説明

文書処理システム

【課題】本発明は、文書処理システム上で、同一の文書、同一の箇所、同一の付加情報を、複数のユーザー間で共有して表示することを目的とするものである。
【解決手段】文書と選択範囲情報をネットワークを介して伝達し、レビュー参加者間で共有することにより、全てのレビュー参加者が、同一の文書、同一の選択範囲を参照することができる。また、選択範囲情報を用いて得られる付加情報も合わせて表示することにより、同一の付加情報を参照することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
参照・編集中のテキストの文法を解析する方法として、特願2007−248057に示す方法がある。
【特許文献1】特願2007−248057
【0003】
遠隔地間の会議において情報を共有する方法として、TV会議システム、チャットシステム等がある。
【0004】
なお、本発明において、「モジュール」とは、関数、メソッド、章・節など、文書内のひとまとまりのブロックのことを指す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
文書をレビューするときには、レビュー参加者間で、同一の情報を共有し、それを元に議論することが必要となる。
【0006】
しかし、口頭で「ファイルxxxの〜行目」と説明し、各参加者がそのファイルを開く方法では、手間を要する。かといって、プレゼンテーションのようにプロジェクターで大写しにするのは、文字が小さくなるか表示範囲が狭くなるため、文書のレビューのように全体と細部を同時に把握する必要がある会議には不向きである。
【0007】
また、説明や指摘をスムーズに進めるために、その箇所に関する説明図が欲しいことがあるが、都度、ホワイトボード等に図を書くのは効率が低い。
【0008】
本発明は、文書処理システム上で、同一の文書、同一の箇所、同一の付加情報を、複数のユーザー間で共有して表示することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するための請求項1〜8の発明は、図1のように構成されるシステムである。
【0010】
1は選択範囲記憶手段であり、文書の選択範囲情報を記憶する。また、選択範囲の履歴情報を記憶する。
【0011】
2はユーザーインターフェイス手段であり、ユーザーが指定した選択範囲を選択範囲記憶手段1に記憶する。
【0012】
3は送信処理手段であり、選択範囲記憶手段1の内容に変更が生じたときに、ネットワークを介して接続された他システムに選択範囲情報を送信する。また、ユーザーが特定の操作を行った場合に、文書の内容を、ネットワークを介して接続された他システムに送信する。
【0013】
4は受信処理手段であり、ネットワークを介して接続された他システムから受信した選択範囲情報を選択範囲記憶手段1に記憶する。また、ネットワークを介して接続された他システムから文書を受信した場合に、文書の内容を更新する。
【0014】
5は表示処理手段であり、文書の内容の表示とともに、選択範囲記憶手段1に記憶された選択範囲を強調表示する。また、選択範囲記憶手段1に記憶された履歴情報を読み出して、選択されたことのある箇所を強調表示する。
【0015】
6は制御権有無記憶手段であり、選択範囲を変更するアクセス権の有無を記憶する。
【0016】
7は文法構造記憶手段であり、文法構造情報を記憶する。
【0017】
8は疑似ステップ実行処理手段であり、ユーザーからの特定の操作を受信する度に、文法構造記憶手段7に記憶された文法構造情報に従って、選択範囲記憶手段1に記憶された選択範囲を、次に実行すべき箇所に更新する。
【0018】
9はモジュール参照ツリー表示処理手段であり、現在の選択範囲を含むモジュール内から参照される参照されるモジュール、および、それらのモジュールからさらに参照されるモジュールを、木構造で表示し、選択範囲記憶手段1から選択範囲の履歴情報を読み出し、前記木構造表示内の各モジュール項目のうち、前記履歴情報に記憶された選択範囲を含む項目を強調表示する。
【0019】
10は条件分岐構造表示処理手段であり、現在の選択範囲を含むモジュールの条件分岐構造をグラフ構造で表示し、現在の選択範囲に至るための項目を強調表示する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、文書処理システム上で、同一の文書、同一の箇所、同一の付加情報を、複数のユーザー間で共有して表示することができる。
【0021】
これにより、レビュー参加者間の情報共有をスムーズに進めることができ、文書レビューの品質・効率を向上させることができる。
【0022】
また、共有するのは文書自体のデータと、文書の位置の情報だけなので、各レビュー参加者は各自が使いやすい表示形式や文字の大きさを使用して参照することができる。
【0023】
また、ネットワークを介して情報を伝達するので、海外を含む遠隔地のレビュー参加者とのレビューにおいても、スムーズな情報共有を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態を図2〜図8に基づいて説明する。図2は本発明の実施の形態の構成図、図3はネットワーク接続図、図4は画面表示例、図5は文書例1、図6はモジュール参照ツリー表示例、図7は文書例2、図8は条件分岐構造表示例である。なお、本実施例における文書処理システムは、標準的なテキストエディタとしての表示機能・編集機能を備えているが、本発明と直接関係しない部分の構成図や説明は省略する。また、認証や暗号化等のセキュリティ機能に関する説明も省略する。
【0025】
図2において、1は選択範囲記憶手段、2はユーザーインターフェイス手段、3は送信処理手段、4は受信処理手段、5は表示処理手段、6は制御権有無記憶手段、7は文法構造記憶手段、8は疑似ステップ実行処理手段、9はモジュール参照ツリー表示処理手段、10は条件分岐構造表示処理手段、11は文書記憶手段、12はレビュー参加者リストである。
【0026】
レビュー参加者は、各自のコンピュータをネットワークに接続し、各自のコンピュータ上で本文書処理システムを起動する。ネットワークはTCP/IPプロトコルを伝達可能なネットワークを使用する。
【0027】
最初にレビュー主催者が、本文書処理システム上で、メニューから「レビュー開始」を選択する。すると、送信処理手段3は特定のポートでの接続待ち状態となる。
【0028】
レビュー参加者は、メニューから「レビュー参加」を選択し、表示されたダイアログに主催者のIPアドレスまたはホスト名を入力する。すると、送信処理手段3は指定IPアドレスの特定のポートへの接続を行い、TCP接続を確立する。
【0029】
主催者のコンピュータ上で起動されている本文書処理システムの受信処理手段4は、レビュー参加者からの接続を受信すると、レビュー参加者リスト12にそのIPアドレスを追加して記憶する。そして、レビューの対象となる文書データを文書記憶手段11から読み出し、「接続OKメッセージ」を、レビューの対象となる文書データとともに、そのレビュー参加者のIPアドレスへ、TCPパケットを使って送信する。
【0030】
レビュー参加者のコンピュータ上で起動されている本文書処理システムの受信処理手段4は、「接続OKメッセージ」を受信したら、メッセージ内部に含まれている、レビューの対象となる文書データを文書記憶手段11に記憶する。表示処理手段5は、文書を画面に表示する。
【0031】
以後、送信処理手段3、受信処理手段4による情報メッセージのやりとりは、全てTCP接続上でのTCPパケットの送受信によって実現される。
【0032】
ただし、主催者のコンピュータ上で起動されている本文書処理システムの送信処理手段3から情報を送信する場合は、レビュー参加者リスト12に記憶されたIPアドレス全てに対して情報を送信する。
【0033】
また、主催者以外の参加者のコンピュータ上で起動されている本文書処理システムの送信処理手段3から情報を送信する場合は、主催者のIPアドレスに対して情報を送信する。
【0034】
また、主催者のコンピュータ上で起動されている本文書処理システムの受信処理手段4で情報を受信した場合は、レビュー参加者リスト12に記憶されたIPアドレス全て(ただし元々の送信元以外)に対して同じ情報を転送する。
【0035】
ネットワーク接続図を図3に示す。レビュー主催者のシステムを中心に、各レビュー参加者のシステムがスター接続される。
【0036】
制御権有無記憶手段6には、最初、「有」が記憶されている。
【0037】
選択範囲記憶手段1は、文書内の選択範囲情報を記憶する。また、接続開始時からの選択範囲更新の履歴情報を記憶する。
【0038】
ユーザーインターフェイス手段2は、マウスやキーボード操作等により、文書内の特定の範囲をユーザーに指定させる。そして、制御権有無記憶手段6を参照し「有」であれば、ユーザーが指定した範囲の情報を、選択範囲記憶手段1に記憶する。
【0039】
送信処理手段3は、選択範囲記憶手段1の内容に変更が生じたときに、「選択範囲変更メッセージ」を、選択範囲情報とともに送信する。
【0040】
受信処理手段4は、「選択範囲変更メッセージ」を受信したら、メッセージ内部に含まれている選択範囲情報を選択範囲記憶手段1に記憶する。
【0041】
表示処理手段5は、文書の内容の表示とともに、選択範囲記憶手段1に記憶された範囲を強調表示する。選択範囲が中央に来るように、スクロールさせて表示する。表示例を図4に示す。これにより、全てのレビュー参加者が、同一の文書、同一の選択範囲を参照することができる。
【0042】
なお、ウインドウの大きさや、フォントサイズ等は、各レビュー参加者が独自に設定することができる。また、ビューを分割することにより別の箇所を別のビューで参照することができ、別のビューの表示は他のユーザーの操作に影響されない。また、他の文書を別ウインドウで参照・編集することもできる。
【0043】
レビュー主催者がメニューから「一人だけが選択範囲を制御できるようにする」を選択すると、ユーザーインターフェイス手段2は、制御権有無記憶手段6に「有」を記憶する。そして、送信処理手段3は、「制御権移動メッセージ」を送信する。
【0044】
受信処理手段4は、「制御権移動メッセージ」を受信すると、制御権有無記憶手段6に「無」を記憶する。
【0045】
レビュー参加者がメニューから「選択範囲の制御権取得」を選択すると、ユーザーインターフェイス手段2は、制御権有無記憶手段6に「有」を記憶する。そして、送信処理手段3は、「制御権移動メッセージ」を送信する。
【0046】
レビュー主催者が文書を編集後、メニューから「文書を更新」を選択すると、送信処理手段3は「文書更新メッセージ」を文書記憶手段11の内容とともに送信する。
【0047】
受信処理手段4は、「文書更新メッセージ」を受信すると、メッセージ内部に含まれている文書データを文書記憶手段11に記憶する。
【0048】
レビュー参加者がメニューから「履歴表示」を選択すると、表示処理手段5は、選択範囲記憶手段1に記憶された選択範囲の履歴情報を読み出して、過去に選択された箇所を全て強調表示する。
【0049】
文法構造記憶手段7は、文書の文法構造情報を記憶する。文書の文法構造を解析する方法としては、例えば、特願2007−248057に示す方法を用いる。
【0050】
レビュー参加者がメニューから「疑似ステップ実行」を選択すると、疑似ステップ実行処理手段8は、選択範囲記憶手段1から選択範囲情報を読み出し、選択範囲の最終行の次に実行されるべき行を決定し、その行を選択範囲として選択範囲記憶手段1に記憶する。条件分岐が存在する場合は、ユーザーインターフェイス手段2を用いて、ユーザーにどちらの分岐に進むかを決定させる。
【0051】
モジュール参照ツリー表示処理手段9は、選択範囲記憶手段1から選択範囲情報を読み出し、その選択範囲を含むモジュールについて、当該モジュールから参照されるモジュール、および、それらのモジュールからさらに参照されるモジュールを、木構造で表示する。
【0052】
さらに、モジュール参照ツリー表示処理手段9は、選択範囲記憶手段1から選択範囲の履歴情報を読み出し、前記木構造表示内の各モジュール項目のうち、前記履歴情報に記憶された選択範囲を含む項目を強調表示する。
【0053】
図5に示す文書例について、モジュール参照ツリー表示処理手段9により表示した例を、図6に示す。網がけ部分は、選択範囲記憶手段1に選択範囲の履歴が記憶されたモジュールであることを示している。これにより、網がけ部分が既に一度は参照されたモジュールであることが分かる。
【0054】
条件分岐構造表示処理手段10は、選択範囲記憶手段1から選択範囲情報を読み出し、その選択範囲を含むモジュールについて、条件分岐の構造をグラフ構造で表示する。文書の文法構造を解析する方法としては、例えば、特願2007−248057に示す方法を用いる。
【0055】
さらに、条件分岐構造表示処理手段10は、前記グラフ構造表示の各項目のうち、現在の選択範囲に至るための項目を強調表示する。
【0056】
図7に示す文書例について、条件分岐構造表示処理手段10により表示した例を、図8に示す。網がけ部分は、現在選択中の箇所(y=2;)に至るための項目を示している。これにより、y=2;に至るまでに、x=2;が実行されることが分かる。
【0057】
選択範囲記憶手段1の情報は、レビュー参加者で共有されるので、各レビュー参加者が、同一の、疑似ステップ実行処理手段による表示結果、モジュール参照ツリー表示処理手段による表示結果、条件分岐構造表示処理手段による表示結果を共有することができる。
【0058】
また、レビュー参加者がメニューから「モジュール参照ツリー表示を全員に表示させる」を選択すると、送信処理手段3から「モジュール参照ツリー表示メッセージ」を送信する。受信処理手段4は「モジュール参照ツリー表示メッセージ」を受信すると、モジュール参照ツリー表示を画面上に表示する。疑似ステップ実行処理手段による表示結果、条件分岐構造表示処理手段による表示結果についても、同様の処理を行う。
【0059】
さらに、本文書処理システムは、文書についての、フローチャートやSDL図、クラス図、シーケンス図等の図を自動生成して表示し、現在の選択範囲に関連する部分を強調表示することができる。
【0060】
さらに、本文書処理システムは、チャット機能や、ホワイトボード機能(描画キャンバスがユーザー間で共有され、描いた図表・文字が全ての参加者の画面に同時に表示される機能)、ログ機能等を有し、参加者間の情報共有を支援する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の原理構成図である。
【図2】本発明の実施の形態の構成図である。
【図3】ネットワーク接続図である。
【図4】画面表示例である。
【図5】文書例1である。
【図6】モジュール参照ツリー表示例である。
【図7】文書例2である。
【図8】条件分岐構造表示例である。
【符号の説明】
【0062】
1 選択範囲記憶手段
2 ユーザーインターフェイス手段
3 送信処理手段
4 受信処理手段
5 表示処理手段
6 制御権有無記憶手段
7 文法構造記憶手段
8 疑似ステップ実行処理手段
9 モジュール参照ツリー表示処理手段
10 条件分岐構造表示処理手段
11 文書記憶手段
12 レビュー参加者リスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書の選択範囲情報を記憶する選択範囲記憶手段と、
ユーザーが指定した選択範囲を前記選択範囲記憶手段に記憶するユーザーインターフェイス手段と、
前記選択範囲記憶手段の内容に変更が生じたときに、ネットワークを介して接続された他システムに選択範囲情報を送信する送信処理手段と
ネットワークを介して接続された他システムから受信した選択範囲情報を前記選択範囲記憶手段に記憶する受信処理手段と、
文書の内容の表示とともに、前記選択範囲記憶手段に記憶された選択範囲を強調表示する表示処理手段とからなることを特徴とする、
文書処理システム。
【請求項2】
さらに、前記選択範囲を変更するアクセス権の有無を記憶する制御権有無記憶手段を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の文書処理システム。
【請求項3】
前記選択範囲記憶手段は、さらに、選択範囲の履歴情報を記憶し、
前記表示処理手段は、さらに、前記履歴情報を読み出して、選択されたことのある箇所を強調表示することを特徴とする、
請求項1または2に記載の文書処理システム。
【請求項4】
文書の選択範囲情報を記憶する選択範囲記憶手段と、
文法構造情報を記憶する文法構造記憶手段と、
ユーザーからの特定の操作を受信する度に、前記文法構造情報に従って、前記選択範囲記憶手段に記憶された選択範囲を、次に実行すべき箇所に更新する疑似ステップ実行処理手段とからなることを特徴とする、
文書処理システム。
【請求項5】
文書の選択範囲およびその履歴情報を記憶する選択範囲記憶手段と、
文書の、前記選択範囲を含むモジュール内から参照されるモジュール、および、それらのモジュールからさらに参照されるモジュールを、木構造で表示し、前記選択範囲記憶手段から選択範囲の履歴情報を読み出し、前記木構造表示内の各モジュール項目のうち、前記履歴情報に記憶された選択範囲を含む項目を強調表示する、モジュール参照ツリー表示処理手段とからなることを特徴とする、
文書処理システム。
【請求項6】
文書の選択範囲情報を記憶する選択範囲記憶手段と、
前記選択範囲を含むモジュールの条件分岐構造をグラフ構造で表示し、現在の選択範囲に至るための項目を強調表示する条件分岐構造表示処理手段とからなることを特徴とする、
文書処理システム。
【請求項7】
請求項4記載の疑似ステップ実行処理手段、請求項5記載のモジュール参照ツリー表示処理手段、請求項6記載の条件分岐構造表示処理手段を備えることを特徴とする、
請求項1ないし3記載の文書処理システム。
【請求項8】
前記送信処理手段は、ユーザーが特定の操作を行った場合に、文書の内容を、ネットワークを介して接続された他システムに送信し、
前記受信処理手段は、ネットワークを介して接続された他システムから文書を受信した場合に、文書の内容を更新することを特徴とする、
請求項1ないし3記載の文書処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−205306(P2009−205306A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45322(P2008−45322)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(707001931)
【Fターム(参考)】