説明

散気装置

【課題】複数の多孔散気筒の水平レベルを同一に維持できる散気装置の提供。
【解決手段】空気供給管10に接する内側に樹脂製の筒状取り付け具20が配置され、外側に金属製の板状取り付け具30が配置され、板状取り付け具30を締め付けることで固定されている。複数本の多孔散気筒40が筒状取り付け具20に接続されることで、全ての水平レベルが同一に維持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理設備の生物処理槽内に設置して使用する用途に適した散気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水処理施設において、微生物を使用する生物処理槽内には曝気するための散気装置が使用される。この散気装置としては、角型のメンブレンディフューザ、チューブ型のメンブレンディフューザ等を使用したものが知られている。
【0003】
チューブ型のメンブレンディフューザを使用した散気装置としては、例えば、特許文献1の図2に示すようにして、送風管(空気供給管)40に形成された複数の開口部に複数のチューブ型のメンブレンディフューザを接続して取り付けたものが知られている。
しかし、送風管に対してチューブ型のメンブレンディフューザを直接ねじ込み等の手段接続した形態のものの場合、長期間運転を継続したときには、生物処理槽内の水圧や散気時において加えられる浮力等の外力によって、接続部分が破損し易いという問題がある。
【0004】
この問題を解決する方法として、複数部品の組み合わせからなる樹脂製の取り付け具を介して、送風管にチューブ型のメンブレンディフューザを取り付ける方法がある。
しかし、取り付け時に樹脂製の部品同士が接触することにより割れ等の破損が生じ易いという問題があり、特に寒冷時においては前記問題が発生し易い傾向がある。
さらに、送風管に複数のチューブ型のメンブレンディフューザを取り付けたときには、全てのチューブ型のメンブレンディフューザが同じ水平位置にあることが望ましいが、この点においてもバラツキが生じる傾向があり、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−221158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、空気供給管と多孔散気筒(チューブ型のメンブレンディフューザ)との接続部分の耐久性が高く、複数の多孔散気筒の水平位置合わせもできる散気装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、課題の解決手段として、下記の発明を提供する。
空気供給口(12)を有する空気供給管(10)と、空気供給管(10)の空気供給口(12)に接続された多孔散気筒(40)を有しており、空気供給管(10)と多孔散気筒(40)が取り付け具を使用して接続された散気装置(1)であって、
空気供給管(10)と多孔散気筒(40)を接続するための取り付け具が、樹脂製の筒状取り付け具(20)と金属製の板状取り付け具(30)の組み合わせからなるものであり、
樹脂製の筒状取り付け具(20)が、
外筒部(21)と、
外筒部(21)の一端側開口部側に形成された閉塞底面(22)を貫通して固定された中筒部(23)と、
中筒部(23)が配置された端部側に形成された空気供給管(10)の外表面に当接するための曲面状当接部(24)と、
曲面状当接部(24)の反対側開口部に形成された多孔散気筒(40)の接続部(25)を有しており、
金属製の板状取り付け具(30)が、中央部に筒状取り付け具(20)を通すための穴(31)を有しているものであり、
取り付け具を使用した空気供給管(10)と多孔散気筒(40)の接続部が、
空気供給管(10)の空気供給口(12)に筒状取り付け具(20)の中筒部(23)が差し込まれ、かつ空気供給管(10)の外表面に筒状取り付け具(20)の曲面状当接部(24)が当接された状態にて、
筒状取り付け具(20)の外筒部(21)に中央部の穴(31)を通すことで嵌め込まれた板状取り付け具(30)が、曲面状当接部(24)の外周面及び空気供給管(10)の外周面に沿って折り曲げられ、折り曲げられた状態の板状取り付け具(30)が固定手段にて空気供給管(10)に対して固定されており、
筒状取り付け具(20)の多孔散気筒の接続部(25)に多孔散気筒(40)が接続されている、散気装置(1)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の散気装置では、空気供給管と多孔散気筒とを接続するための取り付け具として樹脂製の筒状取り付け具と金属製の板状取り付け具の組み合わせが使用されており、空気供給管に接する内側に樹脂製の筒状取り付け具が配置され、外側に金属製の板状取り付け具が配置されている。
このため、空気供給管に対する取り付け具の固定強度が高く、同じ取り付け位置を維持できることから、取り付け具に複数本の多孔散気筒を接続したとき、全ての多孔散気筒を同じ水平方向位置(生物処理槽の底面から同じ高い位置)に維持することができる。
また、本発明の散気装置は、前記取り付け具を使用した接続部の耐久性が高く、長期間散気運転を継続した場合であっても前記接続部が破損することがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の散気装置の斜視図。
【図2】(a)は、本発明の散気装置で使用する筒状取り付け具の側面図(一部断面図)、(b)は、(a)の正面図。
【図3】本発明の散気装置で使用する板状取り付け具の一実施形態を示す斜視図。
【図4】(a)は、本発明の散気装置で使用する板状取り付け具の他実施形態を示す平面図、(b)は(a)の側面図。
【図5】本発明の散気装置の組立説明図。
【図6】本発明の散気装置の側面図(但し、板状取り付け具の固定前)であり、1対の多孔散気筒を配置したもの。
【図7】本発明の散気装置の側面図(但し、板状取り付け具の固定前)であり、1本の多孔散気筒を配置したもの。
【図8】板状取り付け具の締め付け状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<散気装置1>
本発明の散気装置1は、図1に示すように、樹脂製乃至は金属製の空気供給管10が有している複数の空気供給口12に対して、取り付け具を介して多孔散気筒(チューブ型のメンブレンディフューザ)40が接続されている。空気供給管10には、外部の空気源から送風するための樹脂製乃至は金属製の送風管11が接続されている。
【0011】
多孔散気筒40は公知のものであり、特許文献1の図1に示されたようなチューブ型のメンブレンディフューザを使用することができ、その他、ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社から販売されているPMD−Tシリーズ、例えばPMD−T06(610L、762L、1000L)、PMD−T10S(500L、762L、1000L)を使用することができる。
【0012】
多孔散気筒40は、適用する生物処理槽の大きさや散気能力等に応じて本数や配置状態を適宜調整することができる。例えば、空気供給管10の両側の対称位置に同数の多孔散気筒40を配置する形態、空気供給管10の一方の側のみに多孔散気筒40を配置する形態、空気供給管10の両側に長さ方向に互い違いの位置に多孔散気筒40を配置する形態等にすることができる。
なお、図1では、空気供給口12を示すため、空気供給口12に多孔散気筒40が接続していない部分も残した状態で示している。
【0013】
<取り付け具>
散気装置1において、空気供給管10と多孔散気筒40を接続するための取り付け具は、樹脂製の筒状取り付け具20と金属製の板状取り付け具30(130)の組み合わせからなるものである。
筒状取り付け具20は、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル等の合成樹脂製のものにすることができ、板状取り付け具30(130)はステンレス製やアルミニウム製が好ましい。
【0014】
樹脂製の筒状取り付け具20は、図2(a)、(b)に示すようなものであり、外筒部21、中筒部23、曲面状当接部24及び多孔散気筒40への接続部25を有している。図2(a)は、中筒部23が確認できるように、外筒部21の一部を取り除いた状態で示しています。
外筒部21は、大径外筒部21aと小径外筒部21bからなっているが、多孔散気筒40との接続のし易さの観点から、同一径のものにしてもよいし、3つ以上の径の異なる部分からなるものにしてもよい。
外筒部21の一端側開口部側には閉塞底面22が形成されており、閉塞底面22を貫通して、中筒部23が固定されている。中筒部23は、空気供給管10の空気供給口12に嵌め込まれる。
中筒部23が配置された端部側には、空気供給管10の外表面に当接するための曲面状当接部24が形成されている。
さらに曲面状当接部24の反対側開口部には、多孔散気筒40の接続部25が形成されている。接続部25の形状及び構造は、多孔散気筒40の接続部の形状及び構造に対応した構造のものである。多孔散気筒40の接続部41(図5参照)が外表面に雄ねじ部を有していれば、接続部25は、前記雄ねじ部をねじ込み可能な大きさ及び形状の雌ねじ部からなるものにする。
【0015】
金属製の板状取り付け具30は、図3に示すようなものであり、中央部には筒状取り付け具20の外筒部21に嵌め込むための穴31が形成されている。穴31は、外筒部21を通すことができ、曲面状当接部24は通すことができない大きさ及び形状のものである。
【0016】
別実施形態の金属製の板状取り付け具130は、図4(a)、(b)に示すようなものである。中央部には筒状取り付け具20の外筒部21に嵌め込むための穴131が形成されている。穴131は、外筒部21を通すことができ、曲面状当接部24は通すことができない大きさ及び形状のものである。
板状取り付け具130は、さらに長さ方向の両端部130a、130b側において締め付け手段と組み合わせて固定するための固定補助部を有している点が図3の板状取り付け具30とは異なっている。
【0017】
固定補助部は、長さ方向の両端部130a、130bのそれぞれにおいて幅方向に形成されたトンネル状の外壁132、133で形成された差し込み孔134,135であり、トンネル状の外壁132、133の少なくとも一部が切り取られたものである。図4では、トンネル状の外壁132は2箇所が切り取られており(切り取り部141、142)、トンネル状の外壁133は2箇所が切り取られている(切り取り部143、144)。
【0018】
<散気装置1の空気供給管への多孔散気筒の取り付け構造及び組立方法>
図5は、散気装置1を分解した状態を示す図であり、散気装置1の組立方法を示す図でもある。図6は、図5に示す状態から散気装置1を組み立てたときの正面図である。以下、組立方法により説明する。
【0019】
空気供給管10の空気供給口12に対して、筒状取り付け具20の中筒部23を差し込む。このとき、曲面状当接部24は、空気供給管10の外周面に当接された状態になっている。
この状態のまま、板状取り付け具130を曲面状当接部24の外周面と空気供給管10の外周面の両方に沿わせるように折り曲げる(図6参照)。
図6は、2つの多孔散気筒40が、図1に示すように2つの多孔散気筒40a、40bの配置した実施形態を示しており、図7は、図1に示すように1つの多孔散気筒40cを配置した実施形態を示している。
【0020】
図6及び図7では、図4で示す板状取り付け具130を使用した形態を示しているが、図3で示す板状取り付け具30を使用することもできる。
図6に示す実施形態では、一対の板状取り付け具130の差し込み孔134と差し込み孔135が近接する位置(例えば、間隔が1〜10cm程度)になるように、空気供給管10と板状取り付け具130の長さが調整されている。
なお、図4で示す板状取り付け具130を使用したとき、図6では、2つの差し込み孔134同士及び2つの差し込み孔135同士が近接する位置になるようにしても同じである。
図7に示す実施形態では、一つの板状取り付け具130の差し込み孔134、135が近接する位置(例えば、間隔が1〜10cm程度)になるように、空気供給管10と板状取り付け具130の長さが調整されている。
【0021】
図6に示す状態において板状取り付け具130を固定する。なお、板状取り付け具30を使用した場合には、リング状の締め付け具、金属バンド等によって板状取り付け具30の上から締め付けることで、板状取り付け具30と曲面状当接部24を一緒に締め付けて固定する。
【0022】
図8により締め付け方法を説明する。
板状取り付け具130の長さ方向の端部130a側に形成されたトンネル状の差し込み孔134に対してボルト(棒状部材)50が差し込まれており、ボルト55をねじ込むことで差し込み孔134に対して固定されている。
板状取り付け具130の長さ方向の端部130b側(端部130aとは反対側)に形成されたトンネル状の差し込み孔135に対してボルト(棒状部材)60が差し込まれており、ボルト65をねじ込むことで差し込み孔135に対して固定されている。
【0023】
ボルト50は幅方向に2つの貫通孔51、52を有しており、それぞれ端部130a側の切り取り部141、142に位置している。
ボルト60は幅方向に2つの貫通孔61、62を有しており、それぞれ端部130b側の切り取り部143、144に位置している。
【0024】
ボルト50の貫通孔51とボルト60の貫通孔61にまたがって、ボルト71が貫通されており、突出部71a(図8ではボルト50側であるが、ボルト60側でもよい)にはナット73がねじ込まれている。
ボルト50の貫通孔52とボルト60の貫通孔62にまたがって、ボルト72が貫通されており、突出部72a(図8ではボルト50側であるが、ボルト60側でもよい)にはナット74がねじ込まれている。
図8の状態にて、ナット73とナット74をねじ込んで行くと、図6に示す2枚の板状取り付け具130の差し込み孔134、135の間隔が短くなり、対となる2枚の板状取り付け具130と2つの曲面状当接部24が締め付けられることで、筒状取り付け具20の空気供給管10に対する固定強度が高められる。
【0025】
散気装置1では、1つの筒状取り付け具20は、その中筒部23と曲面状当接部24の2つの作用によって空気供給管10に対して位置決めされると共に、図8に示すように板状取り付け具130の近接する差し込み孔同士を締め付けることで、前記位置決め状態を維持したまま、強く固定されている。
このため、筒状取り付け具20の水平方向への位置合わせが容易にかつ確実にできることから、筒状取り付け具20に接続された複数の多孔散気筒40の水平方向への位置合わせも確実にできるようになる。
【0026】
本発明の散気装置1は、筒状取り付け具20と板状取り付け具30(130)の組み合わせからなる取り付け具を使用していることから、複数の多孔散気筒40の水平レベルを同じすることができるため、生物処理槽内にて使用したとき、生物処理槽内をより均一に散気することができるようになる。
【符号の説明】
【0027】
1 散気装置
10 空気供給管
11 送風管
12 空気供給口
20 筒状取り付け具
30、130 板状取り付け具
40 多孔散気筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気供給口(12)を有する空気供給管(10)と、空気供給管(10)の空気供給口(12)に接続された多孔散気筒(40)を有しており、空気供給管(10)と多孔散気筒(40)が取り付け具を使用して接続された散気装置(1)であって、
空気供給管(10)と多孔散気筒(40)を接続するための取り付け具が、樹脂製の筒状取り付け具(20)と金属製の板状取り付け具(30)の組み合わせからなるものであり、
樹脂製の筒状取り付け具(20)が、
外筒部(21)と、
外筒部(21)の一端側開口部側に形成された閉塞底面(22)を貫通して固定された中筒部(23)と、
中筒部(23)が配置された端部側に形成された空気供給管(10)の外表面に当接するための曲面状当接部(24)と、
曲面状当接部(24)の反対側開口部に形成された多孔散気筒(40)の接続部(25)を有しており、
金属製の板状取り付け具(30)が、中央部に筒状取り付け具(20)を通すための穴(31)を有しているものであり、
取り付け具を使用した空気供給管(10)と多孔散気筒(40)の接続部が、
空気供給管(10)の空気供給口(12)に筒状取り付け具(20)の中筒部(23)が差し込まれ、かつ空気供給管(10)の外表面に筒状取り付け具(20)の曲面状当接部(24)が当接された状態にて、
筒状取り付け具(20)の外筒部(21)に中央部の穴(31)を通すことで嵌め込まれた板状取り付け具(30)が、曲面状当接部(24)の外周面及び空気供給管(10)の外周面に沿って折り曲げられ、折り曲げられた状態の板状取り付け具(30)が固定手段にて空気供給管(10)に対して固定されており、
筒状取り付け具(20)の多孔散気筒の接続部(25)に多孔散気筒(40)が接続されている、散気装置(1)。
【請求項2】
金属製の板状取り付け具(130)が、
中央部に筒状取り付け具(20)に通すための穴(131)を有しており、
さらに長さ方向の両端部(130a,130b)側において締め付け手段と組み合わせて固定するための固定補助部を有しており、
固定補助部が、長さ方向の両端部側のそれぞれにおいて幅方向に形成されたトンネル状の外壁(132,133)で形成された差し込み孔(134,135)で、トンネル状の外壁(132,133)の少なくとも一部が切り取られたものであり、
筒状取り付け具(20)と板状取り付け具(130)を使用した空気供給管(10)と多孔散気筒(40)の接続部が、
空気供給管(10)の空気供給口(12)に筒状取り付け具の中筒部(23)が差し込まれ、かつ空気供給管(10)の外表面に筒状取り付け具の曲面状当接部(24)が当接された状態にて、
筒状取り付け具の外筒部(21)に中央部の穴(131)を通すことで嵌め込まれた板状取り付け具(130)が、曲面状当接部(24)の外周面及び空気供給管(10)の外周面に沿って、長さ方向の両端部に形成されたトンネル状の差し込み孔(134,135)が近接するようにして折り曲げられており、
板状取り付け具(130)の長さ方向の両端(130a,130b)に形成された計2つのトンネル状の差し込み孔(134,135)に対して、幅方向に形成された1以上の貫通孔(51,52,61,62)を有する棒状部材(50,60)が、その貫通孔(51,52,61,62)が前記差し込み孔(134,135)を形成するトンネル状の外壁(132,133)が切り取られた部分(141、142,143,144)に位置するように差し込まれており、
2本の棒状部材(50,60)の貫通孔(51,52,61,62)にまたがって貫通されたボルト(71,72)の突出部(71a,72a)がナット(73,74)で締め付けられることにより板状取り付け具(130)と筒状取り付け具(20)が空気供給管(10)に対して固定されている、請求項1記載の散気装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−22546(P2013−22546A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161777(P2011−161777)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】