説明

断熱カップ

【課題】本発明は、2重タイプの断熱カップにおいて、お湯を注いで重量が増えたときに、手に持った場合、外装紙となるスリーブがへこみ変形がないので熱くなく、高い断熱性に優れるとともに、前記スリーブに厚手の紙基材を使用しなくても良いのでコスト低減が可能な断熱カップを提供することを目的とする。
【解決手段】胴部材(4)と底部材(5)とからなり、糸じり部(6)を有する紙カップ本体(1)と、該紙カップ本体(1)の外周に巻いたスリーブ(2)とを備えた断熱カップ(3)において、前記紙カップ本体(1)の外面にエンボス(7)を形成したことを特徴とする断熱カップである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2重タイプの断熱カップにおいて、お湯を注いで重量が増えたときに、手に持った場合、外装紙となるスリーブがへこみ変形がないので熱くなく、高い断熱性に優れるとともに、前記スリーブに厚手の紙基材を使用しなくても良いのでコスト低減が可能な断熱カップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、断熱性を必要とするカップは、発泡性を有する合成樹脂、主として発泡ポリスチレン樹脂を用いて成形された成形カップが多く使用されている。しかし、発泡ポリスチレン樹脂を用いた断熱カップは、発泡剤を加えた樹脂を成形するので、断熱性では優れているが、使用後、廃棄物として処理しにくく、環境対応の点で問題がある。また、表面の平滑性が低く、印刷適性に劣るなどの欠点もある。
【0003】
このような、廃棄処理性、公害問題、印刷適性などの観点から、紙を主体にした断熱紙カップが普及してきている。例えば、紙カップの全周にコルゲート(波形状)紙を巻き付けた形式の断熱カップがあるが、このタイプの紙カップは、断熱性や環境対応の点では優れているが、製造上、胴巻き部をコルゲート状にし、本体に巻き付ける工程が必要で、コスト高になる欠点がある。
【0004】
これらの断熱カップに対して、断熱性があり、印刷適性があり、使用後は廃棄物として処理し易いという特徴を有する2層タイプの断熱カップが普及している。
【0005】
例えば、図9及び図10に示すように、紙カップ本体の胴部外周に外装紙を巻いた2層タイプの断熱カップである。すなわち、紙基材の内面にポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂をラミネートした樹脂加工紙を用いてカップ本体を成形し、該カップ本体の胴部外周に別工程で作製した紙製の筒体状の外装紙を一体化させた2層タイプの断熱カップである(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0006】
しかしながら、このような断熱カップの構造では、お湯を注いで重量が増えたときに手に持った場合、外側に巻いた筒状の外装紙(スリーブ)が変形し、内側の紙カップ本体に近づくために部分的に高温になる現象が見られ、手で持っていることができないという問題が発生した。この対策として、従来は外側のスリーブの強度を上げる必要があり、紙基材を厚くするため、材料費が上がってしまうという問題点があった。
【0007】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2001−9932号公報
【特許文献2】特開2001−122243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、2重タイプの断熱カップにおいて、お湯を注いで重量が増えたときに、手に持った場合、外装紙となるスリーブがへこみ変形がないので熱くなく、高い断熱性に優れるとともに、前記スリーブに厚手の紙基材を使用しなくても良いのでコスト低減が可能な断熱カップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、胴部材(4)と底部材(5)とからなり、糸じり部(6)を有する紙カップ本体(1)と、該紙カップ本体(1)の外周に巻いたスリーブ(2)とを備えた断熱カップ(3)において、前記紙カップ本体(1)の外面にエンボス(7)を形成したことを特徴とする断熱カップである。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の断熱カップにおいて、前記エンボス(7)が格子状または網点状のいずれかの形状で形成されていることを特徴とする断熱カップである。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の断熱カップにおいて、前記エンボス(7)の間隔(L1)が5〜50mmの範囲であることを特徴とする断熱カップである。
【0012】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の断熱カップにおいて、前記胴部材(4)外面のエンボス(7)が雄型と雌型とから構成される1対の金型を使用したエンボス加工方式により形成されることを特徴とする断熱カップである。
【0013】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の断熱カップにおいて、前記胴部材(4)外面のエンボス(7)が凸凹加工した金属ロールと熱ロールとで構成されたエンボス加工機を使用するエンボス加工方式により形成されることを特徴とする断熱カップである。
【0014】
本発明の請求項6に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の断熱カップにおいて、前記胴部材(4)外面のエンボス(7)が発泡剤を含有する発泡インキを使用した発泡パターン印刷方式により形成されることを特徴とする断熱カップである。
【0015】
本発明の請求項7に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の断熱カップにおいて、前記胴部材(4)外面のエンボス(7)が発泡剤を含有する熱可塑性樹脂を胴部材(4)にラミネート後、エンボス加工方式により形成されることを特徴とする断熱カップである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る断熱カップは、胴部材と底部材とからなり、糸じり部を有する紙カップ本体と、該紙カップ本体の外周に巻いたスリーブとを備えた断熱カップにおいて、前記紙カップ本体の外面にエンボスを形成したことにより、お湯を注いで重量が増えたときにも、手に持った場合、スリーブのへこみ変形がエンボス、もしくは発泡層とエンボスとによって防止され、内側のカップに接触しないので熱くなく、高い断熱性が保持される。また、スリーブに厚手の紙を使用することもなくコストの低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図1から図8に基づいて詳細に説明するが、特にこれに制約されるものではない。
【0018】
図1は本発明に係る断熱カップの1実施例を示す一部切り欠け断面図であり、図2は本発明に係る断熱カップを構成する紙カップ本体に格子状のエンボスを形成した状態を示す一部切り欠け断面図であり、図3は本発明に係る断熱カップを構成する紙カップ本体に網点状のエンボスを形成した状態を示す一部切り欠け断面図であり、図4は本発明に係る断熱カップを構成する紙カップ本体に形成するエンボスの間隔を示す断面図であり、図5は本発明に係る断熱カップを構成する紙カップ本体の胴部材に格子状のエンボスを形成した
状態を示す平面図であり、図6は本発明に係る断熱カップを構成する紙カップ本体の胴部材に網点状のエンボスを形成した状態を示す平面図であり、図7は本発明に係る断熱カップを構成する紙カップ本体の1実施例を示す一部切り欠け断面図であり、図8は本発明に係る断熱カップを構成する紙カップ本体の積層体の層構成の1実施例を示す側断面図である。
【0019】
本発明の1実施例の断熱カップは、図1に示すように、胴部材(4)と底部材(5)とからなり、糸じり部(6)を有する紙カップ本体(1)と、該紙カップ本体(1)の外周に巻いたスリーブ(2)とを備えた断熱カップ(3)において、前記紙カップ本体(1)の外面にエンボス(7)を形成したことを特徴とする断熱カップである。
【0020】
前記紙カップ本体(1)は、図7に示すように、胴部材(4)と底部材(5)とからなり、糸じり部(6)を有している構造である。
【0021】
本発明は、前記紙カップ本体(1)を形成する胴部材(4)の外面にエンボス(7)を形成したことにある。前記エンボス(7)の形状は、特に制限されないが、図5に示すように、格子状、または、図6に示すように、網点状の形状を使用することが好ましい。また、図4に示すように、該エンボス(7)の間隔(L1)は、5〜50mmの範囲であることが好ましい。
【0022】
通常、胴部材(4)は扇形状になっており、カップ形状に成形する際の上部のカール部、側部の熱融着部、底部材(5)と接合する下部には、エンボス(7)を形成しない方が好ましい。また、エンボス(7)は、カップ本体(1)に入れるお湯の入れ目線にこだわることなく、前述した範囲以外の全面、もしくは、部分的に形成しても構わない。
【0023】
前記エンボス(7)の高さは、紙カップ本体(1)の外周に巻いたスリーブ(2)との間隙に合わせて調整することが可能である。すなわち、紙カップ本体(1)にスリーブ(2)を取り付ける方法によって変化するが、通常、紙カップ本体(1)とスリーブ(2)との間隙が上部から下部に行くに従って広くなるのでエンボス(7)の高さも調整するのが好ましい。調整は、エンボス版や印刷版の作成段階で目的の版深を設計して、エンボス加工を行うことで可能である。
【0024】
次に、このようなエンボス(7)を胴部材(4)に形成する方法には、(1)エンボス(7)を雄型と雌型とから構成される1対の金型を使用したエンボス加工方式により形成する。(2)エンボス(7)を凸凹加工した金属ロールと熱ロールとで構成されたエンボス加工機を使用したエンボス加工方式により形成する。(3)エンボス(7)を発泡剤が含有された発泡インキを使用し、加熱処理する発泡パターン印刷方式により形成する。(4)エンボス(7)を発泡剤が含有された熱可塑性樹脂をラミネート後、エンボス加工する発泡・エンボス複合加工方式により形成する。尚、これらのエンボス加工は、紙カップ本体(1)に成形後、加工することも可能であるが、胴部材(4)を多面付けにした枚葉状のシート、或いは、打抜いた状態のブランクシートの時点で行う方が生産性などを考慮すると好ましい。
【0025】
1番目のエンボス加工方式は、紙器の打抜きに使用する打抜機に雄型と雌型とから構成される1対の金型を取り付けて行うことができる。この場合は、比較的、紙厚が厚いものもエンボス加工ができること、凸凹の落差を大きくできるので外周に巻いたスリーブ(2)との間隙を十分保持できるので断熱効果は向上すること、胴部材(4)の内面側の凹みが大きくなること、などの特徴がある。
【0026】
2番目のエンボス加工方式は、布地や壁紙などのエンボス加工に使用する凸凹加工した
金属ロールと熱ロールとで構成されたエンボス加工機を用いたものである。この場合は、微細なエンボスを形成することが可能であること、胴部材(4)の内面側の凹みが小さくなること、などの特徴がある。
【0027】
前述の1番目及び2番目のエンボス加工方式に用いる金型や金属ロールに使用する型には、腐食版と彫刻版とがあり、それぞれに特長がある。まず、腐食版は彫刻版に比べ安く作成できること、深さが均一に作成できること、などの特徴がある。一方、彫刻版は彫刻した中をさらに彫刻できるといった段階的な加工ができる。
【0028】
3番目のエンボス加工方式は、発泡剤を含有した発泡インキを使用して、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷などの印刷方式でパターン印刷後、ホットエアー、赤外線、遠赤外線、マイクロ波、高周波等を使用した静置して加熱するバッチ加熱方法、或いはコンベアーにより搬送しながら加熱する連続加熱方法で加熱処理して発泡エンボスを形成する方法である。加熱条件としては、温度が100〜200℃の範囲が好ましい。時間としては、10秒〜5分程度の範囲が良い。
【0029】
4番目のエンボス加工方式は、発泡剤が含有された熱可塑性樹脂を胴部材(4)の片面に熱溶融押出し法によりラミネートする。その際、発泡剤は押出し時の熱により発泡し発泡層が形成される。冷却後、引き続き、前述のエンボス加工方式により、エンボス加工を行い、発泡層とエンボスが形成され、外周に巻いたスリーブ(2)との間隙を十分保持できる。特に、発泡層が付加されたことで、より一層断熱効果は向上する。
【0030】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などの樹脂が挙げられる。
【0031】
前記発泡剤としては、熱発泡性でマイクロカプセルタイプである。例えば、無機系の炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等を用いることができる。有機系には、アゾ化合物、ニトロソ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物、アジド化合物、トリアゾール化合物等が挙げられるが、内容物が食品の場合は、無機系の発泡剤の方が安全性の面から好ましい。尚、前記発泡インキ用も同様のもので良い。
【0032】
発泡剤の樹脂への添加量については、特に制限されるものではなく、目的とする発泡倍率になるように発泡剤を熱可塑性樹脂に添加すればよいが、通常熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.01〜2重量部が好ましい。尚、前記発泡インキの場合もインキのバインダーに同様の添加量で良い。
【0033】
次に、底部材(5)の材料及び材料構成については、特に制約されないが、エンボス(7)加工はせず、材料等は前述した胴部材(4)と同様にする方が好ましい。
【0034】
このようにして格子状や網点状のエンボス(7)を形成した胴部材(4)と通常の底部材(5)とを用いて通常のカップ成形機により、図2及び図3に示すような、紙カップ本体(1)を成形する。
【0035】
前記紙カップ本体(1)は、一般的な糸じり部(6)を有する形状のものであり、胴部材(4)及び底部材(5)に使用される材料は、紙基材をベースとし、少なくとも最内層に熱融着性の熱可塑性樹脂を有することを基本としている。
【0036】
例えば、図8に示すように、紙基材層(11)/熱可塑性樹脂層(10)、熱可塑性樹脂層(10)/紙基材層(11)/熱可塑性樹脂層(12)、紙基材層(11)/熱可塑
性樹脂層(12)/バリア層(13)/熱可塑性樹脂層(14)、熱可塑性樹脂層(10)/紙基材層(11)/熱可塑性樹脂層(12)/バリア層(13)/熱可塑性樹脂層(14)などが挙げられる。
【0037】
前記紙基材層(11)は、紙カップ成形適性の良いカップ原紙を使用することが好ましい。例えば、バージン紙、カード紙等の板紙が挙げられる。坪量は、特に制約されないが、紙カップ成形適性上、160〜320g/m2の範囲が好ましい。
【0038】
その他、前記、坪量160〜320g/m2のバージン紙、カード紙等の板紙に、耐油剤を添加したタイプの耐油紙、或いは、内面側(食品接触側)に耐油剤を塗工したタイプ)、さらには、吸水紙を用いることができる。
【0039】
最内層に使用する熱可塑性樹脂は、内容物の保護、特に、液状の内容物を入れても漏れない機能、また、熱融着により胴部材(4)の貼り合せ、そして胴部材(4)と底部材(5)との接合を可能にする機能を有することが必要である。例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L−LDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などの樹脂、またはこれらの樹脂を成膜化したフィルムを使用することができる。
【0040】
また、最内層の熱可塑性樹脂層(14)の厚さは、ヒートシール強度、加工性などを考慮すると、15〜200μmの範囲であることが好ましく、15〜60μmの範囲がより好ましい。
【0041】
これらの熱可塑性樹脂は、熱溶融押出し法、もしくはドライラミネート法により、最内層に形成される。
【0042】
次に、紙カップ本体(1)の外周に巻いたスリーブ(2)の紙基材は、一般的なコートボール、マニラボール、白ライナー、カップ原紙、クラフト紙などの坪量160〜370g/m2の板紙を用いることができる。尚、本発明においては、紙カップ本体(1)の外面にエンボス(7)を形成させ、スリーブ(2)のへこみ変形を防止するので、スリーブ(2)の紙基材の厚さは、従来よりも薄いものが使用できるため材料コストの低減が可能になる。
【0043】
以上のように、本発明に係る断熱カップは、図1に示すように、胴部材(4)と底部材(5)とからなり、糸じり部(6)を有する紙カップ本体(1)と、該紙カップ本体(1)の外周に巻いたスリーブ(2)とを備えた断熱カップ(3)において、前記紙カップ本体(1)の外面にエンボス(7)を形成したことにより、お湯を注いで重量が増えたときにも、手に持った場合、スリーブ(2)のへこみ変形がエンボス(7)、もしくは発泡層とエンボス(7)によって防止され、内側のカップに接触しないので熱くなく、高い断熱性が保持される。また、スリーブ(2)に厚手の紙を使用することもなくコストの低減が図れる。
【実施例】
【0044】
本発明を、具体的な実施例をあげて詳細に説明する。
【0045】
<実施例1>
まず、紙カップ本体(1)の胴部材(4)用の紙基材として、坪量275g/m2のロール状のカップ原紙を用いて、前記紙カップ本体(1)の内面側となる胴部材(4)の片面に厚さ30μmの低密度ポリエチレン樹脂をラミネートした積層体を作製した。この積層体の外面側に彫刻製の雄型を位置させ、内面側に彫刻製の雌型が位置するようにしたエンボス加工機でエンボス加工を行い、扇形状に打抜き、格子状のエンボス(7)が形成された胴部材(4)のブランクを得た。
【0046】
底部材(5)としては、坪量235g/m2のカップ原紙の片面に厚さ30μmの低密度ポリエチレン樹脂をラミネートした構成の材料を使用し、円形状に打抜いた底部材(5)のブランクを得た。
【0047】
これらの胴部材ブランクと底部材ブランクとを用いて、一般的な紙カップ成形機により、低密度ポリエチレン樹脂をラミネートとした面を内側にして、高さ105mm×外径140mmm(フランジ部を含めた寸法)、底部の外径100mm、高さ10mmの紙カップ本体(1)を成形した。
【0048】
次に、別工程で坪量210g/m2のマニラボールを用いて所定の寸法に打抜いた扇形状のブランクの両端を重ね、エチレン/酢酸ビニル樹脂のエマルジョンタイプの接着剤により接着させ、その上側内径128mm、下側内径104mm、テーパー角度7°のスリーブ(2)を成形した。
【0049】
このスリーブ(2)に、雄型と雌型を使用して、金型温度90℃、絞り圧力400kgf、絞り成形時間1秒の成形条件で絞り成形を施し、上側内径128mm、高さ101mm、下側内径100mm、最大絞り深さ2mmの湾曲部が形成されたスリーブ(2)を得た。
【0050】
次に、前記紙カップ本体(1)の胴部材(4)下端の外周にポリビニルアルコール系接着剤を塗布し、前記スリーブ(2)を該カップ本体(1)の下方から嵌着して、該湾曲部の下部を、前記紙カップ本体(1)の胴部材下端外周に接着一体化させ、実施例1の断熱カップ(3)を得た。
【0051】
<実施例2>
実施例1において、胴部材(4)の格子状のエンボス形状を腐食版で作製した金属ロールを使用し、熱ロールと組み合わせたエンボス加工機を用いてエンボス(7)を形成した以外は実施例1と同様にして実施例2の断熱カップ(3)を得た。
【0052】
<実施例3>
実施例1において、胴部材(4)の格子状のエンボスを炭酸水素ナトリウム発泡剤が含有された発泡インキを使用し、シルクスクリーン印刷方式で印刷した後、150℃のホットエアーオーブンにより連続的に加熱処理して発泡エンボスを形成した以外は実施例1と同様にして実施例3の断熱カップ(3)を得た。
【0053】
<実施例4>
実施例1において、胴部材(4)の外面に無機系の炭酸水素ナトリウム発泡剤が含有されたウレタン樹脂を熱溶融押出し法でラミネート後、その積層体の外面上に格子状に腐食版で作製した金属ロールと熱ロールとを組み合わせたエンボス加工機を用いて格子状のエンボス(7)を形成した以外は実施例1と同様にして実施例4の断熱カップ(3)を得た。
【0054】
<実施例5>
紙カップ本体(1)の胴部材(4)用の紙基材として、坪量275g/m2のロール状のカップ原紙を用いて、前記紙カップ本体(1)の内面側となる胴部材(4)の片面に厚さ30μmの低密度ポリエチレン樹脂をラミネートした積層体を作製した。この積層体を扇形状に打抜き、胴部材(4)のブランクを得た。
【0055】
底部材(5)としては、坪量235g/m2のカップ原紙の片面に厚さ30μmの低密度ポリエチレン樹脂をラミネートした構成の材料を使用し、円形状に打抜いた底部材(5)のブランクを得た。
【0056】
これらの胴部材ブランクと底部材ブランクとを用いて、一般的な紙カップ成形機により、低密度ポリエチレン樹脂をラミネートとした面を内側にして、高さ105mm×外径140mmm(フランジ部を含めた寸法)、底部の外径100mm、高さ10mmの紙カップ本体(1)を成形した。
【0057】
この紙カップ本体(1)の胴部材(4)の外面側に彫刻製の雄型を位置させ、内面側に彫刻製の雌型が位置するようにした特殊なエンボス加工機でエンボス加工を行い、格子状のエンボス(7)を形成した。
【0058】
次に、別工程で坪量210g/m2のマニラボールを用いて所定の寸法に打抜いた扇形状のブランクの両端を重ね、エチレン/酢酸ビニル樹脂のエマルジョンタイプの接着剤により接着させ、その上側内径128mm、下側内径104mm、テーパー角度7°のスリーブ(2)を成形した。
【0059】
このスリーブ(2)に、雄型と雌型を使用して、金型温度90℃、絞り圧力400kgf、絞り成形時間1秒の成形条件で絞り成形を施し、上側内径128mm、高さ101mm、下側内径100mm、最大絞り深さ2mmの湾曲部が形成されたスリーブ(2)を得た。
【0060】
次に、前記紙カップ本体(1)の胴部材(4)下端の外周にポリビニルアルコール系接着剤を塗布し、前記スリーブ(2)を該カップ本体(1)の下方から嵌着して、該湾曲部の下部を、前記紙カップ本体(1)の胴部材下端外周に接着一体化させ、実施例5の断熱カップ(3)を得た。
【0061】
<実施例6>
実施例5において、胴部材(4)の格子状のエンボスを炭酸水素ナトリウム発泡剤が含有された発泡インキを使用し、シルクスクリーン印刷方式で印刷した後、150℃のホットエアーオーブンにより連続的に加熱処理して発泡エンボスを形成した以外は実施例5と同様にして実施例6の断熱カップ(3)を得た。
【0062】
以下に、本発明の比較例について説明する。
【0063】
<比較例1>
実施例1において、胴部材(4)に格子状のエンボスを形成しなかった以外は実施例1と同様にして比較例1の断熱カップ(3)を得た。
【0064】
<比較例2>
実施例1において、スリーブ(2)に使用する紙基材を厚手の坪量290g/m2のマニラボールにして、格子状のエンボスを形成しなかった以外は実施例1と同様にして比較例2の断熱カップ(3)を得た。
【0065】
<比較評価>
実施例1〜6及び比較例1〜2で得た断熱カップに90℃の熱湯を400ml入れて1分間後に該カップを手で持った時の熱さの状態を比較評価した。◎:全く熱さを感じず、問題なく持てる。○:多少、熱さを感じるが問題なく持てる。△:熱さを感じるがなんとか持てる。×:熱くて持てない。その結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

表1には、実施例1〜6及び比較例1〜2で得た断熱紙カップの断熱性の比較評価結果を記す。
【0067】
<比較結果>
本発明品の実施例1、5はエンボスの十分な効果により、全く熱さを感じず、問題なく持てた。実施例2、3、6はエンボス効果により、多少、熱さを感じるが問題なく持てた。実施例4はエンボスと発泡層の効果により、全く熱さを感じず、問題なく持てた。比較品の比較例1はエンボスがないので熱くて持てなかった。比較例2はスリーブの紙を厚くしたため熱さを感じるがなんとか持てた。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る断熱カップの1実施例を示す一部切り欠け断面図である。
【図2】本発明に係る断熱カップを構成する紙カップ本体に格子状のエンボスを形成した状態を示す一部切り欠け断面図である。
【図3】本発明に係る断熱カップを構成する紙カップ本体に網点状のエンボスを形成した状態を示す一部切り欠け断面図である。
【図4】本発明に係る断熱カップを構成する紙カップ本体に形成するエンボスの間隔を示す断面図である。
【図5】本発明に係る断熱カップを構成する紙カップ本体の胴部材に格子状のエンボスを形成した状態を示す平面図である。
【図6】本発明に係る断熱カップを構成する紙カップ本体の胴部材に網点状のエンボスを形成した状態を示す平面図である。
【図7】本発明に係る断熱カップを構成する紙カップ本体の1実施例を示す一部切り欠け断面図である。
【図8】本発明に係る断熱カップを構成する紙カップ本体の積層体の層構成の1実施例を示す側断面図である。
【図9】従来の断熱カップの1実施例を示す一部切り欠け断面図である。
【図10】従来の断熱カップのその他の実施例を示す一部切り欠け断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1・・・紙カップ本体
2・・・スリーブ
3・・・断熱カップ
4・・・胴部材
5・・・底部材
6・・・糸じり部
7・・・エンボス
10・・・熱可塑性樹脂層
11・・・紙基材層
12・・・熱可塑性樹脂層
13・・・バリア層
14・・・熱可塑性樹脂層
L1・・・間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部材と底部材とからなり、糸じり部を有する紙カップ本体と、該紙カップ本体の外周に巻いたスリーブとを備えた断熱カップにおいて、前記紙カップ本体を構成する胴部材の外面にエンボスを形成したことを特徴とする断熱カップ。
【請求項2】
前記エンボスが格子状または網点状のいずれかの形状で形成されていることを特徴とする請求項1記載の断熱カップ。
【請求項3】
前記エンボスの間隔が5〜50mmの範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の断熱カップ。
【請求項4】
前記胴部材外面のエンボスが雄型と雌型とから構成される1対の金型を使用したエンボス加工方式により形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の断熱カップ。
【請求項5】
前記胴部材外面のエンボスが凸凹加工した金属ロールと熱ロールとで構成されたエンボス加工機を使用するエンボス加工方式により形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の断熱カップ。
【請求項6】
前記胴部材外面のエンボスが発泡剤を含有する発泡インキを使用した発泡パターン印刷方式により形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の断熱カップ。
【請求項7】
前記胴部材外面のエンボスが発泡剤を含有する熱可塑性樹脂を胴部材にラミネート後、エンボス加工方式により形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の断熱カップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−173296(P2009−173296A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11293(P2008−11293)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】