説明

断熱パネル、その製造法、及びコンクリート壁体の構築構造

【課題】所定厚みを備える断熱材の表裏面に金属面材等の表面材と裏面材とを接着してなる構成であるため、容易に製造することができる断熱パネル、その製造法、及びコンクリート壁体の構築構造を提供する。
【解決手段】本発明の断熱パネル1は、断熱材4の表裏面に表面材2、裏面材3が配設されてなり、前記表裏面材2,3の少なくとも対向する一対の端縁には、前記断熱材4の端縁から外側へ延在する一方側成形部21,31、他方側成形部22,32を備え、これら一方側成形部21,31、他方側成形部22,32には、それぞれ、表裏面材2,3をつなぐ連結材10a,10bが配設されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定厚みを備える断熱材の表裏面に金属面材等の表面材と裏面材とを連結材でつないで配設した構成であるため、容易に製造することができる断熱パネル、その製造法、及びコンクリート壁体の構築構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁材として、表裏面材と断熱等の諸性能を有する充填材からなるサンドイッチパネルが特許文献1,2など多数提案されている。
上記特許文献1,2などに開示されるサンドイッチパネルは、表裏面材間に発泡性の充填材を注入し、発泡させることで一体化を図るものであり、耐火、断熱性、漏水防止が果たされるものである。
一方、コンクリート建築物の断熱性能を高めるものとして、特許文献3に示される型枠兼用断熱パネルが提案されている。このパネルは、独立発泡スチレンフォームの片面に網材を固着した構成であり、曲げ強度の改善が図れるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2691388号公報
【特許文献2】特許第4028780号公報
【特許文献3】特開平7−82808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1,2に記載されるサンドイッチパネルは、その製造設備が高価であると共に、設備自体が大型であるが故に大規模な設置スペースを必要とし、設備導入には多大な費用がかかるという問題があった。
また、前記特許文献3に記載の型枠兼用断熱パネルは、完成した壁面にはさらに仕上げ(外壁材の敷設や吹き付け)を行わなければならなかった。さらに、独立発泡スチレンフォームの片面に金網等の網材を固着する構成であるため、型枠工事中の断熱材の潰れや、打設時の変形を避けるためにバタ工事(外方向への断熱材の膨れを防ぐために縦や横に単管等を配する工事)に手間のかかるものであった。
【0005】
そこで、本発明は、特別な製造設備を用いることなく安価にサンドイッチパネルを得ることができる断熱パネル、その製造法、及びコンクリート壁体の構築構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、断熱材の表裏面に表面材、裏面材が配設されてなる断熱パネルであって、前記表裏面材の少なくとも対向する一対の端縁には、前記断熱材の端縁から外側へ延在する一方側成形部、他方側成形部を備え、これら一方側成形部、他方側成形部には、それぞれ、表裏面材をつなぐ連結材が配設されていることを特徴とする断熱パネルに関するものである。
【0007】
また、本発明は、前記断熱パネルにおいて、断熱材の表裏面に表面材、裏面材がそれぞれ接着されて一体化されてなることを特徴とする断熱パネルをも提案する。
【0008】
また、本発明は、前記断熱パネルにおいて、表裏面に貫通する貫通孔を所定間隔で開孔したことを特徴とする断熱パネルをも提案する。
【0009】
また、本発明は、前記断熱パネルにおいて、断熱材には端部が表面材及び裏面材の内面側に当接する規制部材を埋設したことを特徴とする断熱パネルをも提案する。
【0010】
さらに、本発明は、断熱材の表裏面に表面材、裏面材を配設させる断熱パネルの製造法であり、前記表裏面材の少なくとも対向する一対の端縁に、前記断熱材の端縁から外側へ延在する一方側成形部、他方側成形部を設ける成形工程と、前記表裏面材の一方側成形部及び他方側成形部がそれぞれ対向するように断熱材の表裏面に配設する表裏面材配設工程と、これらの一方側成形部、他方側成形部に、それぞれ、表裏面材をつなぐ連結材を配設する連結材配設工程と、からなることを特徴とする断熱パネルの製造法をも提案するものである。
【0011】
また、本発明は、前記断熱パネルをコンクリート打設空間の少なくとも一方の型枠として用いたことを特徴とするコンクリート壁体の構築構造をも提案する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の断熱パネルは、断熱材の表裏面に金属面材等の表面材と裏面材とを連結材でつないで配設してなる構成であるため、特別な製造設備を用いることなく安価にサンドイッチパネルを得ることができる。
【0013】
特に断熱材の表裏面に表面材、裏面材がそれぞれ接着されて一体化した場合には、当該サンドイッチパネルをコンクリート型枠工法の型枠として用いることができ、潰れや膨れ等のない型枠兼用パネルとして用いることができ、またパネル自体で外壁面となるため新たに仕上げを行う必要が無く、大幅な工期短縮が図れる。
【0014】
また、表裏面に貫通する貫通孔を所定間隔で開孔した場合には、この貫通孔に間隔保持部材を取り付けることができ、コンクリート打設空間を形成することができる。
【0015】
また、断熱材には端部が表面材及び裏面材の内面側に当接する規制部材を埋設した場合には、表裏面材の変形や断熱材の潰れが防止される。
【0016】
本発明の断熱パネルの製造法は、成形工程も、表裏面材配設工程も、連結材配設工程も、何等特殊な装置を必要とせず、汎用の機械にて対応することができるため、極めて容易に実施することができ、実用的価値が高いものである。
【0017】
また、本発明のコンクリート壁の構築構造は、前記構成の断熱パネルを、コンクリート型枠工法の型枠として用いるものであり、前述のように適宜に断熱材や表裏面材を選定して様々な特性を有するコンクリート壁を構築することができる。
例えば表裏面材として高強度の金属面材を用いることにより、コンクリートの打設圧力に抗する強度を備え、広い面積を備える壁体にも適用することができ、一方の金属面材として、化粧材を兼ねる金属面材を用いてもよいため、表面に別途化粧材を配設する必要がなく、足場等を組めない敷地(施工場所)においても外壁の施工(工事)を行うことができ、断熱パネルをそのまま外装化粧として使用することができる。また、内側から施工が行えるので、足場等を組めない施工場所には特に有効である。また、別途化粧材を配設する場合にも、金属面材の表面に化粧材を取り付けるので、固定箇所を選ばず取り付けることができる。さらに、型枠としてより高い強度が必要な場合には、補強材を、金属面材に直接固定することもできる。
また、断熱材として前記従来技術のように注入発泡型の合成樹脂に限定されないので、所定厚みを備えるものであれば、合成樹脂製ボートに限らず各種の断熱材を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)本発明の断熱パネルの一実施例を構成する表面材を示す断面図、(b)裏面材を示す断面図、(c)断熱材を示す断面図、(d)表裏面材の一方側成形部に配設される連結材を示す断面図、(e)表裏面材の他方側成形部に配設される連結材及び弾性止水材を示す断面図、(f)各部材を組み付けた断熱パネルを示す断面図である。
【図2】(a)断熱パネルの端縁を突き合わせた状態を示す断面図、(b)断熱パネル同士を連結した状態(連結構造)を拡大して示す断面図である。
【図3】(a)本発明の断熱パネルをコンクリート壁の施工方法における第1の工程の状態を示す断面図、(b)断熱パネルに形成した貫通孔を示す表面材の正面図及び側面図、(c)間隔保持部材を構成する埋設用棒状材のボルトを示す断面図、(d)筒状部材を示す断面図、(e)六角ナットを示す断面図、(f)異径ナットを示す断面図である。
【図4】(a)本発明の断熱パネルを用いたコンクリート壁の施工方法における第2の工程の状態を示す断面図、(b)第3の工程の状態(施工されたコンクリート壁)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の断熱パネルは、断熱材の表裏面に表面材、裏面材が配設されてなり、前記表裏面材の少なくとも対向する一対の端縁には、前記断熱材の端縁から延在する一方側成形部、他方側成形部を備え、これら一方側成形部、他方側成形部には、それぞれ、表裏面材をつなぐ連結材が配設されている。
【0020】
前記断熱パネルを構成する断熱材、表面材、裏面材は、それぞれ別々に成形されるものであって、適宜に選択して所望の構成とすることができる。例えば断熱パネル全体の強度やその他の特性を所望のレベルに設定しようとすれば、これらの断熱材、表面材、裏面材を適宜に選択して所望の特性を得ることができる。
以下に、断熱材、表裏面材、連結材について、それぞれ説明する。
【0021】
前記断熱材としては、前述の従来技術(特許文献1,2)のように注入発泡型の合成樹脂に限定されないので、各種素材の断熱材を適用することができ、例えば合成樹脂製ボートに限らず木製ボードでもよく、また単層でも複層でもよく、異なる材質の複層構成でもよい。そのため、難燃性、不燃性等の機能性ボード材を用いてもよく、また厚み等についても何等制限がなく、どのような断熱材を用いてもよい。
また、一次発泡させた合成樹脂発泡体を、加熱等の条件を与えて二次発泡させて断熱材としてもよい。この一次発泡体は、二次発泡体に比べて厚みが薄いものであり、特に二次発泡させた際に膨張してその表面にベタ付き(タック)が生ずる(或いは残存する)ものが望ましい。
【0022】
前記表裏面材としても、少なくとも対向する一対の端縁(例えば上下、左右)に、前記断熱材の端縁から延在する一方側成形部、他方側成形部を備えるものであれば、各種素材の面材を適用することができ、特にコンクリート型枠工法の型枠として用いる場合などにはビス等の固定具を打ち込むことができる素材、例えば金属面材が好ましいが、その他の用途には例えば金属面板に限らず硬質樹脂板でもよい。また、後述する図示実施例のように表面材と裏面材として、同一の面材(金属面材)を使用して面向きを変えて用いてもよいし、異なる形状、素材としてもよい。
表面材と裏面材とを異なる素材とする場合には、前述のように断熱パネル全体の特性を考慮して適宜に選択すればよいが、表面材は型枠兼用パネルとして用いた場合に外装面となること、裏面材はコンクリートと接触すること、を考慮して適宜に選択してもよい。例えば表面材として化粧性(意匠性)を有する(化粧材を兼ねる)金属面材を用いてもよく、この場合、別途化粧材を配設する必要がないため、足場を不要とできる利点がある。化粧性を有する金属面材としては、例えば平坦状よりも凹凸状などの成型を施したものが挙げられ、この場合にはパネルとしての強度も向上する。
【0023】
前記表裏面材の一方側成形部、他方側成形部としては、前述のようにそれぞれ表裏面材をつなぐ連結材が配設される空間を備えるものであればその形状についても凹凸状であっても階段状であっても特に限定するものではないが、連結材を配設した状態で、断熱パネル同士を接続する際に、ビス等の固定具を打ち込んで接続部分の強度を向上させるためには、複数の面状部分を貫通して固定具(ビス)が固定される形状の成形部とすることが好ましい。
このような成形部としては、成形部を構成する面状部分が鉛直方向に重なり合っている状態を指し、面状部分が鉛直方向に二層以上に重なり合っていればよく、何れか一方又は両方の面状部分が折り返し状に形成されて三層以上に重なり合っていてもよく、ビス等の固定具を容易に固着して一体化することができる。例えば以下に示す構成(後述する図示実施例の構成)に成形してもよいが、特にこれに限定するものではない。
後述する図示実施例では、一方側成形部は、断熱材の端縁からさらに一方側へ延在してその先端を内側へ折り返された構成であり、他方側成形部は、断熱材の端縁から内側へ折り曲げられて断熱材の端縁に係止する段部を介して他方側へ延在してその先端が内側へ折り返された構成である。なお、各成形部における折り返し部は、線状に折り返されたものではなく、先端が半円弧状となるように屈曲状に折り返したものであり、ここに略コ字状に成形された連結材が配設される。
そして、表裏面材の各一方側成形部が対向する一方側の端縁には雌型端部が形成され、表裏面材の各他方側成形部が対向する他方側の端縁には雄型端部が形成され、これらの雌側端部と雄型端部とは係合可能であり、隣接する断熱パネル同士を連結可能に構成されている。詳しくは雌型端部には一方側へ延在する突起状の一方側成形部が対向状に形成され、雄型端部には他方側へ延在する突起状の他方側成形部が対向状に形成され、雌型端部の突起間隔は雄型端部の突起間隔より大きく(広く)、且つ雌型端部の対向する突起の内側に雄型端部の対向する突起の外側が沿うように係合する。
【0024】
前記表裏面材の一方側成形部、他方側成形部に配設される連結材は、その配設の際に破断しないものであれば、後述する図示実施例のように合成樹脂製の成型品でもよいが、特にこれに限定されるものではなく、硬質ゴム等の成型品でもよい。また、その形状も一方側成形部、他方側成形部に応じてどのように形成してもよい。
【0025】
また、これらの各部材をそれぞれ配設してなる本発明の断熱パネルは、以下の成形工程、表裏面材配設工程、連結材配設工程により製造される。
なお、断熱材として、注入発泡型の合成樹脂を用いる場合には、以下の工程を経ることなく作成され、所定間隔に表裏面材を配設し、それらの両端に連結材を配設して形成される閉鎖空間に発泡型の合成樹脂組成物を充満状に注入することによって、断熱材が形成されるのと同時に表裏面材、及び両端の連結材が一体化するものとなる。
【0026】
・成形工程
前記表裏面材の少なくとも対向する一対の端縁に、前記断熱材の端縁から外側へ延在する一方側成形部、他方側成形部を設ける。
後述する図示実施例のように表面材と裏面材として、同一の面材(金属面材)を使用して向きを変えて用いる場合には、この工程は極めて容易に実施できる。
【0027】
・表裏面材配設工程
前記表裏面材の一方側成形部及び他方側成形部がそれぞれ対向するように断熱材の表裏面に配設する。
表面材と断熱材、裏面材と断熱材とは、断熱パネルの使用に際して分離したりズレたりしない程度に接着することが望ましく、その接着強度や使用する接着剤、接着面(全面接着に限らず部分接着でもよい)について何等限定するものではない。
また、表裏面材を対向させて配設した間隔において、合成樹脂発泡体を二次発泡させる条件を付与することで表裏面材を一体化させるようにしてもよい。この場合、二次発泡して膨張した合成樹脂発泡体の表面には、ベタ付きがあるものが多いので、これを利用して表裏面材を接着剤を用いることなく断熱材の表裏面に接着することができる。
【0028】
・連結材配設工程
前記表裏面材の一方側成形部、他方側成形部に、それぞれ、表裏面材をつなぐ連結材を配設する。
この連結材配設工程は、必ずしも前記表裏面材配設工程の後に実施するものではなく、前記表裏面材配設工程と同時に行うようにしてもよい。
【0029】
これらの工程より製造される本発明の断熱パネルは、断熱材の表裏面に金属面材等の表面材と裏面材とを配設してなる構成であるため、特別な製造設備を用いることなく安価にサンドイッチパネルを得ることができる。
また、特に断熱材の表裏面に表面材、裏面材がそれぞれ接着されて一体化されてなる断熱パネルは、コンクリート型枠工法の型枠として用いることができ、潰れや膨れ等のない型枠兼用パネルとして用いることができ、またパネル自体で外壁面となるため新たに仕上げを行う必要が無く、大幅な工期短縮が図れる。
【0030】
特に断熱パネルには、表裏面に貫通する貫通孔を所定間隔で開孔(開設)することが望ましい。
この貫通孔には、型枠兼用パネルとして用いた際に、間隔保持部材を挿着状に配設してコンクリート打設空間を形成するようにしてもよい。例えば後述する図示実施例のようにこの貫通孔に埋設用棒状材を取り付け、該埋設用棒状材に間隔保持部材を連結してコンクリート打設空間を形成することができる。
【0031】
また、断熱材には端部が表面材及び裏面材の内面側に当接する規制部材を埋設することにより、断熱材の潰れを防止することが望ましい。
この規制部材は、後述する図示実施例では、前記貫通孔内にフランジ状の当接部を備える筒状部材を配設したが、その配設場所としては、貫通孔内やその周辺に限定されるものではなく、また筒状部材に限らず棒状や板状であってもよく、さらに表裏面材との当接部分としても、フランジ状に限らず端部がするものであればL状、Z状のものでもよく、筒状部材とZ状部材とを併用して用いてもよい。
この規制部材により、前記断熱材の潰れが防止されると共にこの規制部材を配した近傍の表裏面材の変形も防止される。
このような規制部材は、特にその材質を限定するものではないが、熱橋等を防ぐために合成樹脂製が好ましい。
【0032】
前記本発明の断熱パネルを例えばコンクリート型枠工法の型枠として用いる場合などには、その連結部分に弾性止水材を配設し、一方側成形部と他方側成形部との隙間を水密に塞ぐようにしてもよい。
この弾性止水材としては、後述する図示実施例のように定形のものを一方側の端縁と他方側の端縁の何れか一方又は両方に取り付けるようにしてもよいし、不定形のものをその連結部分に充填状に配してもよい。
【0033】
また、連結部分には、ビス止め等の固定手段を併用してもよく、例えば表裏面材として金属面材を用いた場合には通常の金属ビスにて固定してもよく、また硬質樹脂製面材を用いる場合には予め穿設したビス孔にビスを固定すればよい。
このように本発明の断熱パネルは、表裏面材にビス止めできるため、補強材を取り付ける場合にも容易に施工することができる。打設側)に配設する場合には、型枠としての補強を容易に行うことができ、しかも補強材が内側に配されるために外観に影響を与えることがなく、さらに補強材を取り外す必要がないため、施工を容易に行うことができる。
【実施例1】
【0034】
本発明の断熱パネル1は、それぞれ別々に成形された表面材2、裏面材3、断熱材4からなり、断熱材4の表裏面に表面材2、裏面材3がそれぞれ接着されて一体化されてなる構成である。また、前記表裏面材2,3の対向する一対の端縁に、前記断熱材4の端縁から外側へ延在する一方側成形部21,31、他方側成形部22,32を備え、これら一方側成形部21,31、他方側成形部22,32には、それぞれ、表裏面材2,3をつなぐ連結材10a,10bが配設されている。
【0035】
図1に示す実施例では、図1(c)に示す断熱材4としては硬質ポリウレタンフォームである合成樹脂発泡面材を用いた。この断熱材4の表裏面に、図1(a)に示す表面材2、図1(b)に示す裏面材3がそれぞれ接着されて一体化されてなり、これら表面材2及び裏面材3は同一の面材(金属面材)を使用して面向きを変えて用いた。
【0036】
前記表面材2の一方側成形部21は、配設状態において断熱材4の端縁からさらに一方側(図面では右側)へ略水平状に延在させてその先端を内側(図面では下側)へ折り返された(折り返し部211)構成であり、他方側成形部22は、断熱材4の端縁から内側へ折り曲げられて断熱材4の端縁に係止する段部221を介して他方側(図面では左側)へ略水平状に延在させてその先端が内側へ折り返された(折り返し部222)構成であり、各成形部21,22における折り返し部211,222は、線状に折り返されたものではなく、先端が半円弧状となるように屈曲状に折り返したものであり、ここに後述する略コ字状に成形された連結材10a,10bの片半部分101,103が配設される。
前述のように前記裏面材3は、前記表面材2と同一の面材(金属面材)を面向きを変えて用いるもので、符号を変更しただけで前記表面材2と全く同様の構成を備える。
即ち前記裏面材3の一方側成形部31は、配設状態において断熱材4の端縁からさらに一方側へ略水平状に延在させてその先端を内側(図面では上側)へ折り返された(折り返し部311)構成であり、他方側成形部32は、断熱材4の端縁から内側へ折り曲げられた段部321を介して他方側へ略水平状に延在させてその先端が折り返された(折り返し部322)構成であり、各成形部31,32における折り返し部311,322は、先端が半円弧状となるように屈曲状に折り返したものであり、ここに後述する略コ字状に成形された連結材10a,10bの片半部分102,104が配設される。
【0037】
そして、表裏面材2,3の各一方側成形部21,31が対向する断熱パネル1の一方側(図面では右側)の端縁には雌型端部11が形成され、表裏面材2,3の各他方側成形部22,32が対向する他方側の端縁には雄型端部12が形成され、これらの雌側端部11と雄型端部12とは係合可能であり、隣接する断熱パネル1,1同士を連結可能に構成されている。詳しくは雌型端部11には一方側へ延在する突起状の一方側成形部21,31が対向状に形成され、雄型端部12には他方側へ延在する突起状の他方側成形部22,32が対向状に形成され、雌型端部11の突起間隔は雄型端部12の突起間隔より僅かに大きく(広く)、且つ雌型端部11の対向する突起の内側に雄型端部12の対向する突起の外側が沿うように係合する。
【0038】
前述のような係合が果たされるには、前記一方側成形部21,31を断熱材4の端縁から略水平状に延設したので、雌型端部11の突起間隔は断熱材4の厚みとほぼ等しく、前記他方側成形部22,32を段差221,321分だけ内側に形成されるので、雄型端部12の突起間隔は前記雌型端部11の突起間隔より段差221,321分だけ小さく形成される。
そのため、一方側成形部21,31の厚みと段差221,321の厚みとを一致させれば、雌型端部11の突起間隔(内側)と雄型端部12の突起間隔(外側)は同一となり、高精度に成形できれば隙間無く係合する。
一方側成形部21,31の厚みを段差221,321の厚みより僅かに小さく形成すれば、その分だけを雌型端部11の突起間隔(内側)より雄型端部12の突起間隔(外側)が僅かに大きくなり、弾性が作用する係合状態となり、逆に段差221,321の厚みを大きくすれば隙間が形成される(遊嵌状の係合状態となる)。
【0039】
前記表裏面材2,3の一方側成形部21,31、他方側成形部22,32に配設される連結材10a,10bは、合成樹脂製の成型品であり、硬質ゴム等の成型品でもよい。
図1(d)に示す連結材10aは、前記表裏面材2,3の一方側成形部21,31に配設される略コ字状の成型品であり、一方側成形部21,31の折り返し部211,311には片半部分101,102が配設され、表裏面材2,3をつないで雌型端縁11を形成している。
図1(e)に示す連結材10bは、前記表裏面材2,3の他方側成形部22,32に配設される略コ字状の成型品であり、他方側成形部22,32の折り返し部221,321には片半部分103,104が配設され、表裏面材2,3をつないで雄型端縁12を形成している。
なお、図示実施例では、表裏面材2,3の対向する一対の端縁に一方側成形部21,31を、他方側成形部22,32を設け、断熱パネル1の一対の端縁に雌型端縁11、雄型端縁12を形成したが、さらに別の一対の端縁にも同様な構成の一方側成形部、他方側成形部及び雄型端縁、雌型端縁を形成するようにしてもよく、その場合、上下左右に断熱パネル1を連結することができる。
【0040】
これらの各部材を一体化してなる本発明の断熱パネル1は、以下の成形工程、表裏面材配設工程、連結材配設工程により製造される。
【0041】
・成形工程
前記表裏面材2,3を、金属面材にて前述の構成を備えるようにロール成形等の手法、装置を用いて成形し、向きを変えて表裏面材2,3とした。
【0042】
・表裏面材配設工程
前記表裏面材2,3の一方側成形部21,31及び他方側成形部22,32がそれぞれ対向するように断熱材4の表裏面に接着剤を用いて接着した。
【0043】
・連結材配設工程
前記表裏面材2,3の一方側成形部21,31の折り返し部211,311に前記連結材10aの片半部分101,102を配設し、他方側成形部22,32の折り返し部221,321に前記連結材10bの片半部分103,104を配設して一体化した。
なお、一方側に形成される雌型端縁11には、連結用の弾性止水材10cを予め取り付けておいた(前記連結材10aに接着した)。
そして、この断熱パネル1,1同士を接続する場合には、前述のように隣接する断熱パネル1,1の雌型端部11と、雄型端部12とを係合して接続するが、図2(b)に示すように一点鎖線Bにて示す部分にビス等の固定具を打ち込むことにより、接続部分の強度を向上させることができる。なお、この実施例では、各固定具は、4枚の面状部分を貫通して打ち込まれている。
【0044】
また、この実施例の断熱パネル1は、図3及び図4に示すコンクリート壁の構築構造に一方側の型枠パネルとして用いられるものであり、図3(b)に示すように表裏面に貫通する貫通孔13を所定間隔で開孔しており、またその貫通孔13に端部513,512が表面材2及び裏面材3の内面側に当接する図3(d)に示す合成樹脂製の筒状部材を規制部材51bとして埋設した例でもある。
このように貫通孔13を設けることにより、この貫通孔13に間隔保持部材5の一部を構成する筒状部材51bを取り付けることができ、該筒状部材51bに他の部分(51a,51c,51d,52,53)を連結して間隔保持部材5を組み付け、コンクリート打設空間9を形成することができる。
また、筒状部材を兼ねる規制部材51bを埋設することにより、断熱材4潰れが防止されると共にこの規制部材51bを配した近傍の表裏面材2,3の変形も防止される。さらに、この規制部材51bとして合成樹脂製のものを用いたので、熱橋等を防ぐ作用も果たされる。
【0045】
前記間隔保持部材5は、断熱パネル(型枠パネル)1を貫通する埋設用棒状材51と、該埋設用棒状材51と螺合手段にて接続され、コンクリート打設空間9内に位置する少なくとも一部が筒状部材53で包囲される棒状部材52とからなる。
埋設用棒状材51は、図3(c)〜(f)に示す一方側に頭部511を有するボルト51a、他方側の係止フランジ512を有する筒状部材(規制部材)51b、六角ナット51c、異径ナット51dを連結してなる構成である。
筒状部材51bは前述のように規制部材を兼ね、一方側の端部513が表面材2の内面側に当接し、他方側の係止フランジ512が裏面材3の内面側に当接する状態で前述の断熱材4の潰れを防止する作用をも果たす。
この埋設用棒状材51の一体化について、予め形成した貫通孔13に他方側から筒状部材51bを挿着し、この筒状部材51bを貫通するように一方側からボルト51aを挿入し、他端から六角ナット15cを取り付けて締め付け固定し、型枠パネル1とこの埋設用棒状材51を一体的に固定することができる。
なお、ボルト51aの他端には、異径ナット51dを螺合手段として取り付け、該螺合手段にて他方側の棒状部材52や筒状部材53を接続している。この異径ナット51dや前記六角ナット51cは、非円形状の部材であるから、コンクリート打設空間9内での回転を防止する機構であり、埋設用棒状材51に螺合された棒状部材52をコンクリートの打設後に取り外すときに埋設用棒状材51が一緒に回転して螺合状態が解除されなくなるのを防止する(供回りを防ぐ)ことができる。
【0046】
前記棒状部材52は、図3(a)に示すように他方側(図では右側)の端部付近に略円形状の鍔部521が取り付けられ、一方端(図では左端)には前記埋設用棒状材51の雌ねじ部に螺合する雄ねじ部が形成されている。
前記鍔部521は、棒状部材52が貫通する樹脂製成形材であり、図3(a)より明らかなように他方側の型枠7に当接状に配される。
前記筒状部材53は、図3(a)に示すように中空状の管材(パイプ状)である。
また、他方側に配する型枠(型枠兼用パネル)7は、FRP製の強化プラスチックボードであって、前記間隔保持部材5の他方側の端部を型枠7の外側へ突出させて配置し、型枠7の外側に押さえ部材8を配置させてコンクリートの打設応力に抗するように配置されている。
【0047】
そして、これらの各部材を用いてコンクリート壁を構築するには、第1の工程として、予め前記断熱パネル1に、埋設用棒状材51が貫通して埋設した状態で所定位置に配し、該断熱パネル1に一体的に取り付けられた埋設用棒状材51の端部に、前記筒状部材53にて包囲した棒状部材52を螺合させて間隔保持部材5を形成する。
その後、前記間隔保持部材5の端部を突出させつつ所定位置に他方側の型枠7を配し、間隔保持部材5の端部をフォームタイ(R)等の押さえ部材(ボルト材)8と連結し、型枠7の外側には図示しない縦バタ、横バタ等を配し、前記押さえ部材8にて間隔保持部材5を締め付け固定してコンクリート打設空間9を形成する。
こうして形成されたコンクリート打設空間9において、前記間隔保持部材5は、一方側の型枠として用いられた断熱パネル1と他方側の型枠7との間に架け渡されて配設されている。
【0048】
次に、第2の工程として、前記コンクリート打設空間9に図4(a)に示すようにコンクリート9"を打設する。その際、前述のように間隔保持部材5は、一方側の型枠として用いられた断熱パネル1と他方側の型枠7との間に架け渡されて配設されているため、コンクリート9"の打設圧力などにより、ズレ動くことがなく、所定の位置に保持される。
【0049】
そして、第3の工程として、バタ(縦、横)を取り外し(撤去する)、押さえ部材(ボルト材)8を取り外し、他方側の型枠7を取り外した後、前記間隔保持部材5の棒状部材52を抜き出し、図4(b)に示す埋設構造(コンクリート壁9")を得る。前記構成の埋設用棒状材51、及び筒状部材53は、コンクリート9"に埋設される。
【0050】
このように施工されるコンクリート壁の構築構造では、一方側に配される埋設用棒状材51が一方側の型枠パネル1を貫通して配されているので、この埋設用棒状材51が、コンクリート壁9"を構築した後のアンカー材となり、従来技術のように面倒な墨出しの後にアンカーを打ち込む作業が不要となり、該アンカー材に例えば外装材を取り付ける等の施工を容易に行うことができる。
また、他方側に配される棒状部材52は、筒状部材53で包囲したので、コンクリート9"と接触することなく配され、コンクリート9"の打設、硬化後に容易に抜き出すことができ、得られたコンクリート壁9"には、他方側に筒状部材53が埋設された構造であるため、一方側の埋設用棒状材(ボルト材51a)51をつたって冷熱が他方側へ伝熱されても、それ以上の冷熱の伝わり(冷熱橋)が遮断されて断熱性能が高いものである。
【0051】
さらに、他方側に配設される棒状部材52を抜き出して形成された貫通孔に、図示しない固定用棒状部材(アンカーボルト)を挿着することができ、一方側の壁面ばかりでなく、他方側の壁面にもアンカー材を容易に取り付けることができ、施工するコンクリート壁の両面に容易に外壁材や内壁材などを取り付けることができる。
また、この実施例では、コンクリート打設空間9内での回転を防止する機構として六角ナット51c異径ナット51dを設けたので、埋設用棒状材51に螺合された棒状部材52を外すときに埋設用棒状材51が一緒に回転して螺合状態が解除されなくなるのを防止できる。
【符号の説明】
【0052】
1 断熱パネル
10a,10b 連結材
10c 弾性止水材
101〜104 片半部分
11 雌型端部
12 雄型端部
2 表面材
21 一方側成形部
211 折り返し部
22 他方側成形部
221 段差
222 折り返し部
3 裏面材
31 一方側成形部
311 折り返し部
32 他方側成形部
321 段差
322 折り返し部
4 断熱材
5 間隔保持部材
51 埋設用棒状材
51a ボルト材
51b 筒状部材(規制)
51c 六角ナット
51d 異径ナット
52 棒状部材
53 筒状部材
7 (他方側の)型枠
8 押さえ部材(ボルト材)
9 コンクリート打設空間
9' コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材の表裏面に表面材、裏面材が配設されてなる断熱パネルであって、
前記表裏面材の少なくとも対向する一対の端縁には、前記断熱材の端縁から延在する一方側成形部、他方側成形部を備え、これら一方側成形部、他方側成形部には、それぞれ、表裏面材をつなぐ連結材が配設されていることを特徴とする断熱パネル。
【請求項2】
断熱材の表裏面に表面材、裏面材がそれぞれ接着されて一体化されてなることを特徴とする請求項1に記載の断熱パネル。
【請求項3】
表裏面に貫通する貫通孔を所定間隔で開孔したことを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱パネル。
【請求項4】
断熱材には端部が表面材及び裏面材の内面側に当接する規制部材を埋設したことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の断熱パネル。
【請求項5】
断熱材の表裏面に表面材、裏面材を配設させる断熱パネルの製造法であり、
前記表裏面材の少なくとも対向する一対の端縁に、前記断熱材の端縁から外側へ延在する一方側成形部、他方側成形部を設ける成形工程と、
前記表裏面材の一方側成形部及び他方側成形部がそれぞれ対向するように断熱材の表裏面に配設する表裏面材配設工程と、
これらの一方側成形部、他方側成形部に、それぞれ、表裏面材をつなぐ連結材を配設する連結材配設工程と、
からなることを特徴とする断熱パネルの製造法。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか一項に記載の断熱パネルをコンクリート打設空間の少なくとも一方の型枠として用いたことを特徴とするコンクリート壁体の構築構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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