説明

文字読取装置、文字読取方法、帳票

【課題】印刷ばらつきによらず、枠などの文字読取に不必要な印刷対象を適切に読取消去可能な文字読取装置および文字読取方法、ならびに帳票を提供すること。
【解決手段】帳票の特定フィールドの位置を示す情報を保持する情報保持部と、帳票の多階調画像情報を保持する画像保持部と、特定フィールドの位置の情報で多階調画像情報の特定フィールドに相当する領域を抽出する抽出部と、抽出された領域を画素ごとに解析してその多階調レベルを調べ、その多階調レベルの集まりを単一のまとまりとするようにしきい値を設定するしきい値設定部と、そのしきい値により多階調画像情報を2値化する2値化部と、2値化された画像情報により文字認識する文字認識部とを具備する。帳票は、ドロップアウトすべき印刷であって文字または記号の記入の位置案内のための印刷の部分と、ドロップアウトすべき印刷と同じ色みに相当させて印刷された参照印刷を含む部分とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的に画像情報を捉えこれをパターン認識することにより文字読取を行う文字読取装置および文字読取方法、ならびにそのような装置および方法に適合的に使用可能な帳票に係り、特に、枠などの文字読取に不必要な印刷対象(ドロップアウト対象)の効果的な読取消去に適する文字読取装置および文字読取方法、ならびにそのような装置および方法で使用可能な帳票に関する。
【背景技術】
【0002】
ドロップアウト対象を読取消去するには、例えば、色みが与えられて印刷されたドロップアウト対象を有する帳票を用い、その色みと同色系の光源(例えば有色の蛍光灯)を照明に用いて帳票に照射しセンサで光学像を得る方法が採られる。その光源波長域では、ドロップアウト対象領域と背景(ほぼ白)とで反射率がほぼ同様に高く、ドロップアウト対象は背景中に消去される。これにより、そのほかの文字などのみを光学読取できる。センサがカラー読取可能なセンサである場合には、照明光源を白色としたままで同様な原理により、色みが与えられたドロップアウト対象を読取消去することができる。
【0003】
実際には、ドロップアウト対象領域と背景とで、特定の波長域での反射率には少し違いがある。したがって、あるしきい値を設け、多階調として捉えた各画素について、このしきい値より大きな反射率に相当する画素は背景として扱い、小さな反射率に相当する画素は文字を構成する画素として扱う2値化を行う。なお、色みのある対象をドロップアウトする目的とは異なるが、色みのある対象を捉えてこれを2値化する従来技術には例えば下記特許文献1に記載のものがある。
【特許文献1】特開2001−351068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記で、ドロップアウトを目的として2値化を行うためのしきい値は、従来の文字読取装置では固定的なレベルとされている。したがって、印刷のばらつきによりドロップアウト対象の濃さや色調が変化した場合に適切に対応できないときがある。すなわち、ドロップアウト対象でありながらしきい値の背景側ではなく文字側と同じ2値化がなされて文字認識するときのノイズになってしまう不都合である。印刷のばらつきには、種類の異なる帳票、同じ種類であるが製造(印刷)ロットの異なる帳票、同一帳票内での各場所などによるばらつきがあり得る。
【0005】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたもので、光学的に画像情報を捉えこれをパターン認識することにより文字読取を行う文字読取装置および文字読取方法、ならびにそのような装置および方法に適合的に使用可能な帳票において、印刷ばらつきによらず、枠などの文字読取に不必要な印刷対象(ドロップアウト対象)を適切に読取消去可能な文字読取装置および文字読取方法、ならびにそのような装置および方法で使用可能な帳票を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る文字読取装置は、 帳票の特定フィールドの位置を示す情報を保持する情報保持部と、前記帳票の多階調画像情報を保持するための画像保持部と、前記特定フィールドの位置を示す情報を用いて前記多階調画像情報の前記特定フィールドに相当する領域を抽出する抽出部と、前記抽出された領域を画素ごとに解析してその多階調レベルを調べ、この調べられた多階調レベルの集まりを単一のまとまりとするようにしきい値を設定するしきい値設定部と、前記設定されたしきい値により前記保持された多階調画像情報を2値化する2値化部と、前記2値化された画像情報により文字認識する文字認識部とを具備することを特徴とする。
【0007】
すなわち、この文字読取装置では、帳票の特定フィールド(ドロップアウトさせるべき色の印刷がされている)を利用して、少なくもと帳票ごとに多階調画像情報を2値化するときのしきい値を設定する。そのしきい値は、その特定フィールドに相当する領域における各画素の多階調レベルの集まりを単一のまとまりとするように設定される。「単一のまとまり」はつまり2値化におけるいずれかの側に相当し、そのしきい値によれば少なくとも帳票に対応した適切な2値化が可能なことを意味する。そこで、この設定されたしきい値により多階調画像情報を2値化しその結果の2値画像により文字認識を行う。したがって、枠などの文字読取に不必要な印刷対象(ドロップアウト対象)を適切に読取消去可能な文字読取装置となる。
【0008】
また、本発明に係る文字読取方法は、帳票の特定フィールドの位置を示す情報を情報保持部に保持するステップと、前記帳票の多階調画像情報を画像保持部に保持するステップと、前記特定フィールドの位置を示す情報を用いて前記多階調画像情報の前記特定フィールドに相当する領域を抽出するステップと、前記抽出された領域を画素ごとに解析してその多階調レベルを調べ、この調べられた多階調レベルの集まりを単一のまとまりとするようにしきい値を設定するステップと、前記設定されたしきい値により前記保持された多階調画像情報を2値化するステップと、前記2値化された画像情報により文字認識するステップとを具備することを特徴とする。この文字読取方法によれば、上記の文字読取装置と同様な作用によりドロップアウト対象を適切に読取消去可能である。
【0009】
また、本発明に係る帳票は、ドロップアウトすべき印刷であって文字または記号の記入の位置案内のための前記印刷の部分と、前記ドロップアウトすべき印刷と同じ色みに相当させて印刷された参照印刷を含む部分とを具備することを特徴とする。この帳票は、上記の文字読取装置または文字読取方法に適合的に使用可能な帳票である。参照印刷を含む部分は、特定フィールドに相当する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光学的に画像情報を捉えこれをパターン認識することにより文字読取を行う文字読取装置および文字読取方法、ならびにそのような装置および方法に適合的に使用可能な帳票において、印刷ばらつきによらず、ドロップアウト対象を適切に読取消去可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施態様として、前記保持された情報と対応付けられて前記帳票の別のフィールドを指し示す情報を保持する第2の情報保持部をさらに具備し、前記文字認識部が、前記第2の情報保持部に保持された情報が指し示す前記別のフィールドについて文字認識を行う、としてもよい。このような対応付けにより、文字認識すべきフィールドが明確になる。
【0012】
ここで、前記情報保持部と前記第2の情報保持部との前記対応付けを組にして、前記情報保持部と前記第2の情報保持部とそれぞれ複数具備するようにしてもよい。これによれば、例えば同一帳票内での上下などの印刷ばらつきにも対応してドロップアウト対象を適切に読取消去可能である。
【0013】
また、ここで、前記情報保持部と前記第2の情報保持部との前記対応付けにさらに対応付けられて帳票のID情報を保持する第3の情報保持部をさらに具備するようにしてもよい。これによれば、帳票のIDが文字読取装置として取得されていれば、それに対応して適切にドロップアウト対象を読取消去可能である。すなわち、IDを入力または帳票の読取で認識・取得することで、その帳票に応じたドロップアウト読取が可能である。
【0014】
また、実施態様として、前記しきい値設定部が、前記しきい値を設定するのに、前記調べられた多階調レベルの集まりをあるマージンをもって単一のまとまりとするように前記しきい値を設定する、としてもよい。あるマージンを持たせた設定により、帳票内で、さらに微視的に印刷ばらつきがある場合にもドロップアウト対象を適切に読取消去可能である。
【0015】
また、実施態様として、前記帳票を非白色で照明可能な光源と、前記照明された帳票からの反射光を光電変換し多階調画像信号を生成するセンサとをさらに具備するようにしてもよい。この構成は、光源に色みを設けることによりドロップアウト対象の読取消去をするものである。この構成以外に、光源を白色としセンサをカラー読取り可能なものする構成も適用可能である。
【0016】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る文字読取装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、この文字読取装置は、光学読取部11、画像保持部12、2値化部13、文字認識部14、操作部15、情報保持部(第2の情報保持部、第3の情報保持部:以下この括弧内の記述は省略する)16、抽出部17、しきい値設定部18を有する。光学読取部11に帳票21が載置されることで文字読取のための準備がされるようになっている。文字読取部11を除く部分は、全体として、例えば、汎用の情報処理装置(パーソナルコンピュータ)と、この情報処理装置上で動作するOS(operating system)およびアプリケーションプログラムとで構成することができる。
【0017】
光学読取部11は、例えば、帳票21を非白色で照明可能な光源と、この照明による帳票21からの反射光を光電変換して、電気信号として多階調信号を出力するリニア(1次元)センサと、リニアセンサによる帳票21上の読取ラインを機械的に移動させる副走査駆動系とを有する。リニアセンサの出力が副走査方向に連続すると2次元の多階調画像信号となる。得られた多階調画像信号は画像保持部12に保持される。光源の非白色は、具体的には、例えば、赤色、青色、緑色、黄色、シアン、マゼンタなどである。これらの非白色と同系統の帳票21上の印刷色がドロップアウトさせる対象である。多階調信号は、例えば256階調(8ビット)の信号である。光学読取部11の動作制御は操作部15によりなされる。
【0018】
画像保持部12は、光学読取部11から出力される多階調画像信号を保持するものである。記憶可能な容量は、帳票21全体である場合のほか、帳票21の一部である場合もあり得る。2値化部13は、画像保持部12に保持された多階調画像信号をあるしきい値により2値化するものである。この2値化のときにドロップアウト対象は読取消去される。2値化のしきい値はしきい値設定部18から与えられる。2値化部13により2値化された画像信号は文字認識部14に送られる。文字認識部14は、2値の2次元パターンを文字認識するものである。認識結果は、例えば、所定の電子ファイルとして保持される。
【0019】
操作部15は、例えば、キーボードやマウスなどの入力デバイスと、この入力を解釈して動作するソフトウエアおよびハードウエアとからなる。特に、光学読取部11の動作を制御し、かつ、情報保持部16に必要な情報を送る。
【0020】
情報保持部16は、帳票21の特定フィールドを指し示す情報を保持する。ここで「特定フィールド」は、帳票21のドロップアウトすべき印刷と同じ色みに相当させて印刷された参照印刷を含む部分であり、後述するが、帳票21に最低1箇所ある。情報保持部16は、また、「特定フィールド」の情報に対応付けられて帳票21の別のフィールドを指し示す情報を保持する。ここで「別のフィールド」は、文字認識すべきフィールドである。文字認識すべきフィールドには、通常、ドロップアウトすべき、文字または記号の記入の位置案内のための印刷の部分がある。情報保持部16は、さらに、「特定フィールド」と「別のフィールド」との対応付けにさらに対応付けられた帳票21のID情報を保持する記憶領域を有するようにしてもよい。
【0021】
情報保持部16のこれらの保持情報は、操作部15からの入力により与えられる。帳票21のID情報との対応付けにより特定フィールドおよび別のフィールドの情報があらかじめ保持されている場合には、操作部15からIDを入力・指定するだけで必要な情報の入力を完了することができる。いずれの場合も、特定フィールドを指し示す情報は抽出部17に送られ、これと対応する別のフィールドを指し示す情報は文字認識部14に送られる。
【0022】
抽出部17は、画像保持部12に保持された多階調画像信号について、特定フィールドを指し示す情報に相当する領域の抽出を行う。抽出された領域の多階調画像信号はしきい値設定部18に送られる。しきい値設定部18は、抽出された領域を画素ごとに解析してその多階調レベルを調べ、それらの多階調レベルが単一のまとまりとなるように(より具体的には、背景領域としてのまとまりとなるように)しきい値を設定する。設定されたしきい値は前述の2値化部13に供給される。
【0023】
以上説明のように、この文字読取装置では、2値化部13における2値化しきい値が帳票21の「特定フィールド」により可変される構成になっている。換言すると、種類の異なる帳票、同じ種類であるが製造(印刷)ロットの異なる帳票、同一帳票内での各場所などによる印刷ばらつきがあっても、適応的にドロップアウト対象を適切に読取消去できる構成である。
【0024】
次に、帳票21の構成例について図2を参照して説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る帳票の構成を示す平面図である。この帳票21上には、ドロップアウト対象枠21a、21bと、参照印刷部21x、21yとがある。ドロップアウト対象枠21a、21bは、それぞれ上記説明の「別のフィールド」に含まれている、文字または記号の記入の位置案内のための印刷の部分(図2で両方向ハッチングで示す部分)である。参照印刷部21x、21yは、それぞれ上記説明の「特定フィールド」であり、すなわち、帳票21のドロップアウトすべき印刷と同じ色みに相当させて印刷された参照印刷(図2で両方向ハッチングで示す)を含む部分である。
【0025】
「特定フィールド」と「別のフィールド」との対応付けとして、ここでは、参照印刷部21xとドロップアウト対象枠21aとが対応付けられており、参照印刷部21yとドロップアウト対象枠21bとが対応付けられているとする。すなわちこの帳票21では参照印刷部が2箇所ある場合を示している。このように帳票21上部下部2箇所の参照印刷部21x、21yを有することにより、同一帳票の上下部で印刷ばらつきがある場合であっても適切にドロップアウト対象枠21a、21bを読取消去できる。
【0026】
参照印刷部21x、21yは、上記のように、ドロップアウトすべき印刷と同じ色みに相当させて印刷された参照印刷を含む部分であればよく、図示するような縦横の交差模様に限る必要はない。要は、ドロップアウトすべき印刷と同じ色みを有しており、それ以外には背景色を除き別の色がない領域であればよい。
【0027】
この意味でドロップアウト対象枠21a、21bのごく一部のみの領域を「特定フィールド」として情報保持部16に保持させるようにすることも可能である。ただし、ドロップアウト対象枠21a、21bは、そのどの領域も文字・記号が記入される領域に近いので、文字記号色が「特定フィールド」に含まれることのないように注意が必要である。この注意が必要であることを除けば、この方法は、図示するような参照印刷部21x、21yを特別に設ける必要がなくなり、帳票21としての構成は簡単化される。
【0028】
次に、図1に示した文字読取装置の動作を図3に示す流れ図をも参照して説明する。図3は、図1に示した文字読取装置の動作フローを示す流れ図である。
【0029】
まず、帳票モデル作成入力を操作部15で受け付け、受け付けられた入力による情報を情報保持部16に保持する(ステップ31)。帳票モデル作成とは、例えば、帳票21上の座標の指定・入力による、特定フィールドを指し示す情報、および特定フィールドに対応付けられた別のフィールドを指し示す情報などの入力である。この段階は、すでに説明したように、多数の帳票モデルをその帳票のID情報とともにかつ対応付けて情報保持部16にあらかじめ保持させておき、今から読み取りを行う帳票のID指定・入力としてもよい。
【0030】
次に、操作部15からの操作により光学読取部11を動作させて帳票21の光学読取を行い、得られた多階調画像情報を画像保持部12に保持させる(ステップ32)。そして、その多階調画像情報の特定フィールドに相当の領域を、抽出部17で抽出する(ステップ33)。さらに、しきい値設定部18において、抽出された領域の画素について多階調レベルを調べ、しきい値を設定する(ステップ34)。この抽出、設定は、すでに説明したように、同一帳票に対して複数の箇所についてなされる場合もある(ここでの例は2箇所)。
【0031】
図4は、図1中に示したしきい値設定部18の動作を説明するための度数分布図である。しきい値設定部18における、抽出された領域の画素についての多階調レベル分布は、例えばこの図4に示すようになる。図4において、符号41は参照印刷部付近の画素の階調分布を示し、符号41aはこのうち参照印刷による分布であり、符号41bは残る背景による分布である。参照印刷による分布41aは、256階調で例えば150程度から200程度に分布し、背景による分布41bは、同じく256階調で例えば190程度から250程度に分布する。ただし、参照印刷による分布41aは印刷のばらつきにより変動する。
【0032】
しきい値は、図示するように、参照印刷による分布41aおよび背景による分布41bが単一のまとまりとして区分けされるように設定する。このとき、参照印刷部付近の画素の階調分布41に対してその下限にあるマージンをもってしきい値を設定とより好ましい。参照印刷部21x、21yとドロップアウト対象枠21a、21bとで微視的な印刷ばらつきがある場合も考えられるからである。
【0033】
しきい値設定部18でしきい値が設定されたら、次に、2値化部13において、このしきい値で画像保持部12に保持された多階調画像情報の対応フィールドを2値化する(ステップ35)。図5は、図1中に示した2値化部13の動作を説明するための度数分布図である。2値化部13における対応フィールド各画素の階調レベル分布は例えばこの図5に示すようになる。図5において、符号51は、ドロップアウト対象枠付近の画素の階調分布のうちドロップアウト対象枠印刷および背景による分布であり、符号51aはこのうちドロップアウト対象枠印刷による分布であり、符号51bは残る背景による分布である。これらに対して符号52は、ドロップアウト対象枠付近の画素の階調分布のうち記入された文字または記号による分布である。
【0034】
図5に示すようなしきい値で2値化がされると、ドロップアウト対象は背景と同様に扱われて読取消去される。ここで重要なことは、しきい値が、ドロップアウト対象枠印刷および背景による分布51を単一のまとまりとして区分けされるように設定されていることである。すなわち、分布51の下限側が、文字または記号による分布52側に区分けされることがない。これは、ここで用いられるしきい値が分布51に応じて適応的に設定されたものと結果的に言い得るからである。このような2値化は、すでに説明したように、参照印刷部が同一帳票内に複数ある場合には、別々に設定された複数のしきい値がその同一帳票の読取フィールド(=別のフィールド)それぞれに対して用いられる。
【0035】
2値化部13で2値化がされたら、次に、2値化された画像情報(白黒パターン)により文字認識を行い認識結果を出力する(ステップ36)。この文字認識では、ドロップアウト対象が背景と同じに扱われて文字認識におけるノイズとはならないので、誤認識や棄却となる頻度を効果的に減少させることができる。文字認識結果が得られたら、次の帳票についての処理に移行する(ステップ37のY)。次の帳票では、再び、特定フィールド抽出(ステップ33)、しきい値設定(ステップ34)、2値化(ステップ35)が順に行われるので、帳票ごとに印刷ばらつきがある場合であってもこれに対応してドロップアウト対象を適切に読取消去することができる。
【0036】
以上説明のように、本実施形態によれば、印刷ばらつきによらず、ドロップアウト対象を適切に読取消去可能である。印刷ばらつきは、種類の異なる帳票間や同じ種類であるが製造(印刷)ロットの異なる帳票間の場合ばかりでなく、同一帳票内での各場所における印刷ばらつきの場合にも対応できる。この結果、いずれの場合も文字認識率を向上させることができる。
【0037】
なお、以上述べた実施形態は種々の変形が考えられる。まず、光学読取部11が、リニアセンサがカラー読み取り可能なリニアセンサを用いた読取部である場合が考えられる。この場合は、光源照明を白色にして、カラー(例えばRGB3種)の多階調画像情報を画像保持部12に保持させる。そしてドロップアウトさせたい色みについての多階調画像情報を選択または作成し、この多階調画像情報をその後の処理(すなわち、抽出部17以降および2値化部13以降)に供するようにすればよい。
【0038】
また、上記の実施形態では、ドロップアウトさせたい色はある1色であるとして説明したが、2色以上の場合も考えられる。その場合、光学読取部11に2色以上の非白色で照明可能な光源を備えるようにし、かつ例えば、図3に示した流れ図において、ステップ32からステップ36をある1色について行い、ステップ37の判断を「別の色のドロップアウト対象あり?」に読み替えてステップ32に戻り、このステップ32からステップ36をその別の色について行うようにすればよい。この場合、当然、同一帳票内にドロップアウトさせたい色の印刷が別場所として2色以上ある。
【0039】
また、上記の実施形態では、帳票21のID情報の入力を操作部15から行う場合を説明したが、帳票21の所定位置にID情報を印刷しておき、この印刷されたID情報を光学読取部11を用いた光学読取で捉えて先に認識しておき、この認識されたID情報を情報保持部16に保持させるように構成してもよい。これによれば、手入力する手間が省略される。
【0040】
また、上記の実施形態では、光学読取部11に用いるセンサとしてリニアセンサの場合を説明したが、エリアセンサを用いる構成も考えられる。エリアセンサによれば、光学読取部11に副走査させるための駆動系が不要となり機械的な構成が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る文字読取装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の一実施形態に係る帳票の構成を示す平面図。
【図3】図1に示した文字読取装置の動作フローを示す流れ図。
【図4】図1中に示したしきい値設定部18の動作を説明するための度数分布図。
【図5】図1中に示した2値化部13の動作を説明するための度数分布図。
【符号の説明】
【0042】
11…光学読取部、12…画像保持部、13…2値化部、14…文字認識部、15…操作部、16…情報保持部(第2の情報保持部、第3の情報保持部)、17…抽出部、18…しきい値設定部、21…帳票、21a、21b…ドロップアウト対象枠、21x、21y…参照印刷部、41…参照印刷部付近の画素の階調分布、41a…参照印刷部付近の画素の階調分布のうち参照印刷による分布、41b…参照印刷部付近の画素の階調分布のうち背景による分布、51…ドロップアウト対象枠付近の画素の階調分布のうちドロップアウト対象枠印刷および背景による分布、51a…ドロップアウト対象枠付近の画素の階調分布のうちドロップアウト対象枠印刷による分布、51b…ドロップアウト対象枠付近の画素の階調分布のうち背景による分布、52…ドロップアウト対象枠付近の画素の階調分布のうち記入された文字または記号による分布。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帳票の特定フィールドの位置を示す情報を保持する情報保持部と、
前記帳票の多階調画像情報を保持するための画像保持部と、
前記特定フィールドの位置を示す情報を用いて前記多階調画像情報の前記特定フィールドに相当する領域を抽出する抽出部と、
前記抽出された領域を画素ごとに解析してその多階調レベルを調べ、この調べられた多階調レベルの集まりを単一のまとまりとするようにしきい値を設定するしきい値設定部と、
前記設定されたしきい値により前記保持された多階調画像情報を2値化する2値化部と、
前記2値化された画像情報により文字認識する文字認識部と
を具備することを特徴とする文字読取装置。
【請求項2】
前記保持された情報と対応付けられて前記帳票の別のフィールドを指し示す情報を保持する第2の情報保持部をさらに具備し、
前記文字認識部が、前記第2の情報保持部に保持された情報が指し示す前記別のフィールドについて文字認識を行うこと
を特徴とする請求項1記載の文字読取装置。
【請求項3】
前記情報保持部と前記第2の情報保持部との前記対応付けを組にして、前記情報保持部と前記第2の情報保持部とそれぞれ複数具備することを特徴とする請求項2記載の文字読取装置。
【請求項4】
前記しきい値設定部が、前記しきい値を設定するのに、前記調べられた多階調レベルの集まりをあるマージンをもって単一のまとまりとするように前記しきい値を設定することを特徴とする請求項1記載の文字読取装置。
【請求項5】
前記情報保持部と前記第2の情報保持部との前記対応付けにさらに対応付けられて帳票のID情報を保持する第3の情報保持部をさらに具備することを特徴とする請求項2記載の文字読取装置。
【請求項6】
前記帳票を非白色で照明可能な光源と、前記照明された帳票からの反射光を光電変換し多階調画像信号を生成するセンサとをさらに具備することを特徴とする請求項1記載の文字読取装置。
【請求項7】
帳票の特定フィールドの位置を示す情報を情報保持部に保持するステップと、
前記帳票の多階調画像情報を画像保持部に保持するステップと、
前記特定フィールドの位置を示す情報を用いて前記多階調画像情報の前記特定フィールドに相当する領域を抽出するステップと、
前記抽出された領域を画素ごとに解析してその多階調レベルを調べ、この調べられた多階調レベルの集まりを単一のまとまりとするようにしきい値を設定するステップと、
前記設定されたしきい値により前記保持された多階調画像情報を2値化するステップと、
前記2値化された画像情報により文字認識するステップと
を具備することを特徴とする文字読取方法。
【請求項8】
ドロップアウトすべき印刷であって文字または記号の記入の位置案内のための前記印刷の部分と、
前記ドロップアウトすべき印刷と同じ色みに相当させて印刷された参照印刷を含む部分と
を具備することを特徴とする帳票。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate