説明

散気器

【課題】多孔質体とガス配管との間に設けたシール材の劣化を抑制することができる散気器を提供すること。
【解決手段】散気器1は、セラミックスからなる多孔質体2を、オゾン含有ガスGが流れるガス配管4にシール材3を介して保持してなると共に、被処理水中に浸漬させた状態で、多孔質体2からオゾン含有ガスGを気泡にして放出するよう構成してある。多孔質体2においてシール材3と接触する接触部22には、接触部22における多数の微細孔を多孔質体2と一体的に焼成した釉薬によって塞いだ閉塞層23が設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化を必要とする被処理水中に浸漬させ、オゾンを含有するガス等の腐食性ガスを放出して被処理水中の被分解物質を分解するために用いる散気器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シアン、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、トリクロロエチレン等のVOC(揮発性有機化合物)、ダイオキシン等の難分解性物質を含む廃水を浄化する際には、オゾンを微細な気泡にして水に溶解して、活性酸素を効率的に生成することを行っている。そして、活性酸素を用いることにより、上記難分解性物質の分解反応を促進することができる。
例えば、特許文献1においては、オゾン含有ガス水中散気装置をオゾン含有ガスが供給される中空体に形成し、この中空体のうち水中で下部側に位置する部分のみが通気性を有するようにしている。これにより、水中への散気が下部側でのみ行われ、非運転状態で中空体へ流入した逆流水の排出を短時間で行い、逆流水が残水することによる腐食等の問題を改善することができる。
【0003】
また、例えば、特許文献2のオゾン散気管においては、オゾンガスが透過するオゾン透過部を有する多孔質管を、多孔質管の端部に接続された配管接続部品に対して保持する際に、この保持を行う保持手段を多孔質管のオゾン透過部の外側に設けることが行われている。これにより、保持手段が、オゾン透過部を透過して水中へ散気されるオゾンに曝されないようにし、オゾンによる腐食を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−204934号公報
【特許文献2】特開2002−254089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記中空体、多孔質管等は、ガス配管との接続部分の気密性を保つために、パッキング等のシール材を間に挟んで固定している。
しかしながら、上記従来のオゾン含有ガス水中散気装置、オゾン散気管等においては、上記シール材に発生する劣化を抑えるための工夫はなされていない。すなわち、中空体、多孔質管等から放出するオゾン、又はオゾンが水中に溶解して生成された活性酸素にシール材が曝されると、このシール材が短時間に劣化するおそれがある。また、上記特許文献1においては、弗化エチレン等の耐オゾン性に優れたシール材を使用する必要がある。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、多孔質体とガス配管との間に設けたシール材の劣化を抑制することができる散気器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、セラミックスからなる多孔質体を、腐食性ガスが流れるガス配管にシール材を介して保持してなると共に、被処理水中に浸漬させた状態で、上記多孔質体から上記腐食性ガスを気泡にして放出するよう構成した散気器であって、
上記多孔質体において上記シール材と接触する接触部には、該接触部における多数の微細孔を無機材料によって塞いだ閉塞層が設けてあることを特徴とする散気器にある(請求項1)。
【0008】
本発明の散気器は、多孔質体における上記接触部に上記閉塞層を形成している。そして、接触部においては、多数の微細孔が無機材料によって塞がれている。これにより、散気器を被処理水中に浸漬して使用する際に、閉塞層からは腐食性ガスが放出されず、腐食性ガス又は腐食性ガスが被処理水に溶解して生成される物質が、シール材に曝されて、シール材が劣化されることを抑制することができる。
なお、多孔質体における閉塞層を除く部分からは、被処理水中へ腐食性ガスが微細な気泡として放出される。
【0009】
それ故、本発明の散気器によれば、多孔質体とガス配管との間に設けたシール材の劣化を抑制することができる。
また、本発明の散気器においては、シール材の劣化を抑制することにより、このシール材として、耐腐食性に優れた特殊なものでなく、一般的なものを使用することができる。そのため、散気器の製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1における、散気器を正面から見た状態で示す断面説明図。
【図2】実施例2における、散気器を正面から見た状態で示す断面説明図。
【図3】実施例2における、散気器を側方から見た状態で示す断面説明図。
【図4】実施例3における、散気器を正面から見た状態で示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述した本発明の散気器における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記多孔質体は、アルミナ、炭化珪素等のセラミックス材料を用いて構成することができる。
上記閉塞層を形成するための無機材料としては、多孔質体に担持しやすい種々の無機材料を用いることができる。
上記シール材としては、耐腐食性に優れた特別な材質のものを使用する必要はなく、一般的に用いられる固形状のガスケット、パッキン、接着剤兼用のシール材(硬化するもの等)を使用することができる。
【0012】
また、上記多孔質体は、中空穴を一方側から形成した器形状を有しており、上記中空穴を上記ガス配管に連通させた状態で、接着性を有する上記シール材を介して上記ガス配管に保持することができる(請求項2)。
この場合には、フレーム等を用いることなく、多孔質体をガス配管に保持することができ、散気器の構造を極めて簡単にすることができる。
【0013】
また、上記多孔質体は、中空穴を一方側から形成した器形状を有しており、上記中空穴を形成した一方側に上記シール材を配置すると共に他方側に緩衝材を配置し、該緩衝材及び上記シール材を介して一対の挟持プレートによって挟持した状態で上記ガス配管に保持し、上記閉塞層は、上記シール材又は上記緩衝材と接触する接触部にそれぞれ設けることもできる(請求項3)。
この場合にも、上記閉塞層によって、多孔質体に配置するシール材及び緩衝材の劣化を抑制することができる。
【0014】
また、上記閉塞層は、上記多孔質体と一体的に焼成した釉薬によって形成することができる(請求項4)。
この場合には、閉塞層の形成が容易である。この閉塞層は、上記多孔質体における接触部の多数の微細孔に、液状態の釉薬を含浸させた後、この釉薬を多孔質体と一体的に焼成することによって形成することができる。また、釉薬は、長石、珪石、粘土(カオリン等)、石灰等を主成分とし、粉砕混合され、焼成によりガラス化する材料により構成することができる。
【0015】
また、上記腐食性ガスは、オゾンを含むオゾン含有ガスである場合に、シール材の劣化を抑制する大きな効果を得ることができる(請求項5)。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明の散気器にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
(実施例1)
本例の散気器1は、図1に示すごとく、セラミックスからなる多孔質体2を、オゾンを含む気体であるオゾン含有ガスGが流れるガス配管4にシール材3を介して保持してなると共に、被処理水中に浸漬させた状態で、多孔質体2からオゾン含有ガスGを微細な気泡にして放出するよう構成してある。そして、多孔質体2においてシール材3と接触する接触部22には、接触部22における多数の微細孔を無機材料によって塞いだ閉塞層23が設けてある。本例の閉塞層23は、多孔質体2と一体的に焼成した釉薬によって形成してある。
【0017】
以下に、本例の散気器1につき、図1を参照して詳説する。
本例の散気器1は、オゾン含有ガスの散気器であり、被処理水としての地下水を浄化するために用いる。この地下水中の被分解物質(難分解性物質)は、シアン、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、トリクロロエチレン等のVOC(揮発性有機化合物)、ダイオキシン等である。なお、被処理水は、地下水以外にも、シアン等を含有するメッキ処理廃水等とすることができる。
図1に示すごとく、本例の多孔質体2は、オゾン含有ガスGを透過させることができる多数の微細孔を有するセラミックス体から構成されている。多孔質体2は、中空穴21を一方側L1から形成した丸い器形状を有しており、円柱状のセラミックス体における軸方向Lの一方側L1から中空穴21を設けることによって形成されている。
【0018】
本例のガス配管4の先端部には、フランジ部40と、フランジ部40に対してテーパ状(円錐状)に突出した係合部401とが形成してある。また、本例の多孔質体2には、
係合部401を係合させるテーパ状(円錐状)の凹部211が形成してある。この凹部211は、中空穴21の開口部において面取り状に形成されている。
本例のシール材3は、接着性を有するものから構成した。すなわち、ペースト状(液状)のシール材3を多孔質体2又はガス配管4に塗布し、両者を組み合わせた状態でペースト状のシール材3を硬化させて、シール材3を介して多孔質体2とガス配管4とを接着保持した。
【0019】
本例の閉塞層23は、多孔質体2における一方の端部L1(接触部22)の多数の微細孔に、液状態の釉薬を含浸させた後、この釉薬を多孔質体2と一体的に焼成することによって形成してある。釉薬は、多孔質体2の中空穴21の形成方向Lにおける端面から所定の幅の範囲内の微細孔に埋設されている。閉塞層23を形成する所定の上記形成方向L(軸方向)の幅は、例えば、1〜10mmとすることができる。
【0020】
上記のごとく、本例のオゾン含有ガスの散気器1は、多孔質体2がガス配管4と接触する部分22に閉塞層23を有している。そして、接触部22においては、多数の微細孔が多孔質体2と一体に焼成した釉薬によって塞がれている。これにより、散気器1を被処理水中に浸漬して使用する際に、閉塞層23からはオゾン含有ガスGが放出されず、オゾン含有ガスGにおけるオゾンが被処理水に溶解して生成される活性酸素が、シール材3に曝されて、シール材3が劣化されることを抑制することができる。
なお、多孔質体2における閉塞層23を除く部分20からは、被処理水中へオゾン含有ガスGが微細な気泡として放出され、オゾン含有ガスGにおけるオゾンが被処理水に溶解して活性酸素を生成し、この活性酸素によって、被処理水中の被分解物質の分解反応を促進することができる。
【0021】
それ故、本例のオゾン含有ガスの散気器1によれば、多孔質体2とガス配管4との間に設けたシール材3の劣化を抑制することができる。
また、本例の散気器1においては、シール材3の劣化を抑制することにより、このシール材3として、耐オゾン性に優れた特殊なものでなく、一般的なものを使用することができる。そのため、散気器1の製造コストを低減させることができる。
【0022】
(実施例2)
本例は、散気器1における多孔質体2を、金属製フレーム40によってガス配管4に保持させた例である。
図2、図3に示すごとく、本例の金属製フレーム40は、多孔質体2の中空穴21の形成方向Lにおける両側L1、L2に配置する一対の挟持プレート41と、一対の挟持プレート41を連結する複数の連結部材43(本例ではボルト43)とを有している。一対の挟持プレート41には、複数本のボルト43を挿通させる複数の挿通穴411がそれぞれ形成してある。多孔質体2において中空穴21を形成した一方側(開口側)L1に位置する一方の挟持プレート41Aには、中空穴21へオゾン含有ガスGを供給するガス配管4が接続してある。
【0023】
本例の散気器1は、多孔質体2の中空穴21の形成方向Lにおける一方側L1にシール材3を配置すると共に他方側L2に緩衝材30を配置している。そして、多孔質体2、シール材3及び緩衝材30を一対の挟持プレート41の間に配置し、一対の挟持プレート41同士を、複数本のボルト43によって締め付けることによって形成してある。また、散気器1は、鉛直方向上方にボルト43が位置されない状態で被処理水中に配置して用いる。
【0024】
図2に示すごとく、本例のシール材3は、樹脂又はゴムから形成したガスケットからなる。シール材3は、多孔質体2の中空穴21の形成方向Lの開口側L1と、一方の挟持プレート41Aとの間に設けてあり、閉塞層23は、多孔質体2の中空穴21の形成方向Lにおける両端部L1、L2に設けてある。シール材3には、ガス配管4と連通する貫通穴31が形成してある。
【0025】
本例の閉塞層23も、多孔質体2における両端部L1、L2(接触部22)の多数の微細孔に、液状態の釉薬を含浸させた後、この釉薬を多孔質体2と一体的に焼成することによって形成してある。
本例の散気器1においても、その他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0026】
(実施例3)
本例は、散気器1における多孔質体2を、円盤形状に形成した例である。
図4に示すごとく、本例の多孔質体2は、ガス配管4の先端部に設けた器状の保持部44に対して接着性のシール材3を介して取り付けてある。保持部44の開口部には、多孔質体2の外縁部22の全周を保持させる段差部分441が形成してあり、多孔質体2は、段差部分441に対して接着性のシール材3によって接着してある。保持部44には、多孔質体2によって塞がれたガス溜り空間442が形成されている。本例のガス配管4は、種々の材質のホースから構成することができる。
【0027】
本例の閉塞層23は、接着性のシール材3と接触する多孔質体2の外縁部22の全周に設けてある。また、本例の散気器1は、多孔質体2の板面を鉛直方向上方に向けて被処理水中に浸漬させて用いる。
本例の散気器1においても、その他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
(確認試験)
本確認試験においては、上記散気器の耐久性を確認した。具体的には、上記実施例2に示した多孔質体2に閉塞層23を設けた形成した散気器1(発明品)と、多孔質体2に閉塞層23を設けていない従来の散気器(比較品)とを、被処理水(地下水)の中に約2000時間浸漬させて使用し、シール材3の劣化度合いを調べた。その結果、発明品におけるシール材3は変化がほとんどなかったのに対し、比較品におけるシール材3は、厚みが若干薄くなっており、劣化していることがわかった。なお、比較品を被処理水中に約6000時間浸漬させて使用したときには、シール材3の厚みがほとんどなくなるまで劣化した。このことより、上記多孔質体2に閉塞層23を設ける効果の有効性が確認された。
【符号の説明】
【0029】
1 散気器
2 多孔質体
21 中空穴
22 接触部
23 閉塞層
3 シール材
4 ガス配管
L 形成方向
G オゾン含有ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスからなる多孔質体を、腐食性ガスが流れるガス配管にシール材を介して保持してなると共に、被処理水中に浸漬させた状態で、上記多孔質体から上記腐食性ガスを気泡にして放出するよう構成した散気器であって、
上記多孔質体において上記シール材と接触する接触部には、該接触部における多数の微細孔を無機材料によって塞いだ閉塞層が設けてあることを特徴とする散気器。
【請求項2】
請求項1において、上記多孔質体は、中空穴を一方側から形成した器形状を有しており、上記中空穴を上記ガス配管に連通させた状態で、接着性の上記シール材を介して上記ガス配管に保持してあることを特徴とする散気器。
【請求項3】
請求項1において、上記多孔質体は、中空穴を一方側から形成した器形状を有しており、上記中空穴を形成した一方側に上記シール材を配置すると共に他方側に緩衝材を配置し、該緩衝材及び上記シール材を介して一対の挟持プレートによって挟持した状態で上記ガス配管に保持してあり、
上記閉塞層は、上記シール材又は上記緩衝材と接触する接触部にそれぞれ設けてあることを特徴とする散気器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記閉塞層は、上記多孔質体と一体的に焼成した釉薬によって形成してあることを特徴とする散気器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記腐食性ガスは、オゾンを含むオゾン含有ガスであることを特徴とする散気器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−234249(P2010−234249A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84501(P2009−84501)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(598153467)キング砥石株式会社 (1)
【Fターム(参考)】