説明

断熱ライニング方法およびこの断熱ライニング方法に使用する断熱層積層ブロックパック

【課題】粉塵飛散の問題点を回避しかつスタッドからの脱落の危険性の少ない断熱ブロックを使用して簡単かつ短時間で初期ライニング作業を行うことができる、断熱のライニング方法およびこの方法に使用する断熱層積層ブロックパックを得る。
【解決手段】初期ライニング工程で断熱層積層ブロックパック1を使用し、このパック1は偏平断熱ファイバ層2の主平面を順次水平にして所定高さの積層体とし、ガイドピン(図示せず)の鋭利な末端で偏平断熱ファイバ層の主平面中心に突き刺して積層させ、貫通させるガイドピンの基端側にテーパ付きガイドを有するインサート3を基端側の偏平断熱ファイバ層内に埋設した後、ガイドピンを引き抜き、少なくとも複数の偏平断熱ファイバ層を積層させ、積層体周囲全体をフィルムFで密封パックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構内空間を画定する構造物の壁面、例えば、建築物の内壁、または電気炉もしくは各種燃焼炉のような高温炉の炉壁を断熱ライニングするため、内壁または炉壁に互いに離間して植設する金属製のスタッドにより、セラミックファイバ製の断熱材層を保持して初期ライニング層を形成する初期ライニング工程と、初期ライニング層の構内空間側の表面に対して、仕上げライニング層を形成する仕上げライニング工程とを有する断熱ライニング方法に関する。
さらに、本発明はこの断熱ライニング方法に使用する断熱層積層ブロックパックに関する。
【背景技術】
【0002】
このような断熱ライニング方法としては、例えば、高温炉における炉壁に植設した金属製の複数個のスタッドに、セラミックファイバ製のブランケットを所定の厚さになるまで順次串刺しにして積層させて初期ライニング層を形成し、この初期ライニング層から露出するスタッド先端のV字状部分の周りで初期ライニング層上に、不定形耐火物材料(いわゆる「キャスタブル」と称される)を、現場で準備した型枠内に注入し、養生することにより仕上げライニング層を形成するものがある。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
さらに、炉壁に植設したスタッドにより支持した多数のセラミックファイバ製の断熱ブロックで初期ライニング層を形成し、この断熱ブロックよりなる初期ライニング層の表面に不定形耐火物材料を現場で吹き付け作業をして、養生硬化させることにより仕上げライニング層を形成するものがある。(例えば、特許文献2参照。)
【0004】
セラミックファイバ製の断熱ブロックとしては、例えば、特許文献3の図10に記載のように、セラミックファイバ製のブランケットを所定寸法に裁断した偏平断熱ファイバ層を複数個、CDケースを縦置きにして横に並べるように、その大きい平面が側方に指向するよう順次水平方向に並置させ、横に並べた複数個の偏平断熱ファイバ層を串刺しにする1対の串刺しロッド26と、これら1対の串刺しロッドを互いに連結する金具50と、所定寸法の平行六面体のブロックを構成し、金具50の中心孔にスタッドを連結するものであった。
【0005】
また、所要に応じて横方向に並置した並置体周囲を1対のバンドで水平周方向に結束する、または順次の側方に並置する偏平断熱ファイバ層を接着材で接着固定もしくは縫合するものであった。このように並置体を結束、接着固定もしくは縫合したブロックの場合、剥き出し状態(バンド結束であってもバンド結束部分以外は剥き出し状態)であったため、搬送・搬入およびライニング作業中にセラミックファイバの粉塵が飛散し、作業員は目や呼吸器官を保護する注意深い防護対策を必要としていた。また、断熱ブロックを結束するバンドは、ブロック設置の施行後に取り除く作業を行っていた。
【0006】
さらに、従来の断熱ブロックにおいては、炉壁に植設するスタッドは、ブロックに差し込み易いように、金具のスタッドを挿入する中心孔が、偏平断熱ファイバ層の狭小平面側に位置するよう金具を配置しており、スタッドが順次隣接する偏平断熱ファイバ層の境界面(インタフェース)に平行に挿入されるため、断熱ブロック自体が境界面(インタフェース)に平行に亀裂を生じ、スタッドから脱落し易いという問題点があることを本願人は見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平 9−280743号公報
【特許文献2】特開平 6− 11270号公報
【特許文献3】特開平11−193990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来技術のように、現場での手間を省き、簡単かつ確実に短時間で初期および仕上げのライニング作業を行うことができ、また構成簡単かつ安価に製造でき、粉塵飛散の問題点を回避しかつスタッドからの脱落の危険性の少ない断熱ブロックを使用して初期ライニング作業を行うことができる、断熱ライニング方法およびこのライニング方法に使用する断熱層積層ブロックパックを得るにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明断熱ライニング方法において、前記初期ライニング工程は、少なくとも偏平断熱ファイバ層の主平面を順次水平にして所定高さの積層体とし、ガイドピンの鋭利な末端で偏平断熱ファイバ層の平面中心に突き刺して前記積層体に前記ガイドピンを貫通させ、貫通させるガイドピンの基端側にテーパ付きガイドを有するインサートを前記基端側の偏平断熱ファイバ層内に埋設した後、ガイドピンを引き抜き、少なくとも複数の偏平断熱ファイバ層を有する積層体全周囲をフィルムで密封パックした断熱層積層ブロックパックを使用し、前記スタッドを前記基端側の断熱層積層ブロックパックの基底面に露出するインサートのテーパ付きガイドの拡開端部に整列させ、前記断熱層積層ブロックパックのフィルムを穿刺して前記断熱層積層ブロックパックに刺入させ、前記断熱層積層ブロックパックの構内空間側の表面から露出した前記スタッドの先端にリテーナワッシャを取り付けて前記断熱層積層ブロックパックを内壁または炉壁に固定し、
前記仕上げライニング工程は、内壁または炉壁に沿って敷設した前記断熱層積層ブロックの表層に対して、仕上げ断熱材を密着配置する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セラミックファイバ製のブランケットを所定寸法に裁断した偏平断熱ファイバ層を、あたかもCDケースを縦置きに水平方向に並置させるようにではなく、偏平断熱ファイバ層の主平面を水平にして所定高さの積層体とし、ガイドピンの鋭利な末端で主平面の中心部を突き刺して偏平断熱ファイバ層の積層体にガイドピンを貫通させ、貫通させるガイドピンの基端側にテーパ付きガイドを有するインサートを前記基端側の偏平断熱ファイバ層内に埋設した後、ガイドピンを引き抜き、少なくとも複数の偏平断熱ファイバ層を有する積層体全周囲をフィルムで密封パックした断熱層積層ブロックパックを使用したため、従来の断熱ファイバブロックのような串刺しピンまたは金具をブロック内に内蔵させる必要がなく、基端側の偏平断熱ファイバ層内にテーパ付きガイドを有するインサートが存在するだけであるため、構成が簡単かつ安価に製造できる。
【0011】
さらに、偏平断熱ファイバ層を有する積層体全周囲をフィルムで密封パックし、また密封パックはブロック設置後も取り外す必要がないため、ファイバ粉塵が飛散するのを確実に防止することができ、作業員の健康を害することがない。
【0012】
密封パックのフィルムは、構内空間を画定する構造物が高温炉の場合、炉の稼働開始時に自動的に焼失するのにまかせるという着想および運用形態であるため、ライニング作業を迅速化および簡素化することができる。
【0013】
また、スタッドに対する断熱層積層ブロックパックの固定は、スタッドを断熱層積層ブロックパックの基端側平面(底面)に露出するインサートのテーパ付きガイドの拡開端部に整列させ、断熱層積層ブロックパックのフィルムを穿刺して断熱層積層ブロックパックを内壁または炉壁に向かって押し込むとき、偏平断熱ファイバ層を積層させる際に予め形成されたガイドピンの差し込み孔の痕跡が存在しているため、難なく押し込むことができ、作業員の負担を大幅に軽減することができる。
【0014】
リテーナワッシャを固定した後には、スタッド自体が積層体の層境界面に直交する方向にすべての偏平断熱ファイバ層を串刺しにするため、断熱層積層ブロックパックがスタッドから脱落する恐れは従来よりも少なくなる。
【0015】
さらに、偏平断熱ファイバ層を積層させる際に予め形成されたガイドピンの差し込み孔の痕跡が存在しているため、スタッドの先端はそれほど鋭利にしておかなくてもよく、したがって、作業員が作業中に負傷する危険性が少なくなる。
【0016】
本発明断熱ライニング方法の実施形態においては、前記仕上げ断熱材として、少なくとも一層の断熱ファイバブランケットを使用し、前記断熱ファイバブランケットおよび断熱ファイバブランケットに隣接する前記断熱層積層ブロックパック内の構内空間側における前記偏平ファイバ層に螺入する先端が鋭利な耐熱性のスパイラルピン手段によって、前記少なくとも一層の断熱ファイバブランケットを前記初期ライニング層に固定する。この実施形態においては、構内空間を画定する構造物を高温炉とする場合、この高温炉は燃焼炉として使用できる。
【0017】
本発明断熱ライニング方法の好適な他の実施形態において、前記仕上げ断熱材として、不定形耐火物材料(キャスタブル)で予め成形した定形耐火物ブロックを使用して、先行のライニング工程でのライニング表層に沿って前記構内の底壁から天井に向かって積み上げてライニングし、前記不定形耐火物ブロックは、前記断熱ファイバブランケットに隣接する側の端縁近傍に少なくとも2箇所に崩落防止用補強のための金属棒を挿入する孔を成形するまたは成形後にドリル穿孔して設けたものとし、前記定形耐火物ブロックを積み上げるにしたがって、最下層の定形耐火物ブロックに配置する金属棒を順次上方に継ぎ足して延長し、また前記金属棒を挿入する孔に不定形耐火物材料(キャスタブル)を充填養生して前記定形耐火物ブロックを敷設する。
この実施形態においては、構内空間を画定する構造物を高温炉とする場合、この高温炉は燃焼炉として利用できる。
【0018】
本発明断熱ライニング方法の別の実施形態において、前記仕上げ断熱材層として、少なくとも一層の断熱ファイバブランケット、および前記断熱ファイバブランケットと前記断熱層積層ブロックパックとの間に配置する、不定形耐火物材料単独または他の耐火物材料との混合物で予め成形した定形耐火物ボードを使用し、前記スパイラルピン手段は、スパイラルピン本体と、前記スパイラルピン本体に溶接する耐熱性の延長ロッドとを有するスパイラルアンカーとし、前記定形耐火物ボードは、前記スタッドを収容する孔、および前記スパイラルアンカーを収容する孔を所定パターンで複数個予め形成した構成とし、前記スパイラルピン本体に溶接する前記延長ロッドは、電気炉の加熱素子を引っ掛けて支持することができる碍子リテーナを装着可能とし、前記スパイラルアンカーを断熱ファイバブランケットおよび定形耐火物ボードを経て前記断熱層積層ブロックパック内の偏平断熱ファイバ層に螺入させて仕上げライニング層を初期ライニング層に固定する。
【0019】
この実施形態においては、構内空間を画定する構造物を高温炉とする場合、この高温炉は燃焼炉としてのみならず、所定パターンの複数の位置に設けるスパイラルアンカーの延長ロッドに碍子リテーナにより仕上げライニング層を初期ライニング層に固定する場合には、碍子リテーナに加熱素子を掛け渡すことによって電気炉としても使用できる。スバイラルアンカーは、交換が容易であるため、炉内側ブランケット、碍子、発熱体等の交換および補修を容易に行うことができる。
【0020】
本発明断熱ライニング方法に使用する、断熱層積層ブロックパックは、
少なくとも偏平断熱ファイバ層を順次水平にして所定高さの積層体とし、ガイドピンの鋭利な末端で偏平断熱ファイバ層の平面中心に突き刺して積層体にガイドピンを貫通させ、貫通させるガイドピンの基端側にテーパ付きガイドを有するインサートを前記基端側の偏平断熱ファイバ層内に埋設した後、ガイドピンを引き抜き、少なくとも複数の偏平断熱ファイバ層を積層させ、積層体周囲全体をフィルムで密封パックした構成とした、ことを特徴とする。
【0021】
断熱層積層ブロックパックの好適な実施形態においては、前記密封パック内に、不定形耐火物材料単独または他の耐火物材料との混合物で予め成形した定形耐火物プレート層であって、中心に前記スタッドを収容する孔を予め形成した該定形耐火物プレート層を、底部(内壁または炉壁側)層または中間の層に配置する。またこの定形耐火物プレート層に形成する孔は、ライニングする内壁または炉壁面に向かって拡開するテーパを形成しておくと好適である。
【0022】
断熱層積層ブロックパックの他の好適な実施形態においては、不定形耐火物材料単独または他の耐火物材料との混合物で予め成形した定形耐火物プレート層であって、中心に前記スタッドを収容する孔および中心以外の所定位置にスパイラルピン手段を収容する孔を所定パターンで複数個予め形成した該定形耐火物プレート層を頂部層に配置する。
【0023】
本発明断熱ライニング方法に使用する断熱ファイバブランケットの好適な実施形態においては、断熱ファイバブランケットの周囲全体をフィルムで密封パックした構成とする。この構成によれば、ブランケットからファイバ粉塵が飛散するのを確実に防止することができ、作業員の健康を害することを一層防止することができる。
【0024】
つぎに、図面につき本発明の好適な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明断熱ライニング方法に使用する断熱層積層ブロックパックを示し、(a)〜(d)はこのパックを形成する過程を示し、(e)〜(g)それぞれ(d)から反転した状態の斜視図、側面図、および底面図である。
【図2】本発明断熱ライニング方法における初期ライニング工程を示し、(a)は、炉の側壁に植設したスタッドに断熱層積層ブロックパックを差し込み、リテーナワッシャをリテーナピンにより固定した状態を示す一部断面とする側面図、(b)はスタッドの先端部およびリテーナピンを示す拡大した線図的説明図である。
【図3】本発明断熱ライニング方法の実施形態における仕上げライニング工程を示し、(a)は、初期ライニング層にスパイラルピンで断熱ファイバブランケットを固定した状態を示す一部断面とする側面図、(b)はスパイラルピンの拡大側面図、(c)は、スパイラルピンの拡大端面図である。
【図4】本発明断熱ライニング方法の他の実施形態における仕上げライニング工程を示し、(a)は、断熱ファイバブランケットと断熱層積層ブロックパックとの間に、不定形耐火物材料単独または他の耐火物材料との混合物で予め成形した定形耐火物ボードを介在させて、初期ライニング層に対してスパイラルピン本体に延長ロッドを溶接したスパイラルアンカーにより断熱ファイバブランケットを固定した状態を示す一部断面とする側面図、(b)はスパイラルピン本体に延長ロッドを溶接したスパイラルアンカーの部分側面図である。
【図5】本発明断熱ライニング方法のさらに他の実施形態における仕上げライニング工程を示し、(a)は、初期ライニング層に断熱ファイバブランケットを隣接させ、さらに不定形耐火物材料で予め成形した定形耐火物ブロックを、前記炉の底壁から天井に向かって積み上げて側壁における前記断熱ファイバブランケットの断熱層に沿ってライニングする状況を示す一部斜視図とした一部断面とする線図的側面図、(b)は、定形耐火物ブロックの平面図で、(c)は定形耐火物ブロックの2箇所の孔に挿入する補強用の金属棒の側面図、(d)は金属棒の斜視図である。
【図6】本発明断熱ライニング方法のさらに別の実施形態における仕上げライニング工程を示し、不定形耐火物材料を予め成形した定形耐火物ブロックを、初期ライニングに直接隣接させ、前記炉の底壁から天井に向かって積み上げてライニングする状況を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、構内空間を画定する構造物を高温炉とし、本発明による断熱ライニング方法の初期ライニング工程で使用する断熱層積層ブロックパック1を示す。この断熱層積層ブロックパック1は、セラミックファイバ製のブランケットを所定寸法に裁断した偏平断熱ファイバ層2を順次水平にして所定高さの積層体とし、ガイドピンG(図1(a)参照)の鋭利な末端で偏平断熱ファイバ層2の平面中心に突き刺して積層体にガイドピンを貫通させ、貫通させるガイドピンの基端側にテーパ付きガイドを有するインサート3を基端側の偏平断熱ファイバ層内に埋設した後(図1(b)参照)、ガイドピンGを引き抜き(図1(c)参照)、少なくとも複数の偏平断熱ファイバ層を積層させ、積層体周囲全体をフィルムFで密封パックする(図1(d)参照)。図1(e)〜(g)は、それぞれ図1(d)から反転させた状態にした斜視図、断面図および底面図を示す。
【0027】
断熱層積層ブロックパック1における各偏平断熱ファイバ層2には、ガイドピンが貫通した孔の痕跡4が形成されている。フィルムは、炉の稼働開始の際に燃焼して消失するが、有毒ガスを放出しないフィルムを使用する。インサート3は、有毒ガスを発生しないプラスチック、紙、木材または金属製とすることができる。
【0028】
好適な実施形態においては、図示しないが、密封パックした断熱層積層ブロックパック1内に不定形耐火物材料(キャスタブル)単独または他の耐火物材料との混合物で予め成形した定形耐火物プレート層を、底部(内壁または炉壁側)層または中間の層に配置する。この定形耐火物プレート層の中心に、内壁または炉壁に植設するスタッドを収容する孔を予め形成し、好適には、内壁または炉壁面に向かって拡開するテーパを形成しておく。
【0029】
また、他の好適な実施形態においては、密封パックした断熱層積層ブロックパック1内に不定形耐火物材料単独または他の耐火物材料との混合物で予め成形した定形耐火物プレート層を頂部(構内空間側)層に配置し、定形耐火物プレート層には、内壁または炉壁に植設するスタッドを収容する中心孔を予め形成し、また中心以外の所定位置にスパイラルピン手段を収容する孔を所定パターンで複数個予め形成する。
【0030】
使用する断熱層積層ブロックパック1は、以下の寸法に限定しないが、高さ(H)が例えば100mm〜300mmの範囲で各種用意しておく。縦(L)×横(W)は、例えば300×300mmとする。偏平断熱ファイバ層2の厚さ(t)は、例えば25mm〜50mmとする。
【0031】
図2に、本発明による方法の初期ライニング工程が完了した状態を示す。この初期ライニング工程は、内壁または炉壁5Aに植設したスタッド6に、断熱層積層ブロックパック1の底面中心に位置するインサート3の拡開テーパ付き開口端部を整列させて、スタッド6に沿って断熱層積層ブロックパック1を押し込む。各偏平断熱ファイバ層2には、ガイドピンが貫通した孔の痕跡4が形成されているため、この押し込みは難なく行うことができる。
【0032】
スタッド6の先端にリテーナワッシャ7を、断熱ファイバ層の弾力に抗して押し込んで連結する。リテーナワッシャ7をスタッド6の先端に固定する方法は、任意の方法とすることができ、例えば、スタッド6の先端に設けた横孔8に図2(b)に示すような形状のリテーナピン9、または孔に挿入した後には抜けないようになる任意な他の止めピンを使用する。リテーナピン9を横孔8に差し込んで手を離すと断熱ファイバ層の弾力により、リテーナワッシャ7は、押し戻され、リテーナピン9に押し付けられて固定され、これにより、断熱層積層ブロックパック1を内壁または炉壁5に固定することができ、初期ライニング工程が完了する。
【0033】
以下に、構内空間を画定する構造物を高温炉とし、本発明による断熱ライニング方法における仕上げライニング工程の幾つかの実施形態を説明する。しかし、本発明断熱ライニング方法は高温炉のみならず、普通の建築物の内壁にも適用することができる。
【実施例1】
【0034】
図3に、仕上げ断熱材として、少なくとも一層の断熱ファイバブランケット10を使用する仕上げライニング工程の実施形態を示す。この実施形態においては、断熱ファイバブランケット10および断熱ファイバブランケットに隣接する断熱層積層ブロックパック1内の炉内空間側における偏平ファイバ層2に螺入する先端が鋭利な耐熱性のスパイラルピン手段、この実施形態においてはスパイラルピン11(図3(b),(c)参照)によって、少なくとも一層の断熱ファイバブランケット10を、断熱層積層ブロックパック1で形成される初期ライニング層に固定する。スパイラルピン11の螺入および取り外しは、電動回転ツールを使用することにより迅速に行うことができる。
【0035】
さらに、断熱ファイバブランケット10自体もフィルムパックしておき、両面テープで初期ライニング層に仮止めすることによって、ライニング作業を一層迅速に行うことができる。
【0036】
この実施形態によれば、構内空間を画定する構造物を高温炉とする場合、この高温炉は、各種燃焼炉として利用できる。仕上げライニング層の断熱ファイバブランケット10が消耗したときには、新品のものに容易に交換できる。また補修の場合、炉内側断熱ファイバブランケットの上にさらに一層の断熱ファイバブランケットを付加的し、スパイラルピンによって既存の層に簡単に固定することができる。
【実施例2】
【0037】
図4に、仕上げ断熱材層として、少なくとも一層の断熱ファイバブランケット10、および断熱ファイバブランケット10と断熱層積層ブロックパック1との間に配置する定形耐火物ボード12を使用する実施形態を示す。
【0038】
定形耐火物ボード12は、不定形耐火物材料(キャスタブル)のみで予め成形した、または不定形耐火物材料とセラミックファイバの混合物を予め成形した、またはセラミックファイバブランケットに不定形耐火物材料を含浸させて成形した定形耐火物ボードであり、スタッド6を収容する孔12A、およびスパイラルピン手段としてのスパイラルアンカー13を収容する孔12Bを所定パターンで複数個予め成形するまたは成形後にドリルで穿孔した構成とする。この定形耐火物ボード12を、初期ライニング層を形成する断熱層積層ブロックパック1に当接し、上述したように、例えば、ンカースタッド6にリテーナワッシャ7およびリテーナピン9によって定形耐火物ボード12を初期ライニング層に固定する。
【0039】
この定形耐火物ボード12よりなる一次仕上げライニング層に対し、少なくとも一層の断熱ファイバブランケット10を押し当てスパイラルアンカー13によって初期ライニング層を形成する断熱層積層ブロックパック1に固定する。
この場合も、好適には、断熱層積層ブロックパック1よりなる初期ライニング層に対して、定形耐火物ボード12を両面テープで仮止めし、また定形耐火物ボード12よりなる一次仕上げライニング層に対して断熱ファイバブランケット10を両面テープで仮止めしておくと、作業が容易になる。
【0040】
この実施形態において、スパイラルピン手段であるスパイラルアンカー13は、図4の(b)に示すように、スパイラルピン本体14と、スパイラルピン本体14に溶接する耐熱性金属の延長ロッド15とを有する構成とする。延長ロッド15のスパイラルピン本体14を溶接する側の端部は平坦端面を有し、反対側の端部は尖端を有する構成とする。延長ロッド15を金属ではなく、セラミックロッドとする場合、図示しないが、ロッドの所定位置に設けた横孔に金属ピンを固定し、この金属ピンにスパイラルピン本体14を溶接する。
【0041】
スパイラルアンカー13を断熱ファイバブランケット10に螺入させ、定形耐火物ボード12を通過して断熱層積層ブロックパック1内に螺入し、延長ロッド15の平坦端面15Aが断熱層積層ブロックパック1の表面に突き当たるとき抵抗を感じ、このときねじ込みを完了することができる。
【0042】
スパイラルピン本体14に溶接する延長ロッド15には、電気炉の加熱素子を引っ掛けて支持することができる碍子リテーナ16を装着可能とする。この実施形態によれば、構内空間を画定する構造物を高温炉とする場合、この高温炉は電気炉として利用できる。
【実施例3】
【0043】
図5には、図3の実施形態を変更した実施形態を示す。この実施形態においては、少なくとも一層の断熱ファイバブランケット10による一次仕上げライニング層形成工程の後、さらなる仕上げ断熱材として、不定形耐火物材料を予め成形した定形耐火物ブロック17を使用する二次仕上げライニング層形成工程を有する。この実施形態の場合、断熱ファイバブランケット10による一次仕上げライニング層に沿って、構内空間、例えば炉の底壁5Bから天井に向かって積み上げてライニングする。
【0044】
定形耐火物ブロック17は、図5(b)に示すように、断熱ファイバブランケット10に隣接する側の端縁近傍(炉の低温側)に少なくとも2箇所に崩落防止用補強のための耐熱性の金属棒18(図5(c)参照)を挿入する孔19を予め成形した、または成形後にドリル穿孔して設けたものとする。
【0045】
不定形耐火物ブロック17を積み上げるにしたがって、最下層の不定形耐火物ブロックに配置する金属棒18を継手スリーブ20により順次上方に継ぎ足して延長し、また金属棒を挿入する孔に不定形耐火物材料を充填養生して不定形耐火物ブロック17による二次仕上げライニング層を形成する。不定形耐火物材料(キャスタブル)は、単に小さい直径の孔と金属棒との間の隙間に充填するだけであるため、養生硬化は極めて短時間で完了する。
【0046】
金属棒18は、好適には、図5(d)に示すように、側面にスリットを設けた、またはスリットを設けない(図示せず)継手スリーブ20により順次継ぎ足す構成とし、また図5(c)に示すように両側の端部を面取りし、またストッパ用の突起を設けた構成とすると、構成簡単かつ製造安価となる。端部を面取りしまたストッパ用の突起を設けた金属棒18の端部を継手スリーブ20内に圧入することにより、不定形耐火物ブロック17における孔19内で、極めて容易に順次継ぎ足していくことができる。
この実施形態は、構内空間を画定する構造物を高温炉とする場合、この高温炉を各種燃焼炉として利用できる。
【実施例4】
【0047】
図6に、図5の実施形態を変更した実施形態を示す。この実施形態においては、断熱層積層ブロックパック1で形成した初期ライニング層に直接隣接させて、定形耐火物ブロック17による仕上げライニング層を形成する。この実施形態、炉の底壁5Bに配置する断熱層積層ブロックパック1の底壁5B側の側面に断熱ファイバブランケット21を配置する。この実施形態も、構内空間を画定する構造物を高温炉とする場合、この高温炉を各種燃焼炉として利用できる。図5および図6に示す実施形態のように定形耐火物ブロック17を使用すると、炉内温度は約1500゜Cもの高温にすることができる。定形耐火物ブロックの耐熱温度は、1000°C〜1800゜Cである。
【符号の説明】
【0048】
1 断熱層積層ブロックパック
2 偏平断熱ファイバ層
3 インサート
4 孔の痕跡
5A 炉の側壁
5B 炉の底壁
6 スタッド
7 リテーナワッシャ
8 横孔
9 リテーナピン
10 断熱ファイバブランケット
11 スパイラルピン
12 定形耐火物ボード
13 スパイラルアンカー
14 スパイラルピン本体
15 延長ロッド
16 碍子リテーナ
17 定形耐火物ブロック
18 金属棒
19 孔
20 継手スリーブ
21 断熱ファイバブランケット
F フィルム
G ガイドピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構内空間を画定する構造物の内壁面をライニングするため、内壁面に互いに離間して植設する金属製のスタッドにより、セラミックファイバ製の断熱材層を保持して初期ライニング層を形成する初期ライニング工程と、初期ライニング層の構内空間側の表面に対して、仕上げ断熱材で仕上げライニング層を形成する仕上げライニング工程とを有する断熱ライニング方法において、
前記初期ライニング工程は、少なくとも偏平断熱ファイバ層の主平面を順次水平にして所定高さの積層体とし、ガイドピンの鋭利な末端で偏平断熱ファイバ層の平面中心に突き刺して積層体にガイドピンを貫通させ、貫通させるガイドピンの基端側にテーパ付きガイドを有するインサートを前記基端側の偏平断熱ファイバ層内に埋設した後、ガイドピンを引き抜き、少なくとも複数の偏平断熱ファイバ層を有する積層体全周囲をフィルムで密封パックした断熱層積層ブロックパックを使用し、前記スタッドを前記基端側の断熱層積層ブロックパックの基底面に露出する前記インサートのテーパ付きガイドの拡開端部に整列させ、前記断熱層積層ブロックパックのフィルムを穿刺して前記断熱層積層ブロックパックに刺入させ、前記断熱層積層ブロックパックの構内空間側の表面から露出した前記スタッドの先端にリテーナワッシャを取り付けて前記断熱層積層ブロックパックを内壁面に固定し、
前記仕上げライニング工程は、内壁面に沿って敷設した前記断熱層積層ブロックの表層に対して、仕上げ断熱材を密着配置する
ことを特徴とする断熱ライニング方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記仕上げ断熱材として、少なくとも一層の断熱ファイバブランケットを使用し、前記断熱ファイバブランケットおよび断熱ファイバブランケットに隣接する前記断熱層積層ブロックパック内の構内空間側における前記偏平ファイバ層に螺入する先端が鋭利な耐熱性のスパイラルピン手段によって、前記少なくとも一層の断熱ファイバブランケットを前記初期ライニング層に固定する、断熱ライニング方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、前記仕上げ断熱材として、不定形耐火物材料で予め成形した定形耐火物ブロックを使用して、先行のライニング工程でのライニング表層に沿って前記炉の底壁から天井に向かって積み上げてライニングし、前記定形耐火物ブロックは、前記断熱ファイバブランケットに隣接する側の端縁近傍に少なくとも2箇所に崩落防止用補強のための金属棒を挿入する孔を成形したまたは成形後にドリル穿孔して設けたものとし、前記定形耐火物ブロックを積み上げるにしたがって、最下層の定形耐火物ブロックに配置する金属棒を順次上方に継ぎ足して延長し、また前記金属棒を挿入する孔に不定形耐火物材料を充填養生して前記定形耐火物ブロックを敷設する、断熱ライニング方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の方法において、前記仕上げ断熱材層として、少なくとも一層の断熱ファイバブランケット、および前記断熱ファイバブランケットと前記断熱層積層ブロックパックとの間に配置する、不定形耐火物材料単独または他の耐火物材料との混合物で予め成形した定形耐火物ボードを使用し、前記スパイラルピン手段は、スパイラルピン本体と、前記スパイラルピン本体に溶接する耐熱性の延長ロッドとを有するスパイラルアンカーとし、前記定形耐火物ボードは、前記スタッドを収容する孔、および前記スパイラルアンカーを収容する孔を所定パターンで複数個予め形成した構成とし、前記スパイラルピン本体に溶接する前記延長ロッドは、電気炉の加熱素子を引っ掛けて支持することができる碍子リテーナを装着可能とし、前記スパイラルアンカーを断熱ファイバブランケットおよび定形耐火物ボードを経て前記断熱層積層ブロックパック内の偏平断熱ファイバ層に螺入させて仕上げライニング層を初期ライニング層に固定する、断熱ライニング方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の方法に使用する断熱層積層ブロックパックにおいて、
少なくとも偏平断熱ファイバ層を順次水平にして所定高さの積層体とし、ガイドピンの鋭利な末端で偏平断熱ファイバ層の平面中心に突き刺して積層体にガイドピンを貫通させ、貫通させるガイドピンの基端側にテーパ付きガイドを有するインサートを前記基端側の偏平断熱ファイバ層内に埋設した後、ガイドピンを引き抜き、少なくとも複数の偏平断熱ファイバ層を積層させ、積層体周囲全体をフィルムで密封パックした構成とした、ことを特徴とする断熱層積層ブロックパック。
【請求項6】
請求項5記載の断熱層積層ブロックパックにおいて、不定形耐火物材料単独または他の耐火物材料との混合物で予め成形した定形耐火物プレート層であって、中心に前記スタッドを収容する孔を予め形成した該定形耐火物プレート層を底部層または中間の層に配置した、断熱層積層ブロックパック。
【請求項7】
請求項5記載の断熱層積層ブロックパックにおいて、不定形耐火物材料単独または他の耐火物材料との混合物で予め成形した定形耐火物プレート層であって、中心に前記スタッドを収容する孔および中心以外の所定位置にスパイラルピン手段を収容する孔を所定パターンで複数個予め形成した該定形耐火物プレート層を頂部層に配置した、断熱層積層ブロックパック。
【請求項8】
請求項4記載の断熱ライニング方法に使用するスパイラルピン手段において、スパイラルピン本体と、前記スパイラルピン本体に溶接する耐熱性の延長ロッドとを有するスパイラルアンカーとし、前記延長ロッドのスパイラルピン本体を溶接する側の端部は平坦端面を有し、反対側の端部は尖端を有する構成としたスパイラルピン手段。
【請求項9】
請求項2または4記載の断熱ライニング方法に使用する断熱ファイバブランケットにおいて、断熱ファイバブランケットの周囲全体をフィルムで密封パックした、断熱ファイバブランケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−102978(P2012−102978A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254203(P2010−254203)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(595007655)タキ産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】