説明

文書をセキュア化する方法及び装置

文書をセキュア化するための方法及び装置を提供する。文書セキュア化の方法は、印刷における予期されない未知要素の結果として、印刷されたドットの少なくとも1つの幾何学的特性の予測不能な変動をドット毎に引き起こす、文書上にドットの分布を印刷する段階と、この印刷段階の前に、この分布のドットが、ドット間で変動する少なくとも1つの幾何学的特性を有し、かつ発生される変動の幾何学的振幅が、上述の予測不能な変動の大きさの程度を有するようなドットの分布を発生させる段階とを含む。実施形態においては、発生させる段階中に、上述のドット分布において、この分布の少なくとも半分のドットは、ドット分布の4つの他のドットに対して横方向に並置されず、このドット分布のドットの少なくとも一部の少なくとも1つの寸法は、上述の予測不能な変動の絶対値に対する平均値と同じ大きさの程度のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書をセキュア化するための方法及び装置に関する。本発明は、特に、文書を一意的な方法で識別し、それを認証し、すなわち、その文書に関する情報、例えば、文書に関連する知的所有権の所有者及び/又は文書の製造サイトを識別する情報をそれがコピーしている及び/又は文書上に保持していることを検出することができることを考えている。文書という用語は、全てのデータ担体、例えば、ハードコピー文書、設計図、パッケージ、製造物、鋳造物、及びカード、例えば、身分証明カード又はキャッシュカードを含む。
【背景技術】
【0002】
異なる種類の文書印刷は、2つの群に区分され、一方は、各文書に顕著に同じ印刷マークが付与される「静的」として公知のもの、例えば、「オフセット」アナログ印刷工程であり、第2のものは、各文書に情報の個別化項目が付与される「連続」デジタルとして公知のもの、例えば、個別化プログラムによって制御されるインクジェット印刷工程、及び通し番号を印刷するための工程である。
【0003】
箱及びパッケージにおいて最も一般的に用いられる印刷法のうちの1つであるオフセット印刷では、文書内に印刷される各色に対して版が生成され、この版の内容が、何十万、更には何百万回も印刷される。この場合には、印刷版上に挿入された同じ内容が、全ての印刷において全ての文書上に印刷される。フレキソ印刷、活版印刷、及びグラビア印刷は、静的印刷法と呼ぶものの他の例である。静的印刷では、各回に同じマークが印刷されるので、文書は、理論的には個々に識別することができない。更に、印刷が静的なものであってアナログ工程を利用する時には、印刷される文書の正確な数を制御することはより困難である。従って、権利所有者が認可した量よりも多くの量の文書を印刷することによる偽造の危険性は大きい。多くの場合に版の使用限度よりも少ない製造注文によって指定された印刷数が遵守されることを如何にして保証することができるであろうか?全ての未使用印刷物(連続印刷物の始まり又は終わり、欠陥品、注文取り消し等)、並びに文書を再構成することを可能にする全ての版、フィルム、及び他の対象物が偽造者の手に決して陥らないことを如何にして保証することができるであろうか?
【0004】
各文書を正確かつ絶対的に識別することを可能にすることによる連続印刷は、静的印刷よりも一般的に好ましい。実際には、連続印刷では各識別子が一度だけ印刷され、以前に読み取られた識別子に同一の識別子であるダブルを読み取ることは、警報をトリガすることができることを意味する。
【0005】
一般的な方法では、識別子及び/又はコピー防止マークを保護するためにセキュアにされるいくつかの点があり、これらは、ソースファイル、場合によってはソースファイルを収容するCAPファイル、並びにオフセット印刷の場合の版及びあらゆるフィルムである。
【0006】
既に静的に印刷された項目上に、第2段階で、復号化されるか又は好ましくは暗号化された固有コード又は通し番号を印刷することにより、コピー防止マークの連続印刷と同等なものを実施することが可能である。この連続印刷は、例えば、2次元バーコードの形態を取ることができる。表向きには、この手順は、各文書を個々に追跡し、それと同時にコピーを検出する確実な方法を保持することを可能にする。連続印刷が付与されていない盗難文書は、有効な識別子を持たないであろう。
【0007】
しかし、この手法は、全ての問題を解決するわけではない。実際には、犯罪者は、プリンタであれば行ったであろうようには偽造文書を識別することはできないが、一般的に限られた印刷品質しか提供しない連続プリンタによって印刷される固有コードは、コピーに対して保護されない。
【0008】
真正として識別される文書を所有する偽造者は、従って、1つ又はそれよりも多くの有効な固有コードをコピーし、これらを真正として識別される文書上に再コピーすることができる。
【0009】
従来技術は、各文書を一意的に特徴付けて識別するために測定可能な物理特性を利用するいくつかの方法を含む。一般的に、選択される測定可能な物理特性は、ランダム性のものであり、既存技術によると、少なくとも費用効果的な方法ではコピーすることができないものである。これらの方法は、「有効」であると考えられる全ての文書を制御することを可能にし、固有の集合を含む物理特性が記憶されている文書のみが有効であると見なされる。
【0010】
例えば、米国特許第4、423、415号は、一枚の紙をその局所透明特性に従って識別することを可能にする方法を説明している。いくつかの他の手順は、文書の固有かつ転写不能の署名を発生させるために材料の固有かつ再生不能の物理的属性を入力することに基づいている。例えば、特許WO 2006/016114及びUS2006/104103は、対象物の正確な区域に印加されるレーザ光線によって生じた回折パターンの測定に基づいている。
【0011】
これらの特許公報は、上述の問題に対する興味ある解法を提供するが、材料から署名を抽出することに基づく手法は、いくつかの理由から用いるのが困難である。最初に、文書が製作される時に署名を記録することは、高コストの光学読取器を必要とし、かつ生産ライン内に統合することが困難である。更に、これらの後者は、非常に高い作業速度を有する場合がある。一般的に、これらの技術は、小規模生産にしか適用可能ではないように思われる。更に、現場において検査のために用いられる読取器は、いくつかの用途ではコストも高すぎる。現場での検査はまた、多くの場合に迅速に目立つことなく行う必要があるのに対して、読取器は嵩張り、用いるのが容易ではない。最後に、全ての内容に対して固有の署名を抽出することができるわけではなく、特に、少なくともレーザ回折の測定に対しては、ガラス及び反射性が高すぎる対象物は除外される。
【0012】
本発明は、これらの不都合な点、特に文書の素材の固有の物理的属性に基づいて公知の識別法を適用することの難しさ及び制限に対処することを目的とする。
【0013】
下記で「DAC」とも呼ぶデジタル認証コードは、媒体上に、例えば、印刷又は媒体の局所修正によってマーク付けされると、取り込み画像から一般的に自動的に測定可能なこれらの特性のうちのいくつかが、マーク付けされた画像がコピーされた場合に修正されるように設計されたデジタル画像である。一般的に、デジタル認証コードは、コピー段階中にコピーに敏感な1つ又はそれよりも多くの信号であり、コピーに敏感な測定可能の特性を有する画素が有する信号の劣化に基づいている。ある一定の種類のデジタル認証コードは、それを含む文書を識別又は追跡することを可能にする情報を含むことができる。
【0014】
いくつかの種類のデジタル認証コードが存在する。下記で「CDP」とも呼ぶコピー検出パターンは、一般的に、擬似ランダム性の高密度画像である。これらのパターンの読取原理は、オリジナルコピー検出パターンと、例えば、画像センサによって取り込まれたコピー検出パターンとの間の相似率(又は相違率)を測定するための画像比較に基づいており、この取り込み画像がコピーであった場合には、オリジナルであった場合よりも低い相似率を有することになる。
【0015】
2次元バーコードと同様に、下記で「SIM」とも呼ぶセキュア化された情報マトリックスは、大量の情報をロバストな方式で保持するように設計された画像である。しかし、2次元バーコードとは異なり、セキュア化された情報マトリックスは、コピーに敏感である。読取段階では、マトリックスから抽出される符号化されたメッセージに対して、オリジナルよりもコピーにおいて高いエラー・レートが測定され、それによってこれらのコピーをオリジナル印刷物から区別することが可能になる。
【0016】
特別な方式、例えば、不可視インクでマーク付けされない限り、コピー検出パターン及びセキュア化された情報マトリックスは可視である。更に、コピー検出パターン及びセキュア化された情報マトリックスを不可視方式でマーク付けすることは、コスト又は製造制約条件に起因して常に可能なわけではない。コピー防止マークの可視性は、美観という観点から、更にある一定の場合には偽造者がこれらのマークの存在が既知であることによるセキュリティの観点から不利である可能性がある。
【0017】
また、自然に不可視であるか、又は少なくとも見るのが困難であるデジタル認証コードも存在する。
【0018】
しマーク」という名前の下で公知)は、印刷画像が、例えば、写真コピーによって再生される時に損傷するように設計される。オリジナル印刷物においてそのコピーにおけるものよりも低いデジタル透かしマークの劣化度の測定値は、これらのコピーを検出することを可能にする。
【0019】
コピーに対して異なる感度を有するいくつかの透かしマークとの組合せは、それぞれのエネルギレベルを比較することによってコピーを検出することを可能にする。しかし、文書の生成手順内にデジタル透かしマークを一体化することはより複雑であり、それによってデジタル透かしマークの使用は限定され、実際に、コピー検出パターン及びセキュア化された情報マトリックスとは異なり、デジタル透かしマークは、画像に単純に「追加」することができず、事実、デジタル透かしマークは、追加されるメッセージとオリジナル画像との複雑な関数であり、デジタル透かしマークのエネルギは、オリジナル画像の遮蔽性に従って局所的に調節される。デジタル透かしマークを文書又は製品内に一体化することは、ソース画像をマーク付け/印刷中央演算処理装置に送ることを必要とし、この中央演算処理装置は、デジタル透かしマークを一体化し、マーク付けされた画像を送り返す。この手順は、多くの場合に大きいファイルサイズ及び関連の画像セキュリティ問題の理由からそれ程実際的ではない。それとは対照的に、コピー検出パターン又はセキュア化された情報マトリックスをマーク付け/印刷する場合は、ソース画像をマーク付け/印刷中央演算処理装置に送る必要はなく、逆に、一般的に、小さいサイズ、例えば、数キロバイトのコピー検出パターン画像又はセキュア化された情報マトリックス画像の方が画像ファイルの保有者に送られ、文書又は製品上に付加されることになる。更に、デジタル透かしマークの読取を安定化するのは非常に困難であり、それによって文書のオリジナルからのコピーの判断がよりランダムになる。実際に、エラーの危険性は、一般的に、コピー検出パターン及びセキュア化された情報マトリックスよりもデジタル透かしマークの場合に顕著に高くなる。
【0020】
また、特許WO 2006/087351及びCH694、233に説明されているもののような下記に「AMSM」とも呼ぶ非対称変調空間マーク付け工程もある。デジタル透かしマークと全く同様に、AMSMは、文書を不可視に又は少なくとも目立つことなくマーク付けすることを可能にする。一般的に、AMSMは、マーク付けされる文書に付帯的に追加されるドットパターンである。例えば、オフセット印刷工程の場合には、AMSMのみを有する付加的な版が文書上に加刷される。このようにして、AMSMは、デジタル透かしマークよりも容易に文書生成工程内に統合され、ソース画像は、マーク付け/印刷中央演算処理装置によって必要とされない。しかし、コピー検出パターン及びセキュア化された情報マトリックスとは異なり、一般的に、AMSMは、付加的な版及びインクを必要とし、それによってこれらの使用がより複雑でコストの高いものになる。更に、デジタル透かしマークと同様に、AMSM検出法は不正確である可能性がある。事実、マーク付け/印刷は、マーク付け画像の正確な位置決めに関してアナログの不確実性を有することは公知である。印刷された基本ドットの寸法レベル、更にそれよりも低いレベルでのこの不確実性は、マーク付けされた表面がかなりのサイズを有する場合は、コピーの検出において有意でないとは言えない効果を有する。しかし、自己相関性及び相互相関性に基づくAMSM検出法は、位置のこの不確実性を考慮に入れることができない。それによってマークを読み取る上での不正確性が増大し、その結果、オリジナルとコピーとの間で区別を付ける機能が低下する。
【0021】
取り込みがフラットベッド・スキャナによって行われ、大きい取り込み表面及び十分な取り込み解像度が可能である場合には、AMSMは、単純なコピー、例えば、写真コピー、更には高精度又は高解像度スキャナによる取り込みに続く再印刷によって作成された高品質写真コピーを検出することを可能にする。それにも関わらず、執拗な偽造者に直面すると、AMSMは、コピーに対して非力な保護しか提供しない。実際に、高解像度取り込みの後、偽造者は、全ての検出ドットをその初期形態に復元するために、「Photoshop(登録商標)」のような手動画像処理ツールを場合によっては自動画像処理ツール(「Matlab」(登録商標)のような)との組合せで用いることができる。高品質コピーの場合には、ドットは、オリジナル・マークにおけるものよりもコピー・マークにおいて弱くはなくなり、コピーは、コピーとして検出されない高い可能性を有する。従って、執拗な偽造者は、一般的に、AMSM内に含まれる情報の等しいコピーを作成することができ、これは、この方法が、長期的には高いセキュリティを有すると考えることができないことを意味する。
【0022】
最も一般的に用いられる印刷法(特にオフセット)では、AMSM(及び他のデジタル認証コード)は静的に印刷される。AMSM及びデジタル認証コードにおいて最も一般的に用いられる印刷の種類は静的のものであるから、各印刷物上のマーク及びそれに含まれるメッセージを変更することはできない。
【0023】
それにも関わらず、単一のソース画像からの各印刷物を一意的に特徴付け、かつ従って識別することができることが望ましいものとすることができる。同様に、文書を印刷するのに用いられた印刷版を識別し、これらの文書を追跡することができるようにすることが望ましいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第4、423、415号
【特許文献2】WO 2006/016114
【特許文献3】US2006/104103
【特許文献4】WO 2006/087351
【特許文献5】CH694、233
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】M.Kutter著「平行移動、回転、及びスケーリングに耐性を有する透かしマーク」、SPIE会報:マルチメディアシステム及び応用、第3528巻、423〜431頁、米国ボストン、1998年11月
【非特許文献2】E.R.Davies著「機械の視覚:理論、アルゴリズム、実用性」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、上述の不便さの全て又は一部に対処することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
この目的のために、第1の態様によると、本発明は、文書をセキュア化する方法を考えており、この方法は、
−印刷における予期されない未知要素の結果として、印刷されるドットの少なくとも1つの幾何学的特性の予測不能な変動をドット毎に引き起こす、文書上にドット分布を印刷する段階と、
−印刷段階の前に、この分布のドットが、ドット間で変動する少なくとも1つの幾何学的特性を有し、発生される変動の幾何学的振幅が、上述の予測不能な変動の大きさの程度を有するようなドット分布を発生させる段階とを含む。
【0028】
これらの段階の具備により、印刷欠陥を模擬する変動がデジタル画像のものとして発生される。従って、潜在的な偽造者は、印刷から生じる欠陥を生成された変動から区別することができない。従って、偽造者は、生成されたデジタル画像に等しいオリジナルを得るためにこれらの変動を補正することができない。
【0029】
特定の機能により、ドット分布を発生させる段階中には、発生される変動の幾何学的振幅は、ドットの寸法よりも小さい。
このようにして、本発明の主題である方法の有効性が高められる。
【0030】
特定の機能により、ドット分布を発生させる段階中に、用いられる印刷システムの予測不能な変動に従ってドット分布が発生される。ここでは、印刷に起因する変動をドット単位ベースでは予想することができないが、統計分析により、比較的安定したその平均的マグニチュードが既知であることが可能になることに注意されたい。
【0031】
特定の機能により、発生段階中には、ドット分布のドットは、上述の変動が、ドット分布において反復的ではない少なくとも1つの可変幾何学的特性を有する。
このようにして、予測不能な印刷変動により、どのドットが変更されたのかを決定する難度が高められる。
【0032】
特定の機能により、発生段階中には、ドット分布における分布の少なくとも半分のドットは、ドット分布の4つの他のドットに対して横方向に並置されない。
特定の機能により、ドット分布を発生させる段階中には、半分よりも多くのドットが、その分布のいかなる他のドットとも接触しない。
これらの段階の具備の各々により、並置ドット印刷物間の影響によって本発明の有効性が損なわれることが回避される。
【0033】
特定の機能により、発生される変動は、ある一定の位置に対する少なくとも1つの方向におけるドットの位置の変動に対応し、ドットの中心は、この方向に対して垂直の平行線上に整列し、このドットの少なくとも1つの寸法だけその方向に分離される。
特定の機能により、発生される変動は、ドットの少なくとも1つの方向における平均寸法に対するそのドットのその方向における少なくとも1つの寸法の変動に対応する。
特定の機能により、発生される変動は、ドットの平均形状に対するそのドットの上述の方向における形状の変動に対応する。
特定の機能により、発生段階中に、ドット分布は、符号化された情報を表している。
従って、発生されたドット分布内にメッセージが挿入される。
【0034】
特定の機能により、上記に簡単に説明したように、本発明の主題である方法は、印刷されたドット分布の画像を取り込む段階、及び予測不能な印刷変動に従って印刷された分布の固有署名を決定する段階を含む。
これらの段階の具備により、印刷された各文書を識別することができる。
【0035】
特定の機能により、上記に簡単に説明したように、本発明の主題である方法は、予測不能な印刷変動を表すマグニチュードを決定する段階を含み、この段階は、マグニチュードの関数であるドット分布を発生させる。
【0036】
特定の機能により、上記に簡単に説明したように、本発明の主題である方法は、予測不能な印刷変動を表すマグニチュードに従ってコピーを検出する段階を含み、コピー検出段階は、この代表的なマグニチュードを所定の値に対して比較する段階、及び比較の結果に従って文書の真正性を決定する段階を含む。
【0037】
第2の態様によると、本発明は、文書をセキュア化するための装置を考えており、装置は、
−印刷が、印刷における予期されない未知要素の結果として、印刷されるドットの少なくとも1つの幾何学的特性の予測不能な変動をドット毎に引き起こす、文書上にドット分布を印刷するための手段と、
−この分布のドットが、ドット間で変動する少なくとも1つの幾何学的特性を有し、発生される変動の幾何学的振幅が、この予測不能な変動の大きさの程度を有するようにドット分布を発生させるようになった、印刷の前にこの分布を発生させるための手段と
を含むことを特徴とする。
【0038】
第3の態様によると、本発明は、文書上のドット分布を読み取るための方法を考えており、本方法は、
−ドット分布の画像を取り込む段階と、
−ドット分布のドットの少なくとも一部の少なくとも1つの幾何学的特性変動が、印刷されたドットの少なくとも1つの幾何学的特性のドット単位の予測不能な変動の絶対値の平均値と同じ大きさの程度を有し、この変動が、印刷における予期されない未知要素から生じる、この分布のドットの幾何学的変動を表す物理的マグニチュードを決定する段階と、
−物理的マグニチュードに従ってドット分布の真正性を決定する段階と
を含むことを特徴とする。
【0039】
第4の態様によると、本発明は、文書上のドット分布を読み取るための装置を考えており、装置は、
−ドット分布の画像を取り込むための手段と、
−ドット分布のドットの少なくとも一部の少なくとも1つの幾何学的特性変動が、印刷されたドットの少なくとも1つ幾何学的特性のドット単位の予測不能な変動の絶対値の平均値と同じ大きさの程度を有し、この変動が、印刷における予期されない未知要素から生じる、この分布のドットの幾何学的変動を表す物理的マグニチュードを決定するための手段と、
−物理的マグニチュードに従ってドット分布の真正性を決定するための手段と
を含むことを特徴とする。
【0040】
第5の態様によると、本発明は、コンピュータシステムにロードすることができ、かつ上記に簡単に説明したように本発明の主題である方法を利用することを可能にする命令を収容するプログラムを考えている。
【0041】
第6の態様によると、本発明は、コンピュータプログラム命令を保持する取外し可能又は不能のコンピュータ又はマイクロプロセッサによって読み取ることができ、かつ上記に簡単に説明したように本発明の主題である方法を利用することを可能にすることを特徴とするデータ担体を考えている。
【0042】
この装置、この読取方法、このコンピュータプログラム、及びこのデータ担体の特定の特性、利点、及び目的は、上記に簡単に説明したような本発明の主題であるセキュア化方法のものと同様であるから、ここでは、これらに対して再記しない。
【0043】
本発明の他の利点、目的、及び特性は、添付された図面への参照と併せて、いかなる意味においても限定的ではない一例として作成された以下に続く説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】デジタルマークの約20倍の拡大図である。
【図2】図1に例示しているマークの印刷後の拡大図である。
【図3】図2に例示している印刷マークの写真コピーの拡大図である。
【図4】図2に例示している印刷マークの高品質コピーの拡大図である。
【図5】可変特性がこの場合はドットの高さであるVCDPの拡大図である。
【図6】印刷された図5のVCDPの一部の200倍の拡大図である。
【図7】印刷の前に一定のドットサイズを有する単一のVCDPの2つの印刷物の拡大図である。
【図8】中心にVCDPを含むセキュア化された情報マトリックスの拡大図である。
【図9】VCDPによって囲まれたセキュア化された情報マトリックスの拡大図である。
【図10】近い4つのドットによって囲まれたドットから成る4つのコーナを有するVCDPの拡大図である。
【図11】4つの辺上にドットの線を有するVCDPの拡大図である。
【図12】グリッド形態にあるVCDPの一部の拡大図である。
【図13】図12に示しているVCDPの2次元フーリエ変換の絶対値を表す図である。
【図14】符号化情報を表すVCDPの詳細内容の拡大図である。
【図15】本発明の主題である装置の特定的な実施形態の概略図である。
【図16A】本発明の主題である方法の様々な態様の特定的な実施形態において利用される段階の流れ図である。
【図16B】本発明の主題である方法の様々な態様の特定的な実施形態において利用される段階の流れ図である。
【図17】本発明の主題である方法の様々な態様の特定的な実施形態において利用される段階の流れ図である。
【図18】本発明の主題である方法の様々な態様の特定的な実施形態において利用される段階の流れ図である。
【図19】本発明の主題である方法の様々な態様の特定的な実施形態において利用される段階の流れ図である。
【図20】本発明の主題である方法の様々な態様の特定的な実施形態において利用される段階の流れ図である。
【図21】高密度VCDPの部分拡大図である。
【図22】ドット寸法勾配VCDPの部分拡大図である。
【図23】本発明の主題である方法の特定的な実施形態において利用される段階の流れ図である。
【図24】本発明の主題である方法の特定的な実施形態において利用されるデジタル識別子パターンの拡大図である。
【図25】連続印刷のうちの第1の印刷において対象物の上に印刷された状態の図24のデジタル識別子パターンの拡大図である。
【図26】連続印刷のうちの第2の印刷において対象物の上に印刷された状態の図24のデジタル識別子パターンの拡大図である。
【図27】図25及び図26に表している印刷識別子パターンのうちの1つから取り込まれた画像の離散余弦変換を示す図である。
【図28A】本発明の主題である方法の特定的な実施形態において利用される段階の流れ図である。
【図28B】本発明の主題である方法の特定的な実施形態において利用される段階の流れ図である。
【図28C】本発明の主題である方法の特定的な実施形態において利用される段階の流れ図である。
【図29】本発明の主題である方法の特定的な実施形態において利用される識別子パターンの2つのグループに関するスコアの分布を表す図である。
【図30】印刷されるドット分布の図である。
【図31】図30に例示しているドット分布の印刷物の左手上の部分の印刷画像の拡大図である。
【図32】図30に例示しているドット分布に対するドット形状の相関性測定値の散布図である。
【図33】印刷に対して得られることになる最適なエラー・レートの決定中に得られるグラフである。
【図34】文書を印刷するのに用いられる版を決定する方法において利用される段階の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の様々な特定的な実施形態の詳細内容を提供する前に、本明細書に用いることになる定義を下記に提供する。
−「情報マトリックス」:これは、一般的に、固体表面上に添付された機械可読の物理的メッセージ表現である(印刷されるデザインのピクセル値を修正する透かしマーク又はデジタル透かしマークとは異なる)。情報マトリックスの定義は、例えば、2Dバーコード、1次元バーコード、及び「Dataglyphs」(データマーク付け)のような情報を表すための他の侵害性の低い手段を含む。
−「文書」:これは、いかなるものであれ、情報マトリックスを有するあらゆる(物理的な)対象物である。
−「マーク付け」又は「印刷」:デジタル画像(情報マトリックス、文書などを含む)から現実世界におけるその表現へと移行するあらゆる方法であり、この表現は、一般的に、表面上に作成され、この方法は、非排他的にインクジェット、レーザ、オフセット、及び熱印刷、並びにエンボス加工、レーザ彫刻、及びホログラム生成も含む。また、デジタル画像が最初に型の中に刻み込まれ、次に、各対象物内に成形される成形法のようなより複雑な方法も含まれる。「成形」された画像は、そのデジタル表現が2つの次元を含む場合であっても、3つの次元を有すると考えることができることに注意されたい。また、言及した方法のうちのいくつかは、いくつかの変換、例えば、フィルムの作成を含み、フィルムは版を作成するように機能し、この版が印刷に用いられる標準オフセット印刷(「コンピュータから版への」オフセットとは異なる)を含むことにも注意されたい。また、他の方法は、可視スペクトルの外側の周波数を用いること又は表面内に情報を刻印することのようないずれかによって不可視領域で印刷することを可能にする。
−「識別子パターン」又は「IP」:(デジタル)ソース画像から印刷される画像であり、このソース画像の印刷物の各々を高い確率で識別することができるように設計及び印刷される画像。
−「固有特性」:識別子パターンの固有の物理的属性であり、この識別子パターンを同じソース画像からのあらゆる他の印刷物から区別することを可能にする属性。
−「インプリント」:測定される特性の全ての値であり、識別子パターンを表し、他の識別子パターン表現と比較することを可能にする値。
−「取り込み」:情報マトリックスを収容する物理的文書のデジタル表現を含む、現実世界のデジタル表現が得られるあらゆる方法。
−「セル」:これは、最大でも所定数のドットが存在する特性可変ドットパターン(VCDP)の規則的な区域、一般的に、矩形、又は更には正方形であり、所定数は、示している変形を除き、一般的に1に等しい。
−「発生ピクセル」:VCDPを発生させるのに考えられる最小区域。
−「ドット」:背景と対比を成す非常に小さいサイズの場合によっては可変の印刷された基本区域であり、一般的に、ドットは、1つ又はそれよりも多くの発生ピクセルを表している。
−「取り込みピクセル」又は「画像ピクセル」:画像センサの感光基本ドット又はピクセルに対応する画像を有する区域。
−「大きさの程度」:物理的マグニチュードAの値が、物理的マグニチュードBの値の10分の1と10倍の間にあり、好ましくは、2分の1と2倍の間にある場合に、Aは、Bと同じ大きさの程度のものである。
【0046】
図24から図29に関して下記に説明する本発明の実施形態では、以下が利用される。
−段階701から段階703、識別子パターンをデジタルで設計する段階。
−段階711から段階715、識別子パターンのインプリントを計算する段階(いずれか他の箇所で説明する方法のうちの1つに従って)。
−段階720から段階726、識別子パターンの印刷を最適化する段階。
−段階731から段階734、インプリント又は文書の固有特性を記憶し、表す段階。
−段階741から段階749、データベースを利用することによってインプリントを識別する段階。
−段階751から段階756、データベースを用いずにインプリントを検査する段階。
−段階761から段階763、識別子パターンとデジタル認証コードとの組合せの使用段階。
−段階771から段階780、文書をセキュア化する段階。
【0047】
識別子パターンをデジタルで設計し、識別子パターンの印刷パラメータを決定する段階に関して、本発明のある一定の特性の出発点において、セキュア化された情報マトリックスの単一のソース画像を数回印刷した場合には、この印刷が、各印刷物における異なるエラーによって影響を受けることになることが見出された。コピー検出パターンに対しても、同じ効果に注目した。より一般的には、十分な密度を有するあらゆる画像において、1)画像を印刷することによって画像の劣化が生じることになり、2)この印刷は、各印刷物における異なる劣化によって影響を受けることになることに注目した。
【0048】
より正確には、この現象は、デジタル認証コードに限定されない。実際に、デジタル画像の密度がいかなるものであったとしても、印刷においてランダム方法が利用される場合はその印刷物の各々は、全ての他の印刷物とは異なることになる。低密度画像に限って言えば、これらの差はあまり多くなく、それ程大きくはならない。従って、時によっては微小なものである差を取り込むために、非常に高い取り込み解像度が必要である。それとは対照的に、十分な解像度で印刷されたデジタル認証コードでは、特に高い取り込み解像度を用いる必要はない(1200ドット毎インチのスキャナが十分であることが示されている)。更に、差は非常に大きく、固有特性の抽出は、非常に高い精度で行う必要はなく、これは、読取アルゴリズムのコスト及び安定性という観点から有利である。
【0049】
識別子パターンは、単一のソース識別子パターンの各印刷物の間の差を最大にするように設計及び印刷された画像である。好ましくは、これらの画像は、擬似ランダム方式で設計されるが(例えば、1つ又はそれよりも多くの暗号鍵により)、これらは完全にランダムのものとすることができる(これらの差は、第2の場合では、いかなる暗号鍵も存在しないか又は鍵が保持されないことである)。しかし、理論的には、オリジナルデジタル識別子パターンは、セキュリティを損なうことなく既知であるとすることができ、実際に、データベース内に記録された識別子パターンのみが正当なものであり(これらのインプリントと共に)、理論的には、印刷において予期されない未知要素を制御することはできないことに注意されたい。従って、オリジナル画像の所有は、偽造者にいかなる実利益も与えず、これは、セキュリティという観点からの識別子パターンの別の利点である。
【0050】
劣化は、本質的にランダムであり、単一のソース画像の各印刷物において異なる結果を発生させるので、識別子パターンの各印刷物は、再生又は転写することができない固有特性を有する。これから、単一の識別子パターンの印刷物の各々は、全ての他のものとは異なり、従って、各々自体が、絶対的に各々を識別するための手段を有する。従って、識別子パターンのインプリントは、特に識別及び検査モードにおいて、このインプリントを含む文書のセキュリティを高めるために、異なる方法で計算し、用いることができる。
【0051】
識別子パターンは、場合によってはこれらの識別子パターンの検出を容易にする境界線によって囲まれた単純な矩形とすることができるが、ロゴのような特別な形状を有することもできる。しかし、矩形形状は、読取に関して利点を有し(矩形形状は、容易に識別することができる)、更にデジタル認証コード又は1次元又は2次元のバーコードのような他のコードの通常形状との互換性に関して利点を有することが示されている。
【0052】
識別子パターンを設計するためのアルゴリズムを下記に説明する。
−段階701中に、暗号鍵、例えば、32バイト(256ビット)シーケンスが受信される。
−段階702中に、再帰暗号化又はハッシュ関数を用いることにより、アルゴリズムは暗号鍵を用いて初期化され、必要なランダムビット数が発生される。例えば、10、000ピクセルの白黒の識別子パターン(1ビット毎ピクセル)では、10、000ビットが必要であり、濃度階調識別子パターン(各階調は等確率を有する)では8倍多くのビットが必要である。SHA−1ハッシュ関数が用いられる(256ビット入力及び出力)と仮定すると、この関数は、必要なビットを得るために40回(1ビット毎ピクセル)又は320よりも若干少ない回数(8ビット毎ピクセル)呼び出さなければならない(40×256≧10、000又は320×256≧80、000であることから)。読取器は、FIPS(「連邦情報処理規格」の頭字語)及びAES(「高度暗号化規格」の頭字語)という規格に準拠するものとすることができる。
−段階703中に、ビットが、場合によっては境界線によって完了された画像、例えば、100×100の点へと組み立てられる。
【0053】
図24は、印刷の前のそのような識別子パターンを示している。図25及び図26は、図24に示している識別子パターンの2つの異なる印刷物を示している。
【0054】
デジタル認証コードの設計及び印刷特性は、識別子パターンに必要とされるものに近似しているので、デジタル認証コードの機能を識別子パターンのものと組み合わせることができる。例えば、得る結果が非常に異なるとしても、暗号鍵を必要とするコピー検出パターンの設計アルゴリズムは、前に説明したアルゴリズムと同様のものである。セキュア化された情報マトリックスの設計アルゴリズムに関しては、1つ又はそれよりも多くの暗号鍵及び1つ又はそれよりも多くのメッセージの両方が必要である。しかし、結果は同様、すなわち、擬似ランダム値を有する画像である。
【0055】
下記で明らかになるが、識別子パターンに対して理想的な印刷条件は、デジタル認証コードに対して理想的な印刷条件に近似していることが見出される。従って、設計及び印刷結果の両方に関して、デジタル認証コードの機能と識別子パターンの機能とを組み合わせることができる。
【0056】
識別子パターンのインプリントを抽出し、文書を検査する場合にそれを比較する方法に関して、最初に、取り込み識別子パターンのドット集合の値を抽出する段階から成る汎用抽出及び比較法を下記に説明する。
−段階711中に、印刷文書の画像内の識別子パターンの位置が決定される。矩形形状の識別子パターンでは、例えば、識別子パターンの4つのエッジの位置(高さ、幅)を抽出することができる。
−段階712中に、抽出される所定の数のドットに対して、画像内の位置が決定され、これらのドットの各々の値が抽出される。例えば、FFT(高速フーリエ変換)又はDCT(離散余弦変換)が後に用いられる場合には、水平に256ドット及び垂直に256ドットの合計で2562のドットのような2の整数乗に対応するドット数が有利である。ドットの位置は、基準ドット(例えば、識別子パターンが矩形の場合には、その4つのエッジ)の位置を決定し、次に、例えば、取り込み画像がアフィン変換又は透視変換を受けていると仮定することによってドットの位置を決定するという従来技術で公知の標準幾何技術を用いることによって決定することができる。一般的に、値は、取り込み画像と同様に、例えば、0から255の階調におけるものである。位置は非整数とすることができるので、取られるドット値は、「最も近い隣接ドット」のものとすることができ、本方法は、それ程高コストではないが、それ程正確でもない。双3次内挿、双1次内挿などである、要求精度と共に増大するコストを有する内挿アルゴリズムを用いることができる。結果は、整数(最近傍)値又は浮動小数点(内挿)値の256×256のマトリックスである。
−段階713中に、マトリックスの2次元離散余弦変換が計算される。離散余弦変換は、少数の成分にわたる信号エネルギを大きく圧縮することを可能にするという理由から有利である。
−段階714中に、所定の数の係数、例えば、10×10の最低周波数係数が選択され、場合によっては、位置(0、0)において「DC」係数という名前の下に公知である定数係数が排除される。
−段階715中に、係数が、セキュア化された情報マトリックスのインプリントを構成するベクトルへと再配列される。
【0057】
上述の方法は、いかなる秘密も利用せず、従って、いかなる者であってもインプリントを計算することを可能にすることに注意されたい。これは、セキュリティ危険性を引き起こすとは考えられないある一定の場合に望ましいものとすることができる。それとは対照的に、他の場合には、権限が付与された者のみがインプリントを計算することができることが望ましい。これを行うには、秘密に保たれ、インプリントを構成する係数を決定することを可能にする暗号鍵が用いられる。この鍵は、インプリントを再構成する権限が付与された者又は団体に対してのみ明かされる。一般的に、ハッシュアルゴリズム又は暗号化アルゴリズムを利用する鍵から係数を選択するための従来技術からの技術が、当業者に利用可能である。
【0058】
次に、相似性の測定値又は逆に格差の測定値を得るように、別々の取り込みに対応する2つのインプリントを複数の方法で比較することができる。例えば、これらのインプリントの間の相関係数を測定することにより、相似性の測定値が得られ、以後この測定値を「スコア」と呼ぶことにする。
【0059】
固有特性を抽出するこの方法を検証するために、100×100ピクセルの識別子パターンを600ドット毎インチのレーザプリンタ上で100回印刷した。1200ドット毎インチの「フラットベッド」スキャナを用いて、各印刷識別子パターンの3度の取り込みを実施した。次に、作成した300個の取り込みの各々に対してインプリントを計算した。更に、44、850(300×(300−1)/2に従って計算された数)対のインプリントの各々に対してスコアを測定した。これら44、850対のインプリントを以下の2つのグループに分離した。
−同じ印刷識別子パターンの異なる取り込みに対応する600対のインプリントの1つのグループA。
−異なる印刷識別子パターンの取り込みに対応する44、250対のインプリントの1つのグループB。
【0060】
スコアは、グループAでは、0.975と0.998の間であり、グループBでは、0.693と0.945の間であった。図29は、グループA及びグループBに関するスコアの分布を示している。これらのスコアに基づくと、2つのグループの対の間でいかなる混同も可能ではない。従って、上述のインプリント計算法を用いることにより、曖昧性を有することなく、100個の印刷物のうちのどれが取り込み画像のソースであるかを決定することができる。
【0061】
グループAのスコア平均及びグループBのスコア平均(上述の場合、それぞれ、0.992及び0.863)の差を計算する段階、及びそれをグループAのスコアの標準偏差、上述の場合0.005によって正規化する段階から成る「インプリント分離度」を測定する。25.8という値が得られる。後に明らかになるが、この指数は、最良の結果を出す印刷及び設計パラメータを決定する上で有利である。
【0062】
セキュア化された情報マトリックスに関してインプリントを抽出する第2の方法を下記に説明する。本方法は、特に、識別子パターンが、セキュア化された情報マトリックスの機能をも有する場合に当て嵌まる。本方法は、取り込みセキュア化された情報マトリックスのスクランブルメッセージが如何に抽出されるかを説明する。このスクランブルメッセージは非ゼロ・エラー・レートを有し、エラー構造がインプリントとして用いられる。
【0063】
本方法の利点は、セキュア化された情報マトリックスを読み取るように設計されたソフトウエアを用いることを可能にするという点である。それによって必要な計算のコストが最小にされる。
【0064】
しかし、セキュア化された情報マトリックスの正確な読取りは、必要に応じて整列するブロックを発生させるように機能する鍵を必要とする。必ずしも全ての場合にはこの鍵を明かすことが望ましいわけではない。更に、各印刷物に特異の内部アラインメント変動は、可能な限り排除される。これらの変動は、セキュア化された情報マトリックスの異なる印刷物を差別化するように機能するので、この排除は、必ずしも望ましいものではない。
【0065】
識別子パターンを発生させ、印刷するのに最適なパラメータを決定する方法に関して、単一のソース識別子パターンの様々な印刷物を可能な限り容易に分離することを可能にする最適な劣化レベルが存在する。従って、印刷における劣化レベルが非常に低い、例えば、1%又は2%の場合に(識別子パターンのセル又はピクセルのうちの1%又は2%が完璧な取り込みから読取間違いされる)、単一の識別子パターンの様々な印刷物は、互いに非常に近似しており、非常に正確な取り込み及び/又は非常に正確な解析アルゴリズムを持たない限り、これらを確実に識別するのは困難である。同様に、劣化レベルが非常に高い、例えば、45%又は50%の場合に(識別子パターンのセル又はピクセルのうちの45%又は50%が完璧な取り込みから読取間違いされ、50%は、読み取られたマトリックスとソースマトリックスの間に統計的な相関性が存在しないことを意味する)、印刷識別子パターンは、互いにほぼ区別不能である。現実には、最適な劣化レベルは25%に近く、用途の条件が許す場合、このレベルに近いことが好ましい。実際に25%の劣化では、印刷変動、従って、劣化が本質的に確率的であると仮定して、印刷識別子パターンのドットの各々において、この印刷識別子パターンが、他の印刷識別子パターンとは異なる確率が最大化される。
【0066】
下記に、利用される印刷手段に従って印刷される画像を発生させる時に得られるエラー・レートの第2の分析を提供する。
【0067】
コピーの検出を最適化することを可能にするVCDPを如何に発生させることができるかを決定するために、下記に、決定理論に基づくモデルを提供する。画像(又はドット)上で測定される特性は信号によって表される。分析を単純化するために、デジタル信号は、印刷の前に、バイナリ値を有することができる特性(例えば、2つのドットサイズ、2つの位置等)に対応するバイナリ値を有するという仮定を行う。この仮定は、殆どの印刷方法がバイナリ画像を処理するという事実によって正当化される。明らかに、分析の結論は、より複雑な、特にドット特性においていくつかの可能な値を有する場合に拡張することができる。VCDPの印刷は、ガウスノイズを追加することによってモデル化される。更に、コピーの印刷も同じエネルギのガウスノイズを追加することによってモデル化されるように、コピーが同じ印刷方法によって作成されることを仮定する。更に、信号をそのコピーの印刷の前に取り込む偽造者は、エラー確率を最小にする初期値の推定を行うことによってバイナリ信号を再構成するように強いられる。
【0068】
このモデルは、1×1ピクセル又は1×2ピクセルのドットサイズを有することができるVCDP(例えば、2400dpiで印刷された)に直接対応し、これに対して、偽造者は、測定濃度階調又はドットの推定表面積に従って走査から再構成された画像内のドットサイズのうちの1つを必ず選ばなければならない。また、このモデルは、例えば、1ピクセルだけ異なる位置を有するVCDPにも対応する。
【0069】
このモデルから、最適な検出子、検出子の値の統計分布、及びコピー検出を最大にするパラメータ値を導出する。
【0070】
以下の表は、異なる変数を要約している。
【表1】

【0071】
一般性を失うことなく、ソース信号は、等確率のものであり、すなわち、i=0、1、...、N−1及びa>0の時、s[i]:{+a、−a}である。印刷ノイズは、ガウス分布N(0、σ2)に従う。
従って、モデルの仮定は、次のように要約される。
【0072】
【数1】

【0073】
偽造者が、+aと−aの間の最近値に信号を復元することによってエラー確率を最小にすることを容易に確認することができる。
【0074】
従って、検出問題は、以下の2つの仮定を区別することから成る。
【0075】
【数2】

【0076】
ここでH0及びH1は、受信信号がそれぞれオリジナル及びコピーであるという仮定である。
偽造者が値を正しく推定する確率は、以下の通りである。
【0077】
【数3】

【0078】
受信信号において以下の確率分布を有し、仮定H1では、2つのガウス分布の混合分布を有する。
【0079】
【数4】

【0080】
単純な相関子が最適な分類関数を与えることを確認することにする。ノイマン−ピアソンの検出子試験は、尤度比が閾値tを超えるか否かH1を決定する。
【0081】
【数5】

【0082】
尤度比は、次式で与えられる。
【0083】
【数6】

【0084】
対数及び新しい閾値t’を取ると、次式が得られる。
【0085】
【数7】

【0086】
従って、分類関数は、単純な相関子T’であり、その値は、信号をコピーとして分類するのに閾値t’よりも小さくなければならない。
【0087】
両方の仮定に対してT’の統計を決定する。T’が、ガウス分布に従う(Nが大きい場合に真である)と仮定することができ、その平均及び分散を両方の仮定に対して導出する。
【0088】
【数8】

【0089】
仮定H1における分散の第2の項(a4Q(−a/σ)(1−Q(−a/σ)))は、コピーが同じオリジナルから生じる場合は省くことができる。実際に、偽造者は、多数のコピーを生成するのに1つのオリジナルのみを用いることによって作業を最小にするので、この項を省くのは妥当である。
【0090】
分散が等しい場合には、検出性能は、T’の分散によって正規化された2つの仮定における関数T’の平均値の間の差に対応する振れ係数d2によって特徴付けることができる。
【0091】
【数9】

【0092】
検出性能は、振れ係数と共に増大するので、目的は、式(γ(1−Q(γ)))2を最大にするγの値を決定することである。
【0093】
図33は、γに従うこの式の値を表している。この図は、次のように解釈することができる。ゼロに近いγの値は、信号に関して非常に高いノイズに対応し、ノイズが非常に高い場合には、信号は、最初の印刷物において過剰に劣化し、偽造者は、多数の過剰に低い推定エラーを招く。逆に、過剰に高いγの値では、信号は十分に劣化されず、殆どの場合に、偽造者は、いかなる推定エラーも招かない。式は、これら両極端の間で最適値を通過し、この最適値において、値は、数値的にγ≒0.752であると推定される。
【0094】
この値において、偽造者が値を正しく決定していない確率は、約22.6%であることは注目に値する。
実際には、0.7522、すなわち、0.565に可能な限り近いSN比γ2を得ることが含まれる。
【0095】
この比の値をターゲットにする方法をより明快に理解するために、例を挙げることにする。2つの可能なドットサイズ(ピクセル数で表された)を有するVCDPを発生させ、ドットサイズは、9ピクセル(例えば、3×3ピクセル)であると仮定されたい。ドットサイズは、多数のアルゴリズムを利用することにより、例えば、濃度階調に対して局所適応的閾値を設定し、この閾値よりも小さいピクセルを計数することによって測定することができることに注意されたい。9ピクセルのドットは、十分な回数印刷される。取り込み画像内で、各ドットのピクセル数に対して平均値及び標準偏差が測定される。12という平均値(33%の平均利得が観測される)及び4という標準偏差が得られると仮定されたい。この標準偏差は、このモデルに対する式においてノイズを表す値σに対応する。従って、最適状態に非常に近い比γ=0.75を得るためには、この信号aに対して約3という値をターゲットにすべきことになる。この信号値を得るためには、例えば、15ピクセルと6ピクセルという2つのドットサイズを定義することができる。
【0096】
印刷パラメータを最適化するために可能なアルゴリズムを下記に説明する。
−段階720中に、識別子パターンに向けて利用可能な表面積、例えば、1/6インチの大きさの正方形が受信される。
−段階721中に、可能な様々な印刷解像度に対応する異なるデジタルサイズのいくつかのデジタル識別子パターン画像が発生され、例えば、400ドット毎インチにおいて66×66ピクセルの1つの識別子パターンが、600ドット毎インチにおいて100×100ピクセルのものが、800ドット毎インチにおいて133×133ピクセルのものが、1200ドット毎インチにおいて200×200ピクセルのものが発生される。
−段階722中に、異なデジタルサイズを有する識別子パターンの各々が、印刷物の寸法が利用可能な表面積に対応するように適切な解像度で何回か、例えば、100回印刷される。
−段階723中に、各種類に対して、印刷識別子パターンの各々が、何回か、例えば、3回取り込まれる。
−段階724中に、各識別子パターンのインプリントが計算される。
−段階725中に、同じ印刷解像度を有する全ての取り込み識別子パターン対に対して相似性スコアが計算される。
−段階726中に、上述の汎用インプリント抽出法の試験において説明した方法が辿られ、印刷解像度の各々に対して「インプリント分離度」が測定され、この分離度において最大値を与える印刷解像度が選択される。
【0097】
変形においては、いくつかのセキュア化された情報マトリックスが、異なる印刷解像度で印刷され、いずれか他の箇所で説明するアルゴリズムのうちの1つを用いて計算された25%のエラー・レートを生じる印刷解像度が決定される。
変形においては、同等の印刷物に対応するインプリントを比較することに基づいて計算されたスコアにおける最低値と、異なる印刷物に対応するインプリントを比較することに基づいて計算されたスコアにおける最高値との間の差が最大である印刷解像度が選択される。
【0098】
特性を表して記憶する方法に関して、インプリントデータ容量を可能な限り低減することが有利である。識別の場合には、本方法は、インプリントをデータベースに記憶された非常に多数のインプリントと比較する段階を含み、非常にコストが高い。このコストは、比較されるインプリントのサイズを縮小し、特に、浮動小数点数を用いることを回避することによって低減される。
【0099】
汎用インプリント抽出法の場合を考えられたい。取り込み識別子パターンから抽出される初期データベクトルは、抽出値の256×256のマトリックスであり、係数を選択した後の離散余弦変換によるその表現は、10×10の値を有する。値当たり1バイト、すなわち、100バイトで値のマトリックスを表すことは有利である。
【0100】
段階727中に、セキュア化された文書を生成するために、少なくとも1つの対象物に識別子パターンが印刷される。
【0101】
一方、離散余弦変換の係数は、正又は負のいずれかにすることができ、理論的には限定されない。固定量の情報を用いてそのような値を表すためには、値は、バイナリ値で表されるように数量化すべきである。可能な手法は以下の通りである。
−段階731中に、各係数に関する最小値及び最大値が、先行して決定される。一般的に、最小及び最大値は、同じ絶対値を有する。
−段階732中に、各値を表すことを可能にするビット又はバイト数が決定される。
−正規化段階733中に、離散余弦変換の各係数に対して最小値が減算され、次に、残りの部分が最大値によって割算される。
−段階734中に、結果に対して、定量データの可能な値の数、すなわち、各値に対して1バイトが利用可能である場合は256が乗算される。結果の整数値は、オリジナル数量値と比較される。
変形においては、数量化段階は、数量化エラーを最小にするように最適化される。
【0102】
識別の場合におけるデータベースを用いての識別法に関して、識別子パターンが、データベースの識別子パターンのうちの1つと対応するか否かを決定するために、識別子パターンをデータベースの識別子パターンの各々と比較しなければならず、対応した場合には、識別子パターンは有効であると考えられ、関連付けられた追跡可能性情報を取得することができる。対応しない場合には、識別子パターンは有効ではないと考えられる。
【0103】
実施形態においては、以下の段階が利用される。
−段階741中に、取り込み画像内に含まれる識別子パターンのインプリントが決定される。
−段階742中に、得られたインプリントのスコア又は相似性が、データベースに記憶されたインプリントの各々を用いて計算される。
−段階743中に、得られる最大相似性が決定される。
−段階744中に、最大相似性が閾値を上回った場合には、識別子パターンは有効と見なされ、段階745中に、関連付けられた追跡可能性情報が得られる。
−上回らなかった場合には、段階746中に、識別子パターンが有効ではないと見なされる。
【0104】
変形においては、以下の通りである。
−段階747中に、識別子パターンがデジタル認証コードの機能をも有する場合には、追跡可能性情報が抽出され、
−段階748中に、検索空間を縮小することを可能にする追跡可能性情報は、別のソース、例えば、関連付けられたバーコード、コントローラからの情報等から生じるものとすることができ、更に
−段階749中に、この情報が用いられてデータベース内の検索空間が縮小される。例えば、製造注文情報は、この製造注文に対応するインプリントの部分集合から比較されるインプリントを事前選択することを可能にする。
【0105】
データベースを用いずに検査する方法に関して、本方法は、文書上に記憶される識別子パターンのインプリントを事前計算することを必要とする。例えば、正当な文書の各々のインプリントを計算する段階中に、これらのインプリントは、データベースに記憶すること、及び文書上にセキュア化された方式で記憶することの両方を予定することができる。
【0106】
好ましくは、文書上へのインプリントの記憶は、可変印刷、すなわち、実行中に各文書に対して異なる印刷によって行われる。インプリントは、品質が限られる可能性がある印刷手段に依存して1次元又は2次元のバーコード、又はデジタル認証コードに記憶することができる。
【0107】
インプリントは、例えば、秘密暗号化鍵が実施された暗号アルゴリズムを用いることにより、セキュア化された方式で記憶することが一般的に好ましい。このようにして、参照データベースに接続する必要なく、偽造者が不当文書を用いる危険性が回避される。このために以下の段階が利用される。
−段階751中に、取り込み画像内に含まれる識別子パターンのインプリントが決定される。
−段階752中に、事前計算されたインプリントが受信される。
−段階753中に、得られたインプリントを事前計算されたインプリントと比較することにより、スコア又は相似性が計算される。
−段階754中に、最大相似性が閾値を上回った場合には、識別子パターンは有効と見なされる。
−上回らなかった場合には、段階756中に、識別子パターンは無効と見なされる。
【0108】
識別子パターンのデジタル認証コードの機能との組合せ使用に関して、文書を一意的に特徴付ける従来技術の方法は、データベースを用いずには解釈することができないという特性を用いる。一方、識別子パターンは、明らかになったように単純に重要でない画像とすることができるが、他の機能を含む画像とすることもできる。特に、これらの識別子パターンは、デジタル認証コードとすることができ、この場合、セキュア化された情報(これらの情報を読み取るのに1つ又はそれよりも多くの鍵を必要とする)を含み、及び/又は認証性を有することができる(コピーからオリジナルを区別するのに)。
【0109】
識別子パターンのインプリントは、文書を識別するのには十分で正確であるが、再生することができないように不十分なものとして設計することができる。実際に、場合によっては各々1バイトを用いて表された100個の低周波数DCT係数に基づいてインプリントを決定する汎用方法を考えられたい。理論的には、いかなる者であってもこれらの係数を抽出し、これらの係数の逆数を取ることによって識別子パターンと同じ寸法の画像を作成することができる。明らかなように、この画像は、印刷識別子パターンとは非常に異なる。それにも関わらず、逆画像取り込みから計算されたインプリントをオリジナルインプリントと比較することによって得られたスコアは0.952である。このスコアは、同じ印刷識別子パターンのインプリントを比較することから得られる全てのスコアよりも小さいが、異なる印刷物識別子パターンのインプリントを比較することによって得られるスコアよりも顕著に大きい。従って、偽造者が、正当な識別子パターンのインプリントを再生しようと探る危険性が存在する。
【0110】
より優れた画像取り込み及び/又はより精密な画像取り込みは、そのような偽造作業の危険性を低減し、更には排除することを可能にすることになる。しかし、これは常に可能であるわけではない。その場合は、識別子パターンがデジタル認証コードでもある場合、以下の段階を利用することによってその認証性を同時に用いることが有利である。
−段階761中に、識別子パターンが、識別又は検査される。
−段階762中に、デジタル認証コードを認証するのに必要とされる1つ又は複数の鍵が受信される。
−段階763中に、デジタル認証コードがオリジナルであるか又はコピーであるかが決定される。
【0111】
通常、デジタル認証コードは、コピー段階中にコピーに敏感な1つ又はそれよりも多くのコピー防止特性の劣化に基づいている。
【0112】
従って、デジタル透かしマークは、コピー内ではより低いエネルギレベルを有するか又は更にコピーにそれ程感度を持たない透かしマークとコピーに特に高い感度を有する透かしマークとの間で異なるエネルギレベルを有する。同様に、空間マーク付け技術の場合には、コピーではより低いレベルのエネルギ又は相関性が顕著である。コピー検出パターンでは、画像比較に基づいてオリジナルコピー検出パターンと取り込みコピー検出パターンの間の相似率(又は相違率)が計算され、取り込みコピー検出パターンがコピーであった場合には、相似率は低いことになる。最後に、セキュア化された情報マトリックスでは、このマトリックスから抽出される符号化されたメッセージに関するエラー・レートが測定され、このエラー・レートは、コピーではより高くなる(符号化されたメッセージの冗長性により、送信メッセージは、一般的に、エラーなしに復号化可能であることに注意されたい)。
【0113】
これらの方法の各々においては、ほぼ連続しており、かつ明確に文書(オリジナル又はコピー)の性質を指定しない1つ又はそれよりも多くの値が測定されることに注意されたい。1つ又は複数の測定値が「コピー」に対応するのか、又は「オリジナル」に対応するのかを決定するには、一般的に、例えば、得られた1つ又は複数の値を1つ又はそれよりも多くの「閾」値に対して比較することにより、コピーからオリジナルを区別するための所定の基準を適用すべきである。
【0114】
識別子パターンに基づいて文書をセキュア化する方法の実施形態に関して、以下の段階を利用することができる。
−段階771中に、権利所有者は、ある一定数の文書を生成するライセンスを処理者に付与する。
−段階772中に、権利所有者は、場合によっては、文書上に印刷されるデジタル画像の形態でデジタル認証コード機能を有する1つ又はそれよりも多くの識別子パターンを処理者に送る。識別子パターンは、デジタル文書の設計の一部とするか又は別々に送ることができる。変形においては、処理者は、権利所有者によって権限が付与された第三者から識別子パターンを受け取る。
−段階773中に、処理者は、指定された数の文書を各文書上で指定された1つ又は複数の識別子パターンと共に印刷する。
−段階774中に、指定された数の印刷文書が、権利所有者に送られる。変形においては、文書は、権利所有者によって権限が付与された作成者に送られる。変形においては、指定数の印刷文書が、いくつかの変形で上述のように段階774中に処理者によって直接処理される。
−段階775中に、権利所有者/作成者が、完成品(いくつかの文書を収容する可能性がある)に組みあげる。
−段階776中に、1つ又は複数の識別子パターンの1つ又はそれよりも多くの画像が取り込まれる。理論的には、この方法は自動的に実施され、例えば、製品が、工業用カメラのレンズの下でコンベヤベルト上で移動する。工業用カメラは、自動的に又はセンサから来る外部起動を通じてトリガされる。
−段階777中に、識別子パターンの各取り込み画像が、関連付けられた情報(製造注文、日付等)と共にデータベースに記憶される。
−段階778中に、実時間で又は遅れて、各有効取り込み識別子パターン画像に対して1つ又はそれよりも多くのインプリントが計算される。
−段階779中に、識別子パターンを検査モードに用いる(データベース接続なしに)という適切な目的で、インプリントのうちの1つ、一般的に、最小データ容量を占有するものが、このインプリントのコンパクトな表現を得るために数量化及び/又は圧縮される。インプリントの表現を含む好ましくは鍵を用いてセキュア化された情報マトリックス(datamatrix、バーコード、セキュア化された情報マトリックスSIM等)が発生される。情報マトリックスは、識別子パターンを含む文書上に印刷される。
−段階780中に、必要に応じて、計算されたインプリントの集合は、セキュア化されたリンクにより、インプリントの有効性を検査するために検査器が接続した中央サーバに送信される。
【0115】
変形においては、以下の通りである。
−識別子パターン画像が取り込まれるサイトは、印刷者又は処理者のところに位置させることができ、その利点は、このサイトを生産の中に統合することができる点であり、欠点は、露出区域に存在する点であり、インプリントを計算及び/又は記憶するのに用いられる機械は、セキュアにすることができ、及び/又は
−サイトは、権利所有者によって権限が付与された第三者のところ、一般的に、用いられる識別子パターンの供給者と同じところに位置させることができる。
【0116】
図23は、以下の段階を示している。
−段階605の認証される対象物に関連付けられた情報を表すドットのマトリックスを決定する段階。
−段階610のマークを上述の対象物に付加し、付加されたマークが、マーク付け段階中に利用される手段の物理特性に起因して予測不能なエラーを提供するようにする段階。
−段階615の上述のマークの画像を取り込む段階。
−段階620の上述の画像を処理することによって上述の予測不能なエラーの物理特性を決定する段階。
−段階625の予測不能なエラーの物理特性を表す情報を記憶する段階。
−ロバストなマーク付け段階630の予測不能なエラーの物理特性に関する情報を有するロバストなマークが上述の対象物に添付される段階。
【0117】
段階605中には、例えば、各々が数百のドットを有し、バイナリ情報項目を表す面積マトリックスの形態で情報マトリックスが決定される。製品に関連付けられた情報項目は、例えば、製造業者名、製品の製造注文、及び/又は製造日である。
【0118】
段階610中に、マークのドットのうちの少なくとも2パーセントがオリジナルドットマトリックスと比較してエラーを有するような解像度のドットマトリックスで形成されたマークが添付される。例えば、プリンタの最大解像度が用いられる。この解像度の効果は、特に、例えば、光学又は写真方法によってマークをコピーする段階を有する対象物をコピーする段階が、オリジナルマークと比較してコピーマークにおいて少なくとも50パーセントだけエラーレベルが増大するようなものである。
【0119】
段階620中に、予測不能なエラーの物理特性として、上述のマーク内の上述のエラーの分布特性が決定される。例えば、マークの中心からマークが有するエラーの重心へと進むベクトルが決定され、次に、エラーの位置に依存してエラーに重みが割り当てられ、マークの中心からエラー重心へと進む新しいベクトルが決定され、以降同様に続けられる。
段階630中には、ロバストなマークは、例えば、1次元又は2次元のバーコード、又はdatamatrix(登録商標)という名称の下で公知のデータマトリックスである。この第2のマークは、ロバストであるから、それは、卑劣なコピーに抵抗することができ、対象物を識別することを可能にする。好ましくは、段階630中に、予測不能エラーの物理特性のコード鍵、好ましくは公開コード鍵が利用される。
【0120】
本発明の利用により、同じマーク付け方法が利用されたとしても、修正なしに、例えば多くの対象物に対するエッチング又は印刷により、マーク付けエラーの物理特性は、各マーク及び従って各関連付けられた対象物に固有のIDを与えることを可能にする。
【0121】
新しい画像取り込みが、マーク付けされた対象物において実施され、新しい画像処理が適用された時に、対象物のIDを取得するために、この画像処理の結果を記憶された情報と比較することができる。
エラー量は大きく、マーク及び対象物を一意的に識別することを可能にする。
マークを有する対象物に関するデータの読取りは、エラーの物理特性のデータベースへの原点及び/又はアクセス手段を与える。
上述のマークの新しい画像が取り込まれる条件がいかなるものであっても、エラー分布特性を取得することができる。
【0122】
本発明のある一定の実施形態の利用に関して、本発明者は、ある一定の印刷特性が、オリジナルをコピーから非常に有効に区別することを可能にすることができることを見出した。特に、マーク付けされたドットの寸法又は「サイズ」、正確な位置又は形状における変動を測定し、オリジナルをコピーから区別することを可能にする測定基準へとそれを統合することができる。印刷される画像内の色レベル(又は濃度階調)における変動は、遮蔽の理由から形状又は寸法の変動に対応することに注意されたい。上述のデジタル認証コードは、これらの特性を正確に測定するようには設計されない。それとは逆に、公知の種類の全てのデジタル認証コードは、印刷における予期されない未知要素に起因する、用いられる測定に対して障害をもたらす位置変動によって低下する性能を有する。最善の場合には、これらの変動を排除することを模索する方法が用いられる。更に、デジタル透かしマーク及びAMSMは、オリジナルとコピーの間で差別化を行うにはそれ程正確ではない信号特性(例えば、エネルギ)を測定することを可能にするように設計される。
【0123】
図1は、黒色の境界線115で囲まれ、かつランダム位置を有するドット集合から成るデジタルマーク105を示している。このオリジナルマーク内のドット110は、全てが同じサイズのもの、すなわち、600ピクセル/インチで印刷された画像に対して1ピクセルのものであることに注意されたい。図2は、このデジタルマークの印刷物120を示している。図3は、このマークの写真コピー125を示している。写真コピー125では、ドット110が消失していることが分る。ドット画像が電子画像センサで取り込まれる場合に、依然としてマークに存在するドットの数、又は基準マークとの相関度のような単純な測定値を用いると、オリジナル120を写真コピー125又は低品質コピーから区別するのは容易である。
【0124】
図4は、高品質コピー130を示している。このコピーは、ドット110が黒色で1インチの1/600のサイズである場合に、一般的に「走査」と呼ばれる取り込みであるスキャナを用いての画像の高品質取り込みに基づいて、自動的に検出された(例えば、Matlabソフトウエアシステム(登録商標)を用いることにより)ドット110をそのオリジナル状態に復元することによって作成されたものである。図2のオリジナルに存在するドット110の全て又はそうでなければ殆どが図4に存在することが分る。残念ながら、全てのドットが元来同じサイズを有し、ドットのサイズ又は濃度階調の測定値が既知である必要がなく、ドットをそのオリジナルサイズ(固定されており、大きい集合にわたって決定することが容易)で簡単に再構成することができるという事実により、いかなる偽造者の作業も容易になる。
【0125】
好ましくは、本発明のある一定の態様を利用することにより、存在するドットを単純に計数するだけでは、オリジナルをコピーから区別するのに十分ではない。また、AMSMによって用いられる相関性又はエネルギレベルに基づく方法も、良好な品質のコピーを検出するには非効率的である。
【0126】
この目的に対して、好ましい実施形態では、ドットパターンを用いる可能性を広げるために、文書の真正性を決定する段階は、従来技術の方法とは異なり、局所レベルで調査されるドットの幾何学的特性に特別の注意を払う段階を有する。特に、ドットの正確な位置、形状、及び/又はサイズは、コピーを検出し、情報を記憶し、及び/又は文書を一意的に特徴付けるために用いられる。これに関して、本発明の特定的な実施形態の主題であるVCDPは、ドットの正確な位置、形状、及び/又はサイズが可変であるという特殊性を示している。好ましくは、このVCDPでドット分布を発生させるために、少なくとも1つの幾何学的特性が可変であり、発生される変動の幾何学的振幅が、印刷時のドットの予測不能な変動の大きさの程度であり、印刷システムに対して既知であり/測定されるドットが生成される。
【0127】
以下に続く説明は、以下のことに関する。
−VCDPデジタル設計法。
−VCDP幾何学的特性を測定する方法。
−測定されたVCDP幾何学的特性を、オリジナルVCDPをコピーVCDPから区別することを可能にする測定基準へと組み合わせる方法。
−VCDPの印刷を最適化する方法。
−VCDPの幾何学的特性に基づいてVCDPを識別する方法。
−VCDPを検査する方法。
−VCDPに情報を記憶する方法。
−文書をセキュア化する方法。
【0128】
最初に、特性可変ドットパターンを発生させる方法を下記に説明する。VCDPを発生させるために、段階300中に、VCDPを文書上に印刷するのに用いられることになる印刷システムの印刷品質が予め決定される。印刷品質は、印刷における予期されない未知要素の結果として印刷によって引き起こされる印刷ドットの少なくとも1つの幾何学的特性のドット毎の予測不能な変動を表している。
【0129】
次に、段階302中に、このVCDPを印刷するのに利用可能な表面積、印刷システムの解像度、及び望ましい最大ドット密度が決定される。例えば、利用可能サイズを約1/6×1/6インチとし、密度を1/100(100ピクセルのうちで約1ピクセルを印刷することができる)とすることができる。最大密度は、VCDPに対する許容可視度に依存し、この可視度は、用途の条件(例えば、インク色、媒体、印刷種類、文書の外観)の関数である。密度は、例えば、密度1/16よりも大きいものとすることができ、又は1/9、更には1/4も可能である。好ましくは、VCDPは、印刷されたドットが「接触」しないように発生される。
【0130】
ある一定の場合には、利用可能なサイズは、非常に大きいもの、例えば、数平方インチとすることができる。しかし、取り込み手段の殆ど、例えば、アレイ画像センサを含むカメラは、上述の区域を覆うことができない取り込み表面積しか提供しない(文書又は製品を「現場において」読み取らなければならない時にはフラットベッドスキャナは、一般的に、利用可能ではない)。この場合、VCDPを「タイル張り」し、すなわち、同じVCDPを並置するか又はセキュリティの理由から異なるVCDPを並置することができる。本説明の残りの部分では、それぞれ等しいか又は異なるこれらの2つの種類のVCDP並置を「タイル張り」と呼ぶ。
【0131】
取り込みツールを印刷区域にわたって任意に適用することができると仮定する際に、少なくとも1つのVCDPが、取り込み表面積内に完全に含まれることになることを保証するために、VCDPの最大サイズは、取り込み表面積の最小辺の半分に等しい。1220ドット/インチで作動する640×480のCCD(1.33cm×1cmの表面積)の上述の例では、VCDPは、1辺が0.5センチメートルを超えてはならない。
【0132】
その後、VCDPは、以下のように発生される。
−上述の分布の少なくとも半分のドットが、このドット分布の4つの他のドットに対して横方向に並置されない。
−上述のドット分布のドットの少なくとも一部の少なくとも1つの寸法変動は、上述の予測不能な変動の絶対値における平均値と同じ大きさの程度のものである。
【0133】
本発明者は、実際に、文書のより有効なセキュア化機能(認証情報及びID)を得るためには、オリジナルの印刷物がそのような大きさの程度の比を提供する必要があることを見出した。
【0134】
更に、本発明者は、ある一定の実施形態では、コピーにおける予期されない未知要素の結果として、印刷ドットの上述の幾何学的特性のいわゆる予測不能な「コピー」変動をドット毎に引き起こすコピーに対して文書のセキュリティを高めるためには、文書上にドット分布を印刷する時に、この印刷が、印刷における予期されない未知要素の結果として、印刷ドットの上述の幾何学的特性のいわゆる予測不能な「印刷」変動をドット毎に引き起こし、予測不能な印刷変動の平均的マグニチュードが、これらのコピーの予測不能な変動の平均最小マグニチュードと同じ大きさの程度のものであることが好ましいことを見出した。文書を認証及び識別する機能に関していずれか他の箇所で説明するように、好ましくは、次に、予測不能な印刷変動を表す物理的マグニチュードを決定する段階が実施される。
【0135】
例えば、予測不能な変動の絶対値の平均値が0.2ピクセルと20ピクセルの間にある場合に、2×2の発生ピクセルの大きさの「ドット」を有する1/6インチの印刷表面積において1200ドット毎インチで印刷された200×200ピクセルのVCDPを用いることができる。1×1ピクセルを有する600ドット毎インチで印刷された100×100ピクセルのVCDPは、同等の結果を出すことができることに注意されたい。それにも関わらず、より高い画像解像度は(同じサイズの印刷区域に対して)、下記に詳述するように、ドットのサイズ及び/又は位置を変更するのにより高い柔軟性を可能にする。
【0136】
好ましくは、重なり合う、接触し合う、又は過剰に近いドットは回避される。この目的のために、VCDPは、隣接区域、例えば、200×200ピクセルのVCDPにおいて各々20×20ピクセルの10×10個の区域に分割される各区域のエッジの各々の上に1ピクセルの白色の境界線を残すことにより、ドットに対しては18×18ピクセルの区域が利用可能である。従って、区域内の各ドットに対して保証された17×17=289の可能な位置が、これらのドットに対して存在する(ドットが2×2ピクセルを占めると、例えば、ドットの最も左上の点は、17個の横方向位置及び17個の縦方向位置しか取ることができない)。
【0137】
セキュリティの理由から、VCDPは、例えば、秘密に保たれた鍵が供給される暗号アルゴリズムから発生される擬似ランダム性のものが望ましい。この鍵は、何者であれ鍵が既知であるいずれかの者は取得することができるが、鍵を持たないいかなる者に対しても割り出すことが非常に困難である擬似ランダム数を発生させるアルゴリズムの初期化値として用いられる。
【0138】
図16Aが示しているように、VCDPを発生させるために、以下の段階が実施される。
−利用可能な表面積、及び印刷システムの解像度、並びに印刷密度を受信又は決定する段階302。
−例えば、32バイト(256ビット)シーケンスの暗号鍵を受信する段階304。
−例えば、アルゴリズムが暗号鍵で初期化される再帰暗号化又はハッシュ関数を用いることによってバイナリ値を発生させる段階306。例えば、上述の例では、ドットに対して289個の可能な位置が存在し、従って、ドットに対して保証された区域内のドット位置を決定するのに9ビットが必要である。従って、100ドットの位置をこれらのそれぞれの区域内で決定するには、900ビットが必要である。256ビットの入力及び出力を有するSHA−1ハッシュ関数が用いられると仮定すると、必要なバイナリデータを得るためには、この関数を4回呼び出す必要がある。
−ドットを各セル内に組み込み、セルをこの場合はサイズが200×200ピクセルの画像へと組み立てる段階308。例えば、この段階308中に、各セル内のドットの位置を決定するために、連続する9ビットシーケンスが用いられる。このシーケンスによって表される値が289よりも大きい場合には、その次のシーケンスが取られる。大きくない場合には、ドットは、例えば、可能な位置の各列内で連続する位置に番号を付けることにより、シーケンスで識別される位置に位置決めされる。次に、セルは、例えば、セルの各列内で連続して並置される。
【0139】
段階308に続いて、段階310中に、VCDPは、印刷フィルム内に組み込まれ、文書が印刷される。
【0140】
変形においては、各ドットは、可変サイズを有することができる。例えば、ドットは、2×2ピクセルよりも大きいか又は小さい表面積を有することができる。従って、ドットは、いくつかのサイズを有することができ、偽造者に対して再生することが困難な他の幾何学的特性を測定する可能性を提供する。例えば、ドットは、前に提供した2×2ピクセル又は3×3ピクセルのいずれかという2つの可能なサイズを有することができ、不均等な垂直及び水平寸法、例えば、2×3又は3×2も可能である。2つの正方形ドットの場合には、ドットのサイズを識別するのに付加的なバイナリデータ項目が必要であり、データ項目は、ドットに対して保証された区域内のドット位置を識別する9個のバイナリデータ項目に追加されることに注意されたい。従って、10個のバイナリデータ項目が区域毎に必要であり、100個のセルでは、1000個のバイナリデータ項目が必要である。
【0141】
図5は、擬似ランダムに変動する寸法を有するドット(2×2及び3×3ピクセルのドット)を有するVCDP135及びVCDP135を取り囲む境界線140を示している。図6は、図5のVCDP135を印刷した結果145の詳細を示している。
【0142】
変形においては、境界線、この場合は140、又は任意形状が追加され、VCDPを局在化することが可能になることに注意されたい。例えば、同期ブロックが、境界線上又はVCDP内のドットを含む区域の代わりに追加される。
【0143】
VCDPの位置特性の測定値に関して、本発明者は、VCDPを構成するドットは、偽造者によって準確実性を伴って決定して再構成することができるが、偽造者にとってドットの正確な位置に関する不確実性を低減することを可能にするのは非常に困難であることを見出した。実際に、VCDPが印刷される時には、ドットは、必ずしも正確な位置に印刷する必要はなく、この不確実性は、印刷における予期されない未知要素に起因し、また、デジタルからアナログへの変動によっても引き起こされる。実際に、印刷中のデジタル値からアナログ値への変動、次に、画像が取り込まれる時のデジタル値への再度の変動により、ドット位置において半ピクセル程度の平均不確実性が存在し(印刷ピクセル及び画像取り込みピクセルそれぞれに)、この第2の不確実性は、印刷における予期されない未知要素に起因する位置の不確実性とは独立している。印刷手段の安定性により、付帯的な位置不確実性が追加される可能性があることに注意されたい。高品質コピーが生成される時には、付帯的な再印刷位置不確実性が、既に存在する位置不確実性に追加される。従って、取り込み画像におけるドット位置とオリジナル画像におけるこのドット位置との間の分散は、平均して、取り込み画像がオリジナルである場合よりもコピーである場合に大きい。
【0144】
VCDPの幾何学的位置特性を測定するためのアルゴリズムを下記に説明する。段階320中に、VCDPを収容する文書区域から取り込まれた画像及び暗号鍵が入力時に用いられる。このアルゴリズムを実施する段階からの出力時に、VCDPのドットの位置特性ベクトルが得られる。
−段階322中に、VCDP設計アルゴリズムを適用することにより、ドットの各々のオリジナル位置が決定される。
−段階324中に、取り込み画像内での1組の位置基準形状の位置が決定され、VCDP自体又はその一部は既知であるから、これらが基準形状として機能することができることは理解されるものとする。例えば、これらの基準セルは、コーナのインジケータ、正方形の境界とすることができる。自己相関タイル張り画像のような位置を決定する他の公知の技術を用いることができる。
−段階326中に、基準形状から、オリジナルサイズと同じサイズ又はその整数倍のものである画像が再構成される。
−段階328中に、各セルに対して、ドット画像を位置付けるべきである取り込み画像内の検索区域が決定される(例えば、VCDPが600ppi(「ポイント毎インチ」の頭字語)で印刷され、1200dpi(1インチ当たりの取り込みピクセルを意味する「ドット毎インチ」の頭字語」で取り込まれる場合には、±5ピクセルの区域が、オリジナル画像における±2.5ピクセルの区域に対応する)。基準セルの初期位置は不正確である可能性があので、比較的大きい検索区域が必要である。
−ドットが、明るい背景上の暗い色である場合には、段階330中に、所定の区域内で最小輝度値を有するピクセルの再構成画像又は取り込み画像内の位置が決定され、ドットが、暗い背景上の明るい色である場合には、所定の区域内で最大輝度値を有するピクセルの再構成画像又は取り込み画像内の位置が決定される。ピクセルのこの位置は、取り込み画像内でのドットの中心位置であると考えられる。
−段階332中に、各方向における2つの位置の間の距離が測定される。
−段階334中に、測距値の全てが幾何学的特性ベクトルへと集約される。
【0145】
このようにして、100個のセルのVCDPに対して100×2のサイズのベクトルが得られる。基準セルの位置の不正確性の理由から、手法的な偏重が存在する可能性がある。好ましくは、段階332中に、このバイアスは、水平及び垂直距離の平均値を計算し、この平均値を対応する距離から減算することによって補償される(実際に、位置の不正確性に対してゼロ平均値が予想される)。
【0146】
変形においては、以下のようになる。
−各点の位置を決定するのに、例えば、ドットの中央ピクセルの輝度値、ピクセルに対応するドットのフィルタに対する応答値であるこれらの点の他の特性値が用いられ、及び/又は
−各ドットの正確な位置に対する検索区域を決定するのに、ドットの位置が、画像を再構成することなく、取り込み画像における倍率、並びに取り込み画像の回転及び平行移動を考慮に入れて決定される。
【0147】
位置特性ベクトルを利用してオリジナルVCDPとコピーVCDPの間で区別又は差別化を行うことに関して、以下のように進めることができる。
−段階340中に、各ドットに対して、取り込み画像に従って計算されたドット位置とオリジナル位置の間のユークリッド距離が計算される。
−段階342中に、平均距離の測定値を得るために、全てのドットにわたって上述の距離の平均値又は中央値が計算される。
−段階344中に、上述の平均距離が所定の閾値と比較される。
−段階346中に、以下の方法でVCDPがオリジナルであるか、又はコピーであるかが決定される。すなわち
−平均距離が閾値よりも小さい場合には、VCDPは、オリジナルであると考えられる。
−そうでなければ、VCDPは、コピーであると考えられる。
【0148】
以下の例は、本発明で提案する方法を示している。同じオリジナルVCDPが印刷されて、次に、3回取り込まれている。オリジナルに対する位置特性のベクトルにわたって計算した平均距離は、0.454、0.514、及び0.503画像ピクセルである。各々3つの印刷VCDPのうちの1つから、3つの高品質コピーを作成した。これらのコピーに対して位置特性のベクトルにわたって計算した平均距離は、0.965、1.088、及び0.929画像ピクセルである。平均距離に基づいて、単純に閾値を設定することにより、オリジナルVCDPをコピーVCDPから容易に分離することができることに注意されたい。起こり得るエラー(「エラー検出」:コピーをオリジナルとして検出するか、又は「検出漏れ」:オリジナルをコピーとして検出する)の相対コストに依存していくつかの閾値が可能である。各種のエラーの相対コストが同等の場合には、0.75(画像)ピクセルという閾値は、許容可能な妥協点とすることができる。
【0149】
オリジナルVCDPをコピーVCDPから区別するのに、例えば、統計的及び/又は形状認識法に基づく他の公知の数学的技術を用いることができる。
【0150】
上述のように、ドットの幾何学的特性値を用いてオリジナルVCDPとコピーVCDPの間で区別又は差別化を行うことに関して、ドットが一定のサイズのものである場合には、ドットがオリジナルマークにおいて可変サイズで出現する可能性があったとしても、偽造者にとって対応するサイズでオリジナルVCDPを再生することは容易である。一部の実施形態では、VCDPの生成中に、ドットの1つ又は2つの寸法が変更される。
【0151】
段階350中にVCDP画像を取り込んだ後に、段階352において、文書の真正性の解析中にドットの中央画像ピクセルの輝度、画像ピクセルに対応する少なくとも1つのマトリックスフィルタへのドットの応答等に従って1つ又は複数の寸法が決定される。
次に、オリジナルデジタルVCDPのドットの寸法と、認証されるVCDPの取り込み画像内の対応するドットの寸法との間の相似度に従って、オリジナルVCDPがコピーから区別される。例えば、以下のように進められる。
−段階354中に、VCDP設計アルゴリズムを適用することにより、予想寸法特性ベクトルが決定される。例えば、予想特性ベクトルは、ドットの表面積値、又はドットの水平及び垂直の2つの寸法とすることができる。
−段階356中に、例えば、予想特性ベクトルと、VCDPの取り込み画像を処理した後に得られる特性ベクトルとの間の相似率、例えば、相関係数が計算される。
−段階358中に、相似率を所定の閾値と比較することにより、VCDPが真正であるか否かが決定される。すなわち
−相似率値が閾値よりも大きい場合には、VCDPは、オリジナルであると考えられる。
−そうでなければ、VCDPはコピーであると考えられる。
【0152】
以下の例は、本発明で提案する方法を示している。ドットの寸法が2×2ピクセルと3×3ピクセルの間で変動する図5に例示しているものと同じオリジナルVCDPが印刷され、次に、3回取り込まれている。特性ベクトルは、2×2ピクセル及び3×3ピクセルのドットサイズに対して4ピクセル及び9ピクセルの表面積値を含む。特性ベクトルは、ドットの輝度値よりも低いドットを取り囲む領域の平均輝度値を含む。従って、一般的に、3×3ピクセルのドットの場合であるドットがより強く印刷される場合には、より高い値が存在する。
【0153】
計算した相似率は、3つのオリジナル印刷に対して0.654、0.673、及び0.701である。次に、3つの高品質コピーが、各々3つの印刷VCDPのうちの1つから作成された。コピーを作成するために、ドット位置を決定し、次に、その輝度を測定した。VCDPのドットの中間輝度を計算し、この中間輝度よりも低い輝度を有するドットは、最初の3×3ピクセルのものであり、それに対して中間輝度よりも高い輝度を有するドットでは2×2ピクセルのサイズものであると考えられた。コピーが印刷されて取り込まれた。計算した相似率は、3つのコピーに対して0.451、0.423、及び0.446である。単純に閾値を設定することにより、平均距離に基づいて、オリジナルVCDPをコピーVCDPから容易に分離することができることに注意されたい。起こり得るエラーの相対コストに依存して、いくつかの閾値が可能である。各種類のエラーの相対コストが同等の場合には、相似率における0.55という閾値は、許容可能な妥協点とすることができる。
【0154】
オリジナルVCDPをコピーVCDPから区別するのに、例えば、統計的及び/又は形状認識法に基づく他の公知の数学的技術を用いることができる。
【0155】
上述に提供した説明は、基本的にコピーに対して文書のセキュリティを高めることに関する。説明の残りの部分は、第1に、「可変」印刷方法によって印刷されていない文書を一意的に識別し、第2に、文書に関する情報、例えば、参照番号、文書製造日、文書製造サイト、及び文書製造注文、文書又はその宛先にリンクされた知的所有権の所有者名を保持するという文書をセキュア化する2つの他の形態に係わる。
【0156】
VCDPの幾何学的特性に基づいてVCDPを識別する方法を下記に説明する。この場合、本方法は、測定されたVCDP特性を用いて、単一のソースデジタルVCDP画像からの印刷物の各々を一意的に識別する段階を有する。実際に、VCDPの各印刷物は、印刷において、同じ印刷物の異なる取り込みにおいて見ることができる予期されない未知要素を作り出す。従って、データベース内にVCDPの連続する印刷物の特性を記憶することにより、又は好ましくはセキュア化された方式でVCDPを含む文書上に(例えば、2Dバーコード内に)これらの特性を記憶することにより、その後、VCDPの印刷物、及び従ってVCDPを有する印刷文書を取り込まれた画像を有するVCDPの幾何学的特性と、記憶された幾何学的特性との間の対応性を得ることによって識別し、すなわち、一意的に認識することができる。
【0157】
好ましくは、IDと認証情報とは組み合わされ、画像を取り込むための及び処理するための同じ装置が、文書の真正性及び文書のIDの両方の指示情報を提供する。
【0158】
正確な位置、又は輝度測定値、ドットの1つ又は複数の寸法、及びドット形状のようなドットのいくつかの幾何学的特性を用いることができる。ドットの平均、中心、又は最小濃度階調によって測定される輝度は、同じソース画像の異なる印刷物にわたって顕著かつ予測不能に変動するので、特に弁別性が高い。ドットの特性を1つの印刷物から次のものへと変動させるのに、ソースVCDP内で可変サイズ又は形状を有するドットを用いる必要はないことに注意されたい。これを示すために、図7は、一定のドットサイズを有する単一のVCDPの2つの印刷物を示しており、ドット151は、上側の画像よりも下側の画像においてより強く印刷され、一方ドット152は、下側の画像よりも上側の画像においてより強く印刷されている。
【0159】
3つの印刷VCDPの各々を3回取り込むことにより、合計で9つの取り込み画像を得る。9つの画像取り込みの各々に対して、ドットの最小輝度値を含む特性ベクトルを計算する。次に、9×8/2=36個の可能な取り込み画像対の各々の特性ベクトル間の相似率、すなわち、相関係数を計算する。これら36対のうちで、9個は、同じ印刷物の異なる取り込みに対応し、25個は、異なる印刷物の取り込みに対応する。相似率における平均値は、第1のグループでは0.9566であり、標準偏差0.0073及び最小値0.9474を伴い、第2のグループでは0.6203であり、標準偏差0.0272及び最大値0.6679を有する。2つのグループの間の相似率の差は非常に顕著であり、ドットの特性ベクトルに基づいて、曖昧性なしに印刷VCDPを識別することができることを示している。
【0160】
図18は、この手法に対応する識別手順における段階を詳描している。段階402中に、印刷VCDPが取り込まれる。次に、段階404中に、ドットの平均最小輝度値を含む特性ベクトルが計算される。この特性ベクトル又は印刷VCDPの「署名」は、各ドットにおいて平均輝度測定値を含み、場合によっては輝度測定値間の標準偏差を含む。ある一定の輝度測定値をこの測定値の他の測定値の平均値との差及び他の測定値間の標準偏差に基づいて除外することができることに注意されたい。次に、段階406中に、特性ベクトルが、文書の生成及び/又は流通に関する指示情報と共にデータベースに記憶される。
【0161】
段階410における識別試行中に、印刷VCDPの画像が取り込まれる。次に、段階412中に、記憶された特性ベクトルに対応する特性ベクトルが計算される。段階414中に、段階412中に計算された特性ベクトルに最も近似する記憶された特性ベクトルが決定され、それに関連付けられた情報が得られる。
【0162】
変形においては、段階404中に決定される特性ベクトルは、ロバストな方式、すなわち、コピーに対して耐性を有する例えば2次元バーコード又はDatamatrix(登録商標)を用いて、好ましくはセキュリティの理由から暗号化されて文書自体の上にも記憶される。この場合、段階416中に、2つの特性ベクトルと、所定の閾値又はそれ自体がバーコードに記憶された閾値との間で相似率を比較することにより、文書を認証することができる。
【0163】
情報をVCDPに記憶するために、区域毎に1ビットを記憶するように、例えば、ドットの各々に割り当てられたセル内の各ドットに対して、可能な2つの形状、2つの位置、又は2つの寸法を定めることができる。ビット値(「0」又は「1」)が、各位置、寸法、又は形状に割り当てられる。
【0164】
2つのドットサイズを有するVCDPを示している図5を参照すると、小さいサイズのドット(2×2ピクセル)は、例えば、ビット値「0」を表すことができ、大きいサイズのドット(3×3ピクセル)は、ビット値「1」を表すことができる。
すなわち、100個のセルを有するVCDPでは、冗長性なしに100ビットを記憶することができる。エラーを検出及び/又は補正するためには、エラー検出及び/又はエラー補正コードの使用が望ましい。
【0165】
バイナリ値を表す上で位置が用いられる場合には、2つの値の各々に対応する位置が互いに分離されることが好ましい。2つの位置の分離を保証するために可能な方法は、2つのビット値に対応する2つの等しいサイズの部分へとセルを分割する段階、及び符号化されるビットに対応する区域内で位置を擬似ランダムに割り当てる段階から成る。セル内のドットの位置は、可能な位置の複数性の理由から、1つよりも多くのバイナリ値を表すことができることに注意されたい。例えば、上述で明らかになったように、この位置は、289個の異なる位置にわたって8ビットを表すことができ、又は読取中に位置を解釈する際にエラーの危険性を制限するように各方向の2つの位置から1つを除外した場合には、6ビットを表すことができる。
【0166】
VCDPを読み取る上で、各部分セルにおいてドットが可能な2つの位置の周囲に検索区域が決定される。2つの部分セルのうちのいずれがドットを含むかを決定するために、2つの部分セルの各々における最小輝度値が決定され、最低輝度値を有する区域は、ドットが挿入されているものであると考えられる。変形においては、2つの部分セルの各々の間の輝度差又は輝度比に従って各ビット値に重みを割り当てることができる。
【0167】
変形においては、以下のようになる。
−情報ビットを表す上で、セル内でのドットの存在又は不在が用いられ(下記では「グリッド」に用いられる)、
−セル毎に可能な2つよりも多くのドット位置により、1よりも大きいバイナリ値が表され、
−セル毎に可能な2つよりも多くのドット寸法により、1よりも大きいバイナリ値が表され、
−セル毎に可能な2つよりも多くのドット形状により、1よりも大きいバイナリ値が表され、及び/又は
−メッセージは、符号化される前に暗号化される。
【0168】
他のデジタル認証コードとの統合に関して、VCDPは、付加的な保護層及び/又は文書を追跡する目立たない手段を提供するように、デジタル認証コードと統合することができる。図8は、VCDP156が挿入された区域を中心に備えるセキュア化された情報マトリックス155を示している。図9は、VCDP161によって囲まれたセキュア化された情報マトリックス160を示している。図9の場合には、デジタル認証コード160を配置させる、例えば、そのコーナに配置させる要素は、VCDP161の大体のドット位置を位置付けて決定するのに用いることができることに注意されたい。
【0169】
実施形態においては、目立たないマークによってVCDPを識別するための手段が利用される。実際に、ある一定の場合には、VCDPの位置、更にはその存在までも検出困難なものとすることができるように、識別マークは、境界線よりも目立たないことが望ましいものとすることができ、例えば、限られた又は分断された境界線マーク又はコーナマークを挿入することができ、又はVCDPを識別するのにデジタル認証コード又は他の関連付けられた記号を用いることができる。
【0170】
例えば、タイル張りによって同じドットパターンが数回繰り返された場合には、ドットは、M.Kutter著の論文「平行移動、回転、及びスケーリングに耐性を有する透かしマーク」、SPIE会報:マルチメディアシステム及び応用、第3528巻、423〜431頁、米国ボストン、1998年11月に説明されている技術のような自己相関及び相互相関技術を用いて識別及び位置付けすることができる。
【0171】
目立たない基準マークをVCDP内に導入する別の方法は、容易に識別可能な形状特性を有するドット集合から成るセルを挿入する段階から成る。例えば、ある一定のドットが基準として機能することが望ましい場合には、容易に識別可能なドット集塊を得るために、基準ドットに隣接する有意な数のドットが挿入される。図10は、中心ドット、及び中心ドットに中心を置く正方形のコーナを形成する4つの非常に近い隣接ドットを含むセルで構成された4つのコーナ166を有するVCDP165を示している。検出は、十分な表面積にわたって「候補」として機能することになる全てのドットを検出することによって開始される。次に、各ドットに対して、所定の距離よりも小さく又はそれに等しい距離にある隣接ドットの数が決定される。これは、ドット候補がグリッド上に配置されている場合は迅速に行うことができ、それによって窓内の隣接ドットの数を迅速に計数することが可能になる。最大数の隣接ドットを有する限られた数の候補、例えば、6個の候補が保持される。次に、基準ドット、この場合はVCDPのコーナに対応する候補がどれであるかを決定するのに、既知の幾何学的技術を用いることができる。VCDP165では、例えば、3つの有効な候補が直角二等辺三角形を形成すべきであることが公知である。
【0172】
目立たない基準マークを導入する別の方法は、ある一定の線に基づいてドットを挿入する段階から成る。図11は、VCDP170の内側に位置した並列ドットよりも多くのドットを有する線171をエッジ上に有するVCDP170を示している。これらのエッジ線は、例えば、Hough変換及び/又はSobelフィルタを適用することにより、ノイズをフィルタリングすることを可能にする異なる線検出アルゴリズムによって検出することができる。
変形においては、ドット又は識別可能マークの線、例えば、図10に例示しているようなドット集塊を含む同じVCDP又は異なるVCDPのタイル張りが適用される。
【0173】
好ましい実施形態では、VCDPは、規則的なグリッドの形態で配置される。実際に、ある一定の場合には、大きい表面積にわたるタイル張り、更にはセキュア化される文書全体にさえわたるタイル張りによってVCDPを複製することが有利であるとすることができる。このようにして、VCDPを破壊することが非常に困難になり、更には不可能にさえなり、画像取り込み位置に関する柔軟性が高まる。特に、タイル張りすることにより、同じVCDPを数回挿入することができる。同様に、全ての他のVCDPと少なくとも部分的に異なるVCDPを挿入することができる。上述の識別手段は、VCDPを読み取るために正しく位置決めするのに用いることができる。しかし、実際には、基準、同期、又は識別要素は、正しく検出することが困難であるとすることができる。
【0174】
下記で明らかになるが、ドットをグリッド形態に配置することによって検出をより容易にすることができる。ドットは、規則的な間隔、例えば、各方向に4ピクセルと12ピクセルの間に1つのスペースで挿入される。この原理に基づいて、情報を表すいくつかの方法が存在する。
−ドットの存在又は不在は、図12に例示しているVCDP175と同様に情報ビットを表すことを可能にし、ドットの存在はビット値「1」に対応し、その不在はビット値「0」に対応する。
−VCDPのドットの少なくとも1つの寸法よりも小さい大きさのサイズ、形状、又はオフセットは、情報を表すことを可能にする。例えば、4つの形状又は4つの寸法選択枝からのドットの選択は、VCDP180の詳細内容を拡大して表している図14に例示しているように、VCDP180の各ドットにおいて2つの情報ビットを表すことを可能にする。VCDPのドットは、ビット値「00」、「01」、「10」、及び「11」にそれぞれ対応する1×1、2×2、1×2、及び2×1ピクセルの寸法(先頭の数字は高さを示し、2番目の数字は幅を表す)を取ることができることに注意されたい。当然ながら、ドットの多くの他の組合せ及び形状が可能である。
【0175】
変形においては、完全に規則的なグリッドの原理に基づいて、ドットの僅かな変位が情報を表すことを可能にする。例えば、少なくとも2ピクセルの表面積を成すドットを変位させ、ピクセルを水平に変位させ、及び/又はピクセルを垂直に変位させることにより、2つの情報ビットを表すことが可能になる。当然ながら多くの他の可能性が見込まれる。そのようなドット変位は、特に識別という観点から幾何学的特性、従って、グリッドを用いることの利点を大きく修正しないことに注意されたい。
【0176】
グリッドは、取り込み画像に適用される回転角及びサイズ変更係数を決定するのに十分に適している。実際に、特に画像のHough変換を利用することができ、又はフーリエ空間内でのエネルギピークの決定を利用することができる。図13は、図12のグリッドの2次元フーリエ変換の絶対値の図であり、この図では明値のドットは、エネルギピークに対応する。これらのエネルギピークの検出により、当業者は、画像のサイズ変更係数及び回転角を計算することが可能になり、処理に向けて画像に正規化された寸法を付与することを可能にする。
【0177】
画像の回転及びスケールが既知であり、場合によっては補正された状態で、平行移動値、すなわち、グリッドのドットを正しく整列させるように画像に適用される変位が決定される。この決定において可能な様々な方法が存在する。これらの方法の全てに共通するのは、後にグリッドを整列するのに求められるグリッドのドット集合値を固定することである。例えば、鍵に従って擬似ランダムに選択されたドット集合値を固定することができる。グリッドの取り込み補正画像と既知のドットの値から発生された画像との間の相互相関性は、グリッドの変位に対応する位置において相関ピークを発生させる。
【0178】
書込アルゴリズムに関して、当業者に公知の多数の方法が可能である。例示的に、印刷が600ドット毎インチで行われ、表面積の1%をマーク付けすることができ(マーク付けの視覚効果を最小にするために)、それによって平均で各方向に10ピクセル毎に1ドットが作成されるという仮定に基づいて、20×20のセルのタイル張りされた又はそうではないグリッドが存在すると仮定する。従って、タイルは、最初は200×200ピクセルであり、画像取り込み手段は、720ピクセル毎インチの取り込み解像度で640×480ピクセルの画像を作り出す。少なくとも1つのタイルが、取り込み画像内に完全に含まれることが保証されることに注意されたい。
【0179】
段階502中に、入力として、例えば、8バイトのメッセージ、暗号鍵、及びスクランブル鍵(これら2つの鍵は等しいものとすることができる)が受信される。メッセージは、段階504中に暗号化される。段階506中に、任意的に、メッセージにエラー検出ビット、例えば、2の16乗倍メッセージを間違って復号化する危険性を低減することを可能にする2バイトを追加することができる。段階508中に、例えば、畳み込みコードを適用することにより、この例では10バイトのエラー検出コードと連結された暗号化メッセージから、エラーに対してロバストなメッセージが計算される。入力における8バイトに対して7バイトのメモリを用いたレート2の畳み込みコードでは、142ビットを要するコードが得られる。20×20ドット=400個の位置を有する場合には、このメッセージは、2回複製することができ、従って、段階510中に284ビットの複製メッセージが得られる。従って、下記に説明するように、タイルを整列させるための検出に用いられる同期ビットを記憶するのに用いられることになる400−284=114個の未使用位置が存在する。複製メッセージは、段階512でスクランブル化され、すなわち、排他的OR関数によって連続してスワップ及び変換される。排他的OR関数に用いられるスワップ値及びビット値は、スクランブル鍵から計算される。このようにして、284個のスクランブルビットが得られる。
【0180】
段階514中に、鍵から116個の同期ビットが擬似ランダムに発生され、これらの位置は、タイルに均一に分布するように擬似ランダムに決定することができる。
VCDPの画像は、定められた位置に、ビット「1」に対してドットを追加することによって単純に変調される(ビット「0」に対しては修正はない)。明らかに、ドットは、前に参照した方法に従って可変の位置、形状、及び/又は1つ又は2つの寸法を有するように構成することができる。
【0181】
大きい表面積を覆うことが望ましい場合には、段階516中にタイルが1つずつ追加される。更に、いくつかの変形によると、常に同じタイルを用いることができ、又は各タイルに対してメッセージを変更することができる。この第2の変形の例では、別の部分、例えば、1バイトが、各タイルにおいてランダムに決定される一方、メッセージの一部を固定したままに留めることができる。また、偽造者の符号を解析する企てをより困難にするように、各タイルに対して複数回の90度ランダム回転を付与することができる。更に、同期ビット又はその反転ビットを挿入することができる、すなわち、同期ビットに対してドットが挿入された位置が反転される。明らかなように、反転ビットを挿入する手法の利点は、可能な構成の数が、読取が複雑になることなく増加する点である。従って、向きの変動を考慮に入れると、同期ビットに対して8つの可能な構成を有することができ、それによって偽造者による攻撃の関連において偽造者の解析がより複雑になる。
この例における200×200のグリッドは、上述のように複製することができる。
次に、段階518において、VCDPが印刷フィルム内に挿入され、文書が印刷される。
【0182】
読取アルゴリズムに関して、以下の段階が実施される。
−文書の画像を取り込む段階548。
−前処理段階550:画像を前処理する段階は、特にドット候補を決定する以降の段階において有利なものとすることができる。前処理により、疑似ノイズ及び照明偏差を除去することが望ましい。初期画像で重み付けされる結果を有する全方向ハイパスフィルタの適用により、例えば、照明偏差を低減することが可能になり、中域フィルタの適用により、孤立ピクセルノイズを低減することが可能になる。
−段階552中にドット候補が決定される:ドット候補は、閾値よりも小さい値の輝度を有する画像ピクセルに対応する。この閾値は、例えば、最大で1%のピクセルがドット候補であるように1%のようなヒストグラムの百分率である。領域内で最低値を有するもののみが保たれるように、過剰に近い候補(例えば、5ピクセルよりも小さい距離)は排除される。
−段階554中に、隣接するドット候補が決定され、回転角及び倍率が推定され、隣接ドット間の距離に対して制限値が与えられ、この閾値よりも小さい距離を有する全てのドット対が列挙される。この閾値が十分に低い場合には、ドットの4つの直接的な隣接ドットのみをベクトルにおいて関連付けることができ、そうでなければ間接的な隣接(対角)ドットを関連付けることができる。非隣接ドットが関連付けられるのを回避することが好ましい。これを行うために、過剰に高い閾値は回避される。次に、ベクトルの各々の角度を0度と90度の間の値に誘導することによって回転角を推定することができる。
−間接的な隣接ドットが含まれる場合には、段階556中に、ベクトルは、それらのサイズ(間接的隣接ドットでは2の平方根倍大きい)に従って2つのグループに分離され、間接的隣接ドットに対しては計算された角度から45度が減算される。同様に、倍率は、単一のグループのドット間の平均距離を測定し、オリジナル画像内の距離が既知である場合には、この距離によって割算することによって推定することができる。
−ある一定の選択肢においては、段階558中に、画像が復元され、回転のない画像が、そのオリジナルサイズ又はオリジナルサイズの整数倍で形成される。
−段階560中に、ドットによって表された値を表すマトリックスが抽出され、ドット間の平均距離、例えば、10ピクセル、及び再構成画像の寸法、例えば、500×500ピクセルが既知である。従って、再構成画像の寸法と、ドット間の推定距離との間の関係が、画像に存在する多数のドットにわたって最大閾値に対応すると仮定して、メッセージの推定値を記憶するのに用いられることになる50行×50列を有するテーブルが発生される。実際には、取り込み画像内のドット・グリッドが有意な回転角を有した場合には、再構成画像内のドット数は、場合によっては大きく低くなる。
−このテーブルをメッセージの推定値で満たすために、段階562中に、画像を走査するための開始ドットが検索される。このドットは、例えば、画像の左上に検出される第1のドット候補、又はドットであるという最も高い確率を有するドット候補(例えば、最も低い濃度階調を有するドット)とすることができる。ドット選択において間違いをしないことが重要であり、エラーは、計算の残りの部分において悪影響を有する可能性があることに注意されたい。メッセージを読み取る以降の段階が不成功であった場合には、選択された開始ドットにおける反復によって進めることができる。ドットの推定位置が実際の位置に対して若干オフセットされ、このオフセットが、コピーの存在を検出するように計画された擬似ランダムオフセットに起因するか又は位置決めにおけるいずれか他の不正確性に起因するものであった場合には、エラーを有する測定を回避するために、選択ドットに対して、値、例えば、中心位置の周囲のある一定の区域内でのこのドットの濃度階調又はその最も低い濃度階調値がテーブルに記憶される。この値は、テーブル内の対応する位置、この例では(0、0)から(49、49)にわたる位置に記憶され、例えば、開始ドットが左上の第1のドットであった場合には位置(0、0)に記憶され、又は最も高い確率を有する開始ドットが位置(322、204)にあった場合には位置(32、20)に記憶される。次に、開始ドットから全ての画像の位置が走査され、各ドットに対して求められた値がテーブル内の対応する位置に記憶される。
−段階564中に、グリッドが整列し、一般的に、値テーブルは、タイルの開始点に対してオフセットされる。このオフセットを取り消すために、既知のビット値、すなわち、オフセットを決定することを可能にする同期ビットが用いられる。従って、既知の同期ビットを各起こり得るオフセット及び4つの可能な一般的な向き(0度、90度、180度、又は270度)に対して、値テーブルと相関させることができる。最大相関値が、オフセット及び一般的な向きを決定される。代替的に、タイルが、別のタイルに対して負に印刷された場合には、オフセット及び一般的な向きを決定するのは最低又は絶対相関値とすることができる。同期ビット又はそれらの反転ビットが明らかにランダムに挿入された場合には、オフセットを決定するのに最も高い絶対相関値が用いられる。相関は、計算の量を低減するために、フーリエ領域で実施することができる。タイルは、アラインメントに向けてのガイドとして機能することができるドットの連続線により又は特別な濃度によりその境界を定めることができることに注意されたい。
−段階566中に、スクランブルメッセージが再構成され、次に、このスクランブルメッセージを再構成することができる。例えば、このメッセージが20×20のグリッド内に含まれる場合には、20×20のマトリックスが発生され、求められた値がその中に挿入される。メッセージ復号化の残りの部分は、標準的な従来技術の方法を用いて実施することができる。スクランブルメッセージを計算した状態で、上述の読取アルゴリズムで説明した作動の逆のものが適用される。
−任意的な段階568中に、他の測定と同様に、グリッドが、コピーを検出することを可能にする特別な特性、例えば、ドットの正確な位置又はサイズを有する場合には、文書(オリジナル又はコピー)の性質、又は文書の固有の特性情報/IDに関する決定を行うために、決定されたグリッドにわたってこれらの特性を測定することができる。
【0183】
図21は、高密度VCDPの拡大した一部を表しており、このVCDPを構成するドットマトリックスの各線は、白色の背景と同等の数の黒色ドットを顕著に有し、これらは、符号化情報を表しているか又は表していない。上側の線185では、各ドットの横方向の位置が可変であり、これに対して下側の線186では、この場合は3×3の発生ピクセル及び2×2の発生ピクセルに対応する2つの値の間でドットの寸法が可変である。そのようなVCDPは、文書内に所定の数のドットを挿入するのにコンパクト性の利点を表すのと同時に、寸法、位置、及び/又は形状の変動の利点からの恩典を受け、この変動の平均的マグニチュードは、ドットの一部の少なくとも1つの寸法、及び/又は印刷に起因する予測不能な変動の大きさの程度のものであり、好ましくは、これらの寸法の最初のものよりも小さいことは理解されるものとする。容易に理解されるように、このVCDPのドットの少なくとも半分は、4つの他のドットと並置されない。それとは対照的に、半分よりも少ないドットのみが、別のドットに接触する。
【0184】
図22は、ドット寸法勾配VCDP190の拡大した一部を表している。この部分は、この図では1つの線であるが、実際にはいくつかの線の厚みの連続するリングを通じてドットの寸法が縮小されたVCDPのコーナに対応する。例えば、図22に表している部分の右下の境界リングでは、ドットの寸法は、6×6ピクセルであり、次に、その次のリングでは、5×5ピクセルであり、更に4×4ピクセルであり、以降同様に続く。
【0185】
この特定の配置により、リングのうちの少なくとも1つでは、ドットの少なくとも1つの幾何学的特性のドット単位の予測不能な変動の平均的マグニチュードは、このリングのドットの1つの寸法と同じ大きさの程度のものである。
そのようなVCDPは、文書内に所定の数のドットを挿入するのにコンパクト性の利点を表すのと同時に、寸法、位置、及び/又は形状の変動の利点からの恩典を受け、この変動の平均的マグニチュードは、ドットの一部の少なくとも1つの寸法の大きさの程度のものであり、好ましくは、この寸法、及び/又は印刷の平均予測不能幾何学的変動よりも小さいことは理解されるものとする。
【0186】
同じ画像を多数回印刷するために同じ版が用いられる印刷方法では、この版からのこれらの印刷物の各々は、これらの各々の印刷物をこの版の他の印刷物の全てから一意的に区別することを可能にすることは公知であり、本明細書には、これらのインプリントを抽出及び比較し、更にこれらのインプリントの固有性を最大にする画像を発生させるためのいくつかの方法を提供するものである。
【0187】
本発明者は、各版もまた、それが実現する印刷物の各々において見出される固有のインプリントを有することを見出した。印刷物の取り込み画像を版の取り込み画像と比較することにより、ある一定の印刷物が特定の版から生じたものであるか否かを決定することができることが見出された。更に、一層予想外なことに、2つの印刷物の取り込み画像を比較することにより、これら2つの印刷物が同じ版から生じたものであるか否かを決定することができることも見出された。
【0188】
図30には、4×4ピクセルの等しいドットで構成されたソースデジタル画像を表している。この画像をオフセット印刷に用いられるいくつかの異なる版の上にマーク付けし、これらの版の各々に対していくつかの異なる印刷物を実現した。各印刷物は、ドットの各々において固有の形状を提供するが、それにも関わらず、同じ版からの様々な印刷物が単一の相似性を提供することに注目した。図31は、画像の3つの印刷物の左上コーナの高解像度取り込み(20、000ppiにおける)を表している。上部の2つの画像は、同じ版による印刷物からのものであり、それに対して下部の1つは、異なる版からのものである。特に、同じ版からの2つの印刷物のドット801と802は、異なってはいるが、明瞭な形状相似性を提供しており、それに対して、別の版からのドット803は、最初のものといかなる形状相似性も持たないことに注意されたい。
【0189】
版のインプリントを用いることは、偽造との戦いにおいて大きな利点を有する。実際に、各印刷物のインプリントを用いることにより、原理的には正当な印刷物を記録することが可能になり、従って、有効なセキュア化が可能になるが、これらのインプリントを記録することは、コスト又は物流の理由から、常に可能なわけではない。一方、版の異なる要素の1つ又はそれよりも多くの画像を版自体の上、又はこの版の印刷物の上のいずれにおいてもより容易に取り込むことができる。その後、疑わしい印刷物が、この版から生じたものであるか否かを決定することができる。例えば、文書のデジタルデータを含むファイルが盗難され、理論的に完璧なものとすることができるコピーを作成するのに用いられた場合に、印刷物が別の版から生じたものであり、従って、正当なものではないことを決定することができる。
【0190】
一般的に、署名の弁別要素は、テキスト内の文字の境界線、バーコードの境界のような移行区域、SIMのような高解像度情報が豊富な区域、又はAMSM及びVCDP等における印刷ドット境界に位置する。従って、弁別情報が非常に豊富な小さい区域は、集中させることができ、好ましくは、最大の詳細内容に抽出する高解像度取り込みが実施される。詳細内容の変動の豊富さを最大にする画像を発生させて挿入することもできる。例えば、図30の画像は、非常に単純であり、等しいドットを数回含むが(デジタル画像内に)、版に関する署名、並びに情報が豊富な印刷物に関する署名を与える。署名の固有性を高めるために、ドットの密度を好ましくはこれらのドットが接触することを回避しながら増加させることができることに注意されたい。画像から抽出される同じ特性は、印刷に用いられる版を識別すること、及びこの版で作成される特定の印刷物を識別することの両方のように機能する署名において用いることができることを特記する。
【0191】
図30に提供している画像を10個の異なる版上に印刷し、次に、10個の版の各々を多数回印刷した。合計で120個の画像を2400dpiで取り込み、各画像において署名として機能する特性ベクトルを画像の169個のドットの各々における濃度階調で構成した。濃度階調測定値は、得るのが簡単であり、実際にドットの印刷密度及び表面積を表し、この表面積は、それ自体、版上にマーク付けされたドットの可変の表面積に依存する。当然ながら、理論的には外形の正確な測定が、情報がより豊富であることから好ましいものになるが、2400dpiでのドットの取り込みは、この外形の非常に正確な決定を可能にしない。従って、濃度階調は、非常に劣化した情報であるが、本明細書で明らかなように、版の出所を決定するか又は同じ版から生じた2つの印刷物を検査するのには十分である。
【0192】
統計的相関性を測定し、図32に、印刷物の取り込みにおける特性ベクトルと同じ印刷物の他の取り込みにおける特性ベクトルとの間の統計的相関性を811により、同じ版からの他の印刷物の取り込みにおける特性ベクトルの間の統計的相関性を812により、更に、他の版からの印刷物の取り込みにおける特性ベクトルの間の統計的相関性を812により例示している。811では、0.6と0.65の間に位置した同じ印刷物の取り込みとの相関性が見られる。取り込みが、より高い解像度又はより良好な品質のものであった場合、1に近い値を有していたはずであることに注意されたい。812では、同じ版からの印刷物の画像からの10個の取り込みが存在し、0.2と0.3の間の相関性を有する。取り込み品質に部分的に起因してこれらの相関性が比較的低い場合であっても、これらの相関性は、0とは大きく異なり、これは、実際に版の「入れ墨」効果によって説明することができる。813では、異なる版の印刷物からの100個の取り込みが存在し、予想通りに平均で0の相関性を有する。グループ813の全ての相関性が、グループ812におけるものとは差別化されている。従って、適切に選択された閾値、例えば、0.15を用いると、同じ版から生じる画像を識別することができる。
【0193】
例えば、図31に例示している画像のような非常に高い解像度の画像が利用可能な場合には、例えば、ドットの正確な外形を利用して非常に正確な測定を行うことができる。これらの測定は、より弁別性が高く、良好な品質の署名を得ることができることを意味する。特に、当業者に公知の画像解析を用いることができる。例えば、2つの対象物の間の相似性を測定するために、角度方向に従った重心までの距離を表す1次元ベクトルによって表されるこれらの対象物の外形における相似性が利用される。そのような方法及び同じく対象物を比較するという同じ目的に用いることができる他のものが、E.R.Davies著「機械の視覚:理論、アルゴリズム、実用性」に説明されている。
【0194】
第1の実施形態では、文書のための印刷版を識別するために、以下が実施される。
−上述の印刷版によって少なくとも1つの文書を印刷する段階、
−上述の文書の少なくとも一部の少なくとも1つの画像を高解像度で取り込む段階、
−少なくとも1つの取り込み画像の幾何学的特性を抽出する段階、
−抽出された幾何学的特性を記憶する段階、
−印刷するのに上述の印刷版が用いられたか否かを決定することを求める文書候補に対して、上述の文書の幾何学的特性が記憶されている部分に対応するこの文書候補の部分の画像を高解像度で取り込む段階、
−記憶された幾何学的特性に対応する上述の文書候補の画像の幾何学的特性を抽出する段階、及び
−上述の文書候補における幾何学的特性と記憶された幾何学的特性との相関性測定値が所定の制限値よりも大きいか否かを決定する段階。
【0195】
実施形態においては、本方法は、上述に加えて、上述の版によって作成された各印刷物における全体の幾何学的特性を決定する段階、この幾何学的特性を記憶する段階、文書候補に対して、記憶された全体の幾何学的特性に対応する全体の幾何学的特性を決定する段階、及び記憶された幾何学的特性の文書候補の幾何学的特性との最も高い相関性を決定する段階を含む。
好ましくは、上述のように、互いに接触しない複数のドットを含み、上述の印刷版を用いて印刷される画像を発生させる段階が利用される。
【0196】
図34は、文書の印刷に用いられる版を決定する方法の別の実施形態における段階を示している。
最初に、段階851は、印刷される画像、例えば、上述のマトリックスを発生させる段階から成る。
次に、段階852中に、印刷版が、印刷される上述の画像でマーク付けされる。
段階854中に、上述の版を用いて少なくとも1つの文書が印刷される。
段階855中に、段階854中に作成された印刷物を有する文書の少なくとも一部の少なくとも1つの画像の取り込みが高解像度で実施される。
【0197】
段階856中に、段階855中に取り込まれた少なくとも1つの画像の幾何学的特性が抽出される。例えば、印刷画像のコーナが識別され、このコーナに基づいて、印刷画像の特定のドットが識別される。例えば、ドットの外形が抽出され、外形の角度に従ったドットの重心までの距離を表すベクトルが実現される。好ましくは、異なる画像内の同じドットの特性の平均値を形成するために、段階855中に高解像度で取り込まれたいくつかの画像が用いられる。
段階857中に、段階856中に抽出された幾何学的特性が、例えば、データベースに記憶される。
【0198】
文書が正当なものか否か、更にこの文書を印刷するのにどの版が用いられたかを探る間に、段階860中に、段階855から段階857中に利用された文書の部分に対応する文書の一部の1つの画像の取り込みが実施される。
段階861中に、段階855中に取り込まれた画像の幾何学的特性が抽出される。例えば、印刷画像のコーナが識別され、このコーナに基づいて、印刷画像の特定のドットが識別される。好ましくは、段階856で利用されたものと同じアルゴリズムが利用される。好ましくは、異なる画像内の同じドットの特性の平均値を形成するために、段階861中に高解像度で取り込まれたいくつかの画像が用いられる。
段階862中に、段階861中に抽出された幾何学的特性が、例えば、段階857中に用いられたデータベースに記憶される。
【0199】
段階863中に、段階861中に決定された幾何学的特性と、段階857からの記憶された対応するドットの幾何学的特性との相関性の測定が実施される。
段階864中に、最も高い相関性が決定される。
段階865中に、この相関性が、制限値又は「閾」値、例えば、0.15よりも大きいか否かが決定される。この決定が真である場合には、段階866中に、文書が正当なものであり、かつ最も高い相関性を表すドットを印刷した版を用いて印刷されたものであると見なされる。この決定が偽である場合には、段階867中に、文書は不法なものであると見なされる。場合によっては、第2の閾値との比較により、この文書が、最も高い相関性を提供するドットを印刷した版を用いて印刷された文書から作成されたコピーであるか否かが決定される。
【0200】
同じ版を用いて実施されたいくつかの作業における1つの作業(版が取り外れなかった一連の印刷物)を識別するためには、単純に版を識別する場合よりも多数のドット及び高い画像解像度を用いることが好ましいことが観察される。
実際に、版は、最初は正当なものであった場合でさえも、盗難されて不正な文書を印刷するのに用いられている可能性がある。版の機械的な履歴、腐食、及びあらゆる異常は、版の単純な署名よりも区別(又は識別)することが困難な作業署名に見出すことができる。
【0201】
図15は、本発明の主題である装置の特定的な実施形態を示している。この装置201、例えば、マイクロコンピュータ及びその様々な周辺機器は、デジタルデータを送受信することができる通信ネットワーク202にリンクされた通信インタフェース218を含む。また、装置201は、例えば、ハードディスクのような記憶手段214を含む。同様に、装置201は、フロッピー(登録商標)ディスク読取器215を含む。フロッピーディスク224は、処理されるデータ又は処理中のデータ、並びに装置101によって読み取られた状態でハードディスク114上に記憶される本発明を実施するプログラムコードを含むことができる。変形によると、装置が本発明を利用することを可能にするプログラムは、読取専用メモリ110(「読取専用メモリ」の頭字語でROMと呼ばれる)に記憶される。第2の変形によると、上述のものと同じ方法で記憶するために、通信ネットワーク202を用いてプログラムを受信することができる。
【0202】
装置201は、例えば、グラフィカルインタフェースを用いて、処理結果を閲覧し、装置とトランザクションを行うことを可能にする画面212を有する。ユーザは、キーボード213を用いて、データ、表面積、密度、解像度、パラメータ値、又は鍵を供給することができ、又は実行選択を行うことができる。中央演算処理装置211(図面上では「中央演算処理装置」の頭字語で「CPU」と呼ぶ)は、読取専用メモリ210又は他の記憶要素に記憶された本発明の利用に関する命令を実行する。不揮発性メモリ、例えば、ROM210に記憶された本発明の主題である装置の利用に関するプログラムは、電力投入中に、ランダムアクセスメモリRAM217内に転送され、ランダムアクセスメモリRAM217は、本発明の主題である実行可能プログラムコード、及び本発明を利用するのに必要とされる変数を記憶するためのレジスタを更に含む。明らかに、フロッピーディスク224は、コンパクトディスク又はメモリカードのようなあらゆるデータ担体によって置換することができる。より一般的には、コンピュータ又はマイクロプロセッサによって可読であり、装置に統合されるか又は統合されていない場合によっては取外し可能な情報を記憶するための手段が、本発明の主題である方法を利用するプログラムを記憶する。通信バス221は、マイクロコンピュータ201に含められるか又はそれにリンクされた様々な要素間の通信を可能にする。バス221という表現は限定的なものではなく、特に、中央演算処理装置211は、マイクロコンピュータ201のあらゆる要素に命令を直接的に又はマイクロコンピュータ201の別の要素を用いて通信することができる。
【符号の説明】
【0203】
202 ネットワーク; 212 スクリーン; 213 キーボード;
214 ハードディスク; 215 フロッピー・ディスク・リーダ;
218 通信インタフェース; 222 入出力・カード;
224 フロッピー・ディスク; 225 ディジタル・カメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書セキュア化の方法であって、
印刷における予期されない未知要素の結果として、印刷されたドットの少なくとも1つの幾何学的特性の予測不能な変動をドット毎に引き起こす、文書上にドットの分布を印刷する段階と、
前記印刷する段階の前に、前記分布のドットが、ドット間で変動する少なくとも1つの幾何学的特性を有し、かつ発生される変動の幾何学的振幅が、前記予測不能な変動の大きさの程度を有するような前記ドットの分布を発生させる段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ドット分布を発生させる前記段階中に、前記発生された変動の前記幾何学的振幅は、前記ドットの寸法よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ドット分布を発生させる前記段階中に、ドット分布が、用いられる印刷システムの前記予測不能な変動に従って発生されることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記発生させる段階中に、前記ドット分布のドットが、変動が該ドット分布において反復的ではない少なくとも1つの可変幾何学的特性を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記発生させる段階中に、前記ドット分布において、該分布の少なくとも半分のドットが、該ドット分布の4つの他のドットに対して横方向に並置されないことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ドット分布を発生させる前記段階中に、半分よりも多くのドットが、該分布のいかなる他のドットとも接触しないことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記発生された変動は、少なくとも1つの方向における、ドットの中心が該方向に垂直の平行線上に整列し、かつ該方向に該ドットの少なくとも1つの寸法だけ分離された位置に対するドットの位置の変動に対応することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記発生された変動は、少なくとも1つの方向における、該方向のドットの平均寸法に対するドットの少なくとも1つの寸法の変動に対応することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記発生された変動は、前記方向におけるドットの平均形状に対するドットの形状の変動に対応することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記発生させる段階中に、前記ドット分布は、符号化された情報を表すことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記印刷されたドット分布の画像を取り込む段階と、
前記予測不能な印刷変動に従って、前記印刷された分布の固有署名を決定する段階と、
を含むことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記予測不能な印刷変動を表すマグニチュードを決定する段階を含み、前記ドット分布を発生させる段階は、該マグニチュードに基づいていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記予測不能な印刷変動を表す前記マグニチュードに従ってコピーを検出する段階を含み、該コピーを検出する段階は、所定の値に対して該代表的なマグニチュードを比較する段階と、該比較の結果に従って文書の真正性を決定する段階とを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
印刷が、印刷における予期されない未知要素の結果として、印刷されたドットの少なくとも1つの幾何学的特性の予測不能な変動をドット毎に引き起こすように設計された、文書上にドットの分布を印刷するための手段と、
前記分布のドットが、ドット間で変動する少なくとも1つの幾何学的特性を有し、かつ該発生される変動の幾何学的振幅が、前記予測不能な変動の大きさの程度を有するように、前記印刷の前に前記ドットの分布を発生させるようになった該分布を発生させるための手段と、
を含むことを特徴とする文書セキュア化装置。
【請求項15】
文書上のドット分布を読み取る方法であって、
ドットの分布の画像を取り込む段階と、
前記ドット分布のドットの少なくとも一部の少なくとも1つの幾何学的特性変動が、印刷されたドットの少なくとも1つの幾何学的特性のドット毎の予測不能な変動の絶対値の平均値と同じ大きさの程度を有し、かつ該変動が、印刷における予期されない未知要素から生じる、該分布のドットの幾何学的変動を表す物理的マグニチュードを決定する段階と、
前記物理的マグニチュードに従って前記ドット分布の真正性を決定する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
文書上のドット分布を読み取るための装置であって、
ドットの分布の画像を取り込むための手段と、
前記ドット分布のドットの少なくとも一部の少なくとも1つの幾何学的特性変動が、印刷されたドットの少なくとも1つの幾何学的特性のドット毎の予測不能な変動の絶対値の平均値と同じ大きさの程度を有し、かつ該変動が、印刷における予期されない未知要素から生じる、該分布のドットの幾何学的変動を表す物理的マグニチュードを決定するための手段と、
前記物理的マグニチュードに従って前記ドット分布の真正性を決定するための手段と、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項1から請求項13又は請求項15のいずれか1項に記載の方法の利用を可能にする命令を備える、コンピュータシステムにロードすることができるプログラム。
【請求項18】
コンピュータプログラムの命令を保持する取外し可能又は不能のコンピュータ又はマイクロプロセッサによって読み取ることができるデータ担体であって、
請求項1から請求項13又は請求項15のいずれか1項に記載の方法の利用を可能にする、
ことを特徴とするデータ担体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28A】
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【図28B】
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【図28C】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2010−529531(P2010−529531A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509865(P2010−509865)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【国際出願番号】PCT/FR2008/000743
【国際公開番号】WO2009/004172
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(509331593)
【Fターム(参考)】