説明

断熱パネル

【課題】パネル全体に均一な強度と均一な断熱性が得られる断熱パネルを提供する。
【解決手段】板状の軽量セメントパネル2と、その軽量セメントパネル2の両面に形成された樹脂補強層3と、その樹脂補強層3の一方の表面に設けられた断熱構造体とから構成される断熱パネルを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種建築物用の内装材として好適な断熱パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物用の内装材として、図5に示すような戸建住宅用の断熱パネルが知られている。
【0003】
同図に示す断熱パネル50は、その長手方向に配置される間柱51と、断熱パネル50の幅方向を規定する一対の副柱52とを有し、各副柱52は、施工時において建物の柱に固定されるようになっている。
【0004】
上記間柱51および各副柱52には複数本の貫53が横方向に架設され、その貫53の外側(図の下側)にはフィルム状の防湿材54が配置される。
【0005】
上記貫53および上記防湿材54に対し硬質ポリウレタンフォーム原液を吹き付けて発泡させることにより断熱層55が形成され、間柱51、各副柱52、防湿材54がその断熱層を介して一体化される(例えば特許文献1参照)。
【0006】
上記構成を有する断熱パネル50は、格子状に組まれた間柱51、各副柱52および複数本の貫53によってパネルの強度を確保しているため、格子枠内については断熱層55の強度しか得られず、パネル全体に均一な強度が得られないという問題がある。
【0007】
そこで、図6に示すように、軽量化と高強度化を図ることを目的とした別の断熱パネルとして断熱複合パネルが提案されている。
【0008】
同図に示す断熱複合パネル60は、シート61と、そのシート61の背面側略中央に配置され角柱、金属材等からなる補強部62と、その両側に形成される発泡樹脂体63とから構成されている。
【0009】
上記発泡樹脂体63には耐衝撃強度を高めるために、1乃至複数のリブ63aが設けられ、両側部には立壁部63bが設けられている。また、発泡樹脂体63の原料樹脂中に耐衝撃強度等の機械的強度を向上させることを目的として各種フィラー等を混入してよい点が記載されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−179720号公報
【特許文献2】実開平4−34310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記特許文献2の断熱複合パネルは、上記特許文献1の断熱パネルと比較すると高強度化が図られているものの、補強部62と発泡樹脂体63とで部材が異なるためにパネル全体として均一な耐衝撃強度が得られないという問題が残存している。
【0012】
また、補強部62と発泡樹脂体63の断熱性能が異なるため、パネル全体として均一な断熱性が得られないという問題もある。
【0013】
本発明は以上のような従来の断熱パネルにおける課題を考慮してなされたものであり、パネル全体に均一な強度と均一な断熱性が得られる断熱パネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、板状の軽量セメントパネルと、
その軽量セメントパネルの両面に形成された樹脂補強層と、
その樹脂補強層の一方の表面に設けられた断熱構造体とから構成される断熱パネルである。
【0015】
本発明における上記断熱構造体として、角波状の断面を有する発泡樹脂成形部を有することができる。
【0016】
また、上記断熱構造体として、上記軽量セメントパネルと平行に配置される平板部とその平板部から立設され上記樹脂補強層と接続される壁部とを有することができる。
【0017】
本発明において、上記軽量セメントパネルは、セメント硬化物中に多数の気泡を含むとともに、多数の補強繊維が分散している多孔質成形体から構成することが好ましい。
【0018】
本発明において、上記樹脂補強層は、合成樹脂に補強繊維材を埋設したFRPから構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の断熱パネルによれば、パネル全体に均一な強度と均一な断熱性が得られるという長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る断熱パネルの要部を示す斜視図である。
【図2】図1に示した断熱パネルにおける樹脂補強層付き軽量セメントパネルの断面図である。
【図3】図1に示す断熱構造体の成形方法を示す分解斜視図である。
【図4】別の断熱構造体の構成を示す斜視図である。
【図5】従来の断熱パネルの構成を示した断面図である。
【図6】従来の別の断熱パネルの構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0022】
図1において、本発明の断熱パネル1は、板状の軽量セメントパネル2と、その軽量セメントパネル2の両面に形成された樹脂補強層3と、一方の樹脂補強層3の表面に設けられる発泡樹脂成形部(断熱構造体)4とから主として構成されている。
【0023】
上記断熱パネル1は用途等に応じて様々な平面サイズが用意されるが、一例を挙げれば、幅910mm×長さ1820mmである。なお、X−X方向は断熱パネル1の幅方向、Y−Y方向は同じく長さ方向を示している。
【0024】
以下、各部の構成について説明する。
【0025】
1.軽量セメントパネル
軽量セメントパネル2は、図2に示すように、その内部に補強繊維2aが分散して含まれているとともにその内部に多数の気泡2bが分散されている多孔質構造からなる。
【0026】
上記補強繊維2aを含有しながら多孔質構造を得るには、例えば、セメント、水、補強繊維2a及び起泡剤をプレフォームした泡状混練物を成形型内に充填し、硬化させることで得ることができる。
【0027】
上記セメントの種類としては特に限定されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント等、各種セメントを使用できるが、生産性、強度面で優れている早強ポルトランドセメントを使用することが好ましい。
【0028】
セメントと水との配合割合は、セメント100質量部に対して水が20〜100質量部、更には20〜50質量部の範囲が好ましい。水が多すぎると強度が低下する傾向にあり、水が少なすぎると成形時にセメント混練物の流動性が低下して成形性を阻害する傾向にある。
【0029】
上記補強繊維2aとしては、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、鋼繊維、ガラス繊維等が挙げられる。これらの繊維のなかでも、ビニロン繊維は耐久性が高く、しかもセメントとの親和性に優れるので好ましい。この補強繊維2aは混合して配合してもよい。
【0030】
補強繊維2aの繊維長は特に限定されないが、4〜35mmの範囲が好ましい。補強繊維2aの繊維長が4mm未満では補強効果が不足する傾向がみられる。
【0031】
補強繊維2aの繊維長は長い方が補強効果の点では有利であるが、その一方で、繊維長が長くなるにつれてその分散性が低下し、軽量セメントパネル2中で補強繊維2aが偏在することになり、かえって軽量セメントパネル2の強度を低下させる場合がある。
【0032】
また、補強繊維2aの太さについても特に限定はしないが、10μm〜100μmの太さのものを使用することが好ましい。
【0033】
また、セメント混練時に補強繊維2aを均一に分散させるだけで、補強繊維2aが絡み合った補強構造を有する軽量セメントパネル2が得られる。従って、軽量セメントパネル2を製造する場合に、埋設する補強繊維2aの位置決め等の煩雑な作業は不要であり、強度にバラツキのない軽量セメントパネル2を容易に製造することができる。
【0034】
上記補強繊維2aの配合量は、セメント100質量部に対して0.5〜5質量部とすることが好ましい。補強繊維2aの配合量が少なすぎると、補強効果も低く、軽量セメントパネル2の強度も低くなる。
【0035】
このような観点から、補強繊維2aの配合量のより好ましい範囲は、セメント100質量部に対して0.5〜3質量部である。
【0036】
一方、補強繊維2aの配合量が多くなるにつれて軽量セメントパネル2の補強効果は高まるが、補強繊維2aの配合量が過剰になるとセメント混練中での分散性が悪くなり、その結果、補強繊維2aが偏在して軽量セメントパネル2の強度が不均一になり、かえって軽量セメントパネル2の強度を低下させるおそれがある。
【0037】
また、起泡剤については特に限定されず、セメント用、コンクリート用の起泡剤、例えば、タンパク質系、界面活性剤系、樹脂系等の公知の各種起泡剤を使用できる。
【0038】
更に、その起泡剤とともに、アルミニウム粉等の金属系発泡剤を使用することもできる。起泡剤の添加量や添加方法は特に限定されないが、通常はセメント100質量部に対して0.1〜3質量部の範囲で、得られる軽量セメントパネル2の比重が、1.0以下の、目標値となるように適宜調整すればよい。
【0039】
軽量セメントパネル2の比重は、好ましくは0.5〜1.0であり、更に好ましくは0.6〜0.9の範囲、最も好ましくは木質合板と同じ0.7〜0.8程度である。
【0040】
比重が小さいほど当然、軽量セメントパネル2は軽量となり、搬送および施工時の取り扱いが容易になる。
【0041】
なお、軽量セメントパネル2の製造に際しては、適宜、減水剤を使用しても良い。その減水剤としては、例えばナフタレン系減水剤、スルホン酸系減水剤、ポリカルボン酸系減水剤等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0042】
軽量セメントパネル2を製造するにあたり、セメント、水、補強繊維2a及び起泡剤をプレフォームした泡、その他の添加剤等の混練に際しては、従来公知のミキシングマシンを使用できるが、混練物中の起泡剤をプレフォームした泡の状態や補強繊維にダメージを与えることなく、かつ全体を均一に混練することが必要である。
【0043】
混練時に起泡剤の泡がダメージを受けると、成形後の軽量セメントパネル2における気泡の大きさが不均一となり、軽量セメントパネル2の強度にバラツキを生じることがある。また、補強繊維2aがダメージを受けて折損すると、所望の補強効果が得られない場合がある。
【0044】
2.樹脂補強層
樹脂補強層3は、合成樹脂層中に補強材3aを埋設することによってFRPを構成しており、軽量セメントパネル2の両面に硬質のスキン層を形成している。
【0045】
軽量セメントパネル2の表面に上記樹脂補強層3を一体に形成するには、補強材3aをセメントパネル2の表面に均等に散布した後に、合成樹脂を吹き付ける。この吹付けにより、補強材3aが飛散等することなく、合成樹脂層中に埋設する。
【0046】
また、別の方法として、軽量セメントパネル2を製作した後、その軽量セメントパネル2の外形寸法よりも僅かに大きい箱形の型枠(図示しない)を用意し、その型枠内に軽量セメントパネル2をセットする。このとき、スペーサを用いて型枠の底面から若干浮かせた状態(樹脂補強層3の厚み分)で軽量セメントパネル2をセットし、次いで型枠の上部開口を蓋で閉じる。なお、軽量セメントパネル2と蓋との間にも隙間(樹脂補強層3の厚み分)が確保されている。
【0047】
次いで、軽量セメントパネル2と型枠および蓋との隙間に液状のFRP材料を充填する。
【0048】
上記FRP材料とは、発泡性合成樹脂に短繊維からなる補強材3aを混入したものであり、その補強材3aは上述した補強繊維2aと同様に、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン)、ポリプロピレン繊維やポリエチレン繊維等のポリオレフィン系繊維、アラミド繊維、炭素繊維、鋼繊維、ガラス繊維等などの短繊維を使用することができる。
【0049】
また、樹脂補強層3を形成する他の方法として、軽量セメントパネル2の上面および下面に発泡性樹脂を塗布し、織布や不織布に成形されたシート状樹脂補強材をその発泡性樹脂上に載置し、さらにその上から再び発泡性樹脂を塗布することによって樹脂補強層3を形成することもできる。
【0050】
ただし、上記シート状樹脂補強材のサイズは、軽量セメントパネル2とほぼ同じサイズ(平面寸法)のものを使用する。なお、樹脂補強材と硬化した発泡性合成樹脂が確実に一体化するように、シート状樹脂補強材としてはメッシュ状の織布または多数の孔が形成されている不織布を採用することが好ましい。
【0051】
特に、目付が50〜1000g/m2、好ましくは200〜300g/m2のガラス繊維からなるチョップドストランドマットは、安価に入手でき、しかも軽量セメントパネル2の剛性を大幅に向上することができるため好ましい。
【0052】
なお、上記シート状樹脂補強材は、合成樹脂層中に埋設していればよく、合成樹脂層の厚さ方向中央に配置されることに限らず、表面側寄りに配置されていてもよい。
【0053】
上述した発泡性合成樹脂が硬化すると樹脂補強層3が形成され、軽量セメントパネル2の上下両面が樹脂補強層3で被覆され一体化される。
【0054】
このようにして、軽量セメントパネル2の上下両面に樹脂補強層3が形成されることにより、軽量セメントパネル2に加わる曲げやねじれに対抗する剛性が高められ、軽量セメントパネル2に加わる外力から軽量セメントパネル2を保護することができる。
【0055】
樹脂補強層3を形成するための合成樹脂は特に限定されないが、例えばポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム、硬質塩化ビニルフォーム、ユリアフォーム、フェノールフォーム、アクリルフォーム、酢酸セルロースフォーム、その他の発泡性合成樹脂が例示できる。
【0056】
上記合成樹脂の発泡倍率は特に限定されないが、通常は2〜10倍程度でよい。合成樹脂の発泡倍率が小さいほど軽量セメントパネル2の強度は増大するが、その一方で軽量セメントパネル2の重量も増大する。
【0057】
また、上記合成樹脂の発泡倍率が大きくなるほど軽量セメントパネル2は軽量化されるが、その一方で軽量セメントパネル2の強度が低下する傾向がある。従って、上記合成樹脂の発泡倍率は、軽量セメントパネル2の軽量性、強度、耐衝撃性などを考慮して決定する。
【0058】
また、樹脂補強層3を形成するための合成樹脂としては、上記発泡性合成樹脂に限らず、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、硬質ポリウレタン樹脂、軟質ポリウレタン樹脂、硬質塩化ビニル樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、酢酸セルロース樹脂、その他の非発泡性の合成樹脂を採用することもできる。この場合、上記合成樹脂は、軽量セメントパネル2の両側にそれぞれ厚さ1〜4mm程度の厚みが確保されるように塗布する。
【0059】
3.断熱構造体
断熱構造体としての発泡樹脂成形部4は、図1に示したように複数の発泡樹脂成形片5を列設することから構成されており、各発泡樹脂成形片5は、図3に示す型枠装置を用いて成形される。
【0060】
図3において、型枠装置は樋状の上型10および下型11とから構成され、上型10には断面(長手方向と直交する方向において)が下向きに凸となる略V字形の凸条部10aが備えられ、下型11には上記凸条部10aが遊嵌し得る略V字形の凹溝11aが備えられている。
【0061】
上型10と下型11の嵌合対向面には、3〜10mmの略V字形の隙間が形成され、その隙間に発泡性合成樹脂を充填することにより、発泡樹脂成形片5が成形される。発泡性合成樹脂を充填する際には、上述した補強繊維2aと同じ短繊維からなる補強材が混入される。
【0062】
上記繊維2aを混入することで、上記発泡合成樹脂の成形が行いやすくなり、脱型時における型崩れ等を防止することができる。さらに、断熱構造体自体の引張強度・引張弾性強度が向上し、施工時においても上記の如く型崩れが防止される。
【0063】
成形された発泡樹脂成形片5は、断面V字状の突出部5aとその突出部5aから延設される一対のフラップ部5bとを有しており、上記突出部5aの高さhは、発泡樹脂成形部4が取り付けられる建物の柱の奥行き方向厚さと同じか、それ以下である。
【0064】
各フラップ部5bは、図1に示した軽量セメントパネル2の一方の樹脂補強層3上に発泡樹脂成形片5を安定して接着するための固定部となる。
【0065】
このようにして成形された発泡樹脂成形片5を、図1に示した軽量セメントパネル2の一方の樹脂補強層3上に幅方向(X−X方向)配列し、接着剤で貼着することにより、角波状の断面を有する発泡樹脂成形部4が形成される。
【0066】
上記実施形態では発泡樹脂成形部4を接着剤によって軽量セメントパネル2の樹脂補強層3上に接着したが、発泡性合成樹脂の自己接着性を利用して直接、樹脂補強層3に接着させることもできる。
【0067】
この場合、製作された軽量セメントパネル2の樹脂補強層3上に、発泡樹脂成形部4成形用の金型をセットし、次いで、発泡性合成樹脂を充填し、発泡性合成樹脂の硬化後、金型を分解して軽量セットパネル2と発泡樹脂成形部4が一体化された断熱パネル1を脱型する。
【0068】
このようにして製作された断熱パネル1において、樹脂補強層3上に接着された各発泡樹脂成形片5のフラップ部5bは、軽量セメントパネル2の一方の樹脂補強層3上に厚さ3〜10mmの断熱層を形成する。また、突出部5aと樹脂補強層3との間に通路5cが形成される。
【0069】
断熱パネル1を建物の柱間に取り付け、上記通路5cの上下開口が閉塞されると、上記通路5cもまた断熱層として機能するため、発泡樹脂成形部4の断熱性能をより高めることができる。
【0070】
なお、上記発泡樹脂成形部4の断面形状は、上記角波に限らず、半円形の波であってもよく、また、三角形の波であってもよい。
【0071】
図4は別の断熱構造体としての発泡樹脂成形部を示したものである。
【0072】
同図に示す発泡樹脂成形部20は、発泡合成樹脂を複数のリブを備えた皿形状に成形することによって構成されており、軽量セメントパネル2の一方の樹脂補強層3上と接着剤で接合されている。なお、図4において図1と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0073】
上記発泡樹脂成形部20は、平板部20aと、その平板部20aの外周部に立設された外枠部20bと、平面から見て十字に配置されたリブ部20cとを有し、これらのリブ部20cは外枠部20bと接続されている。
【0074】
平板部20aから立設される壁部としての上記外枠部20bおよび上記リブ部20cは、樹脂補強層3上に仕切られた領域を複数形成するようになっている。
【0075】
また、外枠部20bの内壁面、リブ部20cの各壁面は、それぞれ裾広がりとなるようにわずかに傾斜しており、脱型が容易になっている。
【0076】
上記構成を有する発泡樹脂成形部20を、平板部20aが軽量セメントパネル2と平行になるように配置し、外枠部20bおよびリブ部20cの頂部を軽量セメントパネル2の背面と接合する。それにより、軽量セメントパネル2と発泡樹脂成形部20との間に、複数の閉じられた空間が形成される。
【0077】
その閉じられた空間では空気層が対流しないため、空気層が断熱層の役割を果たす。
【0078】
発泡樹脂成形部20を形成するには、上記第一の発泡樹脂成形部4の成形方法と同様に、上型と下型(図示しない)を使用する。
【0079】
上記発泡樹脂成形部20の強度を高めるにあたり、発泡性合成樹脂には上記補強繊維2aと同じ短繊維からなる補強材が混入される。この補強材は、予め、下型内に敷き詰めておけば、上型と下型を型閉めしてから発泡性合成樹脂を充填し発泡させることにより、型枠内を流動する発泡合成樹脂中に混入させることができる。
【0080】
また、発泡性合成樹脂の原液に上記補強材を混入し型枠内に充填することもできる。
【0081】
また、上記発泡樹脂成形部20におけるリブ部20cの配置は、上記した十字に限らず、平行に配置したものであってもよく、同心円に配置したものであってもよく、パネルの中心から放射状に配置したものであってもよい。
【0082】
また、軽量セメントパネル2の一方の樹脂補強層3上に、上述した発泡樹脂成形部4と発泡樹脂成形部20とを組み合わせて配置することもできる。
【0083】
また、合成樹脂シートを金型内にセットした状態で、発泡合成樹脂を充填する、いわゆるインモールド成形を行うことにより発泡樹脂成形部4、20の表面に保護層、防湿層を形成することもできる。
【0084】
また、図1において、発泡樹脂成形部4の山部と谷部の幅が一致するように発泡樹脂成形片5を製作しておけば、発泡樹脂成形部4の断熱性を高めたい場合に、その発泡樹脂成形部4の上からさらに発泡樹脂成形片5を上下逆にして谷部に装着することにより、断熱層の厚みを簡単に増やすことができる。
【0085】
また、発泡樹脂成形部4と樹脂補強層3とで囲まれた各通路5cのうちの一部に発泡合成樹脂をさらに充填、または発泡スチレンビーズ等の粒状断熱材を詰めれば、必要な部分を選択して断熱性を高めることができる。もちろん、各通路5cのすべてに発泡合成樹脂を充填すれば、パネル全体の断熱性を高めることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 断熱パネル
2 軽量セメントパネル
2a 補強繊維
2b 気泡
3 樹脂補強層
3a 補強材
4 発泡樹脂成形部(断熱構造体)
5 発泡樹脂成形片
5a 突出部
5b フラップ部
5c 通路
10 上型
10a 凸条部
11 下型
11a 凹溝
20 発泡樹脂成形部(別の断熱構造体)
20a 平板部
20b 外枠部
20c リブ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の軽量セメントパネルと、
その軽量セメントパネルの両面に形成された樹脂補強層と、
その樹脂補強層の一方の表面に設けられた断熱構造体とから構成されることを特徴とする断熱パネル。
【請求項2】
上記断熱構造体として、角波状の断面を有する発泡樹脂成形部を有する請求項1に記載の断熱パネル。
【請求項3】
上記断熱構造体として、上記軽量セメントパネルと平行に配置される平板部とその平板部から立設され上記樹脂補強層と接続される壁部とを有する請求項1または2に記載の断熱パネル。
【請求項4】
上記軽量セメントパネルが、セメント硬化物中に多数の気泡を含むとともに、多数の補強繊維が分散している多孔質成形体からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の断熱パネル。
【請求項5】
上記樹脂補強層が、合成樹脂に補強繊維材を埋設したFRPから構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の断熱パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−184595(P2012−184595A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48673(P2011−48673)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(398062574)カナフレックスコーポレーション株式会社 (62)
【Fターム(参考)】