説明

斜板式液圧機械及び静油圧伝動装置

【課題】斜板式液圧機械において、シリンダブロックの径方向寸法を大きくすることなく、高容量化を図れる構成において、組立作業の容易化を図ることである。
【解決手段】斜板式液圧機械である油圧ポンプ12及び油圧モータは、シリンダブロック68と雄スプライン88により、スプライン嵌合する駆動軸16を含む。駆動軸16は、雄スプライン88に対し軸方向に外れた部分の外周面上に設けられた突起である第2雄スプライン90を含む。ハウジング34及びポートブロックを分離した組立途中の場合に、第2雄スプライン90をシリンダブロック68と周方向に接触可能とし、バネ72による付勢力にかかわらずシリンダブロック68と駆動軸16との回転方向での相対位置を維持する。ハウジング34及びポートブロックが結合した場合には、第2雄スプライン90とシリンダブロック68との接触を不能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、芝刈り機や、耕運機等の対地作業機を有する車両や、バックホー等の掘削作業機を有する移動機械等の走行装置において、油圧モータにより車輪またはクローラ等の走行部を駆動する場合に、油圧モータまたは油圧ポンプとして使用されたり、掘削作業機のアーム用油圧シリンダ装置を伸縮させるために使用される油圧ポンプとして使用される斜板式液圧機械と、静油圧伝動装置に関する。例えば、斜板式液圧機械は、可動斜板または固定斜板を有する、油圧ポンプまたは油圧モータとして使用される。また、静油圧伝動装置は、油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出された圧油が供給され、駆動する油圧モ−タとを備え、油圧ポンプ及び油圧モータにより静油圧伝動を行う。
【背景技術】
【0002】
従来から例えば上記の油圧モータにより車輪等の走行部を駆動する走行装置が知られている。すなわち、この走行装置は、走行部の駆動源として油圧モータを備える。また、油圧モータに圧油を供給するために、走行装置にエンジンや電動モータにより駆動される油圧ポンプを設けている。
【0003】
また、油圧モータ及び油圧ポンプを含む油圧回路を閉回路とし、油圧モータの吸入口及び吐出口のいずれかとなる2のポートのそれぞれを、油圧ポンプの2のポートに連通させることも考えられている。この構成では、例えば、油圧ポンプまたは油圧モータを、可動斜板式液圧機械とし、可動斜板の駆動軸に対する傾転角度を逆向きに変更することにより、油圧モータの正転と逆転とを切り換え可能とする。
【0004】
また、特許文献1には、斜板式液圧機械である液圧ポンプが記載されている。この液圧ポンプは、ハウジングに対応するケースの内部に駆動軸を回転可能に支持しており、ケースの内部に設けたシリンダブロックを駆動軸にスプライン結合している。また、シリンダブロックの複数のシリンダボア内にピストンを往復移動可能に配置し、各ピストンの一端に形成した球状部をシューを介して斜板へ押し付けている。斜板は、シリンダブロックの内周面と駆動軸の外周面との間に設けたバネにより、ピンを介して、外周面が球面状のワッシャを斜板側に押圧し、ワッシャによりシューを斜板に押圧している。また、ケースのシリンダブロックと対向する面に弁板を、シリンダブロックの端面と摺接可能に設けている。弁板のシリンダボアと対向するピッチ円上に、流体の吸い込み工程と吐出工程とを分ける孔を形成している。
【0005】
このような液圧ポンプにより、各ピストンの一端がシューを介して斜板に沿いながら回転し、各ピストンが往復運動する。そして、弁板により、ピストンの前進と後退とに対応して、流体の吐出と吸い込みが分けられるとされている。
なお、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1の他に特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−169547号公報
【特許文献2】実開平5−50079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただし、特許文献1に記載された液圧ポンプの場合、シリンダブロックの内周面と駆動軸の外周面との間にバネを設けているので、シリンダブロックの径方向の寸法が大きくなりやすい。一方、従来から液圧ポンプ等の斜板式液圧機械の高容量化のためにシリンダボアの本数や各シリンダボアの容積を大きくすることが考えられている。特許文献1に記載のポンプにおいて、高容量化を図る場合には、シリンダブロックの径方向寸法がさらに大きくなり、斜板式液圧機械の小型化を図る面から好ましくない。このためにシリンダブロックの内周面と駆動軸の外周面との間のバネを省略し、その代わりに、複数のシリンダボアの内部にバネを設けて、これら各バネによりピストンを介してシューを斜板に押圧することが考えられている。
【0008】
例えば、特許文献2には、斜板式液圧機械であり、油圧ポンプであるアキシャルピストンポンプが記載されている。このアキシャルピストンポンプは、ハウジングと、ポート付ブロックに対応するエンドカバーとに、駆動軸を回転可能に支持している。駆動軸の外周側にシリンダブロックを、スプライン結合部で結合している。シリンダブロックに複数のシリンダボアを形成しており、各シリンダボアにピストンを軸方向の変位可能に配置している。また、各シリンダボア内に設けたバネにより、ピストンが球状のピストン球部を設けた前端側に付勢され、ピストン球部がシューに摺接している。また、スプライン結合部の中心位置を、各ピストン球部の中心位置を通る面と駆動軸の中心軸線とが交差する交点上に形成している。また、ピストンが吸入工程から吐出工程に切り換わるときに、シリンダボア内の圧力が急上昇して、ピストン球部とシューとの係合部に斜板から、斜板反力W0が加わり、斜板反力W0の駆動軸の軸線と直交する方向の分力W2がスプライン結合部に加わる。ただし、上記のようにスプライン結合部の中心位置を規制しているので、スプライン結合部にわたって分力W0が均等に加わるので、スプライン結合部に偏摩耗が生じないとされている。
【0009】
ただし、上記のように各シリンダボア内にバネを設けた場合、ポンプの組立作業が困難になる可能性がある。すなわち、ポンプの組立て時には、ハウジングとエンドカバーとを分離した状態で、ハウジングに駆動軸を支持するとともに、ハウジングの内側にシリンダブロックを配置するように、シリンダブロックの内側に駆動軸をスプライン係合させる。ただし、この場合、各シリンダボアに設けたバネが自由長となるように伸張して、ハウジングの開口端から外側にシリンダブロックが突出した状態となる可能性がある。このため、その後に、各バネの弾力である付勢力に抗して、蓋となるエンドカバーをシリンダブロックとともに、ハウジング側に押圧し、ハウジングにエンドカバーを結合する必要がある。ただし、ハウジングからシリンダブロックが突出した状態で、スプライン結合部を構成する、駆動軸の雄スプラインとシリンダブロックの雌スプラインとの係合が外れ、両スプライン同士の歯の位相がずれていると、単にエンドカバーを駆動軸の軸方向に押圧するだけではスプライン同士を結合できず、しかもその位相を合わせてスプライン同士を結合し、ハウジングとエンドカバーとを結合する作業はかなり困難である。
【0010】
なお、上記では、斜板式液圧機械が液圧ポンプである場合を説明したが、斜板式液圧機械が液圧モータである場合も同様の不都合が生じる可能性がある。また、それぞれ斜板式液圧機械である油圧ポンプのハウジングと油圧モータのハウジングとを共通の単一のハウジングとして、油圧ポンプと油圧モータとにより静油圧伝動を行う静油圧伝動装置の場合も、上記と同様の不都合が生じる可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、斜板式液圧機械及び静油圧伝動装置において、シリンダブロックの径方向寸法を大きくすることなく、高容量化を図れる構成において、組立作業の容易化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る斜板式液圧機械は、ハウジングと、前記ハウジングに対して分離可能に結合されたポート付ブロックと、前記ハウジング及び前記ポート付ブロックに支持され、外周面に設けられたスプライン部を含む駆動軸と、前記駆動軸に対して前記スプライン部によりスプライン嵌合され、前記駆動軸と一体的に回転し前記ポート付ブロック上を摺接するシリンダブロックと、前記シリンダブロックに形成した複数のシリンダボア内に往復動可能に配設された複数のピストンと、前記各シリンダボアと前記各ピストンとの間に設けられた複数のバネと、前記ハウジングに支持され、使用時に前記駆動軸に対し傾斜する傾斜面を含む斜板とを備え、前記ピストンの頭部が前記シリンダブロックの回転に伴って前記斜板の傾斜面に対し摺動することにより、前記ピストンが往復動する斜板式液圧機械であって、前記駆動軸は、前記スプライン部に対し軸方向に外れた部分の外周面上に設けられた突起を含み、前記ハウジング及び前記ポート付ブロックが分離して、かつ、複数のピストン及びバネをシリンダブロックに組み付けた状態で、前記ハウジングに、前記シリンダブロックに挿入した駆動軸を支持した場合である、組立途中の場合に、前記突起を前記シリンダブロックと前記駆動軸の周方向または軸方向に接触可能とし、前記バネによる付勢力によって前記シリンダブロックが前記駆動軸のスプライン部から抜け出ようとするときに、前記シリンダブロックと前記駆動軸との回転方向での相対位置を維持し、前記ハウジング及び前記ポート付ブロックが結合した場合に、前記突起と前記シリンダブロックとの接触を不能とする斜板式液圧機械である。
【0013】
また、本発明に係る斜板式液圧機械において、好ましくは、前記突起は、前記スプライン部の外径と略同じ外径を有する。
【0014】
また、本発明に係る斜板式液圧機械において、好ましくは、前記突起は、前記スプライン部に形成したスプライン歯と位相が合うように形成された第2スプライン歯を含み、前記組立途中の場合で、前記バネが前記シリンダブロック内で自由長の長さにある場合に、前記シリンダブロックが前記突起上に位置して、前記シリンダブロックと前記駆動軸との回転方向での相対位置が維持されるように、前記駆動軸に対する前記突起の位置を規制している。
【0015】
また、本発明に係る斜板式液圧機械において、好ましくは、前記突起は、前記組立途中の場合に、前記シリンダブロックに軸方向に接触可能な接触部を有し、前記組立途中の場合に、前記シリンダブロックの軸方向移動が前記突起により規制されて前記シリンダブロックと前記駆動軸との前記スプライン部によるスプライン嵌合が維持されるように、前記駆動軸に対する前記突起の位置を規制している。
【0016】
また、本発明に係る静油圧伝動装置は、油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出された圧油が供給され、駆動する油圧モ−タとを備え、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータにより静油圧伝動を行う静油圧伝動装置であって、前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの一方または両方は、本発明に係る斜板式液圧機械により構成し、前記油圧ポンプを構成するハウジングと前記油圧モータを構成するハウジングとは、共通の単一のハウジングにより構成し、前記油圧モータを構成するポート付ブロックと前記油圧モータを構成するポート付ブロックとは、共通の単一のポート付ブロックにより構成していることを特徴とする静油圧伝動装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る斜板式液圧機械及び静油圧伝動装置によれば、シリンダブロックの径方向寸法を大きくすることなく、高容量化を図れる構成において、組立途中の場合で、シリンダボア内のバネの付勢力によりハウジングの開口端からシリンダブロックが突出した場合でも、スプライン嵌合部を構成する、駆動軸の雄スプラインとシリンダブロックの雌スプラインとの回転方向の位相がずれることがない。このため、ハウジングとポート付ブロックとを結合する作業を容易に行うことができ、組立作業の容易化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る実施の形態の1例の静油圧伝動装置を含む油圧回路を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の1例の静油圧伝動装置の具体例を示す断面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】図2のチャージポンプ固定部分を、右側から左側に見た図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】チャージポンプの取り付け方向を変更した場合の1例を示す、図4に対応する図である。
【図7】図2の静油圧伝動装置を構成するピストンシューの別例を示す断面図である。
【図8】図2の上側のポンプ要素を含む部分を、ハウジングに対しポート付ブロックを分離した、組立途中の状態で示す断面図である。
【図9】図2の下側のモータ要素を含む部分を、ハウジングに対しポート付ブロックを分離した、組立途中の状態で示す断面図である。
【図10】本発明に係る実施の形態の別例の静油圧伝動装置において、図2の下側に対応する、モータ要素を含む部分を示す断面図である。
【図11】図10の構成において、モータ要素を含む部分を、ハウジングに対しポート付ブロックを分離した、組立途中の状態で示す断面図である。
【図12】図11の構成において、複数の要素を分離して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図9は、本発明に係る実施の形態の1例を示す図である。まず、図1を用いて、本実施の形態の静油圧伝動装置を含む油圧回路を説明する。図1に示す静油圧伝動装置10は、例えば、芝刈り機や、耕運機等の対地作業機を有する車両や、バックホー等の掘削作業機を有する移動機械等の走行装置において、油圧モータにより車輪またはクローラ等の走行部を駆動するために使用する。なお、以下では、走行装置が車両であり、走行部が車輪である場合を説明する。また、静油圧伝動装置10は、油圧ポンプ12と、油圧モータ14とを備え、油圧モータ14は、油圧ポンプ12から吐出された作動油である圧油が供給され、駆動する。また、静油圧伝動装置10は、油圧ポンプ12及び油圧モータ14により静油圧伝動を行う。
【0020】
すなわち、油圧ポンプ12は、2のポートである、ポンプ側第1ポートP1及びポンプ側第2ポートP2を有する。また、油圧モータ14は、2のポートである、モータ側第1ポートM1及びモータ側第2ポートM2を有する。油圧ポンプ12及び油圧モータ14のそれぞれの第1ポートP1,M1を、第1油路S1により接続し、油圧ポンプ12及び油圧モータ14のそれぞれの第2ポートP2,M2を、第2油路S2により接続している。第1油路S1及び第2油路S2は、油圧ポンプ12及び油圧モータ14を流体動力的に結合する主回路を構成する。
【0021】
また、油圧ポンプ12は、可動斜板を有する可変容量ポンプである斜板式液圧機械であり、エンジンや電動モータ等の駆動源Eに、動力の伝達可能に連結される回転可能な駆動軸16を備える。また、駆動軸16に補助ポンプであるチャージポンプ18のインナロータ等のロータを連結し、駆動軸16の駆動によりチャージポンプ18を駆動可能としている。駆動軸16が駆動することにより、第1ポートP1及び第2ポートP2の一方のポートから加圧された作動油が吐出され、他方のポートから作動油が吸入される。油圧ポンプ12は、ハウジングに可動斜板を支持しており、駆動軸16に対する可動斜板の傾斜角度、すなわち傾転角度を変更可能としている。
【0022】
可動斜板は、ハウジングに設けられた斜板操作軸が回転することにより可動斜板の向き及び角度が変更可能となる。可動斜板の向きや角度により第1ポートP1及び第2ポートP2の吐出側及び吸入側が決定され、吐出容量も決定される。また、車両の運転席周辺部に設けた加速指示部である変速レバー20の操作に対応して、適宜の動力源または動力伝達部により斜板操作軸に動力が付与され、斜板操作軸が回転する。
【0023】
油圧モータ14は、固定斜板を有する定容量モータである斜板式液圧機械であり、車両の車輪 (図示せず)に、直接または動力伝達部等を介して、動力の伝達可能に連結される回転可能な駆動軸22を備える。第1ポートM1及び第2ポートM2の一方のポートから高圧の作動油が吸入されると、油圧モータ14のシリンダボア内に設けたピストンが往復運動し、駆動軸22が回転駆動する。この場合、第1ポートM1及び第2ポートM2の他方のポートから作動油が吐出される。油圧モータ14は、ハウジングに、駆動軸に対する傾斜角度の変更不能に固定斜板を支持している。第1ポートM1及び第2ポートM2で、吐出側と吸入側とのいずれになるかに応じて、駆動軸22の回転方向が切り換わる。例えば、変速レバー20の前進操作時には、第1ポートM1が吸入側となり、第2ポートM2が吐出側となる。この場合、車輪が前進側に回転し、車両が前進走行する。また、変速レバー20の後進操作時には、第2ポートM2が吸入側となり、第1ポートM1が吐出側となる。この場合、車両が後進走行する。また、油圧ポンプ12の吐出流量が変化することに伴って、油圧モータ14の駆動軸22の回転速度が変化する。すなわち、油圧ポンプ12の吐出流量が大きくなると、油圧モータ14の回転速度が高くなり、油圧ポンプ12の吐出流量が小さくなると、油圧モータ14の回転速度が低くなる。
【0024】
また、静油圧伝動装置10を構成するポート付ブロックである、ポートブロック36(図2)の外面に第1ブロックポートPAを開口させ、静油圧伝動装置10を構成するハウジング34(図2)に固定したチャージポンプ18に吐出側ポンプポートPBを設けている。また、これら両ポートPA,PBに、配管24を接続し、配管24の途中にラインフィルタFを設けている。第1ブロックポートPAは、ポートブロック36の内部で、チャージ回路SCをそれぞれ構成するチャージリリーフ弁26と、一対のチャージチェック弁28,30との間に接続している。チャージリリーフ弁26は、チャージ回路SC内の油圧を設定値以下の油圧に規制する機能を有する。チャージリリーフ弁26の油逃がし側は、ハウジング34内空間に接続している。また、チャージチェック弁28、30は、低圧側となる第1油路S1もしくは第2油路S2が、チャージ回路SCの圧力であるチャージ圧よりも低くなったときに、二次側が低圧側となるチャージチェック弁28(または30)が開放され、チャージ回路SCが第1油路S1または第2油路S2に連通する。チャージチェック弁28,30は、高圧リリーフ弁機能を有し、高圧側となる第1油路S1もしくは第2油路S2が設定圧以上の高圧になることにより開放されるとともに、二次側が低圧側となるチャージチェック弁30(または28)が開放され、低圧側となる第2油路S2もしくは第1油路S1に余剰圧が加えられるようにしている。
【0025】
また、静油圧伝動装置10を構成するハウジング34(図2)の外面に第2ブロックポートPCを開口させ、上記のチャージポンプ18に吸入側ポンプポートPDを設けている。また、これら両ポートPC,PDを油タンクTに接続している。ハウジング34内空間には油が充填されているが、ピストン及びシリンダボアの摺動部等の摺動部から油が漏れだすことにより、オーバーフローした油が第2ブロックポートPCから油タンクTに排出される。また、チャージポンプ18の駆動により油タンクTから吸入側ポンプポートPDを介して、チャージポンプ18に油が吸引され、加圧されて、上記の吐出側ポンプポートPBから吐出される。
【0026】
また、一対のチャージチェック弁28,30のうち、車両の後進時に高圧側となる第2油路S2側のチャージチェック弁30に、絞り32を設けている。絞り32は、第2油路S2と、チャージ回路SCのうち、一対のチャージチェック弁28,30の間とを常に連通させている。このため、車両の後進時に、第2油路S2から高圧の作動油が絞り32を通じてチャージ回路SC側に漏れ出るため、変速レバー20の操作可能範囲において、油圧モータ14が回転しない中立状態、すなわちニュートラル状態となる中立幅Wを、1点ではなく、ある大きさに任意に設定しやすくできる。また、図1に示すように、車両の後進時に、第2油路S2から作動油が絞り32を介してチャージ回路SC側に漏れ出ると、損失が発生するが、後進は前進の場合に比べて実行頻度が少ないので、実用上の問題は生じない。
【0027】
次に、図2から図9を用いて、本実施の形態の静油圧伝動装置10の具体的構造を説明する。静油圧伝動装置10は、上記の図1に示した回路構成を有する。なお、以下の説明では、図1に示した要素と同一の要素には、同一の符号を付して説明する。図2に示すように、静油圧伝動装置10は、それぞれ斜板式液圧機械である油圧ポンプ12及び油圧モータ14を含む。すなわち、静油圧伝動装置10は、ハウジング34と、ポート付ブロックであるポートブロック36と、ポンプ要素38と、モータ要素40と、チャージポンプ18とを備える。ハウジング34及びポートブロック36と、ポンプ要素38とにより油圧ポンプ12を構成している。また、ハウジング34及びポートブロック36と、モータ要素40とにより、油圧モータ14を構成している。すなわち、油圧ポンプ12を構成するハウジングと、油圧モータ14を構成するハウジングとは、共通の単一のハウジング34により構成している。また、油圧ポンプ12を構成するポートブロックと、油圧モータ14を構成するポートブロックとは、共通の単一のポートブロック36により構成している。
【0028】
次に、油圧ポンプ12を詳しく説明する。油圧ポンプ12は、内側に空間42を有し、片側に空間42を開口させているハウジング34と、ハウジング34に対し、ボルトを含む締結部により分離可能に結合されたポートブロック36とを備える。ポートブロック36は、略板状に構成し、ハウジング34の開口を塞ぐ蓋部の役目を有し、その外面に第1ブロックポートPAを開口させたブロック本体44と、ブロック本体44の内面側(図2の左側)に面方向の位置ずれを防止するように支持したポンプ弁板46及びモータ弁板48とを含む。ポンプ弁板46は、図2の裏表方向の両側にそれぞれ貫通した、それぞれ略円弧形のポンプ側第1ポートP1(図1)とポンプ側第2ポートP2(図1)とを有する。第1ポートP1は、図3に示す第1油路S1に通じさせ、第2ポートP2は、第2油路S2(図3)に通じさせている。なお、モータ弁板48については、後で詳しく説明する。
【0029】
また、図3に示すように、第1油路S1と第2油路S2とに交差する横通路50に、リリーフ弁機能付の一対のチャージチェック弁28,30を配設している。各チャージチェック弁28,30は、チェック弁体52と、ポートブロック36に固定したプラグ54との間に設けた第1バネ56とを有し、第1バネ56によりチェック弁体52をポートブロック36の弁座面に向けて閉弁するように弾力を付与している。リリーフ弁体58の外端部にねじ止めした係止部材60とチェック弁体52との間に第2バネ62を設け、第2バネ62によりリリーフ弁体58の頭部を、チェック弁体52の弁座面に向けて閉弁するように弾力を付与している。
【0030】
第1油路S1側のチャージチェック弁28において、リリーフ弁体58と第2バネ62とが横断する空間は第1油路S1に通じさせている。また、第2油路S2側のチャージチェック弁30において、リリーフ弁体58と第2バネ62とが横断する空間は、第2油路S2に通じさせている。ポートブロック36において、一対のチャージチェック弁28,30の間の横通路64に、チャージ回路SCを構成する油路66を連通している。第1油路S1及び第2油路S2のうち、低圧側では、チャージチェック弁28(または30)を構成するチェック弁体52が弁座面から離れ、開弁されると、チャージ回路SCの油路66が油路S1(またはS2)に接続される。また、油路66は、ポートブロック36の外周面を構成する第1面G1に開口する第1ブロックポートPAに連通している。第1ブロックポートPAに、チャージポンプ18(図5)の吐出側ポンプポートPB(図5)に通じる配管(図示せず)を接続可能としている。
【0031】
また、ハウジング34内側に設けたチャージリリーフ弁26(図2)の弁体により、油路66のハウジング34側開口を塞ぐように、バネにより付勢している。ポンプまた、ハウジング34の外面に第2ブロックポートPC(図2)を接続し、第2ブロックポートPCを空間42に連通している。第2ブロックポートPCに、油タンクT(図1参照)に通じる配管24(図1)を接続可能としている。
【0032】
また、図3に示すように、一対のチャージチェック弁28,30のうち、第2油路S2側のチャージチェック弁30を構成するチェック弁体52の中心寄り部分に、軸方向に貫通する絞り32を設けている。チャージチェック弁30側で、リリーフ弁体58がチェック弁体52の弁座面に当接するとともに、チェック弁体52がポートブロック36の弁座面に当接して閉弁した場合でも、常に、第2油路S2とチャージ回路SCの油路66とを、絞り32を介して連通させている。このため、上記の図1で説明したように、変速レバー20の操作可能範囲において、油圧モータ14が回転しない中立状態となる中立幅を、1点でなくある大きさに任意に設定しやすくできる。
【0033】
また、図2に示すように、油圧ポンプ12は、ハウジング34及びポートブロック36に軸受により回転可能に支持された駆動軸16と、駆動軸16にスプライン係合させることにより駆動軸16と一体的に回転可能としたシリンダブロック68と、複数のピストン70と、複数のバネ72と、可動斜板74と、複数の間座76とを備える。駆動軸16は、空間42を横断し、その一端部(図2の左端部)は、ポートブロック36の外面から突出させ、エンジンや電動モータの駆動源Eを、直接または動力伝達機構を介して連結可能としている。また、駆動軸16の他端部(図2の右端部)はハウジング34から突出させ、チャージポンプ18のインナロータ78を固定している。すなわち、チャージポンプ18は、ポンプケース80の内側に、インナロータ78とアウタロータとを設けたトロコイドポンプであり、駆動軸16の端部にインナロータ78を固定している。
【0034】
また、図4、図5に示すように、ハウジング34の外側面にポンプケース80を、複数のボルト82により結合固定している。図5に示すように、ポンプケース80の中心軸に関して径方向反対側2個所に、吐出側ポンプポートPBと吸入側ポンプポートPDとを設けており、それぞれのポートPB,PDの内側をインナロータ78及びアウタロータを設置した空間に連通させている。吐出側ポンプポートPBに、第1ブロックポートPA(図2)と通じる配管24(図1)を接続可能とし、吸入側ポンプポートPDに、油タンクT(図1)と通じる配管を接続可能としている。このようなチャージポンプ18は、駆動軸16が駆動することにより駆動され、油タンクTから加圧した作動油をチャージ回路SCに供給する。なお、チャージポンプ18は、このようなトロコイドポンプに限定するものではなく、種々の形態のポンプを使用できる。
【0035】
また、図4、図5に示すように、ハウジング34のチャージポンプ18と対向する外面において、チャージポンプ18の中心軸と一致する軸を中心とする同一ピッチ円上に位置し、90度ずつ位相がずれた4個所位置にピン孔84を形成している。また、ポンプケース80のハウジング34と対向する内面に、各ピン孔84と整合可能な1個の位置決めピン86(図2)を、一部がポンプケース80の内面から突出するように支持している。そして図4の例では、各ピン孔84のうち、図4の下端に位置する1のピン孔84に位置決めピン86を挿入することで位置決めしている。この状態で、ポンプケース80をハウジング34にボルト82により固定している。図4及び後述する図6では、理解の容易化のために位置決めピン86をXの印で示している。また図4では、ハウジング34の外面で、チャージポンプ18の中心軸と一致する軸を中心とする同一ピッチ円上の、ピン孔84とずれた位置で、90度ずつ位相がずれた4個所位置にねじ孔を形成し、各ねじ孔にボルト82を結合している。したがって、チャージポンプの取り付け状態は、4状態のうちで切り換え可能である。
【0036】
例えば、図4では、チャージポンプ18のポンプケース80において、図4の上下方向中央部の左右両側面から左右方向に突出する一対の突部を含む部分の内側に、吸入側ポンプポートPDと吐出側ポンプポートPBとを設けている。ポンプケース80の外側面であって、内側に吸入側ポンプポートPDを設ける部分に、内向きの矢印を表示している。また、ポンプケース80の外側面であって、内側に吐出側ポンプポートPBを設ける部分に、外向きの矢印を表示している。このような表示により、各ポンプポートPD,PBに対する配管の誤組み付けを防止できる。
【0037】
これに対して、図6は、チャージポンプの取り付け方向を変更した場合の1例を示す、図4に対応する図である。図6の例では、チャージポンプ18の向きを、図4の場合と比べて90度ずらせている。すなわち、ハウジング34の外面に形成した各ピン孔84のうち、図6の左端に位置する1のピン孔84に位置決めピン86を挿入することで位置決めしている。この状態で、ポンプケース80をハウジング34にボルト82により固定している。この場合、ポンプケース80において、図6の左右方向中央部の上下両側面から上下方向に突出する一対の突部を含む部分の内側に、吸入側ポンプポートPDと吐出側ポンプポートPBとを設けている。このようにチャージポンプ18の取り付け方向を4状態のうちから任意に変更できるので、ポンプポートPD,PBに接続する配管の配置状態に応じて取付方向を変更して、配管の接続作業の容易化を図れる。また、配管の取り回しの自由度向上を図れる。
【0038】
また、図2に示すように、駆動軸16の軸方向中間部にスプライン部である、雄スプライン88を設けている。また、駆動軸16は、雄スプライン88に対し軸方向に外れた部分である、軸方向に関して雄スプライン88よりもポートブロック36側となる部分の外周面上に設けた第2雄スプライン90を含む。第2雄スプライン90は、突起であり、雄スプライン88よりも軸方向長さが小さい。第2雄スプライン90については、後で詳しく説明する。
【0039】
また、シリンダブロック68は、中央部内周面の片側に雌スプライン92を形成するとともに、シリンダブロック68の中心軸を中心とする同一ピッチ円上の周方向等間隔複数個所にシリンダボア94を形成している。駆動軸16に設けた雄スプライン88にシリンダブロック68の雌スプライン92をスプライン嵌合させることにより、駆動軸16とシリンダブロック68とを一体的に回転可能としている。シリンダブロック68が回転する場合、シリンダブロック68の軸方向片面(図2の左面)は、ポートブロック36を構成するポンプ弁板46上を摺接する。シリンダブロック68の回転に伴って、ポンプ弁板46に設けたポンプ側第1ポートP1とポンプ側第2ポートP2とに、各シリンダボア94内を連通可能としている。
【0040】
また、各シリンダボア94内に往復動可能にピストン70を配設している。図8に示すように、各ピストン70は、各シリンダボア94に往復動可能に設けた筒状のピストン本体96と、ピストン本体96に支持したピストンシュー98とを含む。ピストンシュー98は、ピストン70の頭部である。また、各ピストン本体96の奥側に間座76を設けている。間座76は中心部に軸方向に貫通する油孔100を有し、軸方向一端部(図8の右端部)外周面に鍔部を設けている。また、各シリンダボア94の奥面とピストン本体96の奥側に配置した各間座76の鍔部との間にバネ72を設けて、バネ72により、ピストン70にシリンダブロック68から抜け出る方向に、弾力である付勢力を付与している。すなわち、静油圧伝動装置10は、各シリンダボア94と各ピストン70との間に設けた複数のバネ72を備える。
【0041】
また、各ピストン本体96の先端部(図2の右端部)にピストンシュー98を、回転可能に支持している。各ピストンシュー98は、各ピストン本体96の先端部に支持するための、外周面を球面状とした球状部102と、球状部102の片側に一体に設けた略円板状の押圧部104とを有する。押圧部104は、平面状とした片面を、可動斜板74に押し付けている。また、球状部102と押圧部104とに油孔106を貫通するように形成している。また、ピストン本体96に対するピストンシュー98の回転にかかわらず、シリンダボア94内を、間座76に形成した油孔100と、ピストンシュー98に形成した油孔106とを介して、押圧部104の片面に設けた凹部である油圧ポケット108に常に連通させている。また、間座76は、ピストン本体96の内側で変位及び相対回転を可能に配置されている。すなわち、間座76の鍔部の外径は、ピストン本体96の内径よりも小さくしている。
【0042】
また、図2に示すように、可動斜板74は、ハウジング34の内側の空間42内に配置している。ハウジング34において、図2の表裏方向に傾転軸(図示せず)を支持し、ハウジング34に対し可動斜板74を、傾転軸を中心とする回転可能に支持している。また、可動斜板74は、ハウジング34の外面から突出する斜板操作軸110(図4、図6)が回転されることにより傾転軸を中心に回転する。図2の実線で示す可動斜板74は、図2の時計方向に最大限回転した状態を表し、図2に二点鎖線で示す可動斜板74は、図2の反時計方向に最大限回転した状態を表す。変速レバー20(図1)の操作に対応して、適宜の動力源または動力伝達部により斜板操作軸110に動力が付与され、斜板操作軸110が回転する。また、可動斜板74は、使用時に駆動軸16に対し傾斜する傾斜面112を含む。傾斜面112に、ピストンシュー98(図8)の押圧部104が押し付けられる。
【0043】
また、シリンダボア94内の作動油がピストンシュー98の押圧部104に設けた油圧ポケット108(図8)に供給されるので、押圧部104は傾斜面112に対しわずかに浮き上がる方向に変位する。このため、ピストンシュー98と可動斜板74との間の過度な摩耗を防止できる。なお、図2から図6、図8の構成では、押圧部104に設ける油圧ポケット108の断面形状を単なる矩形状としている。ただし、この油圧ポケット108の形状を変更することもできる。図7は、図2の静油圧伝動装置を構成するピストンシューの別例を示す断面図である。図7に示す例では、ピストンシュー98は、球状部102と押圧部104とを有し、球状部102と押圧部104とに軸方向(図7の上下方向)に貫通する油孔106を形成している。また、油孔106の押圧部104側開口端に油圧ポケット114を設けている。油圧ポケット114は、中心軸に対し傾斜した内壁面116を有する有底の筒状に形成しており、内壁面116同士の間隔である内径は、押圧部104外面(図7の下面)に向かうほど徐々に小さくなっている。すなわち、油圧ポケット114は、奥側に向かうほど、軸方向に対し直交する平面に関する断面形状が徐々に大きくなる。このため、長期間の使用により、ピストンシュー98の押圧部104外面が、可動斜板74(図2)との摺接により摩耗した場合でも、可動斜板74において、油圧ポケット114内の作動油と対向し、作動油を受ける受圧面積が徐々に大きくなる。このため、油圧ポケット114内の作動油により、ピストンシュー98を可動斜板74に対し浮き上がらせる方向に作用する力を大きくでき、ピストンシュー98の摩耗をさらに低減できる。
【0044】
また、図8に示すように、ピストン本体96内に変位及び回転を可能に設けた間座76と、シリンダボア94との間にバネ72を設けている。このため、駆動軸16に対しシリンダブロック68が回転する際に、各シリンダボア94内でピストン本体96が回転する場合でも、バネ72のねじれを有効に防止でき、耐久性の向上を図れる。また、ポンプ要素38は、駆動軸16と、シリンダブロック68と、複数のピストン70と、複数のバネ72と、複数の間座76と、可動斜板74とを含む。
【0045】
このようなポンプ要素38を含む油圧ポンプ12の使用時には、駆動軸16の回転に伴ってシリンダブロック68が回転し、各ピストンシュー98が可動斜板74の傾斜面112に沿って回転するように、この傾斜面112に対し摺動する。このため、各ピストン70が往復動し、車両の前進時には、第2油路S2(図3)からポンプ要素38に吸引された作動油が加圧されて、第1油路S1(図3)に吐出される。第1油路S1に吐出された作動油は、モータ要素40(図2)を含む油圧モータ14に供給される。
【0046】
次に、この油圧モータ14を説明する。油圧モータ14は、ハウジング34と、モータ弁板48を含むポートブロック36とを備える。モータ弁板48は、図2の裏表方向の両側に、それぞれ略円弧形のモータ側第1ポートM1(図1)とモータ側第2ポートM2(図1)とを有する。第1ポートM1は、図3に示す第1油路S1に通じさせ、第2ポートM2は、第2油路S2(図3)に通じさせている。このため、モータ側第1ポートM1は、第1油路S1を介してポンプ側第1ポートP1(図1)に接続される。また、モータ側第2ポートM2は、第2油路S2を介してポンプ側第2ポートP2(図1)に接続される。
【0047】
また、図2に示す油圧モータ14は、ハウジング34及びポートブロック36に軸受により回転可能に支持された駆動軸22と、駆動軸22にスプライン係合させることにより駆動軸22と一体的に回転可能としたシリンダブロック118と、複数のピストン120と、複数のバネ122と、固定斜板124と、複数の間座126とを備える。駆動軸22は、油圧ポンプ12を構成する駆動軸16と平行に配置され、空間42を横断し、その一端部(図2の左端部)は、ポートブロック36の外面から突出させ、車輪(図示せず)に、直接または減速機構等を含む動力伝達部を介して連結可能としている。例えば、駆動軸22が駆動することにより車輪が回転する。
【0048】
また、図2に示すように、駆動軸22の軸方向中間部にスプライン部である、雄スプライン128を設けている。また、駆動軸22は、雄スプライン128に対し軸方向に外れた部分である、軸方向に関して雄スプライン128よりもポートブロック36側となる部分の外周面上に設けた、雄スプライン128よりも軸方向長さが小さい第2雄スプライン130を含む。第2雄スプライン130は、駆動軸22の外周面に設けた突起である。第2雄スプライン130については、後で詳しく説明する。
【0049】
また、油圧モータ14をそれぞれ構成する、シリンダブロック118と、複数のピストン120と、複数のバネ122と、複数の間座126とは、それぞれ油圧ポンプ12を構成する、シリンダブロック68と、複数のピストン70と、複数のバネ72と、複数の間座76と同じ構成を有する。また、固定斜板124は、ハウジング34に、駆動軸22に対して予め設定した所定の角度で傾斜するように支持している。このため、固定斜板124の駆動軸22に対する傾斜角度は変化しない。各ピストン120を構成するピストンシュー98は、駆動軸22の軸方向に対し傾斜した固定斜板124の傾斜面132に押し付けている。モータ要素40は、駆動軸22と、シリンダブロック118と、複数のピストン120と、複数のバネ122と、複数の間座126と、固定斜板124とを含む。
【0050】
なお、本実施の形態では、図2に示すポートブロック36を、ブロック本体44とポンプ弁板46及びモータ弁板48とにより構成しているが、弁板46,48を省略して、ポートブロック36であるブロック本体44に直接シリンダブロック68,118を摺接させることもできる。この場合、ポートブロック36の内面で、油圧ポンプ12を構成するシリンダブロック68と対向する部分に形成した略円弧形の一対のポートを、ポンプ側第1ポートP1とポンプ側第2ポートP2とし、一対のポートP1,P2を、それぞれ第1油路S1と第2油路S2とに通じさせる。また、ポートブロック36の内面で、油圧モータ14を構成するシリンダブロック118と対向する部分に形成した略円弧形の一対のポートを、モータ側第1ポートM1とモータ側第2ポートM2とし、一対のポートM1,M2を、それぞれ第1油路S1と第2油路S2とに通じさせる。
【0051】
このようなモータ要素40を含む油圧モータ14の使用時には、ポンプ要素38から第1油路S1に高圧の作動油が吐出され、第2油路S2からポンプ要素38に作動油が吸引される。このため、モータ要素40において、モータ側第1ポートM1を通じて第1油路S1から吸引された高圧の作動油により、モータ側第1ポートM1に連通するシリンダボア94(図9)に対応するピストン120のシリンダブロック118からの伸張量が大きくなる。このため、各シリンダボア94に対しピストン120が往復運動し、これに伴って、シリンダブロック118及び駆動軸22が回転する。この場合、シリンダブロック118の回転に伴って、各ピストン120の頭部であるピストンシュー98が固定斜板124の傾斜面132に沿って回転するように、この傾斜面132に対し摺動する。
【0052】
また、上記の特許文献2に記載された構成と同様に、各駆動軸16,22に設ける雄スプライン88,128は、シリンダブロック68,118の雌スプライン92にスプライン嵌合させた場合に、スプライン嵌合部の軸方向中央位置を、各ピストンシュー98の球状部102の回転中心を含む同一平面と駆動軸16,22の中心軸とが交差する交点上に設けている。このため、上記の特許文献2に記載された構成と同様に、ピストン70,120が吸入工程から吐出工程に切り換わるときに、シリンダボア94内の圧力が急上昇して、ピストン本体96とピストンシュー98との係合部に斜板74,124から、斜板反力が加わり、斜板反力において、駆動軸16,22の中心軸と直交する方向の分力がスプライン嵌合部に加わる場合でも、スプライン嵌合部の長さ全体にわたって上記の分力が均等に加わるので、スプライン嵌合部に偏摩耗が生じることを防止でき、シリンダブロック68,118の耐久性の向上を図れる。
【0053】
また、油圧ポンプ12及び油圧モータ14において、駆動軸16,22の外周面とシリンダブロック68,118の内周面との間に、ピストン70,120を斜板74,124側に押し付けるためのバネを設ける必要がなくなる。このため、それぞれのシリンダブロック68,118の径方向寸法を大きくすることなく、シリンダボア94の本数を多くしたり、各シリンダボア94の容積を大きくすることができ、油圧ポンプ12及び油圧モータ14の高容量化を図れる。ただし、この場合、各シリンダボア94にバネ72,122を設ける必要がある。このため、本実施の形態と異なり、駆動軸16,22の構造に工夫しない場合には、油圧ポンプ12及び油圧モータ14を含む静油圧伝動装置10を組立てる際の組立作業が困難になる可能性がある。すなわち、この組立作業時に、シリンダボア94内のバネ72,122の付勢力により、シリンダブロック68,118がハウジング34の開口端から大きく突出した場合に、雄スプライン88,128からシリンダブロック68,118の雌スプライン92が外れて、雄スプライン88,128と雌スプライン92との位相がずれる可能性がある。このように位相がずれた場合、シリンダブロック68,118を雄スプライン88,128に嵌合させつつハウジング34の内側に押し込む作業が困難になる。
【0054】
また、可動斜板74を有する油圧ポンプ12の場合は、可動斜板74を駆動軸22の中心軸に対し直交するように立てた状態で、組立作業を行えるため、ハウジング34からのシリンダブロック68の突出量は比較的小さくできる。これに対して、固定斜板124を有する油圧モータ14の場合は、駆動軸22の中心軸に対し傾斜させた状態で、組立作業を行う必要があり、シリンダブロック118のハウジング34に対する突出量は大きくなりやすい。このため、駆動軸22の構造に工夫しない場合には、油圧モータ14で、特に組立作業が困難になる可能性がある。本実施の形態は、このような不都合を改良すべく発明したものである。
【0055】
すなわち、本実施の形態では、上記のように各駆動軸16,22の外周面上の雄スプライン88,128から外れた部分に第2雄スプライン90,130を設けている。まず、図8を用いて、油圧ポンプ12の場合について説明する。図8に示すように、駆動軸16に設けた第2雄スプライン90は、雄スプライン88の外径と略同じ外径(「略同じ外径」とは、全く同じ外径の場合も含む。「略同じ外径」の意味は、本明細書全体及び特許請求の範囲全体で同じである。)を有する。また、第2雄スプライン90は、雄スプライン88に形成したスプライン歯と位相が合うように形成された第2スプライン歯を含む。また、駆動軸16の他端側(図8の右端側)に、軸受134に突き当てるために鍔部136を設けている。鍔部136の外径は、雄スプライン88及び第2雄スプライン90の外径よりも大きくし、駆動軸16の一端側(図8の左端側)に駆動源に連結するために設けた第3雄スプライン138の外径は、雄スプライン88及び第2雄スプライン90の外径よりも小さくしている。したがって、シリンダブロック68の内側に駆動軸16を挿入する場合、シリンダブロック68のピストン配置側(図8の右側)から駆動軸16を、反ピストン側(図8の左側)に挿通する。
【0056】
また、ハウジング34及びポートブロック36(図2等)が分離して、かつ、複数のピストン70及びバネ72をシリンダブロック68に組み付けた状態で、ハウジング34に、シリンダブロック68に挿入した駆動軸16を支持した場合である、「組立途中」の場合を考える。この組立途中の場合に、各バネ72がシリンダブロック68内で自由長の長さにある場合には、図8に示すように、シリンダブロック68の雌スプライン92が、第2雄スプライン90上に位置する。すなわち、第2雄スプライン90とシリンダブロック68の雌スプライン92とがスプライン嵌合する。そして、この状態で、シリンダブロック68と駆動軸16との回転方向での相対位置が維持されるように、駆動軸16に対する第2雄スプライン90の位置を規制している。すなわち、バネ72による付勢力にかかわらずシリンダブロック68と駆動軸16との回転方向での相対位置を維持する。
【0057】
この構成により、上記の組立途中の場合に、第2雄スプライン90を、シリンダブロック68に対し駆動軸16の周方向に接触可能とし、バネ72による付勢力によってシリンダブロック68が駆動軸16の雄スプラインから抜け出ようとするときに、シリンダブロック68と駆動軸16との回転方向での相対位置を維持している。また、図2に示すように、ハウジング34及びポートブロック36が結合された場合に、第2雄スプライン90がシリンダブロック68の雌スプライン92から外れて、第2雄スプライン90とシリンダブロック68との接触を不能とする。
【0058】
また、図9を用いて、モータ要素40を構成する駆動軸22の第2雄スプライン130について説明する。この場合も、基本的にポンプ要素38の駆動軸16の場合と同様である。すなわち、駆動軸22に設けた第2雄スプライン130は、雄スプライン128の外径と略同じ外径を有する。また、第2雄スプライン130は、雄スプライン128に形成したスプライン歯と位相が合うように形成された第2スプライン歯を含む。また、ハウジング34及びポートブロック36(図2等)が分離して、かつ、複数のピストン120及びバネ122をシリンダブロック118に組み付けた状態で、ハウジング34に、シリンダブロック118に挿入した駆動軸22を支持した場合である、「組立途中」の場合を考える。この組立途中の場合に、各バネ122がシリンダブロック118内で自由長の長さにある場合に、シリンダブロック118の雌スプライン92が第2雄スプライン130上に位置する。そして、この状態で、シリンダブロック118と駆動軸22との回転方向での相対位置が維持されるように、駆動軸22に対する第2雄スプライン130の位置を規制している。すなわち、バネ122による付勢力にかかわらずシリンダブロック118と駆動軸22との回転方向での相対位置を維持する。
【0059】
この構成により、上記の組立途中の場合に、第2雄スプライン130を、シリンダブロック118に対し駆動軸22の周方向に接触可能とし、バネ122による付勢力によってシリンダブロック118が駆動軸22の雄スプライン128から抜け出ようとするときに、シリンダブロック118と駆動軸22との回転方向での相対位置を維持している。また、図2に示すように、ハウジング34及びポートブロック36が結合された場合に、第2雄スプライン130がシリンダブロック118の雌スプライン92から外れて、第2雄スプライン130とシリンダブロック118との接触を不能とする。また、各駆動軸16,22において、第2雄スプライン90,130と雄スプライン88,128とは、ブローチ加工により同時加工することが可能である。
【0060】
このような構成によれば、シリンダブロック68の径方向寸法を大きくすることなく、高容量化を図れる構成において、図8、図9に示す組立途中の場合で、シリンダボア94内のバネ72,122の付勢力によりハウジング34の開口端からシリンダブロック68が突出した場合でも、スプライン嵌合部を構成する、駆動軸16,22の雄スプライン88,128とシリンダブロック68,118の雌スプライン92との回転方向の位相がずれることがない。このため、ハウジング34とポートブロック36とを結合する作業を容易に行うことができ、組立作業を容易に行える。この結果、シリンダボア内装バネであるバネ72,122を設ける構成において、組立作業の容易化を図れる。
【0061】
次に、図10から図12の構成を用いて別例の構成を説明する。図10は、本発明に係る実施の形態の別例の静油圧伝動装置において、図2の下側に対応する、モータ要素を含む部分を示す断面図である。図11は、図10の構成において、モータ要素を含む部分を、ハウジングに対しポート付ブロックを分離した、組立途中の状態で示す断面図である。図12は、図11の構成において、複数の要素を分離して示す断面図である。
【0062】
図10から図12に示す別例の構成の場合、上記の図1から図9に示した構成において、油圧モータ14を構成する駆動軸22の外周面上において、第2雄スプライン130(図2、図9参照)を省略し、その代わりに、この外周面上において、軸方向に関して雄スプライン128と外れた部分に突起である環状突部140を設けている。環状突部140は、駆動軸22の他の部分と中心軸が一致する円筒状の外周面142を有し、外周面142と両側の小径部との間に軸方向に対し傾斜した段差面144を設けている。段差面144のうち、片側(図10から図12の右側)の段差面144は、後述の組立途中の場合に、シリンダブロック118と軸方向に接触可能な接触部である。
【0063】
また、環状突部140は、駆動軸22に設けた雄スプライン128の外径と略同じ外径を有する。また、図11に示すように、ハウジング34及びポートブロック36(図10)が分離して、かつ、複数のピストン120及びバネ122をシリンダブロック118に組み付けた状態で、ハウジング34に、シリンダブロック118に挿入した駆動軸22を支持した場合である、「組立途中」の場合を考える。この場合、図12に示すように、まず、シリンダブロック118に駆動軸22を片側から他側(図12の右側から左側)に挿入し、この状態で、駆動軸22の端部を軸受146に支持し、止め輪148により駆動軸22の抜け止めを図る。このような組立途中の場合に、図11に示すように、シリンダブロック68の軸方向の移動が環状突部140により規制されて、シリンダブロック118の雌スプライン92と、駆動軸22の雄スプライン128とのスプライン嵌合が維持されるように、駆動軸22に対する環状突部140の位置を規制している。すなわち、環状突部140の片側の段差面144が雌スプライン92の端部に軸方向に接触する。すなわち、環状突部140の段差面144は、シリンダブロック118に軸方向に接触可能である。そして、この状態で、雄スプライン128と雌スプライン92とが一部でスプライン嵌合したままとなり、シリンダブロック118と駆動軸22との雄スプライン128によるスプライン嵌合が維持されるように、駆動軸22に対する環状突部140の位置を規制している。
【0064】
この構成により、上記の組立途中の場合に、バネ122による付勢力によってシリンダブロック118が駆動軸22の雄スプライン128から抜け出ようとするときに、シリンダブロック118と駆動軸22との回転方向での相対位置を維持している。また、図10に示すように、ハウジング34及びポートブロック36が結合された場合に、環状突部140がシリンダブロック118の雌スプライン92から外れて、環状突部140とシリンダブロック118との接触を不能とする。
【0065】
このような構成の場合も、上記の図1から図9の構成の場合と同様に、シリンダブロック118の径方向寸法を大きくすることなく、高容量化を図れる構成において、図11に示すように、組立途中の場合で、シリンダボア94内のバネ122の付勢力によりハウジング34の開口端からシリンダブロック68が突出した場合でも、スプライン嵌合部を構成する、駆動軸22の雄スプライン128とシリンダブロック68の雌スプライン92との回転方向の位相がずれることがない。このため、ハウジング34とポートブロック36とを結合する作業を容易に行うことができ、組立作業の容易化を図れる。
【0066】
また、このような構成の場合、図11に示す組立途中の場合に、環状突部140に雌スプライン92が軸方向に当接するので、バネ122が自由長の長さとなることを防止できる。このため、上記の図9に示した構成の組立途中の場合と比べて、組立途中の場合の、シリンダブロック118がハウジング34の開口端から突出する突出長さL(図11)を小さくできる。このため、シリンダブロック118をポートブロック36等によりハウジング34の内側に押し戻す作業を容易に行え、組立作業の更なる容易化を図れる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図9に示した構成の場合と同様である。
【0067】
なお、上記の各構成例において、上記の油圧ポンプ12において、上記の図10から図12で説明した油圧モータ14の場合と同様に、駆動軸16の雄スプライン88に対し軸方向に外れた部分の外周面上に第2雄スプライン90ではなく、組立途中の場合に、シリンダブロック68と軸方向に接触可能な環状突部を設けることもできる。
【0068】
また、図示を省略するが、上記の駆動軸16(または22)において、第2雄スプライン90,130や環状突部140を省略し、その代わりに駆動軸16(または22)の外周面上で雄スプライン88,128に対し軸方向に外れた部分に雄スプライン88,128の外径よりも大きい外径を有する突起である、大径環状突部を設けることもできる。そして、上記の組立途中の場合に、大径環状突部を、シリンダブロック68,118の反ピストン側端面で、軸方向に窪んだ凹部150,152(図8から図12参照)の奥側面に、軸方向に接触可能とすることもできる。また、上記の環状突部や大径環状突部を、駆動軸16,22を構成する軸本体の外周面に係止した止め輪等の、軸本体とは別の部材により構成することもできる。
【0069】
なお、上記では、油圧ポンプ12及び油圧モータ14を、静油圧伝動装置10を構成するものとして説明した。ただし、油圧ポンプ12や油圧モータ14を、静油圧伝動装置を構成するものとして使用しない、通常の独立した油圧ポンプ12や油圧モータ14として使用する場合に、本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0070】
10 静油圧伝動装置、12 油圧ポンプ、14 油圧モータ、16 駆動軸、18 チャージポンプ、20 変速レバー、22 駆動軸、24 配管、26 チャージリリーフ弁、28,30 チャージチェック弁、32 絞り、34 ハウジング、36 ポートブロック、38 ポンプ要素、40 モータ要素、42 空間、44 ブロック本体、46 ポンプ弁板、48 モータ弁板、50 横通路、52 チェック弁体、54 プラグ、56 第1バネ、58 リリーフ弁体、60 係止部材、62 第2バネ、64 横通路、66 油路、68 シリンダブロック、70 ピストン、72 バネ、74 可動斜板、76 間座、78 インナロータ、80 ポンプケース、82 ボルト、84 ピン孔、86 位置決めピン、88 雄スプライン、90 第2雄スプライン、92 雌スプライン、94 シリンダボア、96 ピストン本体、98 ピストンシュー、100 油孔、102 球状部、104 押圧部、106 油孔、108 油圧ポケット、110 斜板操作軸、112 傾斜面、114 油圧ポケット、116 内壁面、118 シリンダブロック、120 ピストン、122 バネ、124 固定斜板、126 間座、128 雄スプライン、130 第2雄スプライン、132 傾斜面、134 軸受、136 鍔部、138 第3雄スプライン、140 環状突部、142 外周面、144 段差面、146 軸受、148 止め輪、150,152 凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに対して分離可能に結合されたポート付ブロックと、
前記ハウジング及び前記ポート付ブロックに支持され、外周面に設けられたスプライン部を含む駆動軸と、
前記駆動軸に対して前記スプライン部によりスプライン嵌合され、前記駆動軸と一体的に回転し前記ポート付ブロック上を摺接するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックに形成した複数のシリンダボア内に往復動可能に配設された複数のピストンと、
前記各シリンダボアと前記各ピストンとの間に設けられた複数のバネと、
前記ハウジングに支持され、使用時に前記駆動軸に対し傾斜する傾斜面を含む斜板とを備え、
前記ピストンの頭部が前記シリンダブロックの回転に伴って前記斜板の傾斜面に対し摺動することにより、前記ピストンが往復動する斜板式液圧機械であって、
前記駆動軸は、前記スプライン部に対し軸方向に外れた部分の外周面上に設けられた突起を含み、
前記ハウジング及び前記ポート付ブロックが分離して、かつ、複数のピストン及びバネをシリンダブロックに組み付けた状態で、前記ハウジングに、前記シリンダブロックに挿入した駆動軸を支持した場合である、組立途中の場合に、前記突起を前記シリンダブロックと前記駆動軸の周方向または軸方向に接触可能とし、前記バネによる付勢力によって前記シリンダブロックが前記駆動軸のスプライン部から抜け出ようとするときに、前記シリンダブロックと前記駆動軸との回転方向での相対位置を維持し、前記ハウジング及び前記ポート付ブロックが結合した場合に、前記突起と前記シリンダブロックとの接触を不能とすることを特徴とする斜板式液圧機械。
【請求項2】
請求項1に記載の斜板式液圧機械において、
前記突起は、前記スプライン部の外径と略同じ外径を有することを特徴とする斜板式液圧機械。
【請求項3】
請求項1に記載の斜板式液圧機械において、
前記突起は、前記スプライン部に形成したスプライン歯と位相が合うように形成された第2スプライン歯を含み、
前記組立途中の場合で、前記バネが前記シリンダブロック内で自由長の長さにある場合に、前記シリンダブロックが前記突起上に位置して、前記シリンダブロックと前記駆動軸との回転方向での相対位置が維持されるように、前記駆動軸に対する前記突起の位置を規制していることを特徴とする斜板式液圧機械。
【請求項4】
請求項1に記載の斜板式液圧機械において、
前記突起は、前記組立途中の場合に、前記シリンダブロックに軸方向に接触可能な接触部を有し、
前記組立途中の場合に、前記シリンダブロックの軸方向移動が前記突起により規制されて前記シリンダブロックと前記駆動軸との前記スプライン部によるスプライン嵌合が維持されるように、前記駆動軸に対する前記突起の位置を規制していることを特徴とする斜板式液圧機械。
【請求項5】
油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出された圧油が供給され、駆動する油圧モ−タとを備え、
前記油圧ポンプ及び前記油圧モータにより静油圧伝動を行う静油圧伝動装置であって、
前記油圧ポンプ及び前記油圧モータの一方または両方は、請求項1から請求項4のいずれか1に記載の斜板式液圧機械により構成し、
前記油圧ポンプを構成するハウジングと前記油圧モータを構成するハウジングとは、共通の単一のハウジングにより構成し、
前記油圧モータを構成するポート付ブロックと前記油圧モータを構成するポート付ブロックとは、共通の単一のポート付ブロックにより構成していることを特徴とする静油圧伝動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−241715(P2011−241715A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113079(P2010−113079)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】