文書作成装置および文書作成プログラム
【課題】ユーザによる文章作成のための通常の作業の中で脳の状態を計測し、判定することを可能とする。
【解決手段】文章作成支援部211により、キー入力による入力操作に基づいて文章の作成を支援する。この際、入力操作の履歴を収集する。この入力操作の履歴に基づいて、判定部213が、キー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方を判定する。表示情報生成部214は、判定部213による判定結果に基づいて表示部203に表示する。
【解決手段】文章作成支援部211により、キー入力による入力操作に基づいて文章の作成を支援する。この際、入力操作の履歴を収集する。この入力操作の履歴に基づいて、判定部213が、キー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方を判定する。表示情報生成部214は、判定部213による判定結果に基づいて表示部203に表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書作成装置および文書作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脳年齢をチェックしたり、脳の活性化を促すトレーニングを行ったりすることができるコンピュータゲームが出現している。例えば、ユーザに加減算等の計算式をランダムに生成して画面上に表示し、ユーザに答えを入力させ、その正答率や所要時間を測定し、結果をグラフ表示するようなものがある。
【0003】
特許文献1には、携帯電話端末においてそろばん学習を行えるシステムが提案されている。この携帯電話端末では、サーバから得た読み上げ算の問題を端末が読み上げ、ユーザが入力した答えの正誤をサーバに返して、サーバに正誤の判定してもらい、その結果を受信する。
【特許文献1】特開2006−72281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記コンピュータゲームを利用するものは、ゲーム機等の特別なハードウェアの入手が必要である。
【0005】
特許文献1に記載の従来技術によれば、広く個人に普及している携帯電話端末を利用することにより、ゲーム機等の特別なハードウェアは不要となる。しかし、脳の状態の計測やトレーニングには、やはりそのためだけの専用のコンピュータプログラムを実行する必要がある。また、ユーザはそのためだけの時間を確保し、入力操作を行うことを強いられる。このような専用のコンピュータプログラムおよび専用の入力操作は、もちろん脳状態計測、活性化を行うにあたり、各種研究に基づいた技術的な裏づけのとれたものであることが想定され、本来はそうした専用の操作を行うことが最も好ましいと考えられる。
【0006】
しかし、専用の操作のみに特化されたために、その操作のみによる時間の消費が伴う。したがって、そのための時間を確保することができなかったり、忘れてしまったりする可能性がある。
【0007】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、ユーザによる文章作成のための通常の作業の中で脳の状態を計測し、判定することを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による文章作成装置は、キー入力による入力操作を行う入力操作部と、情報を表示する表示部と、前記入力操作部による入力操作に基づいて文章の作成を支援する文章作成支援部と、前記入力操作部による入力操作の履歴を収集する入力操作履歴収集部と、前記入力操作の履歴に基づいてキー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方を判定する判定部と、この判定部による判定結果に基づいて前記表示部に表示する表示情報を生成する表示情報生成部とを備えたものである。
【0009】
ユーザの通常の文章作成の過程での入力操作の履歴を収集することにより、キー入力の速度や正確さを判定することができる。また、その結果を表示情報に変換して、ユーザに知らせることにより、ユーザはその後、キー入力の速度や正確さを意識して入力操作を行うようになる。このことが脳のトレーニングにもつながると考えられる。
【0010】
前記表示情報生成部は、好ましくは、単位期間毎の前記キー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方の時系列の変化を表すグラフを生成する。これにより、一時の判定結果のみならず、単位期間毎の時間的経過に伴う判定結果の変化を見ることができる。
【0011】
本発明による文章作成プログラムは、キー入力による入力操作を受け付けるステップと、前記キー入力に基づいて文章の作成を支援するステップと、入力操作の履歴を収集するステップと、前記入力操作の履歴に基づいてキー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方を判定するステップと、この判定結果に基づいて表示部に表示する表示情報を生成するステップとを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、コンピュータゲームのような専用の特別なアプリケーションに対する特別な操作ではなく、通常の文書作成装置における文章作成のための操作の履歴を収集することにより脳の活性状況を判断し、ユーザにフィードバックすることができる。
【0013】
従来技術ではユーザは脳状態の検出、活性化のトレーニングを行う際に専用の操作を強いられたが、本発明により、日常のメール作成の操作でそれらのことがすべて実現できるようになる。これによって、わざわざ専用の操作を行うためのシステムをユーザが導入する必要がなくなる。のみならず、ユーザが自ら積極的に脳の活性化を行おうとすることなくとも、文章作成装置からのフィードバックを通じて間接的にその意識を持たせることができ、そのトレーニングも日常の文章作成過程で出来てしまう。したがって、ユーザの負担も軽くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
本実施の形態では、脳状態の計測および活性化を行う媒体として、一般的に普及し、ユーザの身近に存在するものということで携帯電話端末を活用する。すなわち、必要となるのは、専用の機器ではなくユーザの身近にあり日常生活ですでに必需品となり得ている機器である。また、専用の操作を促すのではなく、やはりユーザの日常生活に組み込まれた操作を活用する。通常、携帯電話端末を使用する際に行われるユーザによる入力操作は主にキー操作である。このような、通常に行われる携帯電話端末のキー操作そのものを利用して、脳状態計測を行い、脳の活性化を図る。
【0016】
携帯電話端末のキー操作の中でも、脳状態の計測を行うのに適したキー操作としてメール作成における本文入力に脳状態計測機能を付加する。また、通常のメール作成の中で、脳の活性化のトレーニングが行えるように促す機能を付加する。これにより、専用の媒体、専用の操作を経ることなく、ユーザの普段の生活の中で脳状態計測、活性化の為のトレーニングが行えるようになる。
【0017】
図1は、本発明の文書作成装置の一例としての携帯電話端末100の外観を示している。この携帯電話端末100は、いわゆる折り畳み型の携帯電話端末を示しているが、本発明は、ストレート型、スライド型等、端末の形態は特に問わない。この図では、折り畳み型の携帯端末の開放時の正面図を示している。
【0018】
この携帯電話端末100は、ヒンジ部18と、このヒンジ部18で開閉可能に連結された上部筐体14および下部筐体25を有する。上部筐体14の内側の面の上部にはスピーカ12が配置され、内側の主要面には表示部16が配置されている。
【0019】
下部筐体25の内側の面には、入力操作部が配置されている。ここには、各種の操作キーの一部としてテンキー部28が配置されている。テンキー部28の各々のキーには、複数の文字が割り当てられている。下部筐体25の最下部にはマイクが配置されている。
【0020】
これらの具体的な構成はあくまで説明のための例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
図2は、本発明による文書作成装置として機能する携帯電話端末100の概略のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0022】
携帯電話端末100は、バス115で相互に接続された、制御部101、通信部103、表示部104、操作部105、記憶部106、音声処理部110、この音声処理部110に接続されたスピーカ111(図1の12に対応)、マイク112(図1の32に対応)を備えている。
【0023】
制御部101は、CPU等のプロセッサを含み、携帯電話端末100の各部を制御する。また、制御部101は、後述する文書作成支援部等の各種処理部を実現する。
【0024】
通信部103は、RF部、変復調回路等を含み、アンテナ102を介して基地局との間で、通話および電子メールやWEBデータ等のための無線通信を行う。
【0025】
表示部104は、図1の表示部16に対応し、LCD等のディスプレイを含み、表示画面上に文字や画像等の情報を表示する。
【0026】
操作部105は、図1の下部筐体25の部分に対応し、上述したような制御キー、テンキー等の各種のキーを有し、ユーザによる指示やデータの入力操作を受け付ける。その他、タッチパネルを含んでもよい。その場合、タッチパネル上に表示されたソフトウェアキーボードによる文字の入力も本発明による「キー入力」に含まれるものとする。
【0027】
記憶部106は、ROM、RAM等を含み、CPUが実行するOSや各種アプリケーション等のプログラムやデータを記憶する。ROMには、フラッシュメモリのような再書き込み可能な不揮発性メモリを含みうる。
【0028】
音声処理部110は、音声のエンコーダ、デコーダ、DA変換器、AD変換器等を含み、スピーカ111に対する音声出力およびマイクからの音声入力を行う。
【0029】
その他、図示しないが、携帯電話端末100は、電源部、発光部、バイブレータ、等、通常の携帯電話端末が備えている機能部を備えている。また、カメラ部、非接触ICカード機能部をさらに備えてもよい。
【0030】
図3は本実施の形態における携帯電話端末100の主要な機能を示したブロック図である。
【0031】
入力操作部201および表示部203は、それぞれ図2の操作部105および表示部104に対応し、キー入力による入力操作を行う入力操作部と、情報を表示する表示部とを構成している。
【0032】
処理部200は、図2の制御部201のソフトウェア制御により実現される各種処理を実行する部位として、文章作成支援部211、入力操作履歴収集部212、判定部213、表示情報生成部214、形態素解析・単語抽出部215、校正部216、および予測変換部217を含んでいる。
【0033】
文章作成支援部211は、入力操作部201によるキー入力に基づいて文章の作成を支援する部位である。具体的には、ユーザが所定のアプリケーション(例えば電子メールやワードプロセッサ等)により、入力操作部201から文字を入力して文章を作成することを支援する部位である。作成された文章のデータは文章記憶部204に記憶される。文章記憶部204は図2の記憶部106内の領域である。
【0034】
入力操作履歴収集部212は、入力操作部201による入力操作の履歴を収集する部位である。具体的には、上記の所定のアプリケーションを用いてユーザが入力操作部201から入力した入力操作の履歴(どのようなキーをどのような順番でどれだけ押下したか等の情報)を収集し、入力操作履歴記憶部205に記憶する処理を行う部位である。入力操作履歴記憶部205は図2の記憶部106内の領域である。
【0035】
判定部213は、入力操作の履歴に基づいてキー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方を判定する部位である。より具体的には、収集された入力操作履歴に基づいて、後述するような所定の計算式により、各種のパラメータを算出する。
【0036】
表示情報生成部214は、判定部213による判定結果に基づいて表示部203に表示する表示情報を生成する部位である。より具体的には、単位期間毎の前記キー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方の時系列の変化を表すグラフを生成する。
【0037】
形態素解析・単語抽出部215は、作成された文章の形態素解析および単語の抽出を行う部位である。
【0038】
校正部216は、作成された文章の誤り、不備を調べる部位である。
【0039】
予測変換部217は、かな入力の際に入力した文字のみから実際にユーザが入力したいと考えられる単語全体或いは単語群全体(単語の組み合わせ)を提供する機能である。これにより少ないキー操作で多くの文字列の入力が可能となる。
【0040】
本実施の形態では、入力される文章は電子メールを例とする。以下に、電子メールの作成に伴い収集されるキー操作の入力操作履歴および、この入力操作履歴に基づいて求められる各種の入力パラメータおよび出力パラメータについて説明する。テキスト文書作成において脳活性状態に関連する項目は、文書作成の効率性、主として正確さとスピードである。
【0041】
本実施の形態では、実際にユーザによるキー操作の動向を獲得するため、またそれらを一定期間ごとにデータベース化するために、キー操作の履歴を確認、保持する機能を携帯電話端末に追加する。現状でもキー操作を携帯電話端末で認識することによって様々な機能を携帯電話端末上で行っているので、キー操作の履歴を収集、保持することは容易である。
【0042】
以下では、キー入力による入力操作履歴に基づく各種パラメータの取得、計算の具体例について説明する。
【0043】
<キー入力速度>
図4は、キー入力による入力操作履歴に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの一例を示している。
【0044】
ここでの入力パラメータは、メールあたりの同キー連続押下回数、メールあたりの異なるキー押下回数、および、メールあたりのメール作成時間である。判定部213はこれらの入力パラメータに基づいて、メールあたりのキー入力速度に相当する出力パラメータ(ここでは数値)を算出する。
【0045】
一般的な携帯電話端末における文字入力の際に使用される予測変換機能や、変換による文字数の変化、一文字入力あたりにかかるキー押下回数も異なるので、作成された文章に含まれる文字の個数では、キー入力速度を正確に判断できない。そこで、本実施の形態では単純なキー操作の回数を単位時間あたりの割合として検出する。この割合は、キー入力速度と判断できる。キー入力速度が速い程、脳が活性化されていると判断される。
【0046】
ただし、テンキーを用いた仮名やアルファベットの文字入力では、同一のキーに割り当てられた複数の文字のうちどの文字を入力対象とするかによって、文字数としては同じ1文字でも同キーの連続操作の回数が異なる。したがって、全てのキー操作に同じ重みをつけることは不公平である。そこで同キーの連続押下と異なるキー間の押下とはその重みを異なるものとする。具体的には、異なるキー間の押下の重みを、同キーの連続押下の重みより大きくする。
【0047】
具体的にはメール本文作成画面が開かれ、最初に押下されたキー操作から、メール本文作成画面が閉じられる前の最後に押下されたキー操作までを計測する。
( (同キー連続押下回数) × (重みa) + (異なるキー押下回数) × (重みb) + 1 ) /(最初のキー押下から最後のキー押下までの時間)
【0048】
なお、a,bは正の実数であり、a<bとする。分子の+1は最初に押下されたキーの回数に相当し、キー操作1回の場合は測定不能になる。
【0049】
これによって導かれた結果は、後述するようにメール毎の結果とともに、1日ごと1週間ごと、1月毎、等の所定の期間における平均値も算出し、保持する。図4の例では、ある週に作成された複数のメールの「メールあたりのキー入力速度」からその週の「週平均キー入力速度」を算出し、これを各週について実行する。さらに、ある月に作成された複数のメールの「メールあたりのキー入力速度」から「月平均キー入力速度」を算出し、これを各月について実行する。「月平均キー入力速度」は「メールあたりのキー入力速度」からではなく「週平均キー入力速度」から求めることもできる。
【0050】
なお、途中で作成メールが破棄された場合は測定不能とし、編集によって文書を再利用する場合は編集時に行われた操作分だけ上記の方法で計測結果を獲得する。
【0051】
ただし、この機能は入力操作の迅速さだけを計測するものであり、一意に脳状態を判断できるものではない。
【0052】
<誤入力の割合(誤入力率)>
図5は、キー入力による入力操作履歴に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの他の例を示している。この例では、「メールあたりのキーの総押下回数」、「メールあたりのクリアキー押下回数」を入力パラメータとし、判定部213はこれらに基づいて「メールあたりの誤入力率」に相当する数値を求めている。
【0053】
具体的には、メール作成画面における最初のキー押下から最後のキー押下までの間に何度クリアキーが押下されたかを計測し、キーの全押下回数に対する割合、つまり誤入力の割合を求める。
(クリアキー押下回数) /(キーの全押下回数)
【0054】
分母をキーの全押下回数ではなく所定時間、または所定期間、とすることもできる。
【0055】
この式により求められる数値はより小さい程、脳が活性化されていると判断される。これは入力操作の正確さを計測するものであり、一意に脳状態を判断できるものではなく、上記キー入力速度と併せることで、正確な入力とスピードという両面から脳の状態を計測する。
【0056】
こちらの結果もメールあたりの結果とともに、1日ごと、1週間ごと等、一定期間毎の平均値も保持する。
【0057】
<表現の多様性>
図6は、キー入力により入力された文章に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの例を示している。
【0058】
上述した例は単純な入力に特化した履歴の収集であり、文章や言葉の意味を問うものではない。これは、実際に入力内容に左右されること無く公平に、脳の状態を検出するために必要な機能である。更なる脳活性度を計測する手段として表現方法の多様性を計測する。これは個々のユーザが獲得している語彙の総量が異なる故に単純にユーザ間での相違を計ることは公平ではない。しかし、個人としてのユーザという観点で見ればより豊富な語彙を用いている時のほうが、より脳が活性化された状態で文章を作成しているとみなせ得る。
【0059】
そこで、作成された文章の形態素解析および単語の抽出を行う手段をさらに備え、判定部は、メールあたりまたは所定期間あたりののべ入力単語数およびメールあたりまたは所定期間あたりの使用単語数に基づいて、所定期間あたりの表現の多様性を表す数値をさらに求める。
【0060】
具体的な方法としては、作成された文書の形態素解析を行い、全単語数(使用されたのべ単語数)に対する使用された単語の種類を測定し、如何に多様な単語を使用しているかを計測する。本実施の形態では、絵文字、顔文字、記号等は単語と見なさない。
【0061】
図6に示すように、この測定方法は、メールあたりののべ入力単語数W1とメール当たりの使用単語数W2とを入力パラメータとして用い、次の出力パラメータを算出する。
(使用単語数W2) /(のべ単語数W1)
【0062】
ただし、ある程度の文章量が必要となるので、実際に利用する出力パラメータは、メールごとではなく、週、月等の一定期間ごと、あるいは一定単語数ごとにまとめて結果として保持する。
【0063】
<文章の正確性>
図7は、キー入力により入力された文章に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの他の例を示している。
【0064】
判定部は、メールあたりののべ入力単語数、校正部により得られたメールあたりの間違い箇所数に基づいてメールあたり誤表現率に相当する数値を求めることもできる。
【0065】
すなわち、正確さに欠く表現方法(箇所)の数W3を獲得し、全単語数(のべ単語数)W1に対する割合Ex:W3/W1を導き出す。
(表現の間違い箇所数W3)/(のべ単語数W1)
【0066】
この場合も、メールあたりの誤表現率だけでなく、週、月等の所定期間あたりの誤表現率(平均値)を求めることができる。
【0067】
なお、文章の正確性では、結果をフィードバックすることにより、ユーザは正しい文章、美しい日本語の学習にもなる。ただし、特に若者を中心とした携帯電話でのメールでは、教科書的に正しい日本語以上に現代の日本語の変化の先端を直接表す役目にも担っている。したがって、解析する側はそれらにも対応していくか、或いはユーザ側がこの機能自体を使用しないようなオプション設定も必要となる。(意図的に教科書的な正確さを持たない文書を入力した際に、計算結果に影響するため)。
【0068】
<予測変換機能の使用>
図8は、キー入力により入力された文章に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの他の例を示している。
【0069】
入力された文字に対して入力候補の予測を行う予測変換手段をさらに備える携帯電話端末において、判定部は、予測により提示された複数の入力候補の中から実際に選択された候補までの距離D、当該文字の入力から候補の選択確定までの時間Tおよびその間のキー押下回数Nを入力パラメータとして用い、メールあたりの候補選択操作の速さに相当する数値である全T/Dの平均値Sm、および、候補選択操作の正確さに相当する数値である全N/Dの平均値Emを求める。
【0070】
予測変換機能を用いた際に、実際の入力文字確定までのユーザ操作も脳の状態を測る一つの尺度とする。具体的には実際に選択された候補までの距離と、確定までの時間、および、確定までのキー押下回数を計測する。候補までの距離を基準として、時間はより早く、キー押下回数は距離と同等であり、よりそれに近い方が好ましい。キー押下回数は最終的に選択された候補をユーザ操作が通り越してしまい、再度その候補までたどり着くという操作で多くなる。これはやはり正確さ(キー押下回数で)と迅速さ(所用時間で)の両方を計測する手段である。
【0071】
予測変換機能とはかな入力の際に入力した文字のみから実際にユーザが入力したいと考えられる単語全体或いは単語群全体(単語の組み合わせ)を提供する機能である。これにより少ないキー操作で多くの文字列の入力が可能となる。予測変換機能を用いた際に、実際の入力文字確定までのユーザ操作も脳の状態を測る一つの尺度とする。具体的には実際に選択された候補までの距離と、確定までの時間、および、確定までのキー押下回数を計測する。候補までの距離を基準として、時間はより早く、キー押下回数は距離と同等であり、よりそれに近い方が好ましい。キー押下回数は最終的に選択された候補をユーザ操作が通り越してしまい、再度その候補までたどり着くという操作で多くなる。これはやはり正確さ(キー押下回数で)と迅速さ(所用時間で)の両を計測する手段である。
【0072】
例えば、入力文字と変換候補が以下のようなものであったとする。
入力: しか
変換候補 : しかし しかも 4月 仕方 資格 しかしながら シカゴ 紫外線 仕方ない 仕掛け 視界 滋賀県 しかた 視覚 しかと シカト 歯科 然し 市街地 滋賀 鹿 しかるに
【0073】
また、このときの目的の単語が”鹿”であったとする。
【0074】
この場合、それぞれの入力パラメータは次のとおりである。
実際に選択された候補までの距離D: 先頭の変換候補“しかし”は1、”しかも”は2、以下順に「鹿」は21になる
確定までの時間T:入力文字の最初の文字「し」のキーが押下されてから「鹿」が選択されるまでの時間(この値は小さいほど良い)
確定までのキー押下回数N: 入力文字の最初の文字「し」のキーが押下されてから「鹿」を確定するまでのキー押下回数、(最短キー押下回数は21であるが、通り過ぎたりすると操作数が多くなる)(この値は小さいほうが良い)
【0075】
これらの入力パラメータに基づく出力パラメータとしては、次に示すように、入力操作の迅速さに対応するパラメータおよび正確さに対応するパラメータを得ることができる。
迅速さ:時間T/距離D
正確さ:キー押下回数N/距離D
【0076】
なお、メールあたりの出力パラメータSm,Emだけでなく、週、月あたりの一定期間のSmの平均値やEmの平均値を求める。
【0077】
<ユーザへの計算結果のフィードバック>
ユーザに対するフィードバックとして、脳状態計測結果(すなわち、収集した入力パラメータおよび/または算出した出力パラメータ)を表示画面上に提示する。この提示の方法としては、個々のパラメータを数値(テキスト)で表示したり、グラフ(棒グラフや折れ線グラフ、等)で表示したりすることができる。
(1)直近の脳状態計測結果
(2)一定期間の計測によって得られた脳状態計測値の履歴(時間変化)をグラフ化したもの
【0078】
図9に、出力パラメータとしての「誤入力率」の時間変化を棒グラフで表示したもの(a)、「入力速度」の時間変化を折れ線グラフで表示したもの(b)、および両出力パラメータの時間変化を同画面上に重ねて表示したもの(c)の例を示している。このように出力パラメータの時間変化をグラフでユーザに示すことによって、ある程度キー入力操作に習熟したユーザにとっては、自身の脳の状態、すなわち活性度、集中力等、ならびにその変化を認識することができる。どの出力パラメータが個別にどのような脳の状態に関係しているかは定かでないが、それぞれの出力パラメータが脳の状態に関係していることは容易に推測できる。
【0079】
ユーザは、入力速度が低下したり、誤入力率が増加したりしたとき、そのことを明確に認識することができる。このような出力パラメータの変化をユーザが意識することによって、通常のメール作成中においてもその行為自体がトレーニングとなり、脳の更なる活性化に繋がると考えられる。なお、キー入力操作に習熟していないユーザにとっては、本発明は習熟度の確認に利用できる。
【0080】
図10は、本実施の形態におけるメール処理の手順例を示したフローチャートである。この処理は図3の処理部200が実行する。
【0081】
ユーザによる指示に応じて、表示部16(104)にメール編集画面を開く(S11)。その後、ユーザによる文字の入力があれば(S12,Yes)、メール編集を開始する(S13)。編集後のメールは逐次、文章記憶部204に記憶される。文字入力のためのユーザのキー操作に応じて入力操作履歴を収集し、入力操作履歴記憶部205に記憶する(S14)。メールの入力が終了するまで(S15,No)、ステップS12に戻り、上記の処理を繰り返す。
【0082】
メールの入力が終了した後(S15,Yes)、ユーザによるメール送信指示を待つ(S16)。指示があれば(S16,Yes)、当該メールを指定された相手宛てに送信し(S16)、その後、ステップS18へ進む。メール送信が留保されたら、メールを送信することなく、ステップS18へ進む。
【0083】
ステップS18では、入力操作履歴に基づいて、上述したような各種パラメータの計算を行う。別途のユーザ設定により計算結果を表示する旨の設定が行われている場合(S19,Yes)、計算結果を所定の形式で表示する(S20)。このように計算結果を表示する旨の設定にしておけば、メール作成ごとにユーザに脳活性の意識を促すことが可能である。また、その表示がわずらわしい場合は設定によって非表示することも可能となる。
【0084】
ステップS20での表示は、メールあたりの計算結果のみの表示であってもよいし、ある期間での計算結果(例えば図9に示したようなグラフ)の表示であってもよい。また、それらをユーザが選択できるようにしてもよい。
【0085】
なお、ここでは、メール処理の一部として各種パラメータの計算およびその計算結果の表示を行うものとしたが、別途、メール処理では入力操作履歴のみを収集するものとしてもよい。その後の処理は、別途、専用のアプリケーションを用意して、そのアプリケーションにより、計算および表示を行うようにしてもよい。
【0086】
以上の説明では、各種パラメータの計算を携帯電話端末が自身で行うものとした。処理負荷や処理速度の観点から端末自身が計算を行うのではなく、外部のサーバにその計算を依頼し、計算結果を受領するという構成も採りうる。図11にそのような本発明の変形例の概略構成を示す。
【0087】
携帯電話端末100は、通信ネットワーク300を介してサーバ400と接続される。通信ネットワーク300は携帯電話網であってもよいし、インターネットであってもよい。
【0088】
図12は、この変形例における携帯電話端末100の主要な機能を示したブロック図である。図3に示した要素と同様の要素には同じ参照番号を付して、重複した説明を省略する。図12においては処理部200aが図3の処理部200の構成に加えて、サーバに計算処理等を依頼するサーバ問合わせ部218を含んでいる。また、通信部207を追加している。通信部207としては、図2の通信部103を利用することができる。
【0089】
この変形例におけるメール処理のフローチャートは図10に示したものと基本的には同じである。異なる点は、ステップS18の「各種パラメータの計算」において、入力操作履歴をサーバ400へ送信して、所定の計算を要求し、サーバ400からその計算結果を受信することである。
【0090】
また、上述した一部の入力パラメータの処理についてのみサーバに依頼することも考えられる。例えば、図6,図7で説明した処理については、文章の形態素解析および単語の抽出を行うことが必要とされる。このような処理は比較的処理負荷が重い。そこで、このような一部の処理についてのみ、サーバに処理を依頼することも可能である。図6,図7の処理では、入力パラメータはキー入力操作の履歴は不要であり、メール本文の情報があれば足りる。そこで、メール本文をサーバに送って、サーバで単語の抽出および計数、計算を依頼することができる。これらの一部の処理については、携帯電話端末では、返送された計算結果のみを保持する。この場合のサーバとしては、本来のメールの転送処理を行うメールサーバがこの処理を担当してもよい。その場合、実際にメールを送信したときに、計算結果が得られることになる。
【0091】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。
【0092】
例えば、入力操作部の入力方法も多様化している傾向があるので、入力操作履歴を獲得することにより、各種携帯電話端末ごとに異なる特徴的な入力方法を活かした独自の判断基準に基づくパラメータが採用できると考えられる。
【0093】
また、携帯電話端末についてのみ説明したが、本発明は、文章作成を行う任意の装置に適用可能である。
【0094】
上記では、計測結果を表示したが、計測結果に基づいてユーザへ脳活性のためのヒントとなる情報を提供するようにしてもよい。
【0095】
例えば、キー入力速度に関する例では、次のようないずれかの基準値を設ける。
(1)前回のメール作成における入力速度
(2)今までの最高速度
(3)目標とすべき速度(ユーザによる設定またはアプリケーションによる自動設定)
【0096】
このような予め定めた、またはユーザが選択したいずれかの基準値と、今回の入力操作の入力速度とを比較する。ユーザに対して出力するメッセージはどの基準を選ぶかによって異なりうるが、例えば、「前回のメール作成における入力速度」を基準とした場合に、入力速度が基準値に対して低い場合には「入力速度が落ちています。さらに入力速度を上げるよう努力して下さい。」、入力速度が基準値に対して同等の場合には「前回の入力速度とほぼ同じです。」、入力速度が基準値を上回った場合には「入力速度が向上しました。この調子です。」等のメッセージをユーザに対して出力する。また、より具体的には図13に示すように、今回のメールの操作結果131(キー押下数、所要時間、クリアキー押下数)とともに、所定のメッセージ「クリアキーをc回に減らし、y秒で書ければ目標達成!!」を表示することもできる。あるいは、「今回の入力操作はx秒かかりました。基準値を満たすにはy秒で操作を行わなければなりません。」等のメッセージも考えられる。
【0097】
表現の多様性に関しては、特にユーザが多用している単語や表現と同義となる単語や表現を、内蔵の辞書(図示せず)の参照によりユーザに対して紹介することが一例として挙げられる。あるいは、同義となる表現の紹介は行わず、ユーザが多用している単語や表現をユーザに知らせるのみでも、ユーザに今後気にかけるように仕向けることができる。
【0098】
誤表現率に関しては、例えば、校正を行った文章全体を表示する。その際、訂正した箇所は文字色、フォント、スタイル等の表示属性の変更で示す。または、間違いの箇所とその訂正だけを画面を示すようにしてもよい。
【0099】
クリアキーの使用割合に関しては、後何回クリアキーを押さなければ、上記のような基準値に達した、等のメッセージをユーザに返す。
【0100】
また、ユーザの入力操作結果に基づいてユーザの脳年齢を推測して出力することも可能である。例えば、入力速度と誤入力率とをそれぞれ複数段階に分類し、両者の組み合わせに対して脳年齢の複数段階を割り当て、脳年齢のランク付けを行うことが可能である。例えば、入力速度がx以上かつ誤入力率がp以下という判定基準を満たせばsランク、入力速度がx未満y以上かつ誤入力率がp未満かつq以上という判定基準を満たせばaランク、等である。
【0101】
上述した、キー入力速度やクリアキーの使用割合についても、同様なランク付けを行って、ユーザに示すことも可能である。
【0102】
上記実施の形態で説明した機能をコンピュータで実現するためのコンピュータプログラム(文章作成プログラム)およびプログラムをコンピュータ読み取り可能に格納した記録媒体も本発明に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の文書作成装置の一例としての携帯電話端末の外観を示した図である。
【図2】図1に示した携帯電話端末の概略のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】図1,図2に示した携帯電話端末の主要な機能を示したブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態における、キー入力による入力操作履歴に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの一例を示した図である。
【図5】本発明の実施の形態における、キー入力による入力操作履歴に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの他の例を示した図である。
【図6】本発明の実施の形態における、キー入力により入力された文章に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの例を示した図である。
【図7】本発明の実施の形態における、キー入力により入力された文章に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの他の例を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態における、キー入力により入力された文章に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの他の例を示した図である。
【図9】本発明の実施の形態における、出力パラメータとしての「誤入力率」の時間変化を棒グラフで表示したもの(a)、「入力速度」の時間変化を折れ線グラフで表示したもの(b)、および両出力パラメータの時間変化を同画面上に重ねて表示したもの(c)の例を示した図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるメール処理の手順例を示したフローチャートである。
【図11】本発明の変形例の概略構成を示す図である。
【図12】本発明のの変形例における携帯電話端末の主要な機能を示したブロック図である。
【図13】本発明の実施の形態における画面例の説明図である。
【符号の説明】
【0104】
100…携帯電話端末、101…制御部、102…アンテナ、103…通信部、104…表示部、105…操作部、106…記憶部、110…音声処理部、111…スピーカ、112…マイク、115…バス、200…処理部、200a…処理部、201…制御部、201…入力操作部、203…表示部、204…文章記憶部、205…入力操作履歴記憶部、207…通信部、211…文章作成支援部、212…入力操作履歴収集部、213…判定部、214…表示情報生成部、215…形態素解析・単語抽出部、216…校正部、217…予測変換部、218…サーバ問合わせ部、300…通信ネットワーク、400…サーバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書作成装置および文書作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脳年齢をチェックしたり、脳の活性化を促すトレーニングを行ったりすることができるコンピュータゲームが出現している。例えば、ユーザに加減算等の計算式をランダムに生成して画面上に表示し、ユーザに答えを入力させ、その正答率や所要時間を測定し、結果をグラフ表示するようなものがある。
【0003】
特許文献1には、携帯電話端末においてそろばん学習を行えるシステムが提案されている。この携帯電話端末では、サーバから得た読み上げ算の問題を端末が読み上げ、ユーザが入力した答えの正誤をサーバに返して、サーバに正誤の判定してもらい、その結果を受信する。
【特許文献1】特開2006−72281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記コンピュータゲームを利用するものは、ゲーム機等の特別なハードウェアの入手が必要である。
【0005】
特許文献1に記載の従来技術によれば、広く個人に普及している携帯電話端末を利用することにより、ゲーム機等の特別なハードウェアは不要となる。しかし、脳の状態の計測やトレーニングには、やはりそのためだけの専用のコンピュータプログラムを実行する必要がある。また、ユーザはそのためだけの時間を確保し、入力操作を行うことを強いられる。このような専用のコンピュータプログラムおよび専用の入力操作は、もちろん脳状態計測、活性化を行うにあたり、各種研究に基づいた技術的な裏づけのとれたものであることが想定され、本来はそうした専用の操作を行うことが最も好ましいと考えられる。
【0006】
しかし、専用の操作のみに特化されたために、その操作のみによる時間の消費が伴う。したがって、そのための時間を確保することができなかったり、忘れてしまったりする可能性がある。
【0007】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、ユーザによる文章作成のための通常の作業の中で脳の状態を計測し、判定することを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による文章作成装置は、キー入力による入力操作を行う入力操作部と、情報を表示する表示部と、前記入力操作部による入力操作に基づいて文章の作成を支援する文章作成支援部と、前記入力操作部による入力操作の履歴を収集する入力操作履歴収集部と、前記入力操作の履歴に基づいてキー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方を判定する判定部と、この判定部による判定結果に基づいて前記表示部に表示する表示情報を生成する表示情報生成部とを備えたものである。
【0009】
ユーザの通常の文章作成の過程での入力操作の履歴を収集することにより、キー入力の速度や正確さを判定することができる。また、その結果を表示情報に変換して、ユーザに知らせることにより、ユーザはその後、キー入力の速度や正確さを意識して入力操作を行うようになる。このことが脳のトレーニングにもつながると考えられる。
【0010】
前記表示情報生成部は、好ましくは、単位期間毎の前記キー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方の時系列の変化を表すグラフを生成する。これにより、一時の判定結果のみならず、単位期間毎の時間的経過に伴う判定結果の変化を見ることができる。
【0011】
本発明による文章作成プログラムは、キー入力による入力操作を受け付けるステップと、前記キー入力に基づいて文章の作成を支援するステップと、入力操作の履歴を収集するステップと、前記入力操作の履歴に基づいてキー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方を判定するステップと、この判定結果に基づいて表示部に表示する表示情報を生成するステップとを備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、コンピュータゲームのような専用の特別なアプリケーションに対する特別な操作ではなく、通常の文書作成装置における文章作成のための操作の履歴を収集することにより脳の活性状況を判断し、ユーザにフィードバックすることができる。
【0013】
従来技術ではユーザは脳状態の検出、活性化のトレーニングを行う際に専用の操作を強いられたが、本発明により、日常のメール作成の操作でそれらのことがすべて実現できるようになる。これによって、わざわざ専用の操作を行うためのシステムをユーザが導入する必要がなくなる。のみならず、ユーザが自ら積極的に脳の活性化を行おうとすることなくとも、文章作成装置からのフィードバックを通じて間接的にその意識を持たせることができ、そのトレーニングも日常の文章作成過程で出来てしまう。したがって、ユーザの負担も軽くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
本実施の形態では、脳状態の計測および活性化を行う媒体として、一般的に普及し、ユーザの身近に存在するものということで携帯電話端末を活用する。すなわち、必要となるのは、専用の機器ではなくユーザの身近にあり日常生活ですでに必需品となり得ている機器である。また、専用の操作を促すのではなく、やはりユーザの日常生活に組み込まれた操作を活用する。通常、携帯電話端末を使用する際に行われるユーザによる入力操作は主にキー操作である。このような、通常に行われる携帯電話端末のキー操作そのものを利用して、脳状態計測を行い、脳の活性化を図る。
【0016】
携帯電話端末のキー操作の中でも、脳状態の計測を行うのに適したキー操作としてメール作成における本文入力に脳状態計測機能を付加する。また、通常のメール作成の中で、脳の活性化のトレーニングが行えるように促す機能を付加する。これにより、専用の媒体、専用の操作を経ることなく、ユーザの普段の生活の中で脳状態計測、活性化の為のトレーニングが行えるようになる。
【0017】
図1は、本発明の文書作成装置の一例としての携帯電話端末100の外観を示している。この携帯電話端末100は、いわゆる折り畳み型の携帯電話端末を示しているが、本発明は、ストレート型、スライド型等、端末の形態は特に問わない。この図では、折り畳み型の携帯端末の開放時の正面図を示している。
【0018】
この携帯電話端末100は、ヒンジ部18と、このヒンジ部18で開閉可能に連結された上部筐体14および下部筐体25を有する。上部筐体14の内側の面の上部にはスピーカ12が配置され、内側の主要面には表示部16が配置されている。
【0019】
下部筐体25の内側の面には、入力操作部が配置されている。ここには、各種の操作キーの一部としてテンキー部28が配置されている。テンキー部28の各々のキーには、複数の文字が割り当てられている。下部筐体25の最下部にはマイクが配置されている。
【0020】
これらの具体的な構成はあくまで説明のための例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
図2は、本発明による文書作成装置として機能する携帯電話端末100の概略のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0022】
携帯電話端末100は、バス115で相互に接続された、制御部101、通信部103、表示部104、操作部105、記憶部106、音声処理部110、この音声処理部110に接続されたスピーカ111(図1の12に対応)、マイク112(図1の32に対応)を備えている。
【0023】
制御部101は、CPU等のプロセッサを含み、携帯電話端末100の各部を制御する。また、制御部101は、後述する文書作成支援部等の各種処理部を実現する。
【0024】
通信部103は、RF部、変復調回路等を含み、アンテナ102を介して基地局との間で、通話および電子メールやWEBデータ等のための無線通信を行う。
【0025】
表示部104は、図1の表示部16に対応し、LCD等のディスプレイを含み、表示画面上に文字や画像等の情報を表示する。
【0026】
操作部105は、図1の下部筐体25の部分に対応し、上述したような制御キー、テンキー等の各種のキーを有し、ユーザによる指示やデータの入力操作を受け付ける。その他、タッチパネルを含んでもよい。その場合、タッチパネル上に表示されたソフトウェアキーボードによる文字の入力も本発明による「キー入力」に含まれるものとする。
【0027】
記憶部106は、ROM、RAM等を含み、CPUが実行するOSや各種アプリケーション等のプログラムやデータを記憶する。ROMには、フラッシュメモリのような再書き込み可能な不揮発性メモリを含みうる。
【0028】
音声処理部110は、音声のエンコーダ、デコーダ、DA変換器、AD変換器等を含み、スピーカ111に対する音声出力およびマイクからの音声入力を行う。
【0029】
その他、図示しないが、携帯電話端末100は、電源部、発光部、バイブレータ、等、通常の携帯電話端末が備えている機能部を備えている。また、カメラ部、非接触ICカード機能部をさらに備えてもよい。
【0030】
図3は本実施の形態における携帯電話端末100の主要な機能を示したブロック図である。
【0031】
入力操作部201および表示部203は、それぞれ図2の操作部105および表示部104に対応し、キー入力による入力操作を行う入力操作部と、情報を表示する表示部とを構成している。
【0032】
処理部200は、図2の制御部201のソフトウェア制御により実現される各種処理を実行する部位として、文章作成支援部211、入力操作履歴収集部212、判定部213、表示情報生成部214、形態素解析・単語抽出部215、校正部216、および予測変換部217を含んでいる。
【0033】
文章作成支援部211は、入力操作部201によるキー入力に基づいて文章の作成を支援する部位である。具体的には、ユーザが所定のアプリケーション(例えば電子メールやワードプロセッサ等)により、入力操作部201から文字を入力して文章を作成することを支援する部位である。作成された文章のデータは文章記憶部204に記憶される。文章記憶部204は図2の記憶部106内の領域である。
【0034】
入力操作履歴収集部212は、入力操作部201による入力操作の履歴を収集する部位である。具体的には、上記の所定のアプリケーションを用いてユーザが入力操作部201から入力した入力操作の履歴(どのようなキーをどのような順番でどれだけ押下したか等の情報)を収集し、入力操作履歴記憶部205に記憶する処理を行う部位である。入力操作履歴記憶部205は図2の記憶部106内の領域である。
【0035】
判定部213は、入力操作の履歴に基づいてキー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方を判定する部位である。より具体的には、収集された入力操作履歴に基づいて、後述するような所定の計算式により、各種のパラメータを算出する。
【0036】
表示情報生成部214は、判定部213による判定結果に基づいて表示部203に表示する表示情報を生成する部位である。より具体的には、単位期間毎の前記キー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方の時系列の変化を表すグラフを生成する。
【0037】
形態素解析・単語抽出部215は、作成された文章の形態素解析および単語の抽出を行う部位である。
【0038】
校正部216は、作成された文章の誤り、不備を調べる部位である。
【0039】
予測変換部217は、かな入力の際に入力した文字のみから実際にユーザが入力したいと考えられる単語全体或いは単語群全体(単語の組み合わせ)を提供する機能である。これにより少ないキー操作で多くの文字列の入力が可能となる。
【0040】
本実施の形態では、入力される文章は電子メールを例とする。以下に、電子メールの作成に伴い収集されるキー操作の入力操作履歴および、この入力操作履歴に基づいて求められる各種の入力パラメータおよび出力パラメータについて説明する。テキスト文書作成において脳活性状態に関連する項目は、文書作成の効率性、主として正確さとスピードである。
【0041】
本実施の形態では、実際にユーザによるキー操作の動向を獲得するため、またそれらを一定期間ごとにデータベース化するために、キー操作の履歴を確認、保持する機能を携帯電話端末に追加する。現状でもキー操作を携帯電話端末で認識することによって様々な機能を携帯電話端末上で行っているので、キー操作の履歴を収集、保持することは容易である。
【0042】
以下では、キー入力による入力操作履歴に基づく各種パラメータの取得、計算の具体例について説明する。
【0043】
<キー入力速度>
図4は、キー入力による入力操作履歴に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの一例を示している。
【0044】
ここでの入力パラメータは、メールあたりの同キー連続押下回数、メールあたりの異なるキー押下回数、および、メールあたりのメール作成時間である。判定部213はこれらの入力パラメータに基づいて、メールあたりのキー入力速度に相当する出力パラメータ(ここでは数値)を算出する。
【0045】
一般的な携帯電話端末における文字入力の際に使用される予測変換機能や、変換による文字数の変化、一文字入力あたりにかかるキー押下回数も異なるので、作成された文章に含まれる文字の個数では、キー入力速度を正確に判断できない。そこで、本実施の形態では単純なキー操作の回数を単位時間あたりの割合として検出する。この割合は、キー入力速度と判断できる。キー入力速度が速い程、脳が活性化されていると判断される。
【0046】
ただし、テンキーを用いた仮名やアルファベットの文字入力では、同一のキーに割り当てられた複数の文字のうちどの文字を入力対象とするかによって、文字数としては同じ1文字でも同キーの連続操作の回数が異なる。したがって、全てのキー操作に同じ重みをつけることは不公平である。そこで同キーの連続押下と異なるキー間の押下とはその重みを異なるものとする。具体的には、異なるキー間の押下の重みを、同キーの連続押下の重みより大きくする。
【0047】
具体的にはメール本文作成画面が開かれ、最初に押下されたキー操作から、メール本文作成画面が閉じられる前の最後に押下されたキー操作までを計測する。
( (同キー連続押下回数) × (重みa) + (異なるキー押下回数) × (重みb) + 1 ) /(最初のキー押下から最後のキー押下までの時間)
【0048】
なお、a,bは正の実数であり、a<bとする。分子の+1は最初に押下されたキーの回数に相当し、キー操作1回の場合は測定不能になる。
【0049】
これによって導かれた結果は、後述するようにメール毎の結果とともに、1日ごと1週間ごと、1月毎、等の所定の期間における平均値も算出し、保持する。図4の例では、ある週に作成された複数のメールの「メールあたりのキー入力速度」からその週の「週平均キー入力速度」を算出し、これを各週について実行する。さらに、ある月に作成された複数のメールの「メールあたりのキー入力速度」から「月平均キー入力速度」を算出し、これを各月について実行する。「月平均キー入力速度」は「メールあたりのキー入力速度」からではなく「週平均キー入力速度」から求めることもできる。
【0050】
なお、途中で作成メールが破棄された場合は測定不能とし、編集によって文書を再利用する場合は編集時に行われた操作分だけ上記の方法で計測結果を獲得する。
【0051】
ただし、この機能は入力操作の迅速さだけを計測するものであり、一意に脳状態を判断できるものではない。
【0052】
<誤入力の割合(誤入力率)>
図5は、キー入力による入力操作履歴に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの他の例を示している。この例では、「メールあたりのキーの総押下回数」、「メールあたりのクリアキー押下回数」を入力パラメータとし、判定部213はこれらに基づいて「メールあたりの誤入力率」に相当する数値を求めている。
【0053】
具体的には、メール作成画面における最初のキー押下から最後のキー押下までの間に何度クリアキーが押下されたかを計測し、キーの全押下回数に対する割合、つまり誤入力の割合を求める。
(クリアキー押下回数) /(キーの全押下回数)
【0054】
分母をキーの全押下回数ではなく所定時間、または所定期間、とすることもできる。
【0055】
この式により求められる数値はより小さい程、脳が活性化されていると判断される。これは入力操作の正確さを計測するものであり、一意に脳状態を判断できるものではなく、上記キー入力速度と併せることで、正確な入力とスピードという両面から脳の状態を計測する。
【0056】
こちらの結果もメールあたりの結果とともに、1日ごと、1週間ごと等、一定期間毎の平均値も保持する。
【0057】
<表現の多様性>
図6は、キー入力により入力された文章に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの例を示している。
【0058】
上述した例は単純な入力に特化した履歴の収集であり、文章や言葉の意味を問うものではない。これは、実際に入力内容に左右されること無く公平に、脳の状態を検出するために必要な機能である。更なる脳活性度を計測する手段として表現方法の多様性を計測する。これは個々のユーザが獲得している語彙の総量が異なる故に単純にユーザ間での相違を計ることは公平ではない。しかし、個人としてのユーザという観点で見ればより豊富な語彙を用いている時のほうが、より脳が活性化された状態で文章を作成しているとみなせ得る。
【0059】
そこで、作成された文章の形態素解析および単語の抽出を行う手段をさらに備え、判定部は、メールあたりまたは所定期間あたりののべ入力単語数およびメールあたりまたは所定期間あたりの使用単語数に基づいて、所定期間あたりの表現の多様性を表す数値をさらに求める。
【0060】
具体的な方法としては、作成された文書の形態素解析を行い、全単語数(使用されたのべ単語数)に対する使用された単語の種類を測定し、如何に多様な単語を使用しているかを計測する。本実施の形態では、絵文字、顔文字、記号等は単語と見なさない。
【0061】
図6に示すように、この測定方法は、メールあたりののべ入力単語数W1とメール当たりの使用単語数W2とを入力パラメータとして用い、次の出力パラメータを算出する。
(使用単語数W2) /(のべ単語数W1)
【0062】
ただし、ある程度の文章量が必要となるので、実際に利用する出力パラメータは、メールごとではなく、週、月等の一定期間ごと、あるいは一定単語数ごとにまとめて結果として保持する。
【0063】
<文章の正確性>
図7は、キー入力により入力された文章に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの他の例を示している。
【0064】
判定部は、メールあたりののべ入力単語数、校正部により得られたメールあたりの間違い箇所数に基づいてメールあたり誤表現率に相当する数値を求めることもできる。
【0065】
すなわち、正確さに欠く表現方法(箇所)の数W3を獲得し、全単語数(のべ単語数)W1に対する割合Ex:W3/W1を導き出す。
(表現の間違い箇所数W3)/(のべ単語数W1)
【0066】
この場合も、メールあたりの誤表現率だけでなく、週、月等の所定期間あたりの誤表現率(平均値)を求めることができる。
【0067】
なお、文章の正確性では、結果をフィードバックすることにより、ユーザは正しい文章、美しい日本語の学習にもなる。ただし、特に若者を中心とした携帯電話でのメールでは、教科書的に正しい日本語以上に現代の日本語の変化の先端を直接表す役目にも担っている。したがって、解析する側はそれらにも対応していくか、或いはユーザ側がこの機能自体を使用しないようなオプション設定も必要となる。(意図的に教科書的な正確さを持たない文書を入力した際に、計算結果に影響するため)。
【0068】
<予測変換機能の使用>
図8は、キー入力により入力された文章に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの他の例を示している。
【0069】
入力された文字に対して入力候補の予測を行う予測変換手段をさらに備える携帯電話端末において、判定部は、予測により提示された複数の入力候補の中から実際に選択された候補までの距離D、当該文字の入力から候補の選択確定までの時間Tおよびその間のキー押下回数Nを入力パラメータとして用い、メールあたりの候補選択操作の速さに相当する数値である全T/Dの平均値Sm、および、候補選択操作の正確さに相当する数値である全N/Dの平均値Emを求める。
【0070】
予測変換機能を用いた際に、実際の入力文字確定までのユーザ操作も脳の状態を測る一つの尺度とする。具体的には実際に選択された候補までの距離と、確定までの時間、および、確定までのキー押下回数を計測する。候補までの距離を基準として、時間はより早く、キー押下回数は距離と同等であり、よりそれに近い方が好ましい。キー押下回数は最終的に選択された候補をユーザ操作が通り越してしまい、再度その候補までたどり着くという操作で多くなる。これはやはり正確さ(キー押下回数で)と迅速さ(所用時間で)の両方を計測する手段である。
【0071】
予測変換機能とはかな入力の際に入力した文字のみから実際にユーザが入力したいと考えられる単語全体或いは単語群全体(単語の組み合わせ)を提供する機能である。これにより少ないキー操作で多くの文字列の入力が可能となる。予測変換機能を用いた際に、実際の入力文字確定までのユーザ操作も脳の状態を測る一つの尺度とする。具体的には実際に選択された候補までの距離と、確定までの時間、および、確定までのキー押下回数を計測する。候補までの距離を基準として、時間はより早く、キー押下回数は距離と同等であり、よりそれに近い方が好ましい。キー押下回数は最終的に選択された候補をユーザ操作が通り越してしまい、再度その候補までたどり着くという操作で多くなる。これはやはり正確さ(キー押下回数で)と迅速さ(所用時間で)の両を計測する手段である。
【0072】
例えば、入力文字と変換候補が以下のようなものであったとする。
入力: しか
変換候補 : しかし しかも 4月 仕方 資格 しかしながら シカゴ 紫外線 仕方ない 仕掛け 視界 滋賀県 しかた 視覚 しかと シカト 歯科 然し 市街地 滋賀 鹿 しかるに
【0073】
また、このときの目的の単語が”鹿”であったとする。
【0074】
この場合、それぞれの入力パラメータは次のとおりである。
実際に選択された候補までの距離D: 先頭の変換候補“しかし”は1、”しかも”は2、以下順に「鹿」は21になる
確定までの時間T:入力文字の最初の文字「し」のキーが押下されてから「鹿」が選択されるまでの時間(この値は小さいほど良い)
確定までのキー押下回数N: 入力文字の最初の文字「し」のキーが押下されてから「鹿」を確定するまでのキー押下回数、(最短キー押下回数は21であるが、通り過ぎたりすると操作数が多くなる)(この値は小さいほうが良い)
【0075】
これらの入力パラメータに基づく出力パラメータとしては、次に示すように、入力操作の迅速さに対応するパラメータおよび正確さに対応するパラメータを得ることができる。
迅速さ:時間T/距離D
正確さ:キー押下回数N/距離D
【0076】
なお、メールあたりの出力パラメータSm,Emだけでなく、週、月あたりの一定期間のSmの平均値やEmの平均値を求める。
【0077】
<ユーザへの計算結果のフィードバック>
ユーザに対するフィードバックとして、脳状態計測結果(すなわち、収集した入力パラメータおよび/または算出した出力パラメータ)を表示画面上に提示する。この提示の方法としては、個々のパラメータを数値(テキスト)で表示したり、グラフ(棒グラフや折れ線グラフ、等)で表示したりすることができる。
(1)直近の脳状態計測結果
(2)一定期間の計測によって得られた脳状態計測値の履歴(時間変化)をグラフ化したもの
【0078】
図9に、出力パラメータとしての「誤入力率」の時間変化を棒グラフで表示したもの(a)、「入力速度」の時間変化を折れ線グラフで表示したもの(b)、および両出力パラメータの時間変化を同画面上に重ねて表示したもの(c)の例を示している。このように出力パラメータの時間変化をグラフでユーザに示すことによって、ある程度キー入力操作に習熟したユーザにとっては、自身の脳の状態、すなわち活性度、集中力等、ならびにその変化を認識することができる。どの出力パラメータが個別にどのような脳の状態に関係しているかは定かでないが、それぞれの出力パラメータが脳の状態に関係していることは容易に推測できる。
【0079】
ユーザは、入力速度が低下したり、誤入力率が増加したりしたとき、そのことを明確に認識することができる。このような出力パラメータの変化をユーザが意識することによって、通常のメール作成中においてもその行為自体がトレーニングとなり、脳の更なる活性化に繋がると考えられる。なお、キー入力操作に習熟していないユーザにとっては、本発明は習熟度の確認に利用できる。
【0080】
図10は、本実施の形態におけるメール処理の手順例を示したフローチャートである。この処理は図3の処理部200が実行する。
【0081】
ユーザによる指示に応じて、表示部16(104)にメール編集画面を開く(S11)。その後、ユーザによる文字の入力があれば(S12,Yes)、メール編集を開始する(S13)。編集後のメールは逐次、文章記憶部204に記憶される。文字入力のためのユーザのキー操作に応じて入力操作履歴を収集し、入力操作履歴記憶部205に記憶する(S14)。メールの入力が終了するまで(S15,No)、ステップS12に戻り、上記の処理を繰り返す。
【0082】
メールの入力が終了した後(S15,Yes)、ユーザによるメール送信指示を待つ(S16)。指示があれば(S16,Yes)、当該メールを指定された相手宛てに送信し(S16)、その後、ステップS18へ進む。メール送信が留保されたら、メールを送信することなく、ステップS18へ進む。
【0083】
ステップS18では、入力操作履歴に基づいて、上述したような各種パラメータの計算を行う。別途のユーザ設定により計算結果を表示する旨の設定が行われている場合(S19,Yes)、計算結果を所定の形式で表示する(S20)。このように計算結果を表示する旨の設定にしておけば、メール作成ごとにユーザに脳活性の意識を促すことが可能である。また、その表示がわずらわしい場合は設定によって非表示することも可能となる。
【0084】
ステップS20での表示は、メールあたりの計算結果のみの表示であってもよいし、ある期間での計算結果(例えば図9に示したようなグラフ)の表示であってもよい。また、それらをユーザが選択できるようにしてもよい。
【0085】
なお、ここでは、メール処理の一部として各種パラメータの計算およびその計算結果の表示を行うものとしたが、別途、メール処理では入力操作履歴のみを収集するものとしてもよい。その後の処理は、別途、専用のアプリケーションを用意して、そのアプリケーションにより、計算および表示を行うようにしてもよい。
【0086】
以上の説明では、各種パラメータの計算を携帯電話端末が自身で行うものとした。処理負荷や処理速度の観点から端末自身が計算を行うのではなく、外部のサーバにその計算を依頼し、計算結果を受領するという構成も採りうる。図11にそのような本発明の変形例の概略構成を示す。
【0087】
携帯電話端末100は、通信ネットワーク300を介してサーバ400と接続される。通信ネットワーク300は携帯電話網であってもよいし、インターネットであってもよい。
【0088】
図12は、この変形例における携帯電話端末100の主要な機能を示したブロック図である。図3に示した要素と同様の要素には同じ参照番号を付して、重複した説明を省略する。図12においては処理部200aが図3の処理部200の構成に加えて、サーバに計算処理等を依頼するサーバ問合わせ部218を含んでいる。また、通信部207を追加している。通信部207としては、図2の通信部103を利用することができる。
【0089】
この変形例におけるメール処理のフローチャートは図10に示したものと基本的には同じである。異なる点は、ステップS18の「各種パラメータの計算」において、入力操作履歴をサーバ400へ送信して、所定の計算を要求し、サーバ400からその計算結果を受信することである。
【0090】
また、上述した一部の入力パラメータの処理についてのみサーバに依頼することも考えられる。例えば、図6,図7で説明した処理については、文章の形態素解析および単語の抽出を行うことが必要とされる。このような処理は比較的処理負荷が重い。そこで、このような一部の処理についてのみ、サーバに処理を依頼することも可能である。図6,図7の処理では、入力パラメータはキー入力操作の履歴は不要であり、メール本文の情報があれば足りる。そこで、メール本文をサーバに送って、サーバで単語の抽出および計数、計算を依頼することができる。これらの一部の処理については、携帯電話端末では、返送された計算結果のみを保持する。この場合のサーバとしては、本来のメールの転送処理を行うメールサーバがこの処理を担当してもよい。その場合、実際にメールを送信したときに、計算結果が得られることになる。
【0091】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。
【0092】
例えば、入力操作部の入力方法も多様化している傾向があるので、入力操作履歴を獲得することにより、各種携帯電話端末ごとに異なる特徴的な入力方法を活かした独自の判断基準に基づくパラメータが採用できると考えられる。
【0093】
また、携帯電話端末についてのみ説明したが、本発明は、文章作成を行う任意の装置に適用可能である。
【0094】
上記では、計測結果を表示したが、計測結果に基づいてユーザへ脳活性のためのヒントとなる情報を提供するようにしてもよい。
【0095】
例えば、キー入力速度に関する例では、次のようないずれかの基準値を設ける。
(1)前回のメール作成における入力速度
(2)今までの最高速度
(3)目標とすべき速度(ユーザによる設定またはアプリケーションによる自動設定)
【0096】
このような予め定めた、またはユーザが選択したいずれかの基準値と、今回の入力操作の入力速度とを比較する。ユーザに対して出力するメッセージはどの基準を選ぶかによって異なりうるが、例えば、「前回のメール作成における入力速度」を基準とした場合に、入力速度が基準値に対して低い場合には「入力速度が落ちています。さらに入力速度を上げるよう努力して下さい。」、入力速度が基準値に対して同等の場合には「前回の入力速度とほぼ同じです。」、入力速度が基準値を上回った場合には「入力速度が向上しました。この調子です。」等のメッセージをユーザに対して出力する。また、より具体的には図13に示すように、今回のメールの操作結果131(キー押下数、所要時間、クリアキー押下数)とともに、所定のメッセージ「クリアキーをc回に減らし、y秒で書ければ目標達成!!」を表示することもできる。あるいは、「今回の入力操作はx秒かかりました。基準値を満たすにはy秒で操作を行わなければなりません。」等のメッセージも考えられる。
【0097】
表現の多様性に関しては、特にユーザが多用している単語や表現と同義となる単語や表現を、内蔵の辞書(図示せず)の参照によりユーザに対して紹介することが一例として挙げられる。あるいは、同義となる表現の紹介は行わず、ユーザが多用している単語や表現をユーザに知らせるのみでも、ユーザに今後気にかけるように仕向けることができる。
【0098】
誤表現率に関しては、例えば、校正を行った文章全体を表示する。その際、訂正した箇所は文字色、フォント、スタイル等の表示属性の変更で示す。または、間違いの箇所とその訂正だけを画面を示すようにしてもよい。
【0099】
クリアキーの使用割合に関しては、後何回クリアキーを押さなければ、上記のような基準値に達した、等のメッセージをユーザに返す。
【0100】
また、ユーザの入力操作結果に基づいてユーザの脳年齢を推測して出力することも可能である。例えば、入力速度と誤入力率とをそれぞれ複数段階に分類し、両者の組み合わせに対して脳年齢の複数段階を割り当て、脳年齢のランク付けを行うことが可能である。例えば、入力速度がx以上かつ誤入力率がp以下という判定基準を満たせばsランク、入力速度がx未満y以上かつ誤入力率がp未満かつq以上という判定基準を満たせばaランク、等である。
【0101】
上述した、キー入力速度やクリアキーの使用割合についても、同様なランク付けを行って、ユーザに示すことも可能である。
【0102】
上記実施の形態で説明した機能をコンピュータで実現するためのコンピュータプログラム(文章作成プログラム)およびプログラムをコンピュータ読み取り可能に格納した記録媒体も本発明に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の文書作成装置の一例としての携帯電話端末の外観を示した図である。
【図2】図1に示した携帯電話端末の概略のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】図1,図2に示した携帯電話端末の主要な機能を示したブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態における、キー入力による入力操作履歴に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの一例を示した図である。
【図5】本発明の実施の形態における、キー入力による入力操作履歴に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの他の例を示した図である。
【図6】本発明の実施の形態における、キー入力により入力された文章に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの例を示した図である。
【図7】本発明の実施の形態における、キー入力により入力された文章に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの他の例を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態における、キー入力により入力された文章に基づく特定の入力パラメータおよび出力パラメータの他の例を示した図である。
【図9】本発明の実施の形態における、出力パラメータとしての「誤入力率」の時間変化を棒グラフで表示したもの(a)、「入力速度」の時間変化を折れ線グラフで表示したもの(b)、および両出力パラメータの時間変化を同画面上に重ねて表示したもの(c)の例を示した図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるメール処理の手順例を示したフローチャートである。
【図11】本発明の変形例の概略構成を示す図である。
【図12】本発明のの変形例における携帯電話端末の主要な機能を示したブロック図である。
【図13】本発明の実施の形態における画面例の説明図である。
【符号の説明】
【0104】
100…携帯電話端末、101…制御部、102…アンテナ、103…通信部、104…表示部、105…操作部、106…記憶部、110…音声処理部、111…スピーカ、112…マイク、115…バス、200…処理部、200a…処理部、201…制御部、201…入力操作部、203…表示部、204…文章記憶部、205…入力操作履歴記憶部、207…通信部、211…文章作成支援部、212…入力操作履歴収集部、213…判定部、214…表示情報生成部、215…形態素解析・単語抽出部、216…校正部、217…予測変換部、218…サーバ問合わせ部、300…通信ネットワーク、400…サーバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キー入力による入力操作を行う入力操作部と、
情報を表示する表示部と、
前記入力操作部による入力操作に基づいて文章の作成を支援する文章作成支援部と、
前記入力操作部による入力操作の履歴を収集する入力操作履歴収集部と、
前記入力操作の履歴に基づいてキー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方を判定する判定部と、
この判定部による判定結果に基づいて前記表示部に表示する表示情報を生成する表示情報生成部と
を備えた文章作成装置。
【請求項2】
前記表示情報生成部は、単位期間毎の前記キー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方の時系列の変化を表すグラフを生成する請求項1に記載の文章作成装置。
【請求項3】
前記文章は電子メールであり、電子メールの送受信を行う通信部をさらに備えた請求項1または2に記載の文書作成装置。
【請求項4】
前記入力操作部はテンキーを用いて文字を入力する型のものであり、前記判定部は、メールあたりの同キー連続押下回数、メールあたりの異なるキー押下回数およびメールあたりのメール作成時間に基づいて、メールあたりまたは所定期間あたりのキー入力速度に相当する数値を求める請求項1に記載の文書作成装置。
【請求項5】
前記判定部は、メールあたりのキーの総押下回数、メールあたりのクリアキー押下回数に基づいて、メールあたりまたは所定期間あたりの誤入力率に相当する数値を求める請求項1に記載の文書作成装置。
【請求項6】
作成された文章の形態素解析および単語の抽出を行う手段をさらに備え、前記判定部は、メールあたりまたは所定期間あたりののべ入力単語数およびメールあたりまたは所定期間あたりの使用単語数に基づいて、所定期間あたりの表現の多様性を表す数値をさらに求める請求項1に記載の文書作成装置。
【請求項7】
作成された文章を校正する校正手段をさらに備え、
前記判定部は、メールあたりののべ入力単語数、メールあたりの間違い箇所数に基づいてメールあたりまたは所定期間あたりの誤表現率に相当する数値を求める請求項1に記載の文書作成装置。
【請求項8】
入力された文字に対して入力候補の予測を行う予測変換手段をさらに備え、
前記判定部は、予測により提示された複数の入力候補の中から実際に選択された候補までの距離、当該文字の入力から候補の選択確定までの時間およびその間のキー押下回数に基づいてメールあたりまたは所定期間あたりの候補選択操作の速さおよび候補選択操作の正確さの少なくとも一方に相当する数値を求める請求項1に記載の文書作成装置。
【請求項9】
前記文書作成装置は携帯電話端末である請求項1〜8のいずれかに記載の文書作成装置。
【請求項10】
キー入力による入力操作を受け付けるステップと、
前記キー入力に基づいて文章の作成を支援するステップと、
入力操作の履歴を収集するステップと、
前記入力操作の履歴に基づいてキー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方を判定するステップと、
この判定結果に基づいて表示部に表示する表示情報を生成するステップと
を備えた文章作成プログラム。
【請求項1】
キー入力による入力操作を行う入力操作部と、
情報を表示する表示部と、
前記入力操作部による入力操作に基づいて文章の作成を支援する文章作成支援部と、
前記入力操作部による入力操作の履歴を収集する入力操作履歴収集部と、
前記入力操作の履歴に基づいてキー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方を判定する判定部と、
この判定部による判定結果に基づいて前記表示部に表示する表示情報を生成する表示情報生成部と
を備えた文章作成装置。
【請求項2】
前記表示情報生成部は、単位期間毎の前記キー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方の時系列の変化を表すグラフを生成する請求項1に記載の文章作成装置。
【請求項3】
前記文章は電子メールであり、電子メールの送受信を行う通信部をさらに備えた請求項1または2に記載の文書作成装置。
【請求項4】
前記入力操作部はテンキーを用いて文字を入力する型のものであり、前記判定部は、メールあたりの同キー連続押下回数、メールあたりの異なるキー押下回数およびメールあたりのメール作成時間に基づいて、メールあたりまたは所定期間あたりのキー入力速度に相当する数値を求める請求項1に記載の文書作成装置。
【請求項5】
前記判定部は、メールあたりのキーの総押下回数、メールあたりのクリアキー押下回数に基づいて、メールあたりまたは所定期間あたりの誤入力率に相当する数値を求める請求項1に記載の文書作成装置。
【請求項6】
作成された文章の形態素解析および単語の抽出を行う手段をさらに備え、前記判定部は、メールあたりまたは所定期間あたりののべ入力単語数およびメールあたりまたは所定期間あたりの使用単語数に基づいて、所定期間あたりの表現の多様性を表す数値をさらに求める請求項1に記載の文書作成装置。
【請求項7】
作成された文章を校正する校正手段をさらに備え、
前記判定部は、メールあたりののべ入力単語数、メールあたりの間違い箇所数に基づいてメールあたりまたは所定期間あたりの誤表現率に相当する数値を求める請求項1に記載の文書作成装置。
【請求項8】
入力された文字に対して入力候補の予測を行う予測変換手段をさらに備え、
前記判定部は、予測により提示された複数の入力候補の中から実際に選択された候補までの距離、当該文字の入力から候補の選択確定までの時間およびその間のキー押下回数に基づいてメールあたりまたは所定期間あたりの候補選択操作の速さおよび候補選択操作の正確さの少なくとも一方に相当する数値を求める請求項1に記載の文書作成装置。
【請求項9】
前記文書作成装置は携帯電話端末である請求項1〜8のいずれかに記載の文書作成装置。
【請求項10】
キー入力による入力操作を受け付けるステップと、
前記キー入力に基づいて文章の作成を支援するステップと、
入力操作の履歴を収集するステップと、
前記入力操作の履歴に基づいてキー入力の速さおよび正確さの少なくとも一方を判定するステップと、
この判定結果に基づいて表示部に表示する表示情報を生成するステップと
を備えた文章作成プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−86217(P2010−86217A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253602(P2008−253602)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]