説明

断熱材組成物及びポリウレタン発泡断熱材

【課題】フロン発泡剤の使用量を効果的に削減して断熱材を施工することができ、しかも−30〜−50℃もの低温に保持される冷凍・冷蔵倉庫での使用においても、優れた断熱性及び寸法安定性を確実に発揮する断熱材組成物及び該断熱材組成物を施工したポリウレタン発泡断熱材を提供する。
【解決手段】ポリオール成分を含む第1液と、イソシアネート成分を含む第2液とで少なくとも構成され、前記第1液と第2液とを混合して施工対象面に吹き付け、発泡硬化させて発泡ポリウレタン断熱材を施工形成する2液型の断熱材組成物であって、上記第1液中に発泡剤として水とフロン化合物とを含有し、かつ上記ポリオール成分として窒素原子を含有するポリオールを含むと共に、このポリオールを含むポリオール成分に対するフロン化合物の溶解度が20〜300g/100gであることを特徴とする断熱材組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性及び寸法安定性に優れ、特に冷凍・冷蔵倉庫用の発泡断熱材用として好適に使用される断熱材組成物及び該断熱材組成物を発泡硬化させてなるポリウレタン発泡断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン発泡原液をスプレーなどでコンクリート等の施工対象面に直接吹き付け、発泡硬化させる硬質ポリウレタンフォーム製の断熱材は、複雑な形状でも短時間で、かつ治具を全く使用することなく容易に施工でき、しかもシームレスな断熱層の形成が可能で、断熱性にも優れていることから、集合住宅・オフィス等の建造物のほか、築造式の冷凍・冷蔵倉庫、定温倉庫等の断熱材、更にはトンネルの凍結防止用等として広く普及してきた。
【0003】
このようなポリウレタン発泡断熱材は、一般にポリオール成分、発泡剤、難燃剤、触媒、整泡剤及びその他の添加剤を混合したポリオール配合液と、ポリイソシアネート成分とをミキシングヘッド等で混合しながら建造物のコンクリート躯体などの施工対象面に直接吹き付け、発泡硬化させてポリウレタン発泡体とすることにより施工される。
【0004】
従来、このポリウレタン発泡断熱材を施工する際には、発泡剤として発泡効率が高く、断熱性に優れること等からフロン発泡剤が使用されてきたが、環境問題の観点から、フロン発泡剤の代替として、水とイソシアネートの反応により発泡する炭酸ガスを発泡剤として利用する水発泡への切り替えが進められてきた。しかし、水発泡は一般的にフロン発泡剤による発泡に比較して発泡速度が緩やかなため、吹付け施工した場合にスプレーパターンが狭い、液ダレを生じる等の問題から現場での施工性に劣るほか、発泡倍率を上げるために水を増加すると、フォームが脆くなる、寸法安定性が低下し使用中にフォームが大きく収縮する、施工対象面との接着性が低下し、施工後に剥離・脱落を引き起こす場合がある等の問題を生じている。
【0005】
特に、冷凍・冷蔵倉庫では、乳製品や食肉、魚介類などの保存対象物に応じて、その内部を通常5℃前後の氷点付近の温度から−30〜−50℃にもなる低温に保持しており、特に−30〜−50℃もの低温に保持する場合には外気との温度差が大きいことから、使用される断熱材には高い断熱性と寸法安定性が求められる。しかし、発泡剤として水のみを用いて発泡硬化させたポリウレタン発泡断熱材では、発泡倍率の問題から十分な断熱性を得ることができなかったり、寸法安定性が不十分で施工対象面から剥離・脱落を生じたりする場合があり、冷凍・冷蔵倉庫のエネルギー効率の悪化を招いていた。これまでもフロン発泡剤に代わる冷凍・冷蔵倉庫用断熱材用の発泡剤について様々な検討がなされてきたが、これら従前の技術では、特に−30〜−50℃にもなる低温状態の保冷用途には断熱性及び寸法安定性の点で必ずしも十分な性能が得られていない。そのため現状では、十分な断熱性及び寸法安定性を確保するために発泡剤として水とフロン発泡剤が併用されることが多い。
【0006】
一方、フロン発泡剤を削減した環境配慮型のポリウレタンフォームの処方としては、例えば、ピペラジン系ポリオールと、分子内に芳香族環を有するポリオールを使用することにより、発泡剤である水の使用量を増やして特定フロンであるR11、R12等を大幅に削減した硬質ポリウレタンフォームの処方(特許文献1:特開平07−149867号公報)等が提案されているが、冷凍・冷蔵倉庫内部のような−30〜−50℃にもなる低温下での保冷用途では、必ずしも十分な断熱性能及び寸法安定性が得られないのが現状である。
【0007】
また、出願人も環境負荷を低減したポリウレタンフォームの処方として、発泡剤としてオゾン層を全く破壊しない低沸点の発泡剤を使用した硬質ポリウレタンフォームの処方(特許文献2:特許第3339945号公報)や、発泡剤としてHCFC−141bやHFC等のフロン系発泡剤を全く使用することなく、施工性、作業性、寸法安定性等に優れる完全水発泡の硬質ポリウレタンフォームの処方(特許文献3:特開2001−40055号公報)等を提案してきたが、いずれも低温での使用において課題が残されている。
【0008】
そのため、−30〜−50℃にもなる低温を保持する場合おいても優れた断熱性及び寸法安定性を確実に発揮することができると共に、フロン発泡剤の使用量を効果的に削減して断熱材を施工することができる断熱材用組成物及び該組成物を発泡硬化させてなる断熱材の開発が望まれる。
【特許文献1】特開平07−149867号公報
【特許文献2】特許第3339945号公報
【特許文献3】特開2001−40055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明は、フロン発泡剤の使用量を効果的に削減して断熱材を施工することができ、しかも−30〜−50℃もの低温に保持される冷凍・冷蔵倉庫での使用においても、優れた断熱性及び寸法安定性を確実に発揮する断熱材組成物及び該断熱材組成物を施工したポリウレタン発泡断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ポリオール成分を含む第1液と、イソシアネート成分を含む第2液とを混合して施工対象面に吹き付け、発泡硬化させて、発泡ポリウレタン断熱材を施工形成する場合に、発泡剤として水とフロン化合物とを併用すると共に、上記ポリオール成分として窒素原子を含有するポリオールを用い、かつこの窒素原子を含有するポリオールを含むポリオール成分に対するフロン化合物の溶解度が20〜300g/100gとなるようにポリオール成分を選定することによって、フロン化合物の使用量を効果的に削減することができ、しかも断熱性能及び寸法安定性に優れたポリウレタン発泡断熱材が得られることを見出した。即ち、発泡剤として水とフロン化合物とを併用することによりフロン化合物の使用量を低減化すると共に、ポリオール成分としてフロン化合物との相溶性が低く、かつ活性の高い含窒素ポリオールを用いることにより、フォーム形成時の発泡効率を効果的に向上させて少ないフロン発泡剤使用量で、高発泡倍率で優れた断熱性能を有するポリウレタン発泡断熱材が得られ、しかもこの発泡断熱材は、−30〜−50℃にもなる低温下でも良好な断熱性能を維持し得ると共に、このような低温下でも良好な寸法安定性を発揮し得ることを見出し、本発明を完成したものである。
【0011】
従って、本発明は、ポリオール成分を含む第1液と、イソシアネート成分を含む第2液とで少なくとも構成され、前記第1液と第2液とを混合して施工対象面に吹き付け、発泡硬化させて発泡ポリウレタン断熱材を施工形成する2液型の断熱材組成物であって、上記第1液中に発泡剤として水とフロン化合物とを含有し、かつ上記ポリオール成分として窒素原子を含有するポリオールを含むと共に、このポリオールを含むポリオール成分に対するフロン化合物の溶解度が20〜300g/100gであることを特徴とする断熱材組成物、及び、
この断熱材組成物を施工対象面に吹き付け、発泡硬化させてなることを特徴とするポリウレタン発泡断熱材を提供するものである。
【0012】
ここで、本発明において、上記フロン化合物の溶解度とは、第1液中に配合される1種又は2種以上を混合したポリオール成分に、実際にこの第1液中に配合されるフロン化合物が溶解する程度を示すものであり、具体的には次のようにして測定される。
[フロン化合物溶解度の測定方法]
1.あらかじめポリオール成分100g及びフロン化合物を15℃に温調する。
2.上記ポリオール成分に上記フロン化合物を所定量混合し、攪拌する。
3.15℃にて1時間放置後、目視にて液の分離を確認する。
4.上記2及び3を、上記フロン化合物の混合量を増やしながら液が分離するまで繰り返し、液が分離した時のフロン化合物の混合量をポリオール成分100gに対するフロン化合物の溶解度(g/100g)とする。
【発明の効果】
【0013】
上記のように、本発明は、フロン発泡剤の使用量を効果的に削減して、環境負荷を低減したポリウレタン発泡断熱材を施工することができるものであり、しかも内部の温度を−30〜−50℃もの低温に保持する冷凍・冷蔵倉庫での使用においても優れた断熱性及び寸法安定性を確実に発揮することから、冷凍・冷蔵倉庫のエネルギー効率を高めることができ、使用中に収縮による剥離脱落などの不都合を生じることのない断熱材を容易かつ確実に施工することができるものである。
【0014】
更に、上記処方によって発泡効率が向上したことにより、施工性や寸法安定性に悪影響を及ぼす水の使用量を減少させることも可能となり、良好な施工性及び寸法安定性を有するポリウレタン発泡断熱材を得ることができる。
また、上記含窒素ポリオールは良好な難燃性を有するため、寸法安定性に悪影響を及ぼす難燃剤の配合量を減少させることもでき、良好な寸法安定性を有するポリウレタン発泡断熱材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の断熱材組成物は、ポリオール成分を含む第1液とイソシアネート成分を含む第2液とからなる2液型のものであり、この第1液と第2液とを混合して施工対象面に吹き付け、発泡硬化させることにより、発泡ポリウレタン断熱材を施工するものである。
【0016】
本発明では、上記第1液に含まれる上記ポリオール成分として窒素原子を含有する反応性が高いポリオールを含むと共に、このポリオールを含むポリオール成分に対するフロン化合物の溶解度が通常20〜300g/100g、特に40〜200g/100gであるフロン化合物との相溶性が低いポリオールを用いる。
【0017】
この窒素原子を含むポリオールとしては、上記フロン化合物の溶解度が上記範囲のものであれば特に制限されるものではないが、第3級アミン構造を含むポリオールやエチレンジアミンベースのポリオール等を好適に用いることができ、これらの1種又は2種以上を適宜混合して用いればよい。
【0018】
上記第3級アミン構造を有するポリオールとしては、例えば下記構造式(1)で示されるピペラジンベースのエチレンオキサイド、下記構造式(2)で示されるモルホリンベースのエチレンオキサイド、下記構造式(3)で示されるテトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンなどを挙げることができる。
【0019】
【化1】

(式中、aは1〜4、bは1〜4、cは2〜5である。)
【0020】
このような第3級アミン構造を有するポリオールとして具体的には、例えば上記構造式(1)〜(3)の第3級アミン構造をすべて含有する旭硝子(株)製のポリエーテルポリオール「FB−745」等が挙げられる。
【0021】
なお、上記第3級アミン構造は、上記構造式(1)〜(3)に示されるものに限定されるものではなく、勿論その他の第3級アミン構造であってもよく、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルモルホリン、ジメチルベンジルアミン等が例示され、これらの第3級アミン構造を有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール又はポリマーポリオールなどが用いられる。
【0022】
また、上記エチレンジアミンベースのポリエーテルポリオールとして具体的には、例えば三洋化成工業(株)製のポリエーテルポリオール「NE240」等を好適に用いることができる。
【0023】
なお、特に制限されるものではないが、この窒素原子を含有するポリオールの水酸基価は、通常100〜1000mg−KOH/g、特に300〜600mg−KOH/gであることが好ましい。また、粘度は通常500〜10000mPa・s、特に500〜5000mPa・sであることが好ましい。この場合、本発明において「粘度」とは、JIS K 1557−1970に準拠し、液温25℃において、B型粘度計を用いて測定した粘度を意味する。
【0024】
上記第1液のポリオール成分には、本発明の目的を逸脱しない範囲において、上記の含窒素ポリオール以外のポリオールを適宜配合してもよい。この第1液に使用することのできるその他のポリオールとしては、吹き付け等によるポリウレタン発泡成形体用として通常用いられているポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオールなど、汎用のポリオールを用いることが可能であり、これらの2種以上を用いることもできる。
【0025】
次に、上記第2液に含まれるイソシアネート成分としては、吹き付け等によるポリウレタン発泡成形体用として通常用いられている公知のものを使用することができ、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、トリフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、MDIとTDIを併用するなど、2種以上を必要に応じて併用してもよい。これらの中でも、本発明においては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を好適に用いることができる。このようなMDIとしては市販品を使用することができ、例えば44V20(住化バイエルウレタン(株)製)等を好適に用いることができる。
【0026】
この第2液中のイソシアネート成分(2種以上のイソシアネートを併用する場合には、その総量)の使用量は、特に制限されるものではないが、その目安としてのイソシアネートインデックス(上記第1液と合わせた組成物全体の活性水素量(モル)を100とした時の、イソシアネート基の当量(モル)比)として通常70〜200、特に90〜140とすることが好ましい。イソシアネートインデックスが70未満であると、成形後のフォームが収縮しやすくなるおそれがあり、200を超えるとフォームの硬化が遅くなり、作業性の低下を招くおそれがある。
【0027】
本発明の断熱材組成物には、上記第1液中のポリオール成分、上記第2液中のイソシアネート成分の他に、以下の発泡剤、難燃剤、触媒、整泡剤等の公知の添加剤を適量添加するが、これらの添加剤は、イソシアネート基の失活を最小限に抑制する観点から、通常は上記第1液中に配合することが好ましい。
【0028】
発泡剤としては、フォームの断熱性を確保すると共に、環境面とコスト面からフロン発泡剤と水とを併用する。まずフロン発泡剤としては、この分野において通常用いられる公知のものを使用することができ、特に制限されるものではないが、環境負荷がより低いものを用いることが好ましい。その具体例としては、HFC134a、HFC245fa、HFC365mfc、HFC227ea等が挙げられ、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。その配合量は、上記ポリオール成分100質量部に対して通常10〜40質量部、特に15〜30質量部とすることが好ましい。配合量が40質量部を超えると液が分離するおそれがあり、10質量部未満では発泡が十分に行われず、フォームの断熱性の低下を招くおそれがある。
【0029】
また、水の配合量は、上記ポリオール成分100質量部に対して通常0.1〜3質量部、特に0.5〜2質量部とすることが好ましい。水の配合量が3質量部を超えると脆性が強くなり、低温下での初期接着性が維持できないおそれがあり、0.1質量部未満では初期の反応が遅くなり、施工対象面に吹き付けた際、たれの原因になるおそれがある。
【0030】
難燃剤は、断熱材に難燃性を付与するために必要な成分である。この難燃剤としては、この分野において通常用いられる公知のものを使用することができ、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。本発明においては、特に制限されるものではないが、リン酸エステル系難燃剤が好ましく、具体的には、トリメチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリイソブチルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、クレジル2,6−キシレニルフォスフェート、トリスモノクロロプロピルフォスフェートなどのリン酸エステルや、芳香族縮合リン酸エステルなどの縮合リン酸エステル等を挙げることができ、これらの中でもトリスモノクロロプロピルフォスフェート及びトリエチルフォスフェートを好適に用いることができる。また、このような難燃剤としては、市販品を用いることができ、例えば、トリスモノクロロプロピルフォスフェートとしてTMCPP(大八化成(株)製)やトリエチルフォスフェートとしてTEP(大八化成(株)製)等を好適に用いることができる。なお、上記難燃剤の配合量は、ポリオール成分100質量部に対して通常10〜20質量部であり、より好ましくは12〜18質量部である。10質量部未満だと十分な難燃性を得ることができないおそれがあり、20質量部を超えると正常なフォームを形成することが困難となり、寸法安定性の低下を招くおそれがある。
【0031】
触媒としては、この分野において公知の触媒を用いることができ、特に制限されるものではないが、環境負荷低減の観点から鉛及び錫を含有しない触媒を用いることが好ましい。具体的には、エチルモルホリン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン及びビス(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジメチルプロパンジアミン等のアミン触媒やピペラジン、N,N,N−トリメチルアミノエチルピペラジン等のピペラジン触媒、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N−ジメチルアミノエチルモルホリンなどのモルホリン触媒、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾールなどのイミダゾール触媒等のアミン系触媒や、オクチル酸カリウム、オクチル酸ビスマス、酢酸カリウムなどの有機金属系触媒を挙げることができ、本発明においてはトリエチレンジアミンやビス(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジメチルプロパンジアミンを好適に用いることができる。なお、これらは1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
また、上記触媒としては市販品を用いることができ、例えば、DABCO 33LV(エアープロダクツジャパン(株)製)、Polycat 9(エアープロダクツジャパン(株)製)、TOYOCAT−TMF(東ソー(株)製)等を挙げることができる。なお、上記触媒の配合量は、上記ポリオール成分100質量部に対して通常0.5〜8質量部であり、より好ましくは1〜4質量部である。0.5質量部未満の場合は十分な反応性が得られず、8質量部を超えると反応性の制御が困難となり、フォームを正常に形成することができないおそれがある。
【0032】
整泡剤は、フォームの独泡性を向上させ、熱伝導率を低下させるために配合されるものである。この整泡剤としては、この分野における汎用のものを用いることができ、特に制限されるものではないが、その具体例として、ジメチルシロキサン・ポリエーテルのブロックコポリマー、ポリオキシアルキレン・ジメチルポリシロキサンコポリマー、石油スルフォネート塩及びオレイン酸ジメチルアミン塩等を挙げることができる。本発明ではジメチルシロキサン・ポリエーテルのブロックコポリマーを好適に用いることができる。また、このような整泡剤としては市販品を用いることができ、具体的には、SH193、L5340、L5420、SF2938F、SF2937F、SF2936、SF2941(いずれも東レ・ダウコーニング(株)製)等を用いることができる。上記整泡剤の配合量は、上記のポリオール成分100質量部に対して通常0.1〜5質量部、特に0.5〜2質量部とすることが好ましい。この配合量が上記範囲を逸脱すると、独泡性の制御が困難となるので好ましくない。
【0033】
本発明の断熱材を得るには、従来公知のエアレススプレー等のスプレー方式やエアを混入して施工対象面に吐出する方法などを採用し得る。従って、上記構成とした第1液と第2液とをミキシングヘッド等を用いて混合しながら施工対象面に吹き付けを繰り返して、あるいはエアを混入して吐出して施工し、所望する形状の断熱材とすればよい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
[実施例1〜9、比較例1,2]
表1に示す組成及び液温のポリオール成分を含む第1液及びイソシアネート成分を含む第2液をそれぞれ予め攪拌混合した後、常法に従いスプレー発泡機を用いてスプレーノズル先端で両者を混合しながら、表1に示す条件で珪酸カルシウム板に吐出圧力5〜10MPaで吹付け施工した。
【0035】
《評価方法》
本発明品については以下の項目について評価を行った。結果を表1に併記する。
・反応性
クリームタイム:液温を10℃とした第1液と第2液の混合攪拌を開始してから、混合液の色が茶色から白色に変化するまでの時間を測定した。
ライズタイム:液温を10℃とした第1液と第2液の混合攪拌を開始してから、反応が終了するまでの時間を測定した。
フリーフォームコア密度:液温を10℃とした第1液と第2液の発泡が終了してから24時間以上経過後、得られたフォームを任意の寸法にカットし、質量を測定した後、質量/体積にて計算した。
・下吹きタック時間
1820×910×t5mmの珪酸カルシウム板に対して断熱材組成物を下吹きした後、タックがなくなるまでの時間を測定した。
・成形品コア密度
JIS A9526に準拠して測定した。
・熱伝導率
JIS A9526に準拠して測定した。
・圧縮強度
JIS A9526に準拠して測定した。
・湿熱寸法安定性、低温寸法安定性
1層相関層込みにて50×50×50mmにカットしたサンプルを、湿熱時 70℃,95%RH、低温時 −30℃の環境下に24時間放置した後の寸法を測定した。
【0036】
【表1】

【0037】
ポリオールA:旭硝子(株)製、ポリエーテルポリオール「FB−715」、水酸基価:405mg−KOH/g
ポリオールB:旭硝子(株)製、ポリエーテルポリオール「FB−717」、水酸基価:482.5mg−KOH/g
ポリオールC:三洋化成工業(株)製、ポリエーテルポリオール「NE240」、水酸基価:980mg−KOH/g
ポリオールD:旭硝子(株)製、ポリエーテルポリオール「FB−745」、水酸基価:490mg−KOH/g
難燃剤:大八化学(株)製、「TMCPP」(トリスモノクロロプロピルフォスフェート)
整泡剤:東レ・ダウコーニング(株)製、「SH193」(ジメチルシロキサンとポリエーテルのブロックコポリマー)
触媒A:エアープロダクツジャパン(株)製、「DABCO 33LV」(トリエチレンジアミンの33%ジプロピレングリコール溶液)
触媒B:エアープロダクツジャパン(株)製、「Polycat 9」(ビス(3−ジメチルアミノプロピル)−N,N−ジメチルプロパンジアミン)
触媒C:東ソー(株)製、「TOYOCAT−TMF」
触媒D:日本化学産業(株)製、「ニッカオクチックス鉛」(成分1:2−エチルヘキシル酸鉛(鉛として17重量%)、成分2:フタル酸ジオクチル(59重量%))
発泡剤A:水
発泡剤B:HFC245fa/HFC365mfc=70/30(質量比)
MDI:住化バイエルウレタン(株)製、「44V20」

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分を含む第1液と、イソシアネート成分を含む第2液とで少なくとも構成され、前記第1液と第2液とを混合して施工対象面に吹き付け、発泡硬化させて発泡ポリウレタン断熱材を施工形成する2液型の断熱材組成物であって、
上記第1液中に発泡剤として水とフロン化合物とを含有し、かつ上記ポリオール成分として窒素原子を含有するポリオールを含むと共に、このポリオールを含むポリオール成分に対するフロン化合物の溶解度が20〜300g/100gであることを特徴とする断熱材組成物。
【請求項2】
上記窒素原子を含有するポリオールとして、第3級アミン構造を有するポリオールを含有する請求項1記載の断熱材組成物。
【請求項3】
上記第3級アミン構造を有するポリオールとして、下記構造式(1)〜(3)に示した第3級アミン構造の1種又は2種以上を有するポリオールを含有する請求項2記載の断熱材組成物。
【化1】

(式中、aは1〜4、bは1〜4、cは2〜5である。)
【請求項4】
上記窒素原子を含有するポリオールとして、エチレンジアミンベースのポリエーテルポリオールを含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の断熱材組成物。
【請求項5】
発泡剤として配合される上記フロン化合物の配合割合が、上記ポリオール成分100質量部に対して10〜40質量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載の断熱材組成物。
【請求項6】
難燃剤として、リン酸エステル系難燃剤を上記ポリオール成分100質量部に対して10〜20質量部含んでなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の断熱材組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の断熱材組成物を施工対象面に吹き付け、発泡硬化させてなることを特徴とするポリウレタン発泡断熱材。

【公開番号】特開2009−67915(P2009−67915A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238808(P2007−238808)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】