整地用ロータ及び整地用ロータを備えた整地装置
【課題】本発明は、回転支軸に対してカラーを介在させることなく複数の単位回転体を挿通させるだけの簡単な組み付けで、隣接する単位回転体の整地作用部間に夾雑物が挟まり難い整地用ローラ並びに整地装置を得ることを目的とする。
【解決手段】単位回転体に回転支軸に嵌合するボス部とこのボス部に連設して径方向外方に位置する整地作用部とを備え、単位回転体の回転軸芯方向におけるボス部の長さを回転軸芯方向における整地作用部の長さよりも長くしてある整地用ロータ、及びこの整地ローラを回転支軸に複数挿通して、隣接する整地作用部間に夾雑物が挟まらないような隙間を形成してある整地装置。
【解決手段】単位回転体に回転支軸に嵌合するボス部とこのボス部に連設して径方向外方に位置する整地作用部とを備え、単位回転体の回転軸芯方向におけるボス部の長さを回転軸芯方向における整地作用部の長さよりも長くしてある整地用ロータ、及びこの整地ローラを回転支軸に複数挿通して、隣接する整地作用部間に夾雑物が挟まらないような隙間を形成してある整地装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転支軸に複数の単位回転体を装着して整地用回転体を構成するための整地用ロータ、並びに回転支軸に複数の単位回転体(整地用ロータ)を装着してなる整地用回転体を配備した整地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転支軸に複数の単位回転体(整地用ロータ)を装着してなる整地用回転体を配備した整地装置は、走行機体の後部に連結された苗植付け装置や直播機などの水田作業装置とともに装備して、車輪跡や足跡などを整地用回転体の作用で無くすことで良好な植付けや播種を行うことができるように利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−304647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載のものは、機体の左右方向に配置された回転支軸46に、その左右中央部に左右2個の単位回転体55をカラー58を介して挿通するとともに、その左右に複数の単位回転体55どうしを接当させた状態で回転支軸46に挿通した代掻き用回転体40群を配備した整地装置が示されている。特許文献1に示された整地装置は、回転支軸46に、カラー58を介して、又は、直接単位回転体55のボス部55bの端面どうしを接当させた状態で挿通しているので、組付けに際しては回転支軸46にカラー58及び複数の単位回転体55を順次詰めて挿通するだけでよく、組付け作業が簡単に行える利点があった。しかし、特許文献1に示された単位回転体55は、回転支軸46に嵌合するボス部55bの長さと整地作用部55aの長さとが同じ長さに造られていたため、機体左右中央部に配置された単位回転体55のように、単位回転体55と単位回転体55との間にカラー58を介在させて隣接する単位回転体間に環状凹部60の隙間を形成した場合は、当該隙間を通って前方の泥水が草やワラ屑などの浮遊物や解された切り株などとともに後方に通り抜けるが、隣接する単位回転体55どうしを接当配置した回転体群では、単位回転体55どうしが隣接する整地作用部55aの間には殆ど隙間はなく、泥水がその間を通って後方に移動させることができないのみならず、隣接する整地作用部55a間に夾雑物が挟まりやすく、又、挟まった夾雑物の除去に手間取るという不都合があった。
【0004】
本発明は、従来構造と同様に隣接する単位回転体のボス部どうしを接当するように、回転支軸に単位回転体を詰めて挿通させて回転体群を構成するようにして隣接する単位回転体間にカラーを介在させることなく簡単に組み付けられるようにしながら、隣接する単位回転体の整地作用部間に夾雑物が挟まらない、又は挟まり難い回転体群とすること、及びこのような回転体群とすることのできる整地用ローラを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明である整地用ロータの発明は、回転支軸に複数の単位回転体を装着して整地用回転体を構成するための整地用ロータであって、単位回転体には回転支軸に嵌合するボス部とこのボス部に連設して径方向外方に位置する整地作用部とを備え、単位回転体の回転軸芯方向におけるボス部の長さを回転軸芯方向における整地作用部の長さよりも長くしたものである。
【0006】
第1の発明によれば、単位回転体(整地用ロータ)の回転軸芯方向における整地作用部の長さよりもボス部の長さの方を長くしてあるので、ロータとロータの間にわざわざカラーを介在させなくても、回転支軸に複数の整地用ロータのボス部どうしが接当するように詰めて挿通するだけで、隣接するロータの整地作用部どうしの間に隙間が形成される。このような隙間が形成された整地用回転体を備えた整地装置を機体に装備して整地作業を行うと、前記隙間を通って泥水が後方に移動することができるとともに、従来の整地装置のように、隣接する整地作用部間に夾雑物が詰まるという不都合が軽減ないし解消される。
【0007】
従って、第1の発明によると、整地装置による泥水の後方への流れが改善されるとともに、隣接する整地作用部間に夾雑物が詰まるという不都合も軽減ないし解消され、作業後の手入れも楽に行えるに至った。
【0008】
第2の発明である整地装置の発明は、回転支軸に複数の単位回転体を装着してなる整地用回転体を装備した整地装置において、
単位回転体には回転支軸に嵌合したボス部とこのボス部に連設して径方向外方に位置する整地作用部とを備え、回転支軸に隣接する単位回転体をこれのボス部どうしを接当させた状態で装着するとともに、ボス部どうしを接当させた装着状態で隣接する整地作用部間に隙間を形成してあることを特徴とする。
【0009】
第2の発明によれば、回転支軸に対して、隣接する単位回転体のボス部どうしを接当させた装着状態で隣接する整地作用部間に隙間を形成するようにしてあるので、単位回転体間にカラーを介在させなくても前記隙間を通って泥水が後方に移動することができるとともに、従来の整地装置のように、隣接する整地作用部間に夾雑物が詰まるという不都合が軽減ないし解消される。
【0010】
従って、第2の発明によると、簡単な構造の改良で、整地装置における隣接する単位回転体の整地作用部間に形成した隙間によって後方に流れる泥水の流れが改善されるとともに、隣接する整地作用部間に夾雑物が詰まるという不都合も軽減ないしは解消できた。そして、作業後の手入れも楽に行えるに至った。
【0011】
第3の整地装置の発明は、上記第2の整地装置の発明において、単位回転体として請求項1記載の整地用ロータを適用したものである。
【0012】
第3の発明によれば、単位回転体として回転支軸方向におけるボス部の長さを整地作用部の長さよりも長くした整地用ロータを用いて、整地用ロータのボス部どうしを接当させた装着状態で隣接する整地作用部間に隙間を形成するようにしたので、整地用ロータ間にカラーを介在させなくても前記隙間を通って泥水が後方に移動することができるとともに、従来の整地装置のように、隣接する整地作用部間に夾雑物が詰まるという不都合が軽減ないし解消される。
【0013】
従って、第3の発明によると、整地装置における隣接するロータの整地作用部間に形成した隙間によって後方に流れる泥水の流れが改善されるとともに、隣接する整地作用部間に夾雑物が詰まるという不都合も軽減ないしは解消され、作業後の手入れも楽に行えるに至った。
【0014】
第4の発明は、上記第2または3の発明において、整地用回転体の回転方向下手側ほど単位回転体どうしの隣接する整地作用部間の隙間の幅が広くなるように構成してある。
【0015】
整地用回転体の隣接する整地作用部間の隙間が平行で狭い場合や、回転方向下手側の隙間が狭くなっていると、夾雑物が更なる夾雑物で押し込まれた場合、夾雑物が隙間の間に強く咬み込んでより一層除去し難くなるが、第4の発明によれば、前記隙間の幅が、整地用回転体の回転方向下手側ほど広くなるようにしてあるので、隙間に入った夾雑物が抵抗なく通り抜けることができ、詰まりを生じさせることを極力回避できる利点がある。
【0016】
第5の発明は、上記第2〜4のいずれかの発明において、整地用回転体の横外側に近接して整地用回転体の前方横外方への泥流れを抑制する泥流れ抑制部材を配設してある。
【0017】
機体を前進させながら整地作用をしていると、整地用回転体の前方の泥水が横外側に押し流される。整地作用と同時に苗植付け作業や播種作業をする場合、整地用回転体による泥水の横外側への押出す作用が、先に作業をした植付けた苗や播種に対して、苗倒しや種子を浮遊させるといった悪影響を及ぼす欠点があるが、第5の発明によれば、整地用回転体の横外側に近接して整地用回転体の前方の横外方への泥流れを抑制する泥流れ抑制部材を配設してあるので、泥流れ抑制部材によって整地用回転体前方の泥水を横外側に押し流すことを抑制することができ、隣接苗等への悪影響を抑えることができる。又、畦際などで横外方の異物(予備苗箱)等が整地用回転体に巻き込まれて整地用回転体や異物の双方に損傷を与えるという不都合が回避できるカバーにも、泥流れ抑制部材がなりうる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に施肥装置付き田植機の全体側面が示されている。この田植機は、操向可能な前輪1および操向不能な後輪2を備えて4輪駆動で走行する走行機体3の後部に油圧シリンダ5によって駆動される平行四連リンク構造の昇降リンク機構6が装備され、この昇降リンク機構6の後端下部に6条植え仕様の苗植付け装置4がローリング可能に連結された基本構造を備えている。また、走行機体3の後部に施肥装置7が備えられるとともに、走行機体3の前部左右には予備苗を3枚ずつ収容する予備苗のせ台13が立設配備されている。
【0019】
前記走行機体3の前部にはエンジン8が搭載され、その出力が前後進の切り換えが可能な静油圧式無段変速装置(HST)からなる主変速装置9に伝達され、その変速出力がミッションケース10に入力されて走行系と作業系に分岐される。走行系の動力は図示されない副変速装置でギヤ変速された後、ミッションケース10に装備された前輪1に伝達されるとともに、後部伝動ケース11に装備された後輪2に伝達されるようになっている。また、分岐された作業系の動力はミッションケース10に内装された図示されない株間変速装置で複数段にギヤ変速された後、機体後方に向けて取り出され、伸縮伝動軸12を介して苗植付け装置4に伝達されるようになっている。
【0020】
図2、図3に示すように、前記苗植付け装置4は、6条分の苗を載置して左右方向に設定ストロークで往復移動される苗のせ台15、苗のせ台15の下端から1株分ずつ苗を切り出して圃場に植付けてゆく6組の回転式の植付け機構16、植付け箇所を整地する3個の整地フロート17、ミッションケース10から取り出された作業用動力が入力されるフィードケース18、横長角筒状の植付けフレーム19等を備えて構成されており、この植付けフレーム19の左右中間部位に前記フィードケース18が連結されるとともに、植付けフレーム19の中央および左右箇所に後向き片持ち状に連結した3つの植付けケース20の後部に前記植付け機構16が左右2組ずつ装備されている。
【0021】
図4に示すように、前記フィードケース18の左右からは、苗のせ台15を往復横送りするネジ軸21と、苗のせ台15に装備した苗送りベルト22を横送りストロークエンド到達ごとに送り作動させる苗送り軸23が突設されるとともに、植付け機構駆動用の出力軸24が装備され、この出力軸24と各植付けケース20の基部に備えられた入力軸25とが伝動軸26を介して同芯に連動連結され、さらに、各植付けケース20において、前記入力軸25とケース後部に貫通支承した植付け駆動軸27とがチェーン連動されている。また、入力軸25にはトルクリミッタ28が介在されて過大な負荷トルクの伝達が回避されるとともに、植付け駆動軸27には任意に入り切り操作可能な畦際クラッチ29が装備されて、6条の植付け機構16うちの一部を2条単位で休止して4条植えあるいは2条植えなどの少数条植えが行えるようになっている。
【0022】
前記施肥装置7は、運転座席14と苗植付け装置4との間において走行機体3に搭載されており、粉粒状の肥料を貯留する肥料ホッパー31、この肥料ホッパー31内の肥料を所定量ずつ繰り出す繰出し機構32、繰り出された肥料を供給ホース33を介して苗植付装置4の各整地フロート17に左右一対ずつ備えた作溝器34に風力搬送する電動ブロワ35、などを備えており、植付け苗の横側近傍において作溝器34で田面に形成した施肥溝に肥料を送込んで埋設してゆくよう構成されている。
【0023】
このように構成された苗植付け装置4には、前記整地フロート17の前方において植付け直前の田面を砕土および均平化する整地用回転体40が駆動回転可能に横架配備した整地装置を備えており、以下、この整地装置の構造について詳細に説明する。
【0024】
図4、図5に示すように、前記植付けフレーム19の一端には軸受けブラケット41が連結され、この軸受けブラケット41に貫通支架された整地用駆動軸42と外側の植付けケース20における入力軸25とが同芯に突き合せ連結されるとともに、整地用駆動軸42の外方突出部には伝動ケース43が駆動軸軸芯pを中心にして上下揺動可能に装着されている。また、植付けフレーム19の他端にもブラケット44が連結され、このブラケット44に前記駆動軸軸芯pを中心にして上下揺動可能な支持アーム45が装着されている。そして、これら伝動ケース43と支持アーム45との遊端部間に亘って支架した回転支軸46を介して前記整地用回転体40が装着されている。
【0025】
前記回転支軸46は、伝動ケース43および支持アーム45の先端部に貫通支承された短い端部回転支軸46a,46bと、左右の端部回転支軸46a,46bの間に同芯に嵌合連結される長い角筒からなる中央回転支軸46cとで構成されている。
【0026】
そして、整地用駆動軸42に備えられた駆動スプロケット48と回転支軸46aに備えられた従動スプロケット49とに亘ってチェーン50が巻回張設されて、植付け機構駆動動力の一部で回転支軸46が所定方向(ダウンカット方向)に回転駆動されるように構成されている。また、整地用駆動軸42と駆動スプロケット48との間にはトルクリミッタ51が、また、回転支軸46と従動スプロケット49との間には回転支軸46の先行回転を許容する一方向クラッチ52が介在されており、整地用回転体40の駆動系に過大な負荷が作用するのをトルクリミッタ51によって防止するとともに、苗植付け装置4の駆動が停止されている状態で整地用回転体40が接地駆動されて遊転回動することが一方向クラッチ52によって許容されるようになっている。
【0027】
整地用回転体40は、軸芯方向小幅に形成した複数の単位回転体55を回転軸芯方向に並列して所定の整地幅に構成されている。図6に示すように、単位回転体55は、樹脂成形によって外周複数箇所の整地作用部55aと回転支軸46に外嵌する四角形の中心孔56を有するボス部55bとをホイール部55cで一体化して形成されたものであり、一種類の樹脂成形素材を利用しボス部55bの長さの異なる二種類の単位回転体55(L),55(S)が構成されている。すなわち、樹脂成形素材は、図5に示すように、中間部に配置されるボス部55bの長い仕様の単位回転体55(L)と、ボス部55bの一端部を欠除することでボス部55bの短い仕様の単位回転体55(S)とで構成されている。
【0028】
各単位回転体55は、回転支軸46に複数装着して整地用回転体を構成する整地用ロータであって、単位回転体55の回転軸芯方向におけるボス部55bの長さを回転軸芯方向における整地作用部55aの長さよりも長くしてある。これにより、単位回転体55を、ボス部55bどうしが接当させて回転支軸46に装着すると、隣接する整地作用部55a,55a間に隙間sが形成される。整地作用部55aの左右幅は回転方向上手側から下手側に亘って同幅で、隙間sは平行である。この隙間sを形成したことにより、泥水の後方への流れが改善されるとともに、隣接する整地作用部間に夾雑物が詰まるという不都合も軽減ないし解消され、作業後の手入れも楽に行えるようになった。
【0029】
伝動ケース43に貫通支持された端部回転支軸46aの左右には短ボス仕様の単位回転体55(S)が外嵌装着されて頭付きピン57で連結固定され、伝動ケース43における軸受けボス部の左右両端が左右の単位回転体55(S)のボス部55bで挟まれることで、回転支軸46全体の軸芯方向での位置決めがなされている。
【0030】
このように位置決めされた回転支軸46に長ボス仕様の単位回転体55(L)とカラー58を順次外嵌装着するとともに、支持アーム45の外側に突出した端部回転支軸46bに短ボス仕様の単位回転体55(S)を外嵌装着し、所定の単位回転体55を頭付きピン59で回転支軸46に連結することで所定の作用幅を有する整地用回転体40が構成されている。
【0031】
ここで、図3に示すように、整地用回転体40の左右中央付近においては、中央の長いカラー58とその左右の短いカラー58が介在されることで、後輪2の後方に対応して広目の隙間を設けて泥流れ通路を形成してある。
【0032】
図3,7に示すように、前記伝動ケース43および支持アーム45から上方に突設されたブラケット61,61aに亘って左右に長いステー62が架設されるとともに、植付けフレーム19から立設した左右の苗のせ台支持フレーム63に、ベルクランク64が前後向き支点a周りに揺動可能にブラケット65を介して枢着され、各ベルクランク64と前記ステー62の左右箇所とが吊り下げロッド66で連結されている。また、左右のベルクランク64が連係ロッドで67連動連結されるとともに、一方のベルクランク64から上方に向けて操作レバー68が延出されており、この操作レバー68を左右に操作することで左右のベルクランク64を同方向に揺動し、伝動ケース43および支持アーム45を軸芯p周りに上下に揺動移動させて、整地用回転体40の高さを調節することができるようになっている。また、前記操作レバー68は、ブラケット65に連設したレバーガイド69に複数操作位置で係止固定することで整地用回転体40を所望の作用高さ位置に調節して固定することができるとともに、不要時には田面から浮上する非作業高さに退避させておくことができるようになっている。なお、前記ステー62の左右箇所と左右のブラケット65に亘って左右一対の引上げバネ71が張設されて、操作レバー68による持上げ操作荷重が軽減されるようになっている。
【0033】
また、図7に示すように、前記ステー62には伝動ケース43と支持アーム45の間の整地作用部に左右に長い泥跳ね防止カバー72が当て板73を介して取り付けられて、整地用回転体40の後方に垂れ下がり配置されている。この泥跳ね防止カバー72は弾性変形可能な樹脂製のシート材で構成されており、その基部付近が伝動ケース43と支持アーム45の側面に突設したピン状のガイド部材74に係止されて、泥跳ね防止カバー72が整地用回転体40に接触して巻き込まれることが防止されるようになっている。
【0034】
前記泥跳ね防止カバー72は、自由状態において整地用回転体40の下端付近まで垂れ下がる長さに設定されている。実際の植付け作業状態では、整地用回転体40を田面に適当量沈み込ませるので、泥跳ね防止カバー72は少しめくれ上げられて田面に追従接触し、整地用回転体40による砕土跡を適度の押圧力で押え込んでその表面を均平化することになる。
【0035】
伝動ケース43と支持アーム45の外側には、図1〜3及び図8に示すように、最外側の整地用単位回転体(整地用ロータ)55の横外側に近接して整地用回転体55の前方横外方への泥流れを抑制する泥流れ抑制部材75を配設してある。この泥流れ抑制部材75は、伝動ケース43および支持アーム45から上方に突設させてステー62の端部に取付けたブラケット61,61aに取り付けてある。泥流れ抑制部材75の本体75aに対して前側の付設する金具75bと後側に付設する泥押さえ金具75cとをボルトナット75dで着脱自在に取り付けられるように構成してある。これらの金具75b,75cは泥土水の多いときに有効であり、後方の泥押さえ金具75cを外したときは、横外方への泥押しをし難くするとともに後方へ泥を良好に逃がすことができる。又、本体75aに泥押さえ金具75cをボルトナット75dで固定すると後方への泥の逃がしに抵抗を与えるので整地性がよくなる。符号76は、ボルトを挿通するための孔である。このボルト孔76を前後に増設すれば、延長金具75bや泥押さえ金具75cの長さ調節をすることができる。
【0036】
〔別実施の態様〕
上記実施の態様では、整地作用部55aの左右端面を平行に形成したが、図9に示すように、一つの整地用ロータ(単位回転体)55の整地作用部55aの左右端面間の幅を整地用回転体40の回転方向下手側ほど狭くして、単位回転体55どうしの隣接する整地作用部55a,55a間の隙間sの幅が回転方向下手側ほど広くなるように構成しもよい。
このようにすると、隙間sに入った夾雑物が抵抗なく通り抜けることができ、詰まりを生じさせることを極力回避できる。
【0037】
又、上記隙間sを形成するに当たって、一つの整地用ロータ(単位回転体)55の整地作用部55aの左右端面間の幅を整地用回転体40の回転方向下手側ほど、且つ整地用回転体40の半径方向外方側ほど狭くなるように形成して、単位回転体55どうしの隣接する整地作用部55a,55a間の隙間sの幅が回転方向下手側ほど、且つ整地用回転体40の半径方向外方側ほど広くなるように構成しもよい。
【0038】
上記実施の態様では、整地用回転体40による後方への泥跳ねを泥跳ね防止カバー72で防止するようにしたものであるが、泥跳ね防止カバー72を省略して、整地フロート17を、図10、図11に示すように、整地用回転体40の上方に覆い被さるような構造にしてもよい。このように構成すれば、整地フロート77の前部が泥跳ね防止カバーを兼ね、フロートの本体部77aとカバー部77bとが同一の動きをするので、フロート上面への泥の乗り上げが少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】田植機の全体側面図
【図2】苗植付け装置の側面図
【図3】苗植付け装置の背面図
【図4】苗植付け装置の伝動構造を示す平面図
【図5】整地用回転体の詳細を示す横断平面図
【図6】整地用回転体の外観斜視図
【図7】整地用回転体の縦断側面図
【図8】泥流れ抑制部材の分解斜視図
【図9】整地用回転体の隣接関係を示す斜視図
【図10】整地フロートの別実施の態様を示す側面図
【図11】整地フロートの別実施の態様を示す平面図
【符号の説明】
【0040】
40 整地用回転体
46 回転支軸
55 単位回転体
55a 整地作用部
55b ボス部
s 隙間
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転支軸に複数の単位回転体を装着して整地用回転体を構成するための整地用ロータ、並びに回転支軸に複数の単位回転体(整地用ロータ)を装着してなる整地用回転体を配備した整地装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転支軸に複数の単位回転体(整地用ロータ)を装着してなる整地用回転体を配備した整地装置は、走行機体の後部に連結された苗植付け装置や直播機などの水田作業装置とともに装備して、車輪跡や足跡などを整地用回転体の作用で無くすことで良好な植付けや播種を行うことができるように利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−304647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載のものは、機体の左右方向に配置された回転支軸46に、その左右中央部に左右2個の単位回転体55をカラー58を介して挿通するとともに、その左右に複数の単位回転体55どうしを接当させた状態で回転支軸46に挿通した代掻き用回転体40群を配備した整地装置が示されている。特許文献1に示された整地装置は、回転支軸46に、カラー58を介して、又は、直接単位回転体55のボス部55bの端面どうしを接当させた状態で挿通しているので、組付けに際しては回転支軸46にカラー58及び複数の単位回転体55を順次詰めて挿通するだけでよく、組付け作業が簡単に行える利点があった。しかし、特許文献1に示された単位回転体55は、回転支軸46に嵌合するボス部55bの長さと整地作用部55aの長さとが同じ長さに造られていたため、機体左右中央部に配置された単位回転体55のように、単位回転体55と単位回転体55との間にカラー58を介在させて隣接する単位回転体間に環状凹部60の隙間を形成した場合は、当該隙間を通って前方の泥水が草やワラ屑などの浮遊物や解された切り株などとともに後方に通り抜けるが、隣接する単位回転体55どうしを接当配置した回転体群では、単位回転体55どうしが隣接する整地作用部55aの間には殆ど隙間はなく、泥水がその間を通って後方に移動させることができないのみならず、隣接する整地作用部55a間に夾雑物が挟まりやすく、又、挟まった夾雑物の除去に手間取るという不都合があった。
【0004】
本発明は、従来構造と同様に隣接する単位回転体のボス部どうしを接当するように、回転支軸に単位回転体を詰めて挿通させて回転体群を構成するようにして隣接する単位回転体間にカラーを介在させることなく簡単に組み付けられるようにしながら、隣接する単位回転体の整地作用部間に夾雑物が挟まらない、又は挟まり難い回転体群とすること、及びこのような回転体群とすることのできる整地用ローラを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明である整地用ロータの発明は、回転支軸に複数の単位回転体を装着して整地用回転体を構成するための整地用ロータであって、単位回転体には回転支軸に嵌合するボス部とこのボス部に連設して径方向外方に位置する整地作用部とを備え、単位回転体の回転軸芯方向におけるボス部の長さを回転軸芯方向における整地作用部の長さよりも長くしたものである。
【0006】
第1の発明によれば、単位回転体(整地用ロータ)の回転軸芯方向における整地作用部の長さよりもボス部の長さの方を長くしてあるので、ロータとロータの間にわざわざカラーを介在させなくても、回転支軸に複数の整地用ロータのボス部どうしが接当するように詰めて挿通するだけで、隣接するロータの整地作用部どうしの間に隙間が形成される。このような隙間が形成された整地用回転体を備えた整地装置を機体に装備して整地作業を行うと、前記隙間を通って泥水が後方に移動することができるとともに、従来の整地装置のように、隣接する整地作用部間に夾雑物が詰まるという不都合が軽減ないし解消される。
【0007】
従って、第1の発明によると、整地装置による泥水の後方への流れが改善されるとともに、隣接する整地作用部間に夾雑物が詰まるという不都合も軽減ないし解消され、作業後の手入れも楽に行えるに至った。
【0008】
第2の発明である整地装置の発明は、回転支軸に複数の単位回転体を装着してなる整地用回転体を装備した整地装置において、
単位回転体には回転支軸に嵌合したボス部とこのボス部に連設して径方向外方に位置する整地作用部とを備え、回転支軸に隣接する単位回転体をこれのボス部どうしを接当させた状態で装着するとともに、ボス部どうしを接当させた装着状態で隣接する整地作用部間に隙間を形成してあることを特徴とする。
【0009】
第2の発明によれば、回転支軸に対して、隣接する単位回転体のボス部どうしを接当させた装着状態で隣接する整地作用部間に隙間を形成するようにしてあるので、単位回転体間にカラーを介在させなくても前記隙間を通って泥水が後方に移動することができるとともに、従来の整地装置のように、隣接する整地作用部間に夾雑物が詰まるという不都合が軽減ないし解消される。
【0010】
従って、第2の発明によると、簡単な構造の改良で、整地装置における隣接する単位回転体の整地作用部間に形成した隙間によって後方に流れる泥水の流れが改善されるとともに、隣接する整地作用部間に夾雑物が詰まるという不都合も軽減ないしは解消できた。そして、作業後の手入れも楽に行えるに至った。
【0011】
第3の整地装置の発明は、上記第2の整地装置の発明において、単位回転体として請求項1記載の整地用ロータを適用したものである。
【0012】
第3の発明によれば、単位回転体として回転支軸方向におけるボス部の長さを整地作用部の長さよりも長くした整地用ロータを用いて、整地用ロータのボス部どうしを接当させた装着状態で隣接する整地作用部間に隙間を形成するようにしたので、整地用ロータ間にカラーを介在させなくても前記隙間を通って泥水が後方に移動することができるとともに、従来の整地装置のように、隣接する整地作用部間に夾雑物が詰まるという不都合が軽減ないし解消される。
【0013】
従って、第3の発明によると、整地装置における隣接するロータの整地作用部間に形成した隙間によって後方に流れる泥水の流れが改善されるとともに、隣接する整地作用部間に夾雑物が詰まるという不都合も軽減ないしは解消され、作業後の手入れも楽に行えるに至った。
【0014】
第4の発明は、上記第2または3の発明において、整地用回転体の回転方向下手側ほど単位回転体どうしの隣接する整地作用部間の隙間の幅が広くなるように構成してある。
【0015】
整地用回転体の隣接する整地作用部間の隙間が平行で狭い場合や、回転方向下手側の隙間が狭くなっていると、夾雑物が更なる夾雑物で押し込まれた場合、夾雑物が隙間の間に強く咬み込んでより一層除去し難くなるが、第4の発明によれば、前記隙間の幅が、整地用回転体の回転方向下手側ほど広くなるようにしてあるので、隙間に入った夾雑物が抵抗なく通り抜けることができ、詰まりを生じさせることを極力回避できる利点がある。
【0016】
第5の発明は、上記第2〜4のいずれかの発明において、整地用回転体の横外側に近接して整地用回転体の前方横外方への泥流れを抑制する泥流れ抑制部材を配設してある。
【0017】
機体を前進させながら整地作用をしていると、整地用回転体の前方の泥水が横外側に押し流される。整地作用と同時に苗植付け作業や播種作業をする場合、整地用回転体による泥水の横外側への押出す作用が、先に作業をした植付けた苗や播種に対して、苗倒しや種子を浮遊させるといった悪影響を及ぼす欠点があるが、第5の発明によれば、整地用回転体の横外側に近接して整地用回転体の前方の横外方への泥流れを抑制する泥流れ抑制部材を配設してあるので、泥流れ抑制部材によって整地用回転体前方の泥水を横外側に押し流すことを抑制することができ、隣接苗等への悪影響を抑えることができる。又、畦際などで横外方の異物(予備苗箱)等が整地用回転体に巻き込まれて整地用回転体や異物の双方に損傷を与えるという不都合が回避できるカバーにも、泥流れ抑制部材がなりうる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に施肥装置付き田植機の全体側面が示されている。この田植機は、操向可能な前輪1および操向不能な後輪2を備えて4輪駆動で走行する走行機体3の後部に油圧シリンダ5によって駆動される平行四連リンク構造の昇降リンク機構6が装備され、この昇降リンク機構6の後端下部に6条植え仕様の苗植付け装置4がローリング可能に連結された基本構造を備えている。また、走行機体3の後部に施肥装置7が備えられるとともに、走行機体3の前部左右には予備苗を3枚ずつ収容する予備苗のせ台13が立設配備されている。
【0019】
前記走行機体3の前部にはエンジン8が搭載され、その出力が前後進の切り換えが可能な静油圧式無段変速装置(HST)からなる主変速装置9に伝達され、その変速出力がミッションケース10に入力されて走行系と作業系に分岐される。走行系の動力は図示されない副変速装置でギヤ変速された後、ミッションケース10に装備された前輪1に伝達されるとともに、後部伝動ケース11に装備された後輪2に伝達されるようになっている。また、分岐された作業系の動力はミッションケース10に内装された図示されない株間変速装置で複数段にギヤ変速された後、機体後方に向けて取り出され、伸縮伝動軸12を介して苗植付け装置4に伝達されるようになっている。
【0020】
図2、図3に示すように、前記苗植付け装置4は、6条分の苗を載置して左右方向に設定ストロークで往復移動される苗のせ台15、苗のせ台15の下端から1株分ずつ苗を切り出して圃場に植付けてゆく6組の回転式の植付け機構16、植付け箇所を整地する3個の整地フロート17、ミッションケース10から取り出された作業用動力が入力されるフィードケース18、横長角筒状の植付けフレーム19等を備えて構成されており、この植付けフレーム19の左右中間部位に前記フィードケース18が連結されるとともに、植付けフレーム19の中央および左右箇所に後向き片持ち状に連結した3つの植付けケース20の後部に前記植付け機構16が左右2組ずつ装備されている。
【0021】
図4に示すように、前記フィードケース18の左右からは、苗のせ台15を往復横送りするネジ軸21と、苗のせ台15に装備した苗送りベルト22を横送りストロークエンド到達ごとに送り作動させる苗送り軸23が突設されるとともに、植付け機構駆動用の出力軸24が装備され、この出力軸24と各植付けケース20の基部に備えられた入力軸25とが伝動軸26を介して同芯に連動連結され、さらに、各植付けケース20において、前記入力軸25とケース後部に貫通支承した植付け駆動軸27とがチェーン連動されている。また、入力軸25にはトルクリミッタ28が介在されて過大な負荷トルクの伝達が回避されるとともに、植付け駆動軸27には任意に入り切り操作可能な畦際クラッチ29が装備されて、6条の植付け機構16うちの一部を2条単位で休止して4条植えあるいは2条植えなどの少数条植えが行えるようになっている。
【0022】
前記施肥装置7は、運転座席14と苗植付け装置4との間において走行機体3に搭載されており、粉粒状の肥料を貯留する肥料ホッパー31、この肥料ホッパー31内の肥料を所定量ずつ繰り出す繰出し機構32、繰り出された肥料を供給ホース33を介して苗植付装置4の各整地フロート17に左右一対ずつ備えた作溝器34に風力搬送する電動ブロワ35、などを備えており、植付け苗の横側近傍において作溝器34で田面に形成した施肥溝に肥料を送込んで埋設してゆくよう構成されている。
【0023】
このように構成された苗植付け装置4には、前記整地フロート17の前方において植付け直前の田面を砕土および均平化する整地用回転体40が駆動回転可能に横架配備した整地装置を備えており、以下、この整地装置の構造について詳細に説明する。
【0024】
図4、図5に示すように、前記植付けフレーム19の一端には軸受けブラケット41が連結され、この軸受けブラケット41に貫通支架された整地用駆動軸42と外側の植付けケース20における入力軸25とが同芯に突き合せ連結されるとともに、整地用駆動軸42の外方突出部には伝動ケース43が駆動軸軸芯pを中心にして上下揺動可能に装着されている。また、植付けフレーム19の他端にもブラケット44が連結され、このブラケット44に前記駆動軸軸芯pを中心にして上下揺動可能な支持アーム45が装着されている。そして、これら伝動ケース43と支持アーム45との遊端部間に亘って支架した回転支軸46を介して前記整地用回転体40が装着されている。
【0025】
前記回転支軸46は、伝動ケース43および支持アーム45の先端部に貫通支承された短い端部回転支軸46a,46bと、左右の端部回転支軸46a,46bの間に同芯に嵌合連結される長い角筒からなる中央回転支軸46cとで構成されている。
【0026】
そして、整地用駆動軸42に備えられた駆動スプロケット48と回転支軸46aに備えられた従動スプロケット49とに亘ってチェーン50が巻回張設されて、植付け機構駆動動力の一部で回転支軸46が所定方向(ダウンカット方向)に回転駆動されるように構成されている。また、整地用駆動軸42と駆動スプロケット48との間にはトルクリミッタ51が、また、回転支軸46と従動スプロケット49との間には回転支軸46の先行回転を許容する一方向クラッチ52が介在されており、整地用回転体40の駆動系に過大な負荷が作用するのをトルクリミッタ51によって防止するとともに、苗植付け装置4の駆動が停止されている状態で整地用回転体40が接地駆動されて遊転回動することが一方向クラッチ52によって許容されるようになっている。
【0027】
整地用回転体40は、軸芯方向小幅に形成した複数の単位回転体55を回転軸芯方向に並列して所定の整地幅に構成されている。図6に示すように、単位回転体55は、樹脂成形によって外周複数箇所の整地作用部55aと回転支軸46に外嵌する四角形の中心孔56を有するボス部55bとをホイール部55cで一体化して形成されたものであり、一種類の樹脂成形素材を利用しボス部55bの長さの異なる二種類の単位回転体55(L),55(S)が構成されている。すなわち、樹脂成形素材は、図5に示すように、中間部に配置されるボス部55bの長い仕様の単位回転体55(L)と、ボス部55bの一端部を欠除することでボス部55bの短い仕様の単位回転体55(S)とで構成されている。
【0028】
各単位回転体55は、回転支軸46に複数装着して整地用回転体を構成する整地用ロータであって、単位回転体55の回転軸芯方向におけるボス部55bの長さを回転軸芯方向における整地作用部55aの長さよりも長くしてある。これにより、単位回転体55を、ボス部55bどうしが接当させて回転支軸46に装着すると、隣接する整地作用部55a,55a間に隙間sが形成される。整地作用部55aの左右幅は回転方向上手側から下手側に亘って同幅で、隙間sは平行である。この隙間sを形成したことにより、泥水の後方への流れが改善されるとともに、隣接する整地作用部間に夾雑物が詰まるという不都合も軽減ないし解消され、作業後の手入れも楽に行えるようになった。
【0029】
伝動ケース43に貫通支持された端部回転支軸46aの左右には短ボス仕様の単位回転体55(S)が外嵌装着されて頭付きピン57で連結固定され、伝動ケース43における軸受けボス部の左右両端が左右の単位回転体55(S)のボス部55bで挟まれることで、回転支軸46全体の軸芯方向での位置決めがなされている。
【0030】
このように位置決めされた回転支軸46に長ボス仕様の単位回転体55(L)とカラー58を順次外嵌装着するとともに、支持アーム45の外側に突出した端部回転支軸46bに短ボス仕様の単位回転体55(S)を外嵌装着し、所定の単位回転体55を頭付きピン59で回転支軸46に連結することで所定の作用幅を有する整地用回転体40が構成されている。
【0031】
ここで、図3に示すように、整地用回転体40の左右中央付近においては、中央の長いカラー58とその左右の短いカラー58が介在されることで、後輪2の後方に対応して広目の隙間を設けて泥流れ通路を形成してある。
【0032】
図3,7に示すように、前記伝動ケース43および支持アーム45から上方に突設されたブラケット61,61aに亘って左右に長いステー62が架設されるとともに、植付けフレーム19から立設した左右の苗のせ台支持フレーム63に、ベルクランク64が前後向き支点a周りに揺動可能にブラケット65を介して枢着され、各ベルクランク64と前記ステー62の左右箇所とが吊り下げロッド66で連結されている。また、左右のベルクランク64が連係ロッドで67連動連結されるとともに、一方のベルクランク64から上方に向けて操作レバー68が延出されており、この操作レバー68を左右に操作することで左右のベルクランク64を同方向に揺動し、伝動ケース43および支持アーム45を軸芯p周りに上下に揺動移動させて、整地用回転体40の高さを調節することができるようになっている。また、前記操作レバー68は、ブラケット65に連設したレバーガイド69に複数操作位置で係止固定することで整地用回転体40を所望の作用高さ位置に調節して固定することができるとともに、不要時には田面から浮上する非作業高さに退避させておくことができるようになっている。なお、前記ステー62の左右箇所と左右のブラケット65に亘って左右一対の引上げバネ71が張設されて、操作レバー68による持上げ操作荷重が軽減されるようになっている。
【0033】
また、図7に示すように、前記ステー62には伝動ケース43と支持アーム45の間の整地作用部に左右に長い泥跳ね防止カバー72が当て板73を介して取り付けられて、整地用回転体40の後方に垂れ下がり配置されている。この泥跳ね防止カバー72は弾性変形可能な樹脂製のシート材で構成されており、その基部付近が伝動ケース43と支持アーム45の側面に突設したピン状のガイド部材74に係止されて、泥跳ね防止カバー72が整地用回転体40に接触して巻き込まれることが防止されるようになっている。
【0034】
前記泥跳ね防止カバー72は、自由状態において整地用回転体40の下端付近まで垂れ下がる長さに設定されている。実際の植付け作業状態では、整地用回転体40を田面に適当量沈み込ませるので、泥跳ね防止カバー72は少しめくれ上げられて田面に追従接触し、整地用回転体40による砕土跡を適度の押圧力で押え込んでその表面を均平化することになる。
【0035】
伝動ケース43と支持アーム45の外側には、図1〜3及び図8に示すように、最外側の整地用単位回転体(整地用ロータ)55の横外側に近接して整地用回転体55の前方横外方への泥流れを抑制する泥流れ抑制部材75を配設してある。この泥流れ抑制部材75は、伝動ケース43および支持アーム45から上方に突設させてステー62の端部に取付けたブラケット61,61aに取り付けてある。泥流れ抑制部材75の本体75aに対して前側の付設する金具75bと後側に付設する泥押さえ金具75cとをボルトナット75dで着脱自在に取り付けられるように構成してある。これらの金具75b,75cは泥土水の多いときに有効であり、後方の泥押さえ金具75cを外したときは、横外方への泥押しをし難くするとともに後方へ泥を良好に逃がすことができる。又、本体75aに泥押さえ金具75cをボルトナット75dで固定すると後方への泥の逃がしに抵抗を与えるので整地性がよくなる。符号76は、ボルトを挿通するための孔である。このボルト孔76を前後に増設すれば、延長金具75bや泥押さえ金具75cの長さ調節をすることができる。
【0036】
〔別実施の態様〕
上記実施の態様では、整地作用部55aの左右端面を平行に形成したが、図9に示すように、一つの整地用ロータ(単位回転体)55の整地作用部55aの左右端面間の幅を整地用回転体40の回転方向下手側ほど狭くして、単位回転体55どうしの隣接する整地作用部55a,55a間の隙間sの幅が回転方向下手側ほど広くなるように構成しもよい。
このようにすると、隙間sに入った夾雑物が抵抗なく通り抜けることができ、詰まりを生じさせることを極力回避できる。
【0037】
又、上記隙間sを形成するに当たって、一つの整地用ロータ(単位回転体)55の整地作用部55aの左右端面間の幅を整地用回転体40の回転方向下手側ほど、且つ整地用回転体40の半径方向外方側ほど狭くなるように形成して、単位回転体55どうしの隣接する整地作用部55a,55a間の隙間sの幅が回転方向下手側ほど、且つ整地用回転体40の半径方向外方側ほど広くなるように構成しもよい。
【0038】
上記実施の態様では、整地用回転体40による後方への泥跳ねを泥跳ね防止カバー72で防止するようにしたものであるが、泥跳ね防止カバー72を省略して、整地フロート17を、図10、図11に示すように、整地用回転体40の上方に覆い被さるような構造にしてもよい。このように構成すれば、整地フロート77の前部が泥跳ね防止カバーを兼ね、フロートの本体部77aとカバー部77bとが同一の動きをするので、フロート上面への泥の乗り上げが少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】田植機の全体側面図
【図2】苗植付け装置の側面図
【図3】苗植付け装置の背面図
【図4】苗植付け装置の伝動構造を示す平面図
【図5】整地用回転体の詳細を示す横断平面図
【図6】整地用回転体の外観斜視図
【図7】整地用回転体の縦断側面図
【図8】泥流れ抑制部材の分解斜視図
【図9】整地用回転体の隣接関係を示す斜視図
【図10】整地フロートの別実施の態様を示す側面図
【図11】整地フロートの別実施の態様を示す平面図
【符号の説明】
【0040】
40 整地用回転体
46 回転支軸
55 単位回転体
55a 整地作用部
55b ボス部
s 隙間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転支軸に複数の単位回転体を装着して整地用回転体を構成するための整地用ロータであって、前記単位回転体には前記回転支軸に嵌合するボス部とこのボス部に連設して径方向外方に位置する整地作用部とを備え、前記単位回転体の回転軸芯方向における前記ボス部の長さを回転軸芯方向における前記整地作用部の長さよりも長くしてある整地用ロータ。
【請求項2】
回転支軸に複数の単位回転体を装着してなる整地用回転体を装備した整地装置において、
前記単位回転体には前記回転支軸に嵌合したボス部とこのボス部に連設して径方向外方に位置する整地作用部とを備え、前記回転支軸に隣接する単位回転体をこれのボス部どうしを接当させた状態で装着するとともに、前記ボス部どうしを接当させた装着状態で隣接する整地作用部間に隙間を形成してあることを特徴とする整地装置。
【請求項3】
前記単位回転体が請求項1記載の整地用ロータからなる請求項2記載の整地装置。
【請求項4】
前記整地用回転体の回転方向下手側ほど前記単位回転体どうしの隣接する前記整地作用部間の隙間の幅が広くなるように構成してある請求項2または3記載の整地装置。
【請求項5】
前記整地用回転体の横外側に近接して前記整地用回転体の前方横外方への泥流れを抑制する泥流れ抑制部材を配設してある請求項2〜4のいずれか一項に記載の整地装置。
【請求項1】
回転支軸に複数の単位回転体を装着して整地用回転体を構成するための整地用ロータであって、前記単位回転体には前記回転支軸に嵌合するボス部とこのボス部に連設して径方向外方に位置する整地作用部とを備え、前記単位回転体の回転軸芯方向における前記ボス部の長さを回転軸芯方向における前記整地作用部の長さよりも長くしてある整地用ロータ。
【請求項2】
回転支軸に複数の単位回転体を装着してなる整地用回転体を装備した整地装置において、
前記単位回転体には前記回転支軸に嵌合したボス部とこのボス部に連設して径方向外方に位置する整地作用部とを備え、前記回転支軸に隣接する単位回転体をこれのボス部どうしを接当させた状態で装着するとともに、前記ボス部どうしを接当させた装着状態で隣接する整地作用部間に隙間を形成してあることを特徴とする整地装置。
【請求項3】
前記単位回転体が請求項1記載の整地用ロータからなる請求項2記載の整地装置。
【請求項4】
前記整地用回転体の回転方向下手側ほど前記単位回転体どうしの隣接する前記整地作用部間の隙間の幅が広くなるように構成してある請求項2または3記載の整地装置。
【請求項5】
前記整地用回転体の横外側に近接して前記整地用回転体の前方横外方への泥流れを抑制する泥流れ抑制部材を配設してある請求項2〜4のいずれか一項に記載の整地装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−4749(P2010−4749A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164524(P2008−164524)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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