説明

断熱性能に優れたポリスチレン系樹脂押出発泡積層体

【課題】 顕著な断熱性能の改善効果を有する断熱材用ポリスチレン系樹脂押出発泡積層体を提供することを課題とする。
【解決手段】 厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層された構造を少なくとも1個有する発泡積層体とすることにより、断熱性能の改善効果を有する発泡積層体を得ることができる。また、発泡層に白色系の熱線輻射抑制剤を含有し、発泡層間介在の非発泡層には黒色系の熱線輻射抑制剤を含有することで、顕著な断熱性能の付与でき、射抑制剤の色目が異なることにより、薄膜の非発泡層の積層状態の識別、加工管理が容易となる。さらに、発泡積層構造の厚み方向最外層に白色系の熱線輻射抑制剤を含有する発泡層を配することで、日光などによる発泡積層体の温度上昇を抑制でき、部材の変形を防止することができる。輻射抑制剤の色目が異なることにより、薄膜の非発泡層の積層状態の識別、加工管理が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用、自動車用、土木用などの断熱材として好適に使用される押出発泡積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
建材分野、自動車内装材分野等において、断熱材としてフェノール系樹脂発泡ボード、ポリウレタン系樹脂発泡ボード、ポリスチレン系樹脂発泡ボードが広く使用されている。
【0003】
近年、居住空間の快適性、省エネルギーの要求が高まるなか、従来から使用されている断熱材の断熱性能向上が求められており、断熱材のひとつである発泡ボードの断熱性能改善のため、発泡ボードを構成する樹脂の検討、発泡剤種の検討、添加剤の検討、セル構造の検討等、様々な検討がなされてきた(特許文献1〜6参照)。
【0004】
これら検討の結果、発泡ボードの断熱性能は飛躍的に向上し、前記従来技術の延長線上では、断熱性能の更なる向上は容易に見込めない領域に達した観があるのが現状である。
【0005】
一方、発泡ボードに良好な断熱性能を付与する発泡剤の1種であるフロン類は、オゾン層を破壊する原因物質とされており、その使用、排出は制約を受け、更に地球環境的側面から、全廃が叫ばれて久しい。
【0006】
このような状況下において、発泡ボードの更なる断熱性能改善を図るには、従来から行われてきた前記検討の視点とは異なるアプローチが必要である。
【0007】
発泡ボードの断熱性能改善に関する新たな試みとして、特許文献7に開示の技術がある。これは、平均気泡径が異なる2種以上のポリスチレン系樹脂発泡層を積層一体化してなり、輻射抑制剤としてカーボンブラックまたはグラファイトを含み、積層発泡体の厚み方向上下表面層が輻射抑制剤を含有しない発泡層で構成することにより、輻射抑制剤添加による熱伝導率の改良と、日射による温度上昇を抑制できる良好な耐熱性、寸法安定性を有するものである。
【0008】
さらなる発泡ボードの断熱性能改善に関する新たな試みとして、特許文献8に開示の技術がある。これは、2枚のポリプロピレン系樹脂発泡体の間にアルミ箔を挟みこむ内容の発明であり、アルミ箔を挟み込むことにより断熱性能が顕著に改善されるものである。但し、特許文献8に開示の技術は、断熱性能が低いポリプロピレン系樹脂発泡体に限定した内容である。
【0009】
この技術を断熱性能が高いポリスチレン系樹脂発泡ボード、ポリウレタン系樹脂発泡ボード、ポリフェノール系樹脂発泡ボードに適用展開したものとして、特許文献9に開示の技術があり、厚み方向に発泡層が熱線輻射抑制剤を含む非発泡層を介して積層された構造を少なくとも1つ有する発泡積層体とすることにより顕著な断熱性能の向上効果を有するものとされている。
【0010】
しかしながら、薄膜である非発泡層への熱線輻射抑制剤の添加のみでは、さらなる断熱性能の向上効果は小さく、より高い断熱性能を有するものの出現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−13659号公報
【特許文献2】特開2007−154006号公報
【特許文献3】特開2001−114922号公報
【特許文献4】特開2002−309030号公報
【特許文献5】特開平8−231667号公報
【特許文献6】特開2007−332203号公報
【特許文献7】特許第3916460号公報
【特許文献8】特開2001−179866号公報
【特許文献9】特開2009−234261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するものであり、発泡剤としてフロン類を使用することなく、顕著な断熱性能の改善効果を有する断熱材用押出発泡積層体を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記の事項等を見出し、本発明を完成するに至った。
●ポリスチレン系樹脂発泡積層体の厚み方向に発泡層/非発泡層/発泡層からなる構造を複数有する発泡積層体が、1個のみ有する発泡積層体よりも断熱性能がより改善されること。
●ポリスチレン系樹脂発泡積層体を構成する発泡層に熱線輻射抑制剤として白色熱線輻射抑制剤である酸化チタンを配合することにより、熱線を散乱減衰することで断熱性能が改善される。さらに、該発泡層を発泡積層体の最外層表面層に配置することで、最外層にカーボンブラック等の熱線吸収剤、カーボングラファイト等の熱線反射剤等からなる黒色系熱線輻射抑制剤を配合した積層体に対し、直射日光による発泡積層体表面温度の上昇が抑制され、反り発生等が抑制でき、寸法安定性が確保できること。
●非発泡層を構成する樹脂に、熱線輻射抑制剤として、カーボンブラックを配合することにより熱線を吸収減衰することで、カーボングラファイトを配合することにより、熱線を散乱減衰することでより高い断熱性能が発現される。熱線輻射抑制剤としてカーボンブラック、カーボングラファイトが含有された非発泡層は発泡層間に介在しており、積層体の厚み方向表面に露出していないため、黒色系の熱線輻射抑制剤の配合にも関わらず、直射日光による発泡積層体の温度上昇が発生せず、寸法安定性が確保でき、好適な断熱性能が得られること。
●発泡層に配合される白色系の熱線輻射抑制剤と非発泡層に配合される黒色系の熱線輻射抑制剤の色目を変えることにより、厚み方向断面において、厚みの薄い非発泡層の積層状態を容易に目視にて識別でき、加工精度向上、加工管理の容易化が可能となる。
●工業的に有利な共押出法にて、熱線輻射抑制剤を発泡層及び非発泡層を構成する樹脂へそれぞれ配合することにより、容易に熱線輻射抑制効果が得られ、発泡層/非発泡層/発泡層からなる構造を有するより高い断熱性能を有する発泡積層体が得られること。
【0014】
すなわち、本発明は、
[1]厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層された構造を少なくとも1個有する発泡積層体であって、
該発泡層中に白色系の熱線輻射抑制剤を、該非発泡層中に黒色系の熱線輻射抑制剤をそれぞれ含有し、厚み方向の最外層には発泡層を配し、積層構造体の密度が45Kg/m以下であり、かつ、製造後1週間経過時の20℃における熱伝導率が0.028W/m・K以下であることを特徴とする、ポリスチレン系樹脂押出発泡積層体、
[2]白色系の熱線輻射抑制剤が酸化チタン及び/または酸化アルミナであり、黒色系の熱線輻射抑制剤がカーボンブラック及び/またはグラファイトであることを特徴とする、[1]に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡積層体、および
[3]押出積層発泡体が共押出法により製造されたものであることを特徴とする、[1]または[2]に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡積層体
に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果は、以下のとおりである。
●厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層された構造を少なくとも1個有する発泡積層体であって、該発泡層中に酸化チタン、酸化アルミナ等の白色系熱線輻射抑制剤を、該非発泡層中にカーボンブラック、カーボングラファイト等の黒色系熱線輻射抑制剤を含む発泡積層体構造により、断熱性能が大幅に改善される。
●熱線輻射抑制剤を含む発泡層/非発泡層/発泡層からなる構造を1回以上繰り返すことにより、断熱性能がさらに改善される。
●酸化チタン、酸化アルミナ等の白色系熱線輻射抑制剤を含む発泡層を構成体厚み方向の最外層に配することで、直射日光による蓄熱を防止し、変形抑制など寸法安定性が保持できる。
●配合される熱線輻射抑制剤の色目を発泡層と非発泡層とで変えることにより、厚み方向断面において厚みの薄い非発泡層の積層状態を容易に目視にて識別でき、加工精度向上、加工管理の容易化が可能となる。
上記効果は、発泡ボードの断熱性改善の従来技術との組合せが可能であるため、これにより、従来にない優れた断熱性能を有する発泡ボードの提供を期待できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の1例を示すポリスチレン系樹脂押出発泡積層体の厚み方向断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の押出発泡積層体は、厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層された構造を少なくとも1個有し、且つ、発泡層中に白色系の熱線輻射抑制剤を、非発泡層中に黒色系の熱線輻射抑制剤を含むことが必要である。さらに、白色系の熱戦輻射抑制剤を含む発泡層が厚み方向最外層に配置されることが必要である。
【0018】
本発明の押出発泡積層体を構成する発泡層とは、複数のハニカム状のセル構造を有するものをさし、構成材として白色系の熱線輻射抑制剤を含むものである。その形状としては、特に限定されず、フィルム形状、シート形状、ボード形状が挙げられ、これらの中でも、断熱性能を発現しやすいこと、発泡積層体に軽量性を付与できることより、シート形状、ボード形状が好ましい。
【0019】
本発明の押出発泡積層体を構成する非発泡層とは、密度が500kg/m超の層をさし、構成材として黒色系の熱線輻射抑制剤を含むものである。非発泡層の形状としては、発泡積層体に軽量性を付与できることから、フィルム形状、シート形状が好ましい。非発泡層の構成としては、特に限定されず、単層でも複層でも構わず、例えば、熱線輻射抑制剤単体からなるもの、複数の熱線輻射抑制剤からなるもの、熱線輻射抑制剤と熱線輻射抑制効果を有しない材料を複合してなるもの、等が挙げられる。
【0020】
本発明の押出発泡積層体を構成する発泡層中に含まれる熱線輻射抑制剤とは、近赤外または赤外領域(例えば、800〜3000nm程度の波長域)の光を反射・散乱・吸収する特性を有する材料をいう。
熱線輻射抑制剤としては、熱線反射剤、熱線吸収剤が挙げられる。
【0021】
本発明の発泡層中に含有される白色系の熱線輻射抑制剤としては、具体的には、鉛白、酸化亜鉛、酸化チタン、硫化亜鉛、リトポン(硫化亜鉛と硫化バリウムの混合物)、アンチモン白、雲母、酸化アルミニウム、アルミナホワイト、ホワイトカーボン、ハイドロタルサイト、シラスバルーン、セラミックバルーン、マイクロバルーン、パールマイカ等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0022】
本発明の発泡層中に含有される白色系の熱線輻射抑制剤としては、熱伝導率低減効果が大きいこと、発泡積層体を屋外に保管時、施工時に直射日光による温度上昇が抑制できること、コスト的に有利なこと、環境適合面、安全面を含めたハンドリング性が良好なこと等により、酸化チタン、酸化アルミナが好ましい。
【0023】
本発明の発泡層中に含有される白色系熱線輻射抑制剤の平均粒径は、特に限定されるものではないが、樹脂への分散性、発色性の観点から、小粒径が好ましく、すなわち、0.1〜0.5μmが好ましく、0.15〜0.3μmがより好ましい。白色系熱線輻射抑制剤の平均粒径が0.1〜0.5μmの範囲であれば、分散性や発色性がよく、可視光域400〜800nm付近での発色度合いを向上させることができる。
一方、近赤外線から遠赤外線領域において樹脂への赤外吸収を抑制したい場合には、白色系熱線輻射抑制剤の平均粒径は、大粒径が好ましく、すなわち、0.8〜1.5μmが好ましく、0.8〜1.0μmがより好ましい。
【0024】
これら平均粒径の異なる白色系熱線輻射抑制剤を、小粒径の白色系熱線輻射抑制剤を全体の10〜90重量%の範囲内で混合することにより、赤外線領域の反射および可視光域での白色度合いを向上させた混合酸化チタンを得ることができる。
【0025】
本発明の発泡層中に含有される白色系熱線輻射抑制剤の添加量は、熱線輻射抑制剤の種類、熱線輻射抑制剤を含んだ発泡層の厚みによって適宜設定されるが、
その指標としては、赤外線分光光度計(IR)にて測定したスペクトルの800〜3000nmの吸光度変化が殆ど無いような添加量を設定することが、発泡積層体の熱伝導率の低減効果とコストとのバランスが優れるため好ましく、スチレン系樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、1〜8重量部がより好ましく、2〜4重量部がさらに好ましい。
【0026】
本発明の押出発泡積層体を構成する非発泡層中に含まれる熱線輻射抑制剤とは、発泡層中に含まれるそれと同様に、近赤外または赤外領域(例えば、800〜3000nm程度の波長域)の光を反射・散乱・吸収する特性を有する材料をいう。
熱線輻射抑制剤としては、熱線反射剤、熱線吸収剤が挙げられる。
【0027】
本発明の非発泡層中に含有される黒色系の熱線輻射抑制剤としては、具体的には、グラファイト、カーボンブラック、クロム黒、クロム酸銅などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0028】
これらのなかでも、熱伝導率低減効果が大きいこと、コスト的に有利なこと、環境適合面、安全面を含めたハンドリング性が良好なこと等により、カーボンブラック、グラファイトが好ましい。
グラファイトとしては、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛、人造黒鉛または熱分解黒鉛などの天然黒鉛であってもよい。グラファイトは、固定炭素数80%以上のものが望ましく、90%以上のものがより望ましい。
【0029】
本発明の非発泡層中に含有される黒色系の熱線輻射抑制剤の平均粒径は、特に限定されるものではないが、例えば、カーボンブラックの平均粒径は、0.01〜0.3μmが好ましく、0.2〜0.25μmがより好ましい。また、グラファイトの平均粒径は、1〜30μmが好ましく、酸化チタン同様に、発色性および赤外線領域での遠赤外線吸収/反射度合いに影響を与えるため、5〜15μmがより好ましい。
【0030】
本発明の非発泡層中に含有される黒色系熱線輻射抑制剤の添加量は、熱線輻射抑制剤の種類、熱線輻射抑制剤を含む非発泡層の厚みによって適宜設定されるが、
その指標としては、赤外線分光光度計(IR)にて測定したスペクトルの800〜3000nmの吸光度変化が殆ど無いように添加量を設定することが、発泡積層体の熱伝導率の低減効果とコストのバランスが良く好ましく、スチレン系樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、0.3〜10重量部がより好ましく、0.5〜5重量部がさらに好ましい。
【0031】
本発明の発泡層中に含有される熱線輻射抑制剤を白色系とし、かつ、非発泡層中に含有される熱線輻射抑制剤を黒色系とすることにより、両層間の積層状態を目視にて容易に識別でき、積層加工の管理精度の向上、それによる加工精度の向上を図ることができる。
【0032】
熱線輻射抑制剤を含む発泡層/非発泡層/発泡層からなる構造を1回以上繰り返すことが好ましい。この理由としては、非発泡層の両面に発泡層が積層された構造をとることにより、非発泡層中に含まれる熱線輻射抑制剤による吸収減衰と発泡層中に含まれる熱線輻射抑制剤による散乱減衰による両方の減衰による熱伝導率低減効果がより有効に作用することができることによる。また、発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の如く、非発泡層が複数層存在することにより、1層の非発泡層では得られない優れた熱伝導率低減効果が発現する。
【0033】
本発明の押出発泡積層体においては、酸化チタン、酸化アルミナ等の白色系熱線輻射抑制剤を含む発泡層を構成体厚み方向の最外層に配することが好ましい。
発泡積層体の厚み方向最外層に黒色系熱線輻射抑制剤を含む発泡層の構成とした場合、日射による発泡積層体の表面温度が著しく上昇し、変形を発生する恐れがある。
また、黒色系熱線輻射抑制剤を含む非発泡層を構成体厚み方向の最外層に配置した場合にも、同様に、日射による発泡積層体表面の温度上昇に伴い変形を発生する恐れがある。
これらの理由から、白色系熱線輻射抑制剤を含む発泡層を構成体厚み方向の最外層に配することで、日射による発泡積層体の表面温度上昇を抑制でき、寸法安定性が保持できる。
【0034】
さらに、発泡層に配合される白色系の熱線輻射抑制剤と非発泡層に配合される黒色系の熱線輻射抑制剤の色目を変えることにより、厚み方向断面において、厚みの薄い非発泡層の積層状態を容易に目視にて識別でき、加工精度向上、加工管理の容易化も可能となる。
【0035】
本発明の押出発泡積層体を構成する発泡層の構成樹脂としては、断熱性能に優れ、成形性が容易なことから、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、加工性、経済性の点から、スチレン系樹脂が好ましい。
【0036】
スチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン単量体のみから得られるスチレンホモポリマー、スチレン単量体とスチレンと共重合可能な単量体またはその誘導体から得られるランダム、ブロックまたはグラフト共重合体、後臭素化ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレンなどの変性ポリスチレン、ABS樹脂などが挙げられる。これらは、単独または2種以上混合して使用することができる。
【0037】
スチレンと共重合可能な単量体としては、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのスチレン誘導体、ジビニルベンゼンなどの多官能性ビニル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系化合物、ブダジエンなどのジエン系化合物またはその誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−4−ジフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−4−ブロモフェニルマレイミド、N−1−ナフチルマレイミド等のN−アルキル置換マレイミド化合物;などがあげられる。これらは、単独または2種以上混合して使用することができる。
【0038】
本発明の押出発泡積層体を構成する発泡層を得る際に用いられる発泡剤としては、特に限定されず、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタンなどの炭素数3〜5の飽和炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類;蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類;塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキル類;水、二酸化炭素などの無機発泡剤、さらには、アゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤等が挙げられる。これら発泡剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
これら発泡剤の中でも、発泡性、発泡体成形性などの点からは、n−ブタン、i−ブタン、プロパン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、塩化メチル、塩化エチルなどが好ましく、発泡剤の燃焼性、発泡体の難燃性または断熱性等の点からは水、二酸化炭素が好ましく、更に好ましくは、環境適合性に優れることより、n−ブタン、i−ブタン、プロパン、ジメチルエーテル、水、二酸化炭素である。
【0040】
本発明の押出発泡積層体を構成する熱可塑性樹脂からなる発泡層を製造する際に、熱可塑性樹脂中に添加または注入される発泡剤の量としては、発泡倍率の設定値などに応じて適宜選定されるが、通常、発泡剤の合計量を、熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜20重量部とするのが好ましく、3〜8重量部とするのがより好ましい。
発泡剤の合計添加量が1〜20重量部の場合、発泡体中にボイドが無く、難燃性が制御可能な、適度な発泡倍率の発泡層が得られ、発泡積層体として軽量、断熱などの特性が発現される。
【0041】
発泡剤を添加または注入する際の圧力としては、特に限定されず、押出機などの内圧力よりも高い圧力であればよい。
【0042】
本発明の押出発泡積層体を構成する熱可塑性樹脂からなる発泡層における平均気泡径は、0.05〜1mmが好ましく、0.06〜0.5mmがさらに好ましく、0.08〜0.3mmが特に好ましい。発泡層における平均気泡径が0.05〜1mmの範囲では、熱線遮蔽効果を有効に発現でき、断熱性を備えた発泡層とすることができる。
【0043】
本発明の押出発泡積層体を構成する熱可塑性樹脂からなる発泡層の密度は、40kg/m以下が好ましく、より軽量でかつ優れた断熱性を付与するためには、20〜35kg/mであることがより好ましく、25〜30kg/mであることがさらに好ましい。発泡層の密度が20〜40kg/mの範囲では、軽量性と断熱性を備えた発泡層が得られる。
【0044】
本発明の押出発泡積層体を構成する発泡層の製造時において、必要に応じて、難燃剤、難燃助剤、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機化合物;ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤;フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤;帯電防止剤;顔料などの着色剤などの添加剤を添加させることが好ましい。
【0045】
また、より安定的に押出発泡するためには、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスフェート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイトなどのヒンダードフェノール系抗酸化剤;トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビスステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイトなどのリン系安定剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなどのアミン系安定剤、3,3−チオビスプロピオン酸ジオデシルエステル、3,3’−チオビスプロピオン酸ジオクタデシルエステルなどのイオウ系安定剤を添加するのが好ましい。
【0046】
本発明の発泡積層体を構成する熱可塑性樹脂からなる発泡層は、共押出法による押出発泡成形により製造されるのが好ましい。
押出発泡成形の成形方法としては、例えば、
(i)熱可塑性樹脂に、必要に応じて前記添加剤を混合した後、加熱溶融する、
(ii)熱可塑性樹脂に、必要に応じて前記添加剤から選ばれる1種以上を混合した後、加熱溶融し、これに残りの前記添加剤をそのまま、または必要により液体化または溶融させて添加し加熱混合する、
(iii)予め熱可塑性樹脂に、必要に応じて前記添加剤からから選ばれる1種以上の添加剤を混合した後、加熱溶融した組成物を準備し、次いで、該組成物と残りの前記添加剤、必要に応じて熱可塑性樹脂を改めて混合し、押出機に供給して加熱溶融する、
等、熱可塑性樹脂、必要に応じて前記添加剤を加熱溶融押出機に供給し、その後、任意の段階において高圧条件下で発泡剤を熱可塑性樹脂に添加し、流動ゲルとなし、押出発泡に適する温度に冷却し、該流動ゲルをフィードブロックなどの多層積層装置に供給し、発泡剤を含まない溶融樹脂と合流した後、ダイを通じて低圧領域に押出発泡して、発泡層を形成することにより製造することができる。
【0047】
本発明において、熱可塑性樹脂と発泡剤などの添加剤を加熱溶融混練する際の加熱温度、溶融混練時間および溶融混練手段については、特に制限するものではない。
加熱温度は、使用する熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であればよいが、難燃剤などの影響による樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度、例えば150〜280℃程度が好ましい。
溶融混練時間は、単位時間あたりの押出量、溶融混練手段などによって異なるので一概には決定することができないが、熱可塑性樹脂と発泡剤が均一に分散混合するのに要する時間が適宜選ばれる。
溶融混練手段としては、例えばスクリュー型の押出機などがあげられるが、通常の押出発泡に用いられているものであれば特に限定はない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるため、スクリュー形状については、低剪断タイプのスクリュー形状を用いる方が好ましい。
【0048】
本発明において、発泡成形方法も特に制限されないが、例えば、スリットダイより圧力開放して得られた発泡体をスリットダイと密着または接して設置した成形金型および成形ロールなどを用いて、断面積の大きい板状発泡体を成形する一般的な方法を用いることができる。
【0049】
本発明の押出発泡積層体を構成する発泡層の厚みは、発泡積層体の厚みおよび発泡積層体中の非発泡層の数(発泡層/非発泡層/発泡層からなるユニットの数)に応じて、適宜選択される。
【0050】
本発明の押出発泡積層体を構成する非発泡層を構成する樹脂(以降、「非発泡層構成樹脂」と称する場合がある)としては、発泡層との良好な接着性を確保するため、発泡層構成樹脂と相溶性を有する熱可塑性樹脂を選定することが好ましい。なお、発泡層構成樹脂と相溶性を有さなくとも、発泡層との間でアンカー効果が発現するような粘着性、接着性を有する樹脂を選定することも可能である。
【0051】
前記発泡層を構成する樹脂と相溶性を有する熱可塑性樹脂としては、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、加工性、経済性の点から、スチレン系樹脂が好ましい。
【0052】
本発明の非発泡層構成樹脂として用いられるスチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン単量体のみから得られるスチレンホモポリマー、スチレン単量体とスチレンと共重合可能な単量体またはその誘導体から得られるランダム、ブロックまたはグラフト共重合体、臭素化ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレンなどの変性ポリスチレン、ABS樹脂などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
スチレンと共重合可能な単量体としては、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのスチレン誘導体、ジビニルベンゼンなどの多官能性ビニル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系化合物、ブダジエンなどのジエン系化合物またはその誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−4−ジフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−4−ブロモフェニルマレイミド、N−1−ナフチルマレイミド等のN−アルキル置換マレイミド化合物;などがあげられる。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0054】
粘着性・接着性を有する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系共重合樹脂、天然ゴム系樹脂、クロロプレン系樹脂および、上記樹脂にロジン類、ロジン誘導体、石油系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、ロジンフェノール樹脂、ケトン樹脂等の粘着付与剤樹脂を配合してなる樹脂組成物などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
本発明の押出発泡積層体を構成する非発泡層の構造は、非発泡層中に熱線輻射抑制剤を含む限りにおいて、特に限定されず、単層、複層のいずれの構造も採りうる。
【0056】
本発明の押出発泡積層体を構成する非発泡層の厚みは、発泡積層体の厚みおよび発泡積層体中の非発泡層の数(発泡層/非発泡層/発泡層からなるユニットの数)に応じて適宜選択されるが、1〜500μmが好ましく、20〜300μmがより好ましく、30〜200μmが特に好ましい。
非発泡層の厚みが1〜500μmの範囲では、軽量性と断熱性を備えた発泡積層体を得ることができる。
【0057】
本発明の押出発泡積層体の製造方法、特に発泡層と非発泡層との積層方法については、生産性に優れることから、非発泡層と発泡層の構成樹脂を各々異なる押出機を用いて溶融混練し、各々の溶融樹脂を多層状に合流させ積層する方法、例えば、
特開平4−278323号公報等に記載の複数の層からなる積層流を作った後、分割・積層を繰り返す方法、
特表2005−523831号公報、特開2004−249520号公報、等に記載の複数の分割流を作った後、逐次積層する方法、等が挙げられる。
【0058】
本発明の押出発泡積層体の構造としては、発泡積層体の厚み方向に発泡層/非発泡層/発泡層からなる構造を少なくとも1個有することが必要であり、発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の如く、発泡層/非発泡層/発泡層からなる構造を複数個有することが好ましく、3個以上有することがより好ましく、5個以上有することがより好ましい。
発泡積層体の厚み方向に熱線輻射抑制剤を含む発泡層に熱線輻射抑制剤を含む非発泡層を複数枚設けることにより、熱線輻射抑制剤を含む発泡層単層、並びに1枚の非発泡層(熱線輻射抑制剤)を積層した発泡積層体では得られない優れた熱伝導率の低減効果が発現できる。
【0059】
本発明の押出発泡積層体の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜選択される。
例えば、建材などに使用される断熱材用途の場合、好ましい断熱性、曲げ強度および圧縮強度を付与するためには、シートのような薄いものよりも、通常の板状物のような厚さのあるものが好ましく、通常10〜150mm、好ましくは20〜100mmである。
【0060】
本発明の押出発泡積層体の密度としては、45Kg/m以下が好ましく、25〜40Kg/m以下がより好ましく、30〜35Kg/m以下がさらに好ましい。
押出発泡積層体の密度が45Kg/mより大きいと、軽量性に劣る。
【0061】
本発明の押出発泡積層体の製造後の1週間経過時の平均温度20℃における等価熱伝導率は、0.028W/m・K以下が好ましく、0.026W/m・K以下がより好ましく、0.024W/m・K以下が特に好ましい。
【0062】
等価熱伝導率が0.028W/m・K以下の場合、押出発泡積層体は建築用部材用途として好適に使用され、快適な居住空間の提供に貢献することができる。
【0063】
本発明の押出発泡積層体は、優れた軽量性、断熱性の点から、種々の用途、例えば、床材、壁材、屋根材などの建築用部材、保冷車用断熱材、車両バンパー、自動車天井材などの自動車内装用部材、地盤の凍上防止剤などの土木用部材などに好適に使用できる。
【実施例】
【0064】
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は、係る実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「%」は重量%を表わす。
【0065】
実施例および比較例に対する評価方法は、以下のとおりである。
【0066】
(1)押出発泡積層体の平均温度20℃での等価熱伝導率(単位:W/m・K)
得られた押出発泡積層体の平均温度20℃での等価熱伝導率は、JIS A9511(2003年)に準じて測定した。
測定には、熱伝導率測定装置[英弘精機製HC−074]を用い、押出発泡積層体から約300mm×100mm×25mmの直方体を3個切り出し、これを並べて300mm×300mm×25mmの形としてHC−074にセットして測定した。
なお、測定は製造後、表面から10mmの部分を削除した後、1週間経過した押出発泡積層体について行った。
【0067】
(2)押出発泡積層体の密度(単位:kg/m
得られた押出発泡積層体を、約200mm長×100mm幅×25mm厚の直方体を切り出し、この重量を測定すると共に、ノギスを用い、長さ、幅、厚みの寸法を測定し、発泡体の密度を以下の式にて算出した。
押出発泡積層体の密度(g/cm)=発泡積層体の重量(g)/発泡積層体の体積(cm
算出した値を、単位換算(Kg/m)した。
【0068】
(3)発泡層の平均気泡径
デジタルマイクロスコープ[ソニック製、BS−8000]を用いて、押出発泡積層体の厚さ方向断面の発泡層の気泡を200倍に拡大した画像をパソコンに取り込み、該画像を紙に印刷した後、任意の厚さ方向に実寸法で1mm相当の直線を引き、それぞれこの直線を横切る気泡の数をカウントし、それぞれの箇所での厚さ方向の気泡径を次の式に従って算出した。
厚み方向の気泡径=直線の長さ1mm/直線を横切る気泡の数
次いで、別の2箇所においても、同様の操作により厚み方向の気泡径を求め、それらの値を相加平均して、厚さ方向の平均気泡径とした。
【0069】
(4)赤外線照射による押出積層体の表面温度、変形評価
得られた押出積層体から、幅100mm×長さ100mm×厚み25mmの直方体サンプルを切り出し、赤外線照射用サンプルとした。
赤外線照射用サンプルに対して、200mmの位置に設置した赤外線ランプ[岩崎電気株式会社製、アイR形赤外線電球、250W]を用いて、サンプル表面を1時間照射した後、サンプルの表面温度を遠赤外線放射温度計[AS ONE社製、ISK−8700II]を用いて測定した。
平面上に赤外線照射後のサンプルを置き、サンプル4隅の平面からの高さを直尺にて測定し、得られた4隅の最も大きい値を反り量とした。なお、反り量の評価は、以下の基準に従って行った。
○: 反り量が1mm以下。
△: 反り量が1mmより大、5mm以下。
×: 反り量が5mmより大。
【0070】
(実施例1)
[発泡剤を含有する溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン[PSジャパン株式会社製、商品名:G9401、MFR=2.2g/10分]100重量部に対して、タルク[林化成株式会社製、商品名:TALCAN PAWDER PK−Z)0.1重量部、ステアリン酸カルシウム[堺化学工業株式会社製、商品名:ステアリン酸カルシウム]0.3重量部、流動パラフィン[新日本石油株式会社製、商品名:ポリブテンLV−50]0.2重量部、酸化ケイ素[日本アエロジル(株)製、AEROSIL]0.1重量部、ベントナイト[(株)ホージュン製、商品名:ベンゲルブライト11]1.0重量部からなる混合物に、酸化チタン含有ポリスチレン樹脂[石原産業株式会社製、商品名:タイペーク R−780−2、酸化チタン含有量88重量%、平均粒径0.24μm]をドライブレンドして、酸化チタン含有スチレン系樹脂組成物(酸化チタンの含有比率が4.0重量%)を作製した。
該スチレン系樹脂組成物を、口径65mmの第1押出機と口径90mmの第2押出機とを直列に連結した二段式押出機に対して、45.0kg/時間で供給した。
第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、樹脂温度180℃に加熱して混練を行い、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して、イソブタン[三井化学(株)製]6.0重量%、ジメチルエーテル[大洋液化ガス(株)製]2.0重量%を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は10.8MPaであり、これに対して、発泡剤の圧入圧力は13.1MPaであった。
第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を121℃に冷却した後、3つに分流し、発泡剤を含有する溶融樹脂を第2押出機の先端に設けられた2種5層多層積層用フィードブロック(株式会社プラ技研製)に供給した。
[発泡剤を含まない溶融樹脂の製造方法]
ポリスチレン[PSジャパン株式会社製、商品名:679、MFR=18g/10分]100重量部に対して、可塑剤ジメチルフタレート[大八化学工業株式会社製、商品名:DMP]6重量部を添加して、予めジメチルフタレート・マスターバッチを作製した。
得られたジメチルフタレート・マスターバッチ80重量部および、カーボンブラック・マスターバッチ[住化カラー(株)製、商品名:SPAB−851、カーボンブラック含有量40重量%]20重量部をドライブレンドして、カーボンブラック含有スチレン系樹脂組成物(カーボンブラック含有比率8重量%)とした。
該カーボンブラック含有スチレン系樹脂組成物を、口径50mmの押出機へ5.0kg/時間で供給した。供給した樹脂を140℃に加熱して溶融混練を行い、2つに分流して前記2種5層多層積層用フィードブロックに供給した。
[発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を厚み方向に合流させ、押出発泡成形体を製造する方法]
135℃に温調された前記2種5層多層積層用フィードブロック内で、3.0MPaの圧力下にて、厚み方向に、2つに分流された発泡剤を含まない溶融樹脂(2層)を、3つに分流された発泡剤を含有する溶融樹脂(3層)で挟み込むようにして、それぞれ、5mm/1mm/12mm/1mm/5mmの厚みで合流させた。
その後、厚さ方向2.8mm、幅方向50mmの長方形断面の空隙を有し、80℃に温調されたダイリップより、合流された多層流を大気中へ押し出し、厚み24mm、幅210mmの直方体状で発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の5層構造(各々の厚みは、5.5mm/0.2mm/12.6mm/0.2mm/5.5mm)からなる押出発泡積層体を得た。
得られたサンプルの測定結果を、表1に示す。
【0071】
(実施例2)
[発泡剤を含まない溶融樹脂の製造方法]において、
ポリスチレン100重量部に対して、カーボングラファイト[伊藤黒鉛製、商品名:X−10、鱗片状、粒径10μm]3重量部および、可塑剤としてジメチルフタレート6重量部を添加して、予めマスターバッチ化したカーボングラファイト含有スチレン系樹脂組成物(カーボングラファイト含有比率:2.8重量%)を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、押出発泡積層体を得た。
得られたサンプルの測定結果を、表1に示す。
【0072】
(実施例3)
[発泡剤を含有する溶融樹脂の製造]において、
熱線輻射抑制剤として酸化アルミナペースト[昭和アルミパウダー株式会社製、商品名:SAP CS420]を用いて、酸化アルミナ含有比率が5.0重量%である酸化アルミナ含有スチレン系樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、押出発泡積層体を得た。
得られたサンプルの測定結果を、表1に示す。
【0073】
(比較例1)
[発泡剤を含有する溶融樹脂の製造方法]
輻射抑制剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行い、スチレン系樹脂組成物を作製した。
該スチレン系樹脂組成物を、口径65mmの第1押出機と口径90mmの第2押出機とを直列に連結した二段式押出機に対して、45.0kg/時間で供給した。
第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、樹脂温度180℃に加熱して混練を行い、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して、イソ−ブタン6.0重量%、ジメチルエーテル2.0重量%を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は10.8MPaであり、これに対して、発泡剤の圧入圧力は13.1MPaであった。
第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を121℃に冷却した後、2つに分流し、発泡剤を含有する溶融樹脂を第2押出機の先端に設けられた2種5層多層積層用フィードブロックに供給した。
[発泡剤を含まない溶融樹脂の製造方法]
輻射抑制剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様の操作により、スチレン系樹脂組成物を得た。
該スチレン系樹脂を、口径50mmの押出機へ5.0kg/時間で供給した。供給した樹脂を140℃に加熱して溶融混練を行い、分流することなく、前記2種5層多層積層用フィードブロックに供給した。
[発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を厚み方向に合流させ、押出発泡成形体を製造する方法]
実施例1と同様な操作にて、発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を厚み方向に合流させ、厚み24mm、幅210mmの直方体状で発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層からなる5層構造の押出発泡積層体を得た。
得られたサンプルの測定結果を、表1に示す。
【0074】
(比較例2)
[発泡剤を含有する溶融樹脂の製造方法]
カーボンブラック含有比率が4重量%となるようスチレン系樹脂組成物を作製した以外は、実施例1と同様の操作を実施した。
[発泡剤を含まない溶融樹脂の製造方法]
カーボンブラック含有比率が8重量%となるようにスチレン系樹脂組成物を作製した以外は、実施例1と同様の操作を実施した。
[発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を厚み方向に合流させ、押出発泡成形体を製造する方法]
2種5層多層積層用フィードブロック内で、実施例1と同様の操作を行い、押出発泡積層体を得た。
得られたサンプルの測定結果を、表1に示す。
【0075】
(比較例3)
[発泡剤を含まない溶融樹脂の製造方法]において、
輻射抑制剤を添加しなかった以外は、比較例2と同様の操作を行い、押出発泡積層体を得た。
得られたサンプルの測定結果を、表1に示す。
【0076】
(比較例4)
[発泡剤を含まない溶融樹脂の製造方法]において、
輻射抑制剤として酸化チタン[石原産業株式会社製、商品名:タイペーク R−780−2]を酸化チタンの含有比率が4.0重量%になるよう添加した以外は、実施例1と同様の操作を行い、押出発泡積層体を得た。
得られたサンプルの測定結果を、表1に示す。
【0077】
(比較例5)
[発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含まない溶融樹脂を厚み方向に合流させ、押出発泡成形体を製造する方法]において、
135℃に温調された前記2種5層多層積層用フィードブロック内で、3.0MPaの圧力下にて、厚み方向に、2つに分流された発泡剤を含む溶融樹脂(2層)を、3つに分流された発泡剤を含有しない溶融樹脂(3層)で挟み込むようにして、非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層の5層構造(各々の厚みは、0.2mm/11.7mm/0.2mm/11.7mm/0.2mm)からなる押出発泡積層体を得た。
得られたサンプルの測定結果を、表1に示す。
【0078】
(比較例6)
[発泡剤を含有する溶融樹脂の製造方法]
酸化チタンを添加しなかった以外は、実施例1と同様な方法にてスチレン系樹脂組成物を作製した。
該スチレン系樹脂組成物を、口径65mmの第1押出機と口径90mmの第2押出機とを直列に連結した二段式押出機に対して、50.0kg/時間で供給した。
第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、180℃に加熱して混練を行い、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して、イソ−ブタン6.0重量%、ジメチルエーテル2.0重量%を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は11.1MPaであり、これに対して、発泡剤の圧入圧力は13.3MPaであった。
第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を121℃に冷却した後、2つに分流し、発泡剤を含有する溶融樹脂を第2押出機の先端に設けられた2種5層多層積層用フィードブロックに供給した。
一方で、発泡剤を含まない溶融樹脂は、2種5層多層積層用フィードブロックに供給しなかった。
[発泡剤を含有する溶融樹脂のみを押出発泡成形体を製造する方法]
135℃に温調された前記2種5層多層積層用フィードブロック内で、発泡剤を含有する溶融樹脂のみを流動させ、厚さ方向2.8mm、幅方向50mmの長方形断面の空隙を有し、80℃に温調されたダイリップより、大気中へ押し出し、厚み24mm、幅210mmの直方体状で発泡層のみからなる押出発泡体を得た。
得られたサンプルの測定結果を、表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
表1の結果から、発泡層に白色系輻射抑制剤を含み、非発泡層に黒色系輻射抑制剤を含むことにより、熱伝導率が低減し、断熱性能が改善されることが判る。さらに、押出発泡積層体の厚み方向最外層を構成する発泡層が白色であるため、日射による温度上昇が抑制され、変形が発生しないことが判る。
【符号の説明】
【0081】
1 発泡層
2 非発泡層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に発泡層が非発泡層を介して積層された構造を少なくとも1個有する発泡積層体であって、
該発泡層中に白色系の熱線輻射抑制剤を含有し、該非発泡層中に黒色系の熱線輻射抑制剤を含有し、厚み方向の最外層に発泡層が配されており、
積層構造体の密度が45Kg/m以下であり、かつ、製造後1週間経過後の平均温度20℃での等価熱伝導率が0.028W/m・K以下であることを特徴とする、ポリスチレン系樹脂押出発泡積層体。
【請求項2】
白色系の熱線輻射抑制剤が酸化チタン及び/または酸化アルミナであり、黒色系の熱線輻射抑制剤として、カーボンブラック及び/またはグラファイトであることを特徴とする、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡積層体。
【請求項3】
押出積層発泡体が共押出法により製造されたものであることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂押出発泡積層体。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−103467(P2013−103467A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250461(P2011−250461)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19〜23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構革新的ノンフロン系断熱材技術開発プロジェクト共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】