説明

断熱パネル、及びその接続構造

【課題】所定厚みを備える断熱材の表裏面の何れか又は両面に金属面材等の表皮材を一体化してなり、しかもその端縁に水返し部を設けた構成であるため、その接続構造において、雨水の浸入を確実に防止できる断熱パネル、及びその接続構造を提供する。
【解決手段】本発明は、断熱材2A〜2Cの表裏のうちの少なくとも一方に表皮材3A〜3Cが一体化されてなる断熱パネル1A〜1Cであり、前記表皮材3A〜3Cの端縁には、面板部31から裏面側へ折曲され、その下端を端縁側へ延在させた成形部32が設けられ、該成形部32の先端には表面側へ折曲された水返し部33が設けられ、前記断熱材2A〜2Cの少なくとも一方の端部21が薄肉に形成され、前記断熱材2A〜2Cの薄肉の端部21に前記表皮材3A〜3Cの成形部32を添わせてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定厚みを備える断熱材の表裏面の何れか又は両面に金属面材等の表皮材を一体化してなり、しかもその端縁に水返し部を設けた構成であるため、その接続構造において、雨水の浸入を確実に防止できる断熱パネル、及びその接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁材として、表裏面材と断熱等の諸性能を有する充填材からなるサンドイッチパネルが特許文献1,2など多数提案されている。
上記特許文献1,2などに開示されるサンドイッチパネルは、表裏面材間に発泡性の充填材を注入し、発泡させることで一体化を図るものであり、耐火、断熱性、漏水防止が果たされるものである。
一方、これらサンドイッチパネルを用いた屋根防水構造が特許文献3などに提案されている。
上記特許文献3に記載の屋根防水構造は、表裏面材のうちの表面材が、防水層として合成樹脂層を被覆した金属板であり、このようなサンドイッチパネルを接続し、該接続部分(繋ぎ目部J)にネジ部材10にて円盤状の押さえプレート11を固定し、更にその上から帯状繋ぎ目防水シート4を覆うように取り付けた構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2691388号公報
【特許文献2】特許第4028780号公報
【特許文献3】特開2008−163671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1,2に記載されるサンドイッチパネルは、その製造設備が高価であると共に、設備自体が大型であるが故に大規模な設置スペースを必要とし、設備導入には多大な費用がかかるという問題があった。
また、前記特許文献3に記載の屋根防水構造は、パネル同士の接続部分(繋ぎ目部J)にネジ部材10を打ち込む構造であるため、その上の帯状繋ぎ目防水シート4に破損が生じたり、端縁が捲れたりして雨水の浸入があった場合に漏水が避けられないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述の問題を解消することができ、パネルの製造を低コストで行うことができ、しかもその接続構造において、雨水の浸入を確実に防止できる断熱パネル、及びその接続構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、断熱材の表裏のうちの少なくとも一方に表皮材が一体化されてなる断熱パネルであり、前記表皮材の端縁には、面板部から裏面側へ折曲され、その下端を端縁側へ延在させた成形部が設けられ、該成形部の先端には表面側へ折曲された水返し部が設けられ、前記断熱材の少なくとも一方の端部が薄肉に形成され、前記断熱材の薄肉の端部に前記表皮材の成形部を添わせてなることを特徴とする断熱パネルに関するものである。
【0007】
また、本発明は、前記断熱パネルにおいて、流れ方向端縁に表皮材が断熱材端縁より延出する重合部を設けたことを特徴とする断熱パネルをも提案する。
【0008】
さらに、本発明は、前記構成の断熱パネルを左右に隣接させて接続する接続構造であって、左右に隣り合う断熱パネルの各表皮材の水返し部が対向するように下地上に固定し、当該接続部分を覆うように防水シート材を取り付けてなることを特徴とする断熱パネルの接続構造をも提案するものである。
【0009】
また、本発明は、前記断熱パネルの接続構造において、重合部が隣接する表皮材上に配設されると共に、当該接続部分に防水シート材を取り付けてなることを特徴とする断熱パネルの接続構造をも提案する。
【0010】
また、本発明は、前記断熱パネルの接続構造において、各表皮材の水返し部に跨る連結材を配し、該連結材を固定具にて下地に固定したことを特徴とする断熱パネルの接続構造をも提案する。
【0011】
また、本発明は、前記断熱パネルの接続構造において、各表皮材の水返し部を突き合わせた状態で、成形部を固定具にて下地に固定したことを特徴とする断熱パネルの接続構造をも提案する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の断熱パネルは、断熱材の表裏面の何れか又は両面に金属面材等の表皮材を一体化してなり、それぞれ別々に作製した断熱材及び表皮材を一体化させればよく、特別な製造設備を用いることなく安価にサンドイッチパネルを得ることができる。
また、表皮材の成形部と水返し部とで略樋状の排水部分を形成するので、その接続構造において、仮に雨水の浸入があった場合にも、前記排水部分にて浸入した雨水等を流下させてその浸入を確実に防止することができ、防水構造として利用することができる。
【0013】
また、流れ方向端縁に表皮材が断熱材端縁より延出する重合部を設けた断熱パネルは、流れ方向における接続を極めて容易に行うことができる。
【0014】
さらに、本発明の断熱パネルの接続構造は、接続部分を防水シート材で覆うので、雨水等が侵入するのを簡易的構造で防ぐことができ、断熱パネルによって構築される屋根面や壁面を接続部分が密封された状態の防水構造とすることができる。
したがって、本発明の断熱パネルを用いた防水構造は、従来では断熱パネル等の採用が難しかった住宅等の小規模建築物や倉庫等においても容易に採用でき、安価に断熱性能の優れた居住空間や作業空間を得ることができる。また、安価であるが故に、従来、断熱等が考慮されなかった畜舎等への採用も可能であり、近年の異常気象等から家畜を守ることができる。さらに、本発明の断熱パネルを用いた防水構造を適用した畜舎等は、密封された状態となる(密閉された建築物となる)ため、空気中のチリ等の侵入をも防止でき、チリ等の浮遊物を媒体とした病原菌や、病原菌の媒体となり得る小動物等が建物内に侵入するのを防ぐことも可能である。
【0015】
また、重合部が隣接する表皮材上に配設されると共に、当該接続部分に防水シート材を取り付けてなる接続構造は、流れ方向における接続部分も防水シート材にて密封された状態とすることができる。
【0016】
また、各表皮材の水返し部に跨る連結材を配し、該連結材を固定具にて断熱材に固定した接続構造は、断熱パネル同士が接続されると共に、断熱パネル自体の一体化を向上する効果も果たされる。
【0017】
また、各表皮材の水返し部を突き合わせた状態で、成形部を固定具にて断熱材に固定した接続構造は、前記成形部に第2水返し部を設ける態様に特に好適であり、前述の連結材を用いた態様に比べて使用する部材点数が少ないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)本発明の断熱パネルの接続構造(防水構造)の一実施例(第1実施例)を示す断面図、(b)他の一実施例(第2実施例)を示す断面図、(c)他の一実施例(第3実施例)を示す断面図である。
【図2】(a)第1実施例の断熱パネルを示す断面図、(b)第2実施例の断熱パネルを示す断面図、(c)第3実施例の断熱パネルを示す断面図、(d)連結材を示す断面図、(e)第1及び第2実施例に用いた固定具を示す断面図、(f)第3実施例に用いた固定具を示す断面図、(g)第1及び第2実施例に用いた防水シート材を示す断面図、(h)第3実施例に用いた防水シート材を示す断面図、である。
【図3】(a)第1実施例の接続構造(防水構造)を施工する手順のうち、左右に隣接する断熱パネルを併設した状態を示す断面図、(b)断熱パネルを構成する断熱材同士を突き合わせた状態を示す断面図、(c)各表皮材の水返し部に跨って連結材を配した状態を示す断面図、(d)連結材を固定具にて固定した状態を示す断面図、(e)当該接続部分を覆うように防水シート材を取り付けた状態を示す断面図である。
【図4】(a)第2実施例の接続構造(防水構造)を施工する手順のうち、左右に隣接する断熱パネルを併設した状態を示す断面図、(b)断熱パネルを構成する断熱材同士を突き合わせた状態を示す断面図、(c)各表皮材の水返し部に跨って連結材を配した状態を示す断面図、(d)連結材を固定具にて固定した状態を示す断面図、(e)当該接続部分を覆うように防水シート材を取り付けた状態を示す断面図である。
【図5】(a)第3実施例の接続構造(防水構造)を施工する手順のうち、左右に隣接する断熱パネルを併設した状態を示す断面図、(b)断熱パネルを構成する断熱材同士を突き合わせた状態を示す断面図、(c)各表皮材の成形部を固定具にて固定した状態を示す断面図、(d)当該接続部分を覆うように防水シート材を取り付けた状態を示す断面図である。
【図6】(a)第1実施例の断熱パネルを、更に水上側左方に隣接させて敷設する状態を示す斜視図、(b)水上側左方に断熱パネルを配した状態を示す斜視図、(c)水上側右方に断熱パネルを敷設する状態を示す斜視図、(d)水上側右方に断熱パネルを配した状態を示す斜視図、(e)防水シート材を配した状態を示す斜視図、(f)水流れ方向の接続部分を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の断熱パネルは、断熱材の表裏のうちの少なくとも一方に表皮材が一体化されてなる構成であり、断熱材及び表皮材の材質や一体化手段は特に限定するものではなく、例えば断熱材としては、各種の樹脂成形板、樹脂フォーム材、木毛セメント板等を用いることができ、例えば表皮材としては、表面化粧鋼板、ラミネート鋼板、メッキ鋼板、ステンレス鋼板、アルミ合金板、チタン合金板、銅板、真鍮板、鉛板等の公知の金属素材等が適宜に用いられ、必要に応じてロール成形、或いはプレス成型、或いは両者の組合せにより成形(成型)したものでもよく、その素材厚は特に限定するものではない。特にその接続構造において、断熱パネル間を覆うように取り付けられる防水シート材を、その表面に容易に接着(融着を含む)できる表面特性を備えるものが望ましい。
【0020】
前記断熱パネルを構成する表皮材は、その端縁に、面板部から裏面側へ折曲され、その下端を端縁側へ延在させた成形部が設けられ、該成形部の先端には表面側へ折曲された水返し部が設けられた構成であり、前記成形部と前記水返し部とで略樋状の(第1の)排水部分を形成するものである。
また、後述する図1(c)等に示す第3実施例のように成形部に表面側へ突出する第2水返し部を設けてもよく、この場合、成形部と第2水返し部とで略樋状の(第2の)排水部分が形成される。即ち前記第1の排水部分の面板部側に第2の排水部分が形成されるので、雨水の浸入を防止する効果は更に一層高いものとなる。或いは後述する第3実施例のように第2の排水部分の外側に固定具を打ち込むようにしてもよい。
なお、後述する図示実施例では、左右の端縁に対称状の成形部及び水返し部を設けたが、これらに限定されるものではなく、異なる形状(左右非対称状)に成形してもよく、例えば一方が他方に重合する形状でもよい。
また、この表皮材は、前記金属素材に限定されるものではなく、例えば金属板の表面に防水シート材が一体的に固定(積層)されている構成でもよい。その場合、金属板の表面に一体化させる防水シート材は、溶着、融着等を含む各種の接着手段にて金属板と一体化できるものであれば特に限定するものではなく、例えば塩ビ系、オレフィン系のプラスチックシート材でもよい。また、塩ビ等の樹脂層に、ポリクロス、フェルト層、ガラス繊維基布、金属等の芯体又は補強体が積層された構成の複合防水シートでもよく、さらに、表皮材と同質の金属等であってもよく、特に耐火(防火)性能に優れた複合防水シートが望ましい。さらに、前述のようにその接続構造において、断熱パネル間を覆うように取り付けられる防水シート材を、その表面に容易に接着(融着を含む)できる表面特性を備えるものが望ましい。
【0021】
前記断熱パネルを構成する断熱材は、前述の従来技術(特許文献1,2)のように注入発泡型の合成樹脂に限定されないので、各種素材の断熱材を適用することができ、例えば合成樹脂製ボートに限らず木製ボードでもよく、また単層でも複層でもよく、異なる材質の複層構成でもよい。そのため、難燃性、不燃性等の機能性ボード材を用いてもよく、また厚み等についても何等制限がなく、どのような断熱材を用いてもよい。
また、一次発泡させた合成樹脂発泡体を、加熱等の条件を与えて二次発泡させて断熱材としてもよい。この一次発泡体は、二次発泡体に比べて厚みが薄いものであり、特に二次発泡させた際に膨張してその表面にベタ付き(タック)が生ずる(或いは残存する)ものが望ましい。
この断熱材は、後述する図示実施例に示すように全体的には略均一厚みのボード状であるが、その少なくとも一方の端部が薄肉に形成された構成を有する。即ち後述する図1(a),(b)等に示す第1及び第2実施例のように一方のみの端部が薄肉に形成される構成でもよいし、後述する図1(c)等に示す第3実施例のように両端部が薄肉に形成される構成でもよい。
【0022】
そして、この断熱パネルは、前記断熱材の薄肉の端部に前記表皮材の成形部を添わせて一体化したものであり、前述のように特にその一体化手段を限定するものではなく、溶着や融着等を含む各種の接着手段が全面的に展開されている状態、即ち全面的に接着している状態でもよいし、例えばドット状、縞状などのように部分的に接着していてもよい。尤も、一体化の状態を維持するためには、特に接着面積の少ない部分的な接着では、剥がれずに強力に接着している必要があるが、特に接着手段について限定するものではない。また、熱接着、熱融着等により接着されていてもよいが、自然界にて発生するような熱量以上で接着又は融着されていることが望ましい。
【0023】
さらに、本発明は、前記断熱パネルの接続構造(=断熱パネルを用いた防水構造)をも提案するものであり、左右に隣り合う断熱パネルの各表皮材の水返し部が対向するように下地上に固定し、当該接続部分を覆うように防水シート材を取り付けることを特徴とする。
この防水シート材は、溶着、融着等を含む各種の接着手段にて断熱パネルの表皮材と一体化できるものであれば特に限定するものではなく、例えば塩ビ系、オレフィン系のプラスチックシート材でも、金属シート材でも、複合シート材でもよい。また、塩ビ等の樹脂層に、ポリクロス、フェルト層、ガラス繊維基布等の芯体又は補強体が積層された構成の複合防水シートでもよく、特に耐火(防火)性能に優れた複合防水シートが望ましい。
また、下地は、鉄骨・木造からなる躯体(梁、母屋、胴縁、垂木等)、RC等の躯体であってもよく、或いは前記躯体上に断熱や耐火等の機能を有する板状部材を配したものでもよく、固定具が固着可能なものであればよい。
さらに、左右に隣り合う断熱パネルの断熱材同士は、後述する図示実施例のように突き合わせるように配設してもよいし、対向するように配設してもよく、或いは重合するように配設してもよい。
【0024】
その際、後述する図1(a),(b)等に示す第1及び第2実施例のように各表皮材の水返し部に跨る連結材を配し、該連結材を固定具にて断熱材に固定するようにした場合、断熱パネル同士が接続されることは勿論、それ以外に、断熱パネル自体の一体化を向上する効果も果たされる。
この連結材は、断熱パネルと同等の長さ、又はそれ以上長尺でもよいし、後述する図示実施例のようにピース材でもよい。長尺の連結材を用いた場合には一体化強度が向上する他に水返し部間を覆う被覆効果も果たされる。
【0025】
また、後述する図1(c)等に示す第3実施例のように各表皮材の水返し部を突き合わせた状態で、各成形部を固定具にてそれぞれ断熱材に固定した場合、前記成形部に第2水返し部を設ける態様に特に好適であり、前述の連結材を用いた態様に比べて使用する部材点数が少ないという利点がある。
【0026】
さらに、後述する図6に示す実施例のように、流れ方向端縁に表皮材が断熱材端縁より延出する重合部を設けるようにすると、流れ方向における接続を極めて容易に行うことができる。
そして、当該実施例のように重合部が隣接する表皮材上に配設されると共に、当該接続部分に防水シート材を取り付けてなる接続構造は、流れ方向における接続部分も防水シート材にて密封された状態とすることができる。
【実施例1】
【0027】
図1(a)〜(c)に示す防水構造(断熱パネルの接続構造)を形成する本発明の一実施例である断熱パネル1A〜1Cは、断熱材2A〜2Cの表裏のうちの少なくとも一方に表皮材3A〜3Cが一体化されてなり、前記表皮材3A〜3Cの端縁には、面板部31から裏面側へ折曲され、その下端を端縁側へ延在させた成形部32が設けられ、該成形部32の先端には表面側へ折曲された水返し部33が設けられ、前記断熱材2A〜2Cの少なくとも一方の端部22が薄肉に形成され、前記断熱材2A〜2Cの薄肉の端部22に前記表皮材3A〜3Cの成形部32を添わせてなる。
【0028】
図1(a)に示す第1実施例では、図2(a)に示す断熱パネル1A,1Aを接続したものであり、各表皮材3A,3Aの水返し部33,33に跨る図2(d)に示す連結材4を配し、該連結材4を図2(e)に示す固定具5にて断熱材2Aを貫通して下地に固定した構成である。
この連結材4は、中央頂部41の左右の側縁を下方へ折曲して成形部32,32の横片に沿わせた押さえ部42,42を有する断面略ハット状のピース状の成形体であり、取付ボルトである固定具5を中央頂部41の上方から打ち込んで表皮材3A,3Aの成形部32,32を下地に固定している。
なお、下地は、前述のように鉄骨・木造からなる躯体(梁、母屋、胴縁、垂木等)を指し、断熱材2Aの下面に位置するものであるが、特に符号を付していない。
【0029】
図1(b)に示す第2実施例では、図2(b)に示す断熱パネル1B,1Bを接続したものであり、各表皮材3B,3Bの水返し部33,33に跨る図2(d)に示す連結材4を配し、該連結材4を図2(e)に示す固定具5にて断熱材2Bを貫通して下地に固定した構成である。
この第2実施例では、第1実施例と全く同じ連結材4及び固定具5を用い、固定具5を連結材4の中央頂部41の上方から打ち込んで表皮材3B,3Bの成形部32,32を下地に固定している。
【0030】
図1(c)に示す第3実施例では、図2(c)に示す断熱パネル1C,1Cを接続したものであり、各表皮材3C,3Cの水返し部33,33を突き合わせた状態で各成形部32,32を図2(f)に示す固定具5',5'にてそれぞれ断熱材2Cを貫通して下地に固定した構成である。
この第3実施例では、取付ボルトである固定具5',5'を前記連結材4を用いることなく直接的に成形部32,32に打ち込んで下地に固定している。
【0031】
前記断熱パネル1A〜1Cを構成する表皮材3A〜3Cは、その端縁に、面板部31から裏面側へ折曲され、その下端を端縁側へ延在させた成形部32,32が設けられ、該成形部32,32の先端には表面側へ折曲された水返し部33,33が設けられた構成であり、前記成形部32,32と前記水返し部33,33とで略樋状の排水部分36を形成している。
第2実施例における表皮材3Bは、面板部31と成形部32との間に、断熱材2B側へ段状に折曲した段部34が形成されている点で、第1実施例における表皮材3Aと相違する。
また、第3実施例における表皮材3Cは、成形部32が横長で、その略中央に表面側へ突出する第2水返し部35が形成され、該第2水返し部35と成形部32とで略樋状の第2排水部分36'を形成している点で、第1実施例における表皮材3Aと相違する。
【0032】
また、断熱材2A〜2Cは、全体的には略均一厚みのボード状であるが、第1及び第2実施例における断熱材2A,2Bは、一方(図面は右端)のみの端部(薄肉部21)が薄肉に形成され、第3実施例における断熱材2Cは両端部(薄肉部21,21)が薄肉に形成されている。
第2実施例における断熱材2Bは、前記段部34を沿わせるくびれ部22が形成されている点で、第1実施例における断熱材2Aと相違する。
【0033】
そして、これらの断熱パネル1A〜1Cは、前記断熱材2A〜2Cの薄肉の端部21に前記表皮材3A〜3Cの成形部32を添わせて耐熱性接着剤にて一体化したものであり、各種の防水構造として適用し得る接続構造を形成することができる。
即ち該接続構造は、前記第1実施例を例にすると、左右に隣り合う断熱パネル1A,1Aの各表皮材3A,3Aの水返し部33,33が対向するように下地上に固定し、当該接続部分を覆うように防水シート材6を取り付ける。
このように形成される接続構造では、表皮材3Aの成形部32と水返し部33とで略樋状の排水部分36を形成するので、その接続構造において、仮に防水シート材6に破損が生じたり端縁が捲れたりして雨水の浸入があった場合にも、前記排水部分36にて浸入した雨水等を流下させてその浸入を確実に防止することができ、防水構造として利用することができる。
【0034】
また、特に前記第2実施例では、面板部31と成形部32との間に、断熱材2B側へ段状に折曲した段部34を形成した断熱パネル1Bを用いたので、前記段部34に防水シート材6を取り付けることにより、水溜まり等を生じない略平坦な施工面を構築できる。
【0035】
さらに、前記の第1及び第2実施例では、各表皮材3A(3B)の水返し部33に跨る連結材4を配し、該連結材4を固定具6にて断熱材2A(2B)に固定したので、断熱パネル2A,2A(2B,2B)同士が接続されることは勿論、それ以外に、断熱パネル1A(1B)自体の一体化を向上する効果も果たされる。
【0036】
また、前記第3実施例では、成形部32に表面側へ突出する第2水返し部35が設けられている断熱パネル1Cを用いたので、該第2水返し部35と成形部32とで略樋状の第2排水部分36'を形成することができ、それによって水返し部33,33を突き合わせた状態で、各成形部32,32を固定具6',6'にてそれぞれ断熱材2C,2Cに固定することができた。その結果、前記の第1及び第2実施例などに比べて使用する部材点数が少ないという利点があった。
【0037】
これらの各実施例のように、本発明の断熱パネル1A〜1Cの接続構造は、左右方向に隣接する接続部分を防水シート材6,6'で覆うので、雨水等が侵入するのを簡易的構造で防ぐことができ、断熱パネル1A〜1Cによって構築される屋根面や壁面を接続部分が密封された状態の防水構造とすることができる。また、各実施例では、断熱材2A〜2C同士を突き合わせて配設したので、略平坦状の断熱層が分断されること無く連続するものとなる。
【0038】
図6(a)〜(e)は、前記第1実施例を例にして、左右に隣接させた断熱パネル1A,1Aの更に水上側に隣接させて断熱パネル1A",1A"を敷設する手順を示す。
まず、図6(a)に示すように左右に隣接させて配設した断熱パネル1A,1Aの水上側左方に、予め表皮材3Aの流れ方向端縁、即ち水下側の端縁を断熱材2Aの端縁より長く延出させた重合部37を有する断熱パネル1A"を臨ませる。
次に、図6(b)に示すように既に敷設している左側の断熱パネル1Aの成形部32に、断熱パネル1A"の断熱材2Aの端縁より水下側へ延在させた成形部32が重合するように配設する。なお、その際、成形部32ばかりでなく、図6(f)に示すように面板部31についても同様に重合させており、更に断熱パネル1A"の断熱材2Aの水下側の端縁は既に敷設している断熱パネル1Aの断熱材2Aの水上側の端縁に突き合わせている。
続いて、同様に図6(c)に示すように水上側右方に、予め表皮材3Aの水下側の端縁を断熱材2Aの端縁より長く延在させて一体化した断熱パネル1A"を臨ませる。
次に、図6(d)に示すように既に敷設している右側の断熱パネル1Aの成形部32に、断熱パネル1A"の断熱材2Aの端縁より水下側へ延在させた成形部32が重合するように配設する。
そして、図6(e)に示すように左右方向及び流れ方向に隣接する合計4枚の断熱パネル1A,1A,1A",1A"に防水シート材6を一連に敷き渡す(跨る)ように敷設して融着固定した。
【0039】
この図6に示した流れ方向端縁に表皮材3Aが断熱材2A端縁より延出する重合部37を設けた断熱パネル1A"は、流れ方向における接続を極めて容易に行うことができる。
さらに、図6(e)に示したように、左右方向及び流れ方向における接続部分を防水シート材6で覆うので、雨水等が侵入するのを簡易的構造で防ぐことができ、断熱パネル1A,1A"によって構築される屋根面や壁面を接続部分が密封された状態の防水構造とすることができる。
【符号の説明】
【0040】
1A〜1C 断熱パネル
2A〜2C 断熱材
21 薄肉部
3A〜3C 表皮材
31 面板部
32 成形部
33 水返し部
34 段部
35 第2水返し部
36,36' 排水部分
4 連結材
5,5' 固定具
6,6' 防水シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材の表裏のうちの少なくとも一方に表皮材が一体化されてなる断熱パネルであり、
前記表皮材の端縁には、面板部から裏面側へ折曲され、その下端を端縁側へ延在させた成形部が設けられ、該成形部の先端には表面側へ折曲された水返し部が設けられ、
前記断熱材の少なくとも一方の端部が薄肉に形成され、
前記断熱材の薄肉の端部に前記表皮材の成形部を添わせてなることを特徴とする断熱パネル。
【請求項2】
流れ方向端縁に表皮材が断熱材端縁より延出する重合部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の断熱パネル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の断熱パネルを左右に隣接させて接続する接続構造であって、
左右に隣り合う断熱パネルの各表皮材の水返し部が対向するように下地上に固定し、当該接続部分を覆うように防水シート材を取り付けてなることを特徴とする断熱パネルの接続構造。
【請求項4】
重合部が隣接する表皮材上に配設されると共に、当該接続部分に防水シート材を取り付けてなることを特徴とする請求項3に記載の断熱パネルの接続構造。
【請求項5】
各表皮材の水返し部に跨る連結材を配し、該連結材を固定具にて下地に固定したことを特徴とする請求項3又は4に記載の断熱パネルの接続構造。
【請求項6】
各表皮材の水返し部を突き合わせた状態で、成形部を固定具にて下地に固定したことを特徴とする請求項3又は4に記載の断熱パネルの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−158888(P2012−158888A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18164(P2011−18164)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000165505)元旦ビューティ工業株式会社 (159)
【Fターム(参考)】