説明

断層画像処理方法及び断層画像処理装置

【課題】OCT装置を用いて深さ方向の構造を確認すること。
【解決手段】OCT装置を用いて測定対象の3次元画像データを得てメモリに保持する。次いでx,yの各座標について深さ方向のデータの少なくとも一部を加算して加算した2次元画像を得る。そして2次元画像を表示し、この2次元画像から注目ラインを決定する。次に3次元画像データから注目ラインに沿ったz軸方向のデータを読み出して注目ラインに沿った断面画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光干渉断層画像装置から得られる3次元の画像についての処理を行うことができる光干渉断層画像処理方法及び光干渉断層画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコンデバイスやプリント基板など、回路や特殊な構造が内蔵された微細デバイスでは、内部の構造やパターンは特殊なX線や赤外カメラを用いなければ撮影したり、検査することは困難である。また、それらを用いても各パターンや層の厚みあるいは3次元構造を同時に計測することはできない。一方で一般的な干渉型の膜厚測定器などでは膜厚を測定できても、2次元の分布を得るには時間がかかりすぎて検査用途には不向きである。
【0003】
一方3次元画像(以下、3D画像という)を得るために例えば特許文献1に示されているように、オプティカルコヒーレントトモグラフィ(OCT)による断層画像装置を2次元に走査して3D画像を得る方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−024677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここでOCTによって測定対象について得られた3D画像データのうちz軸を深さ方向、x軸,y軸をこれと夫々垂直な方向とする。OCTによる3次元画像を得た後に、ある位置での膜厚や深さ方向の構造を確認するためには、その位置が特定されている必要がある。しかしながら2次元のパターンやレイアウトを確認しようとしても、測定対象に対して絶対座標がない場合、つまり測定対象の位置を特定せずに撮影した際、測定箇所の特定は測定対象の表面を見て得られるパターンやレイアウトによってしか確認することはできない。OCT3D画像では構造が深さ方向にも分解されるので、一番上の層だけみると何もパターンがなく確認できない場合があり、その場合は他の深さも確認が必要となる。しかしz方向の各層での平面パターンを確認するのは時間がかかる。更に特定の構造が内部に分散している場合はパターンが不明確になるという欠点があった。例えばMEMSマイクロマシンや多層のPCBなど構造が3次元的に配置されているので、2Dパターンに対応する特定の層を検出するには時間がかかるという問題点があった。
【0006】
このようにOCTを用いた従来の断層測定装置では、測定対象に対して絶対座標がなく、どの位置の膜厚を検出する必要があるかが認識できないという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような従来の問題点に着目してなされたものであって、平面パターンの関連によって特定位置の深さ情報を確認できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明の光干渉断層画像処理方法は、OCT装置を用いて測定対象のxyzの3次元画像データ(その深さをz軸、これと垂直な2方向をx軸、y軸とする)を取得し、前記取得した3次元画像データから夫々のx,y座標の位置でのz座標のデータの少なくとも一部を加算することによって加算2次元パターンを算出し、前記加算2次元パターンを表示し、前記加算2次元パターンに基づいて選択された所定位置における前記測定対象の断面状態を表示するものである。
【0009】
この課題を解決するために、本発明の光干渉断層画像処理装置は、測定対象のxyzの3次元画像データ(その深さをz軸、これと垂直な2方向をx軸、y軸とする)を取得するOCT装置と、前記取得した3次元画像データから夫々のx,y座標の位置でのz座標のデータの少なくとも一部を加算することによって加算2次元パターンを算出する2Dパターン抽出部と、前記加算2次元パターンを表示するパターン表示部と、前記加算2次元パターンに基づいて選択された所定位置における前記測定対象の断面状態を表示する断面状態表示部と、を具備するものである。
【0010】
この課題を解決するために、本発明の光干渉断層画像処理方法は、OCT装置を用いて測定対象のxyzの3次元画像データ(その深さをz軸、これと垂直な2方向をx軸、y軸とする)を取得し、前記取得した3次元画像データから夫々のx,y座標の位置でのz座標のデータの少なくとも一部を抽出することによって抽出2次元パターンを算出し、前記抽出2次元パターンを表示し、前記抽出2次元パターンより抽出された所定位置における前記測定対の断面状態を表示するものである。
【0011】
ここで前記断面状態の表示は、断面画像を表示するものとしてもよい。
【0012】
ここで前記断面状態の表示は、測定対象のz軸方向の深さを表示するものとしてもよい。
【0013】
この課題を解決するために、本発明の光干渉断層画像処理装置は、測定対象のxyzの3次元画像データ(その深さをz軸、これと垂直な2方向をx軸、y軸とする)を取得するOCT装置と、前記取得した3次元画像データから夫々のx,y座標の位置でのz座標のデータの少なくとも一部を抽出することによって抽出2次元パターンを算出する2Dパターン抽出部と、前記抽出2次元パターンを表示するパターン表示部と、前記抽出2次元パターンに基づいて選択された所定位置における前記測定対象の断面状態を表示する断面状態表示部と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0014】
このような特徴を有する本発明によれば、2次元画像の特長分布から、ある位置での3次元の情報を探し出すことができる。そのためデータの抽出、管理、また比較、検査などが容易となる。また、その取得プロセスの高速化により、検査、測定効率が向上するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の実施の形態による光干渉断面画像処理装置の主要構成を示すブロック図である。
【図2】図2は本実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図3】図3は実施例1の測定対象となるマイクロマシンディバイスの構造を示す図である。
【図4】図4はマイクロマシンディバイスの2次元加算画像データを示す図である。
【図5】図5は注目ラインに沿ったマイクロマシンディバイスの側長の変化を示す図である。
【図6】図6は実施例2の測定対象となる指の腹部分の表面部分を示す図である。
【図7】図7は指の腹部分の2次元加算画像を示す図である。
【図8】図8は注目ラインに沿った2次元断面画像を示す図である。
【図9】図9は実施例3の測定対象となる回路基板を示す図である。
【図10】図10は回路基板の所定部分の2次元加算画像を示す図である。
【図11】図11は2次元加算画像から抽出された注目ラインの膜厚の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の実施の形態による光干渉断層画像処理装置の主要構成を示すブロック図である。本図に示すようにこの断層画像処理装置は、まずオプティカルコヒーレントトモグラフィ(OCT装置)を用いる。このOCT装置は測定対象の深さ方向の情報を検出することができる既知の装置である。図1において光源11からの光は干渉光学計12に与えられ、干渉光学計12からスキャニング部13を介して測定対象14に光が入射される。ここで測定対象14からの反射光と干渉光学計12の内部の基準光によって干渉信号が形成され、その出力が画像処理装置15に与えられる。画像処理装置15で得られる断面の画像はメモリ16に一旦保持され、又所定部分がモニタ17に表示される。
【0017】
次に画像処理装置15の詳細について説明する。画像処理装置15は3次元画像を取得する3D画像取得部15a、この3次元画像から2次元パターンを抽出する2Dパターン抽出部15bを有しており、更に抽出した2次元パターンを表示する2Dパターン表示部15cと表示した2次元パターンから選択された注目点や注目ラインの断面状態を表示する断面状態表示部15dの機能を達成している。
【0018】
次にこの実施の形態の動作について図2のフローチャートを用いて説明する。ここで測定対象14に対して測定対象の表面の方向をx軸、y軸とし、その深さ方向をz軸とする。このOCT装置では、画像処理装置15の3次元画像取得部15aは、ステップS1においてスキャニング部13により測定対象14に対して入射光をx軸方向とy軸方向の2方向に走査する。このときパターン上のアライメントマークを利用して、所望のエリアのパターンのみに限定してスキャンするようにしてもよい。そしてステップS2において、xyzの3次元の画像データを取得してメモリ16に保持する。
【0019】
次に画像処理装置の2Dパターン抽出部15bは、ステップS3においてメモリ16に保持されている3次元画像からz軸方向の情報を消去してxyの2次元画像とする。これには次の以下のうちいずれかの方法を用いる。
1.xy1点の座標での1次元OCT信号(Aラインデータ)の値を深さ方向に全て加算した値をxy各点での輝度情報として利用し、2次元画像を構成する。
2.xy1点の座標での1次元OCT信号(Aラインデータ)の値から測定対象の表面以上の余分な値を削除したうえで、表面より下の値を深さ方向に全て加算した値をxy各点での輝度情報として利用し、2次元画像を構成する。
3.xy1点の座標での1次元OCT信号(Aラインデータ)の値を深さ方向に所定の深さの範囲の輝度データのみを加算した値をxy各点での輝度情報として利用し、2次元画像を構成する。
4.xy1点の座標での1次元OCT信号(Aラインデータ)の値のうちの一部を抽出し、抽出した値をxy各点での輝度情報として利用し、2次元画像を構成する。この値の抽出は、例えば最も輝度の高い値又は低い値だけを採用するものであってもよい。
【0020】
そして2Dパターン表示部15cはステップS4において、こうして得られた2次元画像をモニタ17上に表示する。このときモニタ17に表示される2次元画像は単に表面の2次元画像ではなく、測定対象14の内部の状態を反映したものとなっている。
【0021】
次に画像処理装置15はステップS5において注目ラインの入力を待受ける。ユーザはこの2次元画像に基づいて適切なラインを選択して入力部18より画像処理装置15に入力する。この入力があれば画像処理装置15の断面状態表示部15dは、ステップS6においてメモリ16に保持されている3次元データに基づいて注目したラインに沿った断面等を表示する(ステップS6)。この表示は高速にあるいはリアルタイムに表示させ、パターンの位置確認できるようにすることが好ましい。
【0022】
又断面の表示に代えて、Aラインデータから輝度のピーク値2点間の距離を計測し、x.y方向に記録するようにしてもよい。こうすれば任意のラインについて測定対象の膜厚データを得ることができる。このように2次元のパターンの各座標に対応する深さ情報、即ち膜厚や表面からある界面までの側長情報などを得ることによって、測定対象の内部の確認、検査が可能となる。又任意のラインに沿った深さ方向の構造の検査を同時に行うことができる。
【0023】
ここでステップS5において注目ラインの入力に代えて注目点を入力し、ステップS6ではこの注目点の1次元情報をそのまま表示したり、深さやある界面等の深さを表示するようにしてもよい。
【実施例1】
【0024】
次に実施例1について説明する。実施例1はマイクロマシンディバイスの構造検査に本発明による断層画像処理装置を用いたものである。図3はマイクロマシンの一例を示す図である。そしてこのマイクロマシンディバイスを測定対象とし、図1に示す断層画像処理装置によってxy方向にスキャニングを行い、このマイクロマシンに対してxyz方向の3次元画像を取得してメモリ17に保持する。そして(x,y)の全ての座標についてz軸方向にデータを加算して2次元の加算画像を取得する。図4はこうして得られた2次元の画像の例を示す。この2次元画像から任意の注目ライン、例えば図4中に実線で示すラインを選択する。そしてこのラインに沿って深さ方向のデータを再び3次元画像から取得する。図5は表面からある界面までの深さ(側長)を示すグラフである。このように所望のラインの2D画面上で決定し、側長を測定することができる。
【実施例2】
【0025】
次に実施例2は生体での断層画像の確認に本発明を適用したものである。この実施例では図6に示す指の腹の部分の構造検査に本発明による断層画像処理装置を用いて、指の腹の部分をOCT装置で測定して3D画像データとする。この3D画像データから、xyの全座標についてz軸の全データを加算して得られた2次元画像は図7に示すものである。この2次元画像から任意の注目ライン、図中に実線で示すラインを選択する。そしてこのラインに沿って深さ方向のデータを再び3次元画像から取得する。図8はこの注目ラインの断面図である。この断面画像によって内部の状態を認識することができる。例えば2次元画像から血管や涙腺を抽出し、その位置での断面画像を表示させることによって涙腺の数を記録したり、血管の収縮率を記録するなど、指紋との位置関係に対応した記録が可能となる。
【実施例3】
【0026】
次に実施例3は本発明を回路基板上の膜厚測定に適用した例である。図9に示す回路基板は、パターンが内層されている場合にはその内部のアライメントマークは検出することができず、所望の位置の確認ができないという欠点がある。そこで回路基板に対して本発明による断層画像処理装置を用いて正方形で示す部分についてxyz方向の3次元画像を取得してメモリ16に保持する。そして図10は(x,y)の全ての座標についてz軸方向にデータを加算した2次元の加算画像の一部を示すものである。この2次元画像から任意の注目ラインを選択する。そしてこのラインに沿って深さ方向のデータを再び3次元画像から取得する。そして図11に示すように注目ラインに沿って膜厚方向の変化を表示する。これにより所望の方向での回路基板の膜厚を認識することができ、基板上にパターンが正常に形成されているかどうかを検査することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は測定対象の断層画像を表面から確認できない方向での断面の状態を認識することができ、マイクロマシンや半導体配線基板、生体等の表面からは内部状態が確認できない構造の測定対象の断面画像を検出するのに有効である。
【符号の説明】
【0028】
11 光源
12 干渉光学計
13 スキャニング部
14 測定対象
15 画像処理装置
16 メモリ
17 モニタ
18 入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OCT装置を用いて測定対象のxyzの3次元画像データ(その深さをz軸、これと垂直な2方向をx軸、y軸とする)を取得し、
前記取得した3次元画像データから夫々のx,y座標の位置でのz座標のデータの少なくとも一部を加算することによって加算2次元パターンを算出し、
前記加算2次元パターンを表示し、
前記加算2次元パターンに基づいて選択された所定位置における前記測定対象の断面状態を表示する光干渉断層画像処理方法。
【請求項2】
前記断面状態の表示は、断面画像を表示するものである請求項1記載の光干渉断層画像処理方法。
【請求項3】
前記断面状態の表示は、測定対象のz軸方向の深さを表示するものである請求項1記載の光干渉断層画像処理方法。
【請求項4】
測定対象のxyzの3次元画像データ(その深さをz軸、これと垂直な2方向をx軸、y軸とする)を取得するOCT装置と、
前記取得した3次元画像データから夫々のx,y座標の位置でのz座標のデータの少なくとも一部を加算することによって加算2次元パターンを算出する2Dパターン抽出部と、
前記加算2次元パターンを表示するパターン表示部と、
前記加算2次元パターンに基づいて選択された所定位置における前記測定対象の断面状態を表示する断面状態表示部と、を具備する光干渉断層画像処理装置。
【請求項5】
OCT装置を用いて測定対象のxyzの3次元画像データ(その深さをz軸、これと垂直な2方向をx軸、y軸とする)を取得し、
前記取得した3次元画像データから夫々のx,y座標の位置でのz座標のデータの少なくとも一部を抽出することによって抽出2次元パターンを算出し、
前記抽出2次元パターンを表示し、
前記抽出2次元パターンより抽出された所定位置における前記測定対の断面状態を表示する光干渉断層画像処理方法。
【請求項6】
前記断面状態の表示は、断面画像を表示するものである請求項5記載の光干渉断層画像処理方法。
【請求項7】
前記断面状態の表示は、測定対象のz軸方向の深さを表示するものである請求項5記載の光干渉断層画像処理方法。
【請求項8】
測定対象のxyzの3次元画像データ(その深さをz軸、これと垂直な2方向をx軸、y軸とする)を取得するOCT装置と、
前記取得した3次元画像データから夫々のx,y座標の位置でのz座標のデータの少なくとも一部を抽出することによって抽出2次元パターンを算出する2Dパターン抽出部と、
前記抽出2次元パターンを表示するパターン表示部と、
前記抽出2次元パターンに基づいて選択された所定位置における前記測定対象の断面状態を表示する断面状態表示部と、を具備する光干渉断層画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図11】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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