説明

文字入力装置におけるカーソル移動制御用のプログラムおよび文字入力装置

【課題】カーソルを移動させるか否かの判断に用いられる規定時間を、個々のユーザの操作速度に合わせて自動調整する。
【解決手段】文字入力処理部101が文字キーの操作を受け付けて入力文字を特定する都度、カーソル制御部105は、文字キーが操作されてからの経過時間を計測し、規定時間を経過しても次の文字キーが操作されない場合には、文字入力処理部101にカーソルを自動で移動させるように指示し、操作判定部107は、この操作後の操作の内容を判定する。規定時間調整処理部108は、カーソルの移動を利用した文字入力が行われたと判定された場合には、規定時間を現在値より短く設定し、カーソルの移動を取り消す修正操作が行われたと判定された場合には、規定時間を現在値よりも長く設定する処理を、カーソルの移動回数があらかじめ定めた設定値に達するまで実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の文字が割り当てられた文字キーを複数有する操作部と、文字キーの操作により入力された文字を表示するための表示部とを具備し、操作された文字キーの種類および操作回数に応じて入力対象の文字を特定して入力文字列を組み立てる文字入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、携帯電話では、電話番号入力用の10個のキーにそれぞれ50音の1行分の仮名文字を割り当て、同じキーが連続して操作されている間は表示部のカーソルの位置を固定してそのキーに割り当てられている文字を順に切り替えて入力し、他のキーが操作されたことに応じてカーソルを次の入力位置に移動させて直前に操作されたキーに対応する文字を入力する。
【0003】
しかし、上記の方法では、「あい」「かく」など、同じキーに割り当てられている文字が並ぶ文字列を入力する場合には、先の文字の入力を終えた後にカーソルを移動させる操作が必要となり、操作が煩雑になるという問題があった。
この問題を解決するために、近年、文字キーが操作されてから一定時間が経過しても次のキーが操作されなかった場合には、カーソルを自動的に次の入力位置に移動させる処理(以下、この処理を「オートカーソル移動処理」といい、この処理によるカーソルの移動を「オートカーソル移動」という。)を行う機能(以下、「オートカーソル移動機能」という。)が組み込まれた端末機器が提供されている。
【0004】
図9は、オートカーソル移動が生じずに行われた文字入力の例と、オートカーソル移動が生じた文字入力の例とを対比させて示す。いずれの例でも、数字の「1」および「あ」「い」「う」「え」「お」の各仮名文字が割り当てられたキー(以下、「1」キーという。)が2回操作されているが、上段の例では、1回目の操作からあらかじめ定められた規定時間以内に2回目の操作が行われたため、カーソルは移動せず、最初の「1」キーの操作に応じて入力された文字「あ」が、次の操作により「い」に切り替えられる。これに対し、下段の例では、1回目の操作から規定時間を過ぎても2回目の操作が行われなかったため、1回目の操作により入力された「あ」が維持された状態でカーソルがつぎの位置に移動し、2回目の操作に対応する文字「あ」が移動後のカーソルの位置に入力される。この結果、2回目の操作が終了した時点での入力文字列は「ああ」となる。
【0005】
上記のオートカーソル移動機能に関して、下記の特許文献1には、各文字入力用ボタン(本明細書の文字キーに相当する。)に指の接触を検出するセンサを設け、このセンサによりボタンから指が離れたことが検出されたときにカーソルを移動させることが記載されている(段落0018,図1等参照)。また、ボタンから指が離れてからの時間が所定時間以上になったときにカーソルを移動させることも記載されている(段落0054参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−251670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、オートカーソル移動機能が組み込まれている携帯端末機器では、直近の文字キーの操作から一定時間が経過し、次の文字キーの操作が行われていないことを条件として、カーソルを移動させる。しかし、ユーザの文字入力速度には個人差があるため、規定時間がすべてのユーザに適しているとは言えない。たとえば、ユーザが文字入力操作に慣れておらず、文字キーを操作する時間間隔が長くなる傾向がある場合には、図9の上段のように、入力文字を切り替えるつもりで操作しているのに、カーソルが移動して、ユーザが意図しない入力文字列が組み立てられることがある。一方、規定時間よりも短い時間間隔で文字キーを操作することができるユーザは、カーソルが移動するまでの待ち時間が長いと不満を感じ、また文字入力の効率がかえって悪くなるおそれがある。
【0008】
上記の問題点に関して、特許文献1には、規定時間をユーザに設定させても良い旨が記載されている(段落0055参照。)が、ユーザが自身の操作速度に適した時間を判断するのは困難である。また、端末機器の取り扱いに慣れていない初心者に、このような設定を委ねるのは酷である。
【0009】
本発明は上記の問題点に着目し、カーソルを移動させるか否かの判断に用いられる規定時間を、個々のユーザの操作速度に合わせて自動調整することにより、いずれのユーザに対しても操作性の向上された文字入力装置を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明が適用される文字入力装置は、複数の文字が割り当てられた文字キーを複数有する操作部と、文字キーの操作により入力された文字を表示するための表示部と、コンピュータによる制御部とを具備する。制御部は、同一の文字キーが連続して操作される間は表示部におけるカーソルの位置を維持して操作されたキーに割り当てられている文字を順に切り替えてカーソルの位置に設定し、前回とは異なる文字キーが操作されたことに応じてカーソルを移動させて、移動後のカーソルの位置に操作された文字キーに割り当てられている文字を設定する文字入力受付手段と、文字キーの操作からあらかじめ定めた規定時間が経過しても次の操作が行われなかったとき、カーソルを次の入力位置に自動で移動させるオートカーソル移動処理を実行するカーソル制御手段として動作する。
【0011】
本発明によるプログラムは、上記の制御部に、カーソル制御手段によるオートカーソル移動処理の実行回数があらかじめ定めた設定値に達するまで、オートカーソル移動処理が行われる都度、カーソルの移動後に操作部に対して実行された操作の内容を判定する第1ステップと、この判定の結果に基づき規定時間を調整する第2ステップとを実行させる。また、このプログラムによる第2ステップでは、第1ステップにおいて、オートカーソル移動を取り消す修正操作が行われたと判定されたときは、規定時間を現在値より長くする処理を実行し、第1ステップにおいて、オートカーソル移動を利用した文字入力操作が行われたと判定されたときは、規定時間を現在値より短くする処理を実行する。
【0012】
上記のプログラムによる第1ステップでは、たとえば、オートカーソル移動が生じた後の操作部に対する操作を監視し、前回と同じ文字キーが所定回数操作された後に、これらの操作により入力された文字およびオートカーソル移動の前に入力された文字を消去する操作によりカーソルが移動前の位置に戻されたとき、または移動後のカーソルの位置に文字が入力されることなく、カーソルの移動前に入力された文字を消去する操作によりカーソルが移動前の位置に戻されたときに、修正操作が行われたと判定する。一方、たとえば、カーソルが移動した後に前回と同じ文字キーが所定回数以上連続して操作されたとき、または移動後のカーソルの位置に文字が入力された後にカーソルをさらに移動させる操作が行われたときに、修正操作は行われずに、オートカーソル移動を利用した文字入力操作が行われたと判定する。
【0013】
上記のプログラムによれば、オートカーソル移動を発生させるか否かの判定の基準となる規定時間を、個々のユーザの文字入力速度に合わせて調整することが可能になる。たとえば、ユーザが文字キーを操作する時間間隔が規定時間より長い場合には、最初のうちは、ユーザは訂正操作を余儀なくされるが、しだいに規定時間が長くなり、同じ文字キーを連続して操作している間にオートカーソル移動が生じないようにすることができる。また、文字入力操作に習熟し、当初の規定時間によるオートカーソル移動を利用した文字入力操作を行っているユーザに対しては、規定時間をユーザの操作速度に合わせて縮めて、文字入力の効率を向上することができる。したがって、いずれのユーザに対しても、その操作能力に応じた長さになるように規定時間に自動調整することができ、利便性を高めることができる。
【0014】
なお、第2ステップでは、オートカーソル移動処理の実行回数が設定値に近づくにつれて、加算または減算される時間が小さくなるように調整を行うのが望ましい。このようにすれば、規定時間を比較的大きく調整してユーザの操作速度に適した値に近づけた後に、さらにユーザにとってより好ましい長さになるように規定時間を微調整することができる。
【0015】
好ましい実施態様では、第1ステップでオートカーソル移動を利用した文字入力操作が行われたと判定された場合の第2ステップでは、規定時間を現在値より短くする処理を行った場合の処理後の規定時間があらかじめ定めた下限値を下回るか否かを判定し、下回ると判定したときは規定時間を下限値に設定する。
規定時間が極端に短くなると、連続操作を必要としているのに、オートカーソル移動が生じて誤入力が生じるおそれがあるが、上記のようにカーソルが移動するまでの時間にある程度の制限を設けることによって、誤入力を防止することができる。
【0016】
他の好ましい実施態様では、カーソル制御手段によるオートカーソル移動処理の実行回数が設定値に達するより前に、規定時間がある一定の値を超えるとき、第1ステップおよび第2ステップの実行を中止して、カーソル制御手段の機能を無効にするステップを、制御部に実行させる。このようにすれば、オートカーソル機能への対応が困難なユーザが自分で機能を無効にする処理を行わなくとも、自動的に機能が無効になるから、操作に慣れていないユーザの負担を解消することができる。
【0017】
上記のプログラムが導入された文字入力装置の制御部は、カーソル制御手段によるオートカーソル移動処理の実行回数があらかじめ定めた設定値に達するまで、オートカーソル移動処理が行われる都度、カーソルの移動後に操作部に対して実行された操作の内容を判定して、その判定結果に基づいて規定時間を調整する調整手段として動作する。調整手段は、オートカーソル移動を取り消す修正操作が行われたと判定した場合には、規定時間を現在値より長くする処理を実行し、オートカーソル移動を利用した文字入力操作が行われたと判定した場合には、規定時間を現在値より短くする処理を実行する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、カーソルを自動的に移動させるか否かの判断に用いられる規定時間を、個々のユーザの文字入力速度に適した長さに自動的に調整するので、ユーザは、オートカーソル移動機能に関して何ら設定を行わなくとも、自身の操作速度に適したタイミングでオートカーソル移動を発生させることが可能になる。よって、文字入力における使い勝手を向上し、利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明が適用された携帯電話の外観を示す図である。
【図2】携帯電話の構成を示すブロック図である。
【図3】文字入力システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図4】オートカーソル移動を利用した文字入力の例を示す図である。
【図5】オートカーソル移動に対して修正操作が行われた場合の文字入力例を示す図である。
【図6】操作判定処理部により実行される処理を示すフローチャートである。
【図7】規定時間調整処理部により実行されるオートカーソル移動の調整処理を示すフローチャートである。
【図8】規定時間調整処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
【図9】オートカーソル移動が生じていない場合の文字入力画面と、オートカーソル移動が生じた場合の文字入力画面とを対比させて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明が適用された携帯電話の外観を、図2は、この携帯電話の電気構成を、それぞれ示す。
この実施例の携帯電話1は、表示部2や操作部3が設けられた筐体1Aの内部に、カメラ4、画像プロセッサ5、通信回路6、制御回路10などが収容された構成のもので、通話のほか、インターネットに接続したり、電子メールの送受信を行う機能を具備する。また、画像プロセッサ5による制御下でカメラ4による撮像を実行し、生成された画像をパーソナルコンピュータなどの外部機器に出力したり、生成された画像を電子メールに添付して送信することもできる。
【0021】
制御回路10は、CPU11のほか、主メモリ12、作業メモリ13などが含まれる。主メモリ12は、フラッシュメモリなどの不揮発性のメモリであって、プログラムや設定用のデータなどが保存される。一方、作業用メモリ13は揮発性メモリ(RAM)であって、後記する文字入力処理で抽出された変換候補などの一時保存を目的とするデータが格納される。
【0022】
表示部2は液晶パネルにより構成される。操作部3には、「0」〜「9」の数字が割り当てられた文字キー31,十字キー32,クリアキー33を含む複数のキーが配備される。各文字キー31には、それぞれ数字のほかに、50音の1行分の平仮名文字や、複数のアルファベット文字または記号が割り当てられる。
【0023】
この実施例の主メモリ12には、図3に示すような日本語入力システム100を構成するプログラムやデータファイルが格納されている。この日本語入力システム100は、電子メールエディタなど、日本語の入力が必要なアプリケーション(以下、「上位アプリケーション」という。)が起動したときに、これに連動して起動し、操作部3からの仮名文字の入力を受け付けて、入力された文字列を仮名漢字変換したものを上位アプリケーションに出力する処理を実行する。
【0024】
この実施例の日本語入力システム100は、文字入力処理部101、候補抽出部102、入力文字判定テーブル103、予測変換用辞書104、カーソル制御部105、オートカーソル移動調整部106などにより構成される。
【0025】
上記の構成のうち、入力文字判定テーブル103、予測変換用辞書104、およびオートカーソル移動調整部106の初期値記憶部110は、主メモリ12に格納されたデータファイルにより構成される。その他の処理部の実体は主メモリ12に格納されたプログラムを実行するCPU11である。
【0026】
入力文字判定テーブル103には、各文字キー31と各キーに割り当てられた文字とが関連づけられて登録されている。予測変換用辞書104には、仮名漢字文字列をその読みや使用頻度に対応づけた構成の辞書データが複数格納されている。
【0027】
文字入力処理部101は、表示部2に文字の入力位置を示すカーソルを表示して、操作部3に対する文字入力操作に待機する。ユーザによる文字キー31の操作が開始されると、文字入力処理部101は、入力文字判定テーブル103を参照して、操作により入力された文字を特定し、カーソルの位置に表示する。
【0028】
具体的には、同じ文字キー31が連続して操作されている間は、カーソルの位置を固定して、操作中のキーに割り当てられている仮名文字を順に切り替えてカーソルの位置に設定する。一方、前回とは異なる文字キー31が操作された場合には、カーソルを次の入力位置に移動させて、直近に操作された文字キー31に割り当てられている先頭の文字を移動後のカーソルの位置に設定する。また、十字キー32によるカーソルの移動操作が行われた場合には、カーソルを次の入力位置に移動させ、次の文字キー31の操作に応じて、その文字キー31に割り当てられている先頭の文字を移動後のカーソルの位置に設定する。このような処理により、ユーザの文字入力操作に応じた仮名文字列(以下、これを「読み文字列」といい、読み文字列を構成する各仮名文字を「読み文字」という。)が組み立てられる。
【0029】
また、文字入力処理部101は、読み文字列が変化する都度、変化後の読み文字列を候補抽出部102に提供して、読み文字列に対応する変換候補の抽出を指示する。候補抽出部102は、提供された読み文字列により予測変換用辞書104を検索して、変換候補の文字列を抽出し、各候補を使用頻度などに基づき並べた候補リストを作成して文字入力処理部101に提供する。文字入力処理部101は、この候補リストを対応する読み文字列と同じ画面上に表示する。所定の時点で、候補リスト中の所定の候補を選択する操作が行われると、文字入力処理部101は、選択された候補を変換後の文字列として確定し、上位アプリケーションに出力する。
【0030】
カーソル制御部105は、オートカーソル移動機能を実現するための処理部である。このカーソル制御部105は、文字入力操作の有無を監視し、文字入力操作の都度、その操作が行われてからの経過時間を計測する。そして、規定時間を超えても次の文字入力操作が行われなかった場合には、文字入力処理部101に、カーソルを次の入力位置に移動するように指示する。これにより、ユーザの操作によらないオートカーソル移動が実施される。
【0031】
オートカーソル移動調整部106は、ユーザの設定操作に応じてオートカーソル移動機能の有効、無効を設定するほか、オートカーソル機能が有効な場合には、この機能がユーザの操作能力に適したものになるように調整する。この処理のために、オートカーソル移動調整部106には、操作判定部107、規定時間調整処理部108、設定受付処理部109、初期値記憶部110などが含まれている。
【0032】
初期値記憶部110には、規定時間の初期値のほか、規定時間の調整に用いられる各種パラメータ(詳細は後記する。)が格納されている。
操作判定部107は、オートカーソル移動の発生に応じて、その後の操作部3に対する操作の内容を判定する。規定時間調整処理部108は、規定時間の初期値をカーソル制御部105に設定し、以後、オートカーソル移動が発生する都度、これに対する操作判定部107の判定結果に基づき、規定時間を現在値より長くする処理、または規定時間を現在値より短くする処理を実行する。
【0033】
設定受付処理部109は、表示部2に、オートカーソル移動機能を有効にするかどうかの設定を行うメニュー画面を立ち上げて、ユーザによる選択操作を受け付ける。この実施例では、デフォルトの設定として、オートカーソル移動機能を有効(オン)にするように規定しているが、設定受付処理部109によりオートカーソル移動機能を無効(オフ)にすることが選択された場合には、カーソル制御部105を動作しないように設定する。
【0034】
図4および図5は、読み文字列の入力操作に伴う画面表示の変化により、オートカーソル移動が生じたときのユーザの対応の事例を示す。
いずれの例でも、ユーザは「いい」という読み文字列を入力することを目的としているが、図4の事例1は、オートカーソル移動機能を認識するユーザが、意図的にオートカーソル移動を発生させて行った入力操作例を示す。一方、図5の事例2は、オートカーソル移動機能を知らず、また操作に不慣れなユーザによる入力操作の例を示す。
【0035】
図4の事例1では、ユーザは、まず、先頭の読み文字「い」を入力するために、「1」キーの押下操作を2回繰り返している(画面a,b)。この操作により先頭の読み文字が「あ」から「い」に変化すると、ユーザは、少し間をおくことにより、オートカーソル移動を発生させ(画面c)、オートカーソル移動の後に、再び「1」キーの押下操作を2回繰り返している(画面d,e)。これにより、目的とする読み文字列「いい」の入力が完了する。
【0036】
図5の事例2でも、先頭の読み文字の入力のために、「1」キーの押下操作が2回行われるが、1回目の操作後、2回目の操作が行われるより前に規定時間が経過したため、オートカーソル移動が発生している(画面f,g,h)。これにより、先頭の読み文字は「あ」に確定され、2回目の「1」キーの操作に応じて2番目の読み文字として「あ」が入力され、「ああ」という目的外の読み文字列が組み立てられる。このためユーザは、入力された2つの「あ」をクリアキー33により消去することによって、カーソルを先頭位置に戻し(画面i)、再び、先頭の読み文字を入力している。今回の入力では、規定時間より短い間隔で「1」キーの繰り返し操作が行われたので、先頭の文字は「あ」から「い」に変化している(画面j,k)。
また、この事例2のユーザは、オートカーソル移動機能を認識していないので、先頭の読み文字の入力を終えた後は、カーソルを手動で右に移動させ(画面l)、2番目の読み文字を入力する操作を行って(画面m,n)、目的の読み文字列「いい」を完成させている。
【0037】
上記の事例1のように、オートカーソル移動が生じた後に、その移動を利用して文字入力を続ける操作のことを、以下では「オートカーソル移動利用操作」という。これに対し、事例2のように、オートカーソル移動を利用せずに、オートカーソル移動を取り消して文字入力をやり直す操作のことを、以下では「修正操作」という。
【0038】
操作判定部107では、次の図6に示す処理により、オートカーソル移動の後に、オートカーソル移動利用操作および修正操作のいずれが行われたかを判定する。規定時間調整処理部108は、操作判定部107がオートカーソル移動利用操作が行われたと判定した場合には、規定時間を現在値より短くする処理を実行し、操作判定部107が修正操作が行われたと判定した場合には、規定時間を現在値より長くする処理を実行する。この調整処理は、あらかじめ定められた回数分のオートカーソル移動が発生するまで実行されるので、徐々に規定時間をユーザの文字入力操作の速度に適合する長さに調整することができる。
【0039】
たとえば、ユーザの文字入力操作が遅いために、カーソルを移動させたくない時にオートカーソル移動が発生していた場合には、規定時間を初期値より長く設定して、ユーザが意図していないカーソルの移動をなくすことができる。また、文字入力速度が速いために、初期値の規定時間では文字入力の効率が低下するユーザに対しては、規定時間を初期値より短く設定して、文字入力の効率を阻害しないようにすることができる。
【0040】
以下、図6を参照して、操作判定部107により実行される処理を詳細に説明する。
操作判定部107では、オートカーソル移動の発生および文字キー31の操作を常に監視する(ステップS11,S12)。そして、文字キー31が操作されると(ステップS12が「YES」)、操作された文字キー31を、そのキーに割り当てられている数字(0,1,2・・9)により記憶する。
【0041】
所定の時点でオートカーソル移動が発生すると(ステップS11が「YES」)、操作判定部107は、カウンタCをリセットする。このカウンタCは、オートカーソル移動の直前に操作された文字キー31と同一のキーがオートカーソル移動後に続けて操作された回数を示すものである。
【0042】
この後、操作部3で何らかの操作が行われ(ステップS15が「YES」)、その操作が文字キー31の操作であれば(ステップS16が「YES」)、操作判定部107は、カーソルの移動前に操作されたのと同じ文字キー31が操作されたか否かをチェックする(ステップS17)。そして、カーソルが移動する直前に操作されたのと同じ文字キー31が操作された場合(ステップS17が「YES」)には、カウンタCをインクリメントする(ステップS18)。
【0043】
この実施例では、このカウンタCの値に基づき、カーソルの移動の直前に操作されたのと同じ文字キー31の連続操作回数が2回に達するまでは、操作の都度、上記の手順を実行し、連続操作回数が2回になると(ステップS19が「YES」)、オートカーソル移動利用操作が行われたと判定する(ステップS20)。また、文字キー31の連続操作回数は2回未満であるが、他の文字キー31に操作が切り替えられた場合(ステップS17が「NO」)にも、オートカーソル移動利用操作が行われたと判定する。
【0044】
一方、オートカーソル移動が発生した後に、十字キー32によりカーソルを元の位置に戻す操作が行われた場合や、移動前のカーソル位置に入力された読み文字をクリアキー33により消去する操作が行われた場合には、ステップS21が「YES」となり、修正操作が行われたと判定する(ステップS22)。また、オートカーソル移動の直前に操作されたのと同じ文字キー31が再度操作されてカウンタCが1となった後に、この操作により移動後のカーソルの位置に入力された文字およびカーソルの移動前に入力された文字をクリアキー33により消去する操作が行われた場合にも、ステップS21が「YES」となり、修正操作が行われたと判定する(ステップS22)。
【0045】
上記以外の操作(たとえば、変換候補を選択する操作、読み文字列の入力をキャンセルする操作など)が行われた場合には、ステップS15が「YES」となった後にステップS16およびS21が「NO」となってステップS11に戻る。この処理は、オートカーソル移動利用操作および修正操作のいずれも実行されなかった、と判定していることに相当する。
【0046】
上記の例では、オートカーソル移動の前と同じ文字キー31の連続操作回数が2回に達したとき、およびオートカーソル移動後にカーソルの移動前とは異なる文字キー31が操作されたときに、オートカーソル移動利用操作が行われたと判定した。ただし、オートカーソル移動前と同じ文字キー31が連続操作されている間は、その連続操作回数にかかわらずに判定を保留し、カーソルの移動前とは異なる文字キー31が操作されたことをもって、オートカーソル移動利用操作が行われたと判定してもよい。また、この場合には、移動前と同じ文字キー31が2回以上操作された後に、これらの操作により入力された文字やカーソルの移動前に入力された文字を消去する操作が行われた場合にも、修正操作が行われたと判定してよい。
上記の判定によれば、ユーザがオートカーソル移動に気づかずに、移動前と同じ文字キー31の操作を繰り返した後に修正操作を行った場合にも、その修正操作を正しく認識して規定時間を調整することが可能になる。
【0047】
つぎに、図7に示すフローチャートは、規定時間調整処理部108による処理の手順を示すものである。
この実施例では、制御回路10が起動している間、図中のステップS1〜S9の処理を繰り返し実行する。また調整された規定時間や、調整に用いられる各種パラメータの値は、電源がオフになった場合でも主メモリ12内に保持される。
【0048】
また、この実施例では、デフォルトの設定として、オートカーソル移動機能をオン状態に設定するが、適宜、設定受付処理部109の機能により、オートカーソル移動機能のオン/オフの設定の選択を受け付けるようにしている。
【0049】
たとえば、ユーザが携帯電話1を購入して、デフォルトの設定のまま使用を開始すると、ステップS1が「NO」、ステップS3が「YES」、ステップS4が「NO」となって、ステップS5の初期設定処理に進む。また、ユーザが設定受付処理部109の機能を利用してオートカーソル移動機能をオン状態に設定した場合には、ステップS1およびS2が「YES」となって、同様にステップS5の初期設定処理に進む。
【0050】
ステップS5では、カーソルを移動させるか否かの判断に用いられる規定時間Tの初期値を1秒に設定し、規定時間Tの最大値TMAX(以下、「最大規定時間TMAX」という。)を2秒に、規定時間Tの最小値TMIN(以下、「最小規定時間TMIN」という。)を
0.5秒に、それぞれ設定する。また、オートカーソル移動機能によるカーソルの移動回数Nに初期値の0を設定し、規定時間Tの調整終了の基準となる上限値NMAXを30回に設定する。
なお、Nの初期値の0以外の各初期設定値は、いずれも一例であり、適宜、値を変更することができる。
【0051】
初期設定の後は、カーソル制御部105の動作を監視する。所定の時点でオートカーソル移動が発生したと判断すると(ステップS6が「YES」)、そのときのカーソルの移動回数NがNMAX以下であることを確認して(ステップS7が「YES」)、規定時間調整処理(ステップS8)を実行する。この後は、移動回数Nをインクリメントし、ステップS1に戻る。
【0052】
以下も、オートカーソル移動が生じる都度、ステップS8の規定時間調整処理が実行されるが、カーソルの移動回数NがNMAXを超えると(ステップS7が「NO」)、以後は、規定時間調整処理が実行されることはなくなり、規定時間Tが固定される。
【0053】
また、ユーザがオートカーソル移動機能をオフ状態に設定することを選択した場合には、その選択に応じてステップS1が「YES」、ステップS2が「NO」となり、その後は、ステップS1、S3が「NO」になる状態が繰り返される。このときには、オフ設定に応じてカーソル制御部105が動作しないように設定されるので、オートカーソル移動が生じることはない。
【0054】
つぎにステップS8の規定時間調整処理について、図8を用いて詳細な手順を説明する。この処理では、まず、調整時間tdを設定する(ステップS81)。この実施例では、規定時間調整処理の都度、(NMAX−N)/NMAXの値に0.1秒を掛ける演算により得た値を調整時間tdに設定する。これにより、カーソルの移動回数が上限値NMAXに近づくにつれて、調整時間tdの値は小さくなる。
【0055】
つぎに、この判定処理の開始の契機となったオートカーソル移動に対する操作判定部107の判定結果をチェックする(ステップS82)。ここで、図6に示した処理を実行した操作判定部107が修正操作が行われたと判定した場合には、規定時間Tに調整時間tdを加えた値と最大規定時間TMAXとを比較し(ステップS83)、(T+td)の値がTMAX以下であれば(ステップS83が「NO」)、この加算値を規定時間Tに置き換える(ステップS85)。一方、(T+td)の値がTMAXを超える場合(ステップS83が「YES」)には、オートカーソル移動機能をオフに設定する。
【0056】
オートカーソル移動後にオートカーソル移動利用操作が行われたと判定されている場合には、規定時間Tから調整時間tdを差し引いた値を最小規定時間TMINと比較する(ステップS86)。ここで、(T−td)の値が最小規定時間TMIN以上であれば(ステップS86が「NO」)、この減算値により規定時間Tを書き換える(ステップS88)。
一方、(T−td)の値がTMINを下回る場合(ステップS86が「YES」)には、規定時間Tを最小規定時間TMINに設定する(ステップS87)。
【0057】
上記の説明のとおり、この実施例では、オートカーソル移動が生じる都度、その移動後のユーザの操作をチェックし、修正操作が行われた場合には、規定時間Tに調整値tdを加えることにより、規定時間Tをより長い時間に変更する。一方、オートカーソル移動利用操作が行われた場合には、規定時間Tから調整値tdを減算することにより、規定時間Tを短縮する。
【0058】
よって、文字入力操作が遅いために、当初はオートカーソル移動に対して修正操作を余儀なくされていたユーザに対しては、そのユーザが同じ位置への入力文字を切り替える操作の時間間隔よりも長い時間を規定時間Tに設定して、修正操作を不要な状態にすることができる。また、文字入力に習熟しているユーザに対しては、規定時間Tを短縮することにより、オートカーソル移動が生じるまでの待ち時間の煩わしさをなくし、文字入力の効率を向上することができる。
【0059】
また、この実施例では、調整処理が開始された当初は、調整時間tdを比較的長い値に設定し、カーソルの移動回数Nが上限値NMAXに近づくにつれて、調整時間tdが短くなるように設定するので、最初は規定時間Tを比較的大きく調整してユーザの操作速度に適した長さに近づけた後に、ユーザにとってより適切な長さの規定時間を設定するための微調整を行うことが可能になる。
【0060】
また、この実施例では、規定時間Tが最大規定時間TMAXを超えた場合には、オートカーソル移動機能をオフに設定するので、文字入力の速度が極端に遅いためにオートカーソル移動を対応させるのが困難なユーザに対しては、オートカーソル移動機能が働かないようにすることができる。文字入力の速度が遅いユーザは、一般に、携帯電話の設定操作にも不慣れであるが、上記の処理によれば、オートカーソル移動機能のオン/オフの設定を行う負担を強いることがなく、利便性を向上することができる。
【0061】
また、ユーザの文字入力操作が早い場合でも、規定時間Tを短縮する範囲は最小規定時間TMINまでに留められるので、ユーザが変換候補を確認するために文字入力の速度を少し落とした場合などに、意図しないカーソルの移動が生じるのを防ぐことができ、文字入力作業を安定して行うことが可能になる。
【0062】
なお、上記の実施例は、仮名文字の入力を受け付ける際のオートカーソル移動の規定時間を調整するものであるが、これに限らず、アルファベットなど、他の文字種による文字を入力する場合にも、同様の調整処理を行うことが可能である。また、入力する文字種毎に個別の規定時間を設定し、入力対象の文字種の切り替えに応じて調整対象の規定時間を切り替えるようにしてもよい。
【0063】
また、上記の実施例では、オートカーソル移動の回数が設定値NMAXに達するまでは規定時間の調整処理を行い、その後は調整処理を行わずに規定時間を固定するようにしているが、その後も、操作判定部107による判定処理を続けて、修正操作やオートカーソル移動利用操作の頻度をチェックし、いずれかの頻度が所定値を超えた場合には規定時間の調整処理を再度実行してもよい。このようにすれば、最初の調整処理が不十分であった場合にも、規定時間をより適切な値に調整することができる。また、ユーザのスキルが向上して、当初より早く文字入力を行うことができるようになった場合にも、これに合わせて規定時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 携帯電話
2 表示部
3 操作部
10 制御回路
11 CPU
12 主メモリ
31 文字キー
100 文字入力システム
101 文字入力処理部
105 カーソル制御部
106 オートカーソル移動調整部
107 操作判定部
108 規定時間調整処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の文字が割り当てられた文字キーを複数有する操作部と、前記文字キーの操作により入力された文字を表示するための表示部とが接続され、同一の文字キーが連続して操作される間は前記表示部におけるカーソルの位置を維持して操作されたキーに割り当てられている文字を順に切り替えて前記カーソルの位置に設定し、前回とは異なる文字キーが操作されたことに応じてカーソルを移動させて、移動後のカーソルの位置に前記操作された文字キーに割り当てられている文字を設定する文字入力受付手段と、文字キーの操作からあらかじめ定めた規定時間が経過しても次の操作が行われなかったとき、カーソルを次の入力位置に自動で移動させるオートカーソル移動処理を実行するカーソル制御手段として動作するコンピュータに導入されるプログラムであって、
前記カーソル制御手段によるオートカーソル移動処理の実行回数があらかじめ定めた設定値に達するまで、オートカーソル移動処理が行われる都度、カーソルの移動後に前記操作部に対して実行された操作の内容を判定する第1ステップと、この判定の結果に基づき規定時間を調整する第2ステップとを、前記制御部に実行させ、
前記第2ステップでは、前記第1ステップにおいて、オートカーソル移動処理によるカーソルの移動を取り消す修正操作が行われたと判定されたときは、前記規定時間を現在値より長くする処理を実行し、前記第1ステップにおいて、オートカーソル移動処理によるカーソルの移動を利用した文字入力操作が行われたと判定されたときは、前記規定時間を現在値より短くする処理を実行する、
ことを特徴とする、文字入力装置におけるカーソル移動制御用のプログラム。
【請求項2】
請求項1に記載されたプログラムにおいて、
前記第1ステップでオートカーソル移動処理によるカーソルの移動を利用した文字入力操作が行われたと判定された場合の第2ステップでは、前記規定時間を現在値より短くする処理を行った場合の処理後の規定時間があらかじめ定めた下限値を下回るか否かを判定し、下回ると判定したときは規定時間を前記下限値に設定する、文字入力装置におけるカーソル移動制御用のプログラム。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたプログラムにおいて、
前記カーソル制御手段によるオートカーソル移動処理の実行回数が前記設定値に達するより前に、前記規定時間がある一定の値を超えるとき、前記第1ステップおよび第2ステップの実行を中止して、前記カーソル制御手段の機能を無効にするステップを、前記制御部に実行させる、文字入力装置におけるカーソル移動制御用のプログラム。
【請求項4】
複数の文字が割り当てられた文字キーを複数有する操作部と、前記文字キーの操作により入力された文字を表示するための表示部と、同一の文字キーが連続して操作される間は前記表示部におけるカーソルの位置を維持して操作されたキーに割り当てられている文字を順に切り替えて前記カーソルの位置に設定し、前回とは異なる文字キーが操作されたことに応じてカーソルを移動させて、移動後のカーソルの位置に前記操作された文字キーに割り当てられている文字を設定する入力操作受付手段、および文字キーの操作からあらかじめ定めた規定時間が経過しても次の操作が行われなかったとき、カーソルを次の入力位置に自動で移動させるオートカーソル移動処理を実行するカーソル制御手段として機能する制御部とを具備する文字入力装置において、
前記制御部は、前記カーソル制御手段によるオートカーソル移動処理の実行回数があらかじめ定めた設定値に達するまで、オートカーソル移動処理が行われる都度、カーソルの移動後に前記操作部に対して実行された操作の内容を判定して、その判定結果に基づいて前記規定時間を調整する調整手段をさらに具備し、
前記調整手段は、オートカーソル移動処理によるカーソルの移動を取り消す修正操作が行われたと判定した場合には、前記規定時間を現在値より長くする処理を実行し、前記オートカーソル移動処理によるカーソルの移動を利用した文字入力操作が行われたと判定した場合には、前記規定時間を現在値より短くする処理を実行する、
ことを特徴とする文字入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−154485(P2011−154485A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14740(P2010−14740)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】