説明

敷物

【課題】 快適な状態で使用したり、取り扱うことできる敷物を提供する。
【解決手段】 不織布を略シート状にして構成される不織布シート部20を備える敷物1である。不織布シート部20が、臭い吸着性物質(例えば、人工ゼオライト)を保持する。また、臭い吸着剤は、粒状物若しくは粉状物であってもよい。更に、敷物1は、敷き布団の上面部に配置される敷き布団用の敷物であってもよい。更に、不織布シート部20の下面部には、防水性を備える防水性シート部10が配置されてもよい。また、不織布シート部20の上面部には、通気部32を備える表層シート部30が配置されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敷物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭、公的な機関(病院、老人介護施設等)等においては、種々の敷物が使用されている。例えば、ベット(介護用のベット、病院用のベット、一般用のベット等)においては、ベットの本体部の上面部に1個若しくは複数個の敷物が配置されている。例えば、クッション(マットレス等)等が配置される(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2005−34392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このような敷物は、通常、使用者の体が直接、接触する状態で使用されたり、使用者の体が近接する状態で使用される。このため、これらの敷物には、使用者の体臭、体液若しくは使用者の排泄物等が付着したり、染みこみ、敷物から異臭が放たれることがある。特に、介護用のベットの敷物においては、使用者(被介護者、患者)の尿等が染みこみ、悪臭を放つことも多い。そして、この種の異臭は、使用者(被介護者、患者等)のみならず、敷物を取り扱う者(介護者、看護者等)に不快感を与える可能性がある。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、快適な状態で使用したり、取り扱うことできる敷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明の敷物は、
不織布を略シート状にして構成される不織布シート部を備える敷物であって、
前記不織布シート部が、臭い吸着性物質を保持することを特徴とする。
【0006】
請求項1の敷物によると、「不織布シート部が保持する臭い吸着性物質」によって、使用者(例えば、被介護者、患者等)が発する臭いの元(体臭、体液、排泄物等)を吸着させることができる。このため、使用者(例えば、被介護者、患者等)は、この敷物を快適な状態で使用できる。また、この敷物を取り扱う者(例えば、介護者、看護者等)も、当該敷物を快適な状態で取り扱うことができる。
【0007】
ここで、各請求項の発明の「敷物」としては、敷き布団、座布団、床敷物(カーペット等)等の所定の設置部上(床面上、ベット上、椅子上)に直接、設置される敷物の他に、他の敷物の上面部や下面部に積層されて使用される敷物(例えば、請求項3の発明を参照)等を例示できる。また、「臭い吸着性物質」としては、(1)所謂「人工ゼオライト」の粒状物(特に、造粒物)若しくは粉状物(請求項2の発明)、(2)活性炭の粒状物若しくは粉状物等の種々の吸着性物質を例示できる。
【0008】
ここで、「人工ゼオライト」とは、例えば、石炭灰(主要な化学成分;4〜6割がSiO、2〜3割がAl)の表面にゼオライトの結晶を析出させた物質である。この「人工ゼオライト」は、脱臭性能の他に、重金属(例えば、鉛等)の吸着性能等も有している。
【0009】
この「人工ゼオライト」は、例えば、以下のように製造される。つまり、石炭灰の非結晶部分を苛性ソーダの強アルカリにより溶出させ、所定の槽内(例えば、オートクレープ槽内)でゼオライトの結晶化の反応を行う。これにより、ガラス質であった石炭灰の表面を多孔質に変化させる。この後、余分な苛性ソーダを洗浄すると共に、結晶格子に引きつけられたNaイオンを必要によリ、Caイオンに交換し、その際にpHを中性にする。最後に脱水、乾燥することにより灰色微粉末の「人工ゼオライト」が製造される。この「人工ゼオライト」を、例えば、2〜5mm程度の大きさに造粒して用いることもできる。
【0010】
請求項2の発明の敷物は、請求項1に記載の敷物において、
前記臭い吸着剤は、粒状物若しくは粉状物であることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明では、臭い吸着剤の状態を、粒状物や粉状物等の微細物に限定する。このため、請求項2の発明では、臭い吸着剤を不織布シート部全体に満遍なく、保持(担持)させることができる。
【0012】
請求項3の発明の敷物は、請求項1又は2に記載の敷物において、
前記敷物は、敷き布団の上面部に配置される敷き布団用の敷物であることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明の敷物の特に好適な使用例を示すものである。この請求項3の発明のように、敷物を敷き布団の上面部に配置して使用すると、敷き布団の使用者は、快適な睡眠を行うことができる。また、この敷物を取り扱う者も、当該敷物や寝具(敷き布団等)を快適な状態で取り扱うことができる。尚、請求項3の発明の敷物は、「介護用の敷物」や「育児用の敷物」として特に好適に使用できる。蓋し、これらの用途では、敷き布団の使用者が、尿を漏らす可能性が高いからである。
【0014】
請求項4の発明の敷物は、請求項1又は2に記載の敷物において、
前記敷物は、敷き布団、若しくは、敷き布団の一部を構成することを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明も、請求項3の発明と同様な目的でなされたものである。但し、請求項4の発明では、敷物自体によって敷き布団や、敷き布団の一部(例えば、積層体によって構成する敷き布団の任意の一層)を構成する点が、請求項3の発明と異なっている。そして、この請求項4の発明の敷物も、請求項3の発明の敷物と同様に、「介護用の敷物」や「育児用の敷物」として特に好適に使用できる。
【0016】
請求項5の発明の敷物は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の敷物において、
前記不織布シート部の下面部には、防水性を備える防水性シート部が配置されることを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明によると、不織布シート部の下部に防水性シート部が配置される。このため、使用者の尿や汗等が、不織布シート部を通過した場合でも、この尿や汗等が更に下方に到達することを防止できる。例えば、請求項3の発明に従う場合に、使用者の尿や汗等が敷き布団に到達することを防止できる。
【0018】
請求項6の発明の敷物は、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の敷物において、
前記不織布シート部の上面部には、通気部を備える表層シート部が配置されることを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明では、不織布シート部の上面部に、表層シート部を配置するため、敷物に「臭い吸着機能」以外の性能を付与することができる。例えば、表層シート部によって、敷物の意匠性を高めたり、近い勝手や使い心地(風合い、肌触り等)を向上させることができる。しかも、表層シート部には、通気部(例えば、表層シート部の表裏面部を貫通状に通気する通気部)を設け、この通気部を臭い成分が通過する構造を採用する。このため、表層シート部の存在によって、不織布シート部の臭い吸着機能を損なうことはない。ここで、表層シート部としては、例えば、窓部を有する本体部と、この窓部を装着される「メッシュ状の通気性シート部」と、を備えるものを例示できる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本各発明によると、快適な状態で使用したり、取り扱うことできる敷物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本各発明に係わる「敷物」の最良の形態(以下、「実施例」という。)を図面に従って詳細に説明する。
【0022】
(1)実施例に係る敷物の構成
【0023】
先ず、図1〜図3を用いて、本実施例に係る敷物(以下、「本敷物」という。)1の構成について説明する。本敷物1は、敷き布団(図示を省略)の上面部に配置して用いられるものであり、平面形状が略矩形状のシート状体によって構成されている。この敷物1は、防水性シート部10と、不織布シート部20と、表層シート部30とを下からこの順で積層した積層体によって構成されている。
【0024】
防水性シート部10は、樹脂(例えば、ナイロン)を平面形状が略矩形状で、薄肉のシート状物として構成されるものである。また、不織布シート部20は、不織布を用いて構成される基材21に対して、人工ゼオライトの造粒物22を担持させたものである。尚、基材21は、平面形状が略矩形状のシート状物によって構成されている。
【0025】
表層シート部30は、平面形状が略矩形状のシート状物によって構成されている。この表層シート部30は、略中央に平面形状が略矩形状の貫通孔(表裏面を貫通する略窓状の貫通孔)31aを備える本体部31と、この貫通孔31aに装着される通気部32とを備える。このうち、本体部31は、コットンベロア生地を用いて構成されている。また、通気部32は、メッシュ生地(網の目の生地)によって構成されている。
【0026】
尚、本敷物1において、上下に隣接する構成部材間の接続方法は特に問わない。つまり、防水性シート部10と不織布シート部20との連結方法や、不織布シート部20と表層シート部30との連結方法は特に問わない。例えば、逢着、若しくは、接着等によって連結してもよし、面ファスナー若しくはボタン等の連結部材を用いて連結してもよい。
【0027】
(2)不織布シート部20の製造方法
次に、本敷物1の主要部を構成する不織布シート部20の製造方法に関し、図4を用いて説明する。つまり、本不織布シート部20は、不織布の帯状連続体(目的の基材21に切断する前の連続体であって、人工ゼオライトの造粒物22を担持させる前のもの)21Aに対して、図4に示すような加工装置Aによって加工を施すことによって作製される。尚、この加工装置Aは、所謂「ケミカルボンド法(樹脂浸積法)」を用いて、帯状連続体21Aに、人工ゼオライトの造粒物22を担持させるものである。
【0028】
この加工装置Aは、複数のローラ51〜60と、浴70とを備えている。そして、浴70内には、人工ゼオライトの粉状物(造粒物)22を分散させたバインダー23が収容されている。そして、帯状連続体21Aを、ローラ51〜60によって搬送し、浴70内を通過させると、この帯状連続体21Aには、人工ゼオライトの粉状物(造粒物)22が担持される(担持量;例えば、1平方メートル当りで200グラム)。
【0029】
そして、このように、人工ゼオライトの粉状物(造粒物)22を担持させた帯状連続体21Aを、所望の長さに裁断すると、不織布シート部20が得られる。
【0030】
(3)実施品の性能の評価
本敷物1の性能を評価するために以下に示すような試験を行った。つまり、実施例に係る不織布シート部20から試験片(10cm×10cm)を切り出し、ガス吸着試験を行った。つまり、この試験片(以下、「実施品」という。)を、アンモニアガスが充填された試験容器内に収納し、ガス吸着試験を実施した。尚、この試験容器内のアンモニアガスの初期濃度は、200ppmである。
【0031】
また、比較用の試験片(以下、「比較品」とう。)を用意し、同様なガス吸着試験を実施した。この比較品は、人工ゼオライトの粉状物(造粒物)22を担持しない不織布によって構成されている。つまり、帯状連続体21A(人工ゼオライトの粉状物(造粒物)22を担持しないもの)から、切り出した試験片(10cm×10cm)である。
【0032】
実施品に施したガス吸着試験(以下、「実施試験」という。)の結果と、比較品に施したガス吸着試験(以下、「比較試験」という。)の結果とを図5に併記する。尚、図5中において、実施試験の結果を「実線の折れ線」で示し、比較試験の結果を「破線の折れ線」で示す。
【0033】
比較試験では、試験開始後、約20分が経過しても、試験容器中のアンモニアガスの濃度値が、初期濃度(200ppm)の約95パーセントの値を示した。これに対して、実施試験では、試験開始後、約5分が経過すると、試験容器中のアンモニアガスの濃度値が、初期濃度(200ppm)の約30パーセントの値を示した。そして、試験開始後、約5分が経過すると、試験容器中のアンモニアガスの濃度値が、初期濃度(200ppm)の約4パーセントの値を示した。つまり、試験を開始してから約20分が経過した後において、試験容器中のアンモニアガスの濃度値を比較すると、実施試験の場合は、比較試験の場合の約4パーセントにまで低減した。
【0034】
以上のように、本実施例の敷物1によると、不織布シート部20に担持させた人工ゼオライト22によって、使用者が発する臭いの元(体臭、体液、排泄物等)を吸着させることができる。このため、使用者(例えば、被介護者、患者等)は、この敷物1を所定の敷き布団の上面部に配置しつつ、快適な状態で使用できる。また、この敷物1を取り扱う者(例えば、介護者、看護者等)も、当該敷物1を快適に取り扱うことができる。
【0035】
また、本実施例では、臭い吸着剤(人工ゼオライト22)の状態を、粒径が略整えられた造粒物で構成するため、この臭い吸着剤(人工ゼオライト22)を不織布シート部20全体に満遍なく、保持(担持)させることができる。従って、実施例の敷物1によると、不織布シート部20全体を通じて、略均質な臭い吸着性能を発揮できる。
【0036】
更に、本実施例の敷物1では、不織布シート部20の下部に、防水性シート部10が配置されるため、この敷物1によると、使用者の尿や汗等が敷き布団に到達することを防止できる。
【0037】
また、本実施例の敷物1では、不織布シート部10の上部に表層シート部30を配置するため、この表層シート部30によって、敷物1の意匠性を高めたり、近い勝手や使い心地(風合い、肌触り等)を向上させることができる。しかも、表層シート部30には、通気部32を設け、この通気部32を臭い成分が通過する構造を採用する。このため、表層シート部30の存在によって、不織布シート部20の臭い吸着機能を損なうことはない。
【0038】
尚、本各発明の範囲は前記各実施例に示す具体的な態様に限定されず、本各発明の範囲内で種々の変形例を例示できる。即ち、本実施例では、各請求項の発明の敷物の具体例として、他の敷物(例えば、敷き布団)の上面部に付加的(補助的)に配置される敷物を例示したが、各請求項の発明の敷物は、当該他の敷物の下面部に付加的(補助的)に配置される敷物や、当該他の敷物間に付加的(補助的)に挿入配置される敷物等であってもよい。また、各請求項の発明の敷物が、それ自体単独で使用される敷物(例えば、座布団 敷き布団等)であってもよい。更に、各請求項の発明の敷物の使用箇所は、室内に限定されない。例えば、道路(特に歩道)、公園、庭等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、例えば、敷物の製造、販売、施工、加工等を行う分野で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例の敷物の斜視図である。
【図2】実施例の敷物の分解斜視図である。
【図3】実施例の敷物の分解縦断面図である。
【図4】実施例の製造方法を示す説明図である。
【図5】実施例の敷物の性能を示す説明図(グラフ)である。
【符号の説明】
【0041】
1;敷物、
10;防水性シート部、
20;不織布シート部、
21;基材、
22;人工ゼオライトの造粒物(臭い吸着性物質)、
30;表層シート部、
32;通気部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布を略シート状にして構成される不織布シート部を備える敷物であって、
前記不織布シート部が、臭い吸着性物質を保持することを特徴とする敷物。
【請求項2】
前記臭い吸着剤は、粒状物若しくは粉状物であることを特徴とする請求項1に記載の敷物。
【請求項3】
前記敷物は、敷き布団の上面部に配置される敷き布団用の敷物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の敷物。
【請求項4】
前記敷物は、敷き布団、若しくは、敷き布団の一部を構成することを特徴とする請求項1又は2に記載の敷物。
【請求項5】
前記不織布シート部の下面部には、防水性を備える防水性シート部が配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の敷物。
【請求項6】
前記不織布シート部の上面部には、通気部を備える表層シート部が配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の敷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−320516(P2006−320516A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146213(P2005−146213)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(502292905)三幸毛糸紡績株式会社 (4)
【Fターム(参考)】