説明

断層画像生成装置及び断層画像生成方法

【課題】表現可能な領域を拡張した断層画像を生成する際、その生成に要するデータ処理量を低減しつつも、前記断層画像上におけるアーチファクトの発生を抑制可能な断層画像生成装置及び断層画像生成方法を提供する。
【解決手段】取得された各投影データ120に対し、所定方向に沿った外挿処理及び前記所定方向の垂直方向に沿った平滑化処理を実行することで、断層画像142の生成の際に併せて用いる、放射線検出器40の検出領域80に属さない非検出領域95、96内の複数の画素126の値をそれぞれ決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、断層画像生成装置及び断層画像生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、医療分野において、患部をより詳しく観察するため、放射線源を移動させて異なる角度から被写体に放射線を照射して撮影を行い、得られた投影データを適宜処理して所望の断層画像を得ることができる装置が提案されている。
【0003】
特許文献1では、完全にサンプリングされている視野データを用いて、部分的にサンプリングされている視野データを増強することで、視野の外部領域における画像を再構成する方法及び装置が提案されている。これにより、断層画像として表現可能な範囲を拡張可能であり、診断上便宜である。
【0004】
また、部分的にサンプリングされた視野データの演算方法を工夫することで、断層画像上におけるアーチファクト(偽画像)の発生を抑制する手法も種々提案されている。
【0005】
特許文献2では、逆投影データのスライス位置毎(画素毎と等価である。)に一様でない係数を割り当て、取得された各投影データに対する積和演算により断層画像を生成する装置及び方法が提案されている。
【0006】
特許文献3では、不完全結像領域(部分的にサンプリングされた視野データ)であると判定した画素の値を所定の一定値に置き換えて塗り潰す装置及び方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−121853号公報
【特許文献2】特開2005−152658号公報
【特許文献3】特開2008−200273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3に示されたいずれの装置及び方法によっても、断層画像の生成に要するデータ処理量が増大し、その結果、撮影終了時点から診断開始時点までの待ち時間が長くなるという不都合があった。
【0009】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、表現可能な領域を拡張した断層画像を生成する際、その生成に要するデータ処理量を低減しつつも、前記断層画像上におけるアーチファクトの発生を抑制可能な断層画像生成装置及び断層画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る断層画像生成装置は、被写体に対して放射線を照射可能な放射線源と、前記被写体を透過した前記放射線を検出して投影データを取得する放射線検出器と、前記放射線源と前記放射線検出器との相対的位置関係を遂次変化させながらの撮影により、前記放射線検出器を介してそれぞれ取得された複数の投影データを用いて、前記放射線源と前記放射線検出器との間に介在する関心領域内における断層画像の生成を行う断層画像生成手段とを備え、断層画像生成手段は、取得された各前記投影データに対し、所定方向に沿った外挿処理及び前記所定方向の垂直方向に沿った平滑化処理を実行することで、前記断層画像の生成の際に併せて用いる、前記放射線検出器の検出領域に属さない非検出領域内の複数の画素の値をそれぞれ決定するデータ決定部を備えることを特徴とする。
【0011】
このように、取得された各前記投影データに対し、所定方向に沿った外挿処理を実行することで、特別な演算処理を要することなく断層画像を生成できる。また、前記所定方向の垂直方向に沿った平滑化処理を併せて実行し、非検出領域内の複数の画素の値をそれぞれ決定するようにしたので、外挿処理に起因して発生し得る、所定方向に延在する筋状の濃度むらの影響を低減可能である。これにより、表現可能な領域を拡張した断層画像を生成する際、その生成に要するデータ処理量を低減しつつも、前記断層画像上におけるアーチファクトの発生を抑制できる。
【0012】
また、前記所定方向は、前記検出領域を包摂する投影面上に投影される、前記放射線源の相対的な移動方向に対して平行な方向であることが好ましい。
【0013】
さらに、前記断層画像生成手段は、前記関心領域の位置と前記相対的位置関係に関する情報とに基づいて、前記放射線源から前記関心領域に向けた投影により形成される、前記投影面上の投影領域を決定する投影領域決定部をさらに備え、
前記データ決定部は、前記投影領域決定部により決定された前記投影領域に属し、且つ、前記検出領域に属さない非検出領域内の複数の画素の値をそれぞれ決定することが好ましい。
【0014】
さらに、前記投影領域決定部は、前記相対的位置関係によらず同じサイズの前記投影領域を決定することが好ましい。
【0015】
さらに、前記断層画像生成手段は、前記撮影に起因する幾何学的な不鋭性を有する各前記投影データに対し、空間周波数毎のスペクトル強度を補正するデータ補正部をさらに備えることが好ましい。
【0016】
さらに、前記データ補正部は、前記データ決定部により前記非検出領域内の複数の画素の値を決定する前に、各前記投影データを補正することが好ましい。
【0017】
さらに、前記データ決定部は、前記検出領域と前記非検出領域との境界に隣接する画素の値の差分が所定範囲に収まるように、前記非検出領域内の複数の画素の値を決定することが好ましい。
【0018】
さらに、前記データ決定部は、0次又は1次補外による前記外挿処理を実行し、前記非検出領域内の複数の画素の値を決定することが好ましい。
【0019】
さらに、前記断層画像生成手段は、前記断層画像に対し、前記関心領域内の所定領域に属する複数の画素の各値を、所定の一定値に近づける黒化処理を実行することが好ましい。
【0020】
さらに、前記データ決定部は、前記外挿処理に供される前記検出領域内の複数の画素に対し、前記垂直方向に沿った前記平滑化処理を実行して得た各値に基づいて、前記外挿処理を実行することで、前記非検出領域内の複数の画素の値を決定することが好ましい。
【0021】
さらに、前記データ決定部は、前記外挿処理の実行後に、該外挿処理により各値が一時的に決定された前記非検出領域内の複数の画素に対して前記垂直方向に沿った前記平滑化処理を実行することで、前記非検出領域内の複数の画素の値を決定することが好ましい。
【0022】
さらに、前記断層画像生成手段により生成された前記断層画像と併せて、該断層画像の生成の際に用いられた、各前記検出領域に属する画素の加算数の分布を表すマークを重ねて表示する表示部をさらに備えることが好ましい。
【0023】
本発明に係る断層画像生成方法は、被写体に対して放射線を照射可能な放射線源と、前記被写体を透過した前記放射線を検出して投影データを取得する放射線検出器とを用いて、前記放射線源と前記放射線検出器との相対的位置関係を遂次変化させながらの撮影により、前記被写体の断層画像を生成する方法であって、前記放射線検出器を介して複数の投影データを取得するステップと、取得された各前記投影データに対し、所定方向に沿った外挿処理及び前記所定方向の垂直方向に沿った平滑化処理を実行することで、前記断層画像の生成の際に併せて用いる、前記放射線検出器の検出領域に属さない非検出領域内の複数の画素の値をそれぞれ決定するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る断層画像生成装置及び断層画像生成方法によれば、取得された各前記投影データに対し、所定方向に沿った外挿処理を実行することで、特別な演算処理を要することなく断層画像を生成できる。また、前記所定方向の垂直方向に沿った平滑化処理を併せて実行し、非検出領域内の複数の画素の値をそれぞれ決定するようにしたので、外挿処理に起因して発生し得る、所定方向に延在する筋状の濃度むらの影響を低減可能である。これにより、表現可能な領域を拡張した断層画像を生成する際、その生成に要するデータ処理量を低減しつつも、前記断層画像上におけるアーチファクトの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態に係る断層画像生成装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す放射線検出装置に内蔵される放射線検出器の構成を示す回路図である。
【図3】図3Aは、放射線源を正面位置に移動させた状態下での放射線撮影を表す概略側面図である。図3Bは、放射線検出器の検出領域、及び投影面の概念を表す説明図である。
【図4】図4Aは、トモシンセシス撮影の開始時点における状態を表す概略側面図である。図4Bは、トモシンセシス撮影の終了時点における状態を表す概略側面図である。
【図5】図5A及び図5Bは、関心領域、投影領域、検出領域、及び非検出領域の概念を表す説明図である。
【図6】図1に示す画像再構成部の機能ブロック図である。
【図7】図1に示す断層画像生成装置の動作説明に供されるフローチャートである。
【図8】図8A及び図8Bは、ステップS7における平滑化処理の具体例を表す概略説明図である。
【図9】図9A及び図9Bは、ステップS8における外挿処理の具体例を表す概略説明図である。
【図10】ステップS9における逆投影処理の具体例を表す概略説明図である。
【図11】図11Aは、平滑化処理を施さずに得た断層画像を可視化した概略説明図である。図11Bは、平滑化処理を施して得た断層画像を可視化した概略説明図である。
【図12】図12A及び図12Bは、ステップS12における断層画像の表示の具体例を表す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る断層画像生成方法について、これを実施する断層画像生成装置との関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態に係る断層画像生成装置10は、放射線検出装置12と、投影データ取得部14と、画像再構成部16(断層画像生成手段)と、これらを制御するコンソール18とを基本的に備える。
【0028】
投影データ取得部14は、放射線検出装置12に対向して設けられた放射線源20と、放射線源20を予め設定された複数の位置に移動させる移動機構22と、放射線源20が予め設定された複数の位置に到達した時点で、放射線源20から放射線検出装置12上の被写体24に対して放射線26を照射するように制御する放射線制御部28と、放射線検出装置12から順次送られてくる投影データを画像メモリ30に記憶する画像記憶部32とを有する。
【0029】
画像再構成部16は、画像メモリ30に記憶された複数の投影データを再構成することで、被写体24の所定領域(以下、指定領域33という。)を含む断層画像を生成する。そして、出力表示のため、画像再構成部16は、前記断層画像を表す画像データをモニタ34(表示部)側に供給する。
【0030】
図1及び図2に示すように、放射線検出装置12は、筐体36と、筐体36内に収容されたバッテリ38(図2参照)と、放射線検出器40と、検出器制御部42(図2参照)とを有する。
【0031】
図2に示すように、放射線検出器40は、放射線26を感知して電荷を発生させるアモルファスセレン(a−Se)等の物質からなる光電変換層51を行列状の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)52のアレイの上に配置した構造を有する。そして、放射線検出器40は、発生した電荷を蓄積容量53に蓄積した後、各行毎にTFT52を順次オンにして、電荷を画像信号として読み出す。本図では、光電変換層51及び蓄積容量53からなる1つの画素50と1つのTFT52との接続関係のみを示し、その他の画素50の構成については省略している。なお、アモルファスセレンは、高温になると構造が変化して機能が低下してしまうため、所定の温度範囲内で使用する必要がある。よって、筐体36内に放射線検出器40を冷却する手段を配設することが好ましい。
【0032】
各画素50に接続されるTFT52には、行方向と平行に延びるゲート線54と、列方向と平行に延びる信号線56とが接続される。各ゲート線54は、ライン走査駆動部58に接続され、各信号線56は、読取回路を構成するマルチプレクサ66に接続される。
【0033】
ゲート線54には、行方向に配列されたTFT52をオン・オフ制御する制御信号Von、Voffがライン走査駆動部58から供給される。この場合、ライン走査駆動部58は、ゲート線54を切り替える複数の第1スイッチSW1と、第1スイッチSW1の1つを選択する選択信号を出力する行アドレスデコーダ60とを備える。行アドレスデコーダ60には、検出器制御部42からアドレス信号が供給される。
【0034】
また、信号線56には、列方向に配列されたTFT52を介して各画素50の蓄積容量53に保持されている電荷が流出する。この電荷は、増幅器62によって増幅される。増幅器62には、サンプルホールド回路64を介してマルチプレクサ66が接続される。マルチプレクサ66は、信号線56を切り替える複数の第2スイッチSW2と、第2スイッチSW2の1つを選択する選択信号を出力する列アドレスデコーダ68とを備える。列アドレスデコーダ68には、検出器制御部42からアドレス信号が供給される。マルチプレクサ66には、A/D変換器70が接続されている。このA/D変換器70により、画素50毎に読み出された電荷は、デジタル信号(すなわち、投影データ)に変換される。そして、検出器制御部42を介して出力された投影データは、画像メモリ30(図1参照)に記憶される。つまり、断層画像生成装置10において放射線撮影が行われる度に放射線検出装置12から投影データが出力され、出力された投影データが画像メモリ30に(例えば時系列で)記憶される。
【0035】
このように、投影データ取得部14は、放射線検出装置12に対向して設けられた放射線源20を複数の位置に移動しながら、各位置において放射線源20から放射線検出装置12上の被写体24に対して異なる方向から放射線26を照射することによって、放射線検出装置12から複数の投影データを取得するように動作する。
【0036】
本実施の形態に係る断層画像生成装置10では、放射線源20のみを移動可能に設けているが、これに限られない。すなわち、放射線源20及び放射線検出器40のうち少なくとも一方を移動することで、被写体24を異なる角度から撮影することができる。また、図1例では、放射線源20を異なる3つの位置にそれぞれ移動・配置させた状態を表記しているが、2つ、あるいは4つ以上の位置であってもよい。さらに、放射線源20を移動させる軌道は、図1に例示するような直線状の他、曲線状(具体的には、円弧状)であってもよい。
【0037】
続いて、本発明の理解のために必要な用語について、図3A〜図5Bを参照しながら説明する。ここでは、放射線検出器40の配設位置が常時固定された撮影を例に説明する。本明細書中における「撮影」は、放射線源20が予め設定された複数の位置に到達した時点で行われる個々の撮影という概念と、これら個々の撮影全体を1つの撮影として捉える概念が存在する。そこで、個々の撮影を「放射線撮影」と表記するとともに、個々の撮影全体を1つの撮影として捉えた撮影を「トモシンセシス撮影」と表記する場合がある。
【0038】
図3Aは、放射線源20を正面位置に移動させた状態下での放射線撮影(いわゆるスカウト撮影)を表している。本図例では、指定領域33は、所定の高さ(Z軸位置)における照射野RFの断面領域に相当する。すなわち、指定領域33は、放射線検出器40の画素50(図2参照)が存在する平面領域(以下、検出領域80という。)に対して略平行な面状領域である。このように、被写体24内のいずれかの位置に指定領域33を設定することで、所望の断層画像を得ることができる。この場合、断層面84(図4A参照)の高さがZ軸正方向に位置するにつれて、指定領域33が次第に狭くなっている。なお、説明の便宜上、指定領域33、及び後述する図5Aの拡張領域90、92は、Z軸方向の厚みを有するものとして表記している。
【0039】
図3Bに示すように、断層画像の生成の際に用いられる各投影データに関し、共通する投影面82を定義する。この投影面82は、放射線検出器40の検出領域80を包摂する面として定義してもよい。すなわち、投影面82は、各投影データが実際に投影される面であり、あるいは、投影されることが演算上望ましい面である。本図例では、検出領域80は平面状であるので、検出領域80を包摂する投影面82も平面状である。なお、検出領域80は曲面状であってもよく、この場合でも上記と同様に投影面82を定義できることは言うまでもない。
【0040】
ところで、図3Aに示す正面以外の位置に放射線源20を移動させて撮影を行う場合、当該撮影における照射野RF内に、指定領域33のすべてが収まらない場合がある。換言すれば、指定領域33内には、当該撮影により取得された投影データを用いたとしても、逆投影できない部分領域が存在する場合がある。そこで、投影データの不足分を適宜補って画像領域(すなわち、投影領域)を拡大することで、上記した逆投影できない部分領域についても逆投影データの算出が可能になる。このように、放射線検出器40により実際に検出された投影データと、実際に検出されなかった仮想的な投影データとを併せて用いることで、断層画像を生成する対象領域である関心領域94(図5A参照)を実質的に拡大可能であり、ユーザ(医師又は放射線技師)にとって診断上便宜である。以下、サイズが最大となるように関心領域94を決定する方法について、図4A〜図5Bを参照しながら説明する。
【0041】
図4Aに示すように、トモシンセシス撮影の開始時点において、放射線源20から検出領域80に向けた投影(放射線26の照射)により、照射野RF1が形成される。放射線源20がY軸正方向側に配置されているので、照射野RF1は、正面位置における照射野RF(図3A参照)と比べて、Y軸正方向寄りに形成される。ここで、指定領域33を包摂する断層面84と、照射野RF1との交線を境界線86とする。
【0042】
図4Bに示すように、トモシンセシス撮影の終了時点において、放射線源20から検出領域80に向けた投影(放射線26の照射)により、照射野RF2が形成される。放射線源20がY軸負方向側に配置されているので、照射野RF2は、正面位置における照射野RF(図3A参照)と比べて、Y軸負方向寄りに形成される。ここで、指定領域33を包摂する断層面84と、照射野RF2との交線を境界線88とする。なお、図4Aに示す境界線86及び図4Bに示す境界線88は、いずれもX軸方向に延在する線分である。
【0043】
ここで、放射線検出器40により実際に検出された投影データを少なくとも1つ用いて断層画像を生成するためには、境界線86、88を対辺とする関心領域94を設定すればよい。ここで、関心領域94は、指定領域33に対し、拡張領域90、92(ハッチングで図示する。)を付加した領域に相当する。
【0044】
図5A及び図5Bに示すように、拡張領域90は、指定領域33のY軸正方向側の一辺と境界線86とを対辺とする面状の領域である。拡張領域92は、指定領域33のY軸負方向側の一辺と境界線88とを対辺とする面状の領域である。また、放射線源20から拡張領域90、92に向けた投影(仮想的な照射野VRF)により、検出領域80に属さない非検出領域95、96がそれぞれ形成される。すなわち、放射線源20から関心領域94に向けた投影により、投影面82上に投影領域98(検出領域80、非検出領域95、96の合成領域)が形成される。
【0045】
なお、指定領域33を含む関心領域94は投影面82に平行するので、投影領域98は、関心領域94に相似する形状を有する。本図例では、関心領域94は矩形状であるので、その投影領域98も矩形状である。
【0046】
図6は、図1に示す画像再構成部16の詳細ブロック図である。
【0047】
画像再構成部16は、画像メモリ30からの投影データ等を入力するデータ入力部100と、コンソール18から供給された撮影条件(例えば、指定領域33、放射線源20等の位置情報)に基づいて関心領域94を決定する関心領域決定部102と、データ入力部100により入力された投影データ及び関心領域決定部102により決定された関心領域94の位置に基づいて、該関心領域94における断層画像を生成する断層画像生成部104と、例えば指定領域33の位置を表すマークの位置を決定するマーク位置決定部106とを備える。
【0048】
断層画像生成部104は、放射線撮影毎(又はトモシンセシス撮影毎)に投影領域98を決定する投影領域決定部108と、撮影に起因する幾何学的な不鋭性を有する投影データ(画像データ)に対して空間周波数毎のスペクトル強度を補正するデータ補正部110と、投影データに対して外挿処理及び平滑化処理を実行することで、非検出領域96内の複数の画素の値をそれぞれ決定するデータ決定部112と、データ決定部112により外挿処理及び平滑化処理が実行された投影データ(以下、「拡張投影データ」という場合がある。)に対して逆投影処理を行う逆投影処理部114とを備える。
【0049】
データ決定部112は、各投影データに対し、所定方向(例えば、Y軸)の垂直方向(例えば、X軸)に沿った平滑化処理を実行する平滑化処理部116と、前記所定方向に沿った外挿処理を実行する外挿処理部118とを備える。
【0050】
本実施の形態に係る断層画像生成装置10は、以上のように構成される。続いて、断層画像生成装置10の動作について、図7のフローチャート及び図1〜図6を適宜参照しながら詳細に説明する。
【0051】
ステップS1において、コンソール18は、ユーザ(医師又は放射線技師)の指示操作に応じて、トモシンセシス撮影における指定領域33を決定する。例えば、ユーザは、既に行った放射線撮影、例えば図3Aに示すスカウト撮影における放射線画像の読影結果に基づいて、指定領域33の範囲(X−Y軸方向の位置)及び/又は高さ(Z軸方向の位置)を適宜決定する。
【0052】
ステップS2において、関心領域決定部102は、断層画像を生成する対象領域である関心領域94を決定する。先ず、関心領域決定部102は、指定領域33、放射線源20、放射線検出器40等に関する位置情報をコンソール18から取得する。そして、関心領域決定部102は、図4A(Y軸位置の最大値)及び図4B(Y軸位置の最小値)に示す撮影条件に基づいて、拡張領域90、92を決定する。この撮影条件には、例えば、放射線源20と被写体24との距離、放射線源20と筐体36(放射線検出器40)との距離、放射線検出器40のサイズ等が含まれる。なお、図5A例では、関心領域94のサイズが最大になるように決定しているが、図示したサイズよりも小さくしてもよい。
【0053】
その後、関心領域決定部102は、決定した関心領域94に関する位置情報を断層画像生成部104側に供給する。
【0054】
ステップS3において、断層画像生成装置10は、トモシンセシス撮影を開始する。投影データ取得部14は、放射線検出装置12に対向して設けられた放射線源20を複数の位置に移動しながら、各位置において放射線源20から放射線検出装置12上の被写体24に対して異なる方向から放射線26を照射することで複数の投影データを取得する。その後、投影データ取得部14は、各投影データを出力し、画像メモリ30に一時的に記憶させる。なお、投影データ取得部14は、後述する逆投影処理(ステップS9)の実行時点に同期させて各投影データを取得してもよいし、同期させずに独立して取得してもよい。各処理を同期させることで、バッファメモリとしての画像メモリ30の容量を節約できる。
【0055】
ステップS4において、データ入力部100は、現在の撮影により取得された投影データ120(図8A等参照)を入力する。データ入力部100は、トモシンセシス撮影における各投影データ120の取得順(撮影順)に入力してもよいし、複数の投影データ120を一時に入力する場合、撮影順に関連付けられた識別情報をも併せて入力してもよい。また、データ入力部100は、投影データ120の他、該投影データ120が取得された際の放射線源20と放射線検出器40との相対的位置関係に関する情報(以下、撮影位置情報という。)を併せて入力する。
【0056】
ステップS5において、投影領域決定部108は、ステップS2で決定された関心領域94の位置情報、及び、ステップS4で入力された撮影位置情報に基づいて、現在の撮影に応じた投影領域98を決定する。本実施の形態では、投影領域決定部108は、放射線源20及び放射線検出器40の位置によらず、同一のサイズである投影領域98を決定する。なお、投影データ120を格納するメモリ容量を節約するため、投影領域決定部108は、後述する逆投影処理(ステップS9)の際に使用される最小サイズの投影領域を決定してもよい。
【0057】
ステップS6において、データ補正部110は、ステップS4で入力された投影データ120を補正する。放射線源20からの放射線26により形成される投影データ120は、撮影に起因する幾何学的な不鋭性、いわゆる画像のボケを有している。不鋭性を有する各投影データ120をそのまま用いて逆投影処理を実行した場合、生成された断層画像は、高空間周波数帯域におけるスペクトル強度が著しく低下する傾向がある。そこで、データ補正部110は、各投影データ120に対し、空間周波数毎のスペクトル強度を補正する。撮影形態に応じて補正量は異なるが、データ補正部110は、一般的には、低空間周波数帯域を抑制するとともに、高空間周波数帯域を強調するように補正する。スペクトル強度の補正手法は、長さを単位とする実空間上における畳み込み演算(すなわち、マスク演算)であっても、長さの逆数を単位とするフーリエ空間上における乗算演算(すなわち、フィルタ演算)であってもよい。
【0058】
なお、本ステップS6の処理を実行した後に逆投影処理を行う手法は、フィルタ逆投影法と呼ばれている。これに対し、シフト加算法を含む単純逆投影法を用いる場合、本処理は不要である。
【0059】
ところで、上記した不鋭性は、図5Bに示すように、検出領域80を包摂する投影面82上に投影される、放射線源20の投影像99の相対的な移動方向(当該方向は、後述する外挿処理を実行する所定方向にも相当する。)に沿って発生する。本図例の場合、データ補正部110は、各投影データ120に対し、Y軸に沿って画像列毎に(一次元的に)補正する。その結果、X軸方向に隣接する画素間の値の差分が相対的に大きくなり、X軸方向に沿ったグラデーション画像の滑らかさが損なわれる傾向があることに留意する。
【0060】
ステップS7において、平滑化処理部116は、ステップS6で補正された投影データ120に対し、所定方向(Y軸)の垂直方向(X軸)に沿った平滑化処理を実行する。以下、図8A及び図8Bを参照しながら詳細に説明する。
【0061】
図8Aは、投影領域98(図5B参照)内における拡張投影データ122を模式的に表した図である。拡張投影データ122の一部である投影データ120は、複数の画素124から構成される。すなわち、検出領域80内には、複数の画素124が二次元的に配置されている。説明の便宜上、非検出領域96内に存在する複数の画素の記載を省略している。
【0062】
ここで、平滑化処理部116は、非検出領域96に隣接する検出領域80内の少なくとも1つの画像列に対して、矢印方向(X軸)に沿った平滑化処理を実行する。平滑化処理には公知の手法、例えば、移動平均、ガウシアンフィルタを含む畳み込み演算、メディアンフィルタ、最大値/最小値フィルタを含む統計的演算、モルフォロジ演算、あるいはエッジ保存型平滑化処理等を種々用いることができる。また、平滑化処理の演算範囲は、画像列単位であってもよいし、複数の画像列に及んでもよい。
【0063】
図8Bは、図8Aに示すVIIIB−VIIIB線に沿った画素値プロファイルである。実線のグラフは平滑化処理の実行前における画素値プロファイルであり、破線のグラフは平滑化処理の実行後における画素値プロファイルである。本図から諒解されるように、平滑化処理の前後にわたって、X軸に沿った画素値の変動量が低減される。
【0064】
なお、本ステップS7の平滑化処理により算出された複数の画素124の各値は、現在の投影データに上書き更新することなく、一時データとして記憶しておく。検出領域80に属する画素124に関し、実際に検出された値をそのままの状態で、断層画像の生成に用いることが好ましいからである。
【0065】
ステップS8において、外挿処理部118は、ステップS7で平滑化された一時データを用いて、所定方向(Y軸)に沿った外挿処理を実行する。以下、図9A及び図9Bを参照しながら詳細に説明する。
【0066】
図9Aは、投影領域98(図5B参照)内における拡張投影データ122を模式的に表した図である。拡張投影データ122、投影データ120及び検出領域80に関し、図8Aと同様であるので説明を省略する。また、非検出領域96内には、複数の画素126が二次元的に配置されている。説明の便宜上、Y軸に沿った1行分に限り各画素126を図示し、非検出領域96内に存在するその他の画素の記載を省略している。
【0067】
ここで、外挿処理部118は、非検出領域96に属するすべての画素126に対して、矢印方向(Y軸)に沿った外挿処理を実行することで、各画素126の値をそれぞれ決定する。外挿処理には公知の手法、例えば、多項式、非線形関数等の関数近似法、0次式(置換)、1次式(リニア)、3次式(キュービック)等の補外法を用いることができる。また、外挿処理に使用される画素124の範囲は、演算に用いる外挿方法に応じて変更してもよい。例えば、0次補外の場合は1つの画素であり、1次補外の場合は2つの画素である。
【0068】
図9Bは、図9Aに示すIXB−IXB線に沿った画素値プロファイルである。検出領域80(右側)と非検出領域96(左側)との境界線128を破線で示している。なお、本図は、0次補外により、非検出領域96内の画素126の各値を決定した場合におけるグラフを表している。本図から諒解されるように、非検出領域96内の画像列に属する画素126の各値は、すべて同じ値(ステップS7で算出された一時データの値)である。
【0069】
なお、アーチファクトの発生防止の観点から、外挿処理部118は、非検出領域96内(更には、同一の画像列)に存在する画素126の各値がなるべく均一になるように決定することが望ましい。そこで、低次数の補外方法、より具体的には0次補外又は1次補外を用いることが好ましい。同様の観点から、境界線128に隣接する画素124の値と、画素126の値との差分Δが所定の範囲内に収まるようにしてもよい。このように構成することで、被写体24の体型、関心領域94の部位、撮影条件等の種々の組合せによらず、好適な断層画像を生成できることを確認した。
【0070】
ステップS9において、逆投影処理部114は、ステップS8で取得された拡張投影データ122から、撮影毎の逆投影データを作成する。以下、関心領域94内に存在する画素130の値を決定する方法について、図10を参照しながら説明する。
【0071】
図10に示すように、画素130に対応する座標をA1(Xt、Yt、Zt)とし、放射線源20の位置に対応する座標をA2(Xs、Ys、Zs)とする。また、投影面82を、X−Y平面に平行であるZ=Zp(既知の値)に設定したとする。
【0072】
放射線源20から画素130に向けて投影された投影領域98上の位置{座標A3(Xp、Yp、Zp)}のうち、既知でないXp及びYpの値は、簡単な幾何学的考察により、次の(1)式及び(2)式で算出される。
Xp=Xt+(Xs−Xt)・(Zp−Zt)/(Zs−Zt) ‥(1)
Yp=Yt+(Ys−Yt)・(Zp−Zt)/(Zs−Zt) ‥(2)
【0073】
ここで、座標A3に対応する位置は、画素130及び放射線源20の位置を結ぶ直線Lと、投影面82との交点である。そして、逆投影処理部114は、現在の画素130の値に対し、座標A3に対応する画素124、126の値(逆投影データの値)を加算する。なお、複数の画素124、126の位置の間に座標A3が存在する場合、逆投影処理部114は、公知の補間演算を用いて逆投影データの値を算出してもよい。このようにして、関心領域94上に存在するすべての画素130について同様の演算処理(逆投影処理)を実行する。非検出領域95、96内の画素126の値を予め決定しておいたので、逆投影処理以外の別異の演算(例えば、画素126毎の積和演算)が不要となる。
【0074】
ステップS10において、画像再構成部16は、すべての拡張投影データ122を用いた画像の再構成が完了したか否かを判別する。完了していないと判別された場合、画像再構成部16は、ステップS4に戻って、ステップS4〜S9を順次繰り返す。すなわち、放射線26の照射位置(角度)を異ならせた逆投影データを遂次加算することで、完成形態としての断層画像142(図11B〜図12B参照)が徐々に生成される。一方、完了したと判別された場合、次のステップ(S11)に進む。
【0075】
以下、平滑化処理(ステップS7)の効果について、図11A及び図11Bを対比しながら説明する。図11Aは、平滑化処理を施さずに得た断層画像136を可視化した概略説明図である。図11Bは、平滑化処理を施して得た断層画像142を可視化した概略説明図である。なお、断層画像142を生成するにあたって、図8A及び図9Aにおいて図示を省略した非検出領域95(図5B参照)に関しても、非検出領域96と同様にステップS7及びS8を実行している。
【0076】
図11Aに示すように、平滑化処理を施さずに得た断層画像136の画像領域138、140(非検出領域95、96にそれぞれ対応する。)には、Y軸方向に延在する筋状の濃度むら、いわゆるアーチファクトが発生している。一方、図11Bに示すように、平滑化処理を施して得た断層画像142のいずれの画像領域にも、上記したアーチファクトが発生しない。このように、非検出領域95、96内の各画素126に対して、所定方向(Y軸)の垂直方向(X軸)に沿った平滑化処理を施すことで、各拡張投影データ122、及びこれらを加算して得た断層画像142におけるアーチファクトの発生を抑制できる。フィルタ逆投影法を用いて断層画像を生成する場合、特に効果的である。
【0077】
ところで、本発明における外挿処理を用いることで、拡張領域90、92に被写体24の部位が存在するか否かにかかわらず、非検出領域95、96内の画素126の各値が決定される。すなわち、指定領域33に被写体24の部位が存在し、且つ、拡張領域90、92に被写体24の部位が存在しない場合、画像のエネルギー(放射線26の減衰率)が一定に保たれない場合がある。これにより、断層画像142をネガ出力する際、拡張領域90、92内の素抜け領域に対応する濃度が相対的に低くなる場合がある。すなわち、被写体24の辺縁部(輪郭線)周辺における濃度のエッジコントラストが鈍る傾向がある。ここで、素抜け領域とは、被写体24を通過することなく放射線26が実際に検出された、あるいは検出され得る画像領域を意味する。
【0078】
これに対し、断層画像生成部104(例えば、データ補正部110)は、関心領域94内に存在する所定領域、より具体的に、被写体24の外部領域(素抜け領域)であるはずの拡張領域90、92内の所定領域に属する複数の画素130の各値を、所定の一定値に近づける黒化処理を施してもよい。例えば、セグメンテーション手法等の公知のアルゴリズムを用いて、素抜け領域に属する画像領域を特定することができる。
【0079】
また、生成された断層画像142に対して施してもよいし、各拡張投影データ122に対して予め施してもよい。この場合、断層画像生成部104は、投影領域98内に存在する所定領域、より具体的に、被写体24の外部領域(素抜け領域)であるはずの非検出領域95、96内の所定領域に属する複数の画素126の各値を、所定の一定値に近づける黒化処理を施す。データ処理量を低減する観点から、可能な限り少数の画像、すなわち完成した1つの断層画像142に対して、黒化処理を施すことが一層好ましい。
【0080】
さらに、上述したステップS7(平滑化処理)において、投影データ120に対してエッジ保存型平滑化処理を施してもよい。これにより、被写体24の辺縁部(輪郭線)周辺における濃度のエッジコントラストが保存されるので、素抜け領域における画像濃度の低下が抑制される。
【0081】
このように、黒化処理を施すことで、断層画像142を視認する際の防眩性が高まり、ひいては画像診断性が向上する。輝度のダイナミックレンジが広いマンモグラフィ(乳房撮影画像)を出力する際、特に効果的である。
【0082】
ステップS11において、マーク位置決定部106は、ステップS4〜S9で生成された断層画像142(図12A参照)と併せて表示するためのマーク144R、144L(同図参照)の位置を決定する。例えば、マーク位置決定部106は、関心領域決定部102から供給された関心領域94に関する位置情報に基づいて、指定領域33と拡張領域90、92との境界線の位置を算出・決定する。
【0083】
ステップS12において、断層画像生成装置10は、診断画像としての断層画像142をモニタ34に表示させる。
【0084】
図12Aに示すように、モニタ34には、被写体24の胸部断面を表す断層画像142が表示されている。Y軸方向に延在する筋むらのない拡張投影データ122を用いることで、図11Bに示すような、アーチファクトが生じない断層画像142が得られる。
【0085】
断層画像142の左方には、ブラケット(鉤括弧)の「ブラ」を表すマーク144Lが表示されている。断層画像142の右方には、ブラケットの「ケット」を表すマーク144Rが表示されている。マーク144R、144Lを組み合わせることにより、指定領域33の所在をユーザに知らせることができる。
【0086】
一方、図12Bは、関心領域94の断層面84(図4A参照)の高さを変更した場合における、断層画像146の表示結果を示す図である。図12Aと同様に、断層画像146の左方(又は右方)には、マーク148L(又はマーク148R)が表示されている。マーク148R、148Lが示す縦方向の範囲は、マーク144R、144Lよりも狭くなっている。つまり、断層画像146に応じた指定領域33は、断層画像142に応じた指定領域33よりも狭くなっている。これにより、断層画像146の断層面84(図4A参照)が、断層画像142の断層面84と比べてZ軸正方向側に位置する旨、ユーザが把握できる。
【0087】
また、マーク144R、144Lは、断層画像142の生成の際に用いられた複数の拡張投影データ122のうち、検出領域80に属する画素124の加算数の分布を表すマークであってもよい。
【0088】
例えば、図12Aに示す断層画像142と併せて表示されるマーク144R、144Lは、すべての拡張投影データ122において(100%の割合で)、検出領域80に属する画素124の値、すなわち投影データ120の値が用いられた画像領域を識別可能にする。さらに、加算数の分布は2つのレベル(100%か、それ以外か)のみならず、3つ以上のレベル(例えば、50%未満、50〜75%、75%以上)であってもよい。さらに、マークの形態は、文字、図形、模様、色彩等の任意の組み合わせであってもよい。
【0089】
以上のように、取得された各投影データ120に対し、所定方向(Y軸)に沿った外挿処理を実行することで、特別な演算処理を要することなく断層画像142を生成できる。また、所定方向の垂直方向(X軸)に沿った平滑化処理を併せて実行し、非検出領域95、96内の複数の画素126の値をそれぞれ決定するようにしたので、外挿処理に起因して発生し得る、所定方向(Y軸)に延在する筋状の濃度むらの影響を低減可能である。これにより、表現可能な領域を拡張した断層画像142を生成する際、その生成に要するデータ処理量を低減しつつも、断層画像142上におけるアーチファクトの発生を抑制できる。
【0090】
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0091】
例えば、本実施の形態では、逆投影処理部114は撮影毎の逆投影データをデジタル的に加算する構成を採っているが、複数回の連続撮影によって放射線検出器40内の蓄積容量53に電荷を遂次蓄積(アナログ的に加算)するようにしてもよい。
【0092】
また、画像再構成部16は、本発明の作用効果が得られる範囲内において、各演算処理の順番又は方法を適宜変形してもよい。以下、具体例を示す。
【0093】
[1]データ決定部112は、ステップS7及びS8(図7参照)の順番を逆にしてもよい。この場合、データ決定部114は、外挿処理(ステップS8)の実行後に、該外挿処理により各値が一時的に決定された非検出領域95、96内の複数の画素126に対して垂直方向(X軸)に沿った平滑化処理(ステップS7)を実行する。
【0094】
[2]逆投影処理部114は、データ決定部112の機能を備えてもよい。この場合、逆投影処理部114は、拡張投影データ122ではなく投影データ120を用いて、逆投影データを遂次算出する。具体的には、図10において、座標A3が検出領域80内に存在しない場合、逆投影処理部114は、データ決定部112による演算処理と等価な演算処理をその都度実行し、座標A3に対応する画素126の値を決定する。これにより、非検出領域95、96に相当するメモリ容量を削減できる。
【0095】
[3]断層画像生成部104は、ステップS6及びS7(図7参照)の順番を逆にしてもよい。この場合、データ補正部110は、平滑化処理(ステップS7)の実行後に、各投影データ120を補正する(ステップS6)。これにより、検出領域80内における高空間周波数帯域のスペクトル強度が増加する前に、一時データを作成することができる。
【符号の説明】
【0096】
10…断層画像生成装置 12…放射線検出装置
14…投影データ取得部 16…画像再構成部
18…コンソール 20…放射線源
22…移動機構 24…被写体
26…放射線 28…放射線制御部
30…画像メモリ 32…画像記憶部
33…指定領域 34…モニタ
36…筐体 40…放射線検出器
80…検出領域 82…投影面
90、92…拡張領域 94…関心領域
96…非検出領域 98…投影領域
102…関心領域決定部 104…断層画像生成部
106…マーク位置決定部 108…投影領域決定部
110…データ補正部 112…データ決定部
114…逆投影処理部 116…平滑化処理部
118…外挿処理部 120…投影データ
122…拡張投影データ 124、126、130…画素
142、146…断層画像 144L(R)、148L(R)…マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に対して放射線を照射可能な放射線源と、
前記被写体を透過した前記放射線を検出して投影データを取得する放射線検出器と、
前記放射線源と前記放射線検出器との相対的位置関係を遂次変化させながらの撮影により、前記放射線検出器を介してそれぞれ取得された複数の投影データを用いて、前記放射線源と前記放射線検出器との間に介在する関心領域内における断層画像の生成を行う断層画像生成手段と
を備え、
前記断層画像生成手段は、取得された各前記投影データに対し、所定方向に沿った外挿処理及び前記所定方向の垂直方向に沿った平滑化処理を実行することで、前記断層画像の生成の際に併せて用いる、前記放射線検出器の検出領域に属さない非検出領域内の複数の画素の値をそれぞれ決定するデータ決定部を備える
ことを特徴とする断層画像生成装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記所定方向は、前記検出領域を包摂する投影面上に投影される、前記放射線源の相対的な移動方向に対して平行な方向であることを特徴とする断層画像生成装置。
【請求項3】
請求項2記載の装置において、
前記断層画像生成手段は、前記関心領域の位置と前記相対的位置関係に関する情報とに基づいて、前記放射線源から前記関心領域に向けた投影により形成される、前記投影面上の投影領域を決定する投影領域決定部をさらに備え、
前記データ決定部は、前記投影領域決定部により決定された前記投影領域に属し、且つ、前記検出領域に属さない非検出領域内の複数の画素の値をそれぞれ決定する
ことを特徴とする断層画像生成装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記投影領域決定部は、前記相対的位置関係によらず同じサイズの前記投影領域を決定することを特徴とする断層画像生成装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置において、
前記断層画像生成手段は、前記撮影に起因する幾何学的な不鋭性を有する各前記投影データに対し、空間周波数毎のスペクトル強度を補正するデータ補正部をさらに備えることを特徴とする断層画像生成装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、
前記データ補正部は、前記データ決定部により前記非検出領域内の複数の画素の値を決定する前に、各前記投影データを補正することを特徴とする断層画像生成装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置において、
前記データ決定部は、前記検出領域と前記非検出領域との境界に隣接する画素の値の差分が所定範囲に収まるように、前記非検出領域内の複数の画素の値を決定することを特徴とする断層画像生成装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置において、
前記データ決定部は、0次又は1次補外による前記外挿処理を実行し、前記非検出領域内の複数の画素の値を決定することを特徴とする断層画像生成装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置において、
前記断層画像生成手段は、前記断層画像に対し、前記関心領域内の所定領域に属する複数の画素の各値を、所定の一定値に近づける黒化処理を実行することを特徴とする断層画像生成装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置において、
前記データ決定部は、前記外挿処理に供される前記検出領域内の複数の画素に対し、前記垂直方向に沿った前記平滑化処理を実行して得た各値に基づいて、前記外挿処理を実行することで、前記非検出領域内の複数の画素の値を決定することを特徴とする断層画像生成装置。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置において、
前記データ決定部は、前記外挿処理の実行後に、該外挿処理により各値が一時的に決定された前記非検出領域内の複数の画素に対して前記垂直方向に沿った前記平滑化処理を実行することで、前記非検出領域内の複数の画素の値を決定することを特徴とする断層画像生成装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置において、
前記断層画像生成手段により生成された前記断層画像と併せて、該断層画像の生成の際に用いられた、各前記検出領域に属する画素の加算数の分布を表すマークを重ねて表示する表示部をさらに備えることを特徴とする断層画像生成装置。
【請求項13】
被写体に対して放射線を照射可能な放射線源と、前記被写体を透過した前記放射線を検出して投影データを取得する放射線検出器とを用いて、前記放射線源と前記放射線検出器との相対的位置関係を遂次変化させながらの撮影により、前記被写体の断層画像を生成する方法であって、
前記放射線検出器を介して複数の投影データを取得するステップと、
取得された各前記投影データに対し、所定方向に沿った外挿処理及び前記所定方向の垂直方向に沿った平滑化処理を実行することで、前記断層画像の生成の際に併せて用いる、前記放射線検出器の検出領域に属さない非検出領域内の複数の画素の値をそれぞれ決定するステップと
を備えることを特徴とする断層画像生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−55971(P2013−55971A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194464(P2011−194464)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】