説明

斜板式ピストン駆動を用いた磁気冷凍装置

【課題】斜板式ピストン駆動装置のピストンに磁化作業物質を設け、ピストンを可動することにより、磁場内を磁化作業物質が挿脱して冷媒を冷却する磁気冷凍装置を提供する。
【解決手段】斜板を回転させることにより斜板に接続されたピストンを可動させる斜板式ピストン駆動装置と、磁場を発生する磁場発生部を備え、斜板が回転することによりピストンの頭部に設けられた磁化作業物質が磁場を挿脱し、磁化作業物質が磁場内にあるとき磁化作業物質が発熱をする排熱部と、ピストンが可動して磁化作業物質が排熱部の磁場から抜けることにより、磁化作業物質が冷却される冷却部と、を備える斜板式ピストン駆動を用いた磁気冷凍装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜板式ピストン駆動を利用して冷媒を冷却する磁気冷凍の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気冷凍とは、磁化作業物質(例えば、磁性体)に磁界をかけていくと磁化作業物質が発熱し、磁界を取り去ると温度が下がる現象(磁気熱量効果)を利用したものである。
特許文献1によれば、磁場を発生する磁場発生手段と、磁場の増減に応じて温度が変化する磁気作業物質を有し磁場発生手段によって形成される磁場中に配設される磁気作業体と、磁気作業物質に印加される磁場を増減させる磁場増減手段と、磁気作業物質に冷却流体を循環させる循環機および磁気作業物質から熱を授受する排熱熱交換器を有する冷却流体循環装置と、磁気作業物質によって冷却された冷却流体で被冷却体を冷却する冷却器とを備えている磁気冷凍装置が提案されている。このような構成により、常温でも使用可能で、フロンを用いない冷凍機をコンパクトな構成によって常温でも使用可能なものとし、かつ複雑な構成を必要とせず効率が高く、取り扱い易いものとしている。
【0003】
特許文献2の磁気式温度調整装置によれば、回転可能な筒状の磁気遮蔽体、磁気遮蔽体の内周側に設けられている磁界発生装置、磁気遮蔽体の外周側に配置されている複数の磁気作業物質を有している。磁気作業物質は、複数のグループに分けられており、各グループの磁気作業物質は、磁気遮蔽体の軸方向に沿って配置されている。磁気遮蔽体は、磁気遮蔽部と、磁気通過部及びを有している。磁気遮蔽部、磁気通過部は磁気作業物質に磁界が印加されている状態から磁界の印加が阻止された状態に変化する時期が、各グループの、温度調整媒体供給装置側に配置されている磁気作業物質から、被温度調整体側に配置されている磁気作業物質の方向に、順次遅れるように構成されている。このような構成により、複数の磁気作業物質と温度調整媒体との間の熱交換を連続的に効率よく行うことができる。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1、2には、斜板式ピストン駆動装置のピストンに磁化作業物質を設け、ピストンを可動することにより、磁場内を磁化作業物質が挿脱して媒体を冷却する磁気冷凍の構成について記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−106999号公報
【特許文献2】特開2006−308197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような実情に鑑みてなされたものであり、斜板式ピストン駆動装置のピストンに磁化作業物質を設け、ピストンを可動することにより、磁場内を磁化作業物質が挿脱して冷媒を冷却する磁気冷凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
態様のひとつである斜板を回転させることにより斜板に接続されたピストンを可動させる斜板式ピストン駆動装置と、排熱部、冷却部を備えている。排熱部は、磁場を発生する磁場発生部を備え、上記斜板が回転することにより上記ピストンの頭部に設けられた磁化作業物質が上記磁場を挿脱し、上記磁化作業物質が上記磁場内にあるとき上記磁化作業物質が発熱をする。冷却部は、上記ピストンが可動して上記磁化作業物質が上記排熱部の磁場から抜けることにより、上記磁化作業物質が冷却される。
【0008】
上記構成により、ピストンに磁化作業物質を備えることで小型化することができる。
また、上記磁場発生部は、一対のヨークと永久磁石が上記ピストンの頭部が嵌挿されるシリンダボアを挟んで配置されている。
【0009】
また、上記ピストンには冷媒が通過する配管を備え、上記配管の周辺に上記磁化作業物質が配置されている。
【発明の効果】
【0010】
斜板式ピストン駆動装置のピストンに磁化作業物質を設け、磁化作業物質を備えたピストンを可動することにより、磁場内を磁化作業物質が挿脱して媒体を冷却することができ、磁気冷凍装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の磁気冷凍装置の構成を示す断面図である。
【図2】実施例1の磁気冷凍装置の発熱部の断面図である。
【図3】実施例1の磁気冷凍装置の冷却部の断面図である。
【図4】実施例2の磁気冷凍装置の構成を示す断面図である。
【図5】実施例3の磁気冷凍装置の構成を示す断面図である。
【図6】実施例4の磁気冷凍装置の構成を示す断面図である。
【図7】磁気冷凍装置の冷却部と排熱部を反対に配置した構成を示す図である。
【図8】実施例5の磁気冷凍装置の排熱部の構成を示す断面図である。
【図9】実施例6の磁気冷凍装置の排熱部の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細を説明する。
図1に斜板式ピストン駆動を用いた磁気冷凍装置1の概要を示す断面図である。実施例1では斜板式ピストン駆動方法として、回転軸5(シャフト)に固設した斜板6をモータ4により回転させる方法について説明する。ただし、ピストンの駆動方法は図1に示すに方法に限定されるものではなくピストン9a、9bを駆動することができればよい。
【0013】
磁気冷凍装置1は、シリンダブロック2、ハウジング3およびモータ4によって形成され、その内部には、回転軸5(シャフト)、斜板6、ピストン9a、9bなどが設けられている。
【0014】
シリンダブロック2には、軸心方向に延在する複数の円筒状のシリンダボア17a、17bがその軸心を円環状に囲むように形成されている。各シリンダボア17a、17bには、ピストン9a、9bが往復運動可能に嵌挿されている。シリンダブロック2の軸方向の一端面には、ハウジング3が取り付けられている。なお、シリンダブロック2の他方の端面にもリヤハウジングなどが取り付けられている。
【0015】
また、シリンダブロック2には排熱部と冷却部が設けられている。排熱部は、磁場を発生する磁場発生部を備え、後述する斜板が回転することによりピストン9a、9bに設けられた磁化作業物質10a、10bが磁場を挿脱し、磁化作業物質10a、10bが磁場内にあるとき磁化作業物質10a、10bが発熱をするブロックである。冷却部は、ピストン9a、9bが可動して磁化作業物質10a、10bが排熱部の磁場から抜けるとき、磁化作業物質10a、10bが吸熱をするブロックである。
【0016】
磁場発生部は、ピストン9a、9bの外周側に設けられたヨーク11aと、ピストン9aの回転軸5側に設けられた永久磁石12aが、ピストン9aを挟んで配設され、同様に、ヨーク11bと永久磁石12bがピストン9bを挟んで配設されている。そして、ヨーク11aと永久磁石12aの間、ヨーク11bと永久磁石12bの間に磁場を発生させる。ヨーク11a、11bは、鉄などの金属により形成されている。永久磁石12a、12bとしては、強い磁界を発生可能な永久磁石を用いるのが好ましい。例えば、ネオジウム磁石やサマリウムーコバルト磁石等の希土類磁石が用いられる。
【0017】
回転軸5は、シリンダブロック2の軸方向中央で枢支されている。回転軸5の一端部は、例えばモータ4などの駆動源に連結される。回転軸5には、斜板6が軸方向に相対移動可能かつ傾動可能に取り付けられている。斜板6には、中心線を通る貫通穴が形成され、この貫通穴を回転軸5が貫通している。なお、回転軸5とハウジング3との間にはシャフトシール8が設けられている。
【0018】
斜板6は、回転軸5と一体に回転させられるとともに、軸方向の移動を伴う傾動が可能となっている。斜板6の基材は、ダクタイル鋳鉄(FCD700、FCD600、FCD500等)からなるが、機械構造用炭素鋼(S45C、S55C等)や、各種クロムモリブデン鋼(SCM)などまたは銅合金であってもよい。基材の両側面には、摺動被膜である固体潤滑剤層が形成されている。この固体潤滑剤層は、固体潤滑剤であるMoS2、グラファイト(Gr)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の混合物と、低融点材であるSnの微粉末と、バインダ樹脂であるポリアミドイミド(PAI)とからなる。固体潤滑剤層の厚さは10〜20μm程度である。ここに示した固体潤滑剤層は一例に過ぎず、仕様に応じて、適宜、他のものを使用することも可能である。
【0019】
なお、固体潤滑剤層と同様の摺動被膜を、シリンダボア17a、17bの内周面やピストン9の頭部の表面に形成してもよいし、シュー13の外周面や係合部の表面に形成しても良い。
【0020】
一対のシュー13は、SUJ2(高炭素クロム軸受鋼)からなることが多いが、例えば、アルミニウム合金の表面にNiメッキを施したものでもよい。具体的には、シリコンを含有するA4032相当のAl−Si系合金等のアルミニウム合金から成る基材に、Ni−P、Ni−B、Ni−P−B、Ni−P−B−W等のNi系めっき被膜を形成したものでもよい。この被膜は、単一被膜でも、複数の異種あるいは同種の被膜によって形成されてもよい。
【0021】
ピストン9a、9bは、斜板6の外周部を跨ぐ状態で係合させられる係合部と、係合部と一体に設けられ、シリンダボア17a、17bにそれぞれ摺動可能に嵌挿される頭部とからなる。この頭部とシリンダボア17a、17bなどにより圧縮室を形成している。係合部はシュー13を介して斜板6の外周部と係合している。また、ピストン9a、9bは斜板6の回転により往復運動する。詳しくは、斜板6の回転運動が、シュー13を介してピストン9a、9bの往復直線運動に変換される。
【0022】
なお、シリンダブロック2およびピストン9a、9bは、アルミニウム合金製であり、ピストン9a、9bの外周面にはフッ素樹脂のコーティングがされている。フッ素樹脂コーティングは、同種金属との直接接触を回避して耐焼き付き性を高めると共に、シリンダボア17a、17bとの間の嵌合隙間(クリアランス)を可及的に小さくする。
【0023】
また、ピストン9a、9bは、回転軸5の中心線に対して垂直方向から頭部を貫通する配管16a、16bを備えており、配管16a、16bはピストン9a、9bに収納された磁化作業物質10a、10bを収納する収容部を貫通する。さらに、この配管16a、16bは外部に導出する冷却用配管14、排熱用配管15に接続され、冷却部に配管16が移動したときは冷却用配管14と接続され、排熱部に配管16が移動したときは排熱用配管15に接続される。
【0024】
磁化作業物質10a、10bは、印加される磁界が増加することによって温度が上昇し、印加される磁界が減少することによって温度が低下する磁性体である。例えば、ガドリウム系材料、もしくは、ランタン− 鉄−シリコン化合物により形成された磁性体が用いられる。
【0025】
冷却用配管14は、排熱熱交換器(例えば、コンデンサ)などから排出された冷媒をシリンダブロック2に設けられた冷媒を配管16a、16bに送る経路である。また、配管16a、16b内で消磁した磁化作業物質10a、10bにより吸熱された冷媒を、冷却流体循環装置(例えば、エバポレータ)に排出する経路である。なお、例えば、配管16aと排熱用配管15が接続されているときは、磁化作業物質10aが磁場発生部外にあり、ピストン9a下の斜板6の周外が図1の上方向の最上位置(TOP位置)に到達している。
【0026】
排熱用配管15は、シリンダブロック2に設けられた冷媒を配管16a、16bに送る経路である。また、冷媒を配管16a、16bを介して排熱熱交換器などに排出するに経路でもある。例えば、配管16bと排熱用配管15が接続されているときは、磁化作業物質10bが磁場発生部にあり、ピストン9b下の斜板6の周外が図1の下方向の最下位置(BOTTOM位置)に到達している。
【0027】
なお、配管16a、16bは、斜板6の回転軸5に対する傾斜角度が変化することによりストローク方向から冷却用配管14または排熱用配管15と接続され、接続されている間冷媒は配管16a、16bを通過することができ、接続されていないときピストン9a、9bの頭部外周の側壁によりシールされ遮断される。なお、冷媒は水、エタノールなどを用いることが望ましい。
(動作説明)
図1の例では2本のピストンを備える斜板式ピストン駆動装置を用いた磁気冷凍装置について説明したが、図2ではピストンを4本用いる場合について説明する。
【0028】
図2のA、B、C、Dは、磁気冷凍装置の排熱部の断面図である。各図面に示される「×」は配管16a〜16d(ピストン穴位置)と排熱用配管15(シリンダブロック2の穴位置)がピストン9a、9bの頭部外周の側壁によりシールされ冷媒が遮断されていることを示している。
【0029】
図2のAは、斜板6の最下位置がピストン9d側にあり、最上位置がピストン9c側にある場合の排熱部の断面図である。冷却流体循環装置から排出される冷媒を、ピストン9dとピストン9bの間に設けられた排熱用配管15の吸入口15bから吸入し、ピストン9dとピストン9aの間に設けられた排熱用配管15の排出口15dから排出する。なお、配管16dに冷媒が通過するとき、ピストン9a、9b、9cは排熱用配管15を遮断している。
【0030】
図2のBは、斜板6の最下位置がピストン9a側にあり、最上位置がピストン9b側にある場合の排熱部の断面図である。冷却流体循環装置から排出される冷媒を、ピストン9aとピストン9cの間に設けられた排熱用配管15の吸入口15aから吸入し、ピストン9aとピストン9dの間に設けられた排熱用配管15の排出口15dから排出する。配管16aに冷媒が通過するとき、ピストン9b、9c、9dは排熱用配管15を遮断している。
【0031】
図2のCは、斜板6の最下位置がピストン9c側にあり、最上位置がピストン9d側にある場合の排熱部の断面図である。冷却流体循環装置から排出される冷媒を、ピストン9aとピストン9cの間に設けられた排熱用配管15の吸入口15aから吸入し、ピストン9cとピストン9bの間に設けられた排熱用配管15の排出口15cから排出する。配管16aに冷媒が通過するとき、ピストン9a、9b、9dは排熱用配管15を遮断している。
【0032】
図2のDは、斜板6の最下位置がピストン9b側にあり、最上位置がピストン9a側にある場合の排熱部の断面図である。冷却流体循環装置から排出される冷媒を、ピストン9bとピストン9dの間に設けられた排熱用配管15の吸入口15bから吸入し、ピストン9cとピストン9bの間に設けられた排熱用配管15の排出口15cから排出する。配管16aに冷媒が通過するとき、ピストン9a、9c、9dは排熱用配管15を遮断している。
【0033】
上記図2のA〜Dに示したように吸入と排出を繰り返し、冷媒がピストン9a、9b、9c、9d内の磁化された磁化作業物質を通過することにより、冷媒が吸熱し発熱している磁化作業物質を冷却する。
【0034】
図3のA、B、C、Dは、磁気冷凍装置の冷却部の断面図である。各図面に示される「×」は配管16a〜16d(ピストン穴位置)と排熱用配管15(シリンダブロック2の穴位置)がピストン9a、9bの頭部外周の側壁によりシールされ冷媒が遮断されていることを示している。
【0035】
図3のAは、斜板6の最下位置がピストン9c側にあり、最上位置がピストン9d側にある場合の冷却部の断面図である。排熱熱交換器から排出される冷媒を、ピストン9dとピストン9bの間に設けられた冷却用配管14の吸入口14bから吸入し、ピストン9dとピストン9aの間に設けられた冷却用配管14の排出口14dから排出する。なお、配管16dに冷媒が通過するとき、ピストン9a、9b、9cは冷却用配管14を遮断している。
【0036】
図3のBは、斜板6の最下位置がピストン9b側にあり、最上位置がピストン9a側にある場合の冷却部の断面図である。排熱熱交換器から排出される冷媒を、ピストン9aとピストン9cの間に設けられた冷却用配管14の吸入口14aから吸入し、ピストン9aとピストン9dの間に設けられた冷却用配管14の排出口14dから排出する。配管16aに冷媒が通過するとき、ピストン9b、9c、9dは冷却用配管14を遮断している。
【0037】
図3のCは、斜板6の最下位置がピストン9d側にあり、最上位置がピストン9c側にある場合の冷却部の断面図である。排熱熱交換器から排出される冷媒を、ピストン9aとピストン9cの間に設けられた冷却用配管14の吸入口14aから吸入し、ピストン9cとピストン9bの間に設けられた冷却用配管14の排出口14cから排出する。配管16aに冷媒が通過するとき、ピストン9a、9b、9dは冷却用配管14を遮断している。
【0038】
図3のDは、斜板6の最下位置がピストン9a側にあり、最上位置がピストン9d側にある場合の冷却部の断面図である。排熱熱交換器から排出される冷媒を、ピストン9bとピストン9dの間に設けられた冷却用配管14の吸入口14bから吸入し、ピストン9cとピストン9bの間に設けられた冷却用配管14の排出口14cから排出する。配管16aに冷媒が通過するとき、ピストン9a、9c、9dは冷却用配管14を遮断している。
【0039】
上記図3のA〜Dに示したように吸入と排出を繰り返し、冷媒がピストン9a、9b、9c、9d内の消磁された磁化作業物質を通過することにより冷媒は吸熱され、その冷媒の温度が低下する。
【0040】
上記説明したように、斜板式ピストン駆動装置に冷却部と排熱部を備えることにより磁気冷凍装置を小型化できる。
(実施例2)
図4は、実施例1に示した磁気冷凍装置1にポンプ41を備えたものである。
【0041】
図4に示す例では、磁気冷凍装置1の冷却部の冷却用配管14の排出口1はエバポレータ43の吸入口に接続されている。また、ポンプ41の吸入配管44はエバポレータ43の排出口に接続され、ポンプ41の吐出配管45は磁気冷凍装置1の排熱部の排熱用配管15に接続されている。コンデンサ42の排出口は冷却部の冷却用配管14の吸入口1に接続され、コンデンサ42の吸入口は排熱部の排熱用配管15の排出口2に接続されている。
【0042】
ポンプ41は、ピストン9aまたはピストン9bがモータ4側に可動するとき(上死点から下死点へ移動する吸入行程)、シリンダボア17aまたはシリンダボア17bの圧縮室にエバポレータ43から排出された冷媒を吸入する。そして、ピストン9aまたはピストン9bがポンプ41側に可動するとき(下死点から上死点へ移動する圧縮行程)、シリンダボア17aまたはシリンダボア17bの圧縮室から冷媒を吐出する。
【0043】
また、ポンプ41には切換え弁46a、46bと切換え弁47a、47bを備えている。切換え弁46は冷媒を吸入するとき開かれ、切換え弁47は冷媒を吐出するとき閉じられる。なお、切換え弁46a、46b、切換え弁47a、47bは図示しないが電気制御部または機械制御部により開閉を制御されている。
(ポンプの動作説明)
図4のポンプ41の動作について説明する。エバポレータ43から排出された冷媒をポンプ41内に取り込むときは、図4に示すようにピストン9bがモータ4側に可動するとともに切換え弁46bが開かれシリンダボア17bの圧縮室に冷媒を吸入する。逆に、ポンプ41からコンデンサ42に冷媒を吐出するときは、図4に示すようピストン9aがポンプ41側に可動するとともに切換え弁47aを開きシリンダボア17aの圧縮室の冷媒を吐出する。このようにポンプ41は、吸入と吐出を繰り返して冷媒を循環させる。
【0044】
上記構成により、斜板式ピストン駆動装置に冷却部と排熱部を備えることにより磁気冷凍装置を用いることによりポンプを小型化できる。
(実施例3)
図5は、実施例1の冷却部と排熱部と同じように動作をする第2の冷却部と第2の排熱部を斜板6を挟んで設けたものである。
【0045】
図5のピストン51a、51bは、実施例1に示したピストン9a、9bの頭部と反対側に、斜板6を挟んで第2の頭部を備え、第2の頭部はシリンダボア58a、58bに嵌挿されている。
【0046】
第2の排熱部の磁場発生部は、ピストン51aの外周側に設けられたヨーク52aと、ピストン51aの回転軸5側に設けられた永久磁石53aが、ピストン51aを挟んで配設され、同様に、ヨーク52bと永久磁石53bがピストン51bを挟んで配設されている。
【0047】
磁化作業物質54a、54bは、磁化作業物質10a、10bと同じものであり、ピストン51a、51b内に収容されている。
冷却用配管56は、排熱熱交換器(例えば、コンデンサ)などから排出された冷媒をシリンダブロック2に設けられた冷媒を配管57a、57bに送る経路である。また、配管57a、57b内で消磁した磁化作業物質54a、54bにより吸熱された冷媒を、冷却流体循環装置(例えば、エバポレータ)に排出する経路である。なお、例えば、配管57bと冷却用配管56が接続されているときは、磁化作業物質54bが磁場発生部外にあり、ピストン51b上の斜板6の周外が図5の下方向の最下位置に到達している。
【0048】
排熱用配管55は、シリンダブロック2に設けられた冷媒を配管57a、57bに送る経路である。また、冷媒を配管57a、57bを介して排熱熱交換器などに排出するに経路でもある。例えば、配管57aと排熱用配管55が接続されているときは、磁化作業物質54aが磁場発生部にあり、ピストン51a上の斜板6の周外が図5の上方向の最上位置に到達している。
【0049】
なお、配管57a、57bは、斜板6の回転軸5に対する傾斜角度が変化することによりストローク方向から冷却用配管56または排熱用配管55と接続され、接続されている間冷媒は配管57a、57bを通過することができ、接続されていないときピストン51a、51bの頭部外周の側壁によりシールされ遮断される。
【0050】
上記構成により、多気筒化することにより冷凍能力を向上させることができる。
(実施例4)
図6は、実施例3に示した磁気冷凍装置に、実施例2のポンプと同様の機能を有する第2のポンプ61を斜板6を挟んで設けたものである。
【0051】
図6に示す例では、磁気冷凍装置の第2の冷却部の冷却用配管56の排出口はエバポレータ43の吸入口に接続されている。また、第2のポンプ61の吸入配管65はエバポレータ43の排出口に接続され、第2のポンプ61の吐出配管64は磁気冷凍装置の排熱部の排熱用配管55に接続されている。コンデンサ42の排出口は冷却部の冷却用配管56の吸入口3に接続され、コンデンサ42の吸入口は排熱部の排熱用配管55の排出口4に接続されている。
【0052】
第2のポンプ61は、ピストン51aまたはピストン51bが斜板6側に可動するとき(上死点から下死点へ移動する吸入行程)、シリンダボア58aまたはシリンダボア58bの圧縮室にエバポレータ43から排出された冷媒を吸入する。そして、ピストン51aまたはピストン51bがポンプ41側に可動するとき(下死点から上死点へ移動する圧縮行程)、シリンダボア58aまたはシリンダボア58bの圧縮室から冷媒を吐出する。
【0053】
また、第2のポンプ61には切換え弁62a、62bと切換え弁63a、63bを備えている。切換え弁62は冷媒を吸入するとき開かれ、切換え弁63は冷媒を吐出するとき閉じられる。なお、切換え弁62a、62b、切換え弁63a、63bは図示しないが電気制御部または機械制御部により開閉を制御されている。
(ポンプの動作説明)
図6の第2のポンプ61の動作について説明する。エバポレータ43から排出された冷媒を第2のポンプ61内に取り込むときは、図6に示すようにピストン51aが斜板6側に可動するとともに切換え弁63aが開かれシリンダボア58aの圧縮室に冷媒を吸入する。逆に、第2のポンプ61からコンデンサ42に冷媒を吐出するときは、図6に示すようピストン51bが第2のポンプ61側に可動するとともに切換え弁62aを開きシリンダボア58bの圧縮室の冷媒を吐出する。このように第2のポンプ61は、吸入と吐出を繰り返して冷媒を循環させる。
【0054】
上記構成により、斜板式ピストン駆動装置に冷却部と排熱部を備えることにより磁気冷凍装置を用いることによりポンプを小型化できる。また、多気筒化することにより冷凍能力を向上させることができる。
【0055】
なお、図7のAに示すように、排熱部と冷却部を図3と逆に配置してもよいし、図7のBに示すポンプのように、排熱部と冷却部を図6と逆に配置してもよい。
(実施例5)
実施例5の磁場発生部は他の実施例の永久磁石の変わりに永久磁石81と支持部82を用いたものである。実施例5の磁場発生部では、回転軸5の回転に応じての回転軸5の外周を回転する支持部82に固設された永久磁石81を有し、永久磁石81とシリンダボア17a〜17d(または、58a〜58d)を挟んで、シリンダボア17a〜17d(58a〜58d)ごとにヨーク11a〜11d(または、52a〜52d)が配置されている。
【0056】
図8のA、B、C、Dでは、図2の排熱部の永久磁石11a〜11dの代わりに永久磁石81を用いた場合について説明する。各図面に示される「×」は配管16a〜16d(ピストン穴位置)と排熱用配管15(シリンダブロック2の穴位置)がピストン9a、9bの頭部外周の側壁によりシールされ冷媒が遮断されていることを示している。
【0057】
図8のAは、永久磁石81がピストン9dと対をなし、斜板6の最下位置がピストン9d側にあり、最上位置がピストン9c側にある場合の排熱部の断面図である。冷却流体循環装置から排出される冷媒を、ピストン9dとピストン9bの間に設けられた排熱用配管15の吸入口15bから吸入し、ピストン9dとピストン9aの間に設けられた排熱用配管15の排出口15dから排出する。なお、配管16dに冷媒が通過するとき、ピストン9a、9b、9cは排熱用配管15を遮断している。
【0058】
図8のBは、永久磁石81がピストン9aと対をなし、斜板6の最下位置がピストン9a側にあり、最上位置がピストン9b側にある場合の排熱部の断面図である。冷却流体循環装置から排出される冷媒を、ピストン9aとピストン9cの間に設けられた排熱用配管15の吸入口15aから吸入し、ピストン9aとピストン9dの間に設けられた排熱用配管15の排出口15dから排出する。配管16aに冷媒が通過するとき、ピストン9b、9c、9dは排熱用配管15を遮断している。
【0059】
図8のCは、永久磁石81がピストン9cと対をなし、斜板6の最下位置がピストン9c側にあり、最上位置がピストン9d側にある場合の排熱部の断面図である。冷却流体循環装置から排出される冷媒を、ピストン9aとピストン9cの間に設けられた排熱用配管15の吸入口15aから吸入し、ピストン9cとピストン9bの間に設けられた排熱用配管15の排出口15cから排出する。配管16aに冷媒が通過するとき、ピストン9a、9b、9dは排熱用配管15を遮断している。
【0060】
図8のDは、永久磁石81がピストン9bと対をなし、斜板6の最下位置がピストン9b側にあり、最上位置がピストン9a側にある場合の排熱部の断面図である。冷却流体循環装置から排出される冷媒を、ピストン9bとピストン9dの間に設けられた排熱用配管15の吸入口15bから吸入し、ピストン9cとピストン9bの間に設けられた排熱用配管15の排出口15cから排出する。配管16aに冷媒が通過するとき、ピストン9a、9c、9dは排熱用配管15を遮断している。
【0061】
上記図8のA〜Dに示したように吸入と排出を繰り返し、冷媒がピストン9a、9b、9c、9d内の磁化された磁化作業物質を通過することにより、冷媒が吸熱し発熱している磁化作業物質を冷却する。
【0062】
上記構成により、永久磁石を1個にすることができるためコストを低減することができる。
(実施例6)
図9はピストンの数量を増やして1回転中に冷却通路を流れる冷媒の量が多くなることで冷却能力向上させるための磁気冷凍装置の排熱部を示す図である。また、図9は図2に示した排熱部に磁場発生部、永久磁石、ヨークなどを追加した場合の例である。
【0063】
実施例6の磁場発生部は、永久磁石12a〜12fを有し、ピストン9a〜9fを挟んで、ピストン9a〜9fごとにヨーク11a〜11fが配置されている。
図9のでは、「×」は配管16a、16b、16c、16d、16f(ピストン穴位置)と排熱用配管15(シリンダブロック2の穴位置)がピストン9a、9b、9c、9d、9fの頭部外周の側壁によりシールされ冷媒が遮断されていることを示している。上記実施例同様、斜板6が回転することによりピストン9a、9b、9c、9d、9fは可動して冷媒の吸入と排出を各吸入口と排出口で繰り返す。
【0064】
上記構成により、1回転中に冷却通路を流れる冷媒の量が多くなることで冷却能力を向上させることができる。
また、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 磁気冷凍装置、
2 シリンダブロック、
3 ハウジング、
4 モータ、
5 回転軸、
6 斜板、
8 シャフトシール、
9、9a、9b、9c、9d、9e、9f ピストン、
10a、10b 磁化作業物質、
11、11a、11b、11c、11d、11e、11f ヨーク、
12、12a、12b、12c、12d、12e、12f 永久磁石、
13 シュー、
14 冷却用配管、
14a、14b 吸入口、
14c、14d 排出口、
15 排熱用配管、
15a、15b 吸入口、
15c、15d 排出口、
16、16a、16b、16c、16d、16e、16f 配管、
17a、17b シリンダボア、
41 ポンプ、
42 コンデンサ、
43 エバポレータ、
44 吸入配管、
45 吐出配管、
46、46a、46b 切換え弁、
47、47a、47b 切換え弁、
51、51a、51b ピストン、
52、52a、52b ヨーク、
53、53a、53b 永久磁石、
54a、54b 磁化作業物質、
55 排熱用配管、
56 冷却用配管、
57a、57b 配管、
58a、58b シリンダボア、
61 第2のポンプ、
62、62a、62b 切換え弁、
63、63a、63b 切換え弁、
65 吸入配管、
64 吐出配管、
81 永久磁石、
82 支持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜板を回転させることにより斜板に接続されたピストンを可動させる斜板式ピストン駆動装置と、
磁場を発生する磁場発生部を備え、前記斜板が回転することにより前記ピストンの頭部に設けられた磁化作業物質が前記磁場を挿脱し、前記磁化作業物質が前記磁場内にあるとき前記磁化作業物質が発熱をする排熱部と、
前記ピストンが可動して前記磁化作業物質が前記排熱部の磁場から抜けることにより、前記磁化作業物質が冷却される冷却部と、
を備えることを特徴とする斜板式ピストン駆動を用いた磁気冷凍装置。
【請求項2】
前記磁場発生部は、一対のヨークと永久磁石が前記ピストンの頭部が嵌挿されるシリンダボアを挟んで配置されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気冷凍装置。
【請求項3】
前記ピストンの頭部には冷媒が通過する配管を備え、前記配管の周辺に前記磁化作業物質が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気冷凍装置。
【請求項4】
前記ピストンの頭部が前記シリンダボア内を可動することにより、前記シリンダボアに前記冷媒の吸入と、前記シリンダボア内から前記冷媒を排出するポンプを備え、
コンデンサの排出する冷媒を前記冷却部を通過させエバポレータに排出し、前記エバポレータを介して冷媒を前記ポンプに吸入し、
吸入された冷媒は前記ポンプにより前記排熱部に吐出され、前記排熱部を介してエバポレータに冷媒を排出することを特徴とする請求項3に記載の磁気冷凍装置。
【請求項5】
前記ピストンは、前記斜板を挟んで両側に前記磁化作業物質を有する頭部を備え、
前記排熱部と前記冷却部と同様の機能を有する第2の排熱部と第2の冷却部を、前記斜板を挟んで設けることを特徴とする請求項3に記載の磁気冷凍装置。
【請求項6】
前記斜板に対して前記ポンプと同様の機能を有する第2のポンプを設け、
コンデンサの排出する冷媒を前記第2の冷却部を通過させ前記エバポレータに排出し、前記エバポレータを介して冷媒を前記第2のポンプに吸入し、
吸入された冷媒は前記第2のポンプにより前記第2の排熱部に吐出され、前記第2の排熱部を介して前記エバポレータに冷媒を排出することを特徴とする請求項3に記載の磁気冷凍装置。
【請求項7】
前記磁場発生部の永久磁石は、
前記斜板の回転に応じて前記斜板の回転軸の外周を回転する前記永久磁石であることを特徴とする請求項1〜6いずれか1つに記載の磁気冷凍装置。
【請求項8】
前記排熱部は、
2つ以上の前記ピストンと前記ピストンに対応する前記磁場発生部を備えることを特徴とする請求項1〜6いずれか1つに記載の磁気冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−196914(P2010−196914A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39439(P2009−39439)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】