説明

斜角ボックスカルバート

【要 約】
【課 題】 連結方向に締め付ける際、定着部端面に均等な緊張力を付与することができるとゝもに、ボックスカルバートの接合部端面がスライドしてズレたりすることのない斜角ボックスカルバートを提供することにある。
【解決手段】 接合部端面10を連結方向の軸線aと直交する軸線bに対し傾斜させて形成した斜角ボックスカルバートであって、その側壁1を含む緊張材による定着部の端面8を、前記緊張材の配設方向と直交する垂直面に形成した構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は斜角ボックスカルバート、詳しくは、水路や道路に対し斜めに立体交差する斜
角横断の架橋を構築する際に使用して最適な斜角ボックスカルバートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水路と道路または道路と道路とが直角に立体交差する施工現場では、通常の平面
視が矩形状の門型ブロック又は暗渠ブロックを設置することで、下の水路または道路を直
角に跨ぐ直角横断の架橋を形成している。
【0003】
しかし、図5に示すように、既設の水路や道路Wの方向に対して斜めに交差する斜角横
断の架橋Sを道路R1 ,R2 の延長線上に構築する場合には、通常の平面視が矩形状の門
型ブロック又は暗渠ブロック20をその連結方向の軸線a(以下、水平軸線aと言う)に
沿って配設し、左端部と右端部には、図5及び図6に示すように、外側を向く一端面21
aが前記水平軸線aに対して直交する軸線b(以下、垂直軸線bと言う)と傾斜角θをな
すブロック21を現場打設によって形成するか、予め仕切り版を所定の傾斜角θで固定し
た型枠によって成形したブロック或いは前記平面視矩形状のブロック20をワイヤソー等
で傾斜角θに切断したブロック21を用いている。
【0004】
施工に際しては、斜角横断の架橋Sの中間部分を通常の平面視が矩形状の門型ブロック
又は暗渠ブロック20を使用し、左端部と右端部には外側を向く一端面が前記垂直軸線b
と傾斜角θで交差する傾斜端面21aを有するブロック21をそれぞれ使用することで構
築できる。すなわち、施工現場において、門型ブロック又は暗渠ブロック20を複数個平
行に並べて配設し、その左端側と右端側にブロック21をそれぞれ配設する。
【0005】
つぎに、各ブロック20,21の定着部に形成した水平軸線aに沿う貫通孔内にPC鋼
棒11を挿通し、該PC鋼棒11の一端をジャッキ等により引っ張って緊張力を付与すこ
とで、ブロック全体を緊張したこのPC鋼棒11を介して一体に連結固定するが、このよ
うな施工では、幅員の大きさが異なる前後一対のL型側壁21A,21Bと、門型の頂版
21Cの各ブロックを使用する必要があるとゝもに、左端部と右端部に設置するブロック
21には構造上及び製造する上で以下に述べるような種々の問題点がある。
【0006】
すなわち、左端部と右端部にそれぞれ設置した両ブロック21の端面21a及びL型側
壁21A,21Bの端面22a,22bは、ブロックの連結方向の水平軸線aに対して直
交する垂直面ではない。詳述すると、ブロック21の端面21a及びL型側壁21A,2
1Bの端面22a,22bは連結方向の水平軸線aに対して直交する垂直軸線bと傾斜角
θをなす傾斜面で夫々形成されている。したがって、PC鋼棒11の一端をジャッキで引
っ張って緊張する際、この傾斜する端面21a,22a,22bではジャッキの反力をと
ることが難しく、ブロック21,20の端面全体に均等なプレストレスを付与することが
できない。
【0007】
このような問題点に対処するため、従来は、ブロック21の傾斜する端面21a,22
a,22bにジャッキ取付用の凹部23を形成し、該凹部23の底部にPC鋼棒11の配
設軸(図では、ブロックの連結方向の水平軸線aと同方向)に対して直交するジャッキ取
付用の垂直なジャッキ反力面23aを形成することが行われている。
【0008】
しかし、この凹部23の底部にPC鋼棒11の配設軸に対して直交する垂直なジャッキ
反力面23aを幅員が小さなこの部分(左端部又は右端部のブロック21にあっては下端
部又は上端部)に形成し、この部分を定着部21bとするには、構造強度(小さな肉厚,
少ない内部配筋量)の点で問題があり、凹部23内でジャッキによりPC鋼棒11に緊張
力を付与する際に、凹部23の周囲から定着部に亀裂が入る虞がある。
【0009】
また、製造上の問題点としては、ブロック21を現場打設によって形成するには、現場
での調整作業が難しく、作業時間が長くなる等の問題がある。このような問題点は、平面
視矩形状のブロック20をワイヤソー等で斜切断してブロック21を形成する場合も同じ
である。更には、予め所定の傾斜角θで仕切り版をその都度固定した型枠によって成形す
るにも設計や製造管理上の問題も多い。
【0010】
そこで、上記のような問題点を解決するため、全ての構成部材をプレキャストで且つ一
種類の斜角ボックスカルバートのみを使用し、斜角横断の架橋Sを形成することも考えら
れる。例えば、図7に示すように、ブロック24の左右の接合部端面24aをボックスカ
ルバートの連結方向の軸線aと直交する軸線bに対し傾斜(傾斜角度θ)させて形成した
平面視が平行四辺形の斜角ボックスカルバート24である。
【0011】
上記のような構成とすることで、斜角横断の架橋Sは全て一種類のプレキャストの斜角
ボックスカルバート24で構築できるといった利点はある。しかし、側壁を含む緊張材に
よる定着部となる接合部端面24aは垂直軸線bに対し傾斜(傾斜角度θ)しているため
に、前記図5及び図6に示すブロック21の前記定着部21bの端面21bと同様に、ブ
ロック24の傾斜する端面24aにジャッキ取付用の凹部23を形成し、該凹部の底壁に
PC鋼棒11の配設軸(連結方向の軸線a)に対して直交するジャッキ取付用の反力面2
3aを形成する必要があり、上記のような従来の問題点は残る。
【0012】
更には、上記のような構成からなるブロック24,24を使用して斜角横断の架橋Sを
施工する場合には、その接合部端面24aを接合させながら複数個平行に並べて配設する
とゝもに、各ブロック24の定着部に形成した連結方向の軸線aに沿う貫通孔内にPC鋼
棒11を挿通し、該PC鋼棒11の一端をジャッキ等で引っ張って緊張力を施した際に、
各ブロック24,24の接合部は傾斜する端面24aで向かい合うことから、相互に均等
な緊張力を施すことが困難であるとゝもに、接合部端面24a,24aがスライドしてズ
レが発生するといった問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような従来の問題点を解決するために成されたもので、側壁を含む定
着部の端面を斜角ボックスカルバートの連結方向に対し垂直な面で形成することで、連結
方向に締め付ける際、定着部端面に均等な緊張力を付与することができ、更には緊張力を
付与する際に、ボックスカルバートの接合部端面がスライドしてズレたりすることのない
斜角ボックスカルバートを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を解決するため、本願の請求項1に係る第1発明は、ボックスカルバートの
接合部端面を連結方向の軸線と直交する軸線に対し傾斜させて形成した斜角ボックスカル
バートであって、該斜角ボックスカルバートの側壁を含む緊張材による定着部の端面を、
前記緊張材の配設方向と直交する垂直面に形成したことを特徴とする。
【0015】
また上記の目的を達成するため、本願の請求項2に係る第2発明は、前記斜角ボックス
カルバートが、側壁部と底壁形成部からなる一対のL型の側壁と、両端部近傍の定着部お
よび両定着部間にあって接合部端面がボックスカルバートの連結方向の軸線と直交する軸
線に対し傾斜させて形成した頂版部からなる門型の頂版とからなる分割型としたことを特
徴とする。
【0016】
更に、上記の目的を達成するため、本願の第3発明は、前記側壁の底壁形成部の突出側
端面に、内部鉄筋が複数本水平に且つ平行に突出する構成としたことを特徴とし、そして
本願の第4発明は、前記左右接合部端面のボックスカルバートの連結方向の軸線と直交す
る軸線に対する傾斜角度が30度以内であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記のように、請求項1に係る発明とすることで、斜角ボックスカルバートを定着部の
貫通孔に挿通したPC鋼棒を引っ張ってプレストレストを導入する際に、側壁を含む定着
部の端面は斜角ボックスカルバートの連結方向に対し垂直な面で形成されているため、定
着部の端面に均等な緊張力を付与することができるとゝもに、ボックスカルバートの接合
部の端面がスライドしてズレたりすることがない斜角ボックスカルバートを提供すること
ができる。
【0018】
また、上記のように、請求項2に係る発明とすることで、前後に対峙して設置する一対
のL型の側壁は、その上に設置する門型の頂版の幅員の長さや斜角角度に影響を受けない
ため、異なる場所に設置するブロック間で共通の部材として活用することができる。そし
て、更に上記のように、請求項3に係る発明とすることで、現場打ちされる底版部と側壁
の一体性を確保することができる。
【0019】
更に、請求項4に係る発明とすることで、通常施工され得る交差部の角度の範囲を定め
ることで、後記頂版用型枠において、斜角角度に応じて調達される移動型受け台や小口版
の規格化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図1乃至図4に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1及び図2
において、Aは正面視門型とした斜角ボックスカルバートで、左右方向にずれて対峙する
L型の側壁1,1と、両側壁1,1の上部にあって斜めに装架した前記側壁1,1と一体
の頂版5とから構成されている。前記側壁1はその構成部分である側壁部2と、該側壁部
2の下端から内方へ向け水平に突出する底壁形成部3とからなり、該底壁形成部3の突出
側端面からは内部に配設した鉄筋4の先端が水平に平行状態で突出している。
【0021】
前記頂版5は水路或いは道路Wの上に架設する橋Sとなる部分で、前記水路或いは道路
Wの上を斜角横断する部分となる中央の頂壁部6と、該頂壁部6の前後両端部に連接する
定着部7から構成されており、前記頂壁部6の接合部端面10は、図1及び図2に示すよ
うに、ボックスカルバートAの連結方向の軸線a(以下、水平軸線aと言う)と直交する
垂直な軸線b(以下、垂直軸線bと言う)に対し所定の角度θだけ傾斜した傾斜面、すな
わち、道路R1 ,R2 の延長線と同方向の傾斜面で形成されている。
【0022】
8は前記定着部7の左右の端面で、この定着部7の端面8は、図1及び図2に示すよう
に、ボックスカルバートAの連結方向の軸線(水平軸線)aと直交する垂直な軸線(垂直
軸線)bと同方向の垂直面、すなわち、後述するPC鋼棒11の配設方向と直交する垂直
面でそれぞれ形成されているとゝもに、この垂直な定着部の端面8と連続する側壁1の端
面1Aも、前記定着部7の端面8と同様に、前記垂直軸線bと同方向の垂直面で形成され
ている。なお、図中12はボックスカルバートAの連結方向の軸線aに沿った貫通孔で、
頂版5の定着部の端面8および側壁1の定着部の端面1Aにそれぞれ形成されており、該
貫通孔12内にPC鋼棒11が挿通される。
【0023】
そこで、上記の図2に示す一体型の構成からなる門型の斜角ボックスカルバートAを使
用し、既設の水路や道路Wの方向に対して斜めに交差する斜角横断の架橋Sを道路R1
2 の延長線上に構築する場合には、斜角ボックスカルバートAを道路R1 ,R2 の幅に
対応する個数だけ平行に並べて配設し、隣り合う頂壁部6の接合部端面10,10並びに
定着部7の端面8,8および定着部である側壁1の端面1A同士を面接せしめる。
【0024】
つぎに、各ブロックA,Aの定着部の端面8および側壁1の左右端面1Aにそれぞれ形
成した前記ボックスカルバートAの連結方向の軸線aに沿った各貫通孔12内にPC鋼棒
11を挿通し、該PC鋼棒11の一端をジャッキ等により引っ張ってPC鋼棒11に緊張
力を付与することで、ブロックA,A全体をPC鋼棒11を介して一体に連結固定する。
【0025】
その結果、図4に示すように、前記頂版5の部分が水路或いは道路Wの上に架設する橋
Sとなる。そして、底壁形成部3,3間に設置した鉄筋(図示しない)を介してコンクリ
ートを打設することで底壁(図示しない)を形成し、該底壁の上面を水路或いは道路Wと
して利用することになる。
【0026】
ここで、ジャッキ等によりPC鋼棒11の一端を引っ張る際のジャッキ反力面となる定
着部7の端面8および側壁1の左右端面1Aは、斜角ボックスカルバートAの連結方向に
対しそれぞれ垂直な面で形成されているため、定着部端面8,1Aに均等な緊張力を容易
に付与することができるとゝもに、PC鋼棒11に緊張力を付与しても傾斜する接合部端
面10,10同士がスライドしてズレたりすることもない。
【0027】
図3に示すものは、本発明に係る斜角ボックスカルバートの他の実施形態で、前後一対
のL型側壁と、該L型側壁の上端部に配置し、固定部材を介して一体に固定する頂版とか
らなる分割型の斜角ボックスカルバートBである。詳述すると、この分割型の斜角ボック
スカルバートBは、側壁部2と底壁形成部3からなるL型の側壁1,1と、この一対のL
型側壁1,1を左右方向にずらして前後に対峙させ、前記側壁部2,2の上端部に門型の
頂版5を斜めに架設する。そして、この頂版5の両端部から垂下する垂下部5aと側壁部
2,2の上端部とを連結部材13を介して一体に連結したものである。その他の構成及び
施工方法については、前記図2に示す一体型の斜角ボックスカルバートAと同じである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る斜角ボックスカルバートを使用して構築した斜角横断の架橋の施工状態を示す説明平面図である。
【図2】同斜角ボックスカルバートの斜視図である。
【図3】同斜角ボックスカルバートの他の実施形態の斜視図である。
【図4】同斜角ボックスカルバートを使用して構築した架橋の全体斜視図である。
【図5】従来のボックスカルバートを使用して構築した斜角横断の架橋の施工状態を示す説明平面図である。
【図6】図5に示す架橋の説明部分斜視図である。
【図7】全体を斜角ボックスカルバートで構築した斜角横断の架橋の施工状態を示す説明平面図である。
【符号の説明】
【0029】
A 一体型の斜角ボックスカルバート
B 分離型の斜角ボックスカルバート
1 側壁
1A 側壁端面
2 側壁部
3 底壁形成部
4 鉄筋
5 頂版
6 頂壁部
7 定着部
8 定着部端面
10 接合部端面
11 PC鋼棒
12 貫通孔
a 連結方向の軸線
b 連結方向の軸線と直交する垂直な軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックスカルバートの接合部端面を連結方向の軸線と直交する軸線に対し傾斜させて形成した斜角ボックスカルバートであって、該斜角ボックスカルバートの側壁を含む緊張材による定着部の端面を、前記緊張材の配設方向と直交する垂直面に形成したことを特徴とする斜角ボックスカルバート。
【請求項2】
前記斜角ボックスカルバートが、側壁部と底壁形成部からなる一対のL型の側壁と、両端部近傍の定着部および両定着部間にあって接合部端面がボックスカルバートの連結方向の軸線と直交する軸線に対し傾斜させて形成した頂版部からなる門型の頂版とからなる分割型としたことを特徴とする請求項1記載の斜角ボックスカルバート。
【請求項3】
前記側壁の底壁形成部の突出側端面に、内部鉄筋が複数本水平に且つ平行に突出する構成としたことを特徴とする請求項2記載の斜角ボックスカルバート。
【請求項4】
前記頂版部の接合部端面の傾斜角度が30度以内であることを特徴とする請求項1,2又は3記載の斜角ボックスカルバート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−275359(P2009−275359A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124996(P2008−124996)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000201504)前田製管株式会社 (35)
【Fターム(参考)】