説明

断熱壁構造およびこれを用いた断熱壁システム

【課題】建造物における各部の壁に対して、その室内側壁面に積層状に形成して断熱を図る断熱壁構造、並びにこの断熱壁構造を用いて当該建造物を各室毎に断熱する断熱壁システムを提供すること。
【解決手段】施工対象建造物Hにおける施工対象壁Wに対し、その室内側壁面に積層状に形成される断熱壁構造1であって、厚さ方向に比較的嵩を有するように立体網状に成形してなる立体ネット材2と、合成樹脂発泡シート層5を有し、該合成樹脂発泡シート層の一方の面に設けた金属蒸着材層4と、他方の面に設けた不織布材層6とを有する断熱シート材3とを含むものからなり、前記建造物壁面と前記断熱シート材との間に前記立体ネット材を介在して積層状に形成してなり、前記立体ネット材によって通気層を、前記金属蒸着材層によって熱反射層を、前記不織布材層によって調湿層を形成してなることを特徴とする断熱壁構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物における各部の壁(外壁、側壁、間仕切り壁、天井壁、床壁あるいは屋根裏壁など)に対して、その室内側壁面に積層状に形成して断熱を図る断熱壁構造、並びにこの断熱壁構造を用いて当該建造物を各室毎に断熱する断熱壁システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、近年の建造物あるいは建築物などにおいては、暖期あるいは寒期のいずれにおいても快適な生活空間を供するべく、冷暖房システムなどによりプロテクトされている。この冷暖房システムなどの適用にあたっては、そのエネルギー消費量を低減し、省エネルギー化を図るために、当該建造物自体の断熱性能並びに気密性能などが重要視されている。
【0003】
従来、建造物などにおける外壁の断熱工法としては、内断熱工法ならびに外断熱工法とが知られている。ここに、内断熱工法とは、構造躯体の内側に断熱構造部を設ける工法であり、外断熱工法とは、建造物躯体あるいは建築物躯体の外側に断熱構造部を設ける工法である。上記する内断熱工法は、従来最も一般的な断熱工法であり、外断熱に比べて断熱工法のバリエーションが豊富である点、施工工費が安価である点などにおいて有効なものであった。
【0004】
従来の断熱工法としては、施工する壁に対し、隣接する柱や間柱間にグラスウールなどの断熱材を嵌め込んで、その外面側を表装材で表装処理するものであった。この従来の断熱工法は、施工部位に対して、グラスウールなどの断熱材を嵌め込んだ構造のものであり、単に、グラスウールによる断熱を期待するものにすぎず、断熱性能以外の点、すなわち、気密性能、調湿性能、防臭性能、殺菌性能、遮音性能あるいは薄層構造化などについては、何らの考慮もはらわれていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、上記する従来の問題点を解消するものであって、施工が容易であって、断熱性能に加えて、気密性能、調湿性能、防臭性能、殺菌性能、遮音性能あるいは薄層構造化の向上を図った断熱壁構造およびこの断熱壁構造を用いた断熱壁システムを提供することにある。
さらに、この発明は、既設壁に対するリフォーム施工に際しての断熱壁施工に対し、廃棄物を出さず、室内側から容易に施工することができ、薄層構造にすることができるなどの点において、特に有効な断熱壁構造およびこの断熱壁構造を用いた断熱壁システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記する目的を達成するにあたって、具体的には、施工対象建造物Hにおける施工対象壁Wに対し、その室内側の壁面に積層状に形成される断熱壁構造であって、
厚さ方向に比較的嵩を有するように立体網状に成形してなる立体ネット材と、
合成樹脂発泡シート層を有し、該合成樹脂発泡シート層の一方の面に設けた金属蒸着材層と、他方の面に設けた不織布材層とを有する断熱シート材とを含むものからなり、
前記建造物壁面と前記断熱シート材との間に前記立体ネット材を介在して積層状に形成してなり、
前記立体ネット材によって通気層を、前記金属蒸着材層によって熱反射層を、前記不織布材層によって調湿層を形成してなることを特徴とする断熱壁構造を構成するものである。
【0007】
さらに、この発明において、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の断熱壁構造であって、断熱シート材における不織布材に対して、炭化材、ゼオライトなどの多孔材層および/または遠赤外線を吸収、蓄熱するための石材層を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
さらに、この発明において、請求項3に記載の発明は、施工対象建造物Hにおける施工対象壁Wに対し、その室内側壁面に積層状に形成される断熱壁構造であって、
厚さ方向に比較的嵩を有するように立体網状に成形してなる第1および第2の立体ネット材と、
合成樹脂発泡シート層を有し、該合成樹脂発泡シート層の一方の面に設けた金属蒸着材層と、他方の面に設けた不織布材層とを有する断熱シート材と、
補強ボード材およびクロス材とを含むものからなり、
前記建造物壁面と前記断熱シート材との間に前記第1の立体ネット材を介在し、前記断熱シート材と前記補強ボード材との間に前記第2の立体ネット材を介在して積層状に形成してなり、
前記第1および第2の立体ネット材によって通気層を、金属蒸着材層によって熱反射層を、不織布材層によって調湿層を形成してなることを特徴とする断熱壁構造を構成するものである。
【0009】
さらに、この発明において、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の断熱壁構造であって、断熱シート材における不織布材に対して、炭化材、ゼオライトなどの多孔材層および/または遠赤外線を吸収、蓄熱するための石材層を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
さらに、この発明において、請求項5に記載の発明は、外側壁、間仕切り壁、天井壁、床壁、屋根裏壁、床裏壁などを含む施工対象建造物Hの施工対象壁Wに対し、各室毎の室内側壁面を断熱壁構造により形成してなり、
前記断熱壁構造が、厚さ方向に比較的嵩を有するように立体網状に成形してなる少なくとも一つの立体ネット材と、
合成樹脂発泡シート層を有し、該合成樹脂発泡シート層の一方の面に設けた金属蒸着材層と、他方の面に設けた不織布材層とを有する断熱シート材と、
補強ボード材およびクロス材とを含むものからなり、
前記建造物壁面と前記断熱シート材との間に前記立体ネット材を介在して積層状に形成してなり、
前記立体ネット材によって通気層を、前記金属蒸着材層によって熱反射層を、前記不織布材層によって調湿層を形成してなることを特徴とする断熱壁構造を用いた断熱壁システムを構成するものである。
【0011】
さらに、この発明において、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の断熱壁システムであって、前記立体ネット材によって形成される通気層内に、強制的に空気を循環流通させるための空気循環流通手段を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、この発明において、請求項7に記載の発明は、請求項5あるいは請求項6に記載の断熱壁システムであって、各室における窓などのガラスに対して遮熱フィルムを貼り合わせてなることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、この発明において、請求項8に記載の発明は、請求項5〜請求項7のいずれかに記載の断熱壁システムであって、各室間を連通するべく連通換気手段を設け、各室間を等圧に維持するようになしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
以上の構成になるこの発明の断熱壁構造およびこれを用いた断熱壁システムでは、厚さ方向に比較的嵩を有するように立体網状に成形してなる立体ネット材と、合成樹脂発泡シート層の一方の面に金属蒸着材層を設け、他方の面に不織布材層を設けた断熱シート材とにより、断熱シート材における金属蒸着材層を建造物壁面側に向けて、該建造物壁面と前記断熱シート材との間に前記立体ネット材を介在して積層状に形成してなり、前記立体ネット材によって通気層を、前記金属蒸着材層によって熱反射層を、前記不織布材層によって調湿層を形成してなるものであり、高い断熱性並びに気密性を有し、立体網状に成形してなる立体ネット材を介在することにより、空気層による断熱性を高めるとともに、壁面に沿った通気路を確保し、遮音性の向上をも図り得るものであり、調湿層による調湿性能にも優れた断熱壁構造を供する点において極めて有効に作用するものである。
さらに、この発明になる断熱壁構造によれば、既設壁に対するリフォーム施工に際しての断熱壁施工に対し、廃棄物を出さず、室内側から容易に施工することができ、かつ、薄層構造化することができる点、並びに、各構成部材についても、容易に入手することができ、施工手順が省力化でき、施工工期の短縮化が図れるなどの点においても極めて有効に作用するものといえる。
【0015】
さらに、この発明において、請求項2に記載の発明によれば、断熱シート材における不織布材に対し、炭化材、ゼオライトなどの多孔材層および/または遠赤外線を吸収、蓄熱するための石材層を設けたことにより、防臭性能、ならびに、殺菌性能の向上を図れるという点においても極めて有効に作用するものといえる。
【0016】
さらに、この発明において、請求項3に記載の発明によれば、断熱シート材における金属蒸着材層を建造物壁面側に向けて、該建造物壁面と前記断熱シート材との間に第1の立体ネット材を介在し、断熱シート材と補強ボード材との間に第2の立体ネット材を介在して積層状に形成し、第1および第2の立体ネット材によって通気層を、金属蒸着材層によって熱反射層を、不織布材層によって調湿層を形成してなるものであり、さらに高い断熱性並びに気密性を有し、立体網状に成形してなる立体ネット材を介在することにより、空気層による断熱性を高めるとともに、壁面に沿った二つの通気路を確保し、遮音性の向上をも図り得るものであり、調湿層による調湿性能にも優れた断熱壁構造を供する点において極めて有効に作用するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明になる断熱壁構造およびこれを用いた断熱壁システムについて、図面に示す具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は、この発明になる断熱壁構造について、その基本的な構成例(第1の実施例)を示す概略的な側断面図である。図2は、この発明になる断熱壁構造について、他の実施例を示すものであって、図2Aは、この発明の第2の実施例(不織布材層に炭化材層を設けた構成例)を示す概略的な側断面図であり、図2Bは、この発明の第3の実施例(立体ネット材を二層設け、不織布材層に炭化材層を設けた構成例)を示す概略的な側断面図である。図3は、この発明になる断熱壁構造を用いた断熱壁システムについて、複数の部屋を持つ一棟の建造物に対して、当該断熱壁構造を適用した一構成例を示す概略的な側断面図である。
【0018】
この発明になる断熱壁構造1は、その基本的な構成において、図1に示す第1の構成例、図2Aに示す第2の構成例、および、図2Bに示す第3の構成例とを含むものからなっている。この発明になる断熱壁構造1は、各図に示すとおり、施工対象壁Wにおける室内側の壁面Wsに形成されるものである。
この発明において施工対象建造物Hとは、一般住宅、一般ビル、マンション、学校、病院、公民館、会社、工場、駅舎など、人が専ら住居し、あるいは不特定多数の人が利用する建物の全てであり、施工対象壁Wとは、例えば、図3に示す一実施例において、外側壁Wa、間仕切り壁Wb、天井壁Wc、床壁Wd、屋根裏壁We、床裏壁Wfなど施工対象建造物Hの全ての壁を総じて称するものである。
【0019】
以下、この発明になる断熱壁構造1について、図1に示す第1の構成例にそって詳細に説明する。この発明になる断熱壁構造1において、その第1の特徴は、上記する施工対象建造物Hにおける施工対象壁Wに対し、その室内側の壁面Wsに当該断熱壁構造1が形成されることである。この発明になる断熱壁構造1において、その第2の特徴は、当該断熱壁構造1が、立体ネット材2と断熱シート材3とを含む複合構造体によって構成されていることである。前記立体ネット材2は、厚さ方向に比較的嵩を有するように立体網状に成形した合成樹脂成形体である。
【0020】
前記立体ネット材2は、より具体的には、太さが、0.5〜1.5mm程度のナイロン、ビニロン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの合成樹脂をランダムな状態で適宜ループ状に構成し、これを平均厚さ寸法=2〜4mm程度になるよう立体網状に成形したものからなっており、通気性、耐圧性、耐久性、耐薬品性に優れた素材であり、当該立体ネット材2を介在させることにより、適度の空気層を形成することができ、特に、通気性能を高める当該空気層の存在により断熱性能並びに通気性能を高め得る点において極めて有効なものである。
【0021】
この立体ネット材2は、タッカーなどの施工上の固着手段により、施工対象壁Wの内面Wsに対して直接張り付けられる。
【0022】
一方、前記断熱シート材3は、合成樹脂発泡シート層5を有し、該合成樹脂発泡シート層5の一方の面に金属蒸着材層4を積層状に備え、その他方の面に不織布材層6を積層状に備えたものからなっている。前記合成樹脂発泡シート層5は、例えば、ポリエチレンあるいはこれに類する合成樹脂であり、金属蒸着材層4は、例えば、アルミニウムなどである。
【0023】
この断熱シート材3は、上記する積層構造のものとして構成されており、前記合成樹脂発泡シート層5は、断熱層として機能するものであり、前記金属蒸着材層4は、反射層として機能するものであり、前記不織布材層6は、調湿層として機能する。
【0024】
前記断熱シート材3は、施工対象壁Wに対して、後述する温熱試験のためのサンプルJ1に示すように、その金属蒸着材層4を室外側に向けて施工する構成のものであってもよいし、あるいは、サンプルK1に示すように、その金属蒸着材層4を室内側に向けて施工する構成のものであってもよい。
【0025】
この断熱シート材3は、施工対象壁Wに沿って張られた前記立体ネット2の上に、金属蒸着材層4をあてがうようにして(サンプルJ1)、あるいは、前記立体ネット2の上に、不織布材層6をあてがうようにして(サンプルK1)、接着テープなどの施工上の固着手段により、接着される。
【0026】
この発明の基本構成によれば、上記する施工手順により、施工対象壁Wに施された立体ネット材2、断熱シート材3の上に、ビス、ネジ、釘などの施工手段によりプラスターボードなどからなる補強ボード材7が取り付けられ、さらに、その上からクロス8が張り付けられるようになっている。
【0027】
次に、この発明になる断熱壁構造1について、その第2の構成例を、図2Aに基づいて詳細に説明する。
この第2の構成例は、前記断熱シート材3における不織布材層6に対して、炭化材、ゼオライトなどの多孔材層および/または遠赤外線を吸収、蓄熱するための石材層9を設けたものである。この層9は、例えば、粉体化した炭を適宜バインダー樹脂を用いて流体化し、これを不織布材層6上に、塗布手段あるいは印刷手段、場合によってはその他の浸透手段などにより、層状に形成したものである。
【0028】
さらに、この発明になる断熱壁構造1について、その第3の構成例を、図2Bに基づいて詳細に説明する。
この第3の構成例は、第1の立体ネット材2Aと、第2の立体ネット材2Bを含むものからなることを特徴とし、前記第1の立体ネット材2Aを、施工対象壁Wの壁面Wsと断熱シート材3との間に介在配設し、前記第2の立体ネット材2Bを、断熱シート材3と補強ボード材7との間に介在配設して、積層状に形成したものである。
【0029】
次いで、この発明になる断熱壁構造を用いた断熱壁システム11について、図3に基づいて詳細に説明する。
図3は、複数の部屋をもつ一棟の二階建て建造物Hに対して、当該断熱壁構造1を適用した構成例を示すものである。
この発明では、施工対象建造物Hにおける施工対象壁W、すなわち、外側壁Wa、間仕切り壁Wb、天井壁Wc、床壁Wd、屋根裏壁We、床裏壁Wfなどに対して、各室毎の室内側壁面に、それぞれ当該断熱壁構造1が施工される。
【0030】
さらに、各室の断熱効果を高めるため、この発明では、各室における窓などのガラスに対して遮熱フィルム12を設ける。
【0031】
さらに、この発明では、各室間を連通する連通換気手段13を設け、各室間を等圧に維持するように構成されている。さらに、この発明においても、図3に示す複数の部屋をもつ一棟の二階建て建造物Hに対し、その少なくとも一つの部屋には、火災報知器14が設けられる。
【0032】
さらに、この発明では、前記立体ネット材2によって形成される通気層内に、強制的に空気を循環流通させるための空気循環流通手段15(図1参照)を設けることが有効である。前記空気循環流通手段15は、例えば、適当な規模の小型ファーン装置によって簡単に組み込むことができる。
【0033】
この空気循環流通手段15は、例えば、建造物Hにおける壁Wの下方に、外気あるいは内気に連通する換気孔を設けておき、壁Wの上方に、換気ファーンを設けておくことによりネット材2によって形成される通気層内に空気を移動させることができる。この場合、前記断熱シート材3の不織布層6に、例えば、備長炭などの層9を設けておき、モデルサンプルK1のように、該層9をネット材2側に向けて組み込むことにより、空気の移動によって、備長炭などの成分を通気できる。
【0034】
図4は、この断熱壁構造1を施工した建造物Hを水平方向に断面にした図であり、ネット材2および断熱シート材3の継ぎ合わせ構造の一施工例を示す概略的な断面図である。
【0035】
この発明では、当該断熱壁構造1を施工した建造物Hの壁Wに施工する場合、図4に示すようにして、前記ネット材2および断熱シート材3をそれぞれ継ぎ合わせ状に施工する。この場合、継ぎ合わせ部分における室内側の面を平坦にすることができる。
【0036】
次いで、この発明になる断熱壁構造1について、図5〜図9に基づいて温熱試験を行った。その結果を比較例とともに説明する。
この温熱試験のため、この発明になる断熱壁構造1を適用した第1のモデルサンプルJ1(図5A1参照)、第2のモデルサンプルK1(図5A2参照)および比較例として上記断熱壁構造1を全く施していないモデルサンプルC1(図5B参照)を各図に示すように作製した。
【0037】
前記第1のモデルサンプルJ1は、一辺の長さ寸法が、約300mmの立方体状の箱体(蓋体により箱開口を封閉することによって、閉めきられた内室を形成する箱体)であり、該箱体は、最外層が厚さ寸法12mmの石膏ボードにより形成され、その内側に立体ネット材2が設けられ、さらにその上に断熱シート材3が、金属蒸着材層4を外向きにして設けた構成のものである。
【0038】
前記第2のモデルサンプルK1は、一辺の長さ寸法が、約300mmの立方体状の箱体(蓋体により箱開口を封閉することによって、閉めきられた内室を形成する箱体)であり、該箱体は、最外層が厚さ寸法12mmの石膏ボードにより形成され、その内側に立体ネット材2が設けられ、さらにその上に断熱シート材3が、金属蒸着材層4を内向きにして設けた構成のものである。
【0039】
前記モデルサンプルC1は、一辺の長さ寸法が、約300mmの立方体状の箱体(蓋体により箱開口を封閉することによって、閉めきられた内室を形成する箱体)であり、該箱体は、最外層が厚さ寸法12mmの石膏ボードにより形成され、内部には、何らの構造体も施されていない構成のものである。
以下、これらを、単に、サンプルJ1、サンプルK1およびサンプルC1という。
【0040】
まず、冬期を想定した温熱試験を行う。
設定温度約2℃お冷蔵庫内に、上記サンプルを入れて、当該サンプルの箱体内に、100W電球をサーモスタットで点滅させ、箱体内を約20℃前後に維持する。そのときの箱体内温度変化と冷蔵庫内温度変化および電球への通電状況を確認する。
この場合、消費エネルギー(KJ)は、
消費エネルギー(KJ)=100W×(1時間当たりの通電時間/60)×3.6
である。
【0041】
図6において、箱内に何らの構造体をも施していないサンプルC1では、熱の逃げが早く、断熱効果が低いことが判明し、この発明になる断熱壁構造1を適用したサンプルJ1およびサンプルK1では、熱の逃げが少なく断熱効果が高いことが判明した。
【0042】
図7は、サンプルである箱体を冷蔵庫(設定温度約2℃)内に入れて、当該箱体内の温度を20℃に維持(100W電球の点滅で20℃を維持)させる電力量のグラフであり、5時間経過後において、サンプルJ1およびサンプルK1の電力量は、サンプルC1の電力量の約半分であった。
【0043】
次に、夏期を想定した温熱試験を行う。
各サンプル箱体内に氷および温度センサーを入れ、これを50℃前後に温度設定した乾燥炉内に入れる。5時間経過後、残った氷の量を比較した(サンプル箱体内および乾燥炉内の温度変化も記録する)。
この場合、消費エネルギー(KJ)は、
消費エネルギー(KJ)=減少した氷の重量(g)×0.33
である。
【0044】
図8において、サンプル箱体内に何らの構造体を施していないサンプルC1では、5時間経過後、約37℃であったのに対し、この発明になる断熱壁構造1を適用したサンプルK1では、約27℃であり、サンプルJ1では、約26℃であった。
【0045】
図9は、サンプルである箱体を乾燥炉(50℃に温度設定)に入れて、箱体内に入れた氷(1000g)の溶ける量と時間の関係を示すグラフであり、5時間経過後において、サンプルC1の氷溶け量は、約900gであるのに対し、サンプルJ1およびサンプルK1の氷溶け量は、約600gであり、サンプルJ1およびサンプルK1のものが、サンプルC1のものに比べて断熱性が顕著に高いことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、この発明になる断熱壁構造について、その基本的な構成例(第1の実施例)を示す概略的な側断面図である。
【図2】図2は、この発明になる断熱壁構造について、他の実施例を示すものであって、図2Aは、この発明の第2の実施例(不織布材層に炭化材層を設けた構成例)を示す概略的な側断面図であり、図2Bは、この発明の第3の実施例(立体ネット材を二層設け、不織布材層に炭化材層を設けた構成例)を示す概略的な側断面図である。
【図3】図3は、この発明になる断熱壁構造を用いた断熱壁システムについて、複数の部屋を持つ一棟の建造物に対して、当該断熱壁構造を適用した一構成例を示す概略的な側断面図である。
【図4】図4は、この断熱壁構造1を施工した建造物Hを水平方向に断面にした図であり、ネット材2および断熱シート材3の継ぎ合わせ構造の一施工例を示す概略的な断面図である。
【図5】図5は、温熱試験のためのモデルサンプルを示すものであって、図5A1は、この発明になる断熱壁構造1を適用した第1のモデルサンプルJ1を示す概略的な断面図、図5A2は、この発明になる断熱壁構造1を適用した第2のモデルサンプルK1を示す概略的な断面図、図5Bは、比較例として上記断熱壁構造1を全く施していないモデルサンプルC1を示す概略的な断面図である。
【図6】図6は、冬期を想定した温熱試験であり、各モデルサンプルについて、サンプル箱体内の温度変化と、冷蔵庫内の温度変化を示すグラフである。
【図7】図7は、サンプルである箱体を冷蔵庫(設定温度約2℃)内に入れて、当該箱体内の温度を20℃に維持(100W電球の点滅で20℃を維持)させる電力量のグラフである。
【図8】図8は、夏期を想定した温熱試験であり、各モデルサンプル箱体内の温度変化と、乾燥炉内の温度変化を示すグラフである。
【図9】図9は、サンプルである箱体を乾燥炉(50℃に温度設定)に入れて、箱体内に入れた氷(1000g)の溶ける量と時間の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
H 施工対象建造物
W 施工対象壁
Ws 施工壁面
Wa 外側壁
Wb 間仕切り壁
Wc 天井壁
Wd 床壁
We 屋根裏壁
Wf 床裏壁
1 断熱壁構造
2 立体ネット材
2A 第1の立体ネット材
2B 第2の立体ネット材
3 断熱シート材
4 金属蒸着材層
5 合成樹脂発泡材層
6 不織布材層
7 補強ボード材
8 クロス
9 炭化材層
11 断熱壁システム
12 遮熱フィルム
13 連通換気手段
14 火災報知手段
15 空気循環流通手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象建造物Hにおける施工対象壁Wに対し、その室内側壁面に積層状に形成される断熱壁構造であって、
厚さ方向に比較的嵩を有するように立体網状に成形してなる立体ネット材と、
合成樹脂発泡シート層を有し、該合成樹脂発泡シート層の一方の面に設けた金属蒸着材層と、他方の面に設けた不織布材層とを有する断熱シート材とを含むものからなり、
前記建造物壁面と前記断熱シート材との間に前記立体ネット材を介在して積層状に形成してなり、
前記立体ネット材によって通気層を、前記金属蒸着材層によって熱反射層を、前記不織布材層によって調湿層を形成してなることを特徴とする断熱壁構造。
【請求項2】
前記断熱シート材における不織布材に対して、炭化材、ゼオライトなどの多孔材層および/または遠赤外線を吸収、蓄熱するための石材層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の断熱壁構造。
【請求項3】
施工対象建造物Hにおける施工対象壁Wに対し、その室内側壁面に積層状に形成される断熱壁構造であって、
厚さ方向に比較的嵩を有するように立体網状に成形してなる第1および第2の立体ネット材と、
合成樹脂発泡シート層を有し、該合成樹脂発泡シート層の一方の面に設けた金属蒸着材層と、他方の面に設けた不織布材層とを有する断熱シート材と、
補強ボード材およびクロス材とを含むものからなり、
前記建造物壁面と前記断熱シート材との間に前記第1の立体ネット材を介在し、前記断熱シート材と前記補強ボード材との間に前記第2の立体ネット材を介在して積層状に形成してなり、
前記第1および第2の立体ネット材によって通気層を、金属蒸着材層によって熱反射層を、不織布材層によって調湿層を形成してなることを特徴とする断熱壁構造。
【請求項4】
前記断熱シート材における不織布材に対して、炭化材、ゼオライトなどの多孔材層および/または遠赤外線を吸収、蓄熱するための石材層を設けたことを特徴とする請求項3に記載の断熱壁構造。
【請求項5】
外側壁、間仕切り壁、天井壁、床壁、屋根裏壁、床裏壁などを含む施工対象建造物Hの施工対象壁Wに対し、各室毎の室内側壁面を断熱壁構造により形成してなり、
前記断熱壁構造が、厚さ方向に比較的嵩を有するように立体網状に成形してなる少なくとも一つの立体ネット材と、
合成樹脂発泡シート層を有し、該合成樹脂発泡シート層の一方の面に設けた金属蒸着材層と、他方の面に設けた不織布材層とを有する断熱シート材と、
補強ボード材およびクロス材とを含むものからなり、
前記建造物壁面と前記断熱シート材との間に前記立体ネット材を介在して積層状に形成してなり、
前記立体ネット材によって通気層を、前記金属蒸着材層によって熱反射層を、前記不織布材層によって調湿層を形成してなることを特徴とする断熱壁構造を用いた断熱壁システム。
【請求項6】
前記立体ネット材によって形成される通気層内に、強制的に空気を循環流通させるための空気循環流通手段を設けたことを特徴とする請求項5に記載の断熱壁構造を用いた断熱壁システム。
【請求項7】
各室における窓などのガラスに対して遮熱フィルムを貼り合わせてなることを特徴とする請求項5あるいは請求項6に記載の断熱壁構造を用いた断熱壁システム。
【請求項8】
各室間を連通するべく連通換気手段を設け、各室間を等圧に維持するようになしたことを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれかに記載の断熱壁構造を用いた断熱壁システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−144449(P2010−144449A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323978(P2008−323978)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(591102822)富士工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】