説明

整流板装置

【課題】如何なる形状の車両ルーフに対しても整流板を安定した状態で装着することができる整流板装置を提供する。
【解決手段】車両ルーフの荷物固定装置を形成するクロスバーに所定の間隔で固定される少なくとも3個のアームホルダーと、
前記各アームホルダーの側端に傾斜角度を調節できるように取り付けられた整流板支持アームと、
前記整流板支持アーム間に固定された一枚の整流板と、
前記整流板支持アームとは独立して、前記整流板の下端に前記車両ルーフとの接触状態の調節が可能に取り付けられた複数個のルーフ接触ベースとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両ルーフ上の荷物固定装置の前面に、車両走行時の空気抵抗を少なくする目的で取り付ける整流板装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車両ルーフ上の荷物固定装置の前面に、車両走行時の空気抵抗を少なくする目的で取り付ける整流板装置としては、例えば図6に示すような断面構造のものが知られている。同図において、1は荷物固定装置を形成するクロスバー、2はクロスバー1に締め付けネジ3によって固定されたアームホルダーであって、図には表れていないが、クロスバー1の長手方向に沿って複数個(一般的は少なくとも3個)取り付けられている。4は各アームホルダー2に固定された整流板支持アームであって、金属板等で構成されている。5は各整流板支持アーム4によって支持された一枚の整流板であって、かかる構造によって車両ルーフ上の荷物固定装置を形成するクロスバー1の前面のほぼ全体に亘って一枚の整流板5が配置される。そして、車両の走行に伴って荷物固定装置のクロスバーに当たるべき空気は、図中の矢符で示すように整流板5によって上方に誘導され、荷物固定装置の空気抵抗を低減することができる。
【0003】
しかし、図6に示す整流板装置は、整流板5を適切な角度に保持するために整流板支持アーム4の上方部を適当な角度に屈曲させることが難しいばかりでなく、整流板5の下端は自由端になっているため、整流板5に強い風が当たると、前記整流板5の自由端によって車両ルーフに傷がつくという欠点があった。
【0004】
前記のような欠点を除去するため、図7乃至図9に示すような整流板装置が提案された(米国特許明細書第6,425,507号明細書参照)。この整流板装置は、図7に示すように、車両ルーフ21の上の荷物固定装置を構成するクロスバー22に、少なくとも3個の整流板支持体23a、23b及び23cを取り付け、これらの整流板支持体23a、23b及び23cによって一枚の整流板24を支持させた構造である。
【0005】
前記整流板取り付け体23a、23b及び23cのうち、23aと23bは図8に示すような構造を有する。すなわち、破線で示されたクロスバー22に固定するためのホルダー部25と破線で示された整流板24を支持するためのアーム部26とをプラスチック等の材料で一体的に形成する。そして、ホルダー部25にはネジ27で締め付け固定するために透孔28及びネジ孔29を形成する。また、アーム部26の上端と下端にはそれぞれ整流板24を支持するためのクリップ30a、30bを形成する。31は整流板24をアーム部26に固定するためのネジ孔、32は止めネジである。さらに、前記アーム部26の下端におけるクリップ30aの反対側には整流板24の下端部を車両ルーフ21上に安定的に支持させるためのベース部33が形成されている。そして、同ベース部の外側にはパッド34を介して保護層35が取り付けられてもよい。
【0006】
また、前記整流板取り付け体23a、23b及び23cのうち、23cは図9に示すように、ホルダー部36は構成素材の弾性を利用してクロスバーに取り付けるように構成したあり、アーム部26の下端には図8の整流板取り付け体と同様に、整流板24を支持するためのクリップ30aと、整流板24の下端部を車両ルーフ21上に安定的に支持させるためのベース部33が形成されている。31は整流板を取り付けるためのネジ孔である。
【0007】
かかる整流板装置は、図6に示した構造のものに比較すると、整流板取り付け体23a〜23cの下端にベース部33を形成して、この部分を車両ルーフ21に接触させて整流板24を支持するようにしてあるので、整流板24に強い風が当たっても、図6の構造のように車両ルーフを傷つけるようなことはない。
【0008】
しかし、図7乃至図9に示す構造の整流板装置は次のような問題点がある。第一に、クロスバー22に固定するためのホルダー部25と整流板24を支持するためのアーム部26とをプラスチック等の材料で一体的に形成してあるので、整流板24の傾斜角度を調節することはできない。これは車両ルーフ上の荷物固定装置の高さが異なる場合に、それに合わせて整流板24の傾斜角度を調整できないので大変不便である。第二に、アーム部26の下端に車両ルーフに接触するベース部33をアーム部と一体的に形成してあるため、車両ルーフの形状に応じて接触角度や接触圧力を自由に調節することができない。このため、如何なる形状の車両ルーフに対しても整流板を安定した状態で装着することができないという問題がある。
【0009】
【特許文献1】米国特許明細書第6,425,507号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、如何なる形状の車両ルーフに対しても整流板を安定した状態で装着することができる整流板装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では前記課題を解決するために、整流板装置を、車両ルーフの荷物固定装置を形成するクロスバーに所定の間隔で固定される少なくとも3個のアームホルダーと、前記各アームホルダーの側端に傾斜角度を調節できるように取り付けられた整流板支持アームと、前記整流板支持アームによって固定された整流板と、前記整流板支持アームとは独立して、前記整流板の下端に前記車両ルーフとの接触状態の調節が可能に取り付けられた複数個のルーフ接触ベースとを具備する構成とすることを特徴とする。すなわち、整流板支持アームの傾斜角度を自在に調節できるようにして整流板の傾斜角度を整流板支持アームごとに調節できるようにするとともに、整流板の下端に整流板支持アームとは全く独立していて車両ルーフにかなり自由な範囲で接触する複数個のルーフ接触ベースを設けて、整流板を安定した状態で装着できるようにしたものである。
【0012】
また、前記ルーフ接触ベースは、前記整流板に対して角度調整可能に固定されるベース支持部と、前記ベース支持部の下端に形成されていて車両ルーフに接触するベース本体部と、前記ベース本体部から前記整流板の前面に延びていて前記ベース支持部の回動を一定の範囲で停止させるベース回動ストッパーとを具備する。かかる構成により、ルーフ接触ベースのベース本体部は整流板の長手方向に時計の振り子と同様な動きをもって動かすことができ、様々な形状の車両ルーフ接触できるようになる。
【0013】
さらに、前記ルーフ接触ベースのベース支持部は前記整流板に設けた縦方向の長孔を介してねじ止めされている構造を選択的に採用することができる。これにより、ルーフ接触ベースの縦方向の位置を調節することができる。
【0014】
また、前記ベース本体部の前記車両ルーフとの接触部分には車両ルーフの形状に応じて変形する弾性材料が使用されていることを特徴とし、前記整流板に対するルーフ接触ベースの角度調節、上下方向の位置調整、弾性材料による変形によって整流板装置を殆どの形状の車両ルーフに対して的確に接触させることができる。
【0015】
さらには、前記クロスバーに固定される少なくとも3個のアームホルダーに取り付けられる整流板支持アームのうち中央に位置する整流板支持アームは、両側のアームホルダーに取り付けられた整流板支持アームより前方に傾斜部が形成してある。この構造によって、整流板の中央部の位置を両端部の位置よりも前方にすることができる。
【0016】
前記構造のように、中央に位置する整流板支持アームの形状を変えなくても、前記クロスバーに固定される少なくとも3個のアームホルダーのうち中央に位置するアームホルダーの整流板支持アームの取り付け部が、両側のアームホルダーの整流板支持アームの取り付け部より前方に形成してあることによっても、整流板の中央部の位置を両端部の位置よりも前方にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
前記のような手段により、如何なる形状の車両ルーフに対しても整流板を安定した状態で装着することができる整流板装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1、図2、図4及び図5において、50a、50b及び50cは、図2に仮想線で示した車両ルーフの荷物固定装置を構成するクロスバー51に固定されるアームホルダーである。それぞれ、クロスバー51を挟み込む一対の挟持体52と、一対の締め付けネジ53とで構成されている。これらのアームホルダー50a、50b及び50cの側端にはそれぞれ整流板支持アーム取り付け部54a、54b及び54cが形成されている。
【0019】
また、55a、55b及び55cは、それぞれ前記整流板支持アーム取り付け部54a、54b及び54cに対して傾斜角度を調節できるように取り付けられた整流板支持アームである。これらの整流板支持アーム55a、55b及び55cの間には、一枚の整流板56が止め具57a、57b及び57cによって固定されている。尚、整流板に対する整流板支持アームの角度調整の機構及び整流板に対する整流板支持アームの角度調整の方向は、本実施例に限定されず、既存の回動機構を適切に応用する事ができる。
【0020】
また、58a、58b、58c及び58dは、前記整流板支持アーム55a、55b及び55cとは独立して、前記整流板56の下端に車両ルーフとの接触状態の調節が可能に取り付けられたルーフ接触ベースである。これらのルーフ接触ベース58a、58b、58c及び58dの斜視図が図4である。ルーフ接触ベース58a〜58dは、整流板56の裏面に回動自在に取り付けられたベース支持部59と、前記ベース支持部59の下端に形成されていて車両ルーフに接触するベース本体部60と、前記ベース本体部60から前記整流板56の前面に延びていて前記ベース支持部59の回動を一定の範囲で停止させるベース回動ストッパー61a〜61dとを具備している。
【0021】
さらに、前記ルーフ接触ベース58a〜58dのベース支持部59は前記整流板56に設けた縦方向の長孔62a〜62dを介してねじ止めされてもよい。これにより、ルーフ接触ベース58a〜58dの縦方向の位置を調節することができる。
【0022】
また、図3に示すように、ルーフ接触ベース58a〜58dのベース本体部60の表面には車両ルーフの形状に応じて変形する弾性材料63を使用することが望ましい。
【0023】
また、クロスバー51に固定される少なくとも3個のアームホルダー50a、50b及び50cのうち中央に位置するアームホルダー50bに取り付けられた整流板支持アーム55bは、両側のアームホルダー50a及び50cに取り付けられた整流板支持アーム55a及び55cより前方に傾斜部が形成してある。これにより、整流板56の中央部が両側より前方に出ている形状となり、空気抵抗を減らすためにより良好な構造となる。
【0024】
クロスバー51に固定される少なくとも3個のアームホルダー50a、50b及び50cのうち中央に位置するアームホルダー50bの整流板支持アーム55bの取り付け部が、両側のアームホルダー50a及び50cの整流板支持アーム55a及び55cの取り付け部より前方に形成してあれば整流板支持アーム55a〜55cの傾斜角度を同じにしても前記の場合と同様に整流板56の中央部が両側より前方に出ている形状とすることができる。
【0025】
以上説明のように、車両ルーフの荷物固定装置を形成するクロスバー51に所定の間隔で固定される少なくとも3個のアームホルダー50a、50b及び50cと、前記各アームホルダー50a、50b及び50cの側端に傾斜角度を調節できるように取り付けられた整流板支持アーム55a、55b及び55cと、前記整流板支持アーム55a、55b及び55c間に固定された一枚の整流板56と、前記整流板支持アーム55a、55b及び55cとは独立して、前記整流板56の下端に前記車両ルーフとの接触状態の調節が可能に取り付けられた複数個のルーフ接触ベース58a、58b、58c及び58dとを具備する構成により、様々な形状の車両ルーフに対しても整流板56を安定した状態で装着することができる整流板装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
自動車のみならず、様々な車両の荷物固定装置のクロスバーに取り付けて使用する整流板装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る整流板装置の斜視図
【図2】本発明に係る整流板装置の側面図
【図3】本発明に係る整流板装置に用いるルーフ接触ベースの斜視図
【図4】本発明に係る整流板装置の平面図
【図5】本発明に係る整流板装置の正面図
【図6】従来の整流板装置の断面図
【図7】従来の整流板装置の斜視図
【図8】従来の整流板装置に用いる整流体支持アームの斜視図
【図9】従来の整流板装置に用いる整流体支持アームの斜視図
【符号の説明】
【0028】
50a〜50c:アームホルダー
51 :クロスバー
52 :挟持体
53 :締め付けネジ
54a〜54c:整流板支持アーム取り付け部
55a〜55c:整流板支持アーム
56 :整流板
57a〜57c:止め具
58a〜58d:ルーフ接触ベース
59 :ベース支持部
60 :ベース本体部
61a〜61d:ベース回動ストッパー
62a〜62d:長孔
63 :弾性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ルーフの荷物固定装置を形成するクロスバーに所定の間隔で固定される少なくとも3個のアームホルダーと、前記各アームホルダーの側端に傾斜角度を調節できるように取り付けられた整流板支持アームと、前記整流板支持アームに固定された整流板と、前記整流板支持アームとは独立して、前記整流板の下端に前記車両ルーフとの接触状態の調節が可能に取り付けられた複数個のルーフ接触ベースとを具備することを特徴とする整流板装置。
【請求項2】
前記ルーフ接触ベースは、前記整流板に対して角度調整可能に固定されるベース支持部と、前記ベース支持部の下端に形成され車両ルーフに接触するベース本体部と、を具備することを特徴とする請求項1に記載の整流板装置。
【請求項3】
前記ベース支持部は、前記整流板の板面に対する垂直軸に対して角度調整可能に固定されることを特徴とする請求項2に記載の整流板装置。
【請求項4】
前記ルーフ接触ベースが、前記整流板との当接可能位置まで延びて前記ベース支持部の角度調整範囲を一定の範囲に制御させるベース回動ストッパーを有することを特徴とする請求項3に記載の整流板装置。
【請求項5】
前記ルーフ接触ベースは、前記整流板に対して上下方向に位置調整可能に固定されるベース支持部と、前記ベース支持部の下端に形成され車両ルーフに接触するベース本体部と、を具備することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の整流板装置。
【請求項6】
前記ベース支持部が前記整流板に設けた縦方向の長孔に対して上下方向に位置調整可能に固定されることを特徴とする請求項5に記載の整流板装置。
【請求項7】
前記ベース本体部の前記車両ルーフとの接触部分には車両ルーフの形状に応じて変形する弾性材料が使用されていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の整流板装置。
【請求項8】
前記クロスバーに固定される少なくとも3個のアームホルダーのうち中央に位置するアームホルダーに取り付けられた整流板支持アームは、両側のアームホルダーに取り付けられた整流板支持アームより前方に傾斜部が形成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の整流板装置。
【請求項9】
前記クロスバーに固定される少なくとも3個のアームホルダーのうち中央に位置するアームホルダーの整流板支持アームの取り付け部が、両側のアームホルダーの整流板支持アームの取り付け部より前方に形成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の整流板装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−221927(P2010−221927A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73340(P2009−73340)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(391021226)株式会社カーメイト (100)
【Fターム(参考)】