセスが容易となり、修理、交換等が容易となる。
【0073】
定着入口センサ83、定着出口センサ84は何れも、反射型のフォトインタラプタによって構成されており、転写紙Sが通過しているときの反射光を検知することで転写紙Sの先端を検知する。定着入口センサ83、定着出口センサ84は何れも、転写紙Sを検知している旨の信号を制御部36に入力する。
【0074】
第1のサーミスタ76、第1のサーモスタット77、第2のサーミスタ78、第2のサーモスタット79は、定着ニップ80を定着に適した温度を保つために用いられるものであって、加熱ローラヒータ61の駆動制御には、これらの検知した温度が適宜用いられる。
【0075】
加熱ローラ62は、加熱ローラヒータ61によって加熱され、加熱ローラ62の熱は定着ベルト64を加熱する。定着ベルト64及び加圧ローラ63はモータ86によって回転駆動される定着ローラ65によって回転駆動される。
【0076】
加圧ローラ63は、その回転中心をなす軸63aを有している。軸63aは、加圧ローラ63の周面が定着ベルト64に対して接離可能となるように移動可能に定着ケース85に支持されており、定着ベルト64及び定着ローラ65に対して圧接されることで定着ニップ80を形成する。
【0077】
定着ベルト64は、画像品質を向上するために、加圧ローラ63側の面である表面すなわち転写紙Sの表面言い換えると画像面に接触する側の面が鏡面となっており、これによって転写紙Sと密着し易くなっている。定着ベルト64は、表面が鏡面であるため、転写紙Sと密着し易いものの転写紙Sの分離性が低下する傾向にある。
【0078】
離型剤供給手段90は、定着ベルト64の表面と転写紙Sとの分離性を向上するため、定着ベルト64と転写紙Sとの離型性を向上する離型剤を定着ベルト64に塗布して供給する。離型剤は、シリコーンオイルなどの液体性離型剤、パラフィンなどの粉末状離型剤等、どのようなものであっても良いが、本形態では、耐熱性が高く定着用離型剤として広く用いられているシリコーンオイルを離型剤として用いている。以下、離型剤を単にオイルと記載する。
【0079】
離型剤供給手段90は、加熱ローラ62に対向する位置で定着ベルト64に当接し定着ベルト64に連れ回りして定着ベルト64にオイルを塗布して供給する第1の離型剤塗布部材としての第1の離型剤供給部材たる第1の離型剤塗布ローラであるオイル塗布ローラ91と、加熱ローラ62と逆側の位置でオイル塗布ローラ91に当接しオイル塗布ローラ91に連れ回りしてオイル塗布ローラ91にオイルを供給する第2の離型剤塗布部材としての第2の離型剤供給部材たる第2の離型剤供給ローラであるオイル供給ローラ92とを有している。
【0080】
離型剤供給装置90はまた、オイル塗布ローラ91と逆側の位置でオイル供給ローラ92に当接しオイル供給ローラ92に摺接してオイル供給ローラ92にオイルを散布し供給する、離型剤供給装置90本体に対して着脱自在の、離型剤塗布部材としての離型剤供給部材たる供給部材としてのオイル塗布フェルトである塗布フェルト93と、塗布フェルト93の上方に配設されオイルを塗布フェルト93に滴下する態様で供給するためのオイルパン94とを有している。
【0081】
離型剤供給手段90はまた、オイルを溜めた離型剤貯蔵部としてのオイル貯蔵部であるオイルタンクたるタンク95と、内部にオイルを通しタンク95に溜められたオイルをオイルパン94に供給するための第1の離型剤供給管としての第1のオイルチューブであるオイルチューブ96と、タンク94に溜められたオイルをオイルチューブ96内に吸い上げオイルチューブ96を通しオイルパン94に向けて圧送するポンプ97と、ポンプ97に駆動電圧を印加する離型剤供給駆動源としての図示しない駆動電源とを有している。
【0082】
離型剤供給手段90はまた、定着ベルト64に供給されたオイルのうち余剰のオイルまたは定着ベルト64から加圧ローラ63に転移するようにして供給されたオイルのうち余剰のオイルを受けて回収する離型剤受けとしてのオイルプレート98と、オイルプレート98に回収されたオイルを内部に通しタンク95に戻すための第2の離型剤供給管としての第2のオイルチューブとしてのオイルチューブ87(一部の図示を省略)と、オイルチューブ87の中途部にオイルチューブ87に着脱自在に配設されオイルチューブ87内を通るオイルに含まれる紙粉やトナーなどの不純物をろ過して取り除きオイルを清浄な状態としてクリーンな状態でタンク95に戻すための離型剤ろ過部材としてのろ過部材である離型剤フィルタたるオイルフィルタ88とを有している。
【0083】
このような構成の離型剤供給手段90は、駆動電源によってポンプ97が駆動されると、駆動されたポンプ97によりタンク95内のオイルがオイルチューブ96を経てオイルパン94に供給され、オイルパン94に供給されたオイルが塗布フェルト93、オイル供給ローラ92、オイル塗布ローラ91を介して定着ベルト64に塗布される。定着ベルト64に塗布されたオイルは、定着ニップ80を転写紙Sが通過するときはその一部が転写紙Sに付着して消費されるが、余剰部分については、定着ベルト64から直接、あるいは定着ベルト64に当接している加圧ローラ63に付着した後に加圧ローラ63から、オイルプレート98に回収され、オイルチューブ87を経て、途中でオイルフィルタ88により清浄な状態とされてからタンク95に戻される。このように、離型剤供給手段90は、オイルを繰り返し循環して使用するものであって、経済的及び環境的に優れている。タンク95は、オイルを循環して使用すること及びオイルが消費されることを見越した十分な量のオイルを溜めている。
【0084】
定着装置6は、トナー像を担持した転写紙Sを、転写紙Sの表面が定着ベルト64に接触するように、定着ニップ80に挟み込む態様で通すことで、加熱ローラヒータ61によって加熱ローラ62を介して加熱された定着ベルト64の熱と、定着ベルト64と加圧ローラ83との間の圧力との作用により、担持したトナー像を転写紙Sの表面に定着するようになっている。
【0085】
定着装置6は、転写紙Sの種類によって定着時のプロセス速度すなわち定着ローラ62、加圧ローラ63、定着ベルト64及び定着ローラ65の回転速度を、モータ86の駆動速度の変更により変更する。具体的には紙厚に応じて、紙厚が厚いほどプロセス速度が遅くなるようにし、転写紙Sが厚いほど定着ニップ80を時間を掛けて通過することで、トナー像の定着性を確保している。モータ86の駆動速度の変更を含むモータ86の駆動制御は制御部36によって行われる。
定着装置6のその余の点については後述する。
【0086】
制御部36は、図示を省略するが、CPU、及び、メモリとして、画像形成装置100の動作プログラム及びこの動作プログラムの動作に必要な各種データを記憶した第1の記憶手段としてのROM、画像形成装置100の動作に必要なデータを記憶する第2の記憶手段としてのRAM等を備えた構成となっている。
【0087】
制御部36は、定着入口センサ83、定着出口センサ84それぞれからの信号受信開始時刻の差分により、転写紙Sの先端が定着入口センサ83によって検知され始めた時点から定着出口センサ84によって検知され始めた時点までの所要時間を、定着装置6における用紙搬送時間としてCPUで算出し取得するとともに、RAMに記憶する。この点、制御部36は、用紙搬送時間算出手段、用紙搬送時間取得手段、第1の用紙搬送時間記録手段としての用紙搬送時間記録手段として機能する。なお、用紙搬送時間算出手段、用紙搬送時間取得手段は、制御部36に加えて定着入口センサ83、定着出口センサ84を含むものであっても良い。
【0088】
制御部36は、画像形成枚数積算値が設定値以上となっている状態において、画像形成装置100の動作電圧投入直後または画像形成動作が終了したときに、通信部37を駆動して、用紙搬送時間記録手段としての制御部36に記憶されている用紙搬送時間を、当該画像形成装置100を特定して故障診断装置120に送信するための通信の要求を故障診断装置110に行う。
制御部36のその余の動作、機能等については後述する。
【0089】
操作パネル40は、画像形成枚数等を指定するためのテンキー41と、画像形成の開始を指示するプリントスタートキー42と、画像形成装置100の状態をユーザ等に表示する表示手段としての液晶表示装置43等を有している。
【0090】
図2を用いて、画像ステーション60BK、60Y、60M、60Cについて、そのうちの一つの、感光体ドラム20BKを備えた画像ステーション60BKの構成を代表して構成を説明する。なお、他の画像ステーションの構成に関しても実質的に同一であるので、以下の説明においては、便宜上、画像ステーション60BKの構成に付した符号に対応する符号を、他の画像ステーションの構成に付し、また詳細な説明については適宜省略することとし、符号の末尾にBK、Y、M、Cが付されたものはそれぞれ、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの画像形成を行うための構成であることを示すこととする。
【0091】
感光体ドラム20BKを備えた画像ステーション60BKは、感光体ドラム20BKの周囲に、図中時計方向であるその回転方向B1に沿って、1次転写ローラ12BKと、感光体ドラム20BKをクリーニングするためのクリーニング手段としてのクリーニング装置70BKと、感光体ドラム20BKを高圧に帯電するための帯電手段である帯電装置としての帯電チャージャたる帯電装置30BKと、感光体ドラム20Yを現像するための現像手段としての現像器である現像装置50BKとを有している。
【0092】
感光体ドラム20BKと、クリーニング装置70BKと、帯電装置30BKと、現像装置50BKとは一体化されており、プロセスカートリッジを構成している。プロセスカートリッジは本体99に対して着脱自在となっている。このようにプロセスカートリッジ化することは、交換部品として取り扱うことができるため、メンテナンス性が著しく向上し、大変好ましい。
【0093】
感光体ドラム20BKは周速120mm/sで回転駆動される。
帯電装置30BKは、詳細な図示を省略するブラシローラと、ブラシローラにバイアスを印加する図示しない高圧電源とを有している。ブラシローラは、感光体ドラム20BK表面に圧接され、感光体ドラム20BKに従動回転する。高圧電源は、ブラシローラにDCにACを重畳したバイアスを印加するが、DCバイアスを印加しても良い。帯電装置30BKにより、感光体ドラム20BKの表面は一様に−500Vに帯電されるようになっている。
【0094】
現像装置50BKは、感光体ドラム20BKに対向する位置に配設された現像ローラ51BKと、現像ローラ51BKを回転駆動する駆動源としての図示しない現像ローラ駆動用モータと、現像ローラ51BKに現像バイアスを印加する図示しない高圧電源とを有している。
【0095】
現像ローラ51BKは径φ12mmであり、駆動ローラ駆動用モータによって線速160mm/sで回転駆動される。現像ローラ駆動用モータは制御部36によって駆動を制御される。現像装置50BKは、1成分接触現像を行うものであり、現像剤として、正規帯電特性がマイナス極性のトナーを用いている。現像装置50BKは、新規の状態において、言い換えると初期的に、かかるトナーを180g収納している。
【0096】
以上のような構成の画像形成装置においてフルカラー画像形成を行う場合、操作パネル40においてプリントスタートキー42が押下されると、感光体ドラム20BKは、B1方向への回転に伴い、帯電装置30BKにより表面を一様に帯電され、光走査装置8からのビームLBKの露光走査によりブラック色に対応した画像情報に基づく静電潜像を形成される。この静電潜像の形成は、ビームLBKが、紙面垂直方向である主走査方向に走査するとともに、感光体ドラム20BKのB1方向への回転により、感光体ドラム20BKの円周方向である副走査方向へも走査することによって行われる。
【0097】
このようにして形成された静電潜像には、現像装置50BKにより供給される帯電したブラック色のトナーが付着し、ブラック色に現像されて顕像化され、現像により得られたブラック色の可視画像たるトナー像は、1次転写ローラ12BKによりA1方向に移動する転写ベルト11に1次転写され、転写後に残留したトナー等の異物はクリーニング装置70BKにより掻き取り除去され備蓄されて、感光体ドラム20BKは、帯電装置30BKによる次の帯電に供される。
【0098】
他の感光体ドラム20Y、20M、20Cにおいても同様に各色のトナー像が形成等され、形成された各色のトナー像は、1次転写ローラ12Y、12M、12Cにより、A1方向に移動する転写ベルト11上の同じ位置に順次1次転写される。
【0099】
転写ベルト11上に重ね合わされたトナー像は、転写ベルト11のA1方向の回転に伴い、2次転写ローラ5との対向位置である2次転写部である転写部まで移動し、制御部36の制御によって2次転写装置47の高圧電源により所定の大きさの2次転写バイアスが印加されることで、転写部において転写紙Sに転移し、2次転写が行われる。
【0100】
転写ベルト11と2次転写ローラ5との間に搬送されてきた転写紙Sは、シート給送装置23から繰り出され、レジストローラ対13によって、センサによる検出信号に基づいて、転写ベルト11上のトナー像の先端部が2次転写ローラ5に対向するタイミングで送り出されたものである。
【0101】
転写紙Sは、すべての色のトナー像を一括転写され、担持すると、転写入口ローラ74の曲率によって転写ベルト11から分離され、C1方向に搬送されて定着装置6に進入し、定着ニップ80を通過する際、熱と圧力との作用により、担持したトナー像を定着され、この定着処理により、転写紙S上に合成カラー画像たるフルカラーのカラー画像が形成される。
【0102】
定着装置6を通過した定着済みの転写紙Sは、排紙ローラ7を経て、排紙トレイ17上にスタックされる。2次転写を終えた転写ベルト11は、その都度、クリーニング装置32によってクリーニングされ、次の1次転写に備える。
【0103】
このような画像形成装置100は、故障診断装置110により、定着装置6の故障を、後述のようにして診断される。
故障診断装置110によって診断する定着装置6の故障は、定着ベルト64へのオイルの供給不良、すなわち離型剤供給手段90の故障ないし機能低下に関するものである。
【0104】
離型剤供給手段90の故障ないし機能低下について説明する。
すでに述べたように、離型剤供給手段90は、経済性及び環境性に配慮し、オイルを繰り返し循環して使用するものとなっている。
概略的に、上述した構成の離型剤供給手段90は、画像形成装置100において上述のように画像形成動作を行い、定着装置6に通紙を行うと、
1.オイルフィルタ88が不純物のろ過によって汚れてきて、ろ過機能が低下する
2.オイルフィルタ88のろ過機能低下に伴い、汚れたオイルが塗布フェルト93に供給される
3.塗布フェルト93が目詰まりを起こし、定着ベルト64へのオイル供給量が低下する
4.定着ベルト64へのオイル供給量低下に伴い、定着ベルト64または加圧ローラ63からの転写紙Sの分離不良に起因する分離ジャム、出力ギア86aと駆動ギア75との噛合におけるロック、モータ86のロックが生じる
といった順で、故障ないし機能低下が生じる。
【0105】
このような故障ないし機能低下についてさらに詳しく述べると次のとおりである。
画像形成装置100における上述の画像形成動作において、初期の段階では、クリーンなオイルが塗布フェルト93に供給され、またオイルの循環においてもオイルフィルタ88の汚れの程度も軽く、ろ過機能言い換えるとろ過能力が良好に発揮される。しかし、画像形成枚数、言い換えると印刷枚数が増えると、オイルフィルタ88が不純物のろ過によって汚れろ過機能が低下してくる。そのため、塗布フェルト93に供給言い換えると入力されるオイルも次第に不純物で汚れてきて、塗布フェルト93が目詰まり等に起因して機能低下し、定着ベルト64へのオイル供給量が低下して、定着ニップ80を通過する転写紙Sに十分なオイルが供給されず、オイル供給機能が低下し、最悪の場合、定着ベルト64または加圧ローラ63からの転写紙Sの分離不良である分離ジャムいわゆる定着ジャムが生じることとなる。また、かかるオイル供給機能低下が生じると、オイル塗布ローラ91と定着ベルト64との間の摩擦抵抗力が増加し、かかる摩擦抵抗力が定着ベルト64の回転に対してブレーキ力として作用するため、モータ86の負荷が上がり、最悪の場合、出力ギア86aと駆動ギア75との噛合におけるロック、モータ86のロックが生じる。
【0106】
離型剤供給手段90のかかる故障ないし機能低下に対処する方法として、オイルの汚れ具合を推定し、適切なタイミングでオイルフィルタ88や塗布フェルト93を交換することが考えられる。
【0107】
しかし、オイルの汚れ具合は、画像形成に用いる転写紙Sの種類たとえば紙粉量が多いあるいは少ないといった転写紙Sの種類、画像形成に使用されるトナー条件たとえば画像形成面積率が高いあるいは少ないといったことによって影響を受けるトナー量など、画像形成装置100、転写装置6、離型剤供給装置90の使用環境に左右されるため、オイルの汚れ具合を性格に推定することが困難である。たとえば、オイル汚れが最悪となる転写紙Sの種類、トナー量を想定してオイルの汚れ具合を推定し、オイルフィルタ88の交換時期を決定すると、紙粉の少ない紙種の転写紙Sを使用している場合にはオイルフィルタ88の交換時期が早過ぎて、まだ使用できるオイルフィルタ88を交換することとなり、無駄が生じる。あるいは、オイル汚れが標準的に生じることつまり画像形成装置100の標準的な使い方を想定してオイルの汚れ具合を推定し、オイルフィルタ88の交換時期を決定すると、紙粉の多い紙種の転写紙Sを使用している場合にはオイルフィルタ88の交換時期が遅過ぎて、分離ジャム等が生じてからオイルフィルタ88を交換することとなり、ダウンタイムが生じることとなる。
【0108】
そこで、故障診断装置110は、定着装置6の障害の原因すなわち離型剤供給手段90のかかる故障ないし機能低下、具体的にはオイルフィルタ88および塗布フェルト93の機能低下すなわち劣化の推定を含んだ、定着装置6の故障を診断する。なお、オイルフィルタ88の機能低下は、オイルの汚れ具合の増加に等価であり、塗布フェルト93の機能低下は、定着ベルト64のオイル付着量の低下に等価である。オイルフィルタ88、塗布フェルト93の機能低下の推定が可能となることは、それぞれの適切な交換時期の推定が可能となることに一致する。
【0109】
ここで、図4に、画像形成時において、定着ニップ80に、用紙αと用紙βとの2種類の転写紙Sが通過しているときと、定着ニップ80に転写紙Sが通過していないときとの、モータ86の駆動電流の電流波形を示す。同図において、Aで示す時間の区間は、定着ニップ80に転写紙Sが通過しているときを示しており、Bで示す時間の区間は、定着ニップ80に転写紙Sが通過していないときを示している。用紙α、用紙βは互いにその厚さが異なっており、用紙αの厚さが用紙βの厚さよりも厚い。
同図から、用紙α、用紙βの何れにおいても、転写紙Sが定着ニップ80を通過しているときに、モータ86の駆動電流の電流値が増加していることが分かる。これは、転写紙Sが定着ニップ80を通過しているときに、転写紙Sを搬送するためのモータ86の負荷すなわち定着装置6の駆動負荷量が上昇するためである。
【0110】
故障診断装置110は、定着装置6の駆動負荷量、具体的にはモータ86の駆動電流の電流値を用いて、定着装置6の障害の原因すなわち離型剤供給手段90のかかる故障ないし機能低下、具体的には定着装置6の障害の複数の原因であるオイルフィルタ88および塗布フェルト93の機能低下すなわち劣化の推定を含んだ、定着装置6の故障を診断する。
【0111】
そこで、制御部36は、モータ86の駆動制御を行うにあたって、モータ86の駆動電流の電流値を測定等するようになっている。
すなわち、制御部36は、定着入口センサ83からの信号受信開始時刻から、定着出口センサ84からの信号受信開始時刻までの間の、モータ86の駆動電流の電流値を、定着装置6の駆動負荷量として測定し取得するとともに、RAMに記憶する。この点、制御部36は、駆動負荷量測定手段、駆動負荷量取得手段、第1の駆動負荷量記録手段としての駆動負荷量記録手段として機能する。なお、駆動負荷量測定手段、駆動負荷量取得手段は、制御部36に加えて定着入口センサ83、定着出口センサ84を含むものであっても良い。
【0112】
なお、本形態では、モータ86の駆動電流を定着装置6の駆動負荷量としているが、他に定着装置6の駆動負荷量を示す値がありこれを測定できるのであれば、かかる値を、かかる推定を含んだ定着装置6の故障の診断に用いても良い。
【0113】
制御部36は、すでに述べたように通信部37を駆動して、用紙搬送時間記録手段としての制御部36に記憶されている用紙搬送時間を、当該画像形成装置100を特定して故障診断装置120に送信するための通信の要求を故障診断装置110に行うが、このときに、かかる用紙搬送時間に併せて、駆動負荷量記録手段としての制御部36に記録されている駆動負荷量を、当該画像形成装置100を特定して故障診断装置120に送信するための通信の要求を故障診断装置110に行う。
【0114】
故障診断装置110は、定着装置6の故障を診断するために次のような構成となっている。故障診断装置110は、用紙搬送時間取得手段、駆動負荷量取得手段としての制御部36によって取得され用紙搬送時間記録手段、駆動負荷量記録手段としての制御部36によって記録された複数の用紙搬送時間、複数の駆動負荷量を、通信部37、LAN120及びインターネット130を介して収集するために、インターネット130に接続されたデータ収集器111と、データ収集器111によって収集されたかかる複数の用紙搬送時間、複数の駆動負荷量を、各画像形成装置100に対応する形式で記憶し蓄積する第2の用紙搬送時間記録手段としての用紙搬送時間記録手段、第2の駆動負荷量記録手段としての駆動負荷量記録手段である状態データベース112と、状態データベース112に蓄積された各画像形成装置100における複数の用紙搬送時間、複数の駆動負荷量を用いて、当該画像形成装置100の定着装置6の故障を診断する診断手段としての推論エンジン113と、LAN150を介してPC140を接続され、データ収集器111、状態データベース112及び推論エンジン113を制御するシステムコントローラ114とを有している。
【0115】
データ収集器111は、各画像形成装置100についてかかる複数の用紙搬送時間、複数の駆動負荷量を収集するための通信を行う所定の通信機能を有している。データ収集器111は、通信部37からの、上述した、用紙搬送時間記録手段、駆動負荷量記録手段としての制御部36に記憶されている複数の用紙搬送時間、複数の駆動負荷量を故障診断装置120に送信するための通信の要求を受信するようになっており、かかる要求を受信すると、かかる複数の用紙搬送時間、複数の駆動負荷量を送信するように当該画像形成装置100に指示し、当該画像形成装置100から、かかる複数の用紙搬送時間、複数の駆動負荷量を一括して受信する。
【0116】
状態データベース112はかかる複数の用紙搬送時間、複数の駆動負荷量を記憶するための記憶機能を有するものであり、半導体媒体(たとえば、ROM、不揮発性メモリ等)、光媒体(たとえば、DVD、MO、MD、CD−R等)、磁気媒体(たとえば、ハードディスク、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等によって構成されている。状態データベース112は、データ収集器111において受信した複数の用紙搬送時間、複数の駆動負荷量を新たなファイルとして当該画像形成装置100に対応させて追加記録する。
【0117】
推論エンジン113は、かかる診断を行うための計算を行うCPU等を備えている。推論エンジン113は、定着装置6が故障していると診断すると、サービスエンジニアやユーザへ電子メール等を送信する等して、定着装置6の故障が生じている旨を、その故障が生じた画像形成装置100を特定して通知する機能も有する。この点については後述する。
【0118】
推論エンジン113はまた、状態データベース112に蓄積された、かかる複数の用紙搬送時間のそれぞれで、これに対応した駆動負荷量を除算し、複数の、時間当たり言い換えると単位時間長さの駆動負荷量すなわち単位時間駆動負荷量を算出し取得する。この点、推論エンジン113は、単位時間駆動負荷量算出手段である駆動負荷量算出手段、単位時間駆動負荷量取得手段である駆動負荷量取得手段として機能する。この複数の単位時間駆動負荷量である複数の駆動負荷量は、各画像形成装置100に対応する形式で状態データベース112に記憶され蓄積される。この点、状態データベース112は、単位時間駆動負荷量記録手段である駆動負荷量記録手段として機能する。
【0119】
なお、本形態においては、給紙トレイ15が複数の大きさの転写紙Sを積載可能となっており転写紙Sの大きさによって用紙搬送時間が異なるため、推論エンジン113をこのように単位時間駆動負荷量算出手段、駆動負荷量算出手段、単位時間駆動負荷量取得手段、駆動負荷量取得手段として機能させるが、給紙トレイ15が1つの大きさの転写紙Sのみを積載可能となっている場合には、駆動負荷量測定手段、駆動負荷量取得手段として機能する制御部36によって測定、取得された駆動負荷量をそのまま単位時間駆動負荷量として使用することが可能であるとともに、用紙搬送時間の算出、取得、記録、送受信は不要となる。また、給紙トレイ15が複数の大きさの転写紙Sを積載可能となっている場合であっても、画像形成装置100が、給紙トレイ15に転写紙Sの大きさを検知するサイズ検知手段を備えている場合には、このサイズ検知手段によって検知された転写紙Sの大きさで駆動負荷量を除算して単位時間駆動負荷量、駆動負荷漁を算出、記録等しても良く、この場合は用紙搬送時間の代わりに、転写紙Sの大きさを検知、取得、記録、送受信することとなる。
【0120】
システムコントローラ114は、かかる制御を行うとともに制御に必要なデータを記憶するために、CPU、及び、メモリとして、故障診断装置110の動作プログラム及びこの動作プログラムの動作に必要な各種データを記憶した第1の記憶手段としてのROM、故障診断装置110の動作に必要なデータを記憶する第2の記憶手段としてのRAM等を備えている。
【0121】
故障診断装置110は、次に述べる状態判別方法により、各画像形成装置100における定着装置6の故障を診断する故障診断方法を行う。
【0122】
[状態判別方法の説明]
故障状態は正常なときには安定していたデータの経時変化が様々な形で特異な不安定な動きを示したことによって捉えられると考える。
故障診断装置110は、故障状態判定の対象データとして、推論エンジン113において次のようにして算出された第1ないし第3の特徴量を用いる。
【0123】
第1の特徴量は、駆動負荷量取得手段としての推論エンジン113によって取得され駆動負荷量記録手段としての状態データベース112によって記録された当該画像形成装置100における複数の単位時間駆動負荷量の平均を示すものであり、かかる複数の単位時間駆動負荷量の平均値として推論エンジン113により算出される。この点、推論エンジン113は、かかる第1の特徴量を算出する第1の特徴量算出手段、平均値算出手段として機能する。
【0124】
第2の特徴量は、駆動負荷量取得手段としての推論エンジン113によって取得され駆動負荷量記録手段としての状態データベース112によって記録された当該画像形成装置100における複数の単位時間駆動負荷量のばらつきを示すものであり、かかる複数の単位時間駆動負荷量の標準偏差として推論エンジン113により算出される。この点、推論エンジン113は、かかる第2の特徴量を算出する第2の特徴量算出手段、ばらつき算出手段、標準偏差算出手段として機能する。第2の特徴量は、かかる複数の単位時間駆動負荷量の分散であってもよく、この場合、推論エンジン113は分散算出手段として機能する。
【0125】
第3の特徴量は、駆動負荷量取得手段としての推論エンジン113によって取得され駆動負荷量記録手段としての状態データベース112によって記録された当該画像形成装置100における複数の単位時間駆動負荷量の最大値を示すものであり、かかる複数の単位時間駆動負荷量の最大値として推論エンジン113により算出、具体的には選択される。この点、推論エンジン113は、かかる第3の特徴量を算出する第3の特徴量算出手段、最大値算出手段として機能する。
【0126】
第1ないし第3の特徴量が互いに同じ複数の単位時間駆動負荷量から算出された場合、この第1ないし第3の特徴量によって構成される3つの値の組は、当該画像形成装置100におけるコンディションデータCを構成する。コンディションデータCは、後述するように時系列上で漸次ずらした互いに異なる複数の単位時間駆動負荷量に基づいて複数算出され、これによって当該画像形成装置100におけるコンディションデータセットC1〜Cnが構成される。コンディションデータセットC1〜Cnは当該画像形成装置100におけるコンディションデータCの時間的変化、言い換えると当該画像形成装置100における第1ないし第3の特徴量の時間的変化を示す。
【0127】
診断手段としての推論エンジン113は、コンディションデータセットC1〜Cnを用いて、次のように、各画像形成装置100ごとに、当該画像形成装置100に備えられている定着装置6の故障を診断する。
【0128】
コンディションデータセットC1〜Cnは、後述のようにして作成され推論エンジン113によって構成された判別器に送られ、判別器としての推論エンジン113によって定着装置6が故障しているか否かの予備的な診断結果が算出される。
具体的には、判別器としての推論エンジン113は、各コンディションデータCを構成する各特徴量についてそれぞれ、次の(1)式に基づいて、正常であるか、異常であるかを判別し、正常である場合と異常である場合とで互いに異なるOuti値、ここでは1又は−1を付与する。(1)式において、i=1〜nである。また(1)式において、bi、sgniはそれぞれ後述するブースティング法を用いて定められる判定条件であって、biは各コンディションデータCiを構成する各特徴量についての閾値であり、sgniは各コンディションデータCiを構成する各特徴量についての判別極性である。つまり判別器は、特徴量計算結果であるコンディションデータセットC1〜Cnの各々について作成される。
【0129】
【数1】

【0130】
この予備的は判別は、故障診断をする上で決定的な要素にはならないので、このときの判別は弱判別処理と呼ばれる。この点、推論エンジン113によって構成されているかかる判別器はスタンプ弱判別器といわれる弱判別器となっている。また、診断手段としての制御部36は、予備的診断結果算出手段、弱判別処理手段として機能する。
【0131】
診断手段として機能する推論エンジン113は、Outi値を用い、次の(2)式に基づいて、定着装置6が正常な状態か故障状態かの判別を行う判別器を構成する。
具体的には、この判別器は、(2)式に示した重み付き多数決によって、重み付き多数決判別結果の投票結果値としての判別指標値Fを計算し、0以下ならば故障状態と判別するものである。(2)式において、i=1〜nである。また(2)式において、αiは後述するブースティング法を用いて定められる重み付き多数決の計算方法であって、各コンディションデータCiを構成する各特徴量に積算される値を持ち、各積算値の和によって判別指標値Fiが算出される。この点、診断手段としての推論エンジン113は、重み付き多数決計算手段、重み付き多数決判別器、判別指標値算出手段として機能する。
【0132】
【数2】

【0133】
なお、弱判別器としてのスタンプ判別器は、CPU演算が極めて高速に行えるメリットがあり、しかも重み付き多数決を用いる本方法では十分な精度が得られるので精度良くコストをかけずに故障状態判別技術を実現するには大変好適である。
【0134】
ブースティング法について説明する。ブースティング法は教師付き学習アルゴリズムであって、数理科学、No.489,MARCH、2004「統計的パタン識別の情報幾何」に詳しいが、一般に知られた方法であるためここでの説明を省略する。
【0135】
ブースティング法を用いてbi、sgni、αiを定めるべく、まず正常な状態であると予め分かっている場合におけるコンディションデータと、故障状態あるいは故障予兆状態にあると分かっている場合におけるコンディションデータとを作成する。そのため、図2に示したカラー画像形成装置と同様の構成の試験機を用意し、このプリント試験機を用いて、テスト画像を連続して出力する連続プリントを実施し、単位時間駆動負荷量を順次記録した。なお、用紙種類により単位時間駆動負荷量が異なること(図4参照)に起因して故障状態にあるとの誤検知がなされないようにするために、薄紙から厚紙まで複数種類の紙を実験に用いた。
【0136】
本実験で対象とした定着装置6の障害、故障は、定着ベルト64または加圧ローラ63からの転写紙Sの分離不良に起因する分離ジャムの原因となるオイルフィルタ88の機能低下すなわち劣化、及び、出力ギア86aと駆動ギア75との噛合におけるロック、モータ86のロックの原因となる塗布フェルト93の機能低下すなわち劣化である。
【0137】
図5に、オイルフィルタ88の劣化によるかかる分離ジャムが頻発した時期である第1の時期、及び、塗布フェルト93の劣化によるかかるロックが頻発した時期である第2の時期を含む単位時間駆動負荷量の時系列データを示す。同図において、横軸は定着枚数(kp)、縦軸は特徴量(駆動電流/時間)である。縦軸に関し、同図(a)、(b)、(c)はそれぞれ、第1の特徴量である単位時間駆動負荷量の平均値、第2の特徴量である単位時間駆動負荷量の標準偏差、第3の特徴量である単位時間駆動負荷量の最大値を縦軸としている。これら特徴量の算出及びプロットは、たとえば、1〜10(kp)の定着にそれぞれ要した単位時間駆動負荷量を用いて平均値、標準偏差、最大値を算出し、算出したこれらの値を1(kp)の部分にプロットし、次に2〜11(kp)の定着にそれぞれ要した単位時間駆動負荷量を用いて平均値、標準偏差、最大値を算出し、算出したこれらの値を2(kp)の部分にプロットし、・・・最後に2000〜2009(kp)の定着にそれぞれ要した単位時間駆動負荷量を用いて平均値、標準偏差、最大値を算出し、算出したこれらの値を2000(kp)の部分にプロットする、というように繰り返し行う。
【0138】
同図(a)、(b)、(c)の何れにおいても、172kp付近の突然大きな値を示している領域が第1の時期に一致し、200kp付近の突然大きな値を示している領域が第2の時期に一致した。第1の時期に定着装置6を観察したところ、オイルフィルタ88が目詰まりを起こしているとともに、転写紙Sが定着ベルト64に巻き付き、分離ジャムが頻繁に発生しており、また塗布フェルト93が汚れ始め、定着ベルト64へのオイル供給量が不足気味になっていた。第2の時期に定着装置6を観察したところ、オイルフィルタ88に加えて塗布フェルト93が目詰まりを起こし、定着ベルト64へのオイル供給量が極めて少なくなっており、オイル塗布ローラ91と定着ベルト64との間の摩擦抵抗力が増え、モータ86がロックしやすい状態になっていた。よって、172kp付近の第1〜第3の特徴量が、オイルフィルタ88の目詰まりによる劣化による定着装置6の故障診断に用いるのに適していること、及び、200kp付近の第1〜第3の特徴量が、塗布フェルト93の目詰まりによる劣化による定着装置6の故障診断に用いるのに適していることが分かる。
【0139】
なお、実験の初期、中期、終期で互いに異なる複数種類の紙を用いたにもかかわらず、同図(a)、(b)、(c)の何れにおいても、特徴量の変化は現れていない。これにより、第1、第2、第3の特徴量を用いることで、用紙種類の変更によって誤った故障判別がなされることが排除されることが分かる。
【0140】
上述のようにして算出した特徴量からなるコンディションデータを、ブースティング法による学習すなわちbi、sgni、αiの作成と、同法によるテストすなわち作成されたbi、sgni、αiの効果確認とに適用するために、第1、第2の時期のそれぞれに対応する故障時期に相当するコンディションデータが、学習用データとテスト用データのどちらにも含まれるようランダムに振り分け、これによって作成された特徴量の変化すなわち各コンディションデータセットをそれぞれ学習用コンディションデータセット、テスト用コンディションデータセットとした。
【0141】
次いで、ブースティング法による学習を行うにあたって、学習用コンディションデータセットの特徴量の変化をプリント枚数積算値を横軸とするグラフで表し、目視により異常期間の推定を行い、学習用コンディションデータセットの異常期間に該当する区間のラベルすなわちOutiを−1(故障期間)、それ以外のラベルすなわちOutiを1(正常期間)と与え、ブースティングによる100回の繰り返し学習を行わせ、b1〜b100、sgn1〜sgn100、α1〜α100を決定した。なお、ブースティングによる100回の繰り返し学習を行わせるために、学習には、100個のコンディションデータを用いている。
【0142】
学習に用いたデータを使ってF値を計算した結果を図6に示す。ラベルのついた教師付きデータは適切に学習が行われ、これによって第1、第2の時期のそれぞれに対応する故障期間該当部分だけがF値でマイナスに変化する弱判別器と重み付き多数決による判別器が生成されたことが確認された。次に、テスト用コンディションデータセットを用いて、かかる弱判別器及び重み付き多数決による判別器の精度を検証したところ、この結果も、図6に示したのと同様となった。テストにも、学習用コンディションデータセットと同様、100個のコンディションデータセットを用いている。先に決定したb、sgn、αによって演算を行う判別器出力F値は意図した通り第1の時期に対応する時期及び第2の時期に対応する時期にマイナスに変化しており、故障を精度良く捉えていることが確認された。
【0143】
したがって、故障診断装置110では、推論エンジン113に、予め上述のようにして作成したbi、sgni、αiを用いた判別器としての機能を持たせるとともに、その他上述の各手段として機能させることで、上述した画像形成動作を繰り返し行うときに、F値がマイナスの値を示したことに基づき、定着装置6の故障、特にオイルフィルタ88の劣化、塗布フェルト93の劣化という、定着装置6の障害の原因の推定、あるいは特定、あるいはかかる推定による特定を含んだ、定着装置6の故障を診断し、検出することが可能となる。
【0144】
一般的に、定着装置に関係する不具合、障害や故障は、その原因が多種多様のため、故障原因の推定等は、修理やメンテナンスを行う時間の短縮化や、故障原因とは異なる箇所の不要な修理等の抑制に極めて有効であって、本発明の適用は、定着装置6の障害の原因を推定して修理等によるダウンタイムの軽減に非常に有効である。
【0145】
本形態では、定着装置6の障害の原因の推定等を、オイルフィルタ88の劣化、塗布フェルト93の劣化に限っているが、上述のように、一般に定着装置に関する不具合や故障の原因は多種多様のため、より多くの故障原因について、推論エンジン113に、上述と同様にして作成されるbi、sgni、αiを用いた判別器としての機能を持たせるとともに、その他上述の各手段と同様の手段として機能させ、故障診断装置110を形成すれば、さらに多種の、定着装置6の障害の原因の推定を含んだ故障の診断が可能となり、故障原因とは異なる箇所の不要な修理等の抑制により有効となり、修理等によるダウンタイムの軽減により有効となる。
【0146】
また、上述のようにして作成されるbi、sgni、αiの値を調整することで、故障の診断には、実際に故障が発生していることの診断のみならず、故障が近々発生することの予期、予測すなわち故障の予兆を含めた故障の診断を行なうことも可能であり、故障診断装置110においてはbi、sgni、αiの値がそのように設定されている。
【0147】
すでに簡略に述べたように、推論エンジン113は、定着装置6が故障と診断された場合に故障が生じた画像形成装置100を特定してその旨をサービスエンジニア、ユーザ等に電子メール等にて通知する。この点、推論エンジン113は、アラーム発信手段として機能する。アラーム発信手段として機能する推論エンジン113は、具体的には、上述の各手段として機能する推論エンジン113によって算出されたF値が第1の時期、第2の時期に対応する時期でマイナスの値となり定着装置6が故障と診断されたときには、図6に示すように、画像形成装置100を特定しながら、定着装置6が故障していることに併せて、第1の時期に対応している場合には定着装置6のオイルフィルタ88が劣化している旨、第2の時期に対応している場合には塗布フェルト93が劣化している旨を通知し、あるいはこれに代えてまたはこれに加えて、かかる故障、破損が近々起こると推定される旨を通知することでアラーム発報を行う。これにより、修理やメンテナンスに要するダウンタイムが上述のように軽減される。電子メール等を受信してサービスエンジニア等にかかる旨を通知して報知するPC等の端末等は報知手段として機能する。
【0148】
このように、アラーム発報を複数回に分けて行うと、定着装置6の故障修復を複数回に分けて行うことを促すこととなる。F値がマイナスとなった時期が第1の時期であるか第2の時期であるかの見分けを行う方法としては、定着枚数が127kp付近であるか、200kp付近であるかを用いても良いし、F値に関する複数の閾値、たとえば閾値A及び閾値B(A>B)を用い、閾値Aのみを下回ったときに第1の時期に対応する時期であるとしてたとえば「初期故障状態」と認識し、オイルフィルタ88の交換を促し、閾値Bも下回ったときに第2の時期に対応する時期であるとしてたとえば「終期故障状態」と認識し、塗布フェルト93の交換を促す。「初期故障状態」と認識したときは、オイルフィルタ88の交換によりその後も定着装置6の使用を継続することが可能となる。「終期故障状態」と認識したときは、オイルフィルタ88の交換のみではオイル供給量が改善されなくなったことを意味するため、塗布フェルト93の交換を促すことなく定着装置6そのものを交換することを促しても良いし、塗布フェルト93の交換を促す場合にはその後も定着装置6の使用を継続可能とするようにしても良い。アラーム発報を複数回に分けて行うと、経済的、環境的メリットが飛躍的に向上するとともに、ダウンタイムも低減可能となる。ただし、アラーム発報は「終期故障状態」に対応するときに1回行うこととし、オイルフィルタ88及び塗布フェルト93の交換を促すようにしてもよく、この場合も定着装置6の使用を継続することが可能となる。アラーム発報が1回の場合も定着装置6の交換を促すようにすることも可能である。
【0149】
なお、アラーム発信手段としての機能は、推論エンジン113でなく、故障診断装置110の他の部位、たとえば通信機能を有するデータ収集器111に持たせても良い。また、ユーザ等へのかかる旨の通知を、当該画像形成装置100の液晶表示装置43に、アラーム発信手段としての推論エンジン113あるいはデータ収集器111によってインターネット130経由で表示させ報知しても良いし、当該画像形成装置100が、音声等の音を発することが可能なアラーム通報機等を備えている場合にはこれを用いて、同様にして、かかる旨を報知するものであっても良いし、これらを適宜組み合わせても良い。画像形成装置100においてかかる報知を行う場合、かかる液晶表示装置43等はかかる旨をユーザ等に報知する報知手段として機能する。
【0150】
以上のような、故障診断装置110の動作、機能、故障診断方法の実行は、システムコントローラ114のメモリに記憶された故障診断プログラムすなわちかかる故障診断方法を実行するためのプログラムの実行によって実現される。この点、システムコントローラ114は、故障診断プログラム記憶手段として機能する。
【0151】
故障診断プログラム及びこれを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体について説明すると、かかるプログラムは、システムコントローラ114のメモリに記憶され、システムコントローラ114のCPUまたは推論エンジン113のCPUで実行されるものであり、かかるメモリがコンピュータ読取可能な記録媒体に相当する。ただし、かかるプログラムを記憶するコンピュータ読取可能な記録媒体は、半導体媒体(たとえば、ROM、不揮発性メモリ等)、光媒体(たとえば、DVD、MO、MD、CD−R等)、磁気媒体(たとえば、ハードディスク、磁気テープ、フレキシブルディスク等)の何れでも良い。かかる記録媒体には、かかるプログラムを記憶した外部情報入力装置等におけるサーバコンピュータのハードディスク等の記憶装置も、インターネット、LAN等のネットワークで接続された利用者のコンピュータ等を通じてかかるプログラムをダウンロードして配布する場合等においては、これに含まれる。プログラムの実行の態様には、ロードしたプログラムの指示に基づき、オペレーティングシステム等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述の方法が実現される場合が含まれる。
【0152】
この点においては、PC140におけるそのような半導体媒体等の記録媒体も、コンピュータ読取可能な記録媒体に相当する。そして、PC140を操作する操作者は、適宜、状態データベース112に記憶されている駆動負荷量を閲覧等し、当該画像形成装置100に対する推論エンジン113を新たに生成、補正、削除する等して、故障診断装置110の更新、保守等を行うことが可能である。
【0153】
故障診断装置110は、複数台の画像形成装置100に接続され、これらのそれぞれについて、上述のように、故障の診断を行うことを可能としているものであるから、故障の診断を行う上で用いる上述の各特徴量の演算方法をはじめとするデータ生成方法の改善や、bi、sgni、αi等の判別定数の改善を一元的且つ確実に行うことが可能であり、故障診断の品質を容易且つ確実に向上することが可能となっている。また、上述のように、比較的ステップ数が少ないブースティング法を用いているため、状態データベース112に蓄積している駆動負荷量等に関するデータ量が膨大になっても、診断を適時に高速に行うことが可能となっている。
【0154】
故障の診断は、比較的ステップ数が少ない処理によって行われるため、故障診断装置110の機能を、制御部36など、上述の画像形成装置100自体に実装することも可能であり、この場合は画像形成装置100が故障診断システム1を構成することとなる。画像形成装置100において制御部36が上述の故障診断装置110と同様の機能を有する場合の構成例を図7に図示する。同図に示されているように、この構成例では、制御部36が診断手段、故障診断プログラム記憶手段、アラーム発信手段など、上述の故障診断装置110、特に上述の推論エンジン113に備えられた各手段、各判別器の機能を持っている。また、故障診断装置としての制御部36は、用紙搬送時間算出手段、用紙搬送時間取得手段、用紙搬送時間記録手段、駆動負荷量測定手段、駆動負荷量取得手段、駆動負荷量記録手段、単位時間駆動負荷量算出手段、単位時間駆動負荷量記録手段としての機能も有しているとともに、故障診断方法、故障診断プログラムの実行には、用紙搬送時間算出手段、用紙搬送時間取得手段、用紙搬送時間記録手段、駆動負荷量取得手段、駆動負荷量記録手段、単位時間駆動負荷量算出手段、単位時間駆動負荷量記録手段が用いられる。
【0155】
また、この構成例では、液晶表示装置43が、定着装置6が故障と診断された場合にその旨をユーザ等に表示して報知するための報知手段として機能するようになっている。具体的には、報知手段として機能する液晶表示装置43は、制御部36による制御のもと、故障診断装置として機能する制御部36によって算出されたF値が第1の時期、第2の時期に対応する時期でマイナスの値となり定着装置6が故障と診断されたときには、図6に示すように、定着装置6が故障していることに併せて、第1の時期に対応している場合には定着装置6のオイルフィルタ88が劣化している旨、第2の時期に対応している場合には塗布フェルト93が劣化している旨を通知し、あるいはこれに代えてまたはこれに加えて、かかる故障、破損が近々起こると推定される旨を表示することでアラーム発報を行う。これにより、修理やメンテナンスに要するダウンタイムが上述のように軽減される。なお、報知手段は、液晶表示装置43に限らず、音声等の音を発することが可能なアラーム通報機等が画像形成装置100に備えられている場合にはこれを用いてかかる旨を報知するものであっても良いし、画像形成装置100が上述のLAN120、インターネット130等の通信機能を備えている場合にはこれを用いてサービスエンジニアやユーザへ電子メール等を送信するものであっても良いし、これらを適宜組み合わせても良い。
【0156】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0157】
たとえば、故障の診断に用いる特徴量として、第1及び第2の特徴量のみを用いた場合より診断精度を向上するため、上述の形態では第1ないし第3の特徴量を用いているが、故障の診断に用いる特徴量は第1及び第2の特徴量のみであっても良いし、第3の特徴量として他のたとえば統計的な値を用いても良いし、上述の第1ないし第3の特徴量に加えた他のたとえば統計的な値を用いるようにしても良い。
【0158】
図1に示した構成例において、用紙搬送時間取得手段、駆動負荷量取得手段が取得した用紙搬送時間、駆動負荷量をリアルタイムで故障診断装置に送信して単位時間駆動負荷量を算出し記録するようにすれば、画像形成装置側の用紙搬送時間記録手段、駆動負荷量記録手段を省略することが可能である。
【0159】
離型剤供給手段は、オイルフィルタ、塗布フェルト等、推定される障害の原因を排除するための構成の配置位置及びその交換、修理、その他のメンテナンス等の利便性に応じて、上述の形態のように定着ユニット側に配設しても良いし、画像形成装置の本体側に配設して定着ユニット側に配設しなくても良い。
定着部は、上述の定着装置6のようなベルト定着方式による定着装置でなく、ローラ定着方式等の他の方式を採用した他の定着装置であっても良い。
【0160】
画像形成装置は、いわゆるタンデム方式の画像形成装置ではなく、1つの感光体ドラム上に順次各色のトナー像を形成して各色トナー像を順次重ね合わせてカラー画像を得るいわゆる1ドラム方式の画像形成装置にも同様に適用することができる。
【0161】
画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリの複合機でなく、これらの単体であっても良いし、その他、複写機とプリンタとの複合機等の他の組み合わせの複合機であっても良い。
【0162】
いずれのタイプの画像形成装置でも、中間転写体を用いず、各色のトナー像を転写材に直接転写する直接転写方式を採用しても良い。この場合、複数の像担持体上のトナー像は、直接、シートに転写される。
【0163】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0164】
6 定着部
36 故障診断装置、駆動負荷量取得手段、駆動負荷量記録手段、第1の特徴量算出手段、第2の特徴量算出手段、第3の特徴量算出手段、診断手段、スタンプ弱判別器、重み付き多数決計算手段、記録媒体
64 定着部材
88 ろ過部材
93 供給部材
100 画像形成装置
110 故障診断装置
113 駆動負荷量取得手段、駆動負荷量記録手段、第1の特徴量算出手段、第2の特徴量算出手段、第3の特徴量算出手段、診断手段、スタンプ弱判別器、重み付き多数決計算手段
114 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0165】
【特許文献1】特開平06−208265号公報
【特許文献2】特開2005−309077号公報
【特許文献3】特開2008−102474号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置の定着部の障害に関する故障診断装置であって、
前記定着部の駆動負荷量を取得する駆動負荷量取得手段によって取得された前記駆動負荷量を記録する駆動負荷量記録手段によって記録された複数の前記駆動負荷量の平均を示す第1の特徴量を算出する第1の特徴量算出手段と、
前記駆動負荷量記録手段によって記録された複数の前記駆動負荷のばらつきを示す第2の特徴量を算出する第2の特徴量算出手段と、
少なくとも第1の特徴量算出手段によって算出された第1の特徴量と第2の特徴量算出手段によって算出された第2の特徴量とを用いて、前記定着部の障害の原因の推定を含んだ故障を診断する診断手段とを有する故障診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の故障診断装置において、
前記駆動負荷量記録手段によって記録された複数の前記駆動負荷量の中の最大値を示す第3の特徴量を算出する第3の特徴量算出手段を有し、
前記診断手段は、少なくとも第1の特徴量算出手段によって算出された第1の特徴量と第2の特徴量算出手段によって算出された第2の特徴量と第3の特徴量算出手段によって算出された第3の特徴量とを用いて、前記故障を診断することを特徴とする故障診断装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の故障診断装置において、
前記診断手段は、前記故障の予備的な診断結果を算出するための、ブースティング法を用いて作成されたスタンプ弱判別器を備えていることを特徴とする故障診断装置。
【請求項4】
請求項3記載の故障診断装置において、
前記診断手段は、前記スタンプ弱判別器によって算出した前記診断結果を用いて重み付き多数決を行なって前記故障を診断するための重み付き多数決計算手段を有することを特徴とする故障診断装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載の故障診断装置において、
前記診断手段は、前記定着部の障害の、複数の原因を推定するものであり、各原因について、前記故障を診断したときに、当該原因及びこれを含む前記故障を報知するための出力を行うことを特徴とする故障診断装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の故障診断装置において、
前記診断手段は、診断する故障が、前記定着部に備えられ記録媒体に当接する定着部材への離型剤の供給不良に関することを特徴とする故障診断装置。
【請求項7】
請求項6記載の故障診断装置において、
前記診断手段は、推定する前記定着部の障害の原因が、前記定着部材に離型剤を供給するための供給部材の劣化に関することを特徴とする故障診断装置。
【請求項8】
請求項6または7記載の故障診断装置において、
前記診断手段は、推定する前記定着部の障害の原因が、前記定着部材に供給される離型剤をろ過するろ過部材の劣化に関することを特徴とする故障診断装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか1つに記載の故障診断装置において、
前記駆動負荷量取得手段は前記定着部の駆動電流に基づいて前記駆動負荷量を取得することを特徴とする故障診断装置。
【請求項10】
画像形成装置の定着部の障害に関する故障診断方法であって、
前記定着部の駆動負荷量を取得する駆動負荷量取得手段によって取得された前記駆動負荷量を記録する駆動負荷量記録手段によって記録された複数の前記駆動負荷量の平均を示す第1の特徴量を算出する第1の特徴量算出手段と、
前記駆動負荷量記録手段によって記録された複数の前記駆動負荷量のばらつきを示す第2の特徴量を算出する第2の特徴量算出手段と、
少なくとも第1の特徴量算出手段によって算出された第1の特徴量と第2の特徴量算出手段によって算出された第2の特徴量とを用いて、前記定着部の障害の原因の推定を含んだ故障を診断する診断手段とを用いる故障診断方法。
【請求項11】
前記駆動負荷量取得手段を有し、請求項1ないし9の何れか1つに記載の故障診断装置、または、請求項10記載の故障診断方法により、前記故障を診断される画像形成装置。
【請求項12】
請求項10記載の故障診断方法を実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読取可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−53385(P2011−53385A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201312(P2009−201312)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】