説明

散布物の散布のための方法および装置

並進され回転する散布円板を用いた散布物の散布のための方法および装置において、散布された散布積層の散布幅を維持するために、散布円板の並進速度が増大するにつれて散布円板の回転数を上昇させることを企図する。この回転数の上昇は、散布密度が高ければ高いほど小さい。一定の速度の場合には散布密度が増大するにつれて、散布幅を維持するために回転数が高められる。さらに、変化する速度ならびにその他の点では一定である散布密度および散布幅にて、速度に応じて散布円板からの散布物の投下角度を、つまり散布円板の回転によって、および/または散布円板に散布物とともに供給される液体含量の変化によって変化させ、その際、速度が上昇する場合に前述の液体含量を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殊に塩水と混合された撒き塩を散布するための、散布積層(Streuteppich)を生じさせるための回転し並進される散布円板を用いた散布物の散布のための方法および装置に関する。本発明は後で雪対策における使用(Winterdiensteinsatz)における撒き塩の散布に関して記載されるが、本発明はこのような使用に限定されていない。またその一方で散布物は次に説明する本発明によって有利に散布できる。
【0002】
散布の際に散布車は速度vで前進し、その間に散布円板は回転数nTで回転する。この回転数nTによって、散布円板を用いて散布される散布積層の散布幅bが決定される。散布積層の散布密度SDは、散布幅bと速度vに依存して、該散布円板に単位時間あたりに供給される散布量Qによって調整される。散布量(単位時間あたり)は、その場合Q=b×v×sDで得られる。
【背景技術】
【0003】
より高い走行速度vの場合に同じ散布密度SDを変わらない散布幅bで達成するには、前記式と同様にこれまで散布量Qだけを変化させてきた。理想の散布積層を達成するためのその他の影響要因の考察についてはあまり知られていない。ほとんどの修正案は、散布円板の構造的形態(特許文献1、特許文献2)または散布円板への撒き塩および塩水の供給の方法もしくは位置(特許文献3、特許文献4)に関するものである。走行速度が、散布積層、殊に散布幅bおよび車体の前後方向軸に対する相対位置、に対していかなる影響を及ぼすかについてはこれまで考察されないままであった。
【特許文献1】独国特許第4039795号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10043463号明細書
【特許文献3】独国特許第3937675号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第4429188号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明の課題は、散布積層が、殊に幅および位置に従って、種々の走行速度の場合にでも可能な限り予測可能でありかつ理想的に調整可能である方法および装置を提供することである。[p1−p2]
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために本発明によれば、所望の散布幅bを維持するために、走行速度vが増大するにつれて回転数nTを高めることが提案される。即ちこれは、散布幅bがもはや散布円板の回転数nTの一次関数ではなく、むしろ走行速度vにも依存するということである。
【0006】
上記の依存関係の理由は、散布物が散布円板を離れるやいなや受ける、走行速度vに相応した向かい風にあると推測される。散布円板を離れる散布物の扇形がこのことによって散布幅の負荷で束ねられる。この効果は例えば、従来の方法に従って右車線から車道幅全体に散布が行なわれる、つまり所望の散布幅を得るための回転円板回転数nTが走行速度vに応じていない複数車線の自動車道で確認できる。そこではしばしば左車線が雪で覆われたままであり、これはおそらく散布物の扇形がこの車線に到達していないためと思われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
散布すべき散布積層の散布密度SDが高ければ高いほど、走行速度の上昇とともに回転数nTの上昇を小さくすることが好ましい。試験によればつまり、散布密度SDが高ければ高いほど、即ち散布される単位面積あたりの散布される散布物が多ければ多いほど、向かい風による散布扇形の集束がわずかになるということがわかっている。この作用の原因は、散布円板から発射される大量の散布物塊は、空気中で互いに遠く離されたそれぞれの散布物塊に比べて向かい風に対して当たる面積が相対的に小さくなることにあると推測される。
【0008】
さらに、走行速度が変化されない場合でも散布密度SDの変化が散布幅bに影響すること、つまり散布密度SDが増大するだけで散布積層が拡張されることが観察された。したがって、所望の散布幅bを維持するために散布円板の回転数nTを散布密度SDが増大するにつれて減少させることが基本的に重要である。この作用の原因もまた、空気中で互いに遠く離されたそれぞれの散布物塊に比して(散布物量に相対して)より少ない当たる面積にある。しかし、この作用が付加的に走行速度によって影響を及ぼされることが判明した。散布幅bが散布密度SDの増大により第1の走行速度v1に対し例えばΔb1=2mだけ変化する場合に、第2の、さらに高められた走行速度v2で散布密度SDが同じ分だけ高められると変化値Δb2はかなり大きくなりうる(Δb2>Δb1)。この現象は、上述の、走行速度vとともに増大する散布物の扇形の集束にその原因を求められ、この集束はより大きな散布密度SDよりも小さな散布密度SDに強く作用する。
【0009】
したがって2つの事象を観察できる、つまり一方で、散布物の扇形を再び所望の散布幅bに拡大するために走行速度vの上昇時に散布円板の回転数nTを上昇させなければならず、その際、該上昇は散布密度SDが高ければ高いほど少なくなるということ、そして他方では、その他の点では一定である走行速度vにて散布幅bを維持するために散布密度SDの低下とともに散布円板の回転数nTを上昇させなければならず、その際、該上昇は散布物の扇形の集束のために走行速度vが高ければ高いほど著しいということである。いずれの影響がより強いか(上昇する走行速度vかあるいは上昇する散布密度SD)に応じて、全体として散布円板の回転数の上昇も低減も必要となりうる。しかしまたこれら2つの事象が相互に高め合う可能性もあり、つまり走行速度vが上昇しかつ散布密度SDが低下する場合に、散布円板の回転数nTをそれだけにより一層高めなければならず、ないしはその逆もまた同様である。
【0010】
この理想の回転数nTが一度確定された場合には、散布円板からの散布物の投下角度をこのようにして確定された回転数nTに応じて変化させることはより好ましいことである。つまり、回転数nTが低ければ低いほど、散布円板からの散布物の投下が遅く行なわれなければならないことがわかったということである。これは、比較的小さな回転数nTの場合に相応してより小さな遠心力が散布物に作用し、その結果、該散布物が回転円板上により長く滞留し、それゆえにより後になってから投下されることにその原因が求められる。したがって、このより長い滞留時間によって、その他の点では単位時間あたりで一定である撒かれた散布量Qにて回転円板の回転数nTに応じた散布積層の移動がもたらされる。
【0011】
例えば、上から見て時計回りに回転する回転円板ならびにさらに車道縁部に対して右に寄せられて散布された散布積層について考えれば、この散布積層は回転数nTが上昇すれば右側へ車道縁部を越えて移動する。したがってこの問題点は、散布円板の回転数nTが走行速度vの上昇のために高められる場合に、常に存在する。
【0012】
類似の作用を単位時間あたりに散布される散布量Qの場合に観察できた。散布量Qが大きければ大きいほど、散布物が散布円板から投下されるのがより早くなり、このことによって散布積層が先に説明した例の場合に走行方向右側へ車道縁部を越えて移動する。同じ散布密度SDでさらに遠くに散布するために、散布量Qが走行速度vの上昇の際に自動的に高められるため、変化する走行速度vとともにこの問題が生じる。したがって、本発明のもう1つの有利な形態によれば、散布円板からの散布物の投下角度は同様に速度vに依存して変更される。したがって、走行速度vが上昇しかつ上から見て時計回りに回転する回転円板により散布が右に寄せられるとともに散布物の投下角度を、散布された散布積層の右端が再び左に向かって右側の車道縁部にまで戻るまで時計回りに変更させる。
【0013】
この投下角度の変更は2つの方法で行なうことができ、これらの方法は場合によっては組み合わせることも可能であり、その場合、投下角度の変更が結果として必要な程度に到達する場合に限り、これら2つの措置は逆行していてもよい。
【0014】
投下角度の変更のための第1の選択肢によれば、散布ヘッド全体を相応する角度だけ回転させる。散布ヘッドとは当該技術によれば、散布円板に、この散布円板に散布物を供給するための供給装置、例えば立下がり管またはシュート、を含めたものをいう。
【0015】
投下角度の変更のための第2の選択肢によれば、散布円板に散布物とともに供給される液体含量を変化させる。この液体は例えば、撒き塩と一緒に放出される塩水である。液体含量が高められると、散布物が散布円板から離れるのが早くなる、つまり投下角度が散布円板の回転方向で見て前方に移動されるという結果になる。つまり走行速度vが上昇し、かつこのことによって、本発明によって変化させた散布円板の回転数nTゆえに、また散布密度SDを維持するために、単位時間あたりにされる散布量Qを変化し、それによりそのつど散布円板からの散布物の投下角度もまた変化する場合には、この変化した投下角度を供給される液体含量を減少させることによって補償できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
散布密度SDおよび散布幅bを有する散布積層を生じさせるための、回転数nTで回転しかつ速度vで並進される散布円板を用いた散布物の散布のための方法であって、散布幅bを維持するために、その他の点では一定である散布密度SDにて速度vが増大するにつれて回転数nTを高めることを特徴とする、散布物の散布のための方法。
【請求項2】
散布密度SDが高ければ高いほど、速度vが増大するにつれて回転数nTの上昇が小さくなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
散布幅bを維持するために、その他の点では一定である速度vにて散布密度SDが減少するにつれて回転数nTを高めることを特徴とする、殊に請求項1または2記載の、散布密度SDおよび散布幅bを有する散布積層を生じさせるための、回転数nTで回転しかつ速度vで並進される散布円板を用いた散布物の散布のための方法。
【請求項4】
速度vが高ければ高いほど、散布密度SDが減少するにつれて回転数nTの上昇が大きくなる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
その他の点では単位時間あたりで一定である撒かれた散布量Qにて回転数nTに応じて散布円板からの散布物の投下角度を変化させる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
変化する速度vならびにその他の点では一定である散布密度SDおよび散布幅bにて、つまり単位時間あたりに散布される変化する散布量Qにて、速度vに応じて散布円板からの散布物の投下角度を変化させることを特徴とする、殊に請求項1から5までのいずれか1項に記載の、散布密度SDおよび散布幅bを有する散布積層を生じさせるための、回転しかつ速度vで並進される散布円板を用いた散布物の散布のための方法。
【請求項7】
散布円板および該散布円板に散布物を供給するための供給装置を含む散布ヘッドの回転によって投下角度の変更を行なう、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
散布円板に散布物とともに供給される液体含量の変化によって投下角度の変更を行なう、請求項5から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
速度vが上昇する場合に前記液体含量を減少させる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
散布積層を生じさせるための散布物の散布のための装置であって、回転する散布円板、該回転する散布円板に散布物を供給するための装置を備え、該散布円板の並進速度vでの並進運動および該散布円板の回転数nTにて、散布密度SDおよび散布幅bを有する散布積層を生成可能とするために、該回転する散布円板から散布物が発射されるよう構成されている、散布物の散布のための装置において、散布幅bを維持するために、その他の点では一定である散布密度SDにて速度vが増大するにつれて該散布円板の回転数nTを高める制御装置を特徴とする、散布物の散布のための装置。
【請求項11】
散布密度SDが高ければ高いほど、速度vが増大するにつれて回転数nTの上昇が小さくなる、請求項10記載の装置。
【請求項12】
散布積層を生じさせるための散布物の散布のための装置であって、回転する散布円板、該回転する散布円板に散布物を供給するための装置を備え、該散布円板の並進速度vでの並進運動および該散布円板の回転数nTにて、散布密度SDおよび散布幅bを有する散布積層を生成可能とするために、該回転する散布円板から散布物が発射されるよう構成されている、散布物の散布のための装置において、散布幅bを維持するために、その他の点では一定である速度vにて散布密度SDが減少するにつれて回転数nTを高める散布装置を特徴とする、散布物の散布のための装置。
【請求項13】
速度vが高ければ高いほど、散布密度SDが減少するにつれて回転数nTの上昇が大きくなる、請求項12記載の装置。
【請求項14】
散布円板からの散布物の投下角度が制御装置を用いて、その他の点では単位時間あたりで一定である撒かれた散布量Qにて回転数nTに応じて変化可能である、請求項10から13までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
変化する速度vならびにその他の点では一定である散布密度SDおよび散布幅bにて、つまり単位時間あたりに散布される変化する散布量Qにて、速度vに応じて散布円板からの散布物の投下角度を変化させる制御装置を特徴とする、殊に請求項10から14までのいずれか1項に記載の、散布積層を生じさせるための散布物の散布のための装置であって、回転する散布円板、該回転する散布円板に散布物を供給するための装置を含んでいて、該散布円板の並進速度vでの並進運動および該散布円板の回転数nTにて、散布密度SDおよび散布幅bを有する散布積層を生成可能とするために、該回転する散布円板から散布物が発射されるよう構成されている、散布物の散布のための装置。
【請求項16】
散布円板および該散布円板に散布物を供給するための散布物供給装置を含む散布ヘッドの回転によって投下角度の変更が行なわれる、請求項14または15記載の装置。
【請求項17】
散布円板に散布物とともに供給される液体含量の変化によって投下角度の変更が行なわれる、請求項14から16までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
変化しない散布密度SDにて速度vが上昇する場合に前記液体含量を減少させる、請求項13記載の装置。

【公表番号】特表2007−506537(P2007−506537A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515973(P2006−515973)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006533
【国際公開番号】WO2005/001208
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(505476490)キュッパー−ヴァイサー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (6)
【Fターム(参考)】